説明

喘息の治療における抗−TNFα抗体

【課題】喘息または気道の炎症の治療を必要とする個体の治療において、喘息または気道の炎症の治療に使用するための薬剤の提供。
【解決手段】喘息または気道の炎症の治療に使用するための抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片の使用であって、前記抗体はヒト定常領域を含み、前記抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片は、cA2(REMICADE(登録商標)インフリキシマブ)のヒトTNFαへの結合を競合的に阻害する、前記使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、1999年3月2日に出願した米国特許出願第09/260,953号の継続出願である、1999年12月17日に出願した米国特許出願第09/465,691号の一部継続出願である。これらの出願の全ての教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
喘息は、気道の慢性的な炎症性疾患であり、それは通常、ぜん鳴(wheezing)、無呼吸(breathlessness)、胸部緊張(chest tightness) および咳などの再発性の症状の発現の形で、特に夜または早朝に現れる。これらの症状の発現は、通常、一般的だが多様な気道閉塞(airflow obstruction)に関連し、それは、自発的または治療のいずれかにより、しばしば可逆性である。
【0003】
多くの細胞および細胞成分、特に肥満細胞、好酸球、Tリンパ球、マクロファージ、好中球および上皮細胞は、気道の炎症に役割を演じている。炎症は、血漿の滲出、浮腫、平滑筋肥大、粘液填塞(mucus plugging)および上皮変化と関連している。また、炎症は、種々の刺激に対して存在する気管支過応答(hyperresponsiveness) の関連する増大を引き起こす。
【0004】
多様な気道閉塞および気管支機能亢進(特異的および非特異的)は、症候性の喘息における主要な特徴である。気道の炎症は、気道平滑筋の萎縮、微小血管の破裂および気管支過応答を導く。気道の反応性が高いと、症状はより重く、持続的になり、肺機能の日中の変動の規模がより大きくなる。気道の炎症が気管支の反応性に関連しているメカニズムは不明である。最近の研究では、喘息の気道において増加して発現されている腫瘍壊死因子α(TNFα)が、おそらく気道の過応答の増大に関連していることが示されている(非特許文献1:Shahら、Clin.Exper.Allergy,25:1038−1044(1995))。例えば、組み換えTNFαのヒツジへの静脈注射により、ヒスタミン誘導性の気道反応性の顕著な増強が生じた(非特許文献2:Wheelerら、J.Appl.Physiol.,68:2542−2549(1990))が、一方、エアゾール化されたTNFαにラットを曝すと、気道の過応答が増大し、わずかに気道の炎症を誘導した(非特許文献3:Kipsら、Am.Rev.Respir.Dis.,145:332−336(1992))。正常なヒトの被験者において、組み換えTNFαの吸入は気管支反応性の増大を引き起こした(非特許文献4:Yatesら、Thorax,48:1080(1993))が、一方、軽度のアレルギー性喘息の気管支の生検の免疫組織化学的解析では、TNFα免疫反応性の増大が気道の過応答と相関することが示された(非特許文献5:Hosseletら、Am.J.Respir.Crit.Care Med.,149:A957(1994))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Shahら、Clin.Exper.Allergy,25:1038−1044(1995)
【非特許文献2】Wheelerら、J.Appl.Physiol.,68:2542−2549(1990)
【非特許文献3】Kipsら、Am.Rev.Respir.Dis.,145:332−336(1992)
【非特許文献4】Yatesら、Thorax,48:1080(1993)
【非特許文献5】Hosseletら、Am.J.Respir.Crit.Care Med.,149:A957(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
喘息は、非常に一般的である。工業国の人口のほぼ5%がこれに罹患しており、まだ診断不顕性であり、治療も不十分(undertreated)である。喘息の発生率や罹患率が上昇しているという証拠がある。これらの傾向は、有効な喘息の治療が増大しているにも係わらず生じており、現在の喘息の治療方法が不十分なものであるかまたは適切に使用されていないことを示している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、喘息に関連した臨床的な徴候および症状が抗−TNFα抗体を用いる治療により改善されうるという発見に関する。結果として、本発明は、喘息、または例えば喘息に関連するもののような気道の炎症の治療を必要とする個体において、その治療に使用するための薬剤を製造するための抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片の使用を提供する。また、本発明は、例えば喘息に関連するもののような炎症細胞の肺への蓄積の減少を必要としている個体においてその蓄積を減少させるのに使用するための薬剤を製造するための抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片の使用を提供する。好ましい態様において、抗体は、cA2モノクローナル抗体などのキメラ抗体である。
【0008】
また、本発明は、治療上有効量の抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片を個体に投与する工程を有する、個体において喘息、または例えば喘息に関連するもののような気道の炎症を治療する方法を提供する。さらに本発明は、例えば喘息に関連するもののような炎症細胞の肺への蓄積の減少を必要としている個体において、その蓄積を減少させる方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、卵白アルブミン(OA;5%で20分)または生理食塩水(n=10)攻撃の72時間後であって、(1)ビヒクル(PBS、n=10)、(2)cV1qmuG2a抗体(1mg/kg、n=10)または(3)cV1qmuG2a抗体(10mg/kg、n=9)のいずれかを用いるOA攻撃の1時間前、24および48時間後に静脈内処理された感作マウスにおける気管支肺胞洗浄(BAL)液の炎症細胞の蓄積(全蓄積および好酸球の蓄積)を示す棒グラフである。さらに10匹のマウスの群を、デキサメタゾン1mg/kgを用いたOA攻撃の1時間前、24および48時間後に腹腔内処理した。*は、ビヒクル処理した群と比較して統計学的に有意な(p<0.05)差を示す。
【図2】図2は、OA(5%で20分)または生理食塩水(n=10)攻撃の72時間後であって、(1)ビヒクル(PBS、n=10)、(2)cV1qmuG2a抗体(1mg/kg、n=10)または(3)cV1qmuG2a抗体(10mg/kg、n=9)のいずれかを用いるOA攻撃の1時間前、24および48時間後に静脈内処理された感作マウスにおけるBAL液の好酸球の蓄積を示す棒グラフである。さらに10匹のマウスの群を、デキサメタゾン1mg/kgを用いたOA攻撃の1時間前、24および48時間後に腹腔内処理した。値は、全細胞%の平均±SEMとして示す。*は、ビヒクル処理した群と比較して統計学的に有意な(p<0.05)差を示す。
【図3】図3は、OA(5%で20分)または生理食塩水(n=10)攻撃の72時間後であって、(1)ビヒクル(PBS、n=10)、(2)cV1qmuG2a抗体(1mg/kg、n=10)または(3)cV1qmuG2a抗体(10mg/kg、n=9)のいずれかを用いるOA攻撃の1時間前、24および48時間後に静脈内処理された感作マウスにおける全血清IgEを示す棒グラフである。さらに10匹のマウスの群を、デキサメタゾン1mg/kgを用いたOA攻撃の1時間前、24および48時間後に腹腔内処理した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、喘息に関連する炎症細胞、特に気管支肺胞洗浄(BAL)好酸球、脈管周囲白血球、間質性白血球および胸膜白血球の肺への蓄積が抗−TNFα抗体を用いる治療で有意に減少されるという予期しない驚くべき発見に関する。炎症細胞、特に好酸球による肺への気道浸潤は、喘息に特有の特徴の一つである(Holgate,Eur.Respir.J.,6:1507−1520(1993))。アレルギー性喘息をもつ患者において行った気管支の生検検査は、好酸球および活性化されたTリンパ球の数の増加が気道組織およびBALにあることを示す。
