説明

噛合チェーンユニット

【課題】チェーン幅方向に沿った撓みの発生、噛合チェーンの寿命低下、部品点数増加及びチェーン組み立て時の作業負担増大を回避する噛合チェーンユニットを提供すること。
【解決手段】内リンクプレート111のピン孔111Hに圧入嵌合されているとともに外リンクプレート112のピン孔112Hに対して回転自在に遊嵌されている連結ピン113を備えている噛合チェーンユニット110。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種製造分野の製造設備、運輸分野の移送設備、医療福祉分野の介護設備、芸術分野の舞台設備などに用いて被駆動物を設置面に対して駆動する駆動装置に組み込まれる噛合チェーンユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ブシュ及び内リンクプレートで内リンクユニットを形成するとともに連結ピン及び外リンクプレートで外リンクユニットを形成した一対の噛合チェーンを駆動用スプロケットで駆動して昇降テーブルを駆動する昇降装置(例えば、特許文献1参照。)がある。
また、上述の昇降装置に用いられる噛合チェーンに比べて省スペース化とチェーンの耐久性とを向上させた噛合チェーン(例えば、特許文献2参照。)もある。
このような噛合チェーンは、連結ピン及びリンクプレートのみから構成されて省スペース化とチェーンの耐久性とを向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−113872号公報(特許請求の範囲、図4)
【特許文献2】特開2010−138926号公報(特許請求の範囲、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図15に示すように、上述の噛合チェーン500を構成する内リンクプレート511及び外リンクプレート512のプレート面511P、512Pをそれぞれ水平に維持した状態で噛合チェーン500を水平方向HDに進退動させた場合、鉛直方向PDに沿って相互に対向配置された一対の内リンクプレート511同士を連結ピンを介して強固に接続していないことにより、噛合チェーン500の剛性すなわち鉛直方向PDに沿ったチェーン強度を確保することが困難であるため、鉛直方向PDすなわち噛合チェーン500のチェーン幅方向に作用する荷重で噛合チェーン500に撓みを発生させてしまうという問題点があった。
より具体的には、図16及び図17に示すように、連結ピン513の軸線同士により形成される角度θ0を生じさせた状態で連結ピン513と内リンクプレート511のピン孔511Hの縁とをチェーンの撓みにより点接触させてしまうため、チェーンに撓みを生じさせない場合に比べて連結ピン513から内リンクプレート111のピン孔511Hの縁に作用する摩擦力を増大させた状態で継続使用することによりピン孔511Hの縁又は連結ピンの摩耗量を増大させてチェーンの剛性を低下させ、噛合チェーン500の撓み量をより一層増大させてしまうという問題点があった。
特に、内リンクプレートが511が連結ピン513に対してルーズな状態すなわち内リンクプレート511と連結ピン513との間に遊びがある場合には、噛合チェーン500の撓みを増大させて傾きを発生させ易くなってしまう。
【0005】
しかも、噛合チェーン500を長期間使用するほどピン孔511Hの縁の摩耗量を増大させて撓み量をより一層増大させてしまうため、撓みの発生と噛合チェーンの寿命低下とを回避することを困難にさせてしまうという問題点もあった。
加えて、チェーン幅方向に沿って相互に対向する一対の外リンクプレート512、512相互のプレート間隔を大きくしてチェーン幅を広げることにより噛合チェーン500の剛性を高めた場合、相互に噛み合うべき内リンクプレート511、511同士に噛み合いずれを生じさせてしまうため、内リンクプレート511同士の噛み合いずれに起因するチェーンの剛性低下を生じさせてしまうとともに噛み合いずれを回避するために内リンクプレート511及び外リンクプレート512間にスペーサやリンクプレート同士を連結するブシュを設ける必要を生じさせるため部品点数増加や噛合チェーンを組み立てる際の作業負担を増大させてしまうという問題点があった。
【0006】
