説明

嗅覚感度抑制剤のスクリーニング法

【課題】嗅覚を抑制又は調節し得る物質を、客観的に評価又はスクリーニングするための方法の提供。
【解決手段】電位依存性カチオンチャネルを有する基質に被験物質を添加し、当該カチオンチャネルにより生じる電気的活動を抑制させる物質を評価又は選択することを特徴とする、嗅覚感度抑制剤の評価又はスクリーニング方法。以下の工程:(1)電位依存性カチオンチャネルを有する基質に被験物質を添加する工程;(2)前記電位依存性カチオンチャネルにより生じる電気的活動を測定する工程;(3)(2)で測定された電気的活動を、対照群における電気的活動と比較する工程;(4)(3)の結果に基づいて、電気的活動を抑制させる被験物質を嗅覚感度抑制剤として評価又は選択する工程、を含むことを特徴とする、嗅覚感度抑制剤の評価又はスクリーニング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電位依存性カチオンチャネルを利用する嗅覚感度抑制剤の評価又はスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
においの知覚は、嗅粘膜に存在する嗅神経が、自身のもつ嗅覚受容体を用いて空気中に存在するにおい分子を受容するところから始まる。Gタンパク質共役型受容体である嗅覚受容体は、におい分子との結合により活性化し、Gタンパク質、アデニル酸シクラーゼを介してcAMPを産生する。すると嗅覚器環状ヌクレオチドゲート(CNG)チャネルがcAMPにより活性化され、活性化したチャネルからイオンが流入した結果、嗅神経が脱分極し、電位依存性チャネルが開いて活動電位が発生、におい情報が中枢へと伝達される。
【0003】
嗅覚のマスキングは、上記応答を一次的に麻痺あるいは低下させるものであり、その他に中枢レベルでの側方抑制などの情報処理との組み合わせにより効力を発揮するものと考えられている。香料による嗅覚のマスキングは、臭気の原因物質の嗅粘膜との親和性に影響を与えていると推測される。一部の香料物質については、嗅神経細胞の酵素活性を阻害することによる麻酔作用を持つことも推測されている(非特許文献1)。しかし、その効果を実証または客観的に評価する手法に関する報告はなく、従来、強力な嗅覚マスキング剤を得るためには、主観的な官能評価に頼らざるを得なかった。
【0004】
嗅神経における情報伝達系の阻害は、嗅覚を抑制すると考えられ、実際、嗅細胞Gタンパク質Golf(非特許文献2)、III型アデニル酸シクラーゼ(非特許文献3)、嗅覚器CNGチャネルサブユニット(非特許文献4)に関するマウスノックアウト試験で、これらのシグナリング分子の欠落が嗅覚を喪失させることが示されている。また、嗅覚器CNGチャネルは、嗅神経繊毛膜上に露出しており、その活性調節物質が細胞膜を通過したり上皮細胞の障壁を通過したりする必要がないことから、嗅覚の調節における重要な標的である(特許文献1)。例えば、カルシウムチャネル阻害剤によるCNGチャネル阻害が、ラットの嗅覚を低下させることが示されている(特許文献2)。嗅粘膜における嗅覚のマスキングに関与し得る他の機構としては、嗅覚受容体へのアンタゴニストを用いた理論(非特許文献5)やカルシウム依存性カリウムチャネルを用いた理論(非特許文献6)が提唱されている。嗅繊毛内のcAMP分解酵素阻害(特許文献3)、細胞内カルシウム濃度の制御(特許文献4)、又は臭気成分化合物の類似物の利用(特許文献5)による嗅覚感度の改変法も提唱されている。
【0005】
嗅細胞上に存在する電位依存性カチオンチャネルは、CNGチャネルによって引き起こされる嗅神経の脱分極により活動電位を発生することによって、嗅覚の伝達に関与する。単離された嗅覚受容細胞において、ある種の香料分子が電位依存性カチオンチャネルを阻害することが報告されている(非特許文献7)。しかし、実際の生体内では、これらの電位依存性カチオンチャネルの多くは、タイトジャンクションにより守られた細胞体膜上に存在しており、CNGチャネルのように嗅神経繊毛膜上に露出しているわけではない。上述のような様々な機構が関与すると考えられている嗅覚マスキングにおいて、電位依存性カチオンチャネルが何らかの貢献をし得るものか否かについては、未だ明らかではない。
【特許文献1】特表第2005−500836号公報
