説明

噛合チェーンユニット

【課題】確実且つ強固な噛み合わせ、チェーン剛直化部分の座屈、折損及び曲がりを回避する噛合チェーンユニットを提供すること。
【解決手段】噛合動作を完了させる直前にある外歯リンクプレート112AYと外歯リンクプレート112BZとの噛合動作が、第1ピン間距離d1を第2ピン間距離d2にほぼ等しくさせるとともに、第3ピン間距離d3を第2ピン間距離d2に近接させるように完了する噛合チェーンユニット100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種製造分野の製造設備、運輸分野の移送設備、医療福祉分野の介護設備、芸術分野の舞台設備などに用いて被駆動体を進退動させる噛合チェーンユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動装置として、相互に噛み合って一体的に駆動される一対の噛合チェーン、所
謂、チャックチェーンを用いて重量物などの被駆動物を移動させる駆動装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
また、リンクプレートの内側フランクすなわちスプロケット歯に噛み合う面の形状を規定してチェーン駆動時の騒音及び振動を低減するサイレントチェーン伝動装置がある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−113872号公報(特許請求の範囲、図5参照。)
【特許文献2】実公平6−13399号公報(特許請求の範囲、図1参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の噛合チェーンでは、内歯プレート同士及び外歯プレート同士を相互に噛み合わせる噛合端面や座屈を規制する座屈規制端面などの設計事項について具体的に言及していないため、内歯プレート同士及び外歯プレート同士を強固且つ確実に噛み合わせることを困難にさせてしまうという問題点があった。
また、上述の噛合チェーンでは、内歯プレート同士及び外歯プレート同士を相互に噛み合わせた際にこれらプレートに不均一な圧縮力を作用させてしまうため、相互に噛み合って一体化した一対の噛合チェーンのチェーン剛直化部分に生じる座屈、折損及び曲がりを回避することを困難にさせてしまうという問題点があった。
すなわち、噛合後のチェーンにおいて、不可避に生じる部品間の隙間ガタツキが残ってしまうため、チェーン剛直化部分に生じる座屈、折損及び曲がりを噛合時の不均一な圧縮力の作用を抑制することによって回避することを困難にさせてしまうという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、内歯プレート同士および外歯プレート同士を確実且つ強固に噛み合わせるとともにチェーン剛直化部分の座屈、折損及び曲がりを回避する噛合チェーンユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
まず、本請求項1に係る発明は、フック状噛合端面及び座屈規制端面を有する外歯リンクプレートと該外歯リンクプレートに嵌合された前後一対の連結ピンと該連結ピンに遊嵌された状態で前記外歯リンクプレートと交互に配置された内歯リンクプレートとからそれぞれ構成された第1噛合チェーン及び第2噛合チェーンが相互に噛み合ってチェーン剛直化部分を形成するとともに相互に噛み外れて分岐する一対の噛合チェーンからなる噛合チェーンユニットであって、前記内歯リンクプレート及び外歯リンクプレートの一方のうち噛合動作を完了させる直前にあり第1噛合チェーンを構成する第1リンクプレートと第2噛合チェーンを構成し該第1リンクプレートに後続する第2リンクプレートの噛合動作が、前記第2リンクプレートの噛み外れ側連結ピンと前記第2リンクプレートの噛み外れ側連結ピンに対向する連結ピンとの第1ピン間距離を前記チェーン剛直化部分における第2ピン間距離にほぼ等しくさせるとともに、前記第2リンクプレートの噛み外れ側連結ピンに対向する連結ピンを有するとともに第2リンクプレートに後続する第3リンクプレートの噛み外れ側連結ピンと該第3リンクプレートの噛み外れ側連結ピンに対向する連結ピンとの第3ピン間距離を前記チェーン剛直化部分における第2ピン間距離に近接させるように完了することにより、前述した課題を解決したものである。
【0007】
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係る噛合チェーンユニットにおいて、前記噛合動作時において前記第3リンクプレートの位置から第1リンクプレートの位置に至る過程で第1ピン間距離及び第3ピン間距離が前記チェーン剛直化部分における第2ピン間距離に等しくなる際に、前記内歯リンクプレートと前記外歯リンクプレート及び前記連結ピンのいずれかまたは全てが、弾性変形を伴っていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0008】
そして、本請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る噛合チェーンユニットにおいて、前記第3リンクプレートの座屈規制端面が、前記噛合動作時に前記第2リンクプレートの座屈規制端面に当接し、前記第2リンクプレートが、前記噛合動作時に前記第3リンクプレートのプレート軸を剛直化チェーン進退方向に一致させるように挙動することにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0009】
そして、本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに係る噛合チェーンユニットにおいて、前記第3リンクプレートのフック状噛合端面が、前記噛合動作時に第3リンクプレートに後続する第4リンクプレートのフック状噛合端面に噛合い、前記第4リンクプレートが、前記噛合動作時に前記第3リンクプレートのプレート軸を前記剛直化チェーン進退方向に一致させるように挙動することにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0010】
