説明

喘息の治療及び診断のための組成物及び方法

喘息患者のサブタイプの治療及び診断のための組成物、キット、及び方法が提供される。更には、効果的な喘息治療薬を同定し、喘息治療薬に対する応答性を予測するための方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2008年3月31日出願の米国仮出願番号第61/072572号、2008年4月1日出願の同第61/041480号、2008年5月20日出願の同第61/128383号、及び2009年1月16日出願の同第61/205392号の優先権を主張する。
【0002】
喘息患者のサブタイプの治療及び診断のための組成物及び方法が提供される。更には、効果的な喘息治療薬を同定し、喘息治療薬に対する応答性を予測する方法が提供される。
【背景技術】
【0003】
喘息は、伝統的に、2型ヘルパーT細胞(Th2)プロセスによって引き起こされ、インターロイキン(IL)−4、IL−5、及びIL−13を含むサイトカインによって媒介されるエアロアレルゲン誘導性の炎症に起因すると考えられている。IL−13は、活性化されたT細胞、好塩基球、好酸球、及びマスト細胞により産生される多面的なTh2サイトカインであり、前臨床モデルでの喘息の病原において強く示唆されてきた[2]。ヒト喘息患者の気道においてIL−13のレベルの上昇が検出されているが、このような上昇は喘息患者の一部でしか観察されない[3-6]。最近の研究は、Th2サイトカインがどのように喘息様の病態及び生理を生じさせるかの理解を目的とするようになった[49,50]。
【0004】
多くの場合、喘息は、気道の好酸球の浸潤を特徴としているが、この疾病には別の形態の炎症によって引き起こされる他のサブタイプが存在するという証拠が増加している[1、39、48]。例えば、喘息における気道炎症の細胞成分の研究により、喘息には、好酸球性表現型と非好酸球性表現型とが別個に存在するという証拠が得られている[1、39、48]。喘息のこれらの臨床像及び細胞表現型の基礎となっている分子機構が異なるかどうかは不明である。喘息の各分子表現型のバイオマーカーの同定及び開発は、肺におけるTh2応答を特に標的とする新しい喘息の治療法の基礎研究の方向と臨床的用途とを導くと考えられる。
【0005】
ペリオスチン(periostin)は、繊維症に関連して分泌されるタンパク質であり、その発現は、気管支上皮細胞[7、8]及び気管支繊維芽細胞[9]において組換えIL−4及びIL−13により上方制御される。ペリオスチンは、ヒト喘息患者の気管支上皮細胞[8]及び上皮下気管支層[9]と、喘息のマウスモデル[10]において、高レベルでインビボ発現される。ペリオスチンは、IL−13依存的に、好酸球性食道炎患者の食道上皮においても高レベルで発現される[11]。ペリオスチンの発現の上昇は複数種の上皮由来の癌[64-67]において観察されており、高レベルの可溶性ペリオスチンが複数の癌患者の血清に観察されている[64、68-70]。
【0006】
ステロイドを使用していない42名の軽度〜中等度の喘息患者と28名の健康なコントロール被験者とから採取した気管支上皮細胞に対し、全ゲノム発現マイクロアレイ解析を実施した[8]。これらの試験において、全ての喘息患者と全ての健康なコントロールとの間で発現が最も異なっていた上皮遺伝子のうちの三つは、ペリオスチン、CLCA1、及びセルピンB2であった[8]。更に、これらの遺伝子は、7日間の吸入ステロイド薬(ICS)による治療を行った後、気管支上皮細胞において有意に下方制御された[8]。これら三つの遺伝子は全て、インビトロでの組換えIL−13治療により気管支上皮細胞に誘導され、それらの発現は、細胞培養培地にステロイド薬を添加することにより顕著に弱まった[8]。
【0007】
今日まで、このような全ゲノム発現分析によって、処置に対する個々の喘息患者の治療的応答を予後判定又は予測する遺伝的バイオマーカーは同定されておらず、また喘息患者のサブタイプを区別する遺伝的バイオマーカーも同定されていない。加えて、治療的処置への応答を予後判定又は予測できるか、又は喘息のサブタイプを診断できる広い臨床的利用能を有する信頼性の高い非遺伝的バイオマーカーも同定されていない。したがって、喘息患者の治療のために、特定の患者に有効な治療薬を探すには、少なくない試行錯誤が伴うことになる。このような試行錯誤は、最も有効な治療法を探すために、患者にとって大きな危険と不快さを強いることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、いずれの患者がいずれの治療に反応するかを判定する有効性の高い手段、及びそのような判定を喘息患者のための有効性の高い治療に取り込む手段が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここに記載する本発明は、上記の必要を満たし、且つ他の利点を提供するものである。
【0010】
気管支上皮の遺伝子発現シグネチャーを使用して、本発明者らは、喘息の異なる分子サブタイプを定義した。驚くべきことに、IL−4又はIL−13による刺激によって上方制御されることが既知である遺伝子とその発現が強く相関する一組の遺伝子に基づくデータを目的変数ありでクラスタリングしたところ、喘息患者のクラスターが一つではなく二つであることが分かった。更に、これらの二分された喘息患者のサブセットの分析により、「IL−4/13シグネチャー」の状態と、血清の総IgEレベル、血清のCEAレベル、血清ペリオスチンレベル、末梢血好酸球増加、(気管支肺胞洗浄検査)BAL好酸球増加、及び吸入ステロイド薬への応答性との間に有意な関連性があることが判明した(それぞれ、ウィルコクソン順位和検定によりp<0.05)。
【0011】
したがって、本発明は、喘息患者の亜集団の診断方法に関し、本方法は、POSTN、CST1、CCL26、CLCA1、CST2、PRR4、セルピンB2、CEACAM5、iNOS、セルピンB4、CST4、PRB4、TPSD1、PTSG1、MFSD2、CPA3、GPR105、CDH26、GSN、C2ORF32、TRACH2000196(TMEM71)、DNAJC12、RGS13、SLC18A2、セルピンB10、SH3RF2、FCER1B、RUNX2、PTGS1、及びALOX15から選択された遺伝子のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせの遺伝子発現を測定することを含む。一実施形態では、遺伝子発現は、POSTN、CST1、CST2、CCL26、CLCA1、PRR4、PRB4、セルピンB2、CEACAM5、iNOS、セルピンB4、CST4、及びセルピンB10からなる群より選択された遺伝子のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせを測定する。一実施形態によれば、遺伝子発現はマイクロアレイにより測定する。別の実施形態によれば、遺伝子発現は、前記遺伝子のタンパク質発現レベルを観察することにより測定する。別の実施形態によれば、遺伝子発現は、健康なコントロールと比較したとき、対象の遺伝子のmRNAレベルが、コントロール遺伝子のmRNAレベルの2.5倍を上回った場合に上昇したとみなした。別の実施形態では、対象の遺伝子のmRNAレベルが、健康なコントロール遺伝子の発現レベルの3倍、5倍、10倍、15倍、25倍、又は30倍を上回った。一実施形態によれば、遺伝子発現は、PCR法、マイクロアレイ法、又は免疫アッセイ法からなる群より選択された方法により測定した。一実施形態では、マイクロアレイ法は、ストリンジェントな条件の下で上記遺伝子をコードする核酸分子にハイブリダイズすることが可能な1又は複数の核酸分子を有するか、又は上記遺伝子によりコードされる1又は複数のタンパク質に結合できる1又は複数のポリペプチド(例えばペプチド又は抗体)を有するマイクロアレイチップの使用を含む。一実施形態では、PCR法はqPCRである。一実施形態によれば、免疫アッセイ法は、上記の患者試料中において、上記の遺伝子から発現されるタンパク質に抗体を結合させるステップと、患者試料のタンパク質レベルが上昇しているかどうかを決定するステップとを含む。一実施形態によれば、コントロール遺伝子は、アクチン、GAPDH、GASB、及びGUSBからなる群より選択されるハウスキーピング遺伝子である。
【0012】
本発明は、以下の遺伝子、即ち、POSTN、CST1、CST2、CCL26、CLCA1、PRR4、セルピンB2、CEACAM5、iNOS、セルピンB4、CST4、及びセルピンB10、又はその断片をコードする核酸配列を含むマイクロアレイチップを提供する。本発明は、以下の遺伝子、即ち、POSTN、CST1、CCL26、CLCA1、CST2、PRR4、セルピンB2、CEACAM5、iNOS、セルピンB4、CST4、PRB4、TPSD1、PTSG1、MFSD2、CPA3、GPR105、CDH26、GSN、C2ORF32、TRACH2000196(TMEM71)、DNAJC12、RGS13、SLC18A2、セルピンB10、SH3RF2、FCER1B、RUNX2、PTGS1、及びALOX1、又はその断片をコードする核酸配列を含むマイクロアレイチップを提供する。
【0013】
本発明は、本発明の治療薬によって処置される喘息患者の亜集団を提供する。この亜集団では、喘息患者の気道上皮細胞中のMuc5AC:MUC5Bのタンパク質又はmRNAのレベルの割合が25より大きい。
【0014】
本発明は、血清CEAレベル、血清IgEレベル、血清ペリオスチンレベル、末梢血好酸球数、及び気管支肺胞洗浄液(BAL)中の好酸球の割合(%)から選択された全身性バイオマーカーの一回の測定値又は測定値の組み合わせを取得することにより、喘息患者の亜集団を診断する方法にも関する。全身性バイオマーカーは、一般に非遺伝的バイオマーカーであり、通常、非侵襲性の手順、例えば、限定されないが、血液又は血清や血漿のような血液成分の収集により取得された試料中において測定される。一実施形態によれば、100IU/mlのIgEレベル及び/又は0.14×10e9/L個の好酸球を上回る場合に、患者集団は、本発明の治療薬により処置すべきことが予測される。
【0015】
本発明は、喘息の治療法に関し、本方法は、POSTN、CST1、CCL26、CLCA1、CST2、PRR4、セルピンB2、CEACAM5、iNOS、セルピンB4、CST4、PRB4、TPSD1、PTSG1、MFSD2、CPA3、GPR105、CDH26、GSN、C2ORF32、TRACH2000196(TMEM71)、DNAJC12、RGS13、SLC18A2、セルピンB10、SH3RF2、FCER1B、RUNX2、PTGS1、ALOX15から選択された遺伝子のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせのレベルの上昇を示す患者に対し、治療薬を投与することを含む。一実施形態によれば、患者は、ペリオスチン、CST1、CST2、CCL26、CLCA1、PRR4、セルピンB2、CEACAM5、iNOS、PRB4、セルピンB4、セルピンB10及びCST4からなる群より選択された遺伝子のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせのレベルの上昇を示す。一実施形態によれば、治療対象となる患者は、軽度〜中等度の、ステロイド未使用の(ステロイドによる治療を受けたことが無い)喘息患者である。別の実施形態によれば、治療対象の患者は、中等度〜重度の、ステロイド抵抗性の(ステロイドに非応答性の)喘息患者である。このような患者は、治療的に有効な量の治療薬により処置される。一実施形態では、患者は、TH2経路により誘導された喘息を有している。
【0016】
一実施形態によれば、治療薬は、抗IL13/IL4経路阻害薬である。別の実施形態によれば、治療薬はTH2に誘導された喘息経路を標的とする。例示的な標的には、限定しないが、IL−9、IL−5、IL−13、IL−4、OX40L、TSLP、IL−25、IL−33、及びIgEといったリガンド又はサイトカインと、IL−9レセプター、IL−5レセプター、IL−4レセプターα、IL−13レセプターα1及びIL−13レセプターα2、OX40、TSLP−R、IL−7Rα(TSLPのコレセプター)、IL17RB(IL−25のレセプター)、ST2(IL−33のレセプター)、CCR3、CCR4、CRTH2、FcεRI、及びFcεRII/CD23(IgEのレセプター)が含まれる。したがって、本発明による治療薬には、上記標的に結合できる薬剤、例えばポリペプチド(例えば、抗体、イムノアドヘシン、又はペプチボディ)、アプタマー、又は小分子が含まれる。
【0017】
一実施形態によれば、治療薬は抗IL13抗体である。別の実施形態によれば、抗IL13抗体は、配列番号193を含むVH配列と、配列番号194を含むVL配列とを含んでなる。別の実施形態によれば、抗IL13抗体は、(a)アミノ酸配列RASKSVDSYGNSFMH(配列番号195)を含むHVR−L1と、(b)アミノ酸配列LASNLES(配列番号196)を含むHVR−L2と、(c)アミノ酸配列QQNNEDPRT(配列番号197)を含むHVR−L3と、(d)アミノ酸配列AYSVN(配列番号198)を含むHVR−H1と、(e)アミノ酸配列MIWGDGKIVYNSALKS(配列番号199)を含むHVR−H2と、(f)アミノ酸配列DGYYPYAMDN(配列番号200)を含むHVR−H3とを含んでなる。別の実施形態によれば、治療薬は、抗OX40リガンド(OX40L)抗体である。別の実施形態によれば、治療薬は抗IL13/抗IL4二重特異性抗体である。別の実施形態によれば、治療薬は抗IgE抗体である。別の実施形態によれば、治療薬はB細胞の表面に発現される膜近接IgEのM1’領域を目的とする抗体である。別の実施形態によれば、治療薬は、吸入ステロイド薬である。特定の実施形態では、吸入ステロイド薬は、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル、ブデソニド、フルニソリド、フルチカゾン、プロピオン酸、モメタゾン、及びトリアムシノロンアセトニドから選択される。
【0018】
一実施形態によれば、抗OX40L抗体は、(a)配列RSSQSPVHSNGNTYLH(配列番号201)を含むHVR−L1と、(b)配列KVSNRFS(配列番号202)を含むHVR−L2と、(c)配列SQSTHIPWT(配列番号203)を含むHVR−L3と、(d)配列SYWMH(配列番号204)を含むHVR−H1と、(e)配列EIDPSNGRTNYNEKFKS(配列番号205)を含むHVR−H2と、(f)配列ERSPRYFDV(配列番号206)を含むHVR−H3とを含んでなる。別の実施形態によれば、抗OX40L抗体は、(a)配列RSSQSIVHGNGNTYLE(配列番号207)を含むHVR−L1と、(b)配列RVSNRFS(配列番号208)を含むHVR−L2と、(c)配列FQGSHVPYT(配列番号209)を含むHVR−L3と、(d)配列SYWLN(配列番号210)を含むHVR−H1と、(e)配列MIDPSDSETHYNQVFKD(配列番号211)を含むHVR−H2と、(f)配列GRGNFYGGSHAMEY(配列番号212)を含むHVR−H3とを含んでなる。別の実施形態によれば、抗OX40L抗体は、(a)配列SYTMH(配列番号215)、SYAMS(配列番号216)、NFGMH(配列番号217)、又はNYGMH(配列番号218)を含むHVR−H1と、(b)配列IISGSGGFTYYADSVKG(配列番号219)、AIWYDGHDKYYSYYVKG(配列番号220)、AIWYDGHDKYYAYYVKG(配列番号221)、VIWYDGSNKYYVDSVKG (配列番号222)、又はVIWNDGSNKYYVDSVKG(配列番号223)を含むHVR−H2と、(c)配列 DSSSWYRYFDY(配列番号224)、DRLVAPGTFDY(配列番号225)、KNWSFDF(配列番号226)、又はDRMGIYYYGMDV(配列番号227)を含むHVR−H3と、(d)配列RASQGISSWLA(配列番号228)、RASQSVSSSYLA(配列番号229)、RASQSVSSNYLA(配列番号230)、RASQGVSRYLA(配列番号231)、又はRASQSVSSYLA(配列番号232)を含むHVR−L1と、(e)配列GASSRAT(配列番号233)、AASSLQS(配列番号234)、MPPVWKV(配列番号235)、DASNRAT(配列番号236)、又はLHPLCKV(配列番号237)HVR−L2と、(f)配列 NSLIVTLT(配列番号238)、QQYNSYPYT(配列番号239)、QQYGSSFT(配列番号240)、QQRSNWQYT(配列番号241)、QQRSNWT(配列番号242)、又はNSIIVSLT(配列番号243)を含むHVR−L3とを含んでなり、この場合、抗OX40L抗体はOX40Lに結合する。一実施形態によれば、抗IgE抗体は、配列番号213を含むVL配列と、配列番号214を含むVH配列とを含んでなる。別の実施形態によれば、抗IgE抗体は、(a)配列RSSQSLVHNNANTYLH(配列番号244)を含むHVR−L1と、(b)配列KVSNRFS(配列番号245)を含むHVR−L2と、(c)配列SQNTLVPWT(配列番号246)を含むHVR−L3と、(d)配列GFTFSDYGIA(配列番号247)を含むHVR−H1と、(e)配列AFISDLAYTIYYADTVTG(配列番号248)を含むHVR−H2と、(f)配列ARDNWDAMDY(配列番号249)HVR−H3とを含んでなる。一実施形態によれば、抗IgE抗体は、配列番号250を含むVH配列と、配列番号251を含むVL配列とを含んでなる。一実施形態によれば、抗IgE抗体は、配列番号252を含むVH配列と、配列番号253を含むVL配列とを含んでなる。別の実施形態によれば、抗IgE抗体は、(a)配列RSSQDISNSLN(配列番号254)HVR−L1と、(b)配列STSRLHS(配列番号255)HVR−L2と、(c)QQGHTLPWT(配列番号256)を含むHVR−L3と、(d)配列GYTFTDYYMM(配列番号257)を含むHVR−H1と、(e)配列GDNIDPNNYDTSYNQKFKG(配列番号258)を含むHVR−H2と、(f)配列ASKAY(配列番号259)を含むHVR−H3とを含んでなる。別の実施形態によれば、IgE抗体は、(a)配列RSSQDISNALN(配列番号260)を含むHVR−L1と、(b)配列STSRLHS(配列番号255)を含むHVR−L2と、(c)配列QQGHTLPWT(配列番号256)を含むHVR−L3と、(d)配列GYTFTDYYMM(配列番号257)を含むHVR−H1と、(e)配列GDNIDPNNYDTSYNQKFKG(配列番号258)を含むHVR−H2と、(f)配列ASKAY(配列番号259)を含むHVR−H3とを含んでなる。別の実施形態によれば、抗IgE抗体は、(a)配列RSSQDISNALN(配列番号260)を含むHVR−L1と、(b)配列STSRLHS(配列番号255)を含むHVR−L2と、(c)配列QQGHTLPWT(配列番号256)を含むHVR−L3と、(d)配列GYTFTDYYIM(配列番号261)を含むHVR−H1と、(e)配列GDNIDPNNYDTSYNQKFKG(配列番号258)を含むHVR−H2と、(f)配列ASKAY(配列番号259)を含むHVR−H3とを含んでなる。
【0019】
一実施形態によれば、患者は、TH2経路に関与しない喘息を有している(非TH2喘息)。一実施形態では、治療薬は、非TH2喘息を標的とする。一実施形態によれば、治療薬は、IL−17経路の阻害薬である。一実施形態では、治療薬は抗IL−17抗体である。一実施形態では、治療薬はIL−17A及びIL−17Fの両方と交差反応性の抗体である。一実施形態では、治療薬は、IL−17A及びIL−17Fの両方に対する結合能を有する二重特異性抗体である。一実施形態では、治療薬は抗IL−17A/F抗体である。
【0020】
本発明は、患者の喘息のサブタイプの診断のためのキットを提供し、本キットは、(1)POSTN、CST1、CST2、CCL26、CLCA1、PRR4、PRB4、セルピンB2、CEACAM5、iNOS、セルピンB4、CST4、及びセルピンB10からなる群より選択される1の遺伝子とハイブリダイズする1又は複数の核酸分子と、(2)喘息患者試料の遺伝子の発現レベルを測定し、前記遺伝子のいずれか1つ、いずれかの組み合わせ、又は全ての発現レベルが上昇している場合に喘息のサブタイプを示す説明書とを含む。一実施形態によれば、キットは、更に、PRB4、TPSD1、PTSG1、MFSD2、CPA3、GPR105、CDH26、GSN、C2ORF32、TRACH2000196(TMEM71)、DNAJC12、RGS13、SLC18A2、SH3RF2、FCER1B、RUNX2、PTGS1、及びALOX15からなる群より選択される1の遺伝子を含む。更なる一実施形態では、遺伝子発現レベルは、mRNAレベルを定量することにより測定される。別の更なる実施形態では、アッセイは、PCR法又はマイクロアレイチップの使用を含む。また別の実施形態では、PCR法はqPCRである。一実施形態では、対象の遺伝子のmRNAレベルがコントロール遺伝子のmRNAレベルの2.5倍を上回る場合、喘息のサブタイプが示される。
【0021】
本発明は、患者の喘息のサブタイプを診断するためのキットを提供し、本キットは、(1)POSTN、CST1、CST2、CCL26、CLCA1、PRR4、PRB4、セルピンB2、CEACAM5、iNOS、セルピンB4、CST4、及びセルピンB10からなる群より選択される1のタンパク質に結合する1又は複数のタンパク質分子と、(2)患者試料のタンパク質の発現レベルを測定し、前記タンパク質のいずれか1つ、いずれかの組み合わせ、又は全ての発現レベルが上昇している場合に喘息のサブタイプを示す説明書とを含む。一実施形態では、キットは、更に、PRB4、TPSD1、PTSG1、MFSD2、CPA3、GPR105、CDH26、GSN、C2ORF32、TRACH2000196(TMEM71)、DNAJC12、RGS13、SLC18A2、SH3RF2、FCER1B、RUNX2、PTGS1、及びALOX15からなる群より選択された1のタンパク質に結合する1のタンパク質分子を含む。一実施形態では、タンパク質分子は、抗体、ペプチド、又はペプチボディである。更なる一実施形態では、キットは、タンパク質分子を含むマイクロアレイチップを含む。
【0022】
本発明は、患者の喘息のサブタイプの診断のためのキットを提供し、本キットは、血清総IgEレベル、血清CEAレベル、血清ペリオスチンレベル、末梢血好酸球数、及び気管支肺胞洗浄液(BAL)中好酸球数からなる群より選択された患者試料のバイオマーカーのいずれか1つを測定した際に、CEA、血清ペリオスチン、末梢血好酸球数、及び気管支肺胞洗浄液(BAL)中好酸球数のレベルが上昇している場合の説明書を含む。一実施形態によれば、キットは、IgEレベルが100IU/mlを上回る場合に喘息のサブタイプを示す説明書を提供する。別の実施形態によれば、キットは、末梢血好酸球レベルが0.14×10e9/Lを上回る場合に喘息のサブタイプを示す説明書を提供する。
【0023】
本発明は、患者の喘息のサブタイプを診断するためのキットを提供し、本キットは、喘息患者の試料のタンパク質又はMUC5B mRNAに対するMuc5ACの割合を測定し、この割合が25を上回る場合に、喘息のサブタイプを示す説明書を含む。一実施形態では、試料は、上皮のブラッシングにより採取される。別の実施形態では、試料は気道上皮細胞を含む。一実施形態では、キットは、ストリンジェントな条件下でMuc5ACにハイブリダイズする核酸分子と、ストリンジェントな条件下でMUC5Bにハイブリダイズする核酸分子とを提供する。一実施形態では、キットは、Muc5ACに結合する1のタンパク質分子と、MUC5Bに結合する1のタンパク質分子とを提供する。一実施形態では、タンパク質分子は抗体である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】図1は、実施例1及び2に記載の気道上皮の遺伝子発現レベルを示している。Aは、健康なコントロール(N=27)と、喘息患者(N=42)における、ペリオスチン(左)、CLCA1(中央)、及びセルピンB2(右)の発現レベルの比較を示す。正規化された蛍光単位を、各図の左軸に示す。
【図1B】図1は、実施例1及び2に記載の気道上皮の遺伝子発現レベルを示している。Bは、42名の喘息患者における、ペリオスチン及びCLCA1(左)、ペリオスチン及びセルピンB2(中央)、及びCLCA1及びセルピンB2(右)の発現レベルの相互比較を示す。スピアマンの順位相関(ρ)及びp値を各図に示す。
【図1C】図1は、実施例1及び2に記載の気道上皮の遺伝子発現レベルを示している。Cは、健康なコントロール及び喘息患者の遺伝子発現マイクロアレイ解析であり、ペリオスチンと、同時制御される遺伝子、即ち;IL−4/13シグネチャーが高いクラスター(クラスター1);IL−4/13シグネチャーが低いクラスター(クラスター2);健康なコントロールとの発現レベルを同定している。
