説明

唇の化粧方法

【課題】唇の色を調整することによって、人に与える印象を高める唇の化粧方法を提供すること。
【解決手段】化粧をしていない素の唇の少なくとも上唇のa値を上げて、上唇と下唇のa値を同じ値にすることを特徴とする、人に与える印象を高める唇の化粧方法。
前記化粧方法において、固形油分5〜10質量%、口唇用化粧料全量中30〜70質量%の高粘度の炭化水素油を含む液状乃至半固形油分、管状塩基性炭酸マグネシウム3〜10質量%、赤色系顔料0.5〜10質量%を含有する口唇用化粧料を唇に塗布することによって唇のa値を上げることを特徴とする唇の化粧方法。また、固形油分5〜10質量%、口唇用化粧料全量中30〜70質量%の高粘度の炭化水素油を含む液状乃至半固形油分、管状塩基性炭酸マグネシウム3〜10質量%、赤色系顔料0.15質量%以上0.5質量%未満、緑色又は赤色の干渉色を発現するパール顔料3〜10質量%を含有する口唇用化粧料を唇に塗布することによって唇のa値を上げることを特徴とする唇の化粧方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は唇の化粧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
唇の色はヘモグロビンとメラニン量により変化する。特に、口腔内由来の毛細血管が唇の表面近くに存在し、それによって唇を赤く見せている(非特許文献1参照)。ところが、加齢と共に唇の構造と毛細血管の状態が変化する結果、唇がくすむことが報告されている(非特許文献2参照)。
【0003】
唇の色によって見る人が受ける印象は異なる。例えば、くすんだ唇は見る人に老けた印象を与える。また、若い人でも青ざめた唇は不健康な印象を与える。このように、唇の色は若さや健康状態等の印象に大きな影響を与えている。しかしながら、唇の赤みについて上唇と下唇の色それぞれについて調べ、それにあわせた口紅を開発することはなされていない。
【0004】
【非特許文献1】Kobayashi H. et al., Int. J. Cosmet. Sci. 2004.26:91−101.
【非特許文献2】Hikima R. 32nd annual meeting of Jpn. Cosmet. Sci. Soc(I−1). 2007.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、唇の色を調整することによって、人に与える印象を高める唇の化粧方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために、唇の色の数値化、上唇と下唇の血流量、ヘモグロビン量、メラニン量の違い、上唇と下唇の色が与える視覚的効果について考察した。
【0007】
(1)唇の色の数値化
色差計(分光測色計CM−2600d(コニカミノルタセンシング株式会社製))を用いて、66人の日本人女性(20代24人、30代20人、40代15人、50代7人)の上唇と下唇のそれぞれのL値を、太陽光に近いとされるD65ランプを使用して測定した。なお、本発明におけるL値、a値及びb値は全て同様の方法で測定した値である。
【0008】
値のL値は明るさを表し、0から100までで数値が大きい程明るくなる。色みはaで表し、aともに0の場合には無彩色となる。aがプラスの方向になるほど赤みが強くなり、マイナスの方向になるほど緑みが強くなり、またbがプラスの方向になるほど黄みが強くなり、マイナスの方向になるほど青みが強くなる。Lを求めるL表色系は、CIE(国際照明委員会)で規格化された、知覚的にほぼ均等な歩度をもつ色空間の一つで、色差を表すのに最も多く用いられている表色系である。
【0009】
表1に前記女性のL値の測定結果を示した。各年代のL値は、それぞれの年代の女性の唇の平均値である。
【0010】
【表1】

【0011】
表1から明らかなように、どの世代においても下唇のa値は上唇より高いことが分かった。すなわち、下唇が上唇よりも赤く見えることが分かった。
【0012】
(2)上唇と下唇の血流量、ヘモグロビン量、メラニン量の違い
上唇と下唇の血流量、ヘモグロビン量、メラニン量の違いを調べた。血流計(SV−700)と顔画像解析システム(VISIA)を用いて、血流量、ヘモグロビン量、メラニン量の測定を行った。
【0013】
その結果、上唇の毛細血管は薄いのに対して、下唇の毛細血管は厚く、明確なループ状を示し、口腔粘膜の毛細血管に似ていることが分かった。これは下唇の方が口腔粘膜由来の部分が多く、これが下唇の方が上唇よりも赤く鮮やかに見える要因であると考えられる。
