説明

噛合チェーン式進退作動装置

【課題】チェーン収納ガイドプレートのプレート面内領域を有効利用するとともにチェーン接触騒音の増大を回避する噛合チェーン式進退作動装置を提供すること。
【解決手段】チェーン収納軌道142Rが、5個の曲線開始点SR1ないしSR5を有し、曲線開始点SR1ないしSR5のそれぞれから噛み外れ位置Oまでを占めるチェーン収納軌道部分の長さXi(i=1、2、3、4、5)をピッチPで除して算出された複数の剰余Tiが相互に異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種製造分野の製造設備、運輸分野の移送設備、医療福祉分野の介護設備、芸術分野の舞台設備などに用いてテーブルなどの被駆動体を進退動させる噛合チェーン式進退作動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、噛合チェーン式進退作動装置としては、相互に噛み合って一体的に駆動される一対の噛合チェーン、所謂、チャックチェーンを用いて重量物などの被駆動物を移動させる噛合チェーン式昇降装置がある(例えば、特許文献1参照)。
このような従来の噛合チェーン式昇降装置に用いる噛合チェーンは、噛合チェーンの駆動時にチェーン幅方向に沿って一対とされる外歯プレート間に差し渡しされたブシュまたは一対の外歯プレート間に設けられたローラにスプロケット歯を係合させる駆動用スプロケットによって駆動されるとともに直線状のチェーンガイド部分および円弧状のチェーンガイド部分を接続してなるチェーン収納ガイドに出没自在に収納される場合もある。
また、湾曲形状を有するチェーン走行面を備えたチェーンガイドなどがある(例えば、特許文献2参照。)。
また、図12に示すように、従来の噛合チェーン式進退作動装置200では、チェーン収納ガイドプレート240の限られたプレート面内領域に巻回形状のチェーン収納ガイド241R、241Lを形成してプレート面内領域を有効利用して噛合チェーンを収納している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−263047号公報(特許請求の範囲、図6参照。)
【特許文献2】特開2007−64369号公報(特許請求の範囲、図2参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の噛合チェーン式進退作動装置200では、一対の噛合チェーン210L、210Rを図12中の上下方向すなわちチェーン剛直方向から図12中の左右方向に噛み外すとともに一対の噛合チェーン210L、210Rの噛み外れ位置Oからみて図中右側に示したチェーン収納ガイド241Rに噛合チェーン210Rを収納する場合、チェーン収納軌道242Rが曲線開始点SR1ないしSR5で直線状チェーン収納軌道から曲線状チェーン収納軌道に変化するため、噛合チェーン210Rをチェーン収納軌道242Rに沿って走行させてチェーン収納ガイド241Rに収納するチェーン走行中に噛合チェーン210Rに含まれる複数の連結ピン、ローラまたはブシュが曲線開始点SR1ないしSR5におけるチェーン収納ガイド241Rの内壁243Rに同時に衝突して複数のチェーン衝突音を同時に発生させ、噛合チェーン210Rのチェーン収納時に噛合チェーン210Rおよびチェーン収納ガイド241R相互の衝突すなわち接触に起因して発生するチェーン接触騒音の振幅を装置全体で増大させてしまうという問題点があった。
より具体的には、図12および図13に示すように、噛合チェーン収納軌道242Rの一部を構成する直線状チェーン収納軌道から曲線状チェーン収納軌道に沿って噛合チェーン210Rを走行させて収納する際に直線状チェーン収納軌道および曲線状チェーン収納軌道を相互に接続する曲線開始点SR1において平面状内壁243R1に連続して繋がった曲面状内壁243R2に噛合チェーン210Rの連結ピン、ブシュまたはローラが衝突するとともに他の曲線開始点SR2ないしSR5でも曲線開始点SR1と同様に噛合チェーン210Rの連結ピン、ブシュまたはローラが曲面状内壁243R2に衝突し、しかも曲線開始点SR1ないしSR5のそれぞれにおいて噛合チェーン210Rおよびチェーン収納ガイド241R間に同時に発生する複数のチェーン衝突音が相互に重畳されるため、複数のチェーン衝突音を重畳して合成されるチェーン衝突音全体すなわち装置全体から発生するチェーン接触騒音全体の振幅をチェーン衝突音のそれぞれの振幅に比べて増大させてしまうという問題点があった。
【0005】
