説明

唾液の採取および回収器具

本発明は、唾液中のグルコース定量をはじめとする唾液検査を目的とした唾液の採取の際に、口腔内の殺菌、唾液分泌促進、微量採取を同時に実施する方法を特徴とし、更には唾液中粘性成分を除去して唾液漿液成分を回収する安価な部材を用いた唾液の採取および回収用シリンジ型器具ならびに該器具を用いた唾液採取および唾液漿液成分回収方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
発明の分野
本発明は、耳下腺、顎下腺、舌下腺等の各唾液腺由来の唾液を検体とした唾液検査への使用を目的に、唾液の採取および回収までも実施可能な使い捨て用簡易器具ならびにそれらを用いた唾液の採取および回収方法に関する。
発明の背景
これまでに本発明者らは、唾液中グルコースの定量のための口腔内分泌液の採取方法およびフィルム型採取兼回収器具(例えばWO02/086453(2002))を創製し、細菌によるグルコースの分解を抑制する口腔内細菌の殺菌効果(WO02/31105(2002))を明らかにし、唾液の簡便な採取および回収方法、更に診断材料としての唾液の有用性を明らかにしてきた。
現在、唾液検査(Annals of the New York Academy of Sciences,Vol.694,p.216(1993))には、唾液採取器具「OraSure」(Epitope,Inc.製)(例えばWO97/24979(1997),WO96/04850(1996),WO95/27205(1995))、唾液採取兼検査器具「OraQuick」(Epitope,Inc.製)(例えばWO99/50656(1999))、唾液採取器具「Omnisal(Saliva・Sampler)」(Saliva Diagnostic Systems,Inc.製)(例えばWO95/02996(1995),U.S.Patent No.5,260,031(1993))、唾液採取器具「Salivette」(Sarstedt製)(例えばU.S.Patent No.4,774,962(1988))や唾液採取器具「ORALscreen collector」(Avitar,Inc.製)(例えばU.S.Patent No.6,200,275(2001))を用いてHIVをはじめ肝炎ウイルス、梅毒、風疹、麻疹など各種スクリーニング検査やテオフィリン、フェニトインなどの治療薬およびニコチン、コカインなどの薬剤、薬物モニタリング検査が行われている(日本臨床検査自動化学会誌,Vol.19,p.265(1994))。
ここで前記の唾液採取器具に関して、唾液吸収パッドの体積は、全て数百mm以上を有しており、唾液採取時間は数分も要する。なお、採取時には唾液の分泌促進の操作は行われていない。また、唾液採取後に検体中に存在する口腔内細菌の繁殖を防ぐためにアジ化ナトリウムが混合された保存液に含浸するものもある(唾液採取器具「Omnisal(Saliva・Sampler)」)が、全ての器具は採取前および採取中には殺菌操作は一切行われていない。何よりも検査項目には、グルコースの定量はない。
次に、山口らの唾液中グルコース検査に関して、洗浄液を用いた口腔内の洗浄とその除去(例えば特開平9−72900号公報(1997))のための、唾液採取前の洗浄液の散布およびその除去に関する方法や例が記されているが、唾液分泌促進方法および口腔内殺菌方法に関する記述は見られない。さらに、唾液採取部一体化センサもしくは比色プレート(例えば特開平12−9728号公報(2000))も挙げられ、唾液分泌促進として洗浄液には香りの付与、唾液採取部には刺激性溶液の塗布が記されており、各種採取器具形状と唾液腺の洗浄も述べられてはいるが殺菌に関する記述は一切見られない。
続いて、殺菌剤含有洗口液が液体歯磨き(例えばWO91/18585(1991))として各種開発、販売されているが、齲蝕を防止する目的であり、呈味物質および香料は唾液分泌促進が目的でもない。
近年、非侵襲検査である唾液検査の拡大ならびにバイオセンサなどによるPOCT(point−of−care testing)機器が種々開発され、検体の採取および回収方法について、簡便で迅速な採取の後に即座に回収可能な簡易器具の必要性が強く望まれている。
以上、唾液を採取する際、少なくとも唾液中のグルコースを定量する際に、口腔内細菌の殺菌処理を施す方法を提案するものは見られない。また、唾液の分泌を促進しながら口腔内細菌を殺菌と同時に採取する方法および採取後に回収までも行える小型簡易器具の提案も一切ない。特に、POCT用途の極短時間に微量採取を実現し、唾液内在性の測定阻害物質を特異的に分解しながら即座に回収する簡易器具は一切見られない。