【0011】
末梢血およびBAL液における好酸球数は、気管支過反応の程度および喘息の重篤度の両方と相関することが示されている(CorriganとKay,Immunology Today,13:501−507(1992))。好酸球は、その顆粒中に4つの塩基性タンパク質:主塩基性タンパク質、好酸球由来の神経毒、好酸球カチオン性タンパク質および好酸球ペルオキシダーゼを蓄積している。これらのタンパク質の放出は、喘息での気道組織の損傷および気管支過応答の原因であるかもしれない(Flavahanら、Am.Rev.Respir.Dis., 138:685−688(1988))。
【0012】
Tリンパ球は、体液性(IgE)免疫応答はもちろん、細胞介在性免疫を活性化するサイトカインを産生する。アレルギー性喘息は、TおよびBリンパ球で制御されるIgE応答に依存し、肥満細胞に結合したIgE分子と抗原との相互作用により活性化される。
【0013】
本明細書に記載の結果は、抗−TNFα抗体を用いる治療が喘息または気道の炎症を治療するのに有益であることを示す。本明細書の結果は、喘息に関連した臨床的な徴候および症状が抗−TNFα抗体を用いる治療により改善することができること示す。結果として、本発明は、個体へ抗−TNFα抗体または抗−TNFα抗体の抗原結合断片を投与する工程を含む、個体の喘息または気道の炎症の治療方法を提供する。特定の態様において、本発明は、喘息に関連した気道の炎症を治療する方法を提供する。また、本発明は、炎症細胞の肺への蓄積を減少することが必要な個体において炎症細胞の肺への蓄積を減少する方法を提供する。特定の態様において、本発明は、喘息に関連した炎症細胞の肺への蓄積を減少する方法を提供する。本明細書で用いるように、症状とは自覚的な感情をいう。例えば、症状には、患者が無呼吸、胸部緊張、不眠症を訴える場合が含まれる。本明細書で用いるように、症候とは客観的に観察されるものをいう。例えば、症候には、肺検査および他の研究室での試験の結果が含まれる。
【0014】
腫瘍壊死因子α
TNFαは、17kDのタンパク質サブユニットの可溶性ホモ三量体である(Smithら、J.Biol.Chem.,262:6951−6954(1987))。膜に結合した26kDの前駆体型TNFαも存在する(Krieglerら、Cell,53:45−53(1988))。TNFαの総説については、Beutlerら、Nature,320(6063):584−588(1986);Old, Science,230:630−632(1986);およびLeら、Lab.Invest.,56:234(1987)を参照のこと。
【0015】
TNFαは、単球およびマクロファージ、リンパ球、特にT細胞系統の細胞(Vassalli,Annu.Rev.Immunol.,10:411−452(1992))、好中球(Dubravecら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6758−6761(1990))、上皮細胞(Ohkawaraら、Am.J.Respir.Cell.Biol.,7:985−392(1992))および肥満細胞(Shahら、Clin.Exper.Allergy,25:1038−1044(1995);Gordonら、Nature,346:274−276(1990);Gordonら、J.Exp.Med.,174:103−107(1991);Braddingら、Am.J.Respir.Cell.Mol.Biol.,10:471−480(1994);Walshら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:4220−4224(1991);Benyonら、J.Immunol.,147:2253−2258(1991);およびOhkawaraら、Am.J.Respir.Cell.Biol.,7:985−392(1992))を含む、様々な細胞により産生される。好酸球もまた、TNFαの供給源として提案されている(Costaら、J.Clin.Invest.,91:2673−2684(1993))。
【0016】
抗−TNFα抗体
本明細書で用いるように、抗−腫瘍壊死因子α抗体は、インビボでTNFα活性を低減、ブロック、阻害、排除または妨害する。好ましい態様において、抗体は特異的に抗原に結合する。前記抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであってもよく、抗体という用語は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方を包含することが意図される。ポリクローナルおよびモノクローナルという用語は、抗体調製物の均質性の程度をいい、特定の生産方法に限定することを意図するものではない。一本鎖抗体、およびキメラの、ヒト化されたまたは霊長類化された(primatized)(骨格変化を有するまたは有しないCDR移植した(grafted) 抗体)、あるいはベニア化(veneered)抗体、加えて異なる種由来の部分を含むキメラの、CDR移植したまたはベニア化一本鎖抗体なども、本発明および「抗体」という用語に包含される。
【0017】
特定の態様において、抗−TNFα抗体は、キメラ抗体である。好ましい態様において、抗−TNFα抗体は、キメラモノクローナル抗体cA2(もしくはその抗原結合断片)またはマウスモノクローナル抗体A2(もしくはその抗原結合断片)であるか、キメラ抗体cA2、マウスモノクローナル抗体A2、またはそれらの抗原結合断片のものと類似のエピトープ特異性を有し、キメラ抗体cA2またはマウスモノクローナル抗体A2、またはそれらの抗原結合断片により結合されるものと同一のもしくは機能的に同等のヒトTNFαのエピトープと反応する抗体または抗原結合断片が含まれる。キメラ抗体cA2またはマウスモノクローナル抗体A2のものと類似したエピトープ特異性を有する抗体には、キメラ抗体cA2またはマウスモノクローナル抗体A2(もしくはそれらの抗原結合断片)と、ヒトTNFαへの結合について競合することができる抗体が含まれる。かかる抗体または断片は、前記のようにして得ることができる。また、キメラ抗体cA2、マウスモノクローナル抗体A2およびこれらの抗体を得る方法は、Leら、米国特許第5,656,272号;Leら、米国特許第5,698,195号;米国特許出願第08/192,093号(1994年2月4日出願);米国特許第5,919,452号;Le,J.ら、国際公開第WO92/16553号パンフレット(1992年10月1日公開);Knight,D.M.ら、Mol.Immunol.,30:1443−1453(1993);およびSiegel,S.A.ら、Cytokine,7(1):15−25(1995)に記載されており、これらの各参考文献は、参照によりそのまま本明細書に組み込まれる。また、キメラ抗体cA2は、インフリキシマブ(infliximab)およびREMICADEとして知られている。
【0018】
キメラ抗体cA2は、A2と表される、高親和性の中和マウス抗−ヒトTNFα IgG1抗体の抗原結合可変領域とヒトIgG1、κ免疫グロブリンの定常領域とからなる。ヒトIgG1 Fc領域は、同種異系抗体のエフェクター機能を向上させ、循環している血清の半減期を増大させ、抗体の免疫原性を低減する。キメラ抗体cA2の結合活性とエピトープ特異性は、マウス抗体A2の可変領域に由来する。特定の態様おいて、マウス抗体A2の可変領域をコードする核酸の好ましい供給源は、A2ハイブリドーマ細胞株である。
【0019】
キメラA2(cA2)は、投与量に依存して、天然のヒトTNFαおよび組み換えヒトTNFαの両方の細胞毒性効果を中和する。キメラ抗体cA2および組み換えヒトTNFαの結合アッセイから、キメラ抗体cA2のアフィニティー定数を1.04×1010-1と計算した。競合阻害により、モノクローナル抗体の特異性およびアフィニティーを決定するのに好ましい方法は、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1988;Colliganら編、Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,New York,(1992,1993);Kozborら、Immunol.Today,4:72−79(1983);Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience,New York(1987,1992,1993);およびMuller,Meth.Enzymol.,92:589−601(1983)に見ることができ、これらの参考文献は、参照によりそのまま本明細書に組み込まれる。