また、上述の撓みは、噛合チェーンを水平方向に進退動させる場合に限らず、一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせて剛直化させるチェーン剛直化方向を鉛直方向に対して平行に設定している場合であっても、噛合チェーンの僅かな傾きに応じて生じる荷重の分力すなわち荷重の鉛直方向成分によって発生しうる。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、チェーン幅方向に沿った撓みの発生、噛合チェーンの寿命低下、部品点数増加及びチェーン組み立て時の作業負担増大を回避する噛合チェーンユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明の噛合チェーンユニットは、フック状のプレート噛合歯をそれぞれ有する複数の内リンクプレートとチェーン幅方向に沿って前記内リンクプレートの外側に設けられているとともにフック状のプレート噛合歯をそれぞれ有する複数の外リンクプレートと前記内リンクプレート及び外リンクプレートのそれぞれに形成したピン孔に貫通しているとともにチェーン長手方向に沿って内リンクプレート及び外リンクプレートを交互に連結する連結ピンとをそれぞれ有している一対の噛合チェーンを備え、前記複数の内リンクプレートのプレート噛合歯のうち相互に対向するプレート噛合歯同士と前記複数の外リンクプレートのプレート噛合歯のうち相互に対向するプレート噛合歯同士とを相互に噛み合わせて前記一対の噛合チェーンを一体に進退方向に剛直化させるとともに前記複数の内リンクプレートのプレート噛合歯のうち相互に対向するプレート噛合歯同士と前記複数の外リンクプレートのプレート噛合歯のうち相互に対向するプレート噛合歯同士とを相互に噛み外して前記一対の噛合チェーンを分岐させる噛合チェーンユニットであって、前記連結ピンが、前記内リンクプレートのピン孔に圧入嵌合されているとともに前記外リンクプレートのピン孔に対して回転自在に遊嵌されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0009】
請求項2に係る本発明の噛合チェーンユニットは、請求項1に記載の構成に加えて、前記一対の噛合チェーンが、前記内リンクプレート及び外リンクプレートのそれぞれのプレート面を平行に維持した状態で進退方向に駆動されることにより、前述した課題を解決したものである。
【0010】
請求項3に係る本発明の噛合チェーンユニットは、請求項1又は請求項2に記載の構成に加えて、前記外リンクプレートの抜け止め防止手段が、前記連結ピンの両端に設けられていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0011】
請求項4に係る本発明の噛合チェーンユニットは、請求項3に記載の構成に加えて、前記抜け止め手段が、前記噛合チェーンの噛み外れ部分において前記内リンクプレート及び外リンクプレートのそれぞれのプレート面を相互に摺動可能なように設けられていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0012】
請求項5に係る本発明の噛合チェーンユニットは、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の構成に加えて、前記チェーン幅方向に沿って相互に対向する一対の内リンクプレートが、該一対の内リンクプレートのそれぞれのピン孔に前記連結ピンを圧入嵌合させた状態で相互に離間されているにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係る噛合チェーンユニットによれば、フック状のプレート噛合歯をそれぞれ有する複数の内リンクプレートとチェーン幅方向に沿って前記内リンクプレートの外側に設けられているとともにフック状のプレート噛合歯をそれぞれ有する複数の外リンクプレートと前記内リンクプレート及び外リンクプレートのそれぞれに形成したピン孔に貫通しているとともにチェーン長手方向に沿って内リンクプレート及び外リンクプレートを交互に連結する連結ピンとをそれぞれ有している一対の噛合チェーンを備え、前記複数の内リンクプレートのプレート噛合歯のうち相互に対向するプレート噛合歯同士と前記複数の外リンクプレートのプレート噛合歯のうち相互に対向するプレート噛合歯同士とを相互に噛み合わせて前記一対の噛合チェーンを一体に進退方向に剛直化させるとともに前記複数の内リンクプレートのプレート噛合歯のうち相互に対向するプレート噛合歯同士と前記複数の外リンクプレートのプレート噛合歯のうち相互に対向するプレート噛合歯同士とを相互に噛み外して前記一対の噛合チェーンを分岐させることにより、一対の噛合チェーンの先端に接続された被駆動体を一対の噛合チェーンの進退動作に応じて駆動することができるばかりでなく、以下のような特有の構成に対応した格別の効果を奏することができる。