今回、本発明者らが以前提供したフィルム型採取兼回収器具(例えばWO02/086453(2002))に比べて、より短時間に微量採取と迅速回収ならびに阻害物質の分解をも可能とする方法および新規形状の器具を提供する。
発明の要旨
本発明は前記の課題を解決するために、唾液中のグルコースの定量をはじめとする唾液検査への使用を目的に、口腔内に存在する細菌を殺菌し、唾液の分泌を促進しながら迅速に微量採取し、更に唾液中の内在性阻害物質の分解をしながら粘性成分を除去して漿液性唾液の回収までを実施可能とする使い捨て用小型簡易器具および該器具を使用した漿液性唾液の回収方法を提供するものである。
発明の説明
本発明の特徴は、第一に、唾液中グルコース定量の際には口腔内に多種、大量に存在する、グルコースを栄養源とする細菌を、口腔内殺菌洗浄および、口腔内殺菌除水の処理を施すことにより口腔内細菌を殺菌することである。その際、殺菌成分および唾液分泌促進成分を含有する洗口液と、殺菌成分および唾液分泌促進成分を含有する不織布からなる舌下余剰水分吸収体の双方もしくは後者のみを用いた前処理をする。
第二に、唾液分泌促進として、味覚および嗅覚を刺激するための、甘味料、酸味料および香料を使用し、殺菌および唾液分泌促進を同時に実施する。
第三に、迅速操作を実現するため唾液採取時間の短縮を図る唾液吸収体の小型化、具体的には殺菌成分および唾液分泌促進成分を含有する微量採取器具と、簡便操作で阻害物質の分解ならびに唾液漿液成分の回収までも行える安価な部材を用いたシリンジ型簡易器具を提供し、殺菌、唾液分泌促進による採取から、阻害物質の分解、粘性成分を除去した回収までを極めて迅速に簡便に実現するものである。
なお、口腔内に存在する齲蝕細菌であるストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)群等に対し、四級アンモニウム塩系殺菌成分の殺菌効果を、グルコースの経時変化から見出したので(例えばWO02/31105(2002))、前記殺菌成分に加え抗菌成分も組み合わせ、殺菌および残存菌の増殖も抑制する抗菌機能も付加した前処理器具および唾液採取器具を提供する。
ここで唾液分泌の促進を目的に、前記殺菌成分に加えグルコース定量をはじめとする唾液検査に阻害を与えない適当な甘味料、酸味料および香料の成分を含有した前処理用の洗口液および器具、唾液採取器具も提供する。
本発明の唾液の採取および回収器具は、綿棒型採取器具とシリンジ型回収器具からなる。ピストンに相当する綿棒型採取器具の一端には、微量採取用の円錐形状の唾液吸収体を有し、円錐底辺部にガスケットを配置し、他端にはシリンジ型回収器具に挿入する際と圧搾する際の押圧用パッドを設けた。
シリンジ型回収器具は、一端には唾液吸収体を挿入しやすいように開口部を広げ、押圧操作の際に指を掛けやすいようにもし、他端には唾液吸収体圧搾部と更に先端には唾液漿液成分を回収する回収孔を設けた。なお、回収孔内面には唾液吸収体と同一成分の微量片を配置させフィルター層も有する。
なお、唾液検査に阻害を与える唾液内在性阻害物質の分解方法として、分解用の適当な酵素、試薬成分を、直接口腔内には使用しないシリンジ型回収器具の内部壁面および、もしくはフィルター層に固定化、含有させることで唾液漿液成分を回収した際に分解が完了するようにした。
ここで、唾液吸収体ならびにシリンジ型回収器具の圧搾部を、円錐状にすることで押圧した際のデッドスペースを円柱等の他形状に比べて極力廃することが可能となり無駄のない回収が実現された。
更に迅速および微量採取を実現するために、唾液吸収体の体積を150mm以下とすることが望ましい。
なお、他のシリンジ型唾液採取器具(例えばU.S.Patent No.5,830,410(1998))について、該唾液吸収パッドはおよそ3,000mmの体積を有し、微量採取用途ではない。また、前記パッド中に抗菌用途として3.5wt.%塩化ナトリウム、唾液分泌促進として0.3wt.%クエン酸が含有されているが、我々の求める殺菌効果および唾液分泌促進は得られなかった。従来方法の検査項目には、グルコースの定量はない。