【図1D】図1は、実施例1及び2に記載の気道上皮の遺伝子発現レベルを示している。Dは、全ての被験者のベースラインでの気管支上皮におけるペリオスチン、CLCA1、及びセルピンB2の発現レベルの、教師なし階層的クラスタリング(ユークリッド完全)を示すヒートマップである。
【図1E】図1は、実施例1及び2に記載の気道上皮の遺伝子発現レベルを示している。Eは、図1A〜Dに示す被験者のサブセットから気管支のブラッシングにより同時に採取された気管支生検のホモジネートにおけるIL−4、IL−5、及びIL−13の平均(±SEM)発現レベルを示す(クラスター1:18の「IL−13が高い」喘息患者;クラスター2:16の健康なコントロール及び14の「IL−13が低い」喘息患者)。IL−4、IL−5、及びIL−13の全被験者間の相互相関を右に示す(スピアマンの順位相関、ρ及びp値)。
【図2A】図2は、実施例3に記載の、セルピン、シスタチン、及びPRRの遺伝子ファミリーと、それらの遺伝子の発現レベルとを示す。Aは、http://genome.ucsc.eduにおいて閲覧可能なUniversity of California Santa Cruzのゲノムブラウザに見られるセルピン(上)、シスタチン(中)、及びPRR(下)のゲノム座位及び組成である。
【図2B】図2は、実施例3に記載の、セルピン、シスタチン、及びPRRのイデンシファミリーと、それらの遺伝子の発現レベルとを示す。Bは、Aに示すシスタチン及びセルピン遺伝子をコードする全てのプローブの階層的クラスタリングを示す。
【図2C】図2は、実施例3に記載の、セルピン、シスタチン、及びPRRのイデンシファミリーと、それらの遺伝子の発現レベルとを示す。Cは、健康なコントロール(N=27)と喘息患者(N=42)との、PRR4(左)、PRB4(中央)、及びCEACAM5(右)の気道上皮における遺伝子発現レベルの比較を示す。正規化された蛍光単位を各図の左の軸に示す。
【図3】図3は、実施例6に記載の、ベースライン及び一週間に亘る吸引フルチカゾンプロピオン酸エステル(ICS)治療の後における気管支上皮ブラッシングのマイクロアレイ解析を示す。Aはペリオスチンの発現を、BはPRR4の発現を、CはRUNX2の発現を示す。
【図4】図4は、実施例7及び9に記載の、喘息患者における血清IgE及び末梢血好酸球の複合グラフを示す。
【図5】図5は、実施例8に記載の、IL−13が高い喘息のサブ表現型とIL−13が低い喘息のサブ表現型との様々な臨床的特徴を示す。Aは、気道閉塞の指標となる強制呼気の1秒量(FEV)を示す。Bは、アルブテロールの4パフ(360μg)後のFEVの向上を示す(気管支拡張薬可逆性試験)を示す。Cは、気道の応答性亢進の指標となる、FEV(PC20)を20%低下させるために必要なメタコリンの刺激性濃度を示す。
【図6A】図6は、実施例8に記載の、IL13が高い喘息のサブ表現型とIL−13が低い喘息のサブ表現型との、種々のアレルギーマーカー、好酸球性炎症、及び気道のリモデリングを示す。Aは、12のエアロアレルゲンのパネルを用いたアレルゲン皮膚プリックテスト(SPT)の結果を示す。
【図6B】図6は、実施例8に記載の、IL13が高い喘息のサブ表現型とIL−13が低い喘息のサブ表現型との、種々のアレルギーマーカー、好酸球性炎症、及び気道のリモデリングを示す。Bは、血清のIgE濃度を示す。
【図6C】図6は、実施例8に記載の、IL13が高い喘息のサブ表現型とIL−13が低い喘息のサブ表現型との、種々のアレルギーマーカー、好酸球性炎症、及び気道のリモデリングを示す。Cは、末梢血好酸球数を示す。
【図6D】図6は、実施例8に記載の、IL13が高い喘息のサブ表現型とIL−13が低い喘息のサブ表現型との、種々のアレルギーマーカー、好酸球性炎症、及び気道のリモデリングを示す。Dは、気管支肺胞洗浄液(BAL)中の好酸球を総細胞数の割合(%)で示す。
【図6E】図6は、実施例8に記載の、IL13が高い喘息のサブ表現型とIL−13が低い喘息のサブ表現型との、種々のアレルギーマーカー、好酸球性炎症、及び気道のリモデリングを示す。Eは、上皮下組織繊維症の指標となる、気管支内生検の網様基底膜(RMB)の厚みの立体解析学的測定値を示す。
【図6F】図6は、実施例8に記載の、IL13が高い喘息のサブ表現型とIL−13が低い喘息のサブ表現型との、種々のアレルギーマーカー、好酸球性炎症、及び気道のリモデリングを示す。Fは、qPCRによって測定した、上皮ブラッシングにおけるMUC5B発現に対するMUC5ACの割合を示す。
【図7A】図7は、実施例8に記載の、IL13が高い喘息のサブ表現型とIL−13が高い喘息のサブ表現型との、種々の臨床的特徴を示す。Aは、横軸に沿って示す特定のエアロアレルゲンへの被験者の応答割合を示す。「IL−13が低い」喘息のサブ表現型と、「IL−13が高い」喘息のサブ表現型(*、p<0.05)。
【図7B】図7は、実施例8に記載の、IL13が高い喘息のサブ表現型とIL−13が高い喘息のサブ表現型との、種々の臨床的特徴を示す。Bは、図示のIL−13喘息サブ表現型(高−白四角、低−黒丸)の、ポジティブなSPT反応対BAL中好酸球割合を示す。図にはスピアマンの順位相関(ρ)及びp値を示す。
【図7C】図7は、実施例8に記載の、IL13が高い喘息のサブ表現型とIL−13が高い喘息のサブ表現型との、種々の臨床的特徴を示す。Cは、図示のIL−13喘息サブ表現型(高−白四角、低−黒丸)の、ポジティブなSPT反応対血清IgEを示す。図にはスピアマンの順位相関(ρ)及びp値を示す。
【図7D】図7は、実施例8に記載の、IL13が高い喘息のサブ表現型とIL−13が高い喘息のサブ表現型との、種々の臨床的特徴を示す。Dは、図示のIL−13喘息サブ表現型(高−白四角、低−黒丸)の、ポジティブなSPT反応対末梢血好酸球数を示す。図にはスピアマンの順位相関(ρ)及びp値を示す。
【図8A】図8は、実施例8に記載の、IL−13が高い喘息サブ表現型を有する被験者と、IL−13が低い喘息サブ表現型を有する被験者と、健康なコントロールとの、気道上皮のムチン含有量と組成とを示す。Aは、気道の上皮ムチン含有量の指標となる、上皮に対するムチンの体積比を示す。
【図8B】図8は、実施例8に記載の、IL−13が高い喘息サブ表現型を有する被験者と、IL−13が低い喘息サブ表現型を有する被験者と、健康なコントロールとの、気道上皮のムチン含有量と組成とを示す。Bは、qPCRにより測定した、ムチンMUC2の発現を示す。
【図8C】図8は、実施例8に記載の、IL−13が高い喘息サブ表現型を有する被験者と、IL−13が低い喘息サブ表現型を有する被験者と、健康なコントロールとの、気道上皮のムチン含有量と組成とを示す。Cは、qPCRにより測定した、ムチンMUC5ACの発現を示す。
【図8D】図8は、実施例8に記載の、IL−13が高い喘息サブ表現型を有する被験者と、IL−13が低い喘息サブ表現型を有する被験者と、健康なコントロールとの、気道上皮のムチン含有量と組成とを示す。Dは、qPCRにより測定した、ムチンMUC5Bの発現を示す。
【図9A】図9は、IL−13が高い喘息サブ表現型とIL−13が低い喘息サブ表現型との吸引ステロイド剤への応答を示す。Aは、ベースライン(週0)、フルチカゾンを連日4投与して4週目、同8週目、及びフルチカゾンの休止後一週間(9週目)の時点で測定したFEVを示す。(*):各グループの被験者数とp値については表5を参照されたい。
【図9B】図9は、IL−13が高い喘息サブ表現型とIL−13が低い喘息サブ表現型との吸引ステロイド剤への応答を示す。Bは、フルチカゾン(N=19)又はプラセボ(N=13)による処置の開始から一週間後の喘息患者の気管支上皮におけるペリオスチン、CLCA1、及びセルピンB2(図1D)の教師なし階層的クラスタリングを示すヒートマップである。個々の被験者及び処置のベースラインにおけるクラスターの識別を次のヒートマップに示す。(クラスター1:「IL−13が高い」喘息患者、クラスター2:「IL−13が低い」喘息患者)。
【図10】図10は、実施例8に記載の、IL−13が高い喘息のサブ表現型を有する被験者、及びIL−13が低い喘息のサブ表現型を有する被験者における、肺胞マクロファージ遺伝子発現を示す。健康なコントロール(N=15);IL−13が低い喘息のサブ表現型(N=5);IL−13が高い喘息の表現型(N=9)が示されている。図は、qPCRにより測定された、15−リポキシゲナーゼ(ALOX15)と、腫瘍壊死因子α(TNF−α)の平均(+SEM)発現レベルを示す。(*):p<0.03。
【図11】図11は、実施例9に記載の、健康なコントロール及び喘息患者から採取した試料の28の遺伝子を網羅する35のプローブを用いた遺伝子発現マイクロアレイ解析を示す。
【図12A】図12は、実施例9に記載の、ペリオスチン及びCEACAM5の遺伝子発現マイクロアレイ解析とqPCR解析とを示す。Aは、健康なコントロール、クラスター2の喘息患者(「IL−13が低い」)、及びクラスター1の喘息患者(「IL−13が高い」)のペリオスチンの発現を示す。
【図12B】図12は、実施例9に記載の、ペリオスチン及びCEACAM5の遺伝子発現マイクロアレイ解析とqPCR解析とを示す。Bは、健康なコントロール、クラスター2の喘息患者(「IL−13が低い」)、及びクラスター1の喘息患者(「IL−13が高い」)のCEACAM5の発現を示す。
【図12C】図12は、実施例9に記載の、ペリオスチン及びCEACAM5の遺伝子発現マイクロアレイ解析とqPCR解析とを示す。Cは、「IL−13が高い」喘息患者(四角)、及び「IL−13が低い」喘息患者(丸)の、CEACAM5とペリオスチンとの複合グラフである。
【図12D】図12は、実施例9に記載の、ペリオスチン及びCEACAM5の遺伝子発現マイクロアレイ解析とqPCR解析とを示す。Dは、ペリオスチン及びCEACAM5のqPCRに基づく発現レベルの最適化されたアルゴリズムの受信者動作特性(ROC)であり、健康なコントロール、「IL−13が高い」喘息患者、及び「IL−13が低い」喘息患者の感受性及び特異性を示している。
【図13A】図13は、実施例9に記載の、喘息患者及び健康なコントロールの血清タンパク質の血清レベルを示す。Aは、IgEの血清レベルを示す。
【図13B】図13は、実施例9に記載の、喘息患者及び健康なコントロールの血清タンパク質の血清レベルを示す。Bは、ペリオスチンの血清レベルを示す。
【図13C】図13は、実施例9に記載の、喘息患者及び健康なコントロールの血清タンパク質の血清レベルを示す。Cは、CEAの血清レベルを示す。
【図13D】図13は、実施例9に記載の、喘息患者及び健康なコントロールの血清タンパク質の血清レベルを示す。Dは、YKL−40の血清レベルを示す。
【図13E】図13は、実施例9に記載の、喘息患者及び健康なコントロールの血清タンパク質の血清レベルを示す。Eは、吸入ステロイド薬(ICS)により治療した(+)喘息患者又は同治療を受けない(−)喘息患者におけるIgEの血清レベルを示す。
【図13F】図13は、実施例9に記載の、喘息患者及び健康なコントロールの血清タンパク質の血清レベルを示す。Fは、吸入ステロイド薬(ICS)により治療した(+)喘息患者又は同治療を受けない(−)喘息患者におけるペリオスチンの血清レベルを示す。
【図13G】図13は、実施例9に記載の、喘息患者及び健康なコントロールの血清タンパク質の血清レベルを示す。Gは、吸入ステロイド薬(ICS)により治療した(+)喘息患者又は同治療を受けない(−)喘息患者におけるCEAの血清レベルを示す。
【図13H】図13は、実施例9に記載の、喘息患者及び健康なコントロールの血清タンパク質の血清レベルを示す。Hは、吸入ステロイド薬(ICS)により治療した(+)喘息患者又は同治療を受けない(−)喘息患者におけるYKL−40の血清レベルを示す。
【図13I】図13は、実施例9に記載の、喘息患者及び健康なコントロールの血清タンパク質の血清レベルを示す。Iは、血清IgEの値が<100IU/mlである喘息患者(<100)及び同値が≧100IU/mlである喘息患者(≧100)におけるペリオスチンの血清レベルを示す複合グラフである。
【図13J】図13は、実施例9に記載の、喘息患者及び健康なコントロールの血清タンパク質の血清レベルを示す。Jは、血清IgEの値が<100IU/mlである喘息患者(<100)及び同値が≧100IU/mlである喘息患者(≧100)におけるCEAの血清レベルを示す複合グラフである。
【図13K】図13は、実施例9に記載の、喘息患者及び健康なコントロールの血清タンパク質の血清レベルを示す。Kは、血清IgEの値が<100IU/mlである喘息患者(<100)及び同値が≧100IU/mlである喘息患者(≧100)におけるYKL−40の血清レベルを示す複合グラフである。
【図13L】図13は、実施例9に記載の、喘息患者及び健康なコントロールの血清タンパク質の血清レベルを示す。Lは、血清IgEの値が<100IU/mlである喘息患者(丸)及び同値が≧100IU/mlである喘息患者(四角)におけるペリオスチン及びCEAの血清レベルを示す複合グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
特に定義しない限り、ここで使用される専門用語、表記及び他の科学的用語のすべては、この発明に関連する当業者に共通して理解される意味を持つものである。いくつかの場合には、共通して理解される意味を持つ用語を明確化のため及び/又は参照を容易にするためにここで定義するが、ここにそのような定義を含めることが、当該分野で一般的に理解されることに対して実質的な差異を表すものと必ずしも解釈されるものではない。ここに記載され又は参照される技術及び手順は一般的に十分理解されるものであり、例えばSambrook 等,Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd. edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.に記載の広く利用される分子クローニング方法論などの、当業者による一般的な方法論を用いて通常行われるものである。適切ならば、市販のキットや試薬の使用を伴う手順は、特に明記しない限り、製造者が定めたプロトコール及び/又はパラメータに従って一般的に実施される。
【0026】
「IL−4/IL−13遺伝子シグネチャー」、「IL−4/IL−13シグネチャー」、「IL−13遺伝子シグネチャー」、及び「IL−13シグネチャー」は、本明細書に置いて互換可能に使用され、表4に規定される30個の遺伝子の組み合わせ、又は表9に規定されるこれら30個の遺伝子の一部の組み合わせを意味し、その遺伝子発現パターンは、特定の喘息患者と相関している。30個の遺伝子とは、POSTN、CST1、CCL26、CLCA1、CST2、PRR4、セルピンB2、CEACAM5、iNOS、セルピンB4、CST4、PRB4、TPSD1、TPSG1、MFSD2、CPA3、GPR105、CDH26、GSN、C2ORF32、TRACH2000196(TMEM71)、DNAJC12、RGS13、SLC18A2、セルピンB10、SH3RF2、FCER1B,RUNX2、PTGS1、ALOX15である。IL−4/IL−13遺伝子シグネチャーのポリペプチドは、本発明の「標的ポリペプチド」である。
【0027】
本明細書において使用される「標的ポリペプチド」という用語は、「天然配列」ポリペプチド及び変異体(下記に定義する)を意味する。
【0028】
「天然配列」ポリペプチドは、天然由来の対応するポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでなる。よって、「天然配列ポリペプチド」という用語は、ポリペプチドの天然に生じる切断型、増強型、及びフレームシフト型を含み、これには、限定されないが、選択的スプライシング型、アイソフォーム、及び多形型が含まれる。
【0029】
「天然に生じる変異体」は、参照ポリペプチドドと少なくとも約60%のアミノ酸配列同一性を有し、天然に発生する参照ポリペプチドの少なくとも一つの生物学的活性を保持する。天然発生変異体は、参照ポリペプチドと、少なくとも65%のアミノ酸配列同一性、少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、少なくとも75%のアミノ酸配列同一性、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、少なくとも85%のアミノ酸配列同一性、少なくとも90%のアミノ酸配列同一性、少なくとも95%のアミノ酸配列同一性、少なくとも98%のアミノ酸配列同一性、又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する変位ポリペプチドを含むことができる。
【0030】
POSTNの例には、配列番号1を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号31及び/又は32にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチドと、天然に発生する変異体といったその他のPOSTIN天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0031】
CST1の例には、配列番号2を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号33にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のCST1天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0032】
CCL26の例には、配列番号3を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号34にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のCCL26天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0033】
CLCA1の例には、配列番号4を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号35にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のCLCA1天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0034】
CST2の例には、配列番号5を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号36にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のCST天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0035】
PRR4の例には、配列番号6を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号37にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のPRR4天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0036】
セルピンB2の例には、配列番号7を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号38にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のセルピンB2天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0037】
CEACAM5の例には、配列番号8を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号39にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のCEACAM5天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0038】
iNOSの例には、配列番号9を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号40にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のiNOS天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0039】
セルピンB4の例には、配列番号10を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号41及び/又は42にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のセルピンB4天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0040】
CST4の例には、配列番号11を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号43にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のCST4天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0041】
PRB4の例には、配列番号12を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号44にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のPRB4天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0042】
TPSD1の例には、配列番号13を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号45−51にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のTPSD1天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0043】
TPSG1の例には、配列番号14を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号52−55にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のTPSG1天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0044】
MFSD2の例には、配列番号15を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号56にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のMFSD2天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0045】
CPA3の例には、配列番号16を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号57にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のCPA3天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0046】
GPR105の例には、配列番号17を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号58にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のGPR105天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0047】
CDH26の例には、配列番号18を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号59にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のCDH26天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0048】
GSNの例には、配列番号19を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号60にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のGSN天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0049】