【0014】
すなわち、本請求項1に係る噛合チェーンユニットは、前記連結ピンが、前記内リンクプレートのピン孔に圧入嵌合されているとともに前記外リンクプレートのピン孔に対して回転自在に遊嵌されていることにより、内リンクプレートのピン孔に連結ピンを遊嵌している場合に比べて連結ピンに対する内リンクプレート及び外リンクプレートの倒れすなわち噛合チェーンに対してチェーン幅方向に荷重を作用させた場合に生じうる連結ピンの軸方向に対する内リンクプレート及び外リンクプレートの傾き量すなわち開き量を低減するため、チェーン剛性を高めてチェーン幅方向に沿った撓みの発生を回避するとともに連結ピンやピン孔の縁の摩耗量増大を回避して噛合チェーンの寿命低下を回避し、しかも内リンクプレート同士及び外リンクプレート同士の噛み合いずれをなくして剛直化したチェーンの剛性低下とチェーンの剛性を高めるための部品点数増加及び部品点数増加に伴う噛合チェーンの組み立て作業負担の増大とを回避することができる。
【0015】
そして、本請求項2に係る噛合チェーンユニットによれば、請求項1に記載の噛合チェーンユニットが奏する効果に加えて、前記一対の噛合チェーンが、前記内リンクプレート及び外リンクプレートのそれぞれのプレート面を平行に維持した状態で進退方向に駆動されることにより、噛合チェーンを水平方向に駆動した場合に噛合チェーン及び被駆動体の重量に応じた荷重や水平方向に対する斜め方向に噛合チェーンを進退動させる場合にチェーンに作用しうる荷重の分力成分の作用方向とチェーン幅方向とを相互に平行にするため、上述の荷重や荷重の分力成分が作用して噛合チェーンに撓みを発生させ易い状態で噛合チェーンユニットを進退動させた場合でもチェーン剛性を高めて噛合チェーンの撓み発生を回避するとともに連結ピンやピン孔の縁の摩耗量増大を回避して噛合チェーンの寿命低下を回避し、しかも内リンクプレート同士及び外リンクプレート同士の噛み合いずれをなくしてチェーンの剛性低下とチェーンの剛性を高めるための部品点数増加及び部品点数増加に伴う噛合チェーンの組み立て作業負担の増大とを回避することができる。
また、噛合チェーンを鉛直方向に進退動させた場合であっても、剛直化した噛合チェーンの曲げ剛性を高めることができる。
【0016】
そして、本請求項3に係る噛合チェーンユニットによれば、請求項1又は請求項2に記載の噛合チェーンユニットが奏する効果に加えて、前記外リンクプレートの抜け止め防止手段が、前記連結ピンの両端に設けられていることにより、連結ピンの軸方向に沿った外リンクプレートの移動を規制するため、外リンクプレートが連結ピンから抜け落ちることと外リンクプレートの位置ずれ発生とを回避した状態で外リンクプレート同士の噛み合いずれをなくして噛合チェーンの剛性低下をより一層回避することができる。
【0017】
そして、本請求項4に係る噛合チェーンユニットによれば、請求項3に記載の噛合チェーンユニットが奏する効果に加えて、前記抜け止め手段が、前記噛合チェーンの噛み外れ部分において前記内リンクプレート及び外リンクプレートのそれぞれのプレート面を相互に摺動可能なように設けられていることにより、噛合チェーンの屈曲を阻害しないで一対の噛合チェーンの噛み合い動作及び噛み外れ動作を円滑にするため、一対の噛合チェーンの先端に接続された被駆動体の円滑な駆動を実現した状態でチェーン幅方向に沿った撓みの発生を回避するとともにピン孔の縁の摩耗量増大を回避して噛合チェーンの寿命低下を回避し、しかも内リンクプレート同士及び外リンクプレート同士の噛み合いずれをなくしてチェーンの剛性低下とチェーンの剛性を高めるための部品点数増加及び部品点数増加に伴う噛合チェーンの組み立て作業負担の増大とをより一層回避することができる。
【0018】