そして、本請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4に係る噛合チェーンユニットにおいて、前記第2ピン間距離が、前記チェーン剛直化部分に含まれた状態でチェーン幅方向に沿って相互に対向する一対の連結ピンの間に存在して相互に噛み合ったフック状噛合端面同士と相互に当接した座屈規制端面同士とで規定されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0011】
そして、本請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一つに係る噛合チェーンユニットにおいて、前記一対の噛合チェーンが、該一対の噛合チェーンの動作を前記チェーン噛み外れ方向から前記剛直化チェーン進退方向に沿った偏向領域を規制するチェーン動作規制手段によって相互に噛み合わせられることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0012】
そして、本請求項7に係る発明は、請求項6に係る噛合チェーンユニットにおいて、前記チェーン動作規制手段が、前記一対の噛合チェーンの噛合動作及び噛み外れ動作に基づいたチェーン進退動作に応じて被駆動体を進退動させる噛合チェーン式進退作動装置に設けられた駆動用スプロケットであることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係る噛合チェーンユニットは、フック状噛合端面及び座屈規制端面を有する外歯リンクプレートと該外歯リンクプレートに嵌合された前後一対の連結ピンと該連結ピンに遊嵌された状態で前記外歯リンクプレートと交互に配置された内歯リンクプレートとからそれぞれ構成された第1噛合チェーン及び第2噛合チェーンが相互に噛み合ってチェーン剛直化部分を形成するとともに相互に噛み外れて分岐する一対の噛合チェーンからなることにより、一対の噛合チェーンの進退動作に応じてチェーンの剛直状態とチェーンの分岐状態とを切り替えることができるばかりでなく、以下のような特有の構成に対応した格別の効果を奏することができる。
【0014】
すなわち、本請求項1に係る噛合チェーンユニットは、前記内歯リンクプレート及び外歯リンクプレートの一方のうち噛合動作を完了させる直前にあり第1噛合チェーンを構成する第1リンクプレートと第2噛合チェーンを構成し該第1リンクプレートに後続する第2リンクプレートの噛合動作が、前記第2リンクプレートの噛み外れ側連結ピンと前記第2リンクプレートの噛み外れ側連結ピンに対向する連結ピンとの第1ピン間距離を前記チェーン剛直化部分における第2ピン間距離にほぼ等しくさせるとともに、前記第2リンクプレートの噛み外れ側連結ピンに対向する連結ピンを有するとともに第2リンクプレートに後続する第3リンクプレートの噛み外れ側連結ピンと該第3リンクプレートの噛み外れ側連結ピンに対向する連結ピンとの第3ピン間距離を前記チェーン剛直化部分における第2ピン間距離に近接させるように完了することにより、第2リンクプレートに後続する他の種類のリンクプレート、すなわち第1、第2、第3リンクプレートが外歯リンクプレートである場合の内歯リンクプレートあるいは第1、第2、第3リンクプレートが内歯リンクプレートである場合の外歯リンクプレートの円滑な噛合動作状態への移行を実現して第2リンクプレートの噛み外れ側連結ピン及びこれと一対をなす非噛み外れ側連結ピンのそれぞれの位置を固定した状態で第2リンクプレートのプレート軸すなわち第2リンクプレートの噛み外れ側連結ピン及び非噛み外れ側連結ピンを相互に結んだ軸線を剛直化チェーン進退方向に一致させるとともに第1リンクプレート及び第2リンクプレートのそれぞれのフック状噛合端面同士を噛み合わせた噛合い部を第3リンクプレートの座屈規制端面で抑え込むため、噛合時の不均一な圧縮力の作用を回避した状態で内歯リンクプレート同士及び外歯リンクプレート同士の強固且つ確実な噛み合わせを実現するとともに相互に噛み合って一体化した一対の噛合チェーンの剛直性を向上させてチェーン剛直化部分の座屈、折損及び曲がりを回避することができる。
なお、第1ピン間における第1リンクプレートと第2リンクプレートとの噛合が完了するには、第1リンクプレートのフック状噛合端面と第2リンクプレートのフック状噛合端面とが噛み外れないように第2リンクプレートに後続する第3リンクプレートによって固定されなければならないため、第3ピン間距離が第2ピン間距離に近接するように各リンクプレートが挙動することによって、第2リンクプレートが第3リンクプレートによって固定される作用が完了し、第1ピン間における第1リンクプレートと第2リンクプレートとの噛み合いが完了する。
また、第3ピン間距離の近接状態は、内歯リンクプレートまたは外歯リンクプレートのフック状噛合端面が噛合うことで達成される。
【0015】
そして、本請求項2に係る噛合チェーンユニットは、請求項1に係る噛合チェーンユニットが奏する効果に加えて、前記噛合動作時において前記第3リンクプレートの位置から第1リンクプレートの位置に至る過程で第1ピン間距離及び第3ピン間距離が前記チェーン剛直化部分における第2ピン間距離に等しくなる際に、前記内歯リンクプレートと前記外歯リンクプレート及び前記連結ピンのいずれかまたは全てが、弾性変形を伴っていることにより、噛合動作時にフック状噛合端面同士を滑らかに噛み合わせて振動を回避するとともに順次噛合動作を行う第1、第2、第3リンクプレートのそれぞれの前後一対の連結ピンのうち剛直化チェーン進退方向に沿って先行する連結ピンを支点として順次噛合チェーンを回転させ、しかも上述の弾性変形に伴って一対の噛合チェーンを剛直化させて部品間の遊びを無くした状態でガタツキをより一層低減するため、内歯リンクプレート同士及び外歯リンクプレート同士を強固且つ確実に噛み合わせることの障害の一つになる振動を低減し、しかも内歯リンクプレート、外歯リンクプレート及び上述の先行する連結ピンにより生じる弾性力を利用して内歯リンクプレート同士及び外歯リンクプレート同士を効率良く強固且つ確実に噛み合わせるとともに相互に噛み合って一体化した一対の噛合チェーンの剛直性を向上させてチェーン剛直化部分の座屈、折損及び曲がりをより一層回避することができる。