【特許文献2】米国特許第7,138,107号公報
【特許文献3】米国特許第5,525,329号公報
【特許文献4】特開第2000−154396号公報
【特許文献5】特開第2005−53887号公報
【非特許文献1】吉儀英記 フレグランスジャーナル (1974) 第2巻、第3号12-17
【非特許文献2】Belluscioら, Neuron (1998), vol.20: 69-81
【非特許文献3】Wongら, Neuron (2000), vol.27: 487-497
【非特許文献4】Brunetら, Neuron (1996), vol.17: 681-693
【非特許文献5】Aranedaら,Nat. Neurosci. (2000),vol.3: 1248-1255
【非特許文献6】Delgadoら, J Neurophysiol. (2003), vol.90: 2022-2028
【非特許文献7】Kawaiら, J. Gen. Physiol. (1997), vol.109: 265-272
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、嗅覚を抑制又は調節し得る物質を、客観的に評価又はスクリーニングするための方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、嗅覚を抑制又は調節し得る物質を客観的に評価又はスクリーニングするための方法について検討した。その結果、化合物の嗅神経電位依存性カチオンチャネル抑制能と主観的な官能評価によるその消臭効果との間に相関関係があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下を提供する。
(I)電位依存性カチオンチャネルを有する基質に被験物質を添加し、当該カチオンチャネルにより生じる電気的活動を抑制する物質を評価又は選択することを特徴とする、嗅覚感度抑制剤の評価又はスクリーニング方法。
(II)以下の(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とする、嗅覚感度抑制剤の評価又はスクリーニング方法:
(1)電位依存性カチオンチャネルを有する基質に被験物質を添加する工程
(2)前記電位依存性カチオンチャネルにより生じる電気的活動を測定する工程
(3)(2)で測定された電気的活動を、対照群における電気的活動と比較する工程
(4)(3)の結果に基づいて、電気的活動を抑制する被験物質を嗅覚感度抑制剤として評価又は選択する工程。
(III)電位依存性カチオンチャネルが、嗅細胞由来電位依存性カチオンチャネルである、(I)記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法により、従来主観的な官能評価に頼っていた嗅覚感度抑制能を有する物質の評価又はスクリーニングを、客観的且つ効率的に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のスクリーニング方法について説明する。
本発明の嗅覚感度抑制剤の評価又はスクリーニング方法は、電位依存性カチオンチャネルを有する基質を用い、ここに嗅覚感度抑制剤の候補物質である被験物質を添加し、当該カチオンチャネルにより生じる電気的活動を抑制する物質を評価又は選択するものである。後述の実施例に示すように、アカハライモリ嗅細胞の電位依存性カチオンチャネルにより生じる電気的活動に対する試験物質の影響を測定する一方で、それらの試験物質の嗅覚マスキング効果を、官能試験によって評価したところ、電位依存性カチオンチャネル抑制効果の高い物質ほど、より高い嗅覚マスキング効果を発揮することがわかった。この結果は、電位依存性カチオンチャネルによる電気的活動を抑制する物質が嗅覚感度抑制剤として有用であり、且つ電位依存性カチオンチャネルの抑制率を指標として、嗅覚感度抑制剤を評価又はスクリーニングできることを示している。
【0011】
ここで、「電位依存性カチオンチャネルを有する基質」としては、電位依存性カチオンチャネルを有する生体由来の物質が挙げられる。電位依存性カチオンチャネルを有する生体由来の物質としては、生体から単離された嗅覚受容器若しくは嗅細胞、又はそれらの培養物;電位依存性カチオンチャネルを担持した嗅細胞の膜;電位依存性カチオンチャネルを発現するように遺伝的に操作された組換え細胞又はその培養物;当該組換え細胞の膜;及び、電位依存性カチオンチャネルを有する人工脂質二重膜が挙げられる。
