説明

商品陳列用フック

【課題】従来の商品陳列用フックは、商品の補充作業が煩わしいという問題点や、構造が複雑で大型であるなどの問題点があった。
【解決手段】所定の構造体Aに装着して水平に張り出す固定杆1と、固定杆1の外側に同軸状に装着して軸線方向に往復動自在な可動杆2を備え、可動杆2に商品Cを吊下げる商品陳列用フックH1としたことで、構造が簡単なものとなり、低コストで得ることができる。また、商品Cを補充する場合には、可動杆2とともに陳列商品Cを引き出すことができるので、商品Cの補充や交換をきわめて容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体やボード等の各種構造物に装着して、複数の商品を吊下げて陳列するのに用いられる商品陳列用フックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
商品陳列用フックは、商店等における所定の構造体に装着し、複数の商品を吊下げて陳列するものであって、構造体の竪の面に多数配置することで、限られたスペースに多種類の商品を陳列することができる。
【0003】
ところで、この種の商品陳列用フックでは、隣接する商品同士の間隔が小さい場合、商品が減ってくると隣接する別の商品に隠れてしまうことがある。そこで、従来の商品陳列用フックには、構造体に装着する主杆の先端部に継杆を着脱自在に設け、陳列商品の背後に新たな商品を補充できるようにしたもの(特許文献1)や、ばねにより前方に付勢された押し板を備え、この押し板で陳列商品を常に前方に押出すようにしたもの(特許文献2)などがあった。
【特許文献1】特開平11−046942号公報
【特許文献2】特開平09−238791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような従来の商品陳列用フックにおいて、主杆の先端部に継杆を着脱自在に設けたものでは、主杆が陳列商品の奥に位置するので、周囲の陳列商品をかき分けて商品を補充することとなり、補充作業が煩わしいという問題点があった。
【0005】
また、従来の商品陳列用フックにおいて、ばねにより付勢された押し板を備えたものでは、構造が複雑で且つ大型になり、それ自体が余分なスペースを占有してしまうほかに、製造コストが嵩むなどの問題点があり、これらの問題点を解決することが課題であった。
【0006】
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたもので、構造が簡単であるうえに、商品の補充に容易に対処できる商品陳列用フックを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の商品陳列用フックは、所定の構造体に装着して水平に張り出す固定杆と、固定杆の外側に同軸状に装着して軸線方向に往復動自在な可動杆を備え、可動杆に商品を吊下げる構成としており、上記構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の商品陳列用フックは、固定杆及び可動杆による簡単な構造であって、低コストで得ることができると共に、商品を補充する場合には、可動杆とともに陳列商品を引き出すことができるので、商品の補充や交換をきわめて容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の商品陳列用フックの一実施形態を説明する図である。図1(a)及び(d)に示す商品陳列用フックH1は、所定の構造体A1に装着して水平に張り出す固定杆1と、固定杆1の外側に同軸状に装着して軸線方向に往復動自在な可動杆2を備え、可動杆2に商品Cを吊下げる。この実施形態の構造体A1は、フック装着用の横桟Bを多段に有するものである。
【0010】
固定杆1は、丸棒状の部材から成るもので、その基端部(図中で右側の端部)に、下向きに開放した取付具D1を有しており、取付具D1を構造体A1の横桟Bに嵌合する。また、固定杆1は、先端部下側に突部4が形成してある。この実施形態の突部4は、商品Cの移動を妨げないように半円形を成している。
【0011】
可動杆2は、図1(c)に断面を示すように、固定杆1を摺動自在に挿入する軸孔5を有すると共に、軸線方向にわたってスリット6を形成した中空状の棒部材である。また、可動杆2は、基端部に、商品Cの後方移動を阻止する鍔状のストッパ7が装着してあると共に、先端部に、図1(b)に示す先端部材8が装着してある。
【0012】
先端部材8は、商品Cの脱落を防ぐために上向きに屈曲していると共に、可動杆2の先端部内側に対応する一対の取付片9,9を有し、両取付片9,9には、互いに相反する面に、小突起10,10が形成してある。これに対して、可動杆2の先端部両側には、一対の小孔11,11が形成してある。
