説明

唾液検査器具

【課題】採取から検査まで連続して行うことができ、しかも、口腔内壁が検査薬等と接触しにくい唾液検査器具を提供する。
【解決手段】唾液を吸収する前段吸収体31、及び、前段吸収体31に接続され唾液検査用の試薬を含む検査用吸収体32を有する吸収体構造体30と、吸収体構造体30を収容する容器10と、を備え、容器10は、前段吸収体31と対向する部分に貫通孔14を有する唾液検査器具100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唾液検査器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、唾液中に含まれる虫歯菌の量等を検査することにより、虫歯に対する抵抗力等を知ることができることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、このような検査のために種々の唾液の採取器具が知られている(例えば、特許文献1〜4等参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−271569号公報
【特許文献2】米国特許4418702号明細書
【特許文献3】国際公開WO02/08653号パンフレット
【特許文献4】国際公開WO2004/046693号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の唾液採取器具では、採取後に採取器具を検査装置に運搬する等の作業が必要であり簡便でなかった。また、唾液を採取する場合には、通常唾液採取器具を口腔内に入れて唾液を採取するが、口腔内壁(舌など)が検査薬等と接触することは好ましくない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、採取から検査まで連続して行うことができ、しかも、口腔内壁が検査薬等と接触しにくい唾液検査器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る唾液検査器具は、唾液を吸収する前段吸収体、及び、上記前段吸収体に接続され唾液検査用の試薬を含む検査用吸収体を有する吸収体構造体と、上記吸収体構造体を収容する容器と、を備える。そして、上記容器は、上記前段吸収体と対向する部分に貫通孔を有する。
【0008】
本発明によれば、貫通孔を介して唾液を前段吸収体に吸収させると、唾液がこの前段吸収体に接続された検査用吸収体に到達し、検査用吸収体により唾液の検査を行なうことができる。これにより、採取後の唾液を検査装置等に移すことなくこの唾液検査器具単体で容易に唾液の採取から検査までが行なえる。また、貫通孔が前段吸収体と対向する面に設けられているので、被験者の唾液を採取する際に口腔内壁(舌など)が検査用吸収体に直接触れることを抑制でき、被験者が検査用吸収体に含まれる検査薬等を誤飲する可能性が少ない。また、この前段吸収体を、唾液における夾雑物を除去するフィルタとして用いることも可能である。
【0009】
ここで、貫通孔は、最狭部の直径が0.5〜5.0mmであり、複数設けられていることが好ましい。
【0010】
これによれば、唾液の採取時に口腔内壁(舌など)が前段吸収体にも触れにくくなり、かつ、十分な唾液の採取が可能であり好ましい。
【0011】
また、貫通孔は、前段吸収体に向かうほど内径が小さくなることが好ましい。
【0012】
これにより、唾液の吸い込みを維持しつつ、舌と前段吸収体との接触を抑制できる。
【0013】
また、容器における貫通孔を形成する縁部分の裏面が前段吸収体と接触していることが好ましい。
【0014】
これにより、前段吸収体による迅速な唾液の吸収が可能となる。
【0015】
また、容器における貫通孔を形成する縁部分の裏面には突起が設けられこの突起は前段吸収体を貫通して容器の底部と接触していることが好ましい。
【0016】
これにより、前段吸収体の高さが維持され、容器を歯でくわえた場合等でも唾液の吸収しやすさ、流れやすさを維持しやすい。
【0017】
また、吸収体構造体は、さらに、検査用吸収体の後段に接続された後段吸収体を有することが好ましい。