【0014】
さらに、下唇のヘモグロビン量は上唇より高く、上唇の方が下唇よりもメラニン量が高いことが分かった。これも下唇が上唇よりも赤く新鮮に見える理由であると考えられる。医学的には、上唇は主に皮膚由来の唇が多いため、毛細血管を表皮を通して見ることができず、血流量も低いのに対して、下唇は派生学的に口腔粘膜に由来することによるものであると考えられた。
【0015】
(3)上唇と下唇の色が与える視覚的効果
上唇と下唇のa値、すなわち赤みを変えることでどのような視覚的効果を与えられるのかを調べた。上唇と下唇のa値を、画像解析ソフト(Photoshop 6.0)を用いて、イメージ解析により変化させ、上唇と下唇の色の差がどのような視覚的効果を与えるのか解析した。
【0016】
(方法)
唇に化粧をしない素の唇の上唇のa値が16、下唇のa値が21である、一人の女性パネルのカラー写真の上唇及び下唇を、CGにより表2に示した各a値に変化させたカラー写真A〜Iを用意した。前記カラー写真は、唇部分のみのカラー写真及び顔全体のカラー写真の2種類を用意した。
【0017】
【表2】

【0018】
次いで、20人の専門パネルにより前記カラー写真を見て受ける印象評価を行い、アンケート結果として集計した。
【0019】
唇部分のみのカラー写真から受ける、「若く見える」、「健康的に見える」、「自然な印象を与える」、「新鮮な印象を与える」についての印象のアンケート結果を表3に示した。さらに、顔全体のカラー写真から受ける同様の印象のアンケート結果を表4に示した。なお、評価は、各項目について「最もである。」から「そうは思えない。」の間で5点を満点とする(最低得点は1点である。)スコアをつけてもらい、表3、4には20人のスコアの平均点を示した。
【0020】
【表3】

【0021】
【表4】

【0022】
表3の唇部分のみのカラー写真から受ける印象のアンケート結果及び表4の顔全体のカラー写真から受ける印象のアンケート結果のいずれもから以下のことが分かった。
(1)唇のa値を上げると、より若く健康的に見えるようになる傾向があった(下唇に関して、カラー写真GDA、HEB、IFCの各関係、上唇に関して、ABC、DEF、GHIの各関係参照)。
(2)上唇のa値16、下唇のa値21を有する素の唇(カラー写真E参照)については、自然で新鮮な印象を与えるが、若く健康的に見える点で劣るものであった。
(3)この素の唇に対して、上唇のa値を上げて下唇と同じa値にした場合(カラー写真F参照)、若く健康的に見え、かつ自然で新鮮な印象を与えた。
(4)前記素の唇に対して、上唇のa値を下げて下唇とのa値の差をさらに広げると(カラー写真D参照)、若く健康的に見える印象、自然で新鮮な印象全てが悪くなる。
(5)前記素の唇に対して、上唇のa値を上げても、下唇も同様に上げては(カラー写真C参照)、自然で新鮮な印象が悪くなる。
(6)前記素の唇に対して、下唇のa値をさらに上げて、上唇とのa値の差をさらに広げると(カラー写真B参照)、自然で新鮮な印象も悪くする。
(7)前記素の唇に対して、上唇及び下唇いずれも、素の唇よりもa値を下げてしまうと、若く健康的に見える印象、自然で新鮮な印象全てを悪くする(カラー写真A、D、G、H、I参照)。例えば、下唇のa値を下げ上唇と同じa値にした場合(カラー写真H参照)、若く健康的に見える印象、自然で新鮮な印象全てを悪くする。これにさらに上唇のa値を下げると(カラー写真G参照)、さらに悪化した。また、上唇のa値を上げても、下唇のa値を下げてしまうと(カラー写真I参照)、若く健康的に見える印象、自然で新鮮な印象いずれも悪化した。なお、カラー写真Iは素の唇の上下の唇のa値を逆にした場合に当たる。
(8)上唇のa値と下唇のa値が異なると、少なくとも若く健康的に見える印象、自然で新鮮な印象のいずれかを悪くし、上唇のa値と下唇のa値を同じにした場合、若く健康的に見え、かつ自然で新鮮な印象を与えた。
【0023】
以上、唇の色の数値化、上唇と下唇の血流量、ヘモグロビン量、メラニン量の違い、上唇と下唇の色が与える視覚的効果について考察した結果、化粧をしていない素の唇の少なくとも上唇のa値、すなわち赤みを上げて、上唇と下唇のa値を同じ値にすることにより、人に与える印象を高める、すなわち人に対して印象を若く健康的に見せ、さらに自然で新鮮な印象に見せることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0024】