C2ORF32の例には、配列番号20を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号61にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のC2ORF32天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0050】
TRACH2000196(TMEM71)の例には、配列番号21を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号62にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のTRACH2000196(TMEM71)天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0051】
DNAJC12の例には、配列番号22を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号63にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のDNAJC12天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0052】
RGS13の例には、配列番号23を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号64にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のRGS13天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0053】
SLC18A2の例には、配列番号24を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号65にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のSLC18A2天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0054】
セルピンB10の例には、配列番号25を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号66にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のセルピンB10天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0055】
SH3RF2の例には、配列番号26を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号67にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のSH3RF2天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0056】
FCER1Bの例には、配列番号27を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号68にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のFCER1B天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0057】
RUNX2の例には、配列番号28を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号69にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のRUNX2天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0058】
PTGS1の例には、配列番号29を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号70にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のPTGS1天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0059】
ALOX15の例には、配列番号30を含んでなるポリペプチドと、ストリンジェントな条件下で配列番号71にハイブリダイズできる核酸配列によってコードされる天然配列ポリペプチド及び天然に発生する変異体といったその他のALOX15天然配列ポリペプチドとが含まれる。
【0060】
「抗IL13/IL4経路阻害薬」は、IL−13及び/又はIL−4のシグナル伝達を遮断する薬剤を指す。抗IL13、抗IL4、又は抗IL13/IL4阻害薬の例として、限定されないが、抗IL13結合剤、抗IL4結合剤、抗IL4レセプターα結合剤が挙げられる。IL−13、IL−4、IL−13Rα1、IL−13Rα2、又はIL−4Rαに結合できるシグナルドメイン抗体は、特に阻害薬として含まれる。複数の標的に結合できる分子が含まれることを理解されたい。
【0061】
「抗IL4結合剤」は、ヒトIL−4に特異的に結合する薬剤である。このような結合剤は、小分子、アプタマー、又はポリペプチドを含むことができる。このようなポリペプチドは、限定されないが、イムノアドヘシン、抗体、ペプチボディ、及びペプチドからなる群より選択されたポリペプチドを含むことができる。一実施形態によれば、結合剤は、1uM−1pMの親和性でヒトIL−4配列に結合する。抗IL−4結合剤の特定の例としては、可溶性のIL4レセプターα(例えば、ヒトFc領域に融合したIL4レセプターの細胞外ドメイン)、抗IL−4抗体、及び可溶性のIL−13レセプターα(例えば、ヒトFc領域に融合したIL13レセプターα1の細胞外ドメイン)を挙げることができる。
【0062】
「抗IL4レセプターα結合剤」は、ヒトIL−4レセプターαに特異的に結合する薬剤である。このような結合剤は、小分子、アプタマー、又はポリペプチドを含むことができる。このようなポリペプチドは、限定されないが、イムノアドヘシン、抗体、ペプチボディ、及びペプチドからなる群より選択されたポリペプチドを含むことができる。一実施形態によれば、結合剤は、1uM−1pMの親和性でヒトIL−4レセプターα配列に結合する。抗IL−4レセプターα結合剤の特定の例としては、抗IL−4レセプターα抗体を挙げることができる。
【0063】
「抗IL13結合剤」は、ヒトIL−13に特異的に結合する薬剤を指す。このような結合剤は、小分子、アプタマー、又はポリペプチドを含むことができる。このようなポリペプチドは、限定されないが、イムノアドヘシン、抗体、ペプチボディ、及びペプチドからなる群より選択されたポリペプチドを含むことができる。一実施形態によれば、結合剤は、1uM−1pMの親和性でヒトIL−13配列に結合する。抗IL−13結合剤の特定の例としては、抗IL−13抗体、ヒトFcに融合した可溶性のIL−13レセプターα2、ヒトFcに融合した可溶性のIL4レセプターα、ヒトFcに融合した可溶性のIL13レセプターαを挙げることができる。一実施形態によれば、抗IL13抗体は、TNX−650抗体(国際公開第2005/062972号)の可変ドメインを含む。TNX−650抗体の可変ドメインは、(1)QVTLRESGPALVKPTQTLTLTCTVSGFSLSAYSVNWIRQPPGKALEWLAMIWGDGKIVYNSALKSRLTISKDTSKNQVVLTMTNMDPVDTATYYCAGDGYYPYAMDNWGQGSLVTVSS(配列番号193)を含むVH、及び(2)DIVMTQSPDSLSVSLGERATINCRASKSVDSYGNSFMHWYQQKPGQPPKLLIYLASNLESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQNNEDPRTFGGGTKVEIK(配列番号194)を含むVLを含んでなる。
抗IL13抗体の他の例は、国際公開第2008/083695号(例えば、IMA−638及びIMA−026)、米国特許公開第2008/0267959号、同第2008/0044420号、及び同第2008/0248048号に記載されている。
【0064】
「抗IL13レセプターα1結合剤」は、ヒトIL13レセプターα1に特異的に結合する薬剤を指す。このような結合剤は、小分子、アプタマー、又はポリペプチドを含むことができる。このようなポリペプチドは、限定されないが、イムノアドヘシン、抗体、ペプチボディ、及びペプチドからなる群より選択されたポリペプチドを含むことができる。一実施形態によれば、結合剤は、1uM−1pMの親和性でヒトIL−13レセプターα1配列に結合する。抗IL−13レセプターα1結合剤の特定の例としては、抗IL−13レセプターα1抗体を挙げることができる。
【0065】
「抗IL13レセプターα2結合剤」は、ヒトIL13レセプターα2に特異的に結合する薬剤を指す。このような結合剤は、小分子、アプタマー、又はポリペプチドを含むことができる。このようなポリペプチドは、限定されないが、イムノアドヘシン、抗体、ペプチボディ、及びペプチドからなる群より選択されたポリペプチドを含むことができる。一実施形態によれば、結合剤は、1uM−1pMの親和性でヒトIL−13レセプターα2配列に結合する。抗IL−13レセプターα2結合剤の特定の例としては、抗IL13レセプターα2抗体を挙げることができる。
【0066】
「抗IgE結合剤」は、ヒトIgEに特異的に結合する薬剤を指す。このような結合剤は、小分子、アプタマー、又はポリペプチドを含むことができる。このようなポリペプチドは、限定されないが、イムノアドヘシン、抗体、ペプチボディ、及びペプチドからなる群より選択されたポリペプチドを含むことができる。一実施形態によれば、抗IgE抗体は、Asp Ile Gln Leu Thr Gln Ser Pro Ser Ser Leu Ser Ala Ser Val Gly Asp Arg Val Thr Ile Thr Cys Arg Ala Ser Gln Ser Val Asp Tyr Asp Gly Asp Ser Tyr Met Asn Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Lys Ala Pro Lys Leu Leu Ile Tyr Ala Ala Ser Tyr Leu Glu Ser Gly Val Pro Ser Arg Phe Ser Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Ser Ser Leu Gln Pro Glu Asp Phe Ala Thr Tyr Tyr Cys Gln Gln Ser His Glu Asp Pro Tyr Thr Phe Gly Gln Gly Thr Lys Val Glu Ile Lys Arg Thr Val(配列番号213)を含むVL配列と、Glu Val Gln Leu Val Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Gln Pro Gly Gly Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Val Ser Gly Tyr Ser Ile Thr Ser Gly Tyr Ser Trp Asn Trp Ile Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val Ala Ser Ile Thr Tyr Asp Gly Ser Thr Asn Tyr Asn Pro Ser Val Lys Gly Arg Ile Thr Ile Ser Arg Asp Asp Ser Lys Asn Thr Phe Tyr Leu Gln Met Asn Ser Leu Arg Ala Glu Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys Ala Arg Gly Ser His Tyr Phe Gly His Trp His Phe Ala Val Trp Gly Gln Gly(配列番号214)を含むVH配列とを含んでなる。
【0067】
「抗M1’結合剤」は、B細胞の表面にIgEを発現する膜近傍のM1’領域に特異的に結合する薬剤を指す。このような結合剤は、小分子、アプタマー、又はポリペプチドを含むことができる。このようなポリペプチドは、限定されないが、イムノアドヘシン、抗体、ペプチボディ、及びペプチドからなる群より選択されたポリペプチドを含むことができる。一実施形態によれば、抗IgE抗体は、国際公開第2008/116149号に記載の抗体、又はその変異体を含む。
【0068】
「小分子」は、50ダルトン〜2500ダルトンの分子量を有する有機分子を指す。
【0069】
「抗体」という用語は最も広い意味で使用され、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多エピトープ特異性を持つ抗体、一本鎖抗体、多特異性抗体、及び抗体の断片を包含する。このような抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体及び合成抗体とすることができる。このような抗体と、それらの生成方法について、後述で更に詳しく説明する。
【0070】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっているという事実を意味する。V領域は、抗原結合を媒介し、その特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を定義する。しかしながら、可変性は可変ドメインの110のアミノ酸スパンに亘って一様には分布していない。そうではなく、Vドメインは、15〜30のアミノ酸からなるフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変のストレッチから構成されており、それらのアミノ酸は、各々が9〜12アミノ酸長の、「高頻度可変領域と呼ばれて極端な可変性を有する短い領域によって分離されている。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインの各々は、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する3つの高頻度可変領域により連結された、βシート配置を主にとる4つのFRをそれぞれ含んでいる。各鎖の高頻度可変領域は、FRによって近接して結合され、他の鎖の高頻度可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat等, Sequence of Proteins ofImmunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, BEthesda, MD. (1991)参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞障害性(ADCC)への抗体の関与を示す。
【0071】
ここで使用される「高頻度可変領域」(又は「HVR」)なる用語は、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。高頻度可変領域は、一般に、「相補性決定領域」又は「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、VLの、概ね残基24−34(L1)、50−56(L2)、及び89−97(L3)周辺と、VHの概ね31−35B(H1)、50−65(H2)、及び95−102(H3))(Kabatら、Sequences of Protein of Immunological Interest, 第5版、Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))、及び/又は「高頻度可変ループ」由来のそれらの残基(例えば、VLの残基26−32(L1)、50−51(L2)、及び91−96(L3)と、VHの26−32(H1)、52A−55(H2)、及び96−101(H3)と(Chothia及びLesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))を含む。
【0072】
高頻度可変領域は、次のような「拡大HVR」を含むことができる、即ち、VLの24−36(L1)、46−56(L2)及び89−97(L3)、並びにVHの26−35(H1)、47−65(H2)及び93−102(H3)である。可変ドメイン残基は、これら各々を規定するために、Kabat等, 上掲に従って番号付けされる。
【0073】
「フレームワーク」又は「FR」残基は、ここで定義する高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。例えば、軽鎖フレームワーク1(LC−FR1)、フレームワーク2(LC−FR2)、フレームワーク3(LC−FR3)及びフレームワーク4(LC−FR4)領域は、抗体の番号1−23、35−49、57−88、及び98−107(Kabat番号付けシステム)の残基をそれぞれ含みうる。別の実施例では、重鎖フレームワーク1(HC−FR1)、重鎖フレームワーク2(HC−FR2)、重鎖フレームワーク3(HC−FR3)、及び重鎖フレームワーク4(HC−FR4)は、それぞれ抗体の残基1−25、36−48、66−92、及び103−113(Kabat番号付けシステム)を含みうる。
【0074】
ここで示すように、「コンセンサス配列」又はコンセンサスVドメイン配列は、公知のヒト免疫グロブリン可変領域配列の比較から得られた人工の配列である。
【0075】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、一般的に少量で存在しうる突然変異などの、モノクローナル抗体の生成中に生じる可能性のある突然変異体を除いて、集団を含む個々の抗体が、同一及び/又は同じエピトープに結合する。このようなモノクローナル抗体には典型的には、標的を結合するポリペプチド配列を含んでなる抗体が含まれ、この標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含む方法によって入手されたものである。例えば、選別方法は、ハイブリドーマクローン、ファージクローン又は組み換えDNAクローンのプールなどの複数のクローンからの特定のクローンの選別でもよい。選別した標的結合配列は、例えば標的に対する親和性を改善するため、標的結合配列をヒト化するため、細胞培養物内での産生を改善するため、インビボの免疫原性を低減するため、多特異性抗体を作製するなどのためにさらに変更することができること、並びに変更した標的結合配列を含んでなる抗体も本発明のモノクローナル抗体であることを理解されたい。一般に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物と比べて、モノクローナル抗体調整物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体調整物は、典型的に他のイムノグロブリンが混入することがない点で有利である。「モノクローナル」との修飾詞は、抗体の実質的に均一な集団から得られるという抗体の性質を示すものであり、抗体を何か特定の方法で生成しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明において用いられるモノクローナル抗体は、様々な技術、例えばハイブリドーマ法(例えばKohler 等, Nature, 256:495 (1975);Harlow 等, Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988);Hammerling 等, : Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681, (Elsevier, N.Y., 1981)、組み換えDNA法(例えば米国特許第4816567号を参照)、ファージディスプレイ技術(例えばClackson 等, Nature, 352:624-628 (1991);Marks 等, J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991);Sidhu 等, J. Mol. Biol. 338(2):299-310 (2004);Lee 等, J.Mol.Biol.340(5):1073-1093 (2004);Fellouse, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004);及びLee 等 J. Immunol. Methods 284(1-2):119-132 (2004)を参照)、及び一部ないしはすべてのヒトイムノグロブリン遺伝子座又はヒトイムノグロブリン配列をコードする遺伝子を有する動物からヒトないしはヒト様抗体を生成するための技術(例えば、国際公開第98/24893号、同第/9634096号、同第/9633735号、及び同第/91 10741号、、Jakobovits 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993);Jakobovits 等, Nature, 362:255-258 (1993);Bruggemann 等, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5545806号、同第5569825号、同第55591669号(すべてGenPharm);同第5545807号;国際公開第97/17852号、米国特許第5545807号;同第5545806号;同第5569825号;同第5625126号;同第5633425号;及び同第5661016号、及びMarks 等, Bio/Technology, 10: 779-783 (1992);Lonberg 等, Nature, 368: 856-859 (1994);Morrison, Nature, 368: 812-813 (1994);Fishwild 等, Nature Biotechnology, 14: 845-851 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology, 14: 826 (1996);及びLonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol., 13: 65-93 (1995))によって作製してもよい。
【0076】
ここで、モノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種由来の抗体、あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同性があり、鎖の残りの部分が他の種由来の抗体、あるいは他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同である「キメラ」抗体、並びにそれが所望の生物的活性を有する限りこのような抗体の断片を特に含む(米国特許第4816567号;Morrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855(1984))。キメラ抗体の作製方法は当分野で公知である。
【0077】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2又は抗体の他の抗原結合サブ配列)である。いくつかの実施態様では、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット又はウサギなどの非ヒト種のCDRの残基(ドナー抗体)によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくは導入したCDR又はフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練し、最大にするために行われる。一般に、ヒト化抗体は少なくとも1つの可変ドメインの実質的に全てを含むものであり、その可変ドメインは、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンに由来するものであり、FR領域は、例えば結合親和性を改善しうる一ないし複数のアミノ酸置換を含みうるが、全てあるいは実質的に全てのFR領域がヒト免疫グロブリン配列のものである。ある好適な実施態様では、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、一般的にはヒト免疫グロブリンのもの又はヒトコンセンサス定常配列の少なくとも一部も含む。更なる詳細については、Jones等, Nature, 321:522-525(1986);Reichmann等, Nature 332:323-329(1988);及びPresta, Curr.Op.Struct.Biol., 2:593-596(1992)を参照のこと。ヒト化抗体には、抗体の抗原結合領域が、例えば対象の抗原でマカクザルを免疫化することによって産生した抗体由来のものであるPRIMATIZED(登録商標)抗体が含まれる。ヒト化抗体の作製方法は当分野において公知である。