【0016】
そして、本請求項3に係る噛合チェーンユニットは、請求項1又は請求項2に係る噛合チェーンユニットが奏する効果に加えて、前記第3リンクプレートの座屈規制端面が、前記噛合動作時に前記第2リンクプレートの座屈規制端面に当接し、前記第2リンクプレートが、前記噛合動作時に前記第3リンクプレートのプレート軸を剛直化チェーン進退方向に一致させるように挙動することにより、第3リンクプレートに後続する同種のリンクプレートと第3リンクプレートとのそれぞれのフック状噛合端面同士の噛合い動作に伴って第3リンクプレートの座屈規制端面を第2リンクプレートの座屈規制端面に当接させるため、内歯リンクプレート同士及び外歯リンクプレート同士を強固且つ確実に噛み合わせるとともに相互に噛み合って一体化した一対の噛合チェーンの剛直性を向上させてチェーン剛直化部分の座屈、折損及び曲がりをより一層確実に回避することができる。
【0017】
そして、本請求項4に係る噛合チェーンユニットは、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに係る噛合チェーンユニットが奏する効果に加えて、前記第3リンクプレートのフック状噛合端面が、前記噛合動作時に第3リンクプレートに後続する第4リンクプレートのフック状噛合端面に噛合い、前記第4リンクプレートが、前記噛合動作時に前記第3リンクプレートのプレート軸を前記剛直化チェーン進退方向に一致させるように挙動することにより、剛直化チェーン進退方向に沿って第3リンクプレートを第4リンクプレートで抑え込むため、外歯リンクプレート及び内歯リンクプレートを剛直化チェーン進退方向に誘導した状態で一対の噛合チェーンを確実に噛み合わせてチェーン剛直化部分の座屈、折損及び曲がりを回避することができる。
より詳細にいえば、弾性変形を伴う噛合において、第1リンクプレートと第2リンクプレートが噛み合っても、弾性変形した部品が元に戻ろうとする弾性力により、噛み合った噛合チェーンは噛み外れるように作用する。
この際、第3リンクプレートのみでは、弾性変形を伴った噛合を維持することが困難であるが、剛直化側ピンを支点としてリンクプレートを順次噛み合わせることで、てこの原理により、少ない力でチェーンの噛み外れを抑制することで可能となるため、第3、第4リンクプレートによる噛合いの完了が第1、第2リンクプレートにおける弾性変形を伴った噛合を終了させることになる。
【0018】
そして、本請求項5に係る噛合チェーンユニットは、請求項1乃至請求項4に係る噛合チェーンユニットが奏する効果に加えて、前記第2ピン間距離が、前記チェーン剛直化部分に含まれた状態でチェーン幅方向に沿って相互に対向する一対の連結ピンの間に存在して相互に噛み合ったフック状噛合端面同士と相互に当接した座屈規制端面同士とで規定されていることにより、相互に噛み合ったフック状噛合端面同士に作用する力と相互に当接した座屈規制端面同士に作用する力と釣り合わせた状態でチェーン剛直化部分を形成するため、チェーン剛直化部分の幅を規定した状態でチェーン剛直化部分の剛直性をより一層向上させてチェーン剛直化部分の座屈、折損及び曲がりを確実に回避することができる。
なお、第3ピン間距離が、第3リンクプレートの噛み外れ側連結ピンと該第3リンクプレートの噛み外れ側連結ピンに対向する連結ピンが挟持する座屈規制端面の当接で連結ピン間を広げる方向に作用する。
また、第3リンクプレートの噛み外れ側連結ピンとこの第3リンクプレートの噛み外れ側連結ピンに対向する連結ピンが挟持するフック状噛合端面が噛み合うように当接することでピン間距離が広がらないように作用する。
連結ピンで連結された幅方向に座屈規制端面とフック状噛合端面とが相互に反する方向にピン間距離を規定するように噛み合うことで噛合チェーンの噛合時のピン間距離を規定し、剛直性を得ることができる。
弾性変形を伴って噛み合う場合には、座屈規制端面が規定するピン間距離がフック状噛合部が規定するピン間距離より大きくなるので、確実にピン間距離を規制することが可能となり、チェーンの剛直性が飛躍的に向上する。
このように支障なく第1噛合チェーン及び第2噛合チェーンの噛合に際して剛直性が向上する効果は、剛直化チェーン進退方向に圧縮荷重が作用した際に顕著に得られる。
また、第1噛合チェーン及び第2噛合チェーンの噛合動作時に相互に対向する連結ピンが剛直化チェーン進退方向に若干ずれていてもこれら噛合チェーンの噛合動作に支障はない。
【0019】
そして、本請求項6に係る噛合チェーンユニットは、請求項1乃至請求項5のいずれか一つに係る噛合チェーンユニットが奏する効果に加えて、前記一対の噛合チェーンが、該一対の噛合チェーンの動作を前記チェーン噛み外れ方向から前記剛直化チェーン進退方向に沿った偏向領域を規制するチェーン動作規制手段によって相互に噛み合わせられることにより、剛直性を向上させたチェーン剛直化部分で被駆動体を進退駆動させるため、チェーン剛直化部分の座屈、折損及び曲がりを回避して被駆動体を所定の位置まで正確に進退動させることを実現することができる。
なお、噛合チェーンの噛み外れ方向から噛合い位置までをガイドすることで、先行する剛直化側プレートを後続する噛み外れ側リンクプレートが抑え込むため、噛み合ったチェーンが分離することなく、チェーン剛直化部分は剛直状態を維持したまま進退することができる。
【0020】
そして、本請求項7に係る噛合チェーンユニットは、請求項6に係る噛合チェーンユニットが奏する効果に加えて、前記チェーン動作規制手段が、前記一対の噛合チェーンの噛合動作及び噛み外れ動作に基づいたチェーン進退動作に応じて被駆動体を進退動させる噛合チェーン式進退作動装置に設けられた駆動用スプロケットであることにより、剛直性を向上させたチェーン剛直化部分で被駆動体を進退駆動させるため、チェーン剛直化部分の座屈、折損及び曲がりを回避して被駆動体を所定の位置まで正確に進退動させることを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例に係る噛合チェーンユニットの分解組み立て状態を示す斜視図。
【図2】本発明の噛合チェーンユニットを備えた噛合チェーン式進退作動装置の斜視図。
【図3】図2から昇降テーブルを除いた状態の斜視図。