【0012】
「電位依存性カチオンチャネル」としては、生体の細胞若しくはその培養物に由来するもの、電位依存性カチオンチャネルを発現するように遺伝的に操作された組換え細胞に由来するもの、ex vivoで合成されたものが挙げられる。電位依存性カチオンチャネルの種類は特に限定されることはなく、電位依存性Na+チャネル、電位依存性K+チャネル、電位依存性Ca2+チャネル(L-Type、N-Type、P-Type、Q-Type、R-Type及びT-Typeを含む)を含み得る。電位依存性カチオンチャネルはまた、その電位依存性カチオンチャネルとしての機能を保持する限り、当該チャネルの部分や組換え体であり得る。電位依存性カチオンチャネルとしては、嗅細胞に由来するものが好ましい。
【0013】
本発明の方法において測定される「電位依存性カチオンチャネルにより生じる電気的活動」とは、当該分野で通常測定される、電位依存性カチオンチャネルにより引き起こされる任意の電気的活動であり得、より具体的には、当該チャネルの開口により引き起こされる電流または電圧の変化であり得る。すなわち、電気的活動としては、膜の脱分極電位または活動電位のピークの高さ、幅若しくは面積、活動電位の発火数若しくは発火頻度;チャネルを通過する内向き電流のピークの高さ、幅若しくは面積;及び、これらの値が試験物質投与後に変化してから投与前の水準に戻るまでの時間等が挙げられる。測定される電気的活動は、個々のチャネルの活動であっても、集団としての活動であってもよい。
【0014】
より具体的には、本発明の方法は、例えば、以下の工程により行われる。
(1)電位依存性カチオンチャネルを有する基質に被験物質を添加する工程
(2)前記電位依存性カチオンチャネルにより生じる電気的活動を測定する工程
(3)(2)で測定された電気的活動を、対照群における電気的活動と比較する工程
(4)(3)の結果に基づいて、電気的活動を抑制する被験物質を嗅覚感度抑制剤として評価又は選択する工程。
上記工程において、電位依存性カチオンチャネルを有する基質は、当該チャネルが活性を維持し、且つ電気的活動を引き起こし得る条件下に保持される。保持条件は、使用される基質の種類や電気的活動の測定方法等によって異なるが、定法に従って当業者が適宜選択することができる。
【0015】
工程(1)における被験物質の添加は、電位依存性カチオンチャネルに対して被験物質を、その抑制効果を発揮し得る程度に近接又は接触させるように行われる。添加の方法は、使用される基質の種類や電気的活動の測定方法等によって異なるが、定法に従って当業者が適宜選択することができる。例えば、添加は、基質を浸した液体にさらに被験物質を加えることで行うことができる。あるいは、添加は、基質に近接するピペット等から試験物質の溶液を噴出させることによって行うことができる。
【0016】
工程(2)における電気的活動の測定については、上述したような電位依存性カチオンチャネルにより引き起こされる任意の電気的活動を定法に従って測定すればよい。測定法としては、例えば、アウトサイドアウト法、インサイドアウト法、穿孔パッチ法または全細胞記録法などのパッチクランプ法が挙げられる。全細胞記録法がより好ましい。これらのパッチクランプ法は、ハイスループットアッセイ法(例えば、IonWorks Quattro)が確立されており、本試験法には、これらのハイスループットアッセイ法を適用できる。電位依存性カチオンチャネルの電気活動誘発法としては、電位を固定した細胞膜を一時的に脱分極させるか、もしくは電流固定モードで一時的に細胞内に電流を負荷する方法、または例えばKCl溶液のような細胞を脱分極させる性質を有する溶液/薬剤を細胞外に添加する方法が考えられる。パッチクランプ法の手順の詳細については、例えば、「新パッチクランプ実験技術法」(岡田泰伸編、吉岡書店、2001)に記載されている。
【0017】
あるいは、電気的活動の蛍光、発光量計測法、または画像計測法も利用可能である。測定の方法としては、膜電位感受性色素をあらかじめ負荷した基質あるいは細胞を被験物質と接触させ、被験物質の非存在下での変化との比較により、被験物質の存在下での試験細胞の蛍光の変化をモニターして、電位依存性カチオンチャネルへの抑制の程度を決定することができる。本試験方法は、蛍光プレートリーダー(FRIPR)や電圧画像化プレートリーダー(VIPR)を用いて蛍光などの変化をモニターすることができ、蛍光色素としては、カルシウム感受性色素や蛍光ナトリウム色素が使用できる。