【0078】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリを含む従来技術に既知の様々な技術を用いて作成することができる。Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks等、J. Mol. Biol., 222:581 (1991)。また、Cole等及びBoerner等の技術が、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。Cole等、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985);Boerner等、J. Immunol., 147(1):86-95 (1991)。また、Lonberg and Huszar, Int. Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)を参照のこと。PCT国際公開第98/24893号;同第92/01047号;同第96/34096号;同第96/33735号;欧州特許第0598877号;米国特許第5413923号;同第5625126号;同第5633425号;同第5569825号;同第5661016号;同第5545806号;同第5814318号;同第5885793号;同第5916771号;及び同第5939598号。
【0079】
「抗体断片」には、完全長抗体の一部、一般的にその抗体の抗原結合領域又は可変領域が含まれる。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')及びFv断片;ダイアボディー(diabodies);直鎖状抗体;単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。
【0080】
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小抗体断片である。この断片は、1の重鎖と1の軽鎖可変領域ドメインが密接に非共有結合した二量体よりなる。この2つのドメインのフォールディングから6つの高頻度可変性ループ(H鎖及びL鎖のそれぞれから3ループずつ)が生じ、それが、アミノ酸残基による抗原結合に寄与して抗体に抗原結合特異性をもたらす。しかしながら、単鎖可変ドメイン(又は抗原特異的なCDRを3つしか含まないFvの半分)でさえ、結合部位全体より親和性は低いが、抗原を認識して結合する能力を持つ。
【0081】
本発明のBR3結合抗体の「機能的断片」は、断片が由来するインタクトな完全鎖分子と実質的に同じ親和性でのポリペプチドへの結合を保持し、少なくとも1のアッセイ(例えば、マウスなどのTH2誘導性の喘息経路の阻害、又はインビトロで抗体断片に結合する抗原の生物学的活性の阻害)において活性な断片である。
【0082】
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰する生物学的活性を意味し、抗体のアイソタイプにより変わる。抗体のエフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞障害;Fcレセプター結合性;抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC);貪食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター)の下方制御;及びB細胞活性化が含まれる。「天然配列Fc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。
【0083】
ペプチド又はポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」とは、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えて配列を整列させた後の、比較対照のポリペプチドのアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用することによって得られる。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムの著作権は本出願人が有しており、そのソースコードはユーザードキュメンテーションと共に米国著作権局(Washington D.C., 20559)に提出され、米国著作権登録番号第TX510087の下に登録されている。ALIGN−2プログラムは、本出願人(South San Francisco, California)により公に入手可能である。ALIGN−2プログラムは、UNIXオペレーションシステム、好ましくはデジタルUNIX V4.0D用にコンパイルされている。全ての配列比較パラメータはALIGN−2によって設定されており、変動しない。
【0084】
「Fc領域を含んだポリペプチド」という用語は、Fc領域を含む抗体もしくはイムノアドヘンシン(下記記載の定義を参照)などのポリペプチドを指す。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムに従うと残基447)は、例えば、ポリペプチドの精製中に、又はポリペプチドをコードする核酸を組み換え操作することによって除去してもよい。したがって、本発明のFc領域を有する、抗体などのポリペプチドを含んでなる組成物は、すべてのK447残基が除去されたポリペプチド集団、除去されるK447残基のないポリペプチド集団又はK447残基を有するポリペプチドとK447を有さないポリペプチドが混合しているポリペプチド集団を包含する。
【0085】
本明細書及び特許請求の範囲すべてに亘って、一般的に、可変ドメインの残基を指す場合にはカバット番号付けシステムを用いる(およそ、軽鎖の残基1−107と重鎖の残基1−113)(例として、Kabat 等, Sequences of Immunological Interest. 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。一般的に、イムノグロブリン重鎖定常領域内の残基を指す場合には、「EU番号付けシステム」又は「EUインデックス」を用いる(EUインデックスはKabat 等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)において報告されており、出典明記によって本明細書中に組み込まれる)。本明細書中で特に述べない限り、抗体の可変ドメイン内の残基の数の参照は、カバット番号付けシステムによって番号付けした残基を意味する。本明細書中で特に述べない限り、抗体の定常ドメイン内の残基の数の参照は、EU番号付けシステムによって番号付けした残基を意味する(例として、米国特許仮出願第60/640323号、EU番号付けについての図を参照)。
【0086】
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定され、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングのための温度が高くなり、プローブが短くなると温度は低くなる。ハイブリダイゼーションは、一般的に、相補的鎖がその融点より低い環境に存在するときの変性DNAが再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリダイゼーション可能な配列との間の所望の相同性の程度が高くなると、使用できる相対温度が高くなる。その結果、より高い相対温度は、反応条件をよりストリンジェントにするが、低い温度はストリンジェンシーを低下させる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーの更なる詳細及び説明は、Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, (1995)を参照のこと。
【0087】
ここで定義される「ストリンジェントな条件」又は「高度のストリンジェント条件」は、(1)洗浄のために低イオン強度及び高温度を用いるもの、例えば、50℃において0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを用いるもの;(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤を用いるもの、例えば、42℃において50%(v/v)ホルムアミド、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウムを用いるもの;又は(3)42℃において50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハード液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%のデキストラン硫酸を用いた溶液中で終夜ハイブリダイゼーションし、42℃において0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中で洗浄した後、55℃においてEDTAを含む0.1×SSCからなる高ストリンジェント洗浄を用いるものによって同定できる。
【0088】
「中程度のストリンジェント条件」は、Sambrook等、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, New York: Cold Spring Harbor Press, 1989に記載されているように特定され、上記のものよりストリンジェンシーが低い洗浄液及びハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度及び%SDS)の使用を含む。中程度のストリンジェント条件の一例は、20%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハード液、10%デキストラン硫酸、及び20mg/mLの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中の37℃での終夜のインキュベーション後に、37〜50℃にて1×SSC中でフィルター洗浄を行うという条件である。プローブ長などの因子に必要に応じて適合させるには、どのようにして温度、イオン強度等を調節するかは当業者であれば分かるであろう。
【0089】
本明細書で使用する場合、治療対象は哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ラット、マウス、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコなど)である。対象は、臨床患者、臨床試験のボランティア、実験動物などでよい。対象は、喘息を持っていることが疑われるか、又は喘息を有する危険を有しているか、或いは喘息と診断されている。好ましい一実施形態によれば、本発明により治療されるのはヒトである。
【0090】
「治療すること」又は「処置」又は「寛解」は、治療的処置を表し、この目的は標的とした病態又は疾患を予防する、衰退(減少)させるか、又は疾患の症状の再発を予防することである。処置を必要とするものには、既に疾患を有しているもの、並びに疾患にかかり易いもの、又は疾患を予防しているものが含まれる。対象又は哺乳動物の喘息は、本発明の治療薬を摂取した後、患者が、反復性の喘鳴、咳、呼吸障害、胸部絞扼感、夜間に発生又は悪化する症状、冷気、運動、又はアレルゲンへの暴露によって引き起こされる症状のうちの1又は複数の、観察可能及び/又は測定可能な減少又は消滅を示した場合、成功裏に「治療され」ている。
【0091】
「治療的有効量」という用語は、対象の疾患又は疾病を「寛解」させる又は「治療」するのに効果的な本発明のポリペプチドの量を指す。
【0092】
「慢性」投与とは、急性モードの反対の意味で連続モードでの薬剤の投与を指し、これにより初期治療効果(活性)を長期間に亘って維持しようとするものである。「断続的」投与とは、中断無く連続的に行われるのではなく、周期的に行われる性質を持つ処置である。
【0093】
「強制呼気量(FEV1)」は、強制呼気の最初の一秒間に排出された空気量を測定する標準的な試験を指す。FEV1は、マウスピースと、結果を記録してグラフに示す器械に接続された使い捨てチューブとから構成される肺活量計によって測定される。肺活量測定を行うには、息を深く吸い込み、チューブの周りで口をきつく閉めてから、チューブを通して息を吸い込みながら測定を行う。吐き出した空気の体積と、一息の継続時間を記録して分析する。肺活量測定の結果はパーセンテージで表わされる。正常な肺活量の例は、一秒後肺活量の75%に相当するFEV1を含む。異常な肺活量測定の結果の一例は、正常な予測値の80%に満たない読み取り値を含む。異常な結果は、通常、何らかの重症度の、喘息、肺気腫、又は慢性気管支炎といった閉塞性肺疾患、或いは肺繊維症といった拘束性肺疾患の存在を示す。例えば、FEV1の値(予測値のパーセンテージ)を使用して、喘息により引き起こされうる閉塞症及び肺気腫又は慢性気管支炎のようなその他の肺閉塞疾患を分類することができる。即ち、FEV1が予測値の65〜79%である場合は軽度の閉塞症に、FEV1が予測値の40〜59%である場合は中等度の閉塞症に、FEV1が予測値の40%未満である場合は重度の閉塞症に分類される。
【0094】
(例えばマイクロアレイ解析により)本明細書で説明するタンパク質を同定するために使用できる核酸プローブの例には、限定されないが、表4に記載のプローブが含まれる。
【0095】
「発現レベルの上昇」又は「上昇したレベル」は、喘息を有していない個人などのコントロールと比較した場合の、患者におけるmRNA又はタンパク質の発現の増大を指す。
【0096】
本明細書に引用される全ての出版物(特許及び特許出願を含む)は、出典を明記することによりそれらの全体が本明細書に包含される。
【0097】
本明細書及び請求の範囲を通じて、「含む」、或いは「含んでなる」「有する」といったその変形は、言及された1又は複数の整数が含まれることを意味し、1又は複数のいずれかの他の整数を排除するものではない。
【0098】
上述に記載の説明は、当業者が本発明を実施するために十分であると考えられる。以下の実施例は、例示のみを目的とするものであり、いかなる意味でも本発明の範囲を制限するものではない。実際、当業者には、上述の説明から、ここに示して説明するものに加えて、本発明の様々な修正が可能であることが明らかであり、それらは請求の範囲に含まれる。
【0099】
一部参照文献のリスト
1. Haldar, P.及びI.D. Pavord, Noneosinophilic asthma: a distinct clinical and pathologic phenotype. J Allergy Clin Immunol, 2007. 119(5): p. 1043-52; quiz 1053-4.
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【0100】
本明細書で引用する全ての参照文献は、特許出願及び公開公報を含め、その出典を明記することにより、あらゆる目的のためにその全体が本明細書に包含される。加えて、2008年3月31日出願の米国仮特許出願シリアル番号61/072572号、2008年4月1日出願の同61/041480号、2008年5月20日出願の同61/128383号、2009年1月16日出願の同61/205392号は、出典明記によりその全体を本明細書に包含する。また、特に国際公開第2005/062972号及び同2008/116149号は、出典明記によりその全体を本明細書に包含する。
【実施例1】
【0101】
実施例1−方法
気道組織バンク
本発明者らは、健康なボランティアと喘息のボランティアに対して研究目的で実施された気管支鏡検査の間に収集され、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の気道組織バンクに蓄積されていた生物学的試料の研究を行った。研究用気管支鏡検査は、上皮ブラッシングの収集、気管支肺胞洗浄(BAL)及び上述した特定の方法を用いた気管支生検を含んでいた[8、46]。BAL細胞の計数及び微分が実行されてデータベース化され、フローサイトメトリーを用いて気管支肺胞洗浄液からマクロファージが保存された[51]。2〜5番目の気管支分岐部(ブラッシング部位の反対側の)から4〜6の気管支生検が採取され、ホルマリン固定され、次いで等方性の均一且つ無作為な方向[31]にパラフィン包埋されて、炎症の定量的測定及びデザインに基づく立体解析学の方法を使用した再モデル化が可能であった[52]。更に2つの気管支生検をホモジナイズし、Qiagen RNeasy minikit (Qiagen Inc., Valencia, CA)を用いてRNAのための処理を施した。上皮ブラッシングから抽出されたRNA、気管支生検のホモジネート、及び洗浄マクロファージは品質保証されたものであり、将来的なマイクロアレイ及びPCRに基づく遺伝子プロファイリングのために分注した。全ての研究的気管支鏡検査は、UCSFのヒト研究委員会(CHR)によって承認されたものであり、全ての被験者から文書によるインフォームドコンセントが得られており、全ての試験はヘルシンキ宣言に表現された原理に従って実施された。気管支組織バンクの手順も、UCSFのCHRによって審査及び承認された。この組織バンク由来のマクロファージ及び上皮ブラッシングの試料が、上述の試験[8、14、46、51、53]に使用された。最新では、上皮ブラッシングにおいて喘息の被験者に異なって発現された遺伝子のマイクロアレイ解析について、本発明者らによる報告が行われている[8]。
【0102】
気道の炎症及び別個の炎症の根底にある分子機構に関して異なる喘息患者のサブセット、これらのサブセットの病理学的及び臨床的表現型の特徴を特定する目的で、まず、coreまでに生成された上皮細胞マイクロアレイデータを新たに分析し、次いでこれらの新規分析を、これらの同じ被験者由来の新規の詳細な臨床的特徴のデータ(気管支拡張性可逆性及びアレルゲン皮膚試験応答性に基づくデータを含む)と、(i)気管支生検及び肺胞マクロファージのホモジネートにおける遺伝子発現プロファイル、(ii)気管支生検における上皮下コラーゲン及び気道上皮ムチンの定量的測定値、(iii)BALにおける総細胞数及び差次的細胞数を含む新規に生成されたデータとで補った。
【0103】
ヒト被験者及び試料
喘息を有する被験者(N=42)は、事前に医師から喘息の診断を受けており、研究担当医師により、喘息と一致する症状が確認された症状として、気道の応答性亢進(8mg/mLのメタコリン[PC20メタコリン]による吸入強制呼気量の20%以上の低下、並びに1)1週間に2日以上の症状、2)1週間に2日以上のβアゴニストの使用、又は3)予測値の<85%のFEVと定義される)を有していた。喘息の被験者は、登録前の4週間に亘り、吸入ステロイド薬又は経口ステロイド薬を摂取しなかった。健康なコントロール(N=27)は、肺病歴が無く、気道の応答性亢進を有していなかった(PC20メタコリン>16mg/mL)。特定の試験には、喘息を有さない現喫煙者が含まれていた(N=16)。全ての被験者の除外基準は、試験前4週間以内の上気道感染症、6週間以内の喘息増悪、及びサルメテロール、アステミゾール、ネドクロミルナトリウム、クロモグリク酸ナトリウム、メチルキサンチン、モンテルカスト、又はザフィルルカストの現行使用であった。被験者は研究担当医師によるベースライン評価を受けた(前述のような肺活量測定及びメタコリン負荷試験を含む)。被験者は、12のエアロアレルゲンのパネルと、ポジティブコントロールと、ネガティブコントロールとを用いたアレルゲン皮膚プリックテスト(ASPT)も受けた(表6)。
【0104】
22名の喘息被験者は、吸引フルチカゾン(500μg、1日2回、N=19)又は対応するプラセボ(N=13)の、二重盲検無作為化対象臨床試験にも登録された(臨床試験政府識別子:NCT00187499)。試験は、気道の遺伝子発現に対する吸入ステロイド薬(フルチカゾン)の影響を決定し、遺伝子発現の変化を肺機能の向上に関連させるために設計された。臨床試験の喘息の被験者は、ベースライン気管支鏡検査を受け、無作為化されて試験薬物療法を受け、その後試験薬の開始から一週間後に気管支鏡検査を再度受けた。喘息の被験者は試験薬物療法を合計8週間に亘って継続した。健康なコントロールの被験者は、初回は特徴付けのため、2回目は1週間後の気管支鏡検査のための、それぞれ2回の来診を含む3つの断面調査のうちの1つに登録された。35名の被験者は十分なベースライン気管支鏡検査を有し、32名は両方の気管支鏡検査における上皮ブラッシングから入手可能なRNAを有していた。試験薬物療法の開始から4週間後及び8週間後に肺機能を測定し(肺活量測定により)、同療法終了の1週間後に最終気管支鏡検査を完了した。気管支鏡検査、上皮ブラッシング、気管支肺胞洗浄、肺活量測定、及び試料取扱の方法は、全ての試験を通して同一のものを使用した。
【0105】
気管支肺胞洗浄(BAL)は、50mlの無菌生理食塩水からなる4つのアリコートを、小舌又は右中葉に滴下注入し、吸引により回収することにより実施された。細胞の計数は、血球計数器及びチュルク液(希釈したHO中、1%の氷酢酸及び0.01%のゲンチアナバイオレット)を用いて実施した。次いでBAL細胞分画を、ShandonのKwik-Diff染色キット(Thermo Fisher Scientific, Waltham MA)を用いて細胞遠心分離した調整物に対して実施した。22名の喘息被験者は、吸入フルチカゾン(500mcg BID)又は対応するプラセボの二重盲検無作為化対象臨床試験にも登録された。上述の組み入れ基準に加えて、これらの被験者はまた、1週間に2日以上喘息症状を有するか、1週間に2日以上βアゴニストを使用するか、又は予測値の<85%のFEVを有することが必要であった。臨床試験の被験者は、上述のようなベースライン来診をしてベースライン気管支鏡検査を受け、その1週間後に再度気管支鏡検査を受けた。次いで、被験者らは合計8週間に亘って試験薬物療法を継続し、その間に予定された排気量測定の再評価とメタコリン負荷試験とを受けた。全ての臨床試験は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のヒト研究委員会の承認を受けており、全ての被験者から書面によるインフォームドコンセントが得られており、全ての試験はヘルシンキ宣言に表明された理念に従って実施された。
【0106】
マイクロアレイ解析及び形態測定
軽度〜中等度の非喫煙喘息患者及び健康な非喫煙被験者由来のマイクロアレイデータを、上述のような過去の研究から取得した[8]。方法論の詳細及びマイクロアレイデータは、遺伝子発現バンクという公のデータベースから入手することができ、このデータベースには、国立バイオテクノロジー情報センターで、受入番号GSE4302によりオンラインでアクセスすることができる。本発明の試験ではマイクロアレイデータが解析されて、遺伝子が喘息グループ内で異なって制御されるかどうかが判定された。また、マイクロアレイデータを解析することにより、他の遺伝子が、喘息と最も強く関連するIL−13誘導型遺伝子と同時制御されるかどうかが判定された。表1のプライマー及びプローブを使用して(即ち、マルチプレックスPCRの後でcDNA生成産物にリアルタイムPCRを行った)二段階式リアルタイムPCR(qPCR)を上述のように実施した[45]。
【0107】
上述の各被験者に由来する4〜6の気管支内生検に対してデザインに基づく立体解析学を適用することにより、形態計測学的分析を実施した。特異的に、網状の基底膜の厚さの分析を、直交切片法を用いて、トリクローム3μmの切片において測定した[31]。ポイントアンドライン交差(point and line intersect)計数法を用いて、アルシアンブルー/過ヨウ素酸シッフの3μmの切片において、気道ムチンの含有量を測定した[46]。
【0108】
統計方法
R統計的環境において、Bioconductorオープンソースソフトウェアと共にRMAを使用して、マイクロアレイ事前プロセシングを実施した[47]。完全なリンケージでユークリッド計量を使用して教師なし階層的クラスタリングを実施した。他の全ての統計解析は、JMP統計解析ソフトウェアパッケージ(Institute, Cary, NC)を用いて実施された。値は、特に断らない限り、平均値±標準偏差又は中央値(範囲)で示される。スピアマンの順位相関を用いた相関が実施された。PC20及び血清IgEレベルの優位性試験のために、データをログ変換することにより正規化した。p<0.05である場合に統計的に有意であるとみなし、ANOVAにより最初の3グループの比較を行った後、多重比較のためにsidak相関を利用した。
【0109】
表1.qPCRのプライマー及びプローブ配列