以上、本発明の唾液の採取および回収用の殺菌成分および唾液分泌促進成分含有シリンジ型簡易器具は、阻害物質を分解した唾液漿液成分回収までの簡便な操作性を実現した。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の実施例1における唾液の採取器具および唾液漿液成分回収器具を示す図面であり、
図1(a)は唾液採取器具の縦断面図であり、
図1(b)は唾液漿液成分回収器具の縦断面図であり、
図1(c)は唾液漿液成分回収器具に唾液採取器具を挿入した縦断面図であり、
図2は唾液の採取および唾液漿液成分回収方法を示す概略図である。
前記図中の符号は次のように説明される。
1は唾液採取器具;2は唾液吸収体;3はピストン棒;4はガスケット;5は押圧パッド;6は唾液漿液成分回収器具;7は回収孔;8は唾液吸収体圧搾部;9は唾液吸収体挿入受け口兼指掛け;10は唾液分泌成分含有殺菌洗口液;11は殺菌成分および、もしくは唾液分泌促進成分含有舌下余剰水分吸収体;12は唾液漿液成分である。
好適具体例の説明
本発明に用いられる殺菌成分、抗菌成分としては、人体への影響がなく口腔内での使用が可能であり、グルコースを分解する口腔内細菌を殺菌し、グルコース定量をはじめとする唾液検査の際に阻害しなければ特に限定はない。例えば、殺菌成分としては、四級アンモニウム塩系であれば塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等、抗菌成分としては、キチンキトサンが挙げられ、前記の単一成分もしくは複数成分を使用できる。
唾液分泌促進成分としては、食品添加物であり、グルコース定量をはじめとする唾液検査の際に阻害しなければ特に限定はない。例えば、甘味料としてはグルコース以外でアスパルテーム・L−フェニルアラニン化合物、キシリトール、ソルビトールが、酸味料としては、クエン酸、グルコン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸が、香料としては、1−メントール、果実臭成分が挙げられ、前記各添加物の単一成分もしくは複数成分を使用できる。
水溶性高分子としては、食品添加物であり、グルコース定量をはじめとする唾液検査の際に阻害しなければ特に限定はない。例えば、カルボキシメチルセルロース、微粒二酸化ケイ素の単一成分もしくは複数成分を使用できる。
綿棒型唾液採取器具に関して以下に記す。
唾液吸収体は、人体への影響がなく口腔内での使用が可能であり、また殺菌成分および抗菌成分、唾液分泌促進成分の含有が可能であり、採取した唾液との非特異的な意図しない吸着や唾液への汚染がなく、更に唾液を吸収する材質であり、使用中に破損しないような機械的強度を備えていれば特に限定はない。例えば、コットン、セルロース、ポリウレタン、ポリエステル、レーヨン、不織布、前記混合繊維等が使用できる。
ピストン棒、ガスケット、押圧パッドは、人体への影響がなく、口腔内での使用が可能であり、また殺菌成分および抗菌成分、唾液分泌促進成分の練り混みや被覆等も可能であり、採取した口腔内分泌液との非特異的な意図しない吸着や口腔内分泌液への汚染がなく、更に柔軟性および耐水性を有し加工性も良く使用中に破損しないような機械的強度を備えていれば特に制限はない。例えば、紙、シリコン、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレン等が挙げられ、ピストン棒を紙軸としガスケットをシリコンチューブに、押圧用パッドをポリプロピレンにすることや、3点とも紙製とすることで安価にでき、更に唾液吸収体との密着性や加工性の良さから使用できる。
唾液漿液成分回収器具は、人体への影響がなく、また殺菌成分および抗菌成分の練り混みや被覆等も可能であり、採取した口腔内分泌液との非特異的な意図しない吸着がなく、更に柔軟性および耐水性を有し加工性も良く使用中に破損しないような機械的強度を備えていれば特に制限はない。例えば、シリコン、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
唾液漿液成分回収器具の先端に位置する回収孔は、唾液吸収体圧搾部より連なり、孔途中に唾液吸収体と同一成分の微量片をフィルター層として有し、回収孔に向け押圧することで回収孔より唾液漿液成分を回収する構造および機能を実現し、回収検体の点着等を効率よく実施できる形状であれば特に限定はない。
唾液吸収体挿入受け口兼指掛けは、唾液吸収体の挿入が容易に誘導できるような形状を有し、唾液吸収体を圧搾するために押圧する際、指を掛けられる形状と破損および変形しないような機械的強度を備えていれば特に制限はない。