【図4】図3に示す駆動用スプロケット近傍の一部拡大図。
【図5】チェーン誘導プレート及び噛合チェーンの接触状態を示した図。
【図6】一対の噛合チェーンが相互に噛み合う噛合動作過程(A)を示した説明図。
【図7】一対の噛合チェーンが相互に噛み合う噛合動作過程(B)を示した説明図。
【図8】一対の噛合チェーンが相互に噛み合う噛合動作過程(C)を示した説明図。
【図9】一対の噛合チェーンが相互に噛み合う噛合動作過程(D)を示した説明図。
【図10】一対の噛合チェーンが相互に噛み合う噛合動作過程(E)を示した説明図。
【図11】一対の噛合チェーンが相互に噛み合う噛合動作過程(F)を示した説明図。
【図12】一対の噛合チェーンが相互に噛み合う噛合動作過程(G)を示した説明図。
【図13】一対の噛合チェーンの噛合動作に関する他の例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の噛合チェーンユニットは、フック状噛合端面及び座屈規制端面を有する外歯リンクプレートとこの外歯リンクプレートに嵌合された前後一対の連結ピンとこの連結ピンに遊嵌された状態で外歯リンクプレートと交互に配置された内歯リンクプレートとからそれぞれ構成された第1噛合チェーン及び第2噛合チェーンが相互に噛み合ってチェーン剛直化部分を形成するとともに相互に噛み外れて分岐する一対の噛合チェーンからなり、内歯リンクプレート及び外歯リンクプレートの一方のうち噛合動作を完了させる直前にあり第1噛合チェーンを構成する第1リンクプレートと第2噛合チェーンを構成しこの第1リンクプレートに後続する第2リンクプレートの噛合動作が、第2リンクプレートの噛み外れ側連結ピンと第2リンクプレートの噛み外れ側連結ピンに対向する連結ピンとの第1ピン間距離をチェーン剛直化部分における第2ピン間距離にほぼ等しくさせるとともに、第2リンクプレートの噛み外れ側連結ピンに対向する連結ピンを有するとともに第2リンクプレートに後続する第3リンクプレートの噛み外れ側連結ピンとこの第3リンクプレートの噛み外れ側連結ピンに対向する連結ピンとの第3ピン間距離をチェーン剛直化部分における第2ピン間距離に近接させるように完了するものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
また、噛合チェーンユニットは、チェーン厚み方向に対向する一対の内歯リンクプレートとこれら内歯リンクプレートの外側にそれぞれ配置された一対の外歯リンクプレートとを有して構成されたリンクユニットをチェーン長手方向にそれぞれ多数連結してなる複数列のチェーンユニットから構成されていてもよいし、単列のチェーンユニットから構成されていてもよい。
また、本発明の噛合チェーンユニットは、連結ピン及びリンクプレートのみからなる。いわゆるサイレントタイプの噛合チェーンで構成されていてもよい。
【0023】
また、上述の外歯リンクプレート及び内歯リンクプレートとによって奏される効果は、外歯リンクプレート及び内歯リンクプレートの関係を相互に入れ替えて考えた場合でも同様に奏される。
また、一対の噛合チェーンのうち片側の噛合チェーンのフック状噛合端面または座屈規制端面の一部に凹状の切り欠きを設けたり、座屈規制端面を曲面としたとしても、上述と同様の効果が奏される。
【0024】
また、本発明に係る噛合チェーンユニットを備えた噛合チェーン式進退作動装置は、設置面が据え置き設置形態となる床面であっても、吊り下げ設置形態となる天井面であっても進退動作に何ら支障はなく、さらには、片持ち支持形態となる垂直壁面であっても前述した進退動作に何ら支障はない。
また、本発明に係る噛合チェーンユニットを備えた噛合チェーン式進退作動装置は、壁面に設置され、壁面と平行に進退するものであってもよい。
【実施例】
【0025】
以下、図1乃至図13に基づいて本発明の実施例に係る噛合チェーンユニット100を説明する。
ここで、図1は、本発明の実施例に係る噛合チェーンユニット100の分解組み立て状態を示す斜視図であり、図2は、本発明の噛合チェーンユニットを備えた噛合チェーン式進退作動装置の斜視図であり、図3は、図2から昇降テーブルを除いた状態の斜視図であり、図4は、図3に示す駆動用スプロケット近傍の一部拡大図であり、図5は、チェーン誘導プレート及び噛合チェーンの接触状態を示した図であり、図6乃至図12は、一対の噛合チェーンが相互に噛み合う噛合動作過程を順に示した説明図であり、図13は、一対の噛合チェーンの噛合動作に関する他の例を示す正面図である。
なお、以下では、本発明の第1乃至第4リンクプレートのそれぞれとして外歯リンクプレートを例に挙げて説明する。
すなわち、以下では、説明の便宜上、第1乃至第4リンクプレートとして外歯リンクプレートを例に挙げるとともに外歯リンクプレートに主に着目して噛合チェーンユニット100の構成を説明しており、第1乃至第4リンクプレートとして内歯リンクプレートを例に挙げたとしても外歯リンクプレートを例に挙げた場合と同様の効果が得られる。
【0026】
まず、図1を参照しながら、本実施例に係る噛合チェーンユニット100の基本的な構成を説明する。
図1に示すように、本実施例に係る噛合チェーンユニット100は、所謂、チャックチェーンと称するものであって、フック状噛合端面112F及び座屈規制端面112Sを有する外歯リンクプレート112とこの外歯リンクプレート112に嵌合された前後一対の連結ピン113とこの連結ピンに遊嵌された状態で外歯リンクプレート112と交互に配置された内歯リンクプレート111とからそれぞれ構成された第1噛合チェーン110A及び第2噛合チェーン110Bが相互に噛み合ってチェーン剛直化部分100Aを形成するとともに相互に噛み外れて分岐する一対の噛合チェーン110A、110Bからなることにより、一対の噛合チェーン110A、110Bの進退動作に応じてチェーンの剛直状態とチェーンの分岐状態とを切り替えるようになっている。
また、内歯プレート111に嵌合された状態で連結ピン113を遊嵌するブシュ114が、チェーン厚み方向Tに沿って対向する一対の内歯プレート111、111の間に配置された状態でローラ115を外嵌している。
【0027】
次に、図1乃至図12を参照しながら、前述した本実施例の噛合チェーンユニット100の構成を詳細に説明する。