【0018】
これにより、唾液を大量に検査用吸収体に供給することができ、検出感度が向上する。また、大量に唾液が供給された場合でも、唾液の逆流も抑制できる。
【0019】
また、検査用吸収体は、分析対象物と特異的に結合しかつ標識された標識済分子認識素子を溶出する第一検査用吸収体、及び、前記第一検査用吸収体の後段に接続され、前記分析対象物及び/又は前記標識済分子認識素子と特異的に結合する分子認識素子が固定された第二検査用吸収体を有する、請求項1〜6の何れか記載の唾液検査器具。
【0020】
これによれば、供給された唾液中の特定の菌が第一にて標識済分子認識素子と結合して複合体を形成し、この複合体が第二検査用吸収体において分子認識素子により固定化され濃縮される。したがって、第二検査用吸収体における標識の濃縮状況(例えば、色等)に応じて、特定の菌の有無や濃度の判別が容易に可能となる。
【0021】
また、検査用吸収体は、前段吸収体に接続された、pH指示薬を含浸する第三検査用吸収体を有することが好ましい。
【0022】
これにより、pHの測定が可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、採取から検査まで連続して行うことができ、しかも、口腔内壁が検査薬等と接触しにくい唾液検査器具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態に係る唾液検査器具の斜視図である。
【図2】図1の一部破断、分解斜視図である。
【図3】図1のIII−III線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0026】
(唾液検査器具)
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る唾液検査器具100は、主として、吸収体構造体30、及び、吸収体構造体30を収容する容器10を主として備える。
【0027】
(吸収体構造体)
吸収体構造体30は、図2に示すように、容器10の長手方向の一旦側から他端側に向かって(Y方向に向かって)、順に、前段吸収体31、検査用吸収体32、後段吸収体36、水検出部材37を備える。
【0028】
前段吸収体31の材料は、唾液を吸収可能であるものであれば特に限定されない。前段吸収体31としては、蛋白質成分を含まない多孔性材料を使用することが好ましく、特に、シート状のものが好ましい。多孔性の形態としては、繊維の集合体、発泡体、ゲル状等のものが挙げられる。具体的には、ろ紙等の紙、ゴムや樹脂の発泡体(スポンジ)、織布、不織布、編物、吸水性高分子等が挙げられる。
【0029】
このような吸収体を形成するための材料としては、特に限定されないが、たとえば綿、麻、セルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、ロックウール、ガラス繊維、シリカ繊維、カーボン繊維、ボロン繊維、ポリアミド、アラミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、レーヨン等の再生セルロース、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフロライド、およびポリオレフィン、吸水性ポリマーなどが挙げられる。
【0030】
前段吸収体の厚みも特に限定されないが、好ましいのは0.05〜5.0mmである。前段吸収体のポアサイズも特に限定されないが、粘性物質、粘膜細胞、たんぱく質等の唾液に含まれる夾雑物を除去するため、10〜200μmとすることが好ましい。
【0031】
吸収体は一種類のみでも使用することができるが、数種類を複合させて使用することもでき、その実施形態は特に制限されない。吸収体はそのままでも使用することができるが、基材としての非吸収体に接着させて使用することもできる。非吸収体としては、たとえばシート状のものが使用できる。非吸収体を形成するための材料としては、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、およびポリスチレンなどのポリマー、ガラス、各種金属などが挙げられる。