【0020】
特定の態様において、キメラ抗体cA2は、c168Aと表される細胞株により産生され、マウスモノクローナル抗体A2は、c134Aと表される細胞株により産生される。
【0021】
抗−TNFα抗体(またはその抗原結合断片)のさらなる例としては、当該技術分野において記載されている(例えば、米国特許第5,231,024号;Moeller,Aら、Cytokine,2(3):162−169(1990);米国特許出願第07/943,852号(1992年9月11日出願);Rathjenら、国際公開第WO91/02078号パンフレット(1991年2月21日公開);Rubinら、欧州特許公開公報第0 218 868号(1987年4月22日公開);Yoneら、欧州特許公開公報第0 288 088号(1988年10月26日);Liangら、Biochem.Biophys.Res.Comm.,137:847−854(1986);Meagerら、Hybridoma,6:305−311(1987);Fendlyら、Hybridoma,6:359−369(1987);Bringmanら、Hybridoma,6:489−507(1987);およびHiraiら、J.Immunol.Meth.,96:57−62(1987)を参照のこと、これらの参考文献は参照によりそのまま本明細書に組み込まれる)。
【0022】
適切な抗体が入手可能であるか、単離および/または組換え抗原またはその部分(合成ペプチド等の合成分子を含む)等の適切な免疫原、または組換え抗原を発現する宿主細胞で生じうる。さらに、トランスフェクトされた細胞等の組換え抗原を発現する細胞が、免疫原としてまたはレセプターに結合する抗体のスクリーンで使用されうる(例えば、Chuntharapaiら、J.Immunol.,152:1783−1789(1994);およびChuntharapaiら、米国特許第5,440,021号明細書を参照のこと)。
【0023】
免疫する抗原の調製、ならびにポリクローナルおよびモノクローナル抗体産生はいずれもの適切な技術を用いて行なわれうる。種々の方法が記載されている(例えば、Kohlerら、Nature、256:495−497(1975)およびEur.J.Immunol.、6:511−519(1976);Milsteinら、Nature、266:550−552(1977);Koprowskiら、米国特許番号第4,172,124号明細書;Harlow,E.およびD.Lane、1988、Antibodies:A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor、NY);およびCurrent Protocols In Molecular Biology、第2巻(補遺27、’94年夏)、Ausubelら、編、(John Wiley & Sons:New York,NY)、11章(1991)を参照のこと。)一般に、適切な不死細胞株(例えば、SP2/0 等の骨髄腫細胞株)を抗体産生細胞と融合することにより、ハイブリドーマが産生されうる。抗体産生細胞は、好ましくは、脾臓またはリンパ節のものであり、対象の抗原で免疫化した動物から得られうる。融合細胞(ハイブリドーマ)は、選択培地条件を使用して単離され、限界希釈によりクローン化されうる。所望の特異性をもつ抗体を産生する細胞が、適切なアッセイにより選択されうる(例えば、ELISA)。
【0024】
ヒト抗体を含む、必要な特異性を有する抗体を産生または単離する他の適切な方法が使用されうる。例えばその方法は、例えばファージディスプレイ技術等により組換え抗体またはその部分がライブラリーから選択される方法を(例えば、Wintersら、Annu.Rev.Immunol.、12:433−455(1994);Hoogenboomら、国際公開第93/06213号パンフレット;Hoogenboomら、米国特許第5,565,332号明細書;1994年6月23日に公開された国際公開第94/13804号パンフレット;Krebberら、米国特許第5,514,548号明細書;およびDowerら、米国特許第5,427,908号明細書を参照のこと)、またはそれはヒト抗体の十分なレパートリーを産生可能なトランスジェニック動物(例えば、マウス)の免疫化に依存する方法(例えば、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:2551−2555(1993);Jakobovitsら、Nature、362:255−258(1993);Kucherlapatiら、欧州特許第EP 0 463 151 B1;Lonbergら、米国特許第5,569,825号明細書;Lonbergら、米国特許第5,545,806号明細書;およびSuraniら、米国特許第5,545,807号明細書を参照のこと。)を含む。
【0025】
一本鎖抗体、キメラ、ヒト化もしくは霊長類化(CDR移植抗体、骨格変化有りまたは無し)、またはベニア化抗体、ならびに異なる種に由来する部分を含有するキメラ、CDR移植またはベニア化一本鎖抗体の種々の部分が、通常の技術により共に化学的に結合され得、または遺伝子工学技術を用いて連続したタンパク質として調製されうる。例えば、キメラまたはヒト化鎖をコードする核酸が、連続したタンパク質を産生するために発現されうる。例えば、Cabillyら、米国特許番号第4,816,567号明細書;Cabillyら、欧州特許番号第0,125,023 B1号明細書;Bossら、米国特許番号第4,816,397号明細書;Bossら、欧州特許番号第0,120,694 B1号明細書;Neuberger,M.S.ら、国際公開第86/01533号パンフレット;Neuberger,M.S.ら、欧州特許番号第0,194,276 B1号明細書;Winter、米国特許番号第5,225,539号明細書;Winter、欧州特許番号第0,239,400 B1号明細書;Queenら、米国特許番号第5,585,089号明細書;Queenら、欧州特許番号第0,451,216 B1号明細書;Adairら、1991年7月11日に公開された国際公開第91/09967号パンフレット;Adairら、欧州特許番号第0,460,167 B1号明細書;およびPadlan,E.A.ら、欧州特許番号第0,519,596 A1号明細書を参照のこと。霊長類化抗体に関してはNewman,R.ら、BioTechnology,10:1455−1460(1992)、一本鎖抗体に関しては、Hustonら、米国特許第5,091,513号明細書;Hustonら、米国特許第5,132,405号明細書;Ladnerら、米国特許第4,946,778号明細書およびBird,R.E.ら、Science,242:423−426(1988))もまた参照のこと。
【0026】
さらに、キメラ、ヒト化、霊長類化、ベニア化または一本鎖抗体等の断片を含む抗体の抗原結合断片もまた、産生されうる。例えば、抗原結合断片としては、限定されないが、Fv、Fab、Fab’、およびF(ab’)2 断片が挙げられる。抗原結合断片は、例えば、酵素開裂または組換え技術により産生されうる。例えば、パパインまたはペプシン開裂は、それぞれFabまたはF(ab’)2 断片を生じうる。抗体はまた、1つまたはそれ以上の終止コドンが天然の終止部位の上流に導入される抗体遺伝子を用いる種々の切形型で産生されうる。例えば、F(ab’)2 重鎖部分をコードするキメラ遺伝子が、重鎖のCH1 領域およびヒンジドメインをコードするDNA配列を含むように設計されうる。
【0027】
本発明の使用に適切な抗−TNFα抗体は、TNFαに対する高親和性結合および低毒性(ヒト抗−マウス抗体(HAMA)および/またはヒト抗−キメラ抗体(HACA)応答を含む)により特徴付けられる。可変領域、定常領域および骨格等の個々の成分が個々におよび/または集合的に低免疫原性を保有する抗体は、本発明の使用に適切である。本発明に使用されうる抗体は、症状の優れた緩和および低毒性に対する効果をもって長期間患者を治療する能力によって特徴付けられる。低免疫原性および/または高親和性、ならびに他の規定されていない特性が、達成される治療結果に寄与されうる。「低い免疫原性」とは、治療された患者の約75%未満、または好ましくは約50%未満で有意のHACAまたはHAMA応答が生じるおよび/または治療された患者において低い力価を生じること(2重抗原酵素免疫アッセイで測定された約300未満、好ましくは約100未満)として本明細書で規定される(例えば、参照により本明細書に取り込まれる、Elliottら、Lancet 344:1125−1127(1994)を参照のこと)。