唾液内在性阻害物質の分解は、唾液漿液成分回収器具の内部壁面および、もしくはフィルター層に分解物質を固定化、含有させることで、唾液漿液成分を回収した際には分解が完了する機能が実現されれば特に限定はない。例えば、アスコルビン酸の分解物質としてアスコルビン酸オキシダーゼ、尿酸の分解物質としてウリカーゼ等が挙げられ、唾液の検査項目に応じて種々の分解物質を使用できる。なお、唾液検査項目が尿酸の場合、ウリカーゼは使用できない。
【実施例】
以下に本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 唾液採取器具および唾液漿液成分回収器具
本実施例における唾液の採取器具および唾液漿液成分回収器具の一例は図1に示される。
綿棒型唾液採取器具1は抗菌成分のキチンキトサンを表面に有するコットンからなる唾液吸収体2と紙軸であるピストン棒3に同様の紙からなるガスケット4および押圧パッド5を形成した。なお唾液吸収体は、ここでは65mmの体積となるように円錐状に形成した。
シリンジ型唾液漿液成分回収器具6はポリエチレンより成形し、圧搾部8の内部体積を20mmの円錐状として、圧搾部8から回収孔7の途中に1mmの前記コットンを配置しフィルターとした。なお、回収孔径を1mm以下として、唾液漿液成分回収時のコットンの脱落を防止した。また、唾液吸収体挿入受け口兼指掛け9は、半径5mmのベルボトム状とした。
実施例2 唾液の採取および回収キット
本実施例における唾液の採取および回収キットおよび使用方法の一例は図2に示される。
殺菌成分である0.05wt.%塩化セチルピリジニウム(武田薬品工業(株)製)と、唾液分泌促進成分である甘味料、酸味料および香料(ポーラフーズ(株)製)を調合し甘酸っぱさを再現した溶液を唾液分泌成分含有殺菌洗口液10とした。
前記調合溶液に更にカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)製)を添加した溶液に、抗菌成分であるキチンキトサンを含む不織布(80g/m)(オーミケンシ(株)製)を噴霧し乾燥させたものを舌下余剰水分吸収体11とした。
前記調合液を唾液吸収体2に噴霧し乾燥させたものを唾液採取器具1とした。
以上3品からなるキットの使用方法は、まず唾液分泌成分含有殺菌洗口液10を特に舌下を中心にスプレーした。洗口は、うがい、滴下等特に限定されない。次に、舌下余剰水分吸収体11を舌下および口腔底の間に配置したところ、含有成分が再溶解されて味を呈し、舌下の水分が吸収、除水された。
前記の前処理後、速やかに唾液採取器具1を舌下および口腔底の間に配置したところ、味および香りにより良好な唾液分泌が確認された。その後、膨潤した唾液吸収体2を唾液漿液成分回収器具6により圧搾することで、回収孔7よりムチンと思われる粘性物質が除去された漿液成分唾液12が得られた。
ここで、口腔乾燥症等の疾患が見られない被験者では、唾液採取器具1の30秒間の配置の後、圧搾したところ漿液成分唾液12が25マイクロリットル得られた。
また、唾液内在性阻害物質の分解として、アスコルビン酸を対象にアスコルビン酸オキシダーゼ(東洋紡(株))溶液を唾液漿液成分回収器具6の内部壁面および回収孔7の内面に配置するフィルターに噴霧し乾燥させた。続いて、アスコルビン酸を添加した唾液に唾液吸収体2を湿潤させ、唾液漿液成分回収器具6により圧搾し漿液成分唾液12を回収した。その結果、再溶解されたアスコルビン酸オキシダーゼによるアスコルビン酸の分解が認められた。同様に、尿酸を対象にウリカーゼ(東洋紡(株))を適用した結果、尿酸の分解も認められた。
なお、前記の3品によるキットの他、前記舌下余剰水分吸収体11および唾液採取器具1、唾液漿液成分回収器具6の2品によるキット、もしくは前処理品を除いた唾液採取器具1、唾液漿液成分回収器具6のみのキットも提供する。
前記実施例では、唾液の採取および回収用簡易器具に関して特定の形状を図示したが本発明はこれらに限定されるものではない。
また、併用する唾液分泌成分含有殺菌洗口液10および舌下余剰水分吸収体11に関しても前記実施例に限定されるものではない。