【0018】
本発明の方法において測定された電気的活動は、対照群における電気的活動と比較される。「対照群との比較」としては、例えば、試験物質投与前後や被験物質除去前後での比較、及びコントロール物質添加群や物質非添加群との間での比較が挙げられる。
【0019】
以上の工程により得られた結果から、電位依存性カチオンチャネル抑制効果を有することが示された被験物質を、嗅覚感度抑制剤として評価又は選択することができる。後述の実施例において示されるように、電位依存性カチオンチャネルの電気活動抑制効果の高い物質ほど、官能試験においてより高い嗅覚マスキング効果を発揮していることから、電位依存性カチオンチャネル抑制効果が高い試験物質ほど、より優れた嗅覚感度抑制剤として評価又は選択することができる。
【実施例】
【0020】
以下の実施例において、本発明をより詳細に説明する。
【0021】
(実施例1)
(1.嗅細胞の単離)
アカハライモリより公知の方法(Kurahashiら, J. Physiol. (1989), 419: 177-192)に従って嗅細胞を単離し、正常リンガー液に浸した。単離方法を簡単に示すと、氷水中で冬眠状態にしたイモリにダブルピスを施し、頭蓋を切開し嗅粘膜を取り出す。取り出した嗅粘膜を0.1%コラゲナーゼ溶液中で37℃にて5分間インキュベートし、コラゲナーゼを洗い流したあと、ガラスピペットにて組織を粉砕し細胞を単離した。正常リンガー液としては、NaCl 110 mM、KCl 3.7 mM、CaCl2 3 mM、MgCl2 1 mM、グルコース 15 mM、ピルビン酸ナトリウム 1 mM、HEPES 2 mM、フェノールレッド 0.001%(w/v)、pH 7.4(NaOHで調整)を用いた。
【0022】
(2.電気的活動の測定)
(A.設定) 単離した嗅細胞を全細胞記録法により膜電位を固定し、膜電流の計測を行った(Kawaiら, J. Gen. Physiol. (1997), vol.109: 265-272)。電極は、ホウケイ酸ガラスキャピラリー(直径1.2mm)を用い、電極作成用プラー(PP-830, 成茂科学器械)にて作製した(電極抵抗10-30MΩ)。電極内には、電極内溶液と銀塩化銀線を挿入し、銀塩化銀線はパッチクランプアンプ(Axopatch 1D, 200B, Axon Instrument)と接続し、膜電位の固定、脱分極刺激を行った。電極内溶液としては、KCl 120 mM、HEPES 2 mM、phenol red 0.001%(w/v)、pH7.4(KOHで調整)を用いた。膜電流の記録は、パッチクランプアンプとA/D変換装置(Digidata 1320,Axon Instrument)を介して接続されたコンピューターを用いて行った。試験物質の細胞への刺激(吹きかけ)には、圧力制御装置を用いた。圧力制御装置とは、エアーコンプレッサーより送り込まれた圧縮空気を、コンピューター制御にて任意の圧力まで減圧し、設定した時間、その圧縮空気を試験物質を充填したガラスピペット尾部へ送り込む装置である(Itoら、日本生理学雑誌, 1995,vol.57,127-133)。
【0023】
(B.手順) 試験物質による電位依存性カチオンチャネル活性への影響を調べるため、単離した嗅細胞の膜電位を-100 mVに固定し、200ミリ秒間隔で20ミリ秒間、膜電位を-20 mVへ脱分極させ、脱分極直後に生じる内向き電流のピーク強度を測定した。脱分極刺激を繰り返し続けながら、表1に記載の試験物質の各々を、正常リンガー液1 mlあたり1 μlの量で混合し、嗅細胞近傍(20 μm以内)に先端が来るようにセットしたガラスピペット(先端口径1 μm)を通じて吹きかけることにより(720ミリ秒間、圧力50kPa)嗅細胞に添加し、それに伴う内向き電流の変化を調べた。試験物質刺激は、1つの嗅細胞あたり3回繰り返して行い、その平均値を算出した。また、試験物質1種類あたり3細胞で測定し、平均値を算出した。試験中、稀に試験物質刺激に伴い、嗅覚受容体が応答し、CNGチャネルに由来する内向き電流が観察される場合が起きるが、このようなケースは除外した。このケースは、試験物質が試験に用いた嗅細胞上の嗅覚受容体のアゴニストとして作用することにより生じたと考えられる。CNGチャネル電流は、その強度、ピーク形状、持続時間などから電位依存性チャネル電流と容易に区別することができる。本実験で測定された電流データの一例を図1に示す。