また、噛合チェーン210Rをチェーン収納軌道242Rに沿ってチェーン収納ガイド241Rから噛み外れ位置Oに送り出す場合すなわち上述の噛合チェーン210Rの収納時とは逆向きに噛合チェーン210Rを走行させた場合、上述の噛合チェーン210Rの収納時に曲線状チェーン収納軌道から直線状チェーン収納軌道に噛合チェーン210Rを送り出すチェーン送り出し時に曲線状チェーン収納軌道のチェーン退出側で曲線状チェーン収納軌道および直線状チェーン収納軌道を相互に接続する曲線終了点FR1ないしFR5が上述の曲線開始点SR1ないしSR5と機能上同様の位置付けとなるため、噛合チェーン210Rの収納時とは逆向きに噛合チェーン210Rを走行させた際に噛合チェーン210Rの複数の連結ピン、ブシュまたはローラが曲面状内壁243R2に衝突して同時に曲線終了点FR1ないしFR5のそれぞれで複数のチェーン衝突音を同時に発生させ、しかも曲線終了点FR1ないしFR5においても曲線開始点SR1ないしSR5と同様に複数のチェーン衝突音が重畳されてチェーン接触騒音の振幅を増大させてしまうという問題点があった。
【0006】
また、上述のチェーン接触騒音は一対のチェーン収納ガイドの一方で発生するだけでなく図12中の左側に示した他方のチェーン収納ガイド241Lでも発生するため、噛合チェーン210Lとチェーン収納ガイド241Lの内壁との接触により上述のチェーン収納ガイド241Rと同様にチェーン接触騒音を増大させてしまうという問題点があった。
【0007】
また、図12および図14に示すように、チェーン収納ガイド241Rおよび241Lのそれぞれの曲線開始点SR1ないしSR5、SL1ないしSL5で同時に発生したチェーン衝突音がチェーン収納ガイド241Rおよび241Lで相互に重畳されてしまうため、これらチェーン衝突音を相互に重畳して合成された合成後のチェーン衝突音すなわち装置全体から発生するチェーン接触騒音全体の振幅をチェーン衝突音のそれぞれの振幅に比べて増大させてしまうという問題点があった。
【0008】
また、噛合チェーン210R、210Lの収納時に曲線開始点SR1ないしSR5、SL1ないしSL5で同時にチェーン衝突音が発生してチェーン接触騒音を増大させてしまう原因と同様の原因により、チェーン収納ガイド241R、241Lから噛み外れ位置Oに噛合チェーン210R、210Lを送り出す際にも曲線終了点FR1ないしFR5、FL1ないしFL5で発生したチェーン衝突音が相互に重畳されてしまうため、装置全体から発生するチェーン接触騒音全体の振幅をチェーン衝突音のそれぞれの振幅に比べて増大させてしまうという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、チェーン収納ガイドプレートの限られたプレート面内領域で噛合チェーンの収納空間を稼いてプレート面内領域を有効利用するとともにチェーン接触騒音の増大を回避する噛合チェーン式進退作動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
まず、本請求項1に係る発明は、チェーン幅方向に離間配置された一対のフック状内歯プレートからなる内リンクユニットおよび該内リンクユニットに隣接するフック状外歯プレートが前記フック状内歯プレートおよびフック状外歯プレートのそれぞれに設けられた前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、相互に対向するフック状内歯プレート同士および相互に対向するフック状外歯プレート同士をそれぞれ噛み合わせて一体に剛直化するとともに相互に噛み合ったフック状内歯プレート同士および相互に噛み合ったフック状外歯プレート同士をそれぞれ噛み外して相互に分岐自在となる一対の噛合チェーンと、該一対の噛合チェーンに取り付けられているとともに駆動用スプロケットにより駆動される一対の噛合チェーンの進退動作に応じて進退駆動される被駆動体と、相互に噛み外れて分岐した一対の噛合チェーンのそれぞれを一対のチェーン収納軌道のそれぞれに沿って出没自在に走行させて収納する一対の噛合チェーン収納ガイドを有するチェーン収納ガイドプレートとを備えた噛合チェーン式進退作動装置であって、前記一対のチェーン収納軌道のうち少なくとも一方のチェーン収納軌道が、m本(mは任意の自然数)の曲線状チェーン収納軌道のチェーン進入側のそれぞれで前記m本の曲線状チェーン収納軌道をm本の直線状チェーン収納軌道にそれぞれ接続したm個の曲線開始点Sを有し、前記一対の噛合チェーンを相互に噛み外す噛み外れ位置に近い位置から順序付けされた曲線開始点Sのそれぞれから前記噛み外れ位置までを占めるチェーン収納軌道部分の長さXi(iは一方のチェーン収納軌道にm個存在する曲線開始点Sのうち一対の噛合チェーンを相互に噛み外す噛み外れ位置に近い位置から順序付けされた曲線開始点Sの順序を示す自然数であってm以下の自然数)を前記連結ピンのピンピッチPで除して算出された複数の剰余Tiが、相互に異なっていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0011】
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係る噛合チェーン式進退作動装置において、前記チェーン収納軌道部分の長さXiおよび剰余Tiが、下記に示す式(1)および(2)によって規定されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【数1】