そして、本請求項5に係る噛合チェーンユニットによれば、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の噛合チェーンユニットが奏する効果に加えて、前記チェーン幅方向に沿って相互に対向する一対の内リンクプレートが、該一対の内リンクプレートのそれぞれのピン孔に前記連結ピンを圧入嵌合させた状態で相互に離間されていることにより、連結ピンまたはこの連結ピンに遊嵌されたローラに駆動用スプロケットを係合させて一対の噛合チェーンを駆動するため、駆動用スプロケットに係合するスプロケット係合歯を内リンクプレート及び外リンクプレートにそれぞれ形成することを回避した状態でプレートの加工負担を軽減し、噛合チェーンの組み立て作業負担を含むチェーン製造負担全体を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施例に係る噛合チェーンユニットを採用した噛合チェーン式進退作動装置の斜視図。
【図2】本発明の第1実施例に係る噛合チェーンユニットの分解組み立て状態と噛み外れ状態を示す斜視図。
【図3】本発明の第1実施例に係る噛合チェーンユニットの側面図。
【図4】本発明の第1実施例に係る噛合チェーンユニットの撓み量を説明する説明図。
【図5】図4の外リンクプレート及び連結ピンの一部を拡大した拡大図。
【図6】本発明の第1実施例に係る噛合チェーンユニットに用いる噛合チェーンの側面図。
【図7】外リンクプレートの抜け止め防止手段の変形例を示した側面図。
【図8】外リンクプレートの抜け止め防止手段の変形例を示した側面図。
【図9】外リンクプレートの抜け止め防止手段の変形例を示した側面図。
【図10】外リンクプレートの抜け止め防止手段の変形例を示した側面図。
【図11】外リンクプレートの抜け止め防止手段の変形例を示した側面図。
【図12】本発明の第2実施例に係る噛合チェーンユニットを採用した噛合チェーン式進退作動装置の正面図。
【図13】本発明の第2実施例に係る噛合チェーンユニットの斜視図。
【図14】本発明の第2実施例に係る噛合チェーンユニットに用いる噛合チェーンの側面図。
【図15】比較例に係る噛合チェーンの側面図。
【図16】比較例に係る噛合チェーンの撓み量を説明する説明図。
【図17】図16の内リンクプレート及び連結ピンの一部を拡大した拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の噛合チェーンユニットは、フック状のプレート噛合歯をそれぞれ有する複数の内リンクプレートとチェーン幅方向に沿って内リンクプレートの外側に設けられているとともにフック状のプレート噛合歯をそれぞれ有する複数の外リンクプレートと内リンクプレート及び外リンクプレートのそれぞれに形成したピン孔に貫通しているとともにチェーン長手方向に沿って内リンクプレート及び外リンクプレートを交互に連結する連結ピンとをそれぞれ有している一対の噛合チェーンを備え、複数の内リンクプレートのプレート噛合歯のうち相互に対向するプレート噛合歯同士と複数の外リンクプレートのプレート噛合歯のうち相互に対向するプレート噛合歯同士とを相互に噛み合わせて一対の噛合チェーンを一体に進退方向に剛直化させるとともに複数の内リンクプレートのプレート噛合歯のうち相互に対向するプレート噛合歯同士と複数の外リンクプレートのプレート噛合歯のうち相互に対向するプレート噛合歯同士とを相互に噛み外して一対の噛合チェーンを分岐させ、連結ピンが、内リンクプレートのピン孔に圧入嵌合されているとともに外リンクプレートのピン孔に対して回転自在に遊嵌されているものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
例えば、噛合チェーンユニットの進退動方向は、水平方向であってもよいし、水平方向及び鉛直方向に交差する斜め方向であってもよい。
また、噛合チェーンユニットの進退動方向が鉛直方向に平行になるように噛合チェーン式進退作動装置に噛合チェーンユニットを設置している場合であっても、噛合チェーンユニットのチェーン剛直化部分は、実質的には鉛直方向に対して僅かに傾いた斜め方向に進退動されるため、このような場合であっても、本発明に係る噛合チェーンユニットによる効果は相応に奏される。
【実施例】
【0021】
以下、図1乃至図14に基づいて、本発明の実施例に係る噛合チェーンユニット110、210を説明する。
