説明

唐辛子からカプシノイド化合物を抽出分離する方法及び唐辛子抽出物

【課題】 唐辛子からカプシノイド化合物を低コストでかつ高効率で抽出できる抽出分離方法を提供する。
【解決手段】 この発明に係る抽出分離方法は、唐辛子粉砕物と、水及びアセトンを含有してなる混合抽出溶媒とを接触させることによって、該混合抽出溶媒中に唐辛子中のカプシノイド化合物を抽出分離する方法であって、前記混合抽出溶媒として、水とアセトンの混合モル比が、水/アセトン=95/5〜0.1/99.9の範囲に設定された混合抽出溶媒を用いることを特徴とする。アセトンに代えてエタノールを用いても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、唐辛子からカプシノイド化合物を低コストでかつ効率良く抽出する抽出分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
唐辛子には辛味成分であるカプシノイド化合物(カプサイシン等)が含まれている。近年、カプシノイド化合物は抗酸化性、抗菌性等の様々な機能を有していることが報告されている。具体的には、例えばカプシノイド化合物を摂取することで体脂肪燃焼による肥満防止効果や抗酸化作用による老化防止の効果が得られることが知られている。このようにカプシノイド化合物は様々な効用を有して有用であることから、唐辛子から抽出されたカプシノイド化合物の需要は近年急激に増大している。
【0003】
従来、唐辛子からカプシノイド化合物を抽出する方法としては、唐辛子粉砕物と、水、アセトン、アルコール類、ヘキサン、エーテル及びジオキサンからなる群より選ばれる抽出溶媒とを接触させることによって、抽出溶媒中に唐辛子の中のカプシノイド化合物を抽出する方法が公知である(特許文献1参照)。この方法により唐辛子からカプシノイド化合物を容易に抽出分離することができる。
【特許文献1】特開2004−66227号公報(請求項12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、唐辛子からカプシノイド化合物を抽出するに際しては、特に工業的な見地に立つと(即ち量産化を図るためには)、低コストで抽出分離できること及び抽出効率が高いことが強く求められる。上記特許文献1に記載の技術では、必ずしもこのような要求(低コストかつ高抽出効率)に十分に応えられるものではなかった。
【0005】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、唐辛子からカプシノイド化合物を低コストでかつ高効率で抽出できる抽出分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0007】
[1]唐辛子粉砕物と、水及びアセトンを含有してなる混合抽出溶媒とを接触させることによって、該混合抽出溶媒中に唐辛子中のカプシノイド化合物を抽出分離する方法であって、前記混合抽出溶媒として、水とアセトンの混合モル比が、水/アセトン=95/5〜0.1/99.9の範囲に設定された混合抽出溶媒を用いることを特徴とする唐辛子からカプシノイド化合物を抽出分離する方法。
【0008】
[2]前記混合抽出溶媒における水とアセトンの混合モル比が、水/アセトン=90/10〜40/60の範囲である前項1に記載の唐辛子からカプシノイド化合物を抽出分離する方法。
【0009】
[3]唐辛子粉砕物10質量部に対して混合抽出溶媒を50〜300質量部混合した液を攪拌することによって唐辛子粉砕物と混合抽出溶媒とを接触させる前項1または2に記載の唐辛子からカプシノイド化合物を抽出分離する方法。
【0010】
[4]唐辛子粉砕物と、水及びエタノールを含有してなる混合抽出溶媒とを接触させることによって、該混合抽出溶媒中に唐辛子中のカプシノイド化合物を抽出分離する方法であって、前記混合抽出溶媒として、水とエタノールの混合モル比が、水/エタノール=95/5〜0.1/99.9の範囲に設定された混合抽出溶媒を用いることを特徴とする唐辛子からカプシノイド化合物を抽出分離する方法。
【0011】
[5]前記混合抽出溶媒における水とエタノールの混合モル比が、水/エタノール=90/10〜50/50の範囲である前項4に記載の唐辛子からカプシノイド化合物を抽出分離する方法。
【0012】
[6]唐辛子粉砕物10質量部に対して混合抽出溶媒を50〜300質量部混合した液を攪拌することによって唐辛子粉砕物と混合抽出溶媒とを接触させる前項4または5に記載の唐辛子からカプシノイド化合物を抽出分離する方法。
【0013】