すなわち、第一発明は、化粧をしていない素の唇の少なくとも上唇のa値を上げて、上唇と下唇のa値を同じ値にすることを特徴とする、人に与える印象を高める唇の化粧方法である。
【0025】
また、第二発明は、前記唇の化粧方法において、固形油分5〜10質量%、口唇用化粧料全量中30〜70質量%の高粘度の炭化水素油を含む液状乃至半固形油分、管状塩基性炭酸マグネシウム3〜10質量%、赤色系顔料0.5〜10質量%を含有する口唇用化粧料を唇に塗布することによって唇のa値を上げることを特徴とする唇の化粧方法である。
【0026】
また、第三発明は、赤色系顔料の配合が0.5質量%未満の口唇用化粧料を塗布して唇に薄く化粧する前記唇の化粧方法において、固形油分5〜10質量%、口唇用化粧料全量中30〜70質量%の高粘度の炭化水素油を含む液状乃至半固形油分、管状塩基性炭酸マグネシウム3〜10質量%、赤色系顔料0.15質量%以上0.5質量%未満、緑色又は赤色の干渉色を発現するパール顔料3〜10質量%を含有する口唇用化粧料を唇に塗布することによって唇のa値を上げることを特徴とする唇の化粧方法である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、化粧をしていない素の唇の少なくとも上唇のa値を上げて、上唇と下唇のa値を同じ値にする化粧を唇にしたので、人に与える印象を高める、すなわち人に対して印象を若く健康的に見せ、さらに自然で新鮮な印象に見せることができた。前記唇の化粧方法は、固形油分5〜10質量%、口唇用化粧料全量中30〜70質量%の高粘度の炭化水素油を含む液状乃至半固形油分、管状塩基性炭酸マグネシウム3〜10質量%、赤色系顔料0.5〜10質量%を含有する口唇用化粧料、または、固形油分5〜10質量%、口唇用化粧料全量中30〜70質量%の高粘度の炭化水素油を含む液状乃至半固形油分、管状塩基性炭酸マグネシウム3〜10質量%、赤色系顔料0.15質量%以上0.5質量%未満、緑色又は赤色の干渉色を発現するパール顔料3〜10質量%を含有する口唇用化粧料を唇に塗布することによって行われ、優れた前記効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳述する。
【0029】
本発明は、化粧をしていない素の唇の少なくとも上唇のa値を上げて、上唇と下唇のa値を同じ値にすることを特徴とする、人に与える印象を高める唇の化粧方法である。
【0030】
上記本発明の方法においては、上唇と下唇のa値は必ずしも全く同じ値でなくても、効果を発揮する範囲で違いがあっても構わず、本発明の範囲として許容される。特に、上唇のa値が下唇のa値よりも高い場合にその違いは許容される。
【0031】
唇のa値を調整する方法としては、口唇用化粧料を唇に塗布して化粧する方法で行われる。前記口唇用化粧料としては、固形油分5〜10質量%、口唇用化粧料全量中30〜70質量%の高粘度の炭化水素油を含む液状乃至半固形油分、管状塩基性炭酸マグネシウム3〜10質量%、赤色系顔料0.5〜10質量%を含有する口唇用化粧料、
【0032】
または、固形油分5〜10質量%、口唇用化粧料全量中30〜70質量%の高粘度の炭化水素油を含む液状乃至半固形油分、管状塩基性炭酸マグネシウム3〜10質量%、赤色系顔料0.15質量%以上0.5質量%未満、緑色又は赤色の干渉色を発現するパール顔料(以下、「干渉色を発現するパール顔料」を「干渉パール顔料」という。)3〜10質量%を含有する口唇用化粧料であることが好ましい。
【0033】
これらの口唇用化粧料によれば、上下の唇に通常の口唇用化粧料塗布による化粧行為を行うことによって、上唇と下唇のa値を同じ値にすることができ、唇の化粧が完成する。
【0034】
前記口唇用化粧料における、固形油分としては、化粧料に配合できるものであれば特に制限されない。具体的には、ポリエチレンワックス、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ミツロウ、ラノリン、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ホホバロウ、パルミチン酸セチル、トリミリスチン酸グリセリル、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ヤシ油、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベへン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、シリコーンワックス等の炭化水素ワックス、ロウ、エステル系ワックス、固体油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン等が挙げられる。