ここで、図1は、本発明の第1実施例に係る噛合チェーンユニットを採用した噛合チェーン式進退作動装置の斜視図であり、図2は、本発明の第1実施例に係る噛合チェーンユニットの分解組み立て状態と噛み外れ状態を示す斜視図であり、図3は、本発明の第1実施例に係る噛合チェーンユニットの側面図であり、図4は、本発明の第1実施例に係る噛合チェーンユニットの撓み量を説明する説明図であり、図5は、図4の外リンクプレート及び連結ピンの一部を拡大した拡大図であり、図6は、本発明の第1実施例に係る噛合チェーンユニットに用いる噛合チェーンの側面図であり、図7は、外リンクプレートの抜け止め防止手段の変形例を示した側面図であり、図8は、外リンクプレートの抜け止め防止手段の変形例を示した側面図であり、図9は、外リンクプレートの抜け止め防止手段の変形例を示した側面図であり、図10は、外リンクプレートの抜け止め防止手段の変形例を示した側面図であり、図11は、外リンクプレートの抜け止め防止手段の変形例を示した側面図であり、図12は、本発明の第2実施例に係る噛合チェーンユニットを採用した噛合チェーン式進退作動装置の正面図であり、図13は、本発明の第2実施例に係る噛合チェーンユニットの斜視図であり、図14は、本発明の第2実施例に係る噛合チェーンユニットに用いる噛合チェーンの側面図である。
【0022】
[第1実施例]
まず、図1乃至図11に基づいて、本発明の第1実施例に係る噛合チェーンユニット110及びそれを採用した噛合チェーン式進退作動装置100を説明する。
図1及び図2に示すように、噛合チェーン式進退作動装置100は、水平方向HDに進退動される噛合チェーンユニット110と、噛合チェーンユニット110の上側及び下側にそれぞれ配置された一対のチェーンガイドプレート120とを備え、噛合チェーンユニット110のチェーン剛直化部分110Gの先端に接続された被駆動体(図示しない)を噛合チェーンユニット110の進退動作に応じて水平方向HDに駆動するものである。
噛合チェーンユニット110を構成する一対の噛合チェーン110A、110Bは、内リンクプレート111及び外リンクプレート112のスプロケット係合歯111S及び112Sに係合する駆動用スプロケット130によって駆動されるとともに一対のチェーンガイドプレート120、120にそれぞれ形成されたチェーンガイド121によってガイドされる。
【0023】
図1及び図2に示すように、本第1実施例に係る噛合チェーンユニット110は、フック状のプレート噛合歯111Tをそれぞれ有する複数の内リンクプレート111とチェーン幅方向Wに沿って内リンクプレート111の外側に設けられているとともにフック状のプレート噛合歯112Tをそれぞれ有する複数の外リンクプレート112と内リンクプレート111及び外リンクプレート112のそれぞれに形成したピン孔111H、112Hに貫通しているとともにチェーン長手方向に沿って内リンクプレート111及び外リンクプレート112を交互に連結する連結ピン113とをそれぞれ有している一対の噛合チェーン110A、110Bを備え、複数の内リンクプレート111のプレート噛合歯111Tのうち相互に対向するプレート噛合歯111T同士と複数の外リンクプレート112のプレート噛合歯112Tのうち相互に対向するプレート噛合歯112T同士とを相互に噛み合わせて一対の噛合チェーン110A、110Bを一体に進退方向に剛直化させるとともに複数の内リンクプレート111のプレート噛合歯111Tのうち相互に対向するプレート噛合歯111T同士と複数の外リンクプレート112のプレート噛合歯112Tのうち相互に対向するプレート噛合歯112T同士とを相互に噛み外して一対の噛合チェーン110A、110Bを分岐させることにより、一対の噛合チェーン110A、110Bの先端に接続された被駆動体を一対の噛合チェーン110A、110Bの進退動作に応じて駆動する。
【0024】
次に、図1乃至図5に基づいて、前述した本第1実施例の噛合チェーンユニット110が最も特徴とする構成の具体的な形態についてより詳しく説明する。