本実施例の噛合チェーンユニット100は、例えば、噛合チェーン式進退作動装置200に設けられた状態で進退自在に駆動される。
噛合チェーンユニット100を備えた噛合チェーン式進退作動装置200は、図2に示すように、重量物(図示していない)を搭載する昇降テーブル240を設置床面Gに対して平行に昇降させるものである。
【0028】
図1乃至図5に示すように、噛合チェーン式進退作動装置200は、前述した昇降テーブル240が平行に昇降する設置床面Gに据え付けたベースプレート220と、このベースプレート220に対して平行に併置された一対の回転軸230を中心に同一面内で相互に対向して反対方向に正逆回転する一対の駆動用スプロケット210と、これら一対の駆動用スプロケット210、210と噛み外れることによって昇降テーブル240を昇降する一対の噛合チェーン110A、110Bからなる一対の噛合チェーンユニット100、100と、これら噛合チェーンユニット100、100の上端に設置されて一体に昇降する前述した昇降テーブル240と、一対の駆動用スプロケット210、210を回転させる変速ギア群253に動力を伝達する動力伝達チェーン252と、この動力伝達チェーン252を駆動する駆動モータ250と、一対の駆動用スプロケット210の股間領域に設けられて噛合チェーンユニット100を誘導移動させるチェーン誘導プレート260とを基本的な装置構成として備えている。
なお、本実施例では、駆動用スプロケット210が、本発明の「チェーン動作規制手段」の一例を構成している。
【0029】
また、チェーン収納手段270が、駆動モータ250と同様に、昇降テーブル240の最下降位置の周辺域、すなわち、昇降テーブル240の投影傘下の領域外に離間配置されている。
すなわち、相互に噛み外れて分岐した一対の噛合チェーン110A、110Bの一方は、駆動モータ250側に配置した巻き取り型のチェーン収納ボックス271からなるチェーン収納手段270内に収納されるとともに、一対の噛合チェーン110A、110Bの他方は、駆動モータ250と対向する反対側に配置した直線状収納レール272からなるチェーン収納手段270内に収納される。
【0030】
次に、図1乃至図5を参照しながら、本実施例に係る噛合チェーンユニット100を備えた噛合チェーン式進退作動装置200の動作を説明する。
図1乃至図5に示すように、昇降テーブル240が最上昇位置に達する場合、ローラ115に係合する一対の駆動用スプロケット210、210によって一対の噛合チェーン110A、110Bがチェーン収納ボックス271と直線状収納レール272とからなるチェーン収納手段270からそれぞれ繰り出され、この一対の噛合チェーン110A、110Bが重量物からなる被昇降物(図示していない)を搭載する昇降テーブル240の全重量を支えながら駆動モータ250の出力に応じて出力ギア251に2本掛けされた動力伝達チェーン252により等速かつ迅速に上昇するようになっている。
【0031】
一方、昇降テーブル240が最下降位置に達する場合、一対の噛合チェーン110A、110Bが、一対の駆動用スプロケット210、210によってチェーン収納ボックス271と直線状収納レール272からなるチェーン収納手段270へそれぞれ分岐しながら引き込まれ、一対の噛合チェーン110A、110Bが、重量物(図示していない)を搭載する昇降テーブル240の全重量を支えながら駆動モータ250の出力に応じて出力ギア251に2本掛けされた動力伝達チェーン252により等速かつ迅速に下降するようになっている。
【0032】
特に、噛合チェーン式進退作動装置200では、駆動用スプロケット210が、一対の噛合チェーン110A、110Bの噛合動作及び噛み外れ動作に基づいたチェーン進退動作に応じて昇降テーブル240すなわち被駆動体を進退動させることにより、剛直性を向上させたチェーン剛直化部分100Aで昇降テーブル240を進退駆動させるため、噛合チェーンユニット100は、チェーン剛直化部分100Aの座屈、折損及び曲がりを回避して昇降テーブル240を所定の位置まで正確に進退動させるようになっている。
【0033】
次に、図6乃至図12を参照しながら、本実施例に係る噛合チェーンユニット100の最も特徴とする構成の具体的な形態を詳しく説明する。
図6乃至図12に示すように、本実施例に係る噛合チェーンユニット100では、内歯リンクプレート111及び外歯リンクプレート112の一方のうち噛合動作を完了させる直前にあり噛合チェーン110Aを構成する第1リンクプレートすなわち外歯リンクプレート112AYと噛合チェーン110Bを構成しこの外歯リンクプレート112AYに後続する第2リンクプレートすなわち外歯リンクプレート112BZの噛合動作が、外歯リンクプレート112BZの噛み外れ側連結ピン113B1と外歯リンクプレート112BZの噛み外れ側連結ピン113B1に対向する連結ピン112C2との第1ピン間距離d1をチェーン剛直化部分100Aにおける第2ピン間距離d2にほぼ等しくさせるとともに、外歯リンクプレート112BZの噛み外れ側連結ピン113B1に対向する連結ピン112C2を有するとともに外歯リンクプレート112BZに後続する第3リンクプレートすなわち外歯リンクプレート112Cの噛み外れ側連結ピン113C1と外歯リンクプレート112Cの噛み外れ側連結ピン113C1に対向する連結ピン113D2との第3ピン間距離d3をチェーン剛直化部分100Aにおける第2ピン間距離d2に近接させるように完了する。
これにより、外歯リンクプレート112BZに後続する他の種類のリンクプレート、すなわち内歯リンクプレート111BZの円滑な噛合動作状態への移行を実現して外歯リンクプレート112BZの噛み外れ側連結ピン113B1及びこれと一対をなす非噛み外れ側連結ピン113B2のそれぞれの位置を固定した状態で外歯リンクプレート112BZのプレート軸Pbすなわち外歯リンクプレート112BZの噛み外れ側連結ピン113B1及び非噛み外れ側連結ピン113B2を相互に結んだ軸線を剛直化チェーン進退方向Aに一致させるとともに外歯リンクプレート112AY及び外歯リンクプレート112BZのそれぞれのフック状噛合端面112AF、112BF同士を噛み合わせた噛合い部を外歯リンクプレート112Cの座屈規制端面112CSで抑え込むため、噛合チェーンユニット100は、噛合時の不均一な圧縮力の作用を回避した状態で内歯リンクプレート111同士及び外歯リンクプレート112同士の強固且つ確実な噛み合わせを実現するとともに相互に噛み合って一体化した一対の噛合チェーン110A、110Bの剛直性を向上させてチェーン剛直化部分100Aの座屈、折損及び曲がりを回避するようになっている。