【0028】
本明細書で使用されるように、「抗原結合領域」という用語は、抗原と相互作用し、抗体にその特異性および抗原に対する親和性を与えるアミノ酸残基を含む抗体分子の部分をいう。抗原結合領域は、抗原結合残基の正しい構造を維持するのに必要な「骨格」アミノ酸残基を含む。
【0029】
抗原という用語は、抗体により結合可能な分子または分子の部分をいい、それはさらに動物がその抗原のエピトープに選択的に結合可能な抗体を産生するようにすることができる。抗原は、1つまたは1つより多いエピトープを有しうる。
【0030】
エピトープという用語は、1つ以上の抗体の抗原結合領域で、抗体により認識され結合されうる抗原の部分をいうことを意味する。エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面群からなり、特異的な三次元構造特性ならびに特異的な電荷特性を有する。「阻害および/または中和エピトープ」とは、抗体が結合した時、インビボまたはインビトロで、より好ましくはインビボでエピトープを含む分子の生物学的活性の損失を生じるエピトープを意味し、それにはTNFαレセプターへのTNFαの結合が含まれる。
【0031】
投与
抗−TNFα抗体は種々の方法で患者に投与されうる。好ましい態様において、抗−TNFα抗体は吸入により(例えば、吸入剤またはスプレーでまたは噴霧ミストとして)投与される。他の投与経路には、鼻腔内、経口、点滴および/またはボーラス注射を含む静脈内、皮内、経皮(例えば、遅放性ポリマーで)、筋内、腹腔内、皮下、局所、硬膜外、頬等の経路が含まれる。他の適切な投与経路を使用して、例えば、上皮または粘膜皮膚内層を通して吸収を達成することもできる。抗体はまた、遺伝子療法により投与され得、そこでは、例えば、インビボの治療レベルで特定のタンパク質またはペプチドを発現および分泌されるベクターを介して、特定の治療タンパク質またはペプチドをコードするDNA分子が患者に投与される。さらに、抗−TNFα抗体は、薬理学上許容されうる界面活性剤(例えば、グリセリド)、賦形剤(例えば、ラクトース)、担体、希釈剤およびビヒクル等の生物学的に活性な薬剤の他の成分と共に投与されうる。所望であれば、一定の甘味剤、香味剤および/または着色剤もまた添加されうる。
【0032】
抗−TNFα抗体が、他の治療上の摂生または薬剤(例えば、多数の薬物摂生)の前に、それと同時に、またはそれに続けて、予防または治療的に個体に投与されうる。他の治療剤と同時に投与される抗−TNFα抗体は、同一または異なる組成で投与されうる。
【0033】
抗−TNFα抗体は、薬理学上許容しうる非経口ビヒクルに関連して溶液、懸濁液、乳濁液または凍結乾燥粉体として調剤されうる。かかるビヒクルの例には、水、生理食塩水、リンガー溶液、ブドウ糖溶液、および5%ヒト血清アルブミンである。リポソームおよび固定油等の非水性ビヒクルもまた、使用されうる。ビヒクルまたは凍結乾燥粉体は、等張性を維持する添加剤(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール)および化学安定性を維持する添加剤(例えば、緩衝液および保存料)を含みうる。調剤は、通常使用される技術により滅菌されうる。好ましい態様において、抗−TNFα抗体は、鼻腔内経路(吸入による)を介して投与される。適切な薬剤の担体は、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0034】
抗−TNFα抗体または抗原結合断片の「治療上有効量」は、個体に投与されると治療効力が十分な抗−TNFα抗体または抗原結合断片の量または投与量として、本明細書で規定される(例えば、喘息または気道の炎症に関連する症状または徴候、あるいは症状および徴候の両方を有意に低減または除去するのに十分な量)。個体に投与される投薬は、特定の抗−TNFα抗体の薬理的特性、投与の様式および経路;受容者の大きさ、年齢、性別、健康、体重および食物;治療される疾患または障害の症状の性質および程度、同時治療の種類、治療頻度および所望の効果を含む因子の変化により変化する。
【0035】
治療上有効量は、単回でまたは分割投与(例えば、数日間、数週間、数カ月の間隔があけられた投与系列)で投与され得、あるいは症状の性質および程度、同時治療の種類および所望の効果等の因子に依存する、徐放形態で投与されうる。他の治療上の摂生または薬剤が、本発明に関連して使用されうる。確立された投薬範囲の調節および操作は当業者の能力内で十分である。
【0036】
一度治療上有効量が投与されると、維持量の抗−TNFα抗体が個体に投与されうる。維持量は、治療上有効な投与量により得られる症状および/または徴候の低減または除去を維持するのに必要な抗−TNFα抗体の量である。単回または数日間または数週間の間隔があけられた投与系列(分割投与)の形態で、維持量が投与されうる。
【0037】
2回目またはそれに続く投与が、初期または前に個体に投与された投与量と同一、それ未満またはそれより多い投薬で投与されうる。2回目またはそれに続く投与は、疾患もしくは疾患の症状の再発(relapse )または拡大(flare-up)の間またはその直前が好ましい。例えば、2回目およびそれに続く投与が、前の投与から約1日〜30週間の間に与えられうる。2回、3回、4回またはそれ以上の全投与が、必要な場合には個体に送達されうる。
【0038】
内部投与に適切な投薬形態(組成物)は、1ユニット当たり約0.1ミリグラム〜約500ミリグラムの活性成分を一般的に含む。これらの製薬組成物において、活性成分は、組成物の全量に基づいて約0.5〜95重量%の量で通常存在する。
【0039】
ここで本発明を以下の実施例により説明するが、いかなる限定をも意図するものではない。
【実施例】
【0040】
実施例1 アレルギー性喘息に対するマウスモデルにおけるモノクローナル抗−TNFα抗体の効果
マウスは、肺の薬理学研究で使用される標準種である。本明細書に記載される実験で使用されるアレルギー性喘息に対するマウスモデルは、その表現型特性においてヒト喘息によく似ている。特に、両方の疾患は気管支周囲の炎症細胞浸潤、特に肺への好酸球の流入により特徴付けられる。したがって、マウスモデルが、ヒト疾患に対する良好な近似として役に立つ。
【0041】
抗−TNFα抗体
抗−TNFα抗体cV1q muG2aが、セントコア社(Centocor,Inc.)(Malvern,MA)により構築された。ラット抗−マウスTNFα抗体V1qを分泌するハイブリドーマ細胞を、ドイツ、ハイデルベルグのドイツガン研究センター(German Cancer Research Center,Heidelberg,Germany)のペーター・クラマー(Peter Krammer)から得た(Echtenacherら,J.Immunol.145:3762−3766(1990))。V1q抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードする遺伝子をクローン化した。クローン化した重鎖を、4つの異なる遺伝子発現ベクターに挿入し、ヒトIgG1、ヒトIgG3、マウスIgG1またはマウスIgG2a定常領域のいずれかでcV1q重鎖をコードした。V1q軽鎖遺伝子を他の発現ベクターに挿入し、ヒトκまたはマウスκ軽鎖定常領域のいずれかをコードした。
【0042】
SP2/0骨髄種細胞を異なる重鎖および軽鎖遺伝子構築物にトランスフェクトした。標準ELISAアッセイを使用してヒトまたはマウスIgGに対する細胞上清をアッセイすることにより、キメラV1q(cV1q)抗体を産生する細胞クローンを同定した。高産生クローンをサブクローン化して均一の細胞株を得た。マウスIgG1およびIgG2aバージョンを、それぞれC257AおよびC258と呼ぶ。タンパク質Aクロマトグラフィーにより、cV1q抗体を細胞上清から精製した。
【0043】
溶解性マウスTNFαに対する親和性を測定し、WEHI細胞をマウスTNFαの細胞毒性から保護する能力を試験し、マウスリンフォトキシンを中和または結合する能力を検査し、組換え膜貫通マウスTNFαを発現する細胞の補体−媒介溶菌を誘発するマウスIgG1およびIgG2aバージョンの能力を比較し、ならびに致死性投与量のLPS(内毒素)からマウスを保護するヒトIgG1バージョンの能力を検査することにより、cV1q抗体を特徴付けた。cV1qは、マウスTNF(muTNF)に高親和性で結合し、WEHI細胞の細胞毒性アッセイでmuTNFを中和し、膜貫通muTNFを発現する細胞のイソタイプ−依存様式の補体−媒介細胞毒性を誘発する。さらに、cV1qは、マウスリンフォトキシン細胞毒性活性を中和しなかった。cV1q抗体のマウスIgG2aバージョンを以下の実験手順で使用し、本明細書でcV1q muG2a抗体と呼ぶ。