【0013】
上記の先端部材8は、可動杆2の先端部内側に両取付片9,9を弾性的に嵌合すると共に、各取付片9の小突起11を可動杆2の小孔12に夫々嵌合させることで、可動杆2の先端部に固定する。
【0014】
そして、可動杆2は、固定杆1の外側に同軸状に装着して軸線方向に摺動自在となり、この際、スリット6内に固定杆1の突部4が入り込んだ状態となる。また、この実施形態では、突部4とスリット6が、固定杆1に対して可動杆2の軸線回りの回転を阻止する回転規制手段を構成しており、さらに、突部4とストッパ7が、固定杆1に対して可動杆2の前進限を決定する前進規制手段を構成している。
【0015】
上記構成を備えた商品陳列用フックH1は、図1(e)に示すように、固定杆1の突部4と先端部材8とが当接して可動杆2の後退限を決定し、可動杆2に複数の商品Cを吊下げた状態で陳列している。
【0016】
また、実際の構造体A1では、複数の商品陳列用フックH1を上下左右に配置し、多種類の商品を陳列することとなる。なお、商品Cは、図1(d)に示すように、上端部に、側方に開放されたC字形状の掛止部Eを有するものであるが、掛止部が穴であっても良い。
【0017】
さらに、商品陳列用フックH1は、陳列商品Cが減って補充が必要になったときには、図1(e)に仮想線で示すように、可動杆2を引き出せば良い。この際、可動杆2は、突部4とスリット6との係合により軸線方向に案内されると共に、軸線回りの回転が阻止される。そして、可動杆2は、突部4とストッパ7との当接により前進限が決定され、これと同時に固定杆1からの脱落が防止される。
【0018】
商品陳列用フックH1は、上記の如く可動杆2を引き出すだけで、その可動杆2及び陳列商品Cが隣接する陳列商品群から突出した状態となり、新たな商品Cの補充を容易に行うことができる。また、図示例のようにC字形状の掛止部Eを有する商品Cであれば、陳列商品Cを外さなくても、それらの背後に商品Cを補充することができる。
【0019】
このように、商品陳列用フックH1は、主として固定杆1及び可動杆2による簡単な構造であって、低コストで得ることができる。そして、商品Cを補充する場合には、可動杆2とともに陳列商品Cを引き出すことができるので、商品Cの補充や交換をきわめて容易に行うことができる。
【0020】
また、商品陳列用フックH1は、突部4及びスリット6から成る回転規制手段を備えているので、可動杆2の軸線回りの回転を阻止して、商品Cを吊下げた可動杆2の移動をより円滑に且つ安定させることができる。
【0021】
さらに、商品陳列用フックH1は、突部4及びストッパ7から成る前進規制手段を備えているので、可動杆2を引き出した際の脱落を未然に防止することができ、商品Cの補充や交換の作業も行い易くなる。
【0022】
そしてさらに、商品陳列用フックH1は、商品Cの後方移動を阻止するストッパ7を備えているので、可動杆2を引き出した際に、商品Cが固定杆1側に移動して残るような事態を防止して、可動杆2とともに全ての商品Cを引き出すことができる。
【0023】
図2は、本発明の商品陳列用フックの他の実施形態を説明する図である。なお、先の実施形態と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0024】
図示の商品陳列用フックH2は、竪桟B1及び横桟B2から成る格子状の構造体A2に装着するものであって、先の実施形態と同等の固定杆1や可動杆2を備えており、構造体A2への取付具D2のみが異なる。
【0025】
すなわち、図示の取付具D2は、細い金属棒から成るものであって、U字形状に曲成した本体部13と、本体部13の中間に掛け渡した支持部14を備え、本体部13の上部両側に、背面側へ下向きに折り曲げた係止部15,15を有している。これに対して、固定杆1の基端部には、下方へ折り曲げた結合部1Aが設けてある。そして、取付具D2は、支持部14の背面側及び本体部13の下部正面側に、固定杆1の結合部1Aを係合して同結合部1Aを溶接等で固定する。
【0026】
上記の取付具D2を備えた商品陳列用フックH2は、構造体A2に対して、横桟B2に両係止部15,15を係止すると共に、本体部13の下部を下段の横桟B2に当接させた状態で装着され、水平状態となった可動杆2に商品を吊下げる。
【0027】
図3は、本発明の商品陳列用フックのさらに他の実施形態を説明する図である。なお、先の実施形態と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0028】
図示の商品陳列用フックH3は、多数の穴hを縦横に所定間隔で配列させた構造体A3に装着するものであって、先の実施形態と同等の固定杆1や可動杆2を備えており、構造体A3への取付具D3のみが異なる。