なお、第1ピン間における第1リンクプレートすなわち外歯リンクプレート112AYと第2リンクプレートすなわち外歯リンクプレート112BZとの噛合が完了するには、外歯リンクプレート112AYのフック状噛合端面112AFと外歯リンクプレート112BZのフック状噛合端面112BFとが噛み外れないように外歯リンクプレート112BZに後続する第3リンクプレートすなわち外歯リンクプレート112Cによって固定されなければならないため、第3ピン間距離d3が第2ピン間距離d3に近接するように各リンクプレートが挙動することによって、外歯リンクプレート112BZが外歯リンクプレート112Cによって固定される作用が完了し、第1ピン間における外歯リンクプレート112AYと外歯リンクプレート112BZとの噛み合いが完了する。
より詳細には、内歯リンクプレート111A及び外歯リンクプレート112Xが変位しないまま、内歯リンクプレート111B及び外歯リンクプレート112AYが噛み込んでいくので、この段階すなわち内歯リンクプレート111A及び外歯リンクプレート112Xが変位せずに下側のプレートから押し込まれている状態において、各部材すなわち内歯リンクプレート111A、111B、外歯リンクプレート112X、112AY、連結ピン113A2およびこれに対向する連結ピンが弾性変形する。
また、第3ピン間距離d3の近接状態は、内歯リンクプレート111または外歯リンクプレート112のフック状噛合端面が噛合うことで達成される。
このように支障なく噛合チェーン110A、110Bの噛合に際して剛直性が向上する効果は、剛直化チェーン進退方向Aに圧縮荷重が作用した際に顕著に得られる。
【0034】
また、本実施例に係る噛合チェーンユニット100では、噛合動作時において外歯リンクプレート112Cの位置から外歯リンクプレート112AYの位置に至る過程で第1ピン間距離d1及び第3ピン間距離d3がチェーン剛直化部分100Aにおける第2ピン間距離d2に等しくなる際に、内歯リンクプレート111と外歯リンクプレート112及び連結ピン113のいずれかまたは全てが、弾性変形を伴っている。
これにより、噛合動作時にフック状噛合端面112AF、112BF同士を滑らかに噛み合わせて振動を回避するとともに順次噛合動作を行う外歯リンクプレート112AY、112BZ、112Cのそれぞれの前後一対の連結ピン113A1、113A2、113B1、113B2、113C1、113C2のうち剛直化チェーン進退方向Aに沿って先行する連結ピン113を支点として順次噛合チェーン110Aを回転させ、しかも上述の弾性変形に伴って一対の噛合チェーン110A、110Bを剛直化させて部品間の遊びを無くした状態でガタツキをより一層低減するため、噛合チェーンユニット100は、内歯リンクプレート111同士及び外歯リンクプレート112同士を強固且つ確実に噛み合わせることの障害の一つになる振動を低減し、しかも内歯リンクプレート111、外歯リンクプレート112及び上述の先行する連結ピン113により生じる弾性力を利用して内歯リンクプレート111同士及び外歯リンクプレート112同士を効率良く強固且つ確実に噛み合わせるとともに相互に噛み合って一体化した一対の噛合チェーン110A、110Bの剛直性を向上させてチェーン剛直化部分100Aの座屈、折損及び曲がりをより一層回避するようになっている。
【0035】
また、本実施例に係る噛合チェーンユニット100では、外歯リンクプレート112Cの座屈規制端面112CSが、上述の噛合動作時に外歯リンクプレート112BZの座屈規制端面112BSに当接し、外歯リンクプレート112BZが、上述の噛合動作時に外歯リンクプレート112Cのプレート軸Pcを剛直化チェーン進退方向Aに一致させるように挙動する。
これにより、外歯リンクプレート112Cに後続する同種の外歯リンクプレート112Dと外歯リンクプレート112Cとのそれぞれのフック状噛合端面112CF、112DF同士の噛合い動作に伴って外歯リンクプレート112Cの座屈規制端面112CSを外歯リンクプレート112BZの座屈規制端面112BSに当接させるため、噛合チェーンユニット100は、内歯リンクプレート111同士及び外歯リンクプレート112同士を強固且つ確実に噛み合わせるとともに相互に噛み合って一体化した一対の噛合チェーン110A、110Bの剛直性を向上させてチェーン剛直化部分100Aの座屈、折損及び曲がりをより一層確実に回避するようになっている。
【0036】
また、本実施例に係る噛合チェーンユニット100では、外歯リンクプレート112Cのフック状噛合端面112CFが、上述の噛合動作時に外歯リンクプレート112Cに後続する外歯リンクプレート112Dのフック状噛合端面112DFに噛合い、外歯リンクプレート112Dが、上述の噛合動作時に外歯リンクプレート112Cのプレート軸Pcを剛直化チェーン進退方向Aに一致させるように挙動する。
これにより、剛直化チェーン進退方向Aに沿って外歯リンクプレート112Cを外歯リンクプレート112Dで抑え込むため、噛合チェーンユニット100は、外歯リンクプレート112及び内歯リンクプレート111を剛直化チェーン進退方向Aに誘導した状態で一対の噛合チェーン110、110を確実に噛み合わせてチェーン剛直化部分100Aの座屈、折損及び曲がりを回避するようになっている。
より詳細にいえば、弾性変形を伴う噛合において、外歯リンクプレート112AYと外歯リンクプレート112BZが噛み合っても、弾性変形した部品が元に戻ろうとする弾性力により、噛み合った噛合チェーン110A、110Bは噛み外れるように作用するようになっている。
この際、外歯リンクプレート112Cのみでは、弾性変形を伴った噛合を維持することが困難であるが、剛直化側ピン113を支点としてリンクプレートを順次噛み合わせることで、この原理により、少ない力でチェーンの噛み外れを抑制することで可能となるため、外歯リンクプレート112C、112Dによる噛合いの完了が外歯リンクプレート112AY、112BZにおける弾性変形を伴った噛合を終了させることになる。