【数2】

(ここで、Pは一対の連結ピンのピンピッチに対応するピッチであり、Miはチェーン収納軌道部分の長さXiを被除数とし、ピッチPを除数とする商である。)
【0012】
そして、本請求項3に係る発明は、請求項2に係る噛合チェーン式進退作動装置において、前記少なくとも一方のチェーン収納軌道が、前記m本の曲線状チェーン収納軌道のチェーン退出側のそれぞれで前記m本の曲線状チェーン収納軌道にm本の直線状チェーン収納軌道にそれぞれ接続したm個の曲線終了点Fを有し、前記噛み外れ位置に近い位置から順序付けされた曲線終了点Fのそれぞれから前記噛み外れ位置までを占めるチェーン収納軌道部分の長さYj(jは一方のチェーン収納軌道にm個存在する曲線終了点Fのうち一対の噛合チェーンを相互に噛み外す噛み外れ位置に近い位置から順序付けされた曲線終了点Fの順序を示す任意の自然数であってm以下の自然数)を前記連結ピンのピンピッチPで除して算出された複数の剰余Ujが、相互に異なっていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0013】
そして、本請求項4に係る発明は、請求項3に係る噛合チェーン式進退作動装置において、前記チェーン収納軌道部分の長さYjおよび剰余Ujが、下記に示す式(3)および(4)によって規定されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【数3】

【数4】

(ここで、Pは一対の連結ピンのピンピッチに対応するピッチであり、Mjはチェーン収納軌道部分の長さYjを被除数とし、ピッチPを除数とする商である。)
【0014】
そして、本請求項5に係る発明は、請求項4に係る噛合チェーン式進退作動装置において、前記一方のチェーン収納軌道について規定されたチェーン収納軌道部分の長さXi、Yj、および剰余Ti、Ujと、前記一対のチェーン収納軌道のうち他方のチェーン収納軌道について規定されたチェーン収納軌道部分の長さXk、Yl、および剰余Tk、Ulとが、下記に示す式(5)ないし式(12)により規定されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