【0110】
ペリオスチン及びCEACAM5のqPCRのために、上述の方法[45]及びログ10変換により、ベースライン気管支上皮ブラッシング試料中におけるペリオスチン及びCEACAM5の発現を取得した。実施例9(図11を参照)に記載する35のプローブのIL13シグネチャーを応答の指標として使用した。全てのモデルは、JMP7.0のフィッティングモデルプラットフォームを使用して得られた。序数的ロジスティック回帰分析を実行して(健康なコントロール;HC)<(IL13が低い)<(IL13が高い)となるレベルを有する応答を予測した(35プローブのIL13の状態)。各レベルの確率を求めるための一般化された予測モデルは、下記のように表わされる:

【0111】
序数的ロジスティック回帰分析は、下記モデルに対して実施された:(35のプローブのIL13の状態)〜(POSTN)+(CEACAM5)。p値が<0.0001である全体モデルが、反復性のフィッティングに基づくデータベースから得られた。
【0112】
IL13応答性の遺伝子
ペリオスチン(骨芽細胞に特異的な因子としても知られる)(POSTN:210809_s_at)、CLCA1(カルシウムにより活性化される塩素イオンチャネル、ファミリーメンバー1としても知られる)(CLCA1:210107_at)、及びセルピンB2(セルピンペプチダーゼ阻害薬、クレイドB(卵白アルブミン)、メンバー2)(セルピンB2:204614_at)の発現レベルの間の関係を、ウィルコクソン順位和検定を用いて確認した。POSTNの発現レベルを使用して、ベースラインの喘息試料を分類した。800単位のカットオフを使用したところ、21名の喘息のベースラインの喘息試料が「IL13が低い」(POSTN<800単位)に、残りの21名の試料が「IL13が高い」(POSTN>800)に分類された。ウィルコクソン順位和検定の後で偽発見率分析(q値<0.05)を行ったところ[24]、2つのグループの中で異なって発現された35のプローブが特定された。これらのプローブを使用した階層的クラスタリングは行わなかった。異なって制御されるプローブのリスト中に多数のシステイン及びセルピンファミリー遺伝子が存在することにより、他のシステイン及びセルピンファミリープローブが同定されて別のクラスター解析に使用された。全ての統計解析は、Rを使用して実施された。マイクロアレイクラスター解析は、Clusterを使用して実施され、Java Treeviewを用いて可視化された[25、26]。
【0113】
血清分析物アッセイ
UCSF臨床検査室により、又は製造者の指示に従った(Bethyl Laboratories)ヒト血清IgE ELISAキットを用いたELISAにより、血清IgEを測定した。血清CEAは、製造者の指示に従って(Alpco Diagnostics)ヒト血清CEA ELISAキットを使用して測定した。本発明者らは、抗ペリオスチン抗体(R&D systems)を用いて血清ペリオスチンを測定するための電気化学発光アッセイ(ECLA)を開発した。つまり、モノクローナル抗ペリオスチンを、4℃の炭酸ナトリウムバッファー(pH9.6)中において、一晩に亘り、1.5マイクログラム/mlでプレートにコーティングした。プレートをアッセイバッファー(1×PBS(pH7.4)、0.35M NaCl、0.5%BSA、0.05%Tween20、0.25%CHAPS、5mM EDTA、15ppM Proclin)+3%のBSA中で室温で2時間に亘りブロッキングし、次いでTBST(トリスバッファー生理食塩水+0.1%Tween−20)で4回洗浄した。アッセイバッファー中で血清を1:5に希釈し、室温で2時間に亘り、攪拌しながらインキュベートした後、TBSTで4回洗浄した。組換えペリオスチン(R&Dシステム)を使用して、標準的範囲を確立した。ビオチン化したポリクローナル抗ヒトペリオスチン(1.5マイクログラム/ml)(R&D Systems、従来技術に既知の標準的な方法に従ってインビトロでビオチン化されている)及びルテニウム−ストレプトアビジン(0.75マイクログラム/ml)(Meso Scale Devices)をアッセイバッファー+5%ヤギ血清に添加し、室温で90分間インキュベートした。読み取りバッファー(Meso Scale Devices)を添加し、電気化学発光を読み取った(Meso Scale Devices)。ダイナミックレンジは5〜2000ng/mlであった。
【0114】
実施例2−IL−4/13シグネチャーと喘息のサブセット
IL−13に誘導された3つの遺伝子(ペリオスチン、CLCA1、及びセルピンB2)が、喘息の気道上皮において更に広いパターンの遺伝子発現を反映するかどうかを判定するために、本発明者らは、それらの発現が、試験対象の42名の喘息患者の個々の被験者において、ベースラインで同時制御されるかどうかを試験した。ペアによる比較において、個々の喘息患者のペリオスチン、CLCA1、及びセルピンB2の発現レベルは有意に相関していた。更に、これらの遺伝子は、全てではないが一部の喘息患者の被験者に高度に発現された(図1A及び1B)。加えて、喘息を有する個々の被験者のこれらの3つの遺伝子の発現レベルは高度に相関していた(図1B)。これらのデータは、特定のIL−13マーカーが、喘息患者の特定のサブセットに過剰発現されることを示唆するものである。さらなる実験で、本発明者らは、IL−13によって直接的又は間接的に制御されうる新規の遺伝子又はマーカーの同定と、IL−13マーカーの発現に基づく喘息患者のサブセットの特徴づけとを模索した。
【0115】
喘息患者の気道上皮において、IL−13により直接的又は間接的に制御されうる他の遺伝子又はマーカーを同定するために、本発明者らは、42名の喘息患者の被験者を網羅するマイクロアレイデータセット全体を、ペリオスチンの発現と有意に相関する発現を有する遺伝子について調べた。q値の閾値0.05を下回る個々の被験者において、発現がペリオスチンと同時制御される653のプローブからなるクラスターが同定された。それら653のプローブの発現レベルに基づく健康なコントロールと喘息患者とを含む全ての被験者の教師なしクラスタリングにより、2つの主要なクラスターが判明した。即ち、ペリオスチンと、同時制御される遺伝子との発現レベルが高いクラスター、及びペリオスチンと、同時制御される遺伝子との発現レベルが低いクラスターである。この遺伝子クラスターのコア(図1C、右)は、図13に示す遺伝子を表わす35のプローブからなるサブセットを含み、これらをここで「IL−4/13シグネチャー」、「IL−4/13遺伝子シグネチャー」、「IL−13シグネチャー」、又は「IL−13遺伝子シグネチャー」と呼ぶ。上記に示したように、本明細書においてこれらの用語は同意語として使用される。ペリオスチン及び同時制御される遺伝子の発現レベルの高いクラスターは、21名の喘息患者の被験者を含み、健康なコントロールは含んでいなかった(図1C、右、「IL−4/13シグネチャーが高い」部分)。一方、ペリオスチン及び同時制御される遺伝子の発現レベルが低いクラスターは、残りの21名の喘息患者(図1C、右、「IL−4/13シグネチャーが低い」部分)と、その間に分散する健康な27のコントロールの全て(図1C、右)を含んでいた。
【0116】
クラスター1(「IL−4/13シグネチャーが高い」)は、ペリオスチン、CST1、CST2、CST4、CCL26、CLCA1、CDH26、PRR4、セルピンB2,セルピンB10、CEACAM5、iNOS、C2ORF32、PTGS1、P2RY14、RUNX2、SH3RF2、WLRW300、DNAJC12、ALOX15、GSN3、RGS13、TGSAB1、PTSG1、FCER1B、及びCPA3のプローブに対応する遺伝子の高い発現レベルを特徴とし、試験した概ね半分の喘息患者(42名の喘息患者中、N=23)と、総数27名の健康なコントロールのうち1とから構成される。クラスター2(健康なコントロール及び「IL−4/13シグネチャーが低い」)は、上に示したプローブに対応する遺伝子の低い発現レベルを特徴とし、残り19名の喘息患者と26/27名の健康なコントロールから構成される。マスト細胞に優性に発現される遺伝子に対応するプローブ、例えばRGS13、TPSG1、TPSAB1、FCER1B、CPA3、及びSLC18A2は、表2に太字で示され、好酸球に優性に発現される遺伝子に対応するプローブ、例えばP2RY14及びALOX15は斜体で示される。上皮ブラッシングは主に上皮細胞と杯細胞とからなっていたが(平均値97%、中央値98%、最小値91%)、クラスター1の喘息患者由来のブラッシングには少数の浸潤性マスト細胞及び好酸球が観察され、シグニチャー中のマスト細胞及び好酸球遺伝子のパーセンテージは、このような浸潤を反映しているように思われた。
【0117】
IL−13マーカーの発現に基づいて喘息を有する被験者のサブセットを特徴付けるために、本発明者らは、全部で70名の被験者(42名の喘息患者及び27名の健康なコントロール)の教師なし階層的クラスタリングを、ペリオスチン、CLCA1、及びセルピンB2のマイクロアレイ発現レベルに基づいて実施した(図1D)。この解析では、喘息を有する被験者の概ね半数(N=22)が一貫して高レベルのIL−13誘導型遺伝子を示し、クラスターの樹状図の主要な一分岐部にグループ化された(クラスター1、「IL−13が高い」サブセット)。注目すべきことに、全42名の喘息患者を全27名の健康なコントロールと比較したとき、ペリオスチン、CLCA1、及びセルピンB2は有意に過剰発現されていたが[8]、本試験で調べた喘息患者の半数近く(N=20)は、これら3つの遺伝子の発現に基づくと、健康なコントロールから区別することができなかった。喘息患者のこのサブセット(「IL−13が低い」サブセット)と、全ての健康なコントロールとは、樹状図の第2の主要な分岐部にグループ化された(図1D、クラスター2)。このように、上皮の遺伝子発現に基づく階層的なクラスタリングにより、ここで「IL−13が高いサブセット」及び「IL−13が低い」サブセットからなる2つの別個の喘息患者のサブセットが同定された。
【0118】
上皮細胞におけるIL−13誘導型マーカーの発現を用いて同定されたこれらの喘息患者のサブセットの妥当性を確認するために、本発明者らは、48名の被験者(14名の健康なコントロール、18名のクラスター1喘息患者、及び16名のクラスター2喘息患者)から同時に採取した気管支生検における、IL−13と他の特定のTh2サイトカイン(即ちIL−4及びIL−5)との発現レベルを測定した。qPCRを使用することで、IL−13、IL−5、及びIL−4の発現が気管支生検のホモジネートにおいて検出可能であることが判明した。特に、IL−13及びIL−5の発現は、クラスター2の喘息患者又は健康なコントロールよりも、クラスター1の喘息患者において有意に高かった(図1E、*、p<0.002)が、IL−4の発現はそうではなかった。しかしながら、クラスター2の喘息患者と健康なコントロールとの間には、IL−4、IL−5、又はIL−13の発現に有意な差はなかった(図1E)。加えて、IL−13とIL−5の発現レベルが、全ての喘息患者において強く相関していることが判明した(スピアマンの順位相関ρ=0.58、p<0.0001;図1E)。IL−4は、IL−13と主要なシグナル伝達経路を共有し、IL−13と同様にペリオスチン[7、9]及びCLCA1[12]の発現を誘導することが示されている。喘息患者の気管支肺胞洗浄(BAL)液中のIL−4発現T細胞のレベルの上昇が報告されており、本発明者らは、BAL T細胞中のサイトカイン遺伝子発現や、BAL又は本試験の気管支組織中のサイトカインタンパク質レベルを特に調べなかったので、観察されたペリオスチン、CLCA1、及びセルピンB2の誘導が、部分的にはIL−13だけでなくIL−4によるものであるという可能性を除外することはできなかった。ここに示されるデータに基づいて、気管支IL−13の発現と上皮ペリオスチン、CLCA1、及びセルピンB2の発現とが相関していることは確実に認められる。したがって、「IL−4/13が高い」、及び「IL−13が高い」という用語は同義であってクラスター1の喘息患者に使用され、「IL−4/13が低い」、及び「IL−13が低い」という用語は同義であってクラスター2の喘息患者に使用される。「IL−13が高い」及び「IL−13が低い」という用語が使用されるときも、IL−4及び/又はまだ同定されていない他の因子も、観察された遺伝子の発現パターンに部分的に寄与している可能性があることを理解されたい。
【0119】
実施例3−IL−4/13シグネチャーの構成遺伝子
IL−4/13シグネチャー内には、2つの主要な遺伝子グループが存在する。即ち、上皮又は杯細胞に発現される遺伝子と、マスト細胞に発現される遺伝子である。各気管支ブラッシング試料に含まれる90%を超える細胞が気管支上皮細胞又は杯細胞である(平均値97%、中央値98%、最小値91%)。以下の上皮又は杯細胞に対応するプローブの発現レベルは、極めて顕著にペリオスチンの同レベルと同時制御される:CST1、CST2、CCL26、CLCA1、PRR4、セルピンB2,CEACAM5、及びiNOS(表2、アスタリスクで示す;IL−4/13シグネチャーが高い被験者における発現は、IL−4/13シグネチャーが低い被験者の3倍を上回る)。CLCA1、mCLCA3(gob−5としても知られる)のマウスオルソログは、既に、どちらもIL−9及びIL−13を含むTh2サイトカインによって誘導される気道上皮の杯細胞異形成と粘膜産生とに関連する遺伝子として同定されている[12-14]。
【0120】
表2