【0035】
前記固形油分は、口唇用化粧料全量中5〜10質量%という少ない量を含有する。含有量が前記範囲を外れると本発明の効果を発揮しえない。
【0036】
前記高粘度の炭化水素油を含む液状乃至半固形油分における高粘度の炭化水素油としては、ポリブテン、ポリイソブテン、これらの水素添加物が好ましい。なお、前記水素添加物は必ずしも100%不飽和結合をなくしたものでなくても構わない。
【0037】
なお、高粘度としては、動粘度の値として98.9℃における動粘度が100mm/s以上を有するものであることが好ましく、さらに好ましくは、300mm/s(98.9℃)以上である。
【0038】
高粘度の炭化水素油の動粘度の上限は特に限定されるものではないが、使用感の点から、5000mm/s(98.9℃)以下が好ましい。さらに好ましくは800mm/s(98.9℃)以下である。
【0039】
前記高粘度の炭化水素油は、市販品を用いることが可能であり、市販品の例としては、例えば、パールリーム18(動粘度300mm/s(98.9℃))、パールリーム24(動粘度800mm/s(98.9℃))、パールリーム46(動粘度4700mm/s(98.9℃))(以上、日油株式会社製の水添ポリイソブテン)、日石ポリブテンHV−300F(動粘度590mm/s(98.9℃))、日石ポリブテンHV−50(動粘度110mm/s(98.9℃))、日石ポリブテンHV−100(動粘度220mm/s(98.9℃))、日石ポリブテンHV−1900(動粘度3710mm/s(98.9℃))(以上、新日本石油株式会社製のポリ(イソブテン/ノルマルブテン))等が挙げられる。
【0040】
前記高粘度の炭化水素油は、口唇用化粧料全量中30〜70質量%の量を含有する。
【0041】
本発明における口唇用化粧料には、高粘度の炭化水素油以外に、他の液状乃至半固形油分が配合される。前記高粘度の炭化水素油を含む液状乃至半固形油分全量の含有量は、赤色系顔料の含有量が口唇用化粧料全量中0.5〜10質量%の場合、口唇用化粧料全量中75〜90質量%の範囲が好ましい。また、赤色系顔料の含有量が口唇用化粧料全量中0.15質量%以上0.5質量%未満の場合、口唇用化粧料全量中75〜87質量%の範囲が好ましい。
【0042】
前記他の液状乃至半固形油分としては、化粧料に配合できるものであれば特に制限されない。具体的には、オリーブ油、ヒマシ油、マカデミアナッツ油、月見草油、ホホバ油、液状ラノリン、2−エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、リンゴ酸ジイソステアリル、イソステアリン酸、オレイン酸、イソステアリルアルコール、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ラノリン、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ジイソステアリン酸ダイマージリノレイル、流動パラフィン、スクワラン等の液状油脂、エステル油、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油、炭化水素油等が挙げられる。これらの油分としては液状油脂、エステル油が本発明の効果を発揮する点で好ましい。
【0043】
前記口唇用化粧料における管状塩基性炭酸マグネシウムは、薄片状微細結晶からなる多孔質・管状という形状をもつ塩基性炭酸マグネシウム(mMgCO・Mg(OH)・nHO)である。
【0044】
前記管状粉体は、凝集粒子をなす薄片状微細結晶がカードハウス構造状に集合して管状になったものである。この凝集粒子は、単純な撹拌、温度やpHなどの環境の変化によって、薄片状微細結晶が容易に分散してしまうような凝集粒子ではない。
【0045】
管状塩基性炭酸マグネシウムは既知の物質であり、例えば特開2003−306325号公報、特開2005−220058号公報に記載の方法によって製造することができる。例えば、硫酸マグネシウム7水塩水溶液に、無水炭酸ナトリウム水溶液を徐々に添加し、撹拌して、正炭酸マグネシウムの柱状粒子を得る。続いて、該正炭酸マグネシウムの柱状粒子の懸濁液を加熱、撹拌して、塩基性炭酸マグネシウムを生成させ、管状の塩基性炭酸マグネシウムを製造する。
【0046】