[7]前項1〜6のいずれか1項に記載の方法によって得られたカプシノイド化合物含有抽出溶媒に溶媒留去操作を行うことによって粘稠液体又は固形状態で回収された唐辛子抽出物。
【0014】
[8]前項7に記載の唐辛子抽出物を含有してなることを特徴とする防カビ剤。
【発明の効果】
【0015】
[1]の発明では、唐辛子からカプシノイド化合物(カプサイシン等)を抽出するに際し、抽出溶媒として、水及びアセトンを含有してなる混合抽出溶媒を用いるから、低コストで且つ高い抽出効率でカプシノイド化合物を抽出することができる。即ち、水及びアセトンを含有してなる混合抽出溶媒を用いることで特異的な抽出挙動が発現して抽出効率を高めることができると共に、非常に安価な水を抽出溶媒として併用することでコストを大きく低減することが可能となる。
【0016】
[2]の発明では、混合抽出溶媒における水とアセトンの混合モル比が、水/アセトン=90/10〜40/60の範囲であるから、コストを十分に低減しつつカプシノイド化合物の抽出効率をより向上させることができる。この混合モル比範囲は、工業化、量産化に最適な範囲である。
【0017】
[3]の発明では、カプシノイド化合物の抽出効率をさらに向上させることができると共に、高い濃度のカプシノイド化合物を含有した抽出溶液を得ることができる。
【0018】
[4]の発明では、唐辛子からカプシノイド化合物(カプサイシン等)を抽出するに際し、抽出溶媒として、水及びエタノールを含有してなる混合抽出溶媒を用いるから、低コストで且つ高い抽出効率でカプシノイド化合物を抽出することができる。即ち、水及びエタノールを含有してなる混合抽出溶媒を用いることで特異的な抽出挙動が発現して抽出効率を高めることができると共に、非常に安価な水を抽出溶媒として併用することでコストを大きく低減することが可能となる。
【0019】
[5]の発明では、混合抽出溶媒における水とエタノールの混合モル比が、水/エタノール=90/10〜50/50の範囲であるから、コストを十分に低減しつつカプシノイド化合物の抽出効率をより向上させることができる。この混合モル比範囲は、工業化、量産化に最適な範囲である。
【0020】
[6]の発明では、カプシノイド化合物の抽出効率をさらに向上させることができると共に、高い濃度のカプシノイド化合物を含有した抽出溶液を得ることができる。
【0021】
[7]の発明の唐辛子抽出物は、上記抽出分離方法によって得られたカプシノイド化合物含有抽出溶媒に溶媒留去操作を行うことによって粘稠液体又は固形状態で回収された唐辛子抽出物であり、この唐辛子抽出物はカプシノイド化合物を高濃度に含有している。
【0022】
[8]の発明は、前記[7]の唐辛子抽出物を含有してなる防カビ剤であり、非常に優れた防カビ効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
第1発明に係る唐辛子からカプシノイド化合物を抽出分離する方法は、唐辛子粉砕物と、水及びアセトンを含有してなる混合抽出溶媒とを接触させることによって、該混合抽出溶媒中に唐辛子中のカプシノイド化合物を抽出分離する方法であり、前記混合抽出溶媒として、水とアセトンの混合モル比が、水/アセトン=95/5〜0.1/99.9の範囲に設定された混合抽出溶媒を用いることを特徴とする。この抽出分離方法によれば、唐辛子からカプシノイド化合物(カプサイシン等)を抽出するに際し、抽出溶媒として、水及びアセトンを含有してなる混合抽出溶媒を用いるから、低コストで且つ高い抽出効率でカプシノイド化合物を抽出することができる。即ち、水及びアセトンを含有してなる混合抽出溶媒を用いることで特異的な抽出挙動が発現して抽出効率を高めることができると共に、非常に安価な水を抽出溶媒として併用することでコストを大きく低減することが可能となる。
【0024】
図1は、水及びアセトンからなる混合抽出溶媒におけるアセトンのモル分率とカプサイシン抽出量との関係を調べたグラフであるが、このグラフから、アセトン(グラフではアセトンのモル分率が1のケースに相当する)はカプサイシンをある程度抽出できるのに対し、水(グラフではアセトンのモル分率が0のケースに相当する)はカプサイシンを殆ど抽出しないことがわかる。このような2つの溶媒(アセトン・水)を混合して混合抽出溶媒とした場合、その混合モル比率を変化させていった時のグラフは一般的には図1の破線のようになると推定される。実際その他の多くの混合溶媒系ではこのようになることが知られている。しかしながら、唐辛子からカプシノイド化合物を溶媒で抽出するに際し、水及びアセトンからなる混合溶媒系では、図1の実線で示すように、一般的な予測曲線(破線)で求められる抽出量よりも格段に多くの量のカプサイシンを抽出できることがわかった。即ち、唐辛子からカプシノイド化合物を溶媒で抽出するに際し、抽出溶媒として、水及びアセトンを含有してなる混合抽出溶媒を用いた場合には図1の実線で示すような特異的な抽出挙動を示して高い抽出効率でカプシノイド化合物を抽出することができるのである。