【0121】
セルピンB2は、染色体18q21上の遺伝子クラスター中においてコードされるセリンプロテアーゼ阻害薬の大きなファミリーのメンバーである(図2A、上段、http://genome.ucsc.eduのUCSCゲノムブラウザのスクリーン)。セルピンB2[8]、B3、及びB4の発現レベルは、組換えIL−4及びIL−13によるシミュレーションにより気道の上皮細胞に誘導される[7、15]。
【0122】
シスタチン(CST)1及び2は、染色体20p11上の遺伝子クラスターにおいてコードされるシステインプロテアーゼ阻害薬の大きなファミリーのメンバーである(図2A、中段、ttp://genome.ucsc.eduのUCSCゲノムブラウザのスクリーン)。複数のシスタチンが気管支上皮に発現される[16];CST4は、喘息患者の気管支肺胞洗浄液(BAL)に高レベルで同定されている[17];血清CST3は、健康なコントロールより喘息患者において高く、そのレベルはICS治療により低下する[18]。セルピン及びCST遺伝子ファミリーはそれぞれ染色体上に共存するので、本発明者らは、セルピン及びシスタチン遺伝子ファミリーのいずれかの新しいメンバーが、既に同定されたメンバーと同時制御されるかどうかを調査した。セルピン及びシスタチン遺伝子ファミリーに制限してマイクロアレイデータの教師なしクラスタリングを実行した。セルピンB2、B4、及びB10、並びにシスタチン1、2、及び4が有意に同時制御されることが判明し、「IL−4/13シグネチャー」についてポジティブな喘息患者において発現レベルが最大であった(図2B)。
【0123】
PRR4は、染色体12p13上の遺伝子クラスターにおいてコードされるタンパク質の大きなファミリーのメンバーである(図2A、下段、ttp://genome.ucsc.eduのUCSCゲノムブラウザのスクリーン)。これらのプロリンリッチタンパク質は、唾液及び涙を含む粘膜分泌物に見られる。関連の、しかし非オルソロガスなタンパク質SPRR1a、2a、及び2bは、喘息のマウスモデルの気管支上皮において同定されており、IL−13により誘導される[19、20]。PRR/PRBファミリー由来のプロリンリッチタンパク質は、気管支分泌物において同定されており[21]、それらの発現は気管支上皮で実証されている[16]。PRR/PRBファミリーのうち、PRR4及びPRB4は、IL−4/13遺伝子シグネチャーの発現が高い喘息患者において有意に上方制御された(図2C、左及び中央)。
【0124】
CCL26(エオタキシン−3)は、喘息患者の気道上皮にIL−4及びIL−13を誘導しうるケモカインである。
【0125】
CEACAM5は、多数の上皮組織及び上昇した血清において観察される細胞表面の糖タンパク質である。CEACAM5(癌胎児抗原;CEA)は、上皮悪性腫瘍及び転移性疾病の全身的なバイオマーカーであり、文書に十分に裏づけされている。CEAレベルの上昇は、喘息患者の1サブセットに、特に粘液栓子を有する喘息患者に観察される高い血清レベルと共に報告されている[22]。CEACAM5は、IL−4/13シグネチャーの低い被験者及び健康なコントロールの気道上皮と比較して、IL−4/13シグネチャーの高い喘息患者の気道上皮において顕著に上方制御され(図2C、右)、これにより、血清CEAレベルを使用してこれら2つの喘息患者のサブ表現型を区別しうることが示唆された。
【0126】
誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)は、気道の炎症と関連しており、ヒトの初代気管支上皮細胞培養液中においてL−13により誘導される[23]。吐き出された一酸化窒素(eNO)の測定値、iNOSの酵素活性の結果は、喘息の診断及びモニタリングにおいて一般的に使用される。
【0127】
実施例4−マスト細胞
本試験で使用される気道ブラッシングは、主に上皮及び杯細胞を含んでいたが、試料の多数には有意な割合の浸潤性の白血球細胞が存在した。トリプターゼ(TPSD1、TPSG1)、カルボキシペプチダーゼA3(CPA3)、及びFcεRIβを含む、マスト細胞に特異的に発現する遺伝子は、IL−4/13遺伝子シグネチャーと有意に相関していた(表2及び表4、マスト細胞遺伝子を表4のダブルアスタリスクで示す)。アレルギー性の疾病において組織常在性のマスト細胞の役割が大きいこと、及び喘息患者の気管支内生検の標本においてIL−13を発現するマスト細胞の存在が痰に含まれるIL−13の検出可能レベルにポジティブに相関している[6]という最近の観察結果から、マスト細胞特異性遺伝子とIL−4/13シグネチャーとの高い相関性は、1)マスト細胞が気道上皮におけるIL−13の大きな供給源である可能性と、2)気道上皮へのマスト細胞の浸潤が、IL−4/13シグネチャーが高い喘息患者のサブセットに固有の特徴である可能性とが示唆される。
【0128】
実施例5−IL−4/13シグネチャーを予測する組み合わせ
IL−4/13シグネチャーの個々の遺伝子の発現レベルは、様々な精度で個々の被験者のIL−4/13シグネチャーの状態を予測することができる;しかしながら、これらの遺伝子の組み合わせを使用して、個々の被験者を、感受性及び特異性を増大させながら、IL−4/13シグネチャーが高い又は低いカテゴリーに割り付けることができる。
【0129】
実施例6−ステロイドの効果
対症療法(即ち、βアドレナリンアゴニスト)で上手く制御できない気管支喘息の標準的なケアは、吸入ステロイド薬(ICS)である。気道におけるIL−13のレベルが高い軽度〜中等度の喘息患者[6]と、食道の組織におけるIL−13の発現レベルが高い好酸球性食道炎患者[11]では、ICS治療により、患部組織のIL−13のレベル及びIL−13誘導性遺伝子が実質的に低減する。ICS治療を1週間行った後の喘息患者の気道上皮と、培養された気管支上皮細胞において、本発明者らは、ステロイド薬による処置が、ペリオスチン、セルピンB2、及びCLCA1のIL−13誘導性の発現レベルを実質的に低下させることを示した[8]。表2に列挙した遺伝子の更なる実験により、2回目の気管支鏡検査の前に1週間に亘るICS治療を受けた本試験の19名の被験者において、IL−4/13シグネチャー遺伝子の大部分が、喘息患者の気管支の気道上皮細胞においてICS治療により有意に下方制御されることが判明した(例としてペリオスチンを示す、図3A)。このような下方制御は、IL−13のレベルのICS媒介性の低下、標的遺伝子発現のICS媒介性の低下、又は2つの組み合わせの結果と思われる。しかしながら、IL−4/13シグネチャーのうちの2つの遺伝子、即ちPRR4(図3)及びRUNX2(図3C)は、1週間に亘るICS治療後も、個々の被験者において実質的に下方制御されなかった。これは、PRR4及びRUNX2が、喘息患者の気道上皮におけるIL−4/13シグネチャーのステロイドに非感受性のマーカーである可能性を示唆している。別の可能性は、PRR4及びRUNX2が、IL−4及び/又はIL−13によって間接的にのみ制御されることであり、例えば、PRR4は、多くの分泌物に見られることから、杯細胞に特異的な遺伝子でありうる。上皮細胞からの杯細胞の分化はIL−13によって誘導されるので、ICS媒介性のIL−13及びIL−13依存性プロセスの阻害は、たった7日間の治療の後で杯細胞数に実質的に影響することはありえないが、もっと長期に亘るICS治療の後では、杯細胞数(及び、したがって気管支内ブラッシングのPRR4の発現)は減少することが予想される。ICS治療に抵抗性の重度の喘息患者では、痰IL−13レベルが検出可能であった被験者の割合は、ICS治療を受けていない、中等度の喘息患者の同レベルと同様(約40%)であった[6]。これは、本試験で観察されたIL−4/13シグネチャーを有する被験者の割合と一致する。このような観察結果は、IL−4/13シグネチャーが、本試験で調べた軽度〜中等度のICS応答性の喘息患者においてICS治療によって有意に下方制御されるものの、重度のステロイド抵抗性喘息患者に依然として存在していることを示唆するものである。
【0130】

実施例7−臨床的特徴及びその他のバイオマーカーとのIL−4/13シグネチャーの関係
・個体群統計学
気道好酸球レベルの上昇により定義される好酸球性の喘息は、アトピーに関連しており、男女に概ね等しい罹患率で発生するが、気道における好酸球の相対的な不在及び関連するアトピーの不在により定義される非好酸球性喘息は、女性に有意な優性を示す[1]。気道上皮のIL−4/13遺伝子シグネチャーに従って分類された被験者のうち、IL−4/13シグネチャーが高い被験者の10/21(48%)が女性であったのに対し、IL−4/13シグネチャーが低い被験者の15/21(71%)が女性であった(表3)。IL−4/13シグネチャーが低いグループと高いグループの間には、自己申告された民族性による有意な歪みは無かった。

【0131】
・FEV及びメタコリン応答性
IL−4/13が低いグループと高いグループとの間の性別による歪みは、喘息患者の気道上皮に観察される遺伝子発現パターンが安定な基礎表現型を反映していることを示唆するが、観察される遺伝子発現パターンが単に疾病の重症度又は気管支鏡検査時の活性度を反映している可能性もある。IL−4/13シグネチャーが喘息の重症度と相関しているかどうかを判定するために、本発明者らは、1秒間の強制呼気量(FEV、気管支鏡検査の1週間前のスクリーニングのための来診時に測定された、患者の体重から予測されるパーセンテージとして)をグループ間で比較し、IL−4/13シグネチャーが高いグループ及び低いグループの両方が、健康なコントロールより有意に低いFEVを有し、一方IL−4/13シグネチャーが高いグループには、低いグループより「中等度」(即ち、60〜80%のFEVが予測される)として分類されうる被験者が多いものの、それらグループ間には統計的に有意な差は無い(図5A参照)ことを見出した。20%のFEVの低下を誘導するために必要なメタコリンの最小濃度(mg/ml)(PC20、気管支鏡検査の1週間前のスクリーニングのための来診時に測定された)は、気管支の応答性亢進の程度を表わしている。これは、気管支過敏症(BHR)の程度を表わす。IL−4/13シグネチャーが高いグループと低いグループは共に、健康なコントロールより有意に低いPC20の値を有しており、またPC20の値はIL−4/13シグネチャーが低いグループより高いグループが低い傾向にあったが、このような差異は統計的に有意なレベルには達していなかった(図5C参照)。
【0132】
・IgE及び好酸球(末梢神経及び気道)
個々の被験者のIL−4/13シグネチャーの状態がアトピーの標準的な指標により予測できるかどうかを判定するために、本発明者らは、標準的な臨床検査試験を使用して、気管支鏡検査時に取得された、血清IgE(1ミリリットル当たりの国際単位;1IU=2.4ng)、末梢血好酸球数(血液1リットル当たりの好酸球の絶対数x10^9)、及び気管支肺胞洗浄液(BAL)中の好酸球のパーセンテージ(気管支肺胞洗浄液中における非扁平細胞の総数に対する好酸球のパーセンテージ)のレベルを検査した。被験者をIL−4/13シグネチャーの状態について層別化したところ、血清IgE(図6B参照)、末梢血好酸球数(図6C参照)、及びBAL好酸球パーセンテージ(図6D参照)には有意な差があり、IL−4/13シグネチャーが高いグループにおいて観察された各分析物の値は、低いグループより有意に高かった。個別には、IgEレベル及び末梢血好酸球数のいずれもが、感受性及び特異性が同時に高いいずれかの個々の被験者の気道上皮のIL−4/13シグネチャーの状態を予測するものではなかった。しかしながら、個々の喘息患者においては、IgEレベルと末梢血好酸球数とは弱くではあるが、有意に相関している(rho=0.44、p=3.4x10−3)。複合的に考えたとき、IgEが100IU/ml、好酸球が0.14x10という経験的に得られた両方のカットオフ値は、感受性及び特異性の高い個々の被験者の気道上皮のIL−4/13シグネチャーの状態を予測する(図4、IL−4/13シグネチャーが低い場合及び高い場合両方について、18/21が正確であった;感受性=86%、特異性=86%)。
【0133】
表4.IL−4/13遺伝子シグネチャーの遺伝子及び例示的プローブ


















** マスト細胞に特異的な遺伝子
*** 好酸球に特異的な遺伝子
【0134】
実施例8−「IL−13が高い」及び「IL−13が低い」喘息のサブ表現型と臨床的特徴の関係
喘息患者の被験者は、更に、実施例7に記載したような他の個体群統計学的な特徴及び臨床的特徴に関して解析された。結果を表5と図5及び6とに示す。個体群統計学的特徴、肺機能、又は気管支拡張薬応答性(アルブテロールによるデルタFEV1)に基づいて、「IL−13が高い」喘息のサブ表現型を有する被験者を「IL−13が低い」喘息のサブ表現型から区別することはできなかったが(表5、図5A−B)、これらのグループは、気道の応答性亢進(AHR、メタコリンに対するPC20、呼気性気流に20%の減少を誘導するために必要なメタコリンの最小濃度と定義される、図5C)の程度に関して有意に異なっていた。AHRにおけるこのような差異は、組み入れ基準により全ての喘息患者が有意なAHR(全ての喘息患者<8mg/ml、全ての健康なコントロール>20mg/ml)を有していることが必要であるにも関わらず明らかであった。
【0135】
表5.喘息の表現型による被験者の特徴

正常に分布したデータの場合、値は平均値±標準偏差で示され、スチューデントのt検定が実施されている。正常に分布していないデータの場合、値は中央値(範囲)で示され、ウィルコクソン順位和検定が実施されている。データが無い場合、データが存在する被験者の数を注記する。図5及び6には健康なコントロールに対するp値も示す。PC20は、FEVに20%の減少を引き起こすために必要な誘発濃度を、BALは気管支肺胞洗浄を、RBMは網状の基底膜を表わす。
【0136】
個々の被験者のIL−13サブ表現型がアレルギー性の炎症の程度と相関しているかどうかを判定するために、本発明者らは、12名のエアロアレルゲンからなるパネルに対する皮膚プリック試験(SPT)の結果、血清IgEのレベル、末梢血好酸球数、及び気管支肺胞洗浄液(BAL)中の好酸球のパーセンテージを検討した。その結果を図6A−Dと7A−Bに示す。IL−13が高い喘息サブ表現型と低い喘息サブ表現型は共に、健康なコントロールと比較した場合にエアロアレルゲンに対するSPT感受性を上昇させた(図6A)が、IL−13が低い喘息のサブ表現型では、IL−13が高い喘息サブ表現型よりポジティブな皮膚試験の数が少なく、イヌ及びハウスダストダニのようなエアロアレルゲンに感作されることが少なかった(図7A)。IL−13が高い喘息サブ表現型を有する被験者においては、IL−13が低い喘息サブ表現型を有する被験者より、血清IgEレベルが高く、末梢決好酸球数が多かったが、IL−13が低い喘息サブ表現型も、アレルギー性炎症のこれらの特徴に関して健康なコントロールとは異なっていた(図6B−C)。加えて、IL−13が高い喘息サブ表現型を有する被験者においては、BALにより評価した場合の肺中の好酸球の数が増加しており(図6D)、一方IL−13が低い喘息サブ表現型はBALの好酸球パーセンテージに関して健康なコントロールと差がなかった。これらのデータは、IL−13が高い喘息サブ表現型を有する被験者におけるAHRの濃縮、IgEレベル、及び好酸球性炎症を証明するものであるが、エアロアレルゲンに対するSPT感受性はこのサブグループに限られていなかった。したがって、エアロアレルゲンに感作する別の非Th2の機序が、IL−13が低い喘息サブ表現型を有する被験者において機能していると思われる。
【0137】
表6.アレルゲン皮膚プリック試験のパネル