管状塩基性炭酸マグネシウムは、その形状が、内径0.5〜10μm、外径1〜20μm、長さ5〜200μmであることが好ましい。また、内径/外径の比が0.125〜2.5、長さ/外径の比が1.25〜25であることが好ましい。また、BET法での比表面積が40〜200m/g、水銀圧入法により測定される細孔分布において、細孔径0.01〜100μmの細孔容積が5000〜12000mm/gであることが好ましい。
【0047】
前記管状塩基性炭酸マグネシウムは、市販品を用いることが可能である。市販品の例としては、例えば、マグチューブ(登録商標)(MgTube)(日鉄鉱業株式会社製)等が挙げられる。マグチューブは、粒子形状:多孔質管状粒子(内径約1〜5μm、外径約2〜8μm、長さ10〜50μm)、比表面積:120〜200m/g(BET法)、細孔容積:7000〜12000mm/g(水銀圧入法)、かさ密度:0.2g/ml以下、pH:10〜11の管状塩基性炭酸マグネシウムである。
【0048】
前記管状塩基性炭酸マグネシウムは、表面を疎水化処理によって疎水性に改質したものを用いることができる。疎水化処理の方法としては、特に限定されることはないが、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサンを用いたコーティング焼き付け処理、金属石鹸、脂肪酸デキストリン、トリメチルシロキシケイ酸、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、フッ素基を有する高分子等によるコーティング処理等が挙げられる。
【0049】
本発明における口唇用化粧料において、管状塩基性炭酸マグネシウムを配合することでa値を効果的に上昇させ、しかも上唇と下唇の色を効果的に調整することができる。前記管状塩基性炭酸マグネシウムは口唇用化粧料全量中3〜10質量%の量を含有する。含有量がこの範囲以外では本発明の効果を充分に発揮することができない。
【0050】
前記口唇用化粧料における赤色系顔料は、赤色系顔料を配合した口唇用化粧料を唇に塗布することにより唇のa値を上げる赤色系の顔料である。前記赤色系顔料は、表5の口紅B中の赤色202号に替えて赤色系顔料を配合して製造した口紅を重ねづけせず、一度の塗布だけでa値が15〜18の上唇に塗布したとき、前記上唇のa値を24〜32にするものが好ましい。前記赤色系顔料としては、例えば、赤色505号、赤色230号、赤色223号、赤色201号、赤色213号、赤色202号、赤色204号、赤色104号、赤色226号等が挙げられる。
【0051】
前記赤色系顔料の含有量は、口唇用化粧料全量中0.15〜10質量%である。含有量がこの範囲以外では本発明の効果を充分に発揮することができない。前記赤色系顔料の含有量のうち、口唇用化粧料全量中0.5〜10質量%の場合、厚付き口唇用化粧料となる。また、赤色系顔料の含有量が口唇用化粧料全量中0.15質量%以上0.5質量%未満の場合、薄付き口唇用化粧料となり、この場合、緑色又は赤色の干渉パール顔料3〜10質量%と併用することにより、本発明の効果を奏することができる。
【0052】
前記干渉パール顔料は、真珠光沢を有する板状の粉体であり、塗料や化粧料の分野において汎用の粉体である。干渉パール顔料としては、母粉体の表面を金属酸化物で被覆した粉体が挙げられ、好適に用いられる。前記母粉体としては、例えば、雲母、合成金雲母、板状硫酸バリウム、板状酸化チタン、板状アルミナ、板状シリカ、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス等が挙げられるが、雲母、合成金雲母が特に好ましい。また、金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、アルミナ等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。特に、酸化チタン、酸化鉄又はこれらの混合物が好ましい。また、さらにシリカを被覆しても構わない。以上述べたように、本発明では干渉パール顔料として、特に雲母又は合成金雲母の表面を、少なくとも酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆した粉体が好ましい。
【0053】
本発明の干渉パール顔料は、脂肪酸金属石鹸、シリコーン油、アルキルリン酸、アミノ酸、レシチン、コラーゲン、パーフルオロアルキル基を有する化合物等の1種又は2種以上を用いて撥水又は撥油化処理の表面処理を行った干渉パール顔料を使用することもできる。
【0054】