【0044】
実験手法
7週齢の雌Balb/CJマウス50匹(体重15〜23g)を、0.2mlの滅菌生理食塩水中1.6mgの水酸化アルミニウムゲル懸濁液(Intergen, Inc., Purchase, NY)に混合した10μgの卵白アルブミン(OA;Sigma Chemical Co., St. Louis, MO )を、0、7および14日目に腹腔内注射することにより免疫感作した。この懸濁液は、各マウスに腹腔内注射する1時間前に調製した。
【0045】
免疫感作したマウス50匹を5群(10マウス/群)に分け、以下のように処理した:
【0046】

【0047】
21日目にエーロゾル化OA(滅菌生理食塩水中5%w/v(Baxter, Inc., Chicago, IL ))に20分間曝露することにより、マウスをOAで攻撃した。エーロゾルをPARI−Master噴霧器(PARI-Respiratory, Richmond, VA)により作製した。その噴出口を、動物を入れた小さなPlexiglas(登録商標)チャンバー(Pena-Plas, Jessup, PA )に連結した。
【0048】
24日目、OAまたは生理食塩水のエーロゾル曝露の72時間後、動物を眼窩後から(retroorbitally)採血し、全血清IgE解析のために血清を回収し、凍結した。採血後、ウレタン(0.2g/kg)で動物を麻酔し、気管支肺胞洗浄(BAL)を行った。簡単には、気管を露出し、カニューレを挿入した。Ca2+およびMg2+を含有せず0.1%EDTAを含有する、2×0.5mlの滅菌ハンクス緩衝塩溶液(HBSS;Gibco, Grand Island, NY )で肺を洗浄した。穏やかに吸引することにより洗浄液を30秒後に回収し、動物ごとにプールした。試料を2000rpmで15分間5℃で遠心分離した。Ca2+およびMg2+を含有せず0.1%EDTAを含有する1mlのHBSSで個々のペレットを再形成(reconstitute)した。BAL全細胞数および白血球分画(好酸球)数を、Technicon H1(Roche Diagnostics, Switzerland)およびサイトスライド(cytoslide )のそれぞれを用いて測定した。
【0049】
血清を各試料から分離し、ELISAアッセイによりIgE抗体についてアッセイした。簡単には、マイクロタイタープレートを100μlのモノクローナルラット抗マウスIgE抗体でコートし、1時間(±15分)、37℃(±2°)で、および一晩4℃(±2°)でインキュベートした。プレートを300μlの1%ウシ血清アルブミン(BSA)で1時間(±15分)、37℃(±2°)でブロックした。プレートを5回洗浄した。リン酸緩衝生理食塩水+0.05% Tween−20中の1%BSA(PBST)で、被検血清を1:3、1:6、1:12および1:24に希釈した。希釈した血清100μlを1組の(duplicate) ウェルに添加し、1.5時間(±15分)、37℃(±2°)でインキュベートした。プレート周囲の外側ウェルは、周辺(perimeter) 効果を回避するため使用しなかった。100μlのウサギ抗マウスIgEを各ウェルに加え、プレートを1.5時間(±15分)、37℃(±2°)でインキュベートした。100μlのビオチン化ヤギ抗ウサギIgGを各ウェルに加え、プレートを1.5時間(±15分)、37℃(±2°)でインキュベートした。ストレプトアビジンと結合したホースラディッシュペルオキシダーゼ(100μl)を各ウェルに加え、プレートを15分間(±2分)、37℃(±2°)でインキュベートした。各インキュベーションの間に、プレートをPBSTで5回洗浄した。TMBペルオキシダーゼ基質(100μl)を各ウェルに加え、37℃(±2°)でインキュベートした。100μlの1Mリン酸を各ウェルに加え、反応を終了させた。Molecular Devises Corporation社(Sunnyvale, CA )のUVMax Microplateリーダーを用い、450nmでの吸光度を読みとった。モノクローナルマウスIgE抗DNP(SPE−7)(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO )を用いた標準曲線の作成をアッセイと共に行った。
【0050】
種々の処理群由来の全細胞、好酸球および血清IgEレベルを、ANOVAを用い、続いて多重比較検定(Zar, J.H., Biostatistical Analysis, Prentice Hall: Englewood, NJ, p.185 (1984))により比較した。
【0051】
全細胞、好酸球および血清IgE
種々の処理群由来のBAL全細胞、好酸球および全血清IgEレベルを表1に示す。
【0052】
【表1】



【0053】
図1に示すように、免疫感作したマウスへの20分間のOA(5%)曝露は、生理食塩水で攻撃したマウスと比べ、BAL全細胞の約2倍の増加を生じた。気管支肺胞洗浄好酸球は、生理食塩水で攻撃したマウスで実質的に0から、OA攻撃72時間後で0.42±0.11×106 に増加した(図1)。OA攻撃72時間後のBAL全細胞の増加は、主に好酸球の増加に起因した(図2)。図3に示すように、全血清IgEレベルは、生理食塩水で攻撃した免疫感作マウスと比べ、免疫感作したマウスの抗原攻撃後で56%増加した。
【0054】
OA攻撃の1時間前およびOA攻撃の24〜48時間後に陽性対照デキサメタゾン(1mg/kg、i.p.、ステロイド系抗炎症性)を投与すると、全細胞および好酸球の抗原誘導性の増加が、ビヒクル処理群と比べてそれぞれ36%および69%阻害された(図1)。デキサメタゾンはまた、ビヒクル処理群と比べて全血清IgEレベルの30%低下を生じた(図3)。
【0055】
抗TNFαモノクローナル抗体であるcV1q muG2a抗体を、1mg/kgおよび10mg/kgで、抗原攻撃(OA攻撃)の1時間前ならびに抗原攻撃の24時間後および48時間後に静脈内投与すると、ビヒクル処理群と比べ、全細胞においてそれぞれ18%および37%の減少を生じた(図1)(10mg/kgの抗TNFα処理群において0.52±0.09×106 /mlに対してビヒクル処理群において0.83±0.18×106 /ml、有意差なし(NS))。また、cV1q muG2a抗体の投与を、1mg/kgおよび10mg/kgで行なうと、BAL好酸球における抗原誘導性(OA誘導性)の増加は、ビヒクル処理動物と比べてそれぞれ67%および79%阻害された(図1)(10mg/kgの抗TNFα処理群において0.09±0.04×106 /mlに対してビヒクル処理群において0.42±0.11×106 /ml、p<0.05)。これらの結果は、抗TNFα抗体が、免疫感作したマウスにおける抗原誘導性の肺での炎症細胞蓄積を調節することを示す。
【0056】
要約すると、cV1q muG2a抗体を、1mg/kgおよび10mg/kgで、OA攻撃の1時間前およびOA攻撃の24〜48時間後に静脈内投与すると、ビヒクル処理動物と比べ、それぞれ67%および79%のBAL好酸球の減少を生じた。したがって、抗TNFα抗体での処理は、BALにおける全細胞および好酸球の数の有意な減少をもたらした。
【0057】
薬物動態学
血清試料中におけるcV1q抗体濃度を、酵素イムノアッセイ(EIA)により解析した。簡単には、cV1q抗体に特異的なモノクローナル抗イディオタイプ抗体(Lot SM970109;Centocor, Inc., Malvern, PA )を96穴マイクロタイタープレートにコートした。次いで、プレートを洗浄し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)/リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液でブロックし、非特異的結合を抑制した。このブロッキング溶液を除去した。cV1q muG2a抗体標準および希釈被検試料をプレートに加え、2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、異なる抗cV1qモノクローナル抗体のビオチン化体をすべてのウェルに加え、2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、第3のインキュベーション期間の際は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ−ストレプトアビジンコンジュゲートとともにインキュベートした。最後の酵素的発色工程を、基質としてo−フェニレンジアミン(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO )を用いて行なった。4N硫酸の添加により発色を止め、マイクロタイタープレート分光光度計を用いて490nmで吸光度を読み取った。cV1q抗体標準濃度およびそれに対応する光学濃度値を用い、コンピュータ処理による、4変数方程式に対する最小二乗法フィットにより標準曲線を作成した。次いで、試料cV1q抗体濃度を、標準曲線および該試料に対する血清希釈率を用いて決定した。