【0025】
前記混合抽出溶媒における水とアセトンの混合モル比は、水/アセトン=95/5〜0.1/99.9の範囲に設定する。水の混合モル比が上記下限を下回ると実質的にコスト低減にならない。一方、水の混合モル比が上記上限を下回ると抽出効率が大きく低下する。
【0026】
中でも、前記混合抽出溶媒における水とアセトンの混合モル比は、水/アセトン=90/10〜40/60の範囲であるのが好ましい。アセトン60モル部に対して水を40モル部以上含有させることで抽出コストを十分に低減できると共に、アセトン10モル部に対して水を90モル部以下とすることでカプシノイド化合物の抽出効率をより向上させることができる。
【0027】
なお、十分に大きい抽出効率を確保する点を特に重視すれば、前記混合抽出溶媒における水とアセトンの混合モル比は、水/アセトン=87/13〜1/99の範囲に設定するのが好ましい(図1参照)。
【0028】
第1発明では、抽出溶媒として水及びアセトンを含有してなる混合抽出溶媒を用いるが、この発明の効果を阻害しない範囲であれば、水及びアセトン以外のいかなる溶媒を混合使用しても良い。
【0029】
また、第2発明に係る唐辛子からカプシノイド化合物を抽出分離する方法は、唐辛子粉砕物と、水及びエタノールを含有してなる混合抽出溶媒とを接触させることによって、該混合抽出溶媒中に唐辛子中のカプシノイド化合物を抽出分離する方法であり、前記混合抽出溶媒として、水とエタノールの混合モル比が、水/エタノール=95/5〜0.1/99.9の範囲に設定された混合抽出溶媒を用いることを特徴とする。この抽出分離方法によれば、唐辛子からカプシノイド化合物(カプサイシン等)を抽出するに際し、抽出溶媒として、水及びエタノールを含有してなる混合抽出溶媒を用いるから、低コストで且つ高い抽出効率でカプシノイド化合物を抽出することができる。即ち、水及びエタノールを含有してなる混合抽出溶媒を用いることで特異的な抽出挙動が発現して抽出効率を高めることができると共に、非常に安価な水を抽出溶媒として併用することでコストを大きく低減することが可能となる。
【0030】
図2は、水及びエタノールからなる混合抽出溶媒におけるエタノールのモル分率とカプサイシン抽出量との関係を調べたグラフであるが、このグラフから、エタノール(グラフではエタノールのモル分率が1のケースに相当する)はカプサイシンをある程度抽出できるのに対し、水(グラフではアセトンのモル分率が0のケースに相当する)はカプサイシンを殆ど抽出しないことがわかる。このような2つの溶媒(エタノール・水)を混合して混合抽出溶媒とした場合、その混合モル比率を変化させていった時のグラフは一般的には図2の破線のようになると推定される。実際その他の多くの混合溶媒系ではこのようになることが知られている。しかしながら、唐辛子からカプシノイド化合物を溶媒で抽出するに際し、水及びエタノールからなる混合溶媒系では、図2の実線で示すように、一般的な予測曲線(破線)で求められる抽出量よりも格段に多くの量のカプサイシンを抽出できることがわかった。即ち、唐辛子からカプシノイド化合物を溶媒で抽出するに際し、抽出溶媒として、水及びエタノールを含有してなる混合抽出溶媒を用いた場合には図1の実線で示すような特異的な抽出挙動を示して高い抽出効率でカプシノイド化合物を抽出することができるのである。
【0031】
前記混合抽出溶媒における水とエタノールの混合モル比は、水/エタノール=95/5〜0.1/99.9の範囲に設定する。水の混合モル比が上記下限を下回ると実質的にコスト低減にならない。一方、水の混合モル比が上記上限を下回ると抽出効率が大きく低下する。
【0032】
中でも、前記混合抽出溶媒における水とエタノールの混合モル比は、水/エタノール=90/10〜50/50の範囲であるのが好ましい。エタノール50モル部に対して水を50モル部以上含有させることで抽出コストを十分に低減できると共に、エタノール10モル部に対して水を90モル部以下とすることでカプシノイド化合物の抽出効率をより向上させることができる。
【0033】
なお、十分に大きい抽出効率を確保する点を特に重視すれば、前記混合抽出溶媒における水とエタノールの混合モル比は、水/エタノール=86/14〜1/99の範囲に設定するのが好ましい(図2参照)。
【0034】