すなわち、噛合チェーンユニット110は、連結ピン113が、内リンクプレート111のピン孔111Hに圧入嵌合されているとともに外リンクプレート112のピン孔112Hに対して回転自在に遊嵌されていることにより、内リンクプレート111のピン孔111Hに連結ピン113を遊嵌している場合に比べて連結ピン113に対する内リンクプレート111及び外リンクプレート112の倒れすなわち噛合チェーン110A、110Bに対してチェーン幅方向Wに荷重を作用させた場合に生じうる連結ピン113の軸方向に対する内リンクプレート111及び外リンクプレート112の傾き量すなわち開き量を低減するため、チェーン剛性を高めてチェーン幅方向Wに沿った撓みの発生を回避するとともに連結ピン113やピン孔112Hの縁の摩耗量増大を回避して噛合チェーン110A、110Bの寿命低下を回避し、しかも内リンクプレート111同士及び外リンクプレート112同士の噛み合いずれをなくして剛直化したチェーンの剛性低下とチェーンの剛性を高めるための部品点数増加及び部品点数増加に伴う噛合チェーンの組み立て作業負担の増大とを回避するようになっている。
より具体的には、図4に示すように、チェーン幅方向Wすなわち鉛直方向PDに沿って噛合チェーンユニット110に作用する荷重によって発生する外リンクプレート112の開き量d1に対応するチェーン撓み量すなわち連結ピン113の軸を延長した直線同士で構成される角度θ1に対応したチェーン撓み量は、角度θ1が図16に示す角度θ0より小さいため、比較例に係る噛合チェーン500における外リンクプレート512の開き量d0に対応するチェーン撓み量(図16参照)に比べて低減される。
【0025】
また、噛合チェーンユニット110は、一対の噛合チェーン110A、110Bが、内リンクプレート111及び外リンクプレート112のそれぞれのプレート面111P、112Pを平行に維持した状態で噛合チェーンの進退方向すなわち水平方向HDに駆動されることにより、噛合チェーン110A、110Bを水平に駆動した場合に噛合チェーン110A、110B及び被駆動体の重量がそのまま噛合チェーン110A、110Bに作用する方向である鉛直方向PDとチェーン幅方向Wとを相互に平行にするため、特に上述の荷重が作用して噛合チェーン110A、110Bに撓みを発生させ易い状態で噛合チェーンユニット110を進退動させた場合でも噛合チェーン110A、110Bの撓み発生を回避するとともに連結ピン113やピン孔112Hの縁の摩耗量増大を回避して噛合チェーン110A、110Bの寿命低下を回避し、しかも内リンクプレート111同士及び外リンクプレート112同士の噛み合いずれをなくしてチェーンの剛性低下とチェーンの剛性を高めるための部品点数増加及び部品点数増加に伴う噛合チェーンの組み立て作業負担の増大とを回避するようになっている。
なお、噛合チェーン110A、110Bを水平方向HDに対して斜め方向に駆動した場合であっても、チェーン幅方向Wが荷重の分力方向に平行になるため、上述の効果と同様の効果が奏される。
また、噛合チェーンユニット110によれば、噛合チェーン110A、110Bを鉛直方向PDに進退動させた場合であっても、剛直化した噛合チェーン110A、110Bに対して作用するチェーン曲げ力の作用方向とチェーン幅方向Wを平行にするため、剛直化した噛合チェーン110A、110Bの曲げ剛性を高めることができる。
【0026】
また、噛合チェーンユニット110は、外リンクプレート112の抜け止め防止手段の一例としてのキャップ114が、連結ピン113の両端に設けられていることにより、連結ピン113の軸方向に沿った外リンクプレート112の移動を規制するため、外リンクプレート112が連結ピン113から抜け落ちることと外リンクプレート112の位置ずれ発生とを回避した状態で外リンクプレート112同士の噛み合いずれをなくして噛合チェーン110A、110Bの剛性低下をより一層回避するようになっている。
【0027】
また、噛合チェーンユニット110は、抜け止め手段の一例としてのキャップ114が、噛合チェーン110A、110Bの噛み外れ部分において内リンクプレート111及び外リンクプレート112のそれぞれのプレート面111P、112Pを相互に摺動可能なように設けられていることにより、噛合チェーン110A、110Bの屈曲を阻害しないで一対の噛合チェーン110A、110Bの噛み合い動作及び噛み外れ動作を円滑にするため、一対の噛合チェーン110A、110Bの先端に接続された被駆動体の円滑な駆動を実現した状態でチェーン幅方向Wに沿った撓みの発生を回避するとともにピン孔112Hの縁の摩耗量増大を回避して噛合チェーン110A、110Bの寿命低下を回避し、しかも内リンクプレート111同士及び外リンクプレート112同士の噛み合いずれをなくしてチェーンの剛性低下とチェーンの剛性を高めるための部品点数増加及び部品点数増加に伴う噛合チェーンの組み立て作業負担の増大とをより一層回避するようになっている。