前記干渉パール顔料は、公知の一般的な方法により有色とすることができ、例えば、雲母等の母粉体の表面を金属酸化物で被覆した物質は、金属酸化物粒子の膜厚を調整することにより、種々色調の干渉パール顔料を調製することが可能である。
【0055】
本発明におけるこれらの有色の干渉パール顔料のうち、緑色又は赤色の干渉パール顔料が用いられ、これらは市販品を用いることも可能である。市販品の例としては、フラメンコレッド、フラメンコグリーン、フラメンコスパークルレッド、フラメンコスパークルグリーン、クロイゾネレッド、クロイゾネグリーン、フラメンコサテンレッド(以上、エンゲルハード(Engelhard)社製)、ティミロンスーパーレッド、コロロナシエナ、コロロナレッドゴールド、コロロナレッドブラウン、コロロナインペリアルレッド、コロロナシエナスパークル、ティミロンスプレンディッド等(以上、メルク社製)、プレステージシリーズ(ECKART社製)、メタシャイン1080RC−シリーズ(日本板硝子株式会社製)、プロミネンスシリーズ等(トピー工業株式会社製)等が挙げられる。
【0056】
緑色又は赤色の干渉パール顔料の平均粒子径は、使用感の点から、1〜100μmが好ましい。
【0057】
本発明の口唇用化粧料には、前記成分の他に、化粧料、医薬部外品、医薬組成物等に通常用いられる他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。前記任意配合成分としては、例えば、界面活性剤、保湿剤、高分子、油ゲル化剤、前記以外の粉体、前記以外の顔料、染料、レーキ、紫外線吸収剤、ビタミン類等の薬剤、酸化防止剤、清涼剤、香料等を挙げることができる。
【0058】
本発明の口唇用化粧料の形態としては、口紅であることが好ましい。口唇用化粧料は前記成分を配合して常法にしたがって調製することができる。なお、スティック状の口紅の製造に際しては、シリコーンでできた口紅成型型であるシリコーンモールドで成型することが好ましい。
【0059】
口唇用化粧料を唇に塗布する方法は、通常の塗布の仕方で十分に効果を得ることができるが、通常の口紅よりも一回の塗布量が多いため、何度も塗らずに一度塗るだけで十分な効果を得ることができる。
【実施例】
【0060】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。配合量は質量%である。
【0061】
口紅の調製
表5に示した組成の口紅を製造した。
【0062】
(製造法)
A.ワックスとオイル成分を110℃で加熱溶解した。
B.「A」に粉体、顔料を添加して混合撹拌した。
C.「B」を型で成型して、口紅を得た。
【0063】
【表5】

【0064】
表5中
(注1):MgTube(日鉄鉱業株式会社製)
(注2):パールリーム24(日油株式会社製)
【0065】
上記口紅A及び口紅Bを唇に塗布し、上唇及び下唇のa値を測定し、その結果を図1に示した。口紅の塗布は、口紅を重ねづけせず、一度の塗布だけで評価を行った。
【0066】
図1中、
「Bare lip」は、口紅を塗布する前の唇である。
「control Lipstick 1」は、口紅Bを塗布した唇である。
「MgTube Lipstick 1」は、口紅Aを塗布した唇である。
【0067】
図1より、管状塩基性炭酸マグネシウムを配合した口紅Aを唇に塗布することによって、a値を下げることなく上唇と下唇のa値を同じに調整することができた。これにより、唇は若く健康的に見え、かつ自然で新鮮な印象を与えることができるようになった。
【0068】
なお、前記同様、20人の専門パネルの受ける、「若く見える」、「健康的に見える」、「自然な印象を与える」、「新鮮な印象を与える」印象についてのアンケートを行い、結果を表6に示した。なお、評価は、前記同様、各項目について「最もである。」から「そうは思えない。」の間で5点を満点(最低得点は1点)としてつけてもらい、表6には、その平均点を示している。
【0069】
【表6】

【0070】
表6の受ける印象のアンケート結果から、口紅Aを塗布した唇は、若く健康的に見え、かつ自然で新鮮な印象を与えることが裏付けられた。
【0071】
口紅の調製
表7に示した組成の口紅を製造した。
【0072】
(製造法)
A.ワックスとオイル成分を110℃で加熱溶解した。
B.「A」に粉体、顔料を添加して混合撹拌した。
C.「B」を型で成型して、口紅を得た。
【0073】
【表7】

【0074】
表7中
(注1):MgTube(日鉄鉱業株式会社製)