【0058】
結果
1mg/kgおよび10mg/kgのcV1q抗体で処理したマウス由来の血清試料およびBAL試料中のcV1q抗体濃度を、それぞれ表2の上側および下側に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
ビヒクル対照群(n=10)由来の血清試料および気管支肺胞洗浄(BAL)試料は、検出可能なレベルのcV1q muG2a(cV1q)抗体を有しなかった(<0.04μg/ml)。1mg/kgでのcV1q抗体の反復(n=3)静脈投与後、これらの抗体処理マウス(n=10)由来の血清試料は、cV1q抗体濃度の平均±標準偏差が27.1±5.06μg/mlであり;これらのマウス由来のBAL試料は、0.067±0.035μg/mlの平均cV1q抗体濃度を有した。10mg/kgの抗体の反復(n=3)静脈投与後の平均血清cV1q抗体濃度(n=9)は302±40.8μg/mlであり;これらのマウス由来のBAL試料の平均cV1q抗体濃度は0.55±0.48μg/mlであった。
【0061】
血清試料およびBALマウス試料由来のcV1q抗体の測定された濃度により、抗TNFα抗体での用量依存性処理、および静脈投与後のBALにおいて抗体が検出可能であることが確認される。
【0062】
実施例2 マウスにおける抗原誘導性の肺での炎症細胞蓄積:組織病理学的評価
免疫感作した雌Balb/CJマウスの肺において組織病理学的評価を行なった。
【0063】
実験手法
数週齢の雌Balb/CJマウス20匹を、0.2mlの滅菌生理食塩水中1.6mgの水酸化アルミニウムゲル懸濁液(Intergen, Inc., Purchase, NY)に混合した10μgのOA(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO )を、0、7および14日目に腹腔内注射することにより免疫感作した。この懸濁液は、各マウスに腹腔内注射する1時間前に調製した。
【0064】
免疫感作したマウス20匹を2群(10マウス/群)に分けた。一方のマウス群には、OA攻撃の1時間前ならびにOA攻撃の24時間後および48時間後に、10mg/kgのcV1q muG2a抗体(グループ2)を静脈内投与した。他方のマウス群には、OA攻撃の1時間前ならびにOA攻撃の24時間後および48時間後に、10mg/kgのダルベッコPBS(Centocor, Inc., Malvern, PA )(ビヒクル)(グループ1)を静脈内投与した。21日目に、エーロゾル化したもの(滅菌生理食塩水中5%w/v(Baxter, Inc., Chicago, IL ))に20分間曝露することにより、マウスをOA(抗原)で攻撃した。エーロゾルをPARI−Master噴霧器(PARI-Respiratory, Richmond, VA)により作製した。その噴出口を、動物を入れた小さなPlexiglas(登録商標)チャンバー(Pena-Plas, Jessup, PA )に連結した。
【0065】
抗原攻撃の72時間後、マウスを屠殺し、肺を取り出して10%中性緩衝ホルマリン(NBF;Sigma Chemical Co., St. Louis, MO )で満たした。次いで、肺をパラフィンに包埋し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。鏡検での変化を、変化の重度に応じて、1〜4段階(最小、微小/軽度、中等度および顕著/重度)で評価した。
【0066】
結果
評価できなかった鏡検での変化は存在した(Present) (P)で示した。すべての鏡検所見を表3に示す。
【0067】
【表3】


【0068】
両被検群の個々のマウスの肺の3つの領域において、炎症細胞蓄積が存在し、それを数えた。白血球蓄積を、気管支領域の脈管周辺の脈管周囲組織、肺胞領域の間質組織および胸膜/胸膜下組織において評価した。両群の数匹のマウスは、気管支領域の脈管周辺に脈管周囲水腫を有した。両群の個々のマウスは、間質組織の毛細脈管においてエオシン好性フィブリン様沈着物を有した。グループ2の6番および10番のマウスは、気管支周囲のリンパ節において、それぞれ中等度および重度のエオシン染色性マクロファージの蓄積を有した。グループ2の10番のマウスはまた、胸膜組織および炎症細胞が混在した気管支周囲組織において、エオシン染色性マクロファージの重度の蓄積を有した。
【0069】
グループとしてグループ1(ビヒクル処理マウス)と比較すると、組織病理学的解析では、グループ2のマウス(cV1q処理マウス)において、脈管周囲白血球、間質白血球および胸膜白血球の数の有意な低下が示された。これらの結果は、抗TNFα抗体が、免疫感作したマウスにおける抗原誘導性の肺での炎症細胞蓄積を調節することを示す。
【0070】
実施例3:ステロイド耐性喘息のインフリキシマブ(Infliximab)治療
軽度の慢性閉塞性肺疾患および重度のステロイド依存性喘息を有する53歳の高齢女性(N.L.)は、40mgの経口プレドニゾン、ステロイド吸入、イプラトロピウム吸入、アルブテロール吸入、サルメテロール(salmeterol)吸入、経口テオフィリンおよびジレウトン(zileuton)による集中治療にもかかわらず、数週間にわたって喘息悪化を呈した。この内容はあるが効果のなかったプログラムによる副作用は、体重増加、皮膚の薄層化および挫傷を含んだ。
【0071】
インフリキシマブでの治療は表4に従って実施した。
【0072】
【表4】

【0073】
患者は、治療期間において、4回の注入で合計1,200mgのインフリキシマブを投与された。
【0074】
結果
喘息症状の低減、夜間の目覚めの停止、ステロイド使用の低減および吸入治療依存の低減が認められた。この改善は、インフリキシマブ治療の24時間以内に始まった。それを、表5の患者のダイアリーカードに記録する。
【0075】
【表5】



【0076】
最大流量スコア(peak flow score )は、呼吸試験で測定したときの、患者について記録された最大空気流速度である。前処理の最大流量スコアが160〜200ml/分であることとは対照的に、インフリキシマブ治療日程では、340〜400ml/分のピークが記録された。低いスコアよりも、高い最大流量スコアの方がよい。
【0077】
インフリキシマブ治療の間、アルブテロール吸入は必要でなかった。また、ステロイドの使用は、1日おきに10mgに低下した。
【0078】
患者の生活の質は、インフリキシマブの投与を受けると大きく改善された。例えば、患者の生活の質の反応を比較すると、患者の喘息は良好に制御された状態となり、インフリキシマブ治療の第2日目以降、夜間の目覚めが消失した。
【0079】
表6は、肺機能検査における客観的な改善を示す。
【0080】
【表6】

【0081】
努力肺活量(Forced voluntary capacity )(FVC)は、呼気流量の測定値である。1秒間における努力呼気肺活量(FEV1 )は、1秒間に患者が吐き出すことができる空気の最大量である。努力呼気流量(FEF25〜75)は、1秒の第1四半期と第3四半期の間の流速測定値である。低値よりも高値の方がよい。観察されたFEV1 値は、約2年の治療の間で該患者について記録された最大値であった。
【0082】
この53歳の高齢女性患者は、インフリキシマブ治療の間、治療耐性喘息の兆候および症状の両方において迅速かつ継続的な改善を有した。インフリキシマブ治療は、耐性の低い治療または有効でない治療の必要性を低減または削減した。
【0083】
本発明をその好ましい態様を参照して具体的に示し記載したが、当業者は、添付の請求の範囲により規定される本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく本発明において形態および詳細の種々の変更を行いうることを理解するだろう。
【0084】
[1] 喘息または気道の炎症の治療を必要とする個体の治療において、喘息または気道の炎症の治療に使用するための薬剤を製造するための抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片の使用。