【数9】

【数10】

【数11】

【数12】

(ここで、Mk、Mlはチェーン収納軌道部分の長さXk、Ylを被除数とし、ピッチPを除数とする商であり、nは任意の自然数であり、k、lは、他方のチェーン収納軌道にn個存在する曲線開始点Sおよび曲線終了点Fのうち一対の噛合チェーンを相互に噛み外す噛み外れ位置に近い位置から順序付けされた曲線開始点Sおよび曲線終了点Fの順番を示す自然数である。)
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に係る噛合チェーン式進退作動装置は、チェーン幅方向に離間配置された一対のフック状内歯プレートからなる内リンクユニットおよび該内リンクユニットに隣接するフック状外歯プレートが前記フック状内歯プレートおよびフック状外歯プレートのそれぞれに設けられた前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、相互に対向するフック状内歯プレート同士および相互に対向するフック状外歯プレート同士をそれぞれ噛み合わせて一体に剛直化するとともに相互に噛み合ったフック状内歯プレート同士および相互に噛み合ったフック状外歯プレート同士をそれぞれ噛み外して相互に分岐自在となる一対の噛合チェーンと、該一対の噛合チェーンに取り付けられているとともに駆動用スプロケットにより駆動された一対の噛合チェーンの進退動作に応じて進退駆動される被駆動体と、相互に噛み外れて分岐した一対の噛合チェーンのそれぞれを一対のチェーン収納軌道のそれぞれに沿って出没自在に走行させて収納する一対の噛合チェーン収納ガイドを有するチェーン収納ガイドプレートとを備えたことにより、被駆動体に支持された搬送物を一対の噛合チェーンの進退動作に応じて搬送するとともにチェーン収納ガイドプレートの限られたプレート面内領域で噛合チェーンの収納空間を稼いてプレート面内領域を有効利用することができるばかりでなく、以下のような特有の構成に対応した格別の効果を奏することができる。
【0016】
すなわち、本請求項1に係る噛合チェーン式進退作動装置は、前記一対のチェーン収納軌道のうち少なくとも一方のチェーン収納軌道が、m本(mは任意の自然数)の曲線状チェーン収納軌道のチェーン進入側のそれぞれで前記m本の曲線状チェーン収納軌道をm本の直線状チェーン収納軌道にそれぞれ接続したm個の曲線開始点Sを有し、前記一対の噛合チェーンを相互に噛み外す噛み外れ位置に近い位置から順序付けされた曲線開始点Sのそれぞれから前記噛み外れ位置までを占めるチェーン収納軌道部分の長さXi(iは一方のチェーン収納軌道にm個存在する曲線開始点Sのうち一対の噛合チェーンを相互に噛み外す噛み外れ位置に近い位置から順序付けされた曲線開始点Sの順序を示す自然数であってm以下の自然数)を前記連結ピンのピンピッチに対応するピッチPで除して算出された複数の剰余Tiが、相互に異なっていることにより、m個の曲線開始点Sのそれぞれで発生するチェーン衝突音の振幅が重ならないため、少なくとも一方のチェーン収納ガイドで発生する複数のチェーン衝突音の振幅に比べてチェーン接触騒音全体の振幅を増大させないでチェーン接触騒音の増大を回避することができる。
【0017】
そして、本請求項2に係る噛合チェーン式進退作動装置は、請求項1に係る噛合チェーン式進退作動装置が奏する効果に加えて、前記チェーン収納軌道部分の長さXiおよび剰余Tiが、下記に示す式(1)および(2)によって規定されていることにより、互いにピッチPを隔ててチェーン長手方向に並ぶ連結ピン、ブシュまたはローラが剰余Tiを噛合チェーンのチェーン収納時走行速度で除して算出された時間だけ相互に異なるタイミングで順番に一方のチェーン収納ガイドの曲線開始点Sに対応する曲面状内壁に衝突してチェーン衝突音を発生させるため、少なくとも一方のチェーン収納ガイドで発生する複数のチェーン衝突音の振幅より大きい振幅を有するチェーン接触騒音の発生を確実に回避してチェーン接触騒音の増大をより一層回避することができる。
【数1】

【数2】

(ここで、Pは一対の連結ピンのピンピッチに対応するピッチであり、Miはチェーン収納軌道部分の長さXiを被除数とし、ピッチPを除数とする商である。)
【0018】
そして、本請求項3に係る噛合チェーン式進退作動装置は、請求項2に係る噛合チェーン式進退作動装置が奏する効果に加えて、前記少なくとも一方のチェーン収納軌道が、前記m本の曲線状チェーン収納軌道のチェーン退出側のそれぞれで前記m本の曲線状チェーン収納軌道にm本の直線状チェーン収納軌道をそれぞれ接続したm個の曲線終了点Fを有し、前記噛み外れ位置に近い位置から順序付けされた曲線終了点Fのそれぞれから前記噛み外れ位置までを占めるチェーン収納軌道部分の長さYj(jは一方のチェーン収納軌道にm個存在する曲線終了点Fのうち一対の噛合チェーンを相互に噛み外す噛み外れ位置に近い位置から順序付けされた曲線終了点Fの順序を示す任意の自然数であってm以下の自然数)を前記ピッチPで除して算出された複数の剰余Ujが相互に異なっていることにより、噛合チェーンを噛み外れ位置に向かってチェーン収納ガイドから送り出す場合、m個の曲線終了点Fのそれぞれで発生するチェーン衝突音の振幅が重ならないため、チェーン送り出し時に少なくとも一方のチェーン収納ガイドで発生する複数のチェーン衝突音の振幅に比べてチェーン接触騒音全体の振幅を増大させないでチェーン接触騒音の増大を回避することができる。
【0019】
そして、本請求項4に係る噛合チェーン式進退作動装置は、請求項3に係る噛合チェーン式進退作動装置が奏する効果に加えて、前記チェーン収納軌道部分の長さYjおよび剰余Ujが、下記に示す式(3)および(4)によって規定されていることにより、互いにピッチPを隔ててチェーン長手方向に並ぶ連結ピン、ブシュまたはローラが剰余Ujを噛合チェーンの走行速度で除して算出された時間だけ相互に異なるタイミングで順番に曲線終了点Fに対応する一方のチェーン収納ガイドの内壁に衝突してチェーン衝突音を発生させるため、チェーン送り出し時に少なくとも一方のチェーン収納ガイドで発生する複数のチェーン衝突音の振幅を相互に重畳させないでチェーン接触騒音全体の振幅増大を一層回避することができる。
【数3】