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主に舌下腺および顎下腺より分泌される唾液を採取し唾液中の粘性成分を除去して漿液性の唾液を回収するための唾液採取および唾液漿液成分回収器具であって、綿棒型採取器具およびシリンジ型回収器具から構成され、該綿棒型採取器具の一端には少なくとも殺菌成分および、もしくは抗菌成分と、唾液分泌促進成分の双方もしくは前者を含有する円錐型もしくは半球型の柔軟な唾液吸収体を有し、該円錐もしくは該半球の底辺部分にはシリンジ型回収器具の内径に一致するガスケットを有しており、該シリンジ型回収器具の一端は唾液吸収体が挿入しやすいように広く開口された受け口を有し、シリンジ型回収器具の他端にはフィルター機能を有する唾液の回収孔ならびに唾液吸収体に比べ内部体積が一回り小さい円錐もしくは半球形状の吸収体圧搾部を有して、シリンジ型回収器具の内面には唾液内在性阻害物質を分解する物質を有する、唾液採取および唾液漿液成分回収器具。
【請求項2】
前記殺菌成分および抗菌成分は、少なくともグルコースを分解する口腔内細菌を殺菌および抗菌する機能を有し、単一もしくは複数成分からなり、殺菌成分は塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、または塩化ベンゼトニウムであり、および抗菌成分はキチンキトサンである請求項1に記載の唾液採取および唾液漿液成分回収器具。
【請求項3】
前記唾液分泌促進成分は、回収唾液の測定を阻害しない甘味料、酸味料、香料の少なくとも3種である請求項1または2に記載の唾液採取および唾液漿液成分回収器具。
【請求項4】
前記唾液吸収体は、コットン、セルロース、ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル、レーヨンの単一もしくは複数成分からなり、唾液を速やかに吸収し更に唾液中粘性成分を該吸収体の繊維間に捕捉する機能を有する請求項1ないし3のいずれかに記載の唾液採取および唾液漿液成分回収器具。
【請求項5】
前記回収孔は、少なくとも単一もしくは複数の孔からなり、該回収孔の出口に向かい次第に細くなる孔の途中に単一もしくは複数成分の前記唾液吸収体を微量配置することでフィルター機能を有する請求項1ないし4のいずれかに記載の唾液採取および唾液漿液成分回収器具。
【請求項6】
前記唾液内在性阻害物質の分解物質は、前記シリンジ型回収器具の内部壁面および、もしくは前記フィルターに固定化、含有し、唾液漿液成分を回収した際には測定を阻害する唾液内在性物質を特異的に分解する機能を有する請求項1ないし5のいずれかに記載の唾液採取および唾液漿液成分回収器具。
【請求項7】
前記唾液吸収体の体積が150mm以下である、請求項1ないし6のいずれかに記載の唾液採取および唾液漿液成分回収器具。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の唾液採取および唾液漿液成分回収器具、少なくとも前記殺菌成分および前記唾液分泌促進成分を含有する洗口液、および少なくとも唾液分泌促進成分および水溶性高分子を含有する不織布である舌下の余剰水分吸収体を含む唾液採取および唾液漿液成分回収キット。
【請求項9】
少なくとも前記殺菌成分、前記唾液分泌促進成分および水溶性高分子を含有する不織布である舌下の余剰水分吸収体および請求項1ないし7のいずれかに記載の唾液採取および唾液漿液成分回収器具からなる唾液採取および唾液漿液成分回収キット。
【請求項10】
前記水溶性高分子は、余剰水分吸収体への含有物質の再溶解性を向上させ、柔軟な不織布に適度な強度を付与する機能を有する請求項8または9に記載の唾液採取および唾液漿液成分回収キット。
【請求項11】
前記請求項1から10のいずれかに記載の器具もしくはキットを用いた、前記洗口液による洗口、前記余剰水分吸収体による舌下の除水、唾液の採取および唾液漿液成分の回収の3段階の操作、もしくは前記余剰水分吸収体による舌下の除水、唾液の採取および唾液の漿液成分の回収の2段階の操作、もしくは唾液の採取および唾液漿液成分の回収の1段階の操作を実施する殺菌および唾液分泌促進を行いながらの唾液採取および唾液漿液成分回収方法。

【国際公開番号】WO2004/046693
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【発行日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553126(P2004−553126)
【国際出願番号】PCT/JP2002/012167
【国際出願日】平成14年11月21日(2002.11.21)
【出願人】(591061851)株式会社札幌イムノ・ダイアグノスティック・ラボラトリー (5)
【Fターム(参考)】