【0037】
また、本実施例に係る噛合チェーンユニット100では、第2ピン間距離d2が、チェーン剛直化部分100Aに含まれた状態でチェーン幅方向Wに沿って相互に対向する一対の連結ピン113A1、113B2の間に存在して相互に噛み合ったフック状噛合端面112AF、112BF同士と相互に当接した座屈規制端面111S、111S同士とで規定されていることにより、相互に噛み合ったフック状噛合端面112AF、112BF同士に作用する力と相互に当接した座屈規制端面111S、111S同士に作用する力と釣り合わせた状態でチェーン剛直化部分100Aを形成するため、チェーン剛直化部分100Aの幅を規定した状態でチェーン剛直化部分110Aの剛直性をより一層向上させてチェーン剛直化部分100Aの座屈、折損及び曲がりを確実に回避するようになっている。
また、外歯リンクプレート112AY、112BZ、112C、112Dのフック状噛合端面112AF、112BF、112CF、112DFと、外歯リンクプレート112AY、112BZ、112C、112Dの座屈規制端面112AS、112BS、112CS、112DSとについても、上述の力の釣り合いによって得られる効果と同様の効果が噛合動作の進行に伴って奏される。
なお、第3ピン間距離d3が、第3リンクプレートすなわち外歯リンクプレート112Cの噛み外れ側連結ピン113C1とこの外歯リンクプレート112Cの噛み外れ側連結ピン113C1に対向する連結ピン113D2が挟持する座屈規制端面112CSの当接で連結ピン113間を広げる方向に作用するようになっている。
また、外歯リンクプレート112Cの噛み外れ側連結ピン113C1とこの外歯リンクプレート112Cの噛み外れ側連結ピン113C1に対向する連結ピン113D2が挟持するフック状噛合端面112DFが噛み合うように当接することでピン間距離が広がらないように作用するようになっている。
連結ピン113で連結された幅方向に座屈規制端面112CSとフック状噛合端面112CFとが相互に反する方向にピン間距離を規定するように噛み合うことで噛合チェーン110A、110Bの噛合時のピン間距離d3を規定し、剛直性を得るようになっている。
弾性変形を伴って噛み合う場合には、座屈規制端面112CSが規定するピン間距離がフック状噛合部112CFが規定するピン間距離より大きくなるので、確実にピン間距離を規制することが可能となり、チェーンの剛直性が飛躍的に向上するようになっている。
【0038】
このようにして得られた本実施例の噛合チェーンユニット100は、内歯リンクプレート111及び外歯リンクプレート112の一方のうち噛合動作を完了させる直前にある噛合チェーン110Aを構成する第1リンクプレートすなわち外歯リンクプレート112AYと噛合チェーン110Bを構成しこの外歯リンクプレート112AYに後続する第2リンクプレートすなわち外歯リンクプレート112BZの噛合動作が、外歯リンクプレート112BZの噛み外れ側連結ピン113B1と外歯リンクプレート112BZの噛み外れ側連結ピン113B1に対向する連結ピン112C2との第1ピン間距離d1をチェーン剛直化部分100Aにおける第2ピン間距離d2にほぼ等しくさせるとともに、外歯リンクプレート112BZの噛み外れ側連結ピン113B1に対向する連結ピン112C2を有するとともに外歯リンクプレート112BZに後続する第3リンクプレートすなわち外歯リンクプレート112Cの噛み外れ側連結ピン113C1と外歯リンクプレート112Cの噛み外れ側連結ピン113C1に対向する連結ピン113D2との第3ピン間距離d3をチェーン剛直化部分100Aにおける第2ピン間距離d2に近接させるように完了することにより、噛合時の不均一な圧縮力の作用を回避した状態で内歯リンクプレート111同士及び外歯リンクプレート112同士の強固且つ確実な噛み合わせを実現するとともに相互に噛み合って一体化した一対の噛合チェーン110A、110Bの剛直性を向上させてチェーン剛直化部分100Aの座屈、折損及び曲がりを回避することができるなど、その効果は甚大である。
【0039】
次に、図13を参照しながら、上述の噛合チェーンユニット100を噛合チェーン式進退作動装置200に設置しない状態で噛合動作させる他の例を説明する。
なお、以下では、噛合チェーンユニット100は、噛合チェーン式進退作動装置200に設置されない状態で駆動されるとともに、その噛合動作が駆動用スプロケット210の代わりにチェーン動作規制部材211によって規制される点のみが上述の噛合チェーンユニット100と異なっているため、共通する部分に共通の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図13に示すように、噛合チェーンユニット100では、一対の噛合チェーン110A、110Bが、これら一対の噛合チェーン110A、110Bの動作をチェーン噛み外れ方向から剛直化チェーン進退方向Aに沿った偏向領域を規制するチェーン動作規制部材211、211によって相互に噛み合わせられる。
これにより、剛直性を向上させたチェーン剛直化部分100Aで被駆動体を進退駆動させるため、噛合チェーンユニット100は、噛合チェーン式進退作動装置200に設置される場合と同様にチェーン剛直化部分100Aの座屈、折損及び曲がりを回避して被駆動体を所定の位置まで正確に進退動させることを実現するようになっている。
なお、噛合チェーン110A、110Bの噛み外れ方向から噛合い位置までをガイドすることで、先行する剛直化側プレートを後続する噛み外れ側リンクプレートが抑え込むため、噛み合ったチェーン110A、110Bが分離することなく、チェーン剛直化部分100Aは剛直状態を維持したまま進退するようになっている。
【0040】
なお、チェーン動作規制部材211、211は、噛合チェーンユニット100をその両側から押えてこれらチェーン動作規制部材211、211の間の領域で剛直化チェーン進退方向Aに誘導するものであれば如何なるものでもよい。