【0028】
また、外リンクプレート112の抜け止め防止手段は、図7(a)、(b)及び(c)に示す締鋲114A、溶接突部114B及びフラットなピン端114Cでもよいし、図8乃至図11に示す割りピン114D、クリップ114Eであってもよい。
また、外リンクプレート112の抜け止め防止手段は、上述したものに限定されるものではなく、Tピン、Zピン、ワッシャーであってもよい。
なお、一対の噛合チェーン110A、110Bは相互に同一の構成を有しているため、図6乃至図11では、噛合チェーン110Aに設けられた抜け止め防止手段の具体例を示し、噛合チェーン110Bに設けられた抜け止め防止手段についてはその詳細な説明を省略している。
【0029】
このようにして得られた本第1実施例の噛合チェーンユニット110は、連結ピン113が、内リンクプレート111のピン孔111Hに圧入嵌合されているとともに外リンクプレート112のピン孔112Hに対して回転自在に遊嵌されていることにより、チェーン剛性を高めてチェーン幅方向Wに沿った撓みの発生を回避するとともにピン孔112Hの縁の摩耗量増大を回避して噛合チェーン110A、110Bの寿命低下を回避し、しかも内リンクプレート111同士及び外リンクプレート112同士の噛み合いずれをなくしてチェーンの剛性低下とチェーンの剛性を高めるための部品点数増加及び部品点数増加に伴う噛合チェーンの組み立て作業負担の増大とを回避することができるなど、その効果は甚大である。
【0030】
[第2実施例]
次に、図12乃至図14に基づいて、本発明の第2実施例に係る噛合チェーンユニット210及びそれを採用した噛合チェーン式進退作動装置200を説明する。
なお、本実施例に係る噛合チェーンユニット210及びそれを採用した噛合チェーン式進退作動装置200は、内リンクプレート211及び外リンクプレート212にスプロケット係合歯が設けられていない点で上述の第1実施例に係る噛合チェーンユニット110及び噛合チェーン式進退作動装置100と相違するのみであり、その他の構成については上述の第1実施例に係る噛合チェーンユニット110及び噛合チェーン式進退作動装置100と同様であるため、上述の第1実施例に係る噛合チェーンユニット110及び噛合チェーン式進退作動装置100と共通する部分の符号を100番台から200番台に付け替えてその詳細な説明を省略する。
【0031】
図12に示すように、噛合チェーン式進退作動装置200は、駆動用スプロケット230によって駆動されて進退方向すなわち水平方向HDに進退動する噛合チェーンユニット210と、チェーンガイドプレート220とを備え、噛合チェーンユニット210の先端に接続された被駆動体(図示しない)を駆動する。
【0032】
本第2実施例に係る噛合チェーンユニット210は、チェーン幅方向Wに沿って相互に対向する一対の内リンクプレート211、211が、これら一対の内リンクプレート211、211のそれぞれのピン孔211H、211Hに連結ピン213を圧入嵌合させた状態で相互に離間されている。
これにより、連結ピン213又は連結ピン213に遊嵌されたローラに駆動用スプロケット230を係合させて一対の噛合チェーン210A、210Bを駆動するため、噛合チェーンユニット210は、駆動用スプロケット230に係合するスプロケット係合歯を内リンクプレート211及び外リンクプレート212にそれぞれ形成することを回避した状態でプレートの加工負担を軽減し、噛合チェーン210A、210Bの組み立て作業負担を含むチェーン製造負担全体を軽減するようになっている。
【0033】
このようにして得られた本第2実施例の噛合チェーンユニット210は、上術の第1実施例に係る噛合チェーンユニット110によって得られる効果に加えて、チェーン幅方向Wに沿って相互に対向する一対の内リンクプレート211、211が、これら一対の内リンクプレート211、211のそれぞれのピン孔211H、211Hに連結ピン213を圧入嵌合させた状態で相互に離間されていることにより、駆動用スプロケット230に係合するスプロケット係合歯を内リンクプレート211及び外リンクプレート212にそれぞれ形成することを回避した状態でプレートの加工負担を軽減し、噛合チェーン210A、210Bの組み立て作業負担を含むチェーン製造負担全体を軽減することができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0034】