(注2):フラメンコグリーン(エンゲルハード社製)
(注3):フラメンコブルー(エンゲルハード社製)
(注4):フラメンコパール(エンゲルハード社製)
(注5):フラメンコゴールド(エンゲルハード社製)
(注6):フラメンコオレンジ(エンゲルハード社製)
(注7):フラメンコレッド(エンゲルハード社製)
(注8):パールリーム24(日油株式会社製)
【0075】
上記口紅C〜Iを唇に塗布し、上唇及び下唇のa値を測定し、その結果を図2の右のグラフ(以下、「図2(右)」という。)に示した。口紅の塗布は、口紅を重ねづけせず、一度の塗布だけで評価を行った。
【0076】
図2(右)中、
「Bare lip」は、口紅を塗布する前の唇である。
「MgTube Lipstick 2」は、口紅Cを塗布した唇である。
「MgTube Lipstick 3(green)」は、口紅Dを塗布した唇である。
「MgTube Lipstick 3(blue)」は、口紅Eを塗布した唇である。
「MgTube Lipstick 3(white)」は、口紅Fを塗布した唇である。
「MgTube Lipstick 3(gold)」は、口紅Gを塗布した唇である。
「MgTube Lipstick 3(orange)」は、口紅Hを塗布した唇である。
「MgTube Lipstick 3(red)」は、口紅Iを塗布した唇である。
【0077】
図2(右)より、管状塩基性炭酸マグネシウムを配合しても、赤色系顔料の配合量の少ない(0.15質量%)薄付きの口紅(口紅C)を唇に塗布しても、上唇と下唇の色を同じa値に調整することができない(口紅Cを塗布した「MgTube Lipstick 2」参照)。
【0078】
前記薄付きの口紅においては、管状塩基性炭酸マグネシウムと特定の干渉パール顔料を配合した口紅を塗布することによって、a値を下げることなく上唇と下唇のa値を同じに調整することができた。これにより、唇は若く健康的に見え、かつ自然で新鮮な印象を与えることができるようになった。
【0079】
すなわち、干渉パール顔料としては、赤色の干渉パール顔料と緑色の干渉パール顔料配合に効果が見られ、赤色の干渉パール顔料の配合により、より赤みを強くすることで上唇と下唇の色を調整することができた(口紅Iを塗布した「MgTube Lipstick 3(red)」参照)。また、緑色の干渉パール顔料は唇全体の赤みを抑えて上唇と下唇の色を調整することができた(口紅Dを塗布した「MgTube Lipstick 3(green)」参照)。
【0080】
なお、前記同様、20人の専門パネルの受ける、「若く見える」、「健康的に見える」、「自然な印象を与える」、「新鮮な印象を与える」印象についてのアンケートを行い、結果を表8に示した。なお、評価は、表6の場合と同様である。
【0081】
【表8】

【0082】
表8の受ける印象のアンケート結果から、口紅D及びIを塗布した唇は、若く健康的に見え、かつ自然で新鮮な印象を与えることが裏付けられた。
【0083】
参考例として、薄付きの口紅において、一般的な口紅で顔料を減らしたもの、及び管状塩基性炭酸マグネシウムの配合のない干渉パール顔料のみを配合した口紅を唇に塗布した試験を行った。
【0084】
口紅の調製
表9に示した組成の口紅を製造した。
【0085】
(製造法)
A.ワックスとオイル成分を110℃で加熱溶解した。
B.「A」に粉体、顔料を添加して混合撹拌した。
C.「B」を型で成型して、口紅を得た。
【0086】
【表9】

【0087】
表9中
(注1):フラメンコグリーン(エンゲルハード社製)
(注2):フラメンコブルー(エンゲルハード社製)
(注3):フラメンコパール(エンゲルハード社製)
(注4):フラメンコゴールド(エンゲルハード社製)
(注5):フラメンコオレンジ(エンゲルハード社製)
(注6):フラメンコレッド(エンゲルハード社製)
(注7):パールリーム24(日油株式会社製)
【0088】
上記口紅J〜Pを唇に塗布し、上唇及び下唇のa値を測定し、その結果を図2の左のグラフ(以下、「図2(左)」という。)に示した。口紅の塗布は、口紅を重ねづけせず、一度の塗布だけで評価を行った。
【0089】
図2(左)中、
「Bare lip」は、口紅を塗布する前の唇である。
「Control Lipstick 2」は、口紅Jを塗布した唇である。
「Control Lipstick 3(green)」は、口紅Kを塗布した唇である。
「Control Lipstick 3(blue)」は、口紅Lを塗布した唇である。
「Control Lipstick 3(white)」は、口紅Mを塗布した唇である。