【0138】
IL−13が高い喘息のサブ表現型が、耐久性であるか又はアレルゲンに最近曝されたことによるTh2駆動性の炎症の一過性の症状であるかを判定するために、本発明者らは、同じ被験者由来の気管支生検の病理学的変化を測定した。本発明者他は、既に、喘息が、気道のリモデリングとして知られ、且つ長期に亘る炎症又は障害の影響と時間をかけて行われたその修復とを反映する病理学的変化に関連していることを実証している[28、29]。喘息における2つの特定のリモデリングの結果は、上皮下の網状基底膜(RBM)の肥厚として現れる気道繊維症[30、31]と、気道上皮のムチン蓄積の増大[32]である。本発明者らは、IL−13が高い喘息のサブ表現型を有する被験者におけるRBMの厚みが、IL−13が低い喘息のサブ表現型又は健康なコントロールより大きいことと、RBMの厚みが、IL−13が低い喘息のサブ表現型において正常であることとを発見した(図6E)。加えて、喘息を有する被験者の両方のサブ表現型において、上皮ムチン蓄積が増大する傾向が観察されたが、このような増大は、IL−13が高い喘息サブ表現型の被験者においてのみ有意であった(図8A)。総ムチン蓄積量におけるこれらの差異はわずかなものであったが、qPCRにより、IL−13が高い喘息サブ表現型の気道上皮細胞における主要なゲル形成ムチンの発現レベルは、IL−13が低い喘息サブ表現型及び健康なコントロールと比較した場合に著しく異なっていることが判明した(図8B−D)。具体的には、IL−13が高い喘息のサブ表現型は、MUC5AC及びMUC2の発現及びMUC5B発現の抑圧により、IL−13が低い喘息サブ表現型及び健康なコントロールから区別される。IL−13が高い喘息サブ表現型における特定のムチン遺伝子の発現のこのような変化は、MUC5Bの発現に対するMuC5ACの割合に最も明らかである(図6F)。理論に拘束されることなく、本発明者らは、特定のゲル形成ムチンの随伴的誘導及び抑圧は、IL−13が低い喘息サブ表現型及び健康なコントロールと比較した場合に、IL−13が高い喘息サブ表現型において上皮ムチン蓄積の増大が比較的わずかであることを説明しうると推測する。即ち、これらの発見は、IL−13が高い喘息のサブ表現型が、このサブ表現型を耐久性と同定する、気道内のリモデリングの時間の経過に伴う変化に関連していることが示される。これらの結果も、ヒト被験者における気道リモデリングにIL−13経路が重要であることを実証している。
【0139】
肺胞マクロファージは、IL−13[54]、及びロイコトリエン又はエイコサノイド脂質[55、56]の供給源として、或いはIL−13の影響下での「別の活性」により[57]、喘息のアレルギー性気道炎症を調節することができる。「IL−13が高い」喘息を有する被験者の肺胞マクロファージにこれらの発見のうちのいずれかが現れているかどうかを判定するために、本発明者らは、14名の喘息被験者と、15名の健康なコントロールとにおいて、qPCRを用いて関連遺伝子の発現を測定した(表7)。本発明者らは、喘息全体に、或いは特に「IL−13が高い」サブグループに、Th2サイトカインの誘導又は別の活性マーカーの誘導の証拠を見出さなかった。IL−13の発現のレベルは、29名の被験者のうち26名において検出限界を下回っており(サイクル閾値>40)、IL−4は29名の被験者のうち20名において検出限界を下回っていた(いずれのサイトカインについても、3つのグループの間に差はなく、全てp>0.35であった)。他の全ての遺伝子は、試料全体に亘って検出の限界内にあった。これらの解析において、「IL−13が高い」喘息に15−リポキシゲナーゼの発現が増大していることが発見され(図10、表8)、これは重症の好酸球性喘息の気道において15−リポキシゲナーゼ産物が増大する[56]という先の発見と一致するものである。また、「IL−13が高い」サブグループに限定したTNFαの発現の増大が発見された(図10、表8)。
【0140】
喘息患者の1サブセットのみが、吸入ステロイド薬(ICS)により治療したときに肺機能に改善を示した[33]。ステロイド薬応答性の遺伝子発現マーカーを同定するために、本発明者らは、既に報告されているように[8]、吸入フルチカゾン又はプラセボの、8週に亘る無作為化比較試験の間の喘息被験者の1サブセットにおけるFEVを測定した。IL−13のサブ表現型により被験者を層別化してそのデータを再度解析すると、FEVの改善はIL−13が高いサブ表現型に限定されていることが判明した。具体的には、IL−13が高い喘息サブ表現型を有する被験者を吸入フルチカゾンにより治療した場合、それら被験者が、プラセボ治療された被験者と比較して、4週目及び8週目の両方においてFEVに有意な改善を示したのに対し、IL−13が低い喘息サブ表現型を有する被験者はそのような改善を示さなかった(図9A)。IL−13が高いグループにおけるこのようなFEVの改善は、投薬の停止後1週間で失われた。どちらのグループにおいても、いずれの時点でも、プラセボによるFEVの有意な変化は無かった(データは示さない、「IL−が高い」グループ:N=5、「IL−13が低い」グループ:N=6)。既に報告されているように[8]、本発明者らは、治療の開始から1週間後に2回目の気管支鏡検査を実施し、ベースラインとしてマイクロアレイにより気管支上皮の遺伝子発現を解析した。IL−13サブ表現型により被験者を層別化するこれらのデータの再解析においては、ベースラインにおいてIL−13が高い喘息を有する被験者は、プラセボ治療の1週間後も強いIL−13サブ表現型を示し続けており、これにより、治療をしない場合のこのサブ表現型の短期安定性が実証された。しかしながら、フルチカゾン治療の1週間後、IL−13が高い喘息を有する被験者は、治療に関係なく、ベースラインでIL−13が低かった被験者とクラスター化した(図9B)。このように、本明細書に記載されるIL−13シグネチャーに基づく喘息の表現型の分類により、ICSに対する応答が予測される。これらのデータは、喘息のICS治療の全体的な利点が、IL−13が高いサブ表現型により説明されることを示唆している。
【0141】
本発明の結果は、喘息の臨床的な不均一性の基礎となる分子機構への新たな洞察をもたらすものである。これまでの基礎研究により、アレルギー性炎症及び喘息に関連する病態生理学的変化の多くの中心的制御因子として、IL−13とそれに関連するTh2サイトカインとが証明されている[35、36]。ここで、本発明者らは、遺伝子発現プロファイリングを使用して、喘息患者に「IL−13が高い」サブ表現型を同定した。厳密な臨床基準及びメタコリン負荷試験を使用して、本発明者らは、このサブ表現型が、喘息と診断された患者の50%未満にしか含まれないことを発見した。このような「IL−13が高い」サブ表現型は、IL−5発現のレベルの上昇も示し、気道応答性亢進の増強、血清IgEレベルの上昇及び好酸球性炎症を含む特定の目立った臨床的特徴、上皮下繊維症、並びに「IL−13が低い」サブ表現型及び健康なコントロールと比較した場合のゲル形成ムチンの発現の変化を示した。
【0142】
本発明者らの研究は、気道上皮細胞におけるIL−13に駆動された炎症の遺伝子シグネチャーが喘息患者の半数でしか顕著でないこと、したがって残りの半数には非IL−13駆動機構が働いているに違いないことを示すことにより、喘息の病変形成の現在の特定の考え方の正当性を問うものである。ここで議論される発見は、喘息が、ここで言及される「IL−13が高い」及び「IL−13が低い」サブ表現型のような種々の分子サブ表現型に分割されうるという仮定を導くものである。本発明者らは、気管支生検における遺伝子発現の確証的解析、反復実験での再現性の解析、並びに、喘息のこれら2つの分子サブ表現型の個別の臨床的特徴、炎症性特徴、病理学的特徴及び治療に関連する特徴を包括的に特徴付けることにより、IL−13が高い/低いグループの分類を検証した。これらの発見により、喘息が複雑で不均一な疾病であるという新しい臨床的所見に機構的フレームワークが提供される[58]。
【0143】
Th2炎症に基づく喘息の分子表現型は、重要な治療的意味を有している。第1に、「IL−13が高い」サブ表現型における気道閉塞は、吸入ステロイド薬により改善するが、「IL−13が低い」サブ表現型は殆どないしは全く改善を示さない。本発明者らによって同定されたTh2マーカーを使用して、ステロイド応答性の表現型の代理マーカーを提供することにより、ステロイド応答性を検査するための臨床試験の開発を導くことができる。第2に、IL−13及び関連するTh2サイトカインの遮断については、喘息の1治療戦略として、活発な臨床的開発が行われている[34]。本発明のデータは、これらの治療薬に対する臨床的応答が、「IL−13が高い」喘息を有する患者の特定のサブ表現型に限定されている可能性を示唆している。したがって、この分子表現型のマーカーは、臨床試験に直接的な用途を有する。
【0144】
誘導された痰の分析を用いた以前の研究によって、「好酸球性喘息」が独立した喘息の細胞表現型であることが示唆されていたが、この分子表現型の基礎となる分子機構は定義されていない。本発明のデータによれば、本発明者によって「IL−13が高い喘息」に実証された好酸球増加症により、IL−13に駆動された炎症が「好酸球性喘息」の基礎となる分子機構であることが示唆される[37]。加えて、本発明者らは、「好酸球性喘息」及び「IL−13が高い」喘息の両方が、上皮下繊維症[38、39]、肺胞マクロファージによるALOX15産生[55]、及び吸入ステロイド薬に対する肺機能応答[40、41]を特徴とすることを実証した。好酸球性喘息に認識されたこれらの特徴に加えて、本発明者らは、「IL−13が高い」喘息の更なる臨床的特徴を同定したもので、それには、気道のムチン遺伝子発現の変化、及びTh2サイトカインとは考えられないが、以前より重度の喘息に関連付けられていたメディエーターであるTNFαの誘導が含まれる[59]。これらの特徴は、好酸球性喘息にも観察されると予測される。加えて、IL−5は、その発現がIL−13の発現と有意に同時制御されることから、「IL−13が高い」喘息に観察される気道及び全身の好酸球への主要な寄与体であると思われる(図1E)。IL−5は、好酸球の分化、動員、活性、及び生存[60]の主要な刺激であるが、IL−13は、気道において、CCL11、CCL22、及びCCL26のような好酸球化学誘引物質の発現を強く誘導することができ、したがってIL−5と協働して、気道における好酸球の浸潤、活性化、及び生存を促進しうる。したがって、残存するIL−13の活性は、喘息におけるIL−5の遮断の臨床試験に観察される好酸球の不完全な組織枯渇を説明しうる[62、63]。
【0145】
加えて、これらのデータは、喘息患者の有意な割合が「IL−13が低い」表現型を有することを明らかにしており、この表現型は、Th2駆動性の炎症が無いにも関わらず、気道閉塞、気道応答性亢進、及び気管支拡張薬可逆性といった喘息の臨床的特徴を呈する。「IL−13が低い」喘息の原因は依然として不明であるが、可能性として、好中球性の炎症[37]、IL−17駆動性の炎症[42]、バリアー機能の内因性異常[43]、及び非定型細胞内細菌による慢性的な無症状感染[44]が挙げられる。
【0146】
表7.肺胞マクロファージqPCRに使用される遺伝子

【0147】
表8.qPCRによる肺胞マクロファージ遺伝子発現

IL−13の発現のレベルは、29名の被験者のうち26名で検出限界(サイクル閾値>40)を下回り、IL−4は29名の被験者のうち20名で検出限界を下回った(いずれのサイトカインについても3つのグループ間に差はなかった、全てのp>0.35)。他の全ての遺伝子は試料全体に亘って検出限界内であった。
【0148】
実施例9−血清タンパク質バイオマーカーと「IL−13が高い」及び「IL−13が低い」喘息のサブ表現型との関係
更なるマイクロアレイ解析により、本発明者らは、表4に列挙された一組の遺伝子及びプローブから、false discovery rate(FDR)q値の閾値として0.05を下回る個々の被験者において発現がペリオスチンと同時制御される28の遺伝子を表わす35のプローブのセットを同定した。これらの遺伝子及びプローブと、関連データとを表9に示す。これらのプローブの発現レベルに基づいた、健康なコントロール及び喘息患者を含む全ての被験者の階層的クラスター解析により、上述の2つの主要クラスター、即ち、(1)ペリオスチン及び同時制御される遺伝子の発現レベルが高いクラスターと、(2)ペリオスチン及び同時制御される遺伝子の発現レベルが低いクラスターが確認されて、更に定義された(図11)。マスト細胞遺伝子には、RGS13、 TPSG1、TPSAB1、FCER1B、CPA3及びSLC18A2が含まれる。好酸球遺伝子には、P2RY14及びALOX15が含まれる。
【0149】
ペリオスチン及び同時制御される遺伝子の発現レベルが高いクラスターは、23名の喘息患者と、1名の健康なコントロールとからなっており(図11、クラスター1、赤で示す)、一方ペリオスチン及び同時制御される遺伝子の発現レベルが低いクラスターは、残り19名の喘息患者と、分散した26名の健康なコントロールとからなっていた(図11、クラスター2、緑で示す)。実施例8では、3つのプローブ、即ち、210809_s_at(ペリオスチン)、210107_at(CLCA1)、及び204614_at(セルピンB2)のマイクロアレイにより定量された発現レベルに基づいて、このデータセットに含まれる被験者のクラスタリングについて記載した。実施例8に記載したこれら3つのプローブのシグネチャーは、この全35のプローブのシグネチャーと強く相関しており、7名の喘息患者と1名の健康なコントロールについて異なっている(図11に*で示される相違コール)。
【0150】
表9.IL−13遺伝子シグネチャーの遺伝子及び例示的プローブ
マイクロアレイシグナル強度


プローブは、「IL−13が高い」喘息患者対「IL−13が低い」喘息患者の倍数の変化の順に並べられている(左から3列目);「IL−13が高い」喘息の方に2.5倍以上の濃縮度を有するプローブは、遺伝子名を太字で示す。
ペリオスチンに対応するプローブ(POSTN)及びCEACAM5は網掛けで示す。
「IL−13が低い」喘息に対し、「IL−13が高い」喘息において3倍を超えて上方制御された非マスト細胞遺伝子は、アスタリスク1つ(*)で示す。
マスト細胞特異性遺伝子をアスタリスク2つ(**)で示す(クラスタリングのパターンに基づいて、C2ORF32シグナルがマスト細胞由来と思われる)。
好酸球特異性遺伝子をアスタリスク3つ(***)で示す。
【0151】
3つの遺伝子(ペリオスチン、CLCA1及びセルピンB2)のIL−13シグネチャーを使用して、本発明者らは、実施例8において、血清IgE及び末梢血好酸球のレベルを含むアレルギー性炎症の全身性マーカーが、「IL−13が低いサブ表現型の喘息患者に対して、「IL−13が高い」サブ表現型の喘息患者において有意に上昇することを示した。しかしながら、個々に採取されたこれらの測定基準の各々には、喘息患者のグループ間に大きな重複があった。加えて、血清IgE又は末梢血好酸球のレベルは、いずれも単独では、気道IL−13シグネチャー及び関連する「IL−13が高い」又は「IL−13が低い」喘息のサブ表現型を予測するための、感受性及び特異性が共に高い非侵襲的な測定基準とはならない。
【0152】
IgE及び末梢血好酸球のレベルの交差により、どちらか一方の計量のみより高い精度で気道の炎症を予測できるかどうかを判定するために、本発明者らは、血清IgE及び末梢血好酸球数の両方を、気道のIL−13シグネチャーの状態と対比させて評価した。本発明者らは、42名の喘息患者全体で、弱くではあるが、血清IgEと末梢血好酸球数とは相関していることを発見した(図4;IL−4/13シグネチャーのデータを示す;同様の結果がIL−13シグネチャーについて取得された[表10参照]。IL−13シグネチャーについて、「IL−13が高い」喘息患者の好酸球数は、全員について、0.14×10/Lであったが、「IL−13が低い」喘息患者の多くの好酸球数はそれよりも少なかった。2名を除いて全ての「IL−13が高い」喘息患者の血清IgEレベルが100IU/mlより高かったが、「IL−13が低い」喘息患者の多くではそうではなかった。2つの測定基準、即ち(1)血清IgE≧100IU/ml、及び(2)好酸球数≧0.14×10/Lを組み合わせることにより、気道におけるIL−13シグネチャーの感受性及び特異性が向上した(表10)。したがって、一般的に使用されるアレルギー性炎症の2つの末梢血の測定基準を組み合わせることは、気道IL−13に促進された炎症の有効且つ非侵襲的なバイオマーカーとなりうる。
【0153】
表10.IL−13シグネチャーの感受性、特異性、IgE及び末梢血好酸球測定基準のポジティブ及びネガティブな予測値

【0154】
気管支上皮IL−13シグネチャーの新規な全身性の(非侵襲的な)候補バイオマーカーを同定するために、本発明者らは、末梢血中に検出可能な細胞外タンパク質又は分泌タンパク質をコードする遺伝子のシグネチャーを調べた。特に対象とした3つの候補は、CCL26、ペリオスチン、及びCEACAM5であった。CCL26は、気管支上皮におけるTh2サイトカイン誘導ケモカインとして既に報告されているので[71]、Th2炎症の血清バイオマーカーとしてはまだ報告されていないペリオスチン及びCEACAM5の特徴に焦点を当てた。CEACAM5は、上皮由来の癌において頻繁に使用される予後診断用血清バイオマーカーである癌胎児抗原(CEA)をコードする。ペリオスチンも、特定の癌の血清バイオマーカーとして限定された数の研究に開示されており、興味深いことに、大部分の被験者において血清1ml当たり数十〜数百ngのレベルで検出可能で、これは、イムノアッセイにより容易に検出される血清マーカーの魅力的な特徴である。
【0155】
図12A−Bに示すように、ペリオスチン及びCEACAM5はそれぞれIL−13シグネチャーの良好な独立の指標であり、「IL−13が高い」喘息患者において、「IL−13が低い」喘息患者又は健康なコントロールよりも有意に高い発現を示す。個々の喘息患者のペリオスチンとCEACAM5のマイクロアレイ発現レベルの間には、強い相関があった(図12C)。これらの遺伝子発現パターンを確認し、ペリオスチンとCEACAM5の発現が、「IL−13が低い」喘息患者及び健康なコントロールから「IL−13が高い」喘息患者を区別するためのアルゴリズムに使用可能であるかどうかを判定するために、本発明者らは、マイクロアレイ解析に使用される同じ気管支上皮ブラッシング試料において、qPCRにより2つの遺伝子の発現レベルを解析した。個々の被験者のマイクロアレイ及びqPCRの値の間には、高度な一致性が存在した(図示しない)。本発明者らは、順次ロジスティック回帰分析を使用して、ペリオスチン及びCEACAM5のqPCRを用いたマイクロアレイ由来の35プローブ式IL−13状態の予測モデルを生成した。このモデルの予測値の有意性は高く(p<0.0001)、ペリオスチン及びCEACAM5のパラメータの推定値は、それぞれモデルに有意な影響を有していた(CEACAM5の場合p<0.02;ペリオスチンの場合p<0.0001)。受信者動作特性(ROC)曲線の解析により、健康なコントロールが完全に予測できることと、「IL−13が高い」及び「IL−13が低い」喘息の感受性及び特異性が極めて高いことが実証された(図12D)。総括すると、これらのデータは、ペリオスチン及びCEACAM5の気管支上皮発現レベルが、IL−13シグネチャー全体を良好に代理することを示している。
【0156】
可溶性ペリオスチン及びCEAタンパク質のレベルの上昇が末梢血において検出可能であるかどうかを判定するために、本発明者らは、イムノアッセイを使用して、100名の喘息患者及び48名の健康なコントロールから採取した血清中のペリオスチン及びCEAを調べた。加えて、本発明者らは、これらの同じ血清中におけるIgEとYKL−40を測定した。YKL−40は、一部の喘息患者において上昇することが文献に既知である血清マーカーである[72]。健康なコントロールと比較して、喘息患者には、IgE、ペリオスチン、CEA、及びYKL−40のレベルの有意な上昇が観察された(図13A−D)。しかしながら、全ての症例において、いずれのバイオマーカーの血清レベルにも、グループ間に無視できない重複があった。実施例8に示したように、吸入ステロイド薬(ICS)治療により、ベースラインにおいてペリオスチンが高い喘息患者のペリオスチンの気管支上皮発現が低下した([8]も参照のこと)。本発明において血清を検査した100名の喘息患者のうち、51名が吸入ステロイド薬(ICS)を摂取しており、49名がしていなかった。ICS治療していない喘息患者とICS治療している喘息患者とを比較すると、ICS治療を受けた被験者のIgE及びCEAの血清レベルの中央値は有意に低く、ペリオスチンのレベルも低い傾向にあり、一方YKL−40のレベルには変化がなかった(図13E−H)。それでもなお、ICS治療を受けていた喘息患者のIgE、ペリオスチン、及びCEAの血清レベルの中央値は、健康なコントロールより高かった(表13)。図4及び表10に示すように、気管支上皮IL−13シグネチャーに陽性の(「IL−13が高い」)21/23名の喘息患者では、血清IgEレベルが100IU/mlより高かったが、「IL−13が低い」喘息患者の一部においてもIgEは高かった。本発明者らは、IgE≧100IU/mlの喘息患者(N=68)においては、IgE<100IU/mlの喘息患者(N=32、図13I−J)と比べて、血清ペリオスチンレベルが高い傾向にあり、CEAレベルは有意に高かったことを見出した。しかしながら、血清YKL−40レベルは、IgEが高いグループにおいて有意に低かった(図13K)。ペリオスチン及びCEACAM5の気道発現レベルが「IL−13が高い」喘息患者と高度に相関していたため、本発明者らは、全ての喘息患者の血清ペリオスチンとCEAとの相関を調べた(図13L)。喘息患者の集団全体において、且つICS治療を受けていない喘息患者又はIgE≧100UI/mlであるが健康なコントロールには含まれない喘息患者、ICS治療を受けている喘息患者、或いはIgE≧100UI/mlの喘息患者において、血清ペリオスチン及びCEAのレベルが互いと有意に相関していることが判明した。
【0157】
表11.血清バイオマーカー間の相関