【0032】
(検査用吸収体)
検査用吸収体32は、第一検査用吸収体33、第二検査用吸収体34、第三検査用吸収体35を有し、唾液中の分析対象物を検査するための試薬を含む。
【0033】
唾液中の分析対象物は特に限定されないが、任意のタンパク質、糖タンパク質、糖類、ビタミン、色素、蛍光分子、ペプチド、核酸、抗体、抗原、ホルモン、金属、金属イオン、細胞、細胞組織、細菌やウィルス等の微生物、その他天然化合物、合成化合物等を挙げることができる。
【0034】
(第一検査用吸収体)
第一検査用吸収体33は、−Y方向の端部が前段吸収体31の端部と重ねられている。第一検査用吸収体33は、吸収体に標識済分子認識素子(試薬)を含浸するものであり、含浸された標識済分子認識素子を唾液に対して溶出可能である。
【0035】
標識済分子認識素子とは、分析対象物と特異的に結合して複合体を形成する分子認識素子であり、かつ、標識されたものである。第一検査用吸収体33の吸収体には、前段吸収体31と同様のものを使用できる。
【0036】
分子認識素子としては、分析対象物と特異的に結合して複合体を形成するものであれば特に限定されず、抗原、抗体(モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体等)、核酸配列断片、エフェクター分子、レセプター分子、酵素とそのインヒビター、補酵素、アビジン、ビオチン、糖鎖化合物、レクチン、アプタマー(DNAアプタマー、RNAアプタマー、ペプチドアプタマー等)、分子鋳型などが挙げられる。
【0037】
標識としては、金コロイド、銀コロイド粒子、白金コロイド粒子等の金属コロイド、着色した脂質小胞(リボソーム)や小胞、着色してもよいラテックス粒子、磁気微粒子などの各種微粒子、蛍光物質、発色物質、発光物質、酵素、ビオチン、放射性同位元素、酸化還元物質などが挙げられる。
【0038】
(第二検査用吸収体)
第二検査用吸収体34は、−Y方向の端部が第一検査用吸収体33の端部に重ねられている。第二検査用吸収体34は、第一検査用吸収体33において標識済分子認識素子と分析対象物とが結合した複合体をトラップし、未結合の標識済分子認識素子を通過させる機能を有する吸収体である。この機能を発揮する方法として、吸収体の孔径を調節することが考えられる。例えば、う蝕原因菌(ストレプトコッカスミュータンス菌、ストレプトコッカスソブリヌス菌、ラクトバチラスアシドフィラス菌など)をトラップするには、吸収体のポアサイズを0.2〜10μmとすることが好ましい。これにより、菌と標識済分子認識素子とが結合した複合体をトラップできる。
【0039】
また、上記機能を発現させる方法として、複合体の分析対象物及び/又は標識済分子認識素子と特異的に結合する分子認識素子(試薬)を吸収体に固定しておくことも好ましい。分子認識素子は、第一検査用吸収体33と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0040】
第二検査用吸収体34の吸収体の材料には、前段吸収体31と同様のものを使用できる。
【0041】
(第三検査用吸収体)
第三検査用吸収体35は、−Y方向の端部が前段吸収体31の端部に重ねられている。第三検査用吸収体35は、pH指示薬(試薬)を含浸した吸収体である。
【0042】
pH指示薬は唾液のpH範囲(約4〜8)で変色を示すものであれば、特に限定されず、例えば、フタレイン系、スルホフタレイン系、アゾ系、トリフェニルメタン系、ベンゼイン系、ニトロ系などのものがあげられ、単独もしくは、複数を混合して使用可能である。例えば、以下のようなものが挙げられる。
メチルイエロー 赤色 2.9〜4.0 黄色
ブロモフェノールブルー 黄色 3.0〜4.6 紫色
コンゴーレッド 青紫色 3.0〜5.0 赤色
メチルオレンジ 赤色 3.1〜4.4 橙色
ブロモクレゾールグリーン 黄色 3.8〜5.4 青緑色
メチルレッド 赤色 4.4〜6.2 黄色
メチルレッド/ブロモクレゾールグリーン 赤色 4.5〜5.2 緑色
リトマス 赤色 4.5〜8.3 青色
ブロモクレゾールパープル 黄色 5.2〜6.8 紫色