【0024】
(C.結果) 試験物質添加によって得られた内向き電流の変化(図1;b)の平均値を、試験物質添加前の5回の脱分極によって生じた内向き電流のピーク強度(図1;a)の平均値(対照)と比較し、試験物質による電位依存性カチオンチャネルの電気的活動に対する抑制能を評価した。評価は、以下の式で表される内向き電流抑制率に基づいて行われた。

内向き電流抑制率 =(1−b/a)×100(%)

各試験物質の内向き電流抑制率を表1に併せて示す。一部の試験物質では、嗅細胞における脱分極に伴う内向き電流の発生が完全に抑制されていた。
【0025】
【表1】

【0026】
(実施例2)
(A.手順) 官能評価の嗅覚マスキング試験をパネラー20名に対して実施した。悪臭物質として1 %イソ吉草酸を用い、表2で示した物質をマスキング素材として選択した。悪臭2 μlと試験物質4 μlを別々の綿球(直径1 cm)にしみこませ、別々の50 ml注射筒内で12時間、室温で揮発させた。注射筒内で気化した悪臭と試験物質をフタ付きのPP容器(容積500 ml)内へ注入し、混和させた。評価は、パネラー自身がPP容器のフタをわずかに開け、容器内の匂いを嗅ぎ、マスキング強度を判定した。マスキング強度の評価は、悪臭のみを注入したPP容器内の臭気強度と比較し、以下のとおり6段階で行った。
0:マスキングされていない
1:マスキング効果がごくわずかに認められる
2:マスキング効果がやや認められる
3:マスキング効果が十分認められる
4:ほとんどマスキングされている
5:完全にマスキングされている
【0027】
【表2】

【0028】
(B.結果) 官能評価の結果を表3に示す。マスキングの強度は物質により様々であった。これらの物質の、実施例1で示された実験から計算された内向き電流抑制率を、表3に併せて示す。電位依存性カチオンチャネル活動抑制効果の強いものはいずれもマスキング効果が強いことが明らかとなった。また、図2に示されるように、内向き電流抑制率は、マスキング強度と高い相関を示していた。これらの結果から、電位依存性カチオンチャネル活動抑制効果の高い物質ほど、高い嗅覚マスキング効果を有することが示された。
【0029】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】試験物質による電位依存性カチオンチャネル活性抑制能の測定実験データ
【図2】電位依存性カチオンチャネル抑制能と嗅覚マスキング効果との関係

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電位依存性カチオンチャネルを有する基質に被験物質を添加し、当該カチオンチャネルにより生じる電気的活動を抑制する物質を評価又は選択することを特徴とする、嗅覚感度抑制剤の評価又はスクリーニング方法。
【請求項2】
以下の(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とする、嗅覚感度抑制剤の評価又はスクリーニング方法:
(1)電位依存性カチオンチャネルを有する基質に被験物質を添加する工程
(2)前記電位依存性カチオンチャネルにより生じる電気的活動を測定する工程
(3)(2)で測定された電気的活動を、対照群における電気的活動と比較する工程
(4)(3)の結果に基づいて、電気的活動を抑制する被験物質を嗅覚感度抑制剤として評価又は選択する工程。
【請求項3】
電位依存性カチオンチャネルが、嗅細胞由来電位依存性カチオンチャネルである、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−257776(P2009−257776A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103750(P2008−103750)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】