スピアマンの順位相関係数、ρは、関連するp値と共に相関を示す。高度に有意なp値(<0.05)は太字且つ斜体で示す。
【0158】
IL−13シグネチャーの中で、プロテアーゼ阻害薬をコードする遺伝子と、マスト細胞及び好中球に発現されて、それらの細胞から気管支上皮への浸潤及び/又は解剖学的局在化を表わす遺伝子とを含む複数の遺伝子からなる幾つかの機能的グループを観察した。各気管支ブラッシング試料に含まれる細胞の90%超は、気管支上皮細胞又は杯細胞(平均値97%、中央値98%、最小値91%)であるが、極めて少数の、細胞特異性遺伝子発現パターンを有する浸潤性「汚染」細胞がマイクロアレイにおいて検出可能であった。マスト細胞特異性の遺伝子は、トリプターゼ(TPSAB1[TPSD1]及びTPSG1)、CPA3、FCER1B、RGS13、及びSLC18A2を含んでいた[73、74]。また、マスト細胞遺伝子を密接に有するクラスタリングは、カンナビノイドレセプター相互作用GTP加水分解酵素であるCNRIP1(C2ORF32)であった。マスト細胞機能の制御におけるカンナビノイド類の確立された役割を考慮すると[75]、CNRIP1は、マスト細胞特異性遺伝子も表わしていると思われる。アレルギー性疾病における組織常在性のマスト細胞の役割が大きいことと、喘息患者の気管支内生検標本中のIL−13発現マスト細胞の存在が痰において検出可能なレベルのIL−13とポジティブに相関しているという最近の観察[6]とを考慮すると、マスト細胞特異性遺伝子とIL−13シグネチャーとの高い相関性は、1)気道上皮においてマスト細胞がIL−13の大きな供給源でありうること、及び2)気道上皮へのマスト細胞の浸潤が「IL−13が高い」喘息患者のサブセットに固有の特徴でありうることを示唆するものである。実施例8では、喘息患者由来の肺胞マクロファージにおけるALOX15の発現について記載したが、好酸球特異性遺伝子には、2RY14(GPR105)及びALOX15が含まれている。
【0159】
セリン及びシステインプロテアーゼ阻害薬に対応する複数のプローブは、セルピンB2及びB10とシステイン(CST)1、2、及び4とを含むIL−13シグネチャー中に存在する。セルピンB2は、染色体18q21上の遺伝子クラスターにコードされたセルピンプロテアーゼ阻害薬の大きなファミリーのメンバーである。セルピンB2[8]、B3、及びB4の発現レベルは、組換えIL−4及びIL−13による刺激で気道の上皮細胞中に誘導される[7、15]。システイン(CST)1、2、及び4は、染色体20p11上の遺伝子クラスターにコードされたシステインプロテアーゼ阻害薬の大きなファミリーのメンバーである。複数のシステインが気管支上皮に発現される[16];CST4は、喘息患者の気管支肺胞洗浄液(BAL)中に高いレベルで同定された[17];血清CST3は、健康なコントロールより喘息患者において高く、そのレベルはICS治療によって低下する[18]。セルピン及びCST遺伝子ファミリーの各々が染色体上に同時に局在していることから、本発明者らは、セルピン及びシステイン遺伝子ファミリーのいずれかの他のメンバーが既に同定されているものと同時に制御されるかどうかを調査した。本発明者らは、セルピン及びシステイン遺伝子ファミリーに限定して、全ての被験者のマイクロアレイデータの階層的クラスタリングを実施した。アレイ上に現れた40を超えるプロテアーゼ阻害薬遺伝子のうち、セルピンB2、B4、及びB10と、システイン1、2、及び4だけが有意に同時制御され、発現レベルが最高であるのは「IL−13が高い」シグネチャーを有する喘息患者においてであることが判明した(図2B及び表12)。多数のエアロアレルゲンがプロテアーゼ活性を有しており、プロテアーゼ活性レセプター(PAR)がアレルギー性炎症カスケードと関連している[76]ことから、Th2サイトカインによるプロテアーゼ阻害薬の上方制御は、プロテアーゼ含有エアロアレルゲンに対する相補的応答を表わしていると思われた。
【0160】
表12.図2Bのクラスタリングに使用したセルピン及びCST遺伝子のプローブID
プローブは、図2Bの左のヒートマップに見られる順番に(上から下へ、左から右へ)列挙されている。IL−13シグネチャー遺伝子を含むプローブのクラスタリングは太字で示す。

【0161】
CLCA1、mCLCA3(gob−5としても知られる)のマウスオルソログは、既に、共にIL−9及びIL−13を含むTh2サイトカインによって誘導される気道上皮の杯細胞異形成及び粘液産生に関連する遺伝子として同定されている[12-14]。PRR4は、染色体12p13上のクラスターにコードされた大きな遺伝子ファミリーのメンバーである。これらの遺伝子は、唾液及び涙を含む粘膜分泌物に見られるプロリンリッチタンパク質をコードする。関連の、但し非オルソロガスタンパク質SPRR1a、2a、及び2bは、喘息のマウスモデル気管支上皮において同定されており、IL−13によって誘導される[19、20]。PRR/PRBファミリー由来のプロリンリッチタンパク質は、気管支分泌物において同定されており[21]、それらの発現は気管支上皮において実証されている[16]。CCL26(エオタキシン−3)は、喘息患者の気道上皮においてケモカインを誘引する、十分に実証されたIL−4及びIL−13誘導性の好酸球である[71]。CDH26は、好酸球性食道炎のマイクロアレイ解析において最近同定された、未知の機能を有するカドヘリン様分子である「11」。その試験により、ペリオスチン、セルピンB4、及びCCL26を含む本発明の気管支上皮IL−13シグネチャーと重複する遺伝子が他に複数個同定された[11]。CDH26は、エオタキシンと同時制御され、且つ好酸球性の炎症を特徴とする疾病において過剰発現されるので、粘膜組織への好酸球浸潤にCDH26が関連していると推測してみる。誘導性の一酸化炭素合成酵素(iNOS)は、気道の炎症に関連しており、ヒト初代気管支上皮細胞培養物においてIL−13により誘導される[23]。呼気中一酸化炭素(eNO)の測定は、喘息の診断及びモニタリングに共通に使用される。総合的に考えると、IL−13シグネチャーの構成要素としてここに記載した遺伝子の多くは、Th2炎症のインビトロの動物モデルと一致度が高く、ヒト喘息のTh2促進性の病状に参画していると思われる。
【0162】
表13.血清バイオマーカーのレベル

表中の値は中央値(範囲)である。
p値はウィルコクソン順位和である。
* 99/100名の喘息患者において、CEA値≦7.5ng/mlであった。
【0163】
CEACAM5は、多くの上皮組織に見られる細胞表面糖タンパク質をコードし、血清CEACAM5(癌胎児抗原、CEA)の上昇は、上皮の悪性腫瘍及び転移性疾病の十分に実証された全身性のバイオマーカーである。CEAレベルの上昇は、喘息患者のサブセットに報告されており、特に粘液栓子を有する喘息患者に高い血清レベルが観察される[75]。興味深いことに、正常な血清CEAの上限が2.5〜3ng/mlの範囲であるのに対し、悪性腫瘍の疑いの下限は10ng/mlである。本発明者らの解析では、健康なコントロールの95%超においてCEAレベルが3ng/ml未満であったのに対し、喘息患者の1/3においては3〜7.5ng/mlであり、これらの大部分の血清IgEレベルは100IU/mlを上回っていた。これにより、CEAの堅牢な検出ウィンドウが、Th2促進性の気道炎症を有する喘息患者に存在しうることが示唆された。ペリオスチンは、喘息患者の気道におけるIL−4及びIL−13誘導性の遺伝子として説明されており[7-9、77]、この遺伝子は、侵襲性及び細胞外基質の変化に関連付けられる上皮由来の癌において上方制御され[64、67]、またその血清タンパク質レベルは一部の癌において検出可能であり、上昇する[68、70]。ペリオスチンは、好酸球組織浸潤に関連していると思われる[11、77]ので、Th2促進性喘息のような好酸球性の疾病において重要な因子であり、且つそのバイオマーカーとなる可能性がある。
【0164】
対症療法(即ちβアゴニスト)ではうまく制御できない気管支喘息の標準的な治療法は、吸入ステロイド薬(ICS)である。軽度から中等度の喘息患者において気道のIL−13のレベルが上昇した場合[6]、及び好酸球性食道炎患者において食道組織のIL−13の発現レベルが上昇した場合[11]、ICS治療により、患部組織のIL−13及びIL−13誘導性遺伝子のレベルが実質的に低下する。ICS治療の1週間後の喘息患者の気道上皮と、培養した気管支上皮細胞とにおいて、本発明者らは、ステロイド薬による治療により、ペリオスチン、セルピンB2、及びCLCA1のIL−13誘導型発現レベルが実質的に低下することを示した[8]。表9に列挙した遺伝子を更に検査することにより、2回目の気管支鏡検査に先立って1週間に亘るICS治療を受けた本発明の19名の被験者において、IL−13シグネチャー遺伝子の大多数が、喘息患者の気管支の気道上皮においてICS治療により有意に下方制御されたことが判明した。このような下方制御は、IL−13レベルのICS媒介性の低下、標的遺伝子発現のICS媒介性の低下、又はそれら2つの組み合わせの結果と考えられる。ICS治療に抵抗性の重度の喘息患者の場合、ICS治療を受けていない軽度の喘息患者に見られるものと同様の割合の被験者(約40%)において、痰IL−13レベルが検出可能であり[6]、これは、本試験において観察されたIL−13シグネチャーを有する被験者の割合に相当する。このような観察結果は、IL−13シグネチャーが、本試験において検査した経度〜中等度のICS応答性の喘息患者においてはICS治療によって有意に下方制御したものの、重度のステロイド抵抗性の喘息患者においては依然として存在しうることを示唆するものである。ステロイド抵抗性の喘息患者の気管支生検における好酸球性炎症、[78]、及びBALにおけるIL−4及びIL−5発現細胞の残留性[79]について同様の観察が報告されている。現在、多数の生物学的治療が、Th2炎症のIL−13又は関連因子を目的とする臨床開発段階にあり[50、80]、それには、限定されないが、本発明に記載したものが含まれる。本発明の発見により、ステロイド治療を受けていない軽度〜中等度の喘息患者うち、この経路の活性を有しているのは一部のみであり、ICS治療に対するその感受性を考慮すると、ステロイド抵抗性の中程度〜重度の喘息患者のうちこの経路の活性を有している割合はもっと小さいと思われる。したがって、気道にIL−13駆動性の炎症を有していると思われる喘息患者を同定するバイオマーカーは、これらの実験の標的とされる治療法に対する応答性が最も高いと思われる被験者の同定及び選択の補助となる可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の喘息のサブタイプを診断する方法であって、POSTN、CST1、CST2、CCL26、CLCA1、PRR4、PRB4、セルピンB2、CEACAM5、iNOS、セルピンB4、CST4、及びセルピン10からなる群より選択された遺伝子のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせの遺伝子発現を測定し、前記遺伝子のいずれか1つ、いずれかの組み合わせ、又は全ての発現レベルが上昇していた場合に喘息のサブタイプが示される方法。
【請求項2】
遺伝子PRB4、TPSD1、TPSG1、MFSD2、CPA3、GPR105、CDH26、GSN、C2ORF32、TRACH2000196(TMEM71)、DNAJC12、RGS13、SLC18A2、SH3RF2、FCER1B、RUNX2、PTGS1、及びALOX15を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
タンパク質又はmRNAのレベルを定量することにより遺伝子発現を測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
PCR法又はマイクロアレイチップを使用することによりmRNAレベルを測定する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
PCR法がqPCRである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
対象とする遺伝子のmRNAレベルがコントロール遺伝子のmRNAの2.5倍を上回る場合に喘息のサブタイプが示される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
患者の喘息のサブタイプを診断する方法であって、血清総IgEレベル、血清CEAレベル、血清ペリオスチンレベル、末梢血好酸球、及び気管支肺胞洗浄検査(BAL)の好酸球からなる群より選択された患者試料由来のバイオマーカーのうちのいずれか1つを測定し、CEA、血清ペリオスチン、末梢血好酸球、及び気管支肺胞洗浄検査(BAL)の好酸球のレベルが上昇した場合に喘息のサブタイプが示される方法。
【請求項8】
IgEレベルが100IU/mlを上回る場合に喘息のサブタイプが示される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
末梢血好酸球レベルが0.14×10e9/Lを上回る場合に喘息のサブタイプが示される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
患者の喘息のサブタイプを診断する方法であって、喘息患者の試料のMuc5AC:MUC5BのmRNAの割合、又はMuc5AC:MUC5Bのタンパク質の割合を測定し、割合が25を上回る場合に喘息のサブタイプが示される方法。
【請求項11】
上皮ブラッシングから試料を採取する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
試料が気道上皮細胞を含んでいる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
喘息の治療方法であって、POSTN、CST1、CST2、CCL26、CLCA1、PRR4、PRB4、セルピンB2、CEACAM5、iNOS、セルピンB4、CST4、及びセルピン10からなる群より選択された遺伝子のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせの発現レベルが上昇している患者に対し、治療薬を投与する方法。
【請求項14】
遺伝子PRB4、TPSD1、TPSG1、MFSD2、CPA3、GPR105、CDH26、GSN、C2ORF32、TRACH2000196(TMEM71)、DNAJC12、RGS13、SLC18A2、SH3RF2、FCER1B、RUNX2、PTGS1、及びALOX15を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
喘息の治療方法であって、血清総IgE、血清CEA、血清ペリオスチン、末梢血好酸球、及び/又は気管支肺胞洗浄検査(BAL)による好酸球のレベルが上昇している患者に対し、治療薬を投与する方法。
【請求項16】
喘息の治療方法であって、患者の試料におけるMuc5AC:MUC5BのmRNAの割合、又はMuc5AC:MUC5Bのタンパク質の割合が25を上回っている患者に対し、治療薬を投与する方法。
【請求項17】
治療対象の患者を、ステロイド治療歴を持たない軽度〜中等度の喘息患者とする、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
治療対象の患者を、ステロイド抵抗性の中等度〜重度の喘息患者とする、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
患者がTH2経路により誘導された喘息を有している、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
患者が、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法により診断されている、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
治療薬が、IL−9、IL−5、IL−13、IL−4、OX40L、TSLP、IL−25、IL−33、及びIgEと、IL−9レセプター、IL−5レセプター、IL−4レセプターα、IL−13レセプターα1及びIL−13レセプターα2、OX40、TSLP−R、IL−7Rα、IL17RB、ST2、CCR3、CCR4、CRTH2、FcεRI、及びFcεRII/CD23といったレセプターとからなる群より選択される1の標的に結合する薬剤である、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
治療薬が、イムノアドヘシン、ペプチボディ、又は抗体である、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
喘息の治療方法であって、POSTN、CST1、CST2、CCL26、CLCA1、PRR4、PRB4、セルピンB2、CEACAM5、iNOS、セルピンB4、CST4、及びセルピン10からなる群より選択された遺伝子のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせの発現レベルの上昇を示していない患者に対し、治療薬を投与する方法。
【請求項24】
遺伝子PRB4、TPSD1、TPSG1、MFSD2、CPA3、GPR105、CDH26、GSN、C2ORF32、TRACH2000196(TMEM71)、DNAJC12、RGS13、SLC18A2、SH3RF2、FCER1B、RUNX2、PTGS1、及びALOX15を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
喘息の治療方法であって、血清総IgE、血清CEA、血清ペリオスチン、末梢血好酸球、及び/又は気管支肺胞洗浄検査(BAL)の好酸球のレベルに上昇を示していない喘息患者に対し、治療薬を投与する方法。
【請求項26】
喘息の治療方法であって、患者試料におけるMuc5AC:MUC5BのmRNA又はタンパク質の割合が25を上回っていない喘息患者に対し、治療薬を投与する方法。
【請求項27】
治療薬がIL−17経路阻害薬である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
患者の喘息のサブタイプを診断するためのキットであって、(1)POSTN、CST1、CST2、CCL26、CLCA1、PRR4、PRB4、セルピンB2、CEACAM5、iNOS、セルピンB4、CST4、及びセルピン10からなる群より選択された遺伝子とハイブリダイズする1又は複数の核酸分子と、(2)患者試料由来の遺伝子の発現レベルを測定し、前記遺伝子のいずれか1つ、いずれかの組み合わせ、又は全ての発現レベルが上昇している場合に喘息のサブタイプを示す説明書とを含むキット。
【請求項29】
PRB4、TPSD1、TPSG1、MFSD2、CPA3、GPR105、CDH26、GSN、C2ORF32、TRACH2000196(TMEM71)、DNAJC12、RGS13、SLC18A2、SH3RF2、FCER1B、RUNX2、PTGS1、及びALOX15からなる群より選択された1の遺伝子を更に含む、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
遺伝子発現が、mRNAレベルを定量することにより測定される、請求項28に記載のキット。
【請求項31】
アッセイが、PCR法、又はマイクロアレイチップの使用を含む、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
PCR法がqPCRである、請求項31に記載のキット。
【請求項33】
対象の遺伝子のmRNAレベルがコントロール遺伝子のmRNAレベルの2.5倍を上回る場合に喘息のサブタイプが示される、請求項30に記載のキット。
【請求項34】
患者の喘息のサブタイプを診断するためのキットであって、(1)POSTN、CST1、CST2、CCL26、CLCA1、PRR4、PRB4、セルピンB2、CEACAM5、iNOS、セルピンB4、CST4、及びセルピン10からなる群より選択されたタンパク質に結合する1又は複数のタンパク質分子と、(2)患者試料のタンパク質の発現レベルを測定し、前記タンパク質のいずれか1つ、いずれかの組み合わせ、又は全ての発現レベルが上昇している場合に喘息のサブタイプを示す説明書とを含むキット。
【請求項35】
PRB4、TPSD1、TPSG1、MFSD2、CPA3、GPR105、CDH26、GSN、C2ORF32、TRACH2000196(TMEM71)、DNAJC12、RGS13、SLC18A2、SH3RF2、FCER1B、RUNX2、PTGS1、及びALOX15からなる群より選択された1のタンパク質を更に含む、請求項10に記載のキット。
【請求項36】
アッセイが、タンパク質分子を含むマイクロアレイチップの使用を含んでいる、請求項34に記載のキット。
【請求項37】
患者の喘息のサブタイプを診断するためのキットであって、血清総IgEレベル、血清CEAレベル、血清ペリオスチンレベル、末梢血好酸球数、及び気管支肺胞洗浄検査(BAL)の好酸球数からなる群より選択された患者試料のバイオマーカーのいずれか1つを測定し、CEA、血清ペリオスチン、末梢血好酸球、及び気管支洗浄検査(BAL)の好酸球のレベルが上昇している場合を示す説明書を含むキット。
【請求項38】
IgEレベルが100IU/mlを上回る場合に喘息のサブタイプが示される、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
末梢血好酸球レベルが0.14×10e9/Lを上回る場合に喘息のサブタイプが示される、請求項37に記載のキット。
【請求項40】
患者の喘息のサブタイプを診断するためのキットであって、喘息患者の試料における、Muc5AC:MUC5BのmRNA又はタンパク質の割合を測定し、割合が25を上回る場合に喘息のサブタイプを示す説明書を含むキット。
【請求項41】
試料が上皮ブラッシングから採取される、請求項40に記載のキット。
【請求項42】
試料が気道上皮細胞を含む、請求項40に記載のキット。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図13F】
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【図13G】
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【図13H】
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【図13I】
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【図13J】
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【図13K】
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【図13L】
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【公表番号】特表2011−523350(P2011−523350A)
【公表日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503115(P2011−503115)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2009/039033
【国際公開番号】WO2009/124090
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】