ブロモチモールブルー 黄色 6.0〜7.6 青色
フェノールレッド 黄色 6.8〜8.4 赤色
ニュートラルレッド 赤色 6.8〜8.0 黄色
ナフタノールフタレイン やや赤色 7.3〜8.7 青緑色
クレゾールレッド 黄色 7.2〜8.8 赤紫色
なお、第一、第二検査用吸収体33,34のX方向の幅は、第三検査用吸収体35の幅よりも広いことが好ましい。
【0043】
(後段吸収体)
後段吸収体36は、−Y方向の端部が第二検査用吸収体34の端部に重ねられている。後段吸収体36は、第二検査用吸収体34を通過した唾液を吸収し、唾液の移動をより促進して、感度をより向上させるためのものである。
【0044】
後段吸収体36には、前段吸収体31と同様のものを使用できる。
【0045】
(水検出部材)
水検出部材37は、後段吸収体36の+Y方向側の端部に重なるように設けられている。水検出部材は、液体の水が到達したこと検知し、検査の終了を表示するものである。
【0046】
水検出部材37は、液体の水との接触を知らせるものであれば特に限定されない。例えば、前段吸収体31と同様の吸収体の下層に選択的に色素を含浸させておくことにより、水に濡れると吸収パッドの下層に塗布した色素が上部ににじみ出して着色し視認可能となる仕組み、下層に完了マークを印字し、上層に水に濡れると透明になる不透明な層(例えば親水性ポリテトラフルオロエチレン)を配置し、水に濡れると吸収性担体の下層に印字した完了マークが浮き出る仕組み、中性から酸性で変色するpH指示薬(リトマス、フェノールレッド、ニュートラルレッド、フェノールフタレイン、ナフタノールフタレイン、クレゾールレッドなど)を含浸させたろ紙の変色を見る仕組み等が挙げられる。
【0047】
(容器)
容器10は、長細い直方体形状を有している。容器の材質は特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、シリコーン、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル、アクリル等の樹脂等が挙げられる。
【0048】
この容器10は、本体部12と、蓋部11とを有している。本体部12は、有底で上端が開口した箱型形状をなしている。本体部12内には、上述の吸収体構造体30がY方向に収容されている。
【0049】
図2に示すように、第三検査用吸収体35と、第一検査用吸収体33、第二検査用吸収体34及び後段吸収体36との間に亘って、これらの間を隔離する隔壁13が設けられている。これにより、pH指示薬と、検査用吸収体の試薬との混合等が抑制される。
【0050】
蓋部11は、本体部12の縁に対して、接着剤や、ねじ、カシメ等により固定されている。
【0051】
蓋部11における前段吸収体31と対向する部分には、複数の貫通孔14が形成されている。貫通孔14の径の大きさは特に限定されないが、口腔内壁(舌など)と前段吸収体31との接触を抑制すべく、最狭部の径が、0.5〜5.0mmであることが好ましく、1.0〜5.0mmであることがより好ましい。
【0052】
また、図3に示すように、貫通孔14は、被験者の舌と前段吸収体31の接触を抑制すべく、外から中に向かって径が狭くなるテーパー形状を呈することが好ましい。なお、径が一定の貫通孔でも、逆テーパーの貫通孔でも実施は可能である。
【0053】
また、蓋部11における貫通孔14を形成する縁部分(貫通孔の周りの部分)の裏面11aには、前段吸収体31を貫通して本体部12の底面12aに接触する針15が形成されている。これにより、容器を被検者が噛んだ場合でも、前段吸収体31の厚みが維持される。
【0054】
さらに、蓋部11には、図1に示すように、第三検査用吸収体35を露出させる開口16、第二検査用吸収体34を露出させる開口17、水検出部材37を露出させる開口18が形成されている。
【0055】
図2に示すように、容器10の厚みは、他の部分に比べて、前段吸収体31の部分が薄くなっており、図3に示すように、蓋部11における貫通孔14を形成する縁部分の裏面11aは、前段吸収体31と接触している。
【0056】
続いて、このような唾液検査器具100の使用方法について説明する。
【0057】