【0029】
すなわち、図示の取付具D3は、細い金属棒から成るものであって、U字形状に曲成した本体部13と、本体部13の中間に掛け渡した支持部14を備え、本体部13の上部両側に、背面側へ屈曲させた係止部16,16を有している。これに対して、固定杆1の基端部には、下方へ折り曲げた結合部1Aが設けてある。そして、取付具D3は、支持部14の背面側及び本体部13の下部正面側に、固定杆1の結合部1Aを係合して同結合部1Aを溶接等で固定する。
【0030】
上記の取付具D3を備えた商品陳列用フックH2は、構造体A3に対して、横に隣接する二つの穴h,hに両係止部16,16を通し、両係止部16,16を構造体A3の背面に係止すると共に、本体部13を構造体A3の正面に当接させた状態で装着され、水平に保持した可動杆2に商品を吊下げる。
【0031】
図4は、本発明の商品陳列用フックのさらに他の実施形態を説明する図である。なお、先の実施形態と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0032】
図示の商品陳列用フックH4は、横桟Bを多段に有する構造体A1に装着するものであって、構造体Aに装着して水平に張り出す固定杆1と、固定杆1の外側に同軸状に装着して軸線方向に往復動自在な可動杆42を備え、可動杆42に商品Cを吊下げる。
【0033】
固定杆1は、丸棒状の部材から成るものであって、先端部の下側に、突部21を有すると共に、基端部に、下向きに開放した取付具D1を有しており、基端部近傍に、可動杆42の基端部が当接する大径状の位置決め部22を有している
【0034】
また、商品陳列用フックH4は、固定杆1が、その上側に、支持杆23を平行に備えている。固定杆1及び支持杆23は、双方の間隔を決定する垂直部24により、夫々の基端部で一体化してある。つまり、固定杆1及び支持杆23は、一本の丸棒状部材を折り曲げることで簡単に成形することができる。
【0035】
支持杆23は、先端部近傍に上方への屈曲部25を有すると共に、先端部には、商品名や価格を表示するための表示プレート26が、図示しない角度調整機構を介して取付けてある。
【0036】
可動杆42は、固定杆1を挿入する軸孔43を有すると共に、軸孔43を形成した範囲内に、下方へ開放されたスリット44が軸線方向に沿って形成してあり、基端部の上側には、商品Cの後方移動を阻止する突起状のストッパ45が設けてある。
【0037】
そして、可動杆42は、固定杆1の外側に同軸状に装着して軸線方向に摺動自在となり、この際、スリット44内に固定杆1の突部21が入り込んだ状態となる。また、この実施形態では、突部21とスリット44が、固定杆1に対して可動杆42の軸線回りの回転を阻止する回転規制手段を構成しており、さらに、突部21とスリット44の基端部が、固定杆1に対して可動杆42の前進限を決定する前進規制手段を構成している。
【0038】
上記構成を備えた商品陳列用フックH4は、図4(a)に示すように、固定杆1の位置決め部22と可動杆42の基端部とが当接して同可動杆42の後退限を決定し、可動杆42に複数の商品Cを吊下げた状態で陳列している。
【0039】
また、商品陳列用フックH4は、陳列商品Cが減って補充が必要になったときには、図4(b)に示すように、可動杆42を引き出せば良い。この際、可動杆42は、突部21とスリット44との係合により軸線方向に案内されると共に、軸線回りの回転が阻止される。そして、可動杆42は、突部21とスリット44の基端部との当接により前進限が決定され、これと同時に固定杆1からの脱落が防止される。この商品陳列用フックH4にあっても、先の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0040】
図5は、本発明の商品陳列用フックのさらに他の実施形態を説明する図である。なお、先の実施形態と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0041】
図示の商品陳列用フックH5は、横桟Bを多段に有する構造体A1に装着するものであって、構造体Aに装着して水平に張り出す固定杆1と、固定杆1の外側に同軸状に装着して軸線方向に往復動自在な可動杆52を備え、可動杆52に商品Cを吊下げる。
【0042】
固定杆1は、丸棒状の部材から成るものであって、先の実施形態における突部(図4中の符号21)が無いものとなっている。
【0043】
可動杆52は、固定杆1を挿入する軸孔43を有すると共に、先の実施形態におけるスリット(図4中の符号44)が無く、基端部の上側には、支持杆23に摺動自在に係合する係合プレート53が設けてある。