【数4】

(ここで、Pは一対の連結ピンのピンピッチに対応するピッチであり、Mjはチェーン収納軌道部分の長さYjを被除数とし、ピッチPを除数とする商である。)
【0020】
そして、本請求項5に係る噛合チェーン式進退作動装置は、請求項4に係る噛合チェーン式進退作動装置が奏する効果に加えて、前記一方のチェーン収納軌道について規定されたチェーン収納軌道部分の長さXi、Yj、および剰余Ti、Ujと、前記一対のチェーン収納軌道のうち他方のチェーン収納軌道について規定されたチェーン収納軌道部分の長さXk、Yl、および剰余Tk、Ulとが、下記に示す式(5)ないし式(12)により規定されていることにより、噛合チェーンの収納時および送り出し時のそれぞれにおいて一対のチェーン収納ガイドのそれぞれで発生したチェーン衝突音が相互に重畳されないため、チェーン接触騒音全体について振幅の増大をより一層回避することができる。
【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

【数9】

【数10】

【数11】

【数12】

(ここで、Mk、Mlはチェーン収納軌道部分の長さXk、Ylを被除数とし、ピッチPを除数とする商であり、nは任意の自然数であり、k、lは、他方のチェーン収納軌道にn個存在する曲線開始点Sおよび曲線終了点Fのうち一対の噛合チェーンを相互に噛み外す噛み外れ位置に近い位置から順序付けされた曲線開始点Sおよび曲線終了点Fの順番を示す自然数である。)
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例である噛合チェーン式進退作動装置の正面図。
【図2】チェーン収納ガイドの一部を拡大した正面拡大図。
【図3】一対の噛合チェーンの分解斜視図。
【図4】曲線開始点SRiおよびチェーン収納軌道部分の長さXiの相互関係を示した概念図。
【図5】曲線開始点SRiで発生するチェーン衝突音の振幅とチェーン接触騒音全体の振幅との関係を示した概念図。
【図6】曲線終了点FRjおよびチェーン収納軌道部分の長さYjの相互関係を示した概念図。
【図7】曲線終了点FRjで発生するチェーン衝突音の振幅とチェーン接触騒音全体の振幅との関係を示した概念図。
【図8】ピッチ(除数)Pに対するチェーン収納軌道部分の長さ(被除数)Xi、Xk、剰余Ti、Tk、商Mi、Mkの関係の一例を示した一覧表。
【図9】曲線開始点SRi、SLiで発生するチェーン衝突音の振幅とチェーン接触騒音全体の振幅との関係を示した概念図。
【図10】ピッチ(除数)Pに対するチェーン収納軌道部分の長さ(被除数)Yj、Yl、剰余Uj、Ul、商Mj、Mlの関係の一例を示した一覧表。
【図11】曲線終了点FRj、FLjで発生するチェーン衝突音の振幅とチェーン接触騒音全体の振幅との関係を示した概念図。
【図12】比較例に係る噛合チェーン式進退作動装置の正面図。
【図13】比較例に係る噛合チェーン式進退作動装置の曲線開始点SRiで発生するチェーン衝突音の振幅とチェーン接触騒音の振幅との関係を示した概念図。
【図14】比較例に係る噛合チェーン式進退作動装置の曲線開始点SRi、SLjで発生するチェーン衝突音の振幅とチェーン接触騒音全体の振幅との関係を示した概念図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の噛合チェーン式進退作動装置は、チェーン幅方向に離間配置された一対のフック状内歯プレートからなる内リンクユニットおよびこの内リンクユニットに隣接するフック状外歯プレートがフック状内歯プレートおよびフック状外歯プレートのそれぞれに設けられた前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、相互に対向するフック状内歯プレート同士および相互に対向するフック状外歯プレート同士をそれぞれ噛み合わせて一体に剛直化するとともに相互に噛み合ったフック状内歯プレート同士および相互に噛み合ったフック状外歯プレート同