第2発明では、抽出溶媒として水及びエタノールを含有してなる混合抽出溶媒を用いるが、この発明の効果を阻害しない範囲であれば、水及びエタノール以外のいかなる溶媒を混合使用しても良い。
【0035】
前記第1発明および第2発明のいずれにおいても、前記唐辛子粉砕物と混合抽出溶媒の混合比は、唐辛子粉砕物10質量部に対して混合抽出溶媒を50〜300質量部混合するものとするのが好ましい。混合抽出溶媒を50質量部以上混合することでカプシノイド化合物の抽出効率をさらに向上させることができると共に、300質量部以下とすることで、高い濃度のカプシノイド化合物を含有した抽出溶液を得ることができる。
【0036】
また、唐辛子粉砕物と混合抽出溶媒との接触は、特に限定されるものではないが、攪拌により行うのが好ましい。この攪拌操作としては、特に限定されないが、例えば攪拌翼による攪拌、振とう機による振とう攪拌、超音波による攪拌などが挙げられる。
【0037】
また、前記抽出操作を行う際の混合抽出溶媒の温度は、抽出効率への影響はあまり無いものの、30〜60℃に設定するのが好ましい。
【0038】
前記抽出分離操作を行うための抽出分離装置としては、特に限定されるものではないが、例えば特開2004−66227号公報に記載の装置を挙げることができる。勿論、一般的なミキサー・セトラー装置を用いても良いし、その他の設備を用いても良く、特に限定されない。
【0039】
なお、上記抽出分離方法によって抽出され得るカプシノイド化合物としては、特に限定されるものではないが、例えばカプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン等が挙げられる。
【0040】
しかして、上記第1発明または第2発明のいずれかの抽出分離方法によって得られたカプシノイド化合物含有抽出溶媒から溶媒を留去することによって唐辛子抽出物(カプシノイド化合物含有)を回収する。この唐辛子抽出物は、粘稠液体又は固形状態(粉体、粒体等)で回収される。このような溶媒蒸発法により回収するのが一般的であるが、特にこの手法に限定されるものではなく、例えば吸着剤(多孔性樹脂等)を用いる吸着法により唐辛子抽出物の回収を行うものとしても良い。また、これら唐辛子抽出物から、各個別成分(カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン等)に単離して利用するものとしても良い。
【0041】
前記唐辛子抽出物は、様々な用途に利用することが可能であり、例えば防カビ剤、防虫剤、抗菌剤等として好適に用いられる。
【0042】
なお、前記第1発明および第2発明のいずれにおいても、唐辛子粉砕物と混合抽出溶媒とを接触させる前に、予め唐辛子粉砕物と水とを接触せしめて唐辛子中の水溶性物質を溶解除去しておいても良い。こうすることによって、カプシノイド化合物含有抽出溶媒や唐辛子抽出物における水溶性物質の含有比率を大きく低減することができ、その分カプシノイド化合物含有抽出溶媒や唐辛子抽出物におけるカプシノイド化合物含有比率を顕著に増大させることができる。
【実施例】
【0043】
次に、この発明の具体的実施例について説明する。
【0044】
<実施例1〜9、比較例1、2>
ビーカー内に入れた唐辛子粉砕物(粉末状)10gに対して、表1に示す組成からなる抽出溶媒100gを加えた後、恒温横型振とう機で温度330K、130rpmの条件で30分間振とう攪拌した。次いで、定性濾紙No.131を使用して減圧濾過を行った後、濾液5mLを採取して天日で十分に乾燥させた。乾燥物(抽出物)を溶離液(メタノール:純水=8体積部:2体積部)10mLに溶解したものを高速液体クロマトグラフを用いて定量することによって、抽出溶媒100gによって抽出されたカプサイシン量(カプサイシン抽出量)を算出した。これらの結果を表1に示すと共に、これら11点の結果をグラフにプロットして纏めたものを図1に示す。
【0045】
なお、天日で乾燥させた乾燥物を液体クロマトグラフ−質量分析装置(LC−MS)で分析した結果、抽出物は少なくともカプサイシン・ジヒドロカプサイシン・ノルジヒドロカプサイシン・ホモカプサイシン・ホモジヒドロカプサイシンこれら5種類のカプシノイド化合物を含有していることを確認できた。
【0046】
【表1】

【0047】
<実施例10〜18、比較例3、4>
ビーカー内に入れた唐辛子粉砕物(粉末状)10gに対して、表2に示す組成からなる抽出溶媒100gを加えた後、恒温横型振とう機で温度330K、130rpmの条件で30分間振とう攪拌した。次いで、定性濾紙No.131を使用して減圧濾過を行った後、濾液5mLを採取して天日で十分に乾燥させた。乾燥物(抽出物)を溶離液(メタノール:純水=8体積部:2体積部)10mLに溶解したものを高速液体クロマトグラフを用いて定量することによって、抽出溶媒100gによって抽出されたカプサイシン量(カプサイシン抽出量)を算出した。これらの結果を表2に示すと共に、これら11点の結果をグラフにプロットして纏めたものを図2に示す。