100、200 ・・・ 噛合チェーン式進退作動装置
500 ・・・ 噛合チェーン
110、210 ・・・ 噛合チェーンユニット
110A、110B、210A、210B ・・・ 噛合チェーン
110G、210G ・・・チェーン剛直化部分
111、211、511 ・・・ 内リンクプレート
112、212、512 ・・・ 外リンクプレート
111H、112H、211H、212H、511H ・・・ ピン孔
111P、112P、211P、212P、511P、512P ・・・ プレート面
111S、112S ・・・ スプロケット係合歯
111T、112T ・・・ プレート噛合面
113、213、513 ・・・ 連結ピン
114 ・・・ キャップ
114A ・・・ 締鋲
114B ・・・ 溶接突部
114C ・・・ フラットのピン端
114D ・・・ 割りピン
114E ・・・ クリップ
120、220 ・・・ チェーンガイドプレート
121 ・・・ チェーンガイド
130、230 ・・・ 駆動用スプロケット
HD ・・・ 水平方向
PD ・・・ 鉛直方向
W ・・・ チェーン幅方向
d0、d1 ・・・ 開き量
θ0、θ1 ・・・ 連結ピンの軸線同士が形成する角度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フック状のプレート噛合歯をそれぞれ有する複数の内リンクプレートとチェーン幅方向に沿って前記内リンクプレートの外側に設けられているとともにフック状のプレート噛合歯をそれぞれ有する複数の外リンクプレートと前記内リンクプレート及び外リンクプレートのそれぞれに形成したピン孔に貫通しているとともにチェーン長手方向に沿って内リンクプレート及び外リンクプレートを交互に連結する連結ピンとをそれぞれ有している一対の噛合チェーンを備え、前記複数の内リンクプレートのプレート噛合歯のうち相互に対向するプレート噛合歯同士と前記複数の外リンクプレートのプレート噛合歯のうち相互に対向するプレート噛合歯同士とを相互に噛み合わせて前記一対の噛合チェーンを一体に進退方向に剛直化させるとともに前記複数の内リンクプレートのプレート噛合歯のうち相互に対向するプレート噛合歯同士と前記複数の外リンクプレートのプレート噛合歯のうち相互に対向するプレート噛合歯同士とを相互に噛み外して前記一対の噛合チェーンを分岐させる噛合チェーンユニットであって、
前記連結ピンが、前記内リンクプレートのピン孔に圧入嵌合されているとともに前記外リンクプレートのピン孔に対して回転自在に遊嵌されていることを特徴とする噛合チェーンユニット。
【請求項2】
前記一対の噛合チェーンが、前記内リンクプレート及び外リンクプレートのそれぞれのプレート面を平行に維持した状態で進退方向に駆動されることを特徴とする請求項1に記載に記載の噛合チェーンユニット。
【請求項3】
前記外リンクプレートの抜け止め防止手段が、前記連結ピンの両端に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の噛合チェーンユニット。
【請求項4】
前記抜け止め手段が、前記噛合チェーンの噛み外れ部分において前記内リンクプレート及び外リンクプレートのそれぞれのプレート面を相互に摺動可能なように設けられていることを特徴とする請求項3に記載の噛合チェーンユニット。
【請求項5】
前記チェーン幅方向に沿って相互に対向する一対の内リンクプレートが、該一対の内リンクプレートのそれぞれのピン孔に前記連結ピンを圧入嵌合させた状態で相互に離間されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の噛合チェーンユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−92174(P2013−92174A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233207(P2011−233207)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】