まず、被験者に、一分程度ガムを噛ませ、唾液の分泌を促す。このとき、起床後、歯磨き、嗽、飲食等をする前であることが好ましい。
【0058】
続いて、被験者に口腔内に唾液を溜めさせ、その状態で、唾液検査器具100の貫通孔14が形成された部分を口腔内にくわえさせ、貫通孔14を介して唾液を十分に前段吸収体31にしみこませる。
【0059】
前段吸収体31に吸収された唾液は、前段吸収体31内を流れて、その一部は第三検査用吸収体35に到達し、第三検査用吸収体35の色が唾液のpHに応じて呈色する。
【0060】
前段吸収体31に吸収された唾液他の一部は、第一検査用吸収体33に到達し、標識済分子認識素子が、唾液中の特定の分析対象物と特異的に結合する。例えば、金コロイドで標識したアプタマーが、ストレプトコッカスミュータンス菌、ストレプトコッカスソブリヌス菌、ラクトバチルスアシドフィラス菌等のう蝕原因菌と特異的に結合する。
【0061】
さらに、唾液は、第一検査用吸収体33から第二検査用吸収体34に到達し、第一検査用吸収体33において標識済分子認識素子と分析対象物との複合体が第二検査用吸収体34にトラップされ、標識が濃縮される。例えば、う蝕原因菌又は標識済分子認識素子に対して特異的に結合する分子認識素子により、複合体がトラップされ、金コロイドが濃縮され、赤色を呈し、このとき複合体の量により濃度が異なることとなる。
【0062】
このとき、未結合の標識済分子認識素子は、第二検査用吸収体34にはトラップされず、下流に通過する。さらに、唾液は、後段吸収体36を通過し、水検出部材37にまで到達する。水検出部材37が唾液と接すると、水検出のサインが現れ、検査の完了となる。
【0063】
本実施形態によれば、貫通孔14を介して唾液を前段吸収体31に吸収させることにより、唾液がこの前段吸収体31に接続された検査用吸収体32に到達し、検査用吸収体32により唾液の検査、例えば、pH検査、う蝕原因菌の濃度の定量等を行なうことができる。これにより、採取後の唾液を検査装置等に移すことなくこの唾液検査器具100単体で容易に唾液の採取から検査までが行なえる。また、貫通孔14が前段吸収体31と対向する面に設けられているので、被験者の唾液を採取する際に口腔内壁(舌など)が検査用吸収体32に直接触れることを抑制でき、被験者が検査用吸収体32に含まれる各種試薬を誤飲する可能性が少ない。また、この前段吸収体31は、唾液における夾雑物を除去するフィルタとしても機能しうる。
【0064】
例えば、唾液中のミュータンス菌濃度10個/mLを閾値として、第二検出用吸収体34の呈色度合いを変化させるようにすることにより、う蝕のリスクの評価が可能となる。
【0065】
本発明は、上記実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。例えば、吸収体構造体が、各吸収体の重ね合わせ構造でなく、一体に形成されていてもよい。
【0066】
また、蓋部11が透明である場合には、開口16,17,18は無くてもよい。
【0067】
貫通孔14は、単数でも実施可能である。この場合、貫通孔14の径を大きくすると舌等が前段吸収体31に触れるが、検査用吸収体32に触れなければ、試薬を誤飲する可能性はなお低い。
【0068】
各吸収体間に他の吸収体を介在させてもよい。また、検査用吸収体32は、第一検査用吸収体33、第二検査用吸収体34、第三検査用吸収体35を有するが、第一検査用吸収体33及び第二検査用吸収体34のみでもよく、第三検査用吸収体35のみでもよい。また、これら以外の唾液検査用試薬を単独で、または組み合わせて有する検査用吸収体でもよいことは言うまでも無い。
【0069】
また、後段吸収体36、水検出部材37が無くても実施は可能である。
【実施例】
【0070】
(実施例1)
図1〜3のような唾液検査器具を作成した。唾液検査用器具100には、最狭部の直径が2.5mmの貫通孔14を複数個設けた。前段吸収体31には不織布状のガラス繊維(ポア径10μm)を用いた。第一検査用吸収体33には、ストレプトコッカスミュータンス(Sm)菌と特異的に結合することができ、かつ、金コロイドで標識されたアプタマーを含浸させた不織布状のガラス繊維を用いた。第二検査用吸収体34には、Sm菌とアプタマーとが結合した複合体をトラップすることにより金コロイドを凝集させて帯状に赤色着色させることができる分子認識素子を固定したワットマン社製FUSION5を用いた。後段吸収体36として、水分が到達することで反応完了を示す標識が出現するコットンリンター製の吸収パッドを用いた。