【0044】
この実施形態では、支持杆23と係合プレート53が、固定杆1に対して可動杆52の軸線回りの回転を阻止する回転規制手段を構成しており、さらに、支持杆23の屈曲部25と係合プレート53が、固定杆1に対して可動杆52の前進限を決定する前進規制手段を構成している。また、係合プレート53が、商品Cの後方移動を阻止するストッパを兼用している。なお、屈曲部25が無い支持杆23の場合には、表示プレート26を前進規制手段に適用することもできる。
【0045】
上記構成を備えた商品陳列用フックH5は、図5(a)に示すように、固定杆1の位置決め部22と可動杆52の基端部とが当接して同可動杆52の後退限を決定し、可動杆52に複数の商品Cを吊下げた状態で陳列している。
【0046】
また、商品陳列用フックH5は、陳列商品Cが減って補充が必要になったときには、図5(b)に示すように、可動杆52を引き出せば良い。この際、可動杆52は、支持杆23と係合プレート53との係合により軸線方向に案内されると共に、軸線回りの回転が阻止される。そして、可動杆52は、支持杆23の屈曲部25と係合プレート53との当接により前進限が決定され、これと同時に固定杆1からの脱落が防止される。この商品陳列用フックH5にあっても、先の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
なお、本発明の商品陳列用フックは、その構成が上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の細部を適宜変更したり各実施形態の構成を組み合わせたりすることが可能である。例えば、固定杆を角棒とし、可動杆の軸孔を矩形断面にすることで、可動杆の軸線回りの回転を阻止することもできる。また、構造体の形態に応じて様々な取付具を採用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の商品陳列用フックの一実施形態を説明する分解状態の側面図(a),先端部材の平面図(b)、可動杆の断面図(c)、商品の上部を説明する正面図(d)、及び商品陳列用フックの側面図(e)である。
【図2】本発明の商品陳列用フックの他の実施形態を説明する側面図(a)、及び取付具の正面図(b)である。
【図3】本発明の商品陳列用フックのさらに他の実施形態を説明する側面図(a)、及び取付具の正面図(b)である。
【図4】本発明の商品陳列用フックのさらに他の実施形態を説明する断面図(a)、及び可動杆を引き出した状態を示す断面図(b)である。
【図5】本発明の商品陳列用フックのさらに他の実施形態を説明する断面図(a)、及び可動杆を引き出した状態を示す断面図(b)である。
【符号の説明】
【0049】
A1〜A3 構造体
C 商品
H1〜H5 商品陳列用フック
1 固定杆
2 可動杆
4 突部(回転規制手段、前進規制手段)
6 スリット(回転規制手段)
7 ストッパ(前進規制手段)
21 突部(回転規制手段、前進規制手段)
23 支持杆(回転規制手段)
25 屈曲部(前進規制手段)
42 可動杆
44 スリット(回転規制手段、前進規制手段)
45 ストッパ
52 可動杆
53 係合プレート(回転規制手段、前進規制手段、ストッパ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の構造体に装着して水平に張り出す固定杆と、固定杆の外側に同軸状に装着して軸線方向に往復動自在な可動杆を備え、可動杆に商品を吊下げることを特徴とする商品陳列用フック。
【請求項2】
固定杆に対して可動杆の軸線回りの回転を阻止する回転規制手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の商品陳列用フック。
【請求項3】
固定杆に対して可動杆の前進限を決定する前進規制手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の商品陳列用フック。
【請求項4】
可動杆の基端部に、商品の後方移動を阻止するストッパを備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の商品陳列用フック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−42154(P2010−42154A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208695(P2008−208695)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(591135657)ワヨー株式会社 (29)
【Fターム(参考)】