[2] 炎症細胞の肺への蓄積の減少を必要としている個体において炎症細胞の肺への蓄積を減少させるのに使用するための薬剤を製造するための抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片の使用。
[3] 抗体がキメラ抗体である上記[1]または[2]記載の使用。
[4] キメラ抗体がcA2モノクローナル抗体へのTNFαの結合を競合的に阻害する、上記[3]記載の使用。
[5] キメラ抗体がcA2モノクローナル抗体である上記[3]記載の使用。
[6] 治療上有効量の抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片を個体に投与する工程を含む、個体における喘息の治療方法。
[7] 抗体がキメラ抗体である上記[6]記載の方法。
[8] キメラ抗体がcA2モノクローナル抗体へのTNFαの結合を競合的に阻害する、上記[7]記載の方法。
[9] キメラ抗体がcA2モノクローナル抗体である上記[7]記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
喘息または気道の炎症の治療を必要とする個体において、喘息または気道の炎症の治療に使用するための薬剤を製造するための抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片の使用であって、前記抗体はヒト定常領域を含み、前記抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片は、cA2(REMICADE(登録商標)インフリキシマブ)のヒトTNFαへの結合を競合的に阻害する、前記使用。
【請求項2】
炎症細胞の肺への蓄積の減少を必要としている個体の肺において炎症細胞の蓄積を減少させるのに使用するための薬剤を製造するための抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片の使用であって、前記抗体はヒト定常領域を含み、前記抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片は、cA2(REMICADE(登録商標)インフリキシマブ)のヒトTNFαへの結合を競合的に阻害する、前記使用。
【請求項3】
抗体がキメラ抗体である請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
喘息または気道の炎症がステロイド耐性喘息である請求項1または3に記載の使用。
【請求項5】
喘息または気道の炎症の治療を必要とするヒトにおいて、喘息または気道の炎症の治療に使用するための薬剤を製造するための抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片の使用であって、前記抗体はヒト定常領域を含み、前記抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片は、(i)cA2(REMICADE(登録商標)インフリキシマブ)のヒトTNFαへの結合を競合的に阻害し、かつ(ii)1.04×1010−1のアフィニティー定数でヒトTNFαに結合する、前記使用。
【請求項6】
炎症細胞の肺への蓄積の減少を必要としているヒトの肺において炎症細胞の蓄積を減少させるのに使用するための薬剤を製造するための抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片の使用であって、前記抗体は、ヒト定常領域を含み、前記抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片は、(i)cA2(REMICADE(登録商標)インフリキシマブ)のヒトTNFαへの結合を競合的に阻害し、かつ(ii)1.04×1010−1のアフィニティー定数でヒトTNFαに結合する、前記使用。
【請求項7】
前記断片が、Fab、Fab’、F(ab’)およびFvからなる群より選択される請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記抗体またはその抗原結合断片が、免疫グロブリン クラスIgG1またはIgG3のものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記薬剤が、非経口投与によってヒトに投与されるためのものである請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記薬剤が、吸入、鼻腔内投与、注入、静脈内投与、皮下投与または筋内投与によってヒトに投与されるためのものである請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記薬剤が、請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片と、薬理学上許容しうる担体とを含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記薬剤が、約0.1mg〜500mg/kgの抗−TNFα抗体もしくはその抗原結合断片を含む単回または分割投与で投与されるためのものである請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片が、4回の注入で合計1200mgの抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片で投与される請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
喘息の治療を必要とするヒトにおいて、喘息の治療に使用するための薬剤を製造するための抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片の使用であって、前記抗体はヒト定常領域を含み、前記抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片は、cA2(REMICADE(登録商標)インフリキシマブ)のヒトTNFαへの結合を競合的に阻害する、前記使用。
【請求項15】
喘息の治療を必要とするヒトにおいて、喘息の治療に使用するための薬剤を製造するための抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片の使用であって、前記抗体はヒトIgG1定常領域を含み、前記抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片は、cA2(REMICADE(登録商標)インフリキシマブ)のヒトTNFαへの結合を競合的に阻害する、前記使用。
【請求項16】
ステロイド耐性喘息の治療を必要とするヒトにおいて、ステロイド耐性喘息の治療に使用するための薬剤を製造するための抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片の使用であって、前記抗体は、ヒト定常領域を含み、前記抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片は、(i)cA2(REMICADE(登録商標)インフリキシマブ)のヒトTNFαへの結合を競合的に阻害し、かつ(ii)1.04×1010−1のアフィニティー定数でヒトTNFαに結合する、前記使用。
【請求項17】
ステロイド耐性喘息の治療を必要とするヒトにおいて、ステロイド耐性喘息の治療に使用するための薬剤を製造するための抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片の使用であって、前記抗体は、ヒトIgG1定常領域を含み、前記抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片は、(i)cA2(REMICADE(登録商標)インフリキシマブ)のヒトTNFαへの結合を競合的に阻害し、かつ(ii)1.04×1010−1のアフィニティー定数でヒトTNFαに結合する、前記使用。
【請求項18】
努力呼気肺活量の値を上昇させる必要があるヒトにおいて、努力呼気肺活量の値を上昇させるのに使用するための薬剤を製造するための抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片の使用であって、前記抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片は、(i)cA2(REMICADE(登録商標)インフリキシマブ)のヒトTNFαへの結合を競合的に阻害し、かつ(ii)1.04×1010−1のアフィニティー定数でヒトTNFαに結合する、前記使用。