【0048】
なお、天日で乾燥させた乾燥物を液体クロマトグラフ−質量分析装置(LC−MS)で分析した結果、抽出物は少なくともカプサイシン・ジヒドロカプサイシン・ノルジヒドロカプサイシン・ホモカプサイシン・ホモジヒドロカプサイシンこれら5種類のカプシノイド化合物を含有していることを確認できた。
【0049】
【表2】

【0050】
前記カプサイシンの定量に用いた高速液体クロマトグラフの条件は次のとおりである。GLサイエンス(株)製、ポンプ:PU610−1X、検出器:紫外可視検出器UV620、カラム:Inertsil ODS−3 4.6×250nm。
【0051】
表から明らかなように、この発明の実施例1〜18の抽出分離方法によれば、唐辛子からカプシノイド化合物を低コストでかつ高効率で抽出することができた。
【0052】
これに対し、水単独を抽出溶媒として用いた比較例1、3では抽出効率が低かった。また、アセトン単独を抽出溶媒として用いた比較例2では抽出効率は問題ないものの抽出コストが高いという問題を解消することはできない。また、エタノール単独を抽出溶媒として用いた比較例4では抽出効率は問題ないものの抽出コストが高いという問題を解消することはできない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】混合抽出溶媒におけるアセトンのモル分率とカプサイシン抽出量との関係を示すグラフである。
【図2】混合抽出溶媒におけるエタノールのモル分率とカプサイシン抽出量との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
唐辛子粉砕物と、水及びアセトンを含有してなる混合抽出溶媒とを接触させることによって、該混合抽出溶媒中に唐辛子中のカプシノイド化合物を抽出分離する方法であって、
前記混合抽出溶媒として、水とアセトンの混合モル比が、水/アセトン=95/5〜0.1/99.9の範囲に設定された混合抽出溶媒を用いることを特徴とする唐辛子からカプシノイド化合物を抽出分離する方法。
【請求項2】
前記混合抽出溶媒における水とアセトンの混合モル比が、水/アセトン=90/10〜40/60の範囲である請求項1に記載の唐辛子からカプシノイド化合物を抽出分離する方法。
【請求項3】
唐辛子粉砕物10質量部に対して混合抽出溶媒を50〜300質量部混合した液を攪拌することによって唐辛子粉砕物と混合抽出溶媒とを接触させる請求項1または2に記載の唐辛子からカプシノイド化合物を抽出分離する方法。
【請求項4】
唐辛子粉砕物と、水及びエタノールを含有してなる混合抽出溶媒とを接触させることによって、該混合抽出溶媒中に唐辛子中のカプシノイド化合物を抽出分離する方法であって、
前記混合抽出溶媒として、水とエタノールの混合モル比が、水/エタノール=95/5〜0.1/99.9の範囲に設定された混合抽出溶媒を用いることを特徴とする唐辛子からカプシノイド化合物を抽出分離する方法。
【請求項5】
前記混合抽出溶媒における水とエタノールの混合モル比が、水/エタノール=90/10〜50/50の範囲である請求項4に記載の唐辛子からカプシノイド化合物を抽出分離する方法。
【請求項6】
唐辛子粉砕物10質量部に対して混合抽出溶媒を50〜300質量部混合した液を攪拌することによって唐辛子粉砕物と混合抽出溶媒とを接触させる請求項4または5に記載の唐辛子からカプシノイド化合物を抽出分離する方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法によって得られたカプシノイド化合物含有抽出溶媒に溶媒留去操作を行うことによって粘稠液体又は固形状態で回収された唐辛子抽出物。
【請求項8】
請求項7に記載の唐辛子抽出物を含有してなることを特徴とする防カビ剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−199604(P2006−199604A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11093(P2005−11093)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(597124349)
【出願人】(000226091)日栄化工株式会社 (17)
【Fターム(参考)】