被験者が口に含んだところ、試薬を誤飲することもなく、検査ができた。
【0071】
(実施例2)
唾液検査用器具100の貫通孔の最狭部のサイズを変更し、性能を比較した結果を下表に示す。本実施例では、前段吸収体には、被験者の口に入っても安全な食紅をあらかじめ含浸させ、舌への着色の有無により貫通孔を介して前段吸収体と舌が接触するかどうかを確認した。なお、検出時間とは、被験者が器具を口に含んでから、後段吸収体に水分が到達し、反応完了を示す標識が出現するまでの時間である。
実施例1及び2の評価を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
貫通孔の最狭部の直径が0.1mmの場合は舌と前段吸収体31が接触することは全く無かったが、粘性の高い唾液の場合、検出に時間が掛かった。一方、6.0mmの場合、唾液は速やかに吸収されるものの、舌と前段吸収体31との接触も容易に起こり、舌に食紅による着色が検出された。ただ、この場合であっても、検出用試薬を含浸した検査用吸収体32でなく、前段吸収体31に残留した唾液との接触であるので、安全性は高い。なお、性能の欄の◎印は性能が著しく優れていること、○印は性能がかなり優れていること、△印は性能が優れていることを示す。
【符号の説明】
【0074】
10…容器、14…貫通孔、15…突起、30…吸収体構造体、31…前段吸収体、32…検査用吸収体、33…第一検査用吸収体、34…第二検査用吸収体、35…第三検査用吸収体、36…後段吸収体、37…水検出部材、100…唾液検査用器具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
唾液を吸収する前段吸収体、及び、前記前段吸収体に接続され唾液検査用の試薬を含む検査用吸収体を有する吸収体構造体と、
前記吸収体構造体を収容する容器と、を備え、
前記容器は、前記前段吸収体と対向する部分に貫通孔を有する唾液検査器具。
【請求項2】
前記貫通孔は、最狭部の直径が0.5〜5.0mmであり、複数設けられている請求項1記載の唾液検査器具。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記前段吸収体に向かうほど内径が小さくなる請求項1又は2記載の唾液検査器具。
【請求項4】
前記容器における前記貫通孔を形成する縁部分の裏面が前記前段吸収体と接触している請求項1〜3のいずれか記載の唾液検査器具。
【請求項5】
前記容器における前記貫通孔を形成する縁部分の裏面には突起が設けられ前記突起は前記前段吸収体を貫通して前記容器の底部と接触している請求項1〜4の何れか記載の唾液検査器具。
【請求項6】
前記吸収体構造体は、さらに、前記検査用吸収体の後段に接続された後段吸収体を有する請求項1〜5の何れか記載の唾液検査器具。
【請求項7】
前記検査用吸収体は、分析対象物と特異的に結合しかつ標識された標識済分子認識素子を溶出する第一検査用吸収体、及び、前記第一検査用吸収体の後段に接続され、前記分析対象物及び/又は前記標識済分子認識素子と特異的に結合する分子認識素子が固定された第二検査用吸収体を有する、請求項1〜6の何れか記載の唾液検査器具。
【請求項8】
前記検査用吸収体は、前記前段吸収体に接続された、pH指示薬を含浸する第三検査用吸収体を有する請求項1〜7の何れか記載の唾液検査器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−95156(P2011−95156A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250635(P2009−250635)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】