【請求項19】
喘息または気道の炎症の治療を必要とする個体において、喘息または気道の炎症の治療に使用するための薬剤であって、抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片を含み、前記抗体はヒト定常領域を含み、前記抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片は、cA2(REMICADE(登録商標)インフリキシマブ)のヒトTNFαへの結合を競合的に阻害する、前記薬剤。
【請求項20】
炎症細胞の肺への蓄積の減少を必要としている個体の肺において炎症細胞の蓄積を減少させるのに使用するための薬剤であって、抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片を含み、前記抗体はヒト定常領域を含み、前記抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片は、cA2(REMICADE(登録商標)インフリキシマブ)のヒトTNFαへの結合を競合的に阻害する、前記薬剤。
【請求項21】
抗体がキメラ抗体である請求項19または20記載の薬剤。
【請求項22】
喘息または気道の炎症がステロイド耐性喘息である請求項19または21に記載の薬剤。
【請求項23】
喘息または気道の炎症の治療を必要とするヒトにおいて、喘息または気道の炎症の治療に使用するための薬剤であって、抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片を含み、前記抗体はヒト定常領域を含み、前記抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片は、(i)cA2(REMICADE(登録商標)インフリキシマブ)のヒトTNFαへの結合を競合的に阻害し、かつ(ii)1.04×1010−1のアフィニティー定数でヒトTNFαに結合する、前記薬剤。
【請求項24】
炎症細胞の肺への蓄積の減少を必要としているヒトの肺において炎症細胞の蓄積を減少させるのに使用するための薬剤であって、抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片を含み、前記抗体は、ヒト定常領域を含み、前記抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片は、(i)cA2(REMICADE(登録商標)インフリキシマブ)のヒトTNFαへの結合を競合的に阻害し、かつ(ii)1.04×1010−1のアフィニティー定数でヒトTNFαに結合する、前記薬剤。
【請求項25】
前記断片が、Fab、Fab’、F(ab’)およびFvからなる群より選択される請求項19〜24のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項26】
前記抗体またはその抗原結合断片が、免疫グロブリン クラスIgG1またはIgG3のものである請求項19〜25のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項27】
前記薬剤が、非経口投与によってヒトに投与されるためのものである請求項19〜26のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項28】
前記薬剤が、吸入、鼻腔内投与、注入、静脈内投与、皮下投与または筋内投与によってヒトに投与されるためのものである請求項19〜26のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項29】
前記薬剤が、さらに、薬理学上許容しうる担体を含む、請求項19〜28のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項30】
前記薬剤が、約0.1mg〜500mg/kgの抗−TNFα抗体もしくはその抗原結合断片を含む単回または分割投与で投与されるためのものである請求項19〜29のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項31】
抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片が、4回の注入で合計1200mgの抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片で投与される請求項19〜29のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項32】
喘息の治療を必要とするヒトにおいて、喘息の治療に使用するための薬剤であって、抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片を含み、前記抗体はヒト定常領域を含み、前記抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片は、cA2(REMICADE(登録商標)インフリキシマブ)のヒトTNFαへの結合を競合的に阻害する、前記薬剤。
【請求項33】
喘息の治療を必要とするヒトにおいて、喘息の治療に使用するための薬剤であって、抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片を含み、前記抗体はヒトIgG1定常領域を含み、前記抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片は、cA2(REMICADE(登録商標)インフリキシマブ)のヒトTNFαへの結合を競合的に阻害する、前記薬剤。
【請求項34】
ステロイド耐性喘息の治療を必要とするヒトにおいて、ステロイド耐性喘息の治療に使用するための薬剤であって、抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片を含み、前記抗体は、ヒト定常領域を含み、前記抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片は、(i)cA2(REMICADE(登録商標)インフリキシマブ)のヒトTNFαへの結合を競合的に阻害し、かつ(ii)1.04×1010−1のアフィニティー定数でヒトTNFαに結合する、前記薬剤。
【請求項35】
ステロイド耐性喘息の治療を必要とするヒトにおいて、ステロイド耐性喘息の治療に使用するための薬剤であって、抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片を含み、前記抗体は、ヒトIgG1定常領域を含み、前記抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片は、(i)cA2(REMICADE(登録商標)インフリキシマブ)のヒトTNFαへの結合を競合的に阻害し、かつ(ii)1.04×1010−1のアフィニティー定数でヒトTNFαに結合する、前記薬剤。
【請求項36】
努力呼気肺活量の値を上昇させる必要があるヒトにおいて、努力呼気肺活量の値を上昇させるのに使用するための薬剤であって、抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片を含み、前記抗−TNFα抗体またはその抗原結合断片は、(i)cA2(REMICADE(登録商標)インフリキシマブ)のヒトTNFαへの結合を競合的に阻害し、かつ(ii)1.04×1010−1のアフィニティー定数でヒトTNFαに結合する、前記薬剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−6464(P2011−6464A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195818(P2010−195818)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【分割の表示】特願2000−602303(P2000−602303)の分割
【原出願日】平成12年3月1日(2000.3.1)
【出願人】(591123551)セントコール, インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】CENTOCOR,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】200 Great Valley Parkway, Malvern, Pennsylvania 19355−1307, United States of America
【Fターム(参考)】