噛合チェーン110A、110Bの噛合動作時に相互に対向する連結ピン113、113が剛直化チェーン進退方向Aに若干ずれていてもこれら噛合チェーン110A、110Bの噛合動作に支障はない。
このように支障なく噛合チェーン110A、110Bの噛合が可能になる効果は、剛直化チェーン進退方向Aに圧縮荷重が作用した際に顕著に得られる。
【符号の説明】
【0041】
100 ・・・ 噛合チェーンユニット
100A ・・・ チェーン剛直化部分
110A、110B ・・・ 噛合チェーン
111 ・・・ 内歯リンクプレート
112F、112AF、112BF、112CF、112DF ・・・ フック状噛合端面
111S、112S、112BS、112CS ・・・ 座屈規制端面
112、112X、112AY、112BZ、112C、112D ・・・ 外歯リンクプレート
113、113B1、113B2、113C1、113C2、113D2 ・・・ 連結ピン
114 ・・・ ブシュ
115 ・・・ ローラ
200 ・・・ 噛合チェーン式進退作動装置
210 ・・・ 駆動用スプロケット
211 ・・・ チェーン動作規制部材
220 ・・・ ベースプレート
230 ・・・ 駆動用スプロケットの回転軸
240 ・・・ 昇降テーブル
250 ・・・ 駆動モータ
251 ・・・ 出力ギア
252 ・・・ 動力伝達チェーン
253 ・・・ 変速ギア群
260 ・・・ チェーン誘導プレート
270 ・・・ チェーン収納手段
271 ・・・ チェーン収納ボックス
272 ・・・ 直線状収納レール
A ・・・ 剛直化チェーン進退方向
d1 ・・・ 第1ピン間距離
d2 ・・・ 第2ピン間距離
d3 ・・・ 第3ピン間距離
G ・・・ 設置面
Pb、Pc ・・・ プレート軸
T ・・・ チェーン厚み方向
W ・・・ チェーン幅方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フック状噛合端面及び座屈規制端面を有する外歯リンクプレートと該外歯リンクプレートに嵌合された前後一対の連結ピンと該連結ピンに遊嵌された状態で前記外歯リンクプレートと交互に配置された内歯リンクプレートとからそれぞれ構成された第1噛合チェーン及び第2噛合チェーンが相互に噛み合ってチェーン剛直化部分を形成するとともに相互に噛み外れて分岐する一対の噛合チェーンからなる噛合チェーンユニットであって、
前記内歯リンクプレート及び外歯リンクプレートの一方のうち噛合動作を完了させる直前にあり第1噛合チェーンを構成する第1リンクプレートと第2噛合チェーンを構成し該第1リンクプレートに後続する第2リンクプレートの噛合動作が、
前記第2リンクプレートの噛み外れ側連結ピンと前記第2リンクプレートの噛み外れ側連結ピンに対向する連結ピンとの第1ピン間距離を前記チェーン剛直化部分における第2ピン間距離にほぼ等しくさせるとともに、
前記第2リンクプレートの噛み外れ側連結ピンに対向する連結ピンを有するとともに第2リンクプレートに後続する第3リンクプレートの噛み外れ側連結ピンと該第3リンクプレートの噛み外れ側連結ピンに対向する連結ピンとの第3ピン間距離を前記チェーン剛直化部分における第2ピン間距離に近接させるように完了することを特徴とする噛合チェーンユニット。
【請求項2】
前記噛合動作時において前記第3リンクプレートの位置から第1リンクプレートの位置に至る過程で第1ピン間距離及び第3ピン間距離が前記チェーン剛直化部分における第2ピン間距離に等しくなる際に、前記内歯リンクプレートと前記外歯リンクプレート及び前記連結ピンのいずれかまたは全てが、弾性変形を伴っていることを特徴とする請求項1に記載の噛合チェーンユニット。
【請求項3】
前記第3リンクプレートの座屈規制端面が、前記噛合動作時に前記第2リンクプレートの座屈規制端面に当接し、
前記第2リンクプレートが、前記噛合動作時に前記第3リンクプレートのプレート軸を剛直化チェーン進退方向に一致させるように挙動することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の噛合チェーンユニット。
【請求項4】
前記第3リンクプレートのフック状噛合端面が、前記噛合動作時に第3リンクプレートに後続する第4リンクプレートのフック状噛合端面に噛合い、
前記第4リンクプレートが、前記噛合動作時に前記第3リンクプレートのプレート軸を前記剛直化チェーン進退方向に一致させるように挙動することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の噛合チェーンユニット。
【請求項5】
前記第2ピン間距離が、前記チェーン剛直化部分に含まれた状態でチェーン幅方向に沿って相互に対向する一対の連結ピンの間に存在して相互に噛み合ったフック状噛合端面同士と相互に当接した座屈規制端面同士とで規定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の噛合チェーンユニット。
【請求項6】
前記一対の噛合チェーンが、該一対の噛合チェーンの動作を前記チェーン噛み外れ方向から前記剛直化チェーン進退方向に沿った偏向領域を規制するチェーン動作規制手段によって相互に噛み合わせられることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の噛合チェーンユニット。
【請求項7】
前記チェーン動作規制手段が、前記一対の噛合チェーンの噛合動作及び噛み外れ動作に基づいたチェーン進退動作に応じて被駆動体を進退動させる噛合チェーン式進退作動装置に設けられた駆動用スプロケットであることを特徴とする請求項6に記載の噛合チェーンユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−237406(P2012−237406A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107548(P2011−107548)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【特許番号】特許第4875216号(P4875216)
【特許公報発行日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】