「Control Lipstick 3(gold)」は、口紅Nを塗布した唇である。
「Control Lipstick 3(orange)」は、口紅Oを塗布した唇である。
「Control Lipstick 3(red)」は、口紅Pを塗布した唇である。
【0090】
図2(左)より、赤色系顔料の配合量の少ない(0.15質量%)一般的な薄付きの口紅(口紅J)を唇に塗布しても上唇と下唇の色を調整することができないばかりでなく、上唇と下唇の色の差は大きくなった(口紅Jを塗布した「Control Lipstick 2」参照)。さらに、干渉パール顔料のみを配合した(管状塩基性炭酸マグネシウムの配合がない。)だけでは上唇と下唇の色を揃えることは難しかった(口紅K〜Pを塗布した各種「Control Lipstick 3」参照)。以上から、参考例における薄付きの口紅では、上唇と下唇の色を同色に揃えることは不可能であった。
【0091】
なお、前記同様、20人の専門パネルの受ける、「若く見える」、「健康的に見える」、「自然な印象を与える」、「新鮮な印象を与える」印象についてのアンケートを行い、結果を表10に示した。なお、評価は、表6の場合と同様である。
【0092】
【表10】

【0093】
表10の受ける印象のアンケート結果から、口紅J〜Pを塗布した唇は、いずれも若く健康的に見える印象、自然で新鮮な印象を与える印象のいずれも悪いことが分かる。
【0094】
口紅の調製
表11に示した組成の口紅を製造した。
【0095】
(製造法)
A.ワックスとオイル成分を110℃で加熱溶解した。
B.「A」に粉体、顔料を添加して混合撹拌した。
C.「B」を型で成型して、口紅を得た。
【0096】
【表11】

【0097】
表11中
(注1):MgTube(日鉄鉱業株式会社製)
(注2):フラメンコグリーン(エンゲルハード社製)
(注3):フラメンコレッド(エンゲルハード社製)
(注4):パールリーム24(日油株式会社製)
(注5):日石ポリブテンHV−300F(新日本石油株式会社製)
(注6):パールリーム18(日油株式会社製)
【0098】
上記口紅Q〜Tを唇に前記同様一度だけの塗布を行い、上唇及び下唇のa値を測定した結果、口紅Q及びRはいずれも前記口紅Aと同様の結果、また口紅S及びTはそれぞれ前記口紅D及びIと同様の結果が得られ、さらに前記口紅Q〜Tを塗布した唇の受ける印象のアンケート結果により、いずれの唇も若く健康的に見え、かつ自然で新鮮な印象を与えることの裏付けが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】口紅A及びBを塗布した唇のa値を示す図である。
【図2】口紅C〜Iを塗布した唇のa値(図の右のグラフ)及び口紅J〜Pを塗布した唇のa値(図の左のグラフ)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧をしていない素の唇の少なくとも上唇のa値を上げて、上唇と下唇のa値を同じ値にすることを特徴とする、人に与える印象を高める唇の化粧方法。
【請求項2】
請求項1の唇の化粧方法において、固形油分5〜10質量%、口唇用化粧料全量中30〜70質量%の高粘度の炭化水素油を含む液状乃至半固形油分、管状塩基性炭酸マグネシウム3〜10質量%、赤色系顔料0.5〜10質量%を含有する口唇用化粧料を唇に塗布することによって唇のa値を上げることを特徴とする唇の化粧方法。
【請求項3】
赤色系顔料の配合が0.5質量%未満の口唇用化粧料を塗布して唇に薄く化粧する請求項1の唇の化粧方法において、固形油分5〜10質量%、口唇用化粧料全量中30〜70質量%の高粘度の炭化水素油を含む液状乃至半固形油分、管状塩基性炭酸マグネシウム3〜10質量%、赤色系顔料0.15質量%以上0.5質量%未満、緑色又は赤色の干渉色を発現するパール顔料3〜10質量%を含有する口唇用化粧料を唇に塗布することによって唇のa値を上げることを特徴とする唇の化粧方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−83792(P2010−83792A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253858(P2008−253858)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(390041036)株式会社日本色材工業研究所 (37)
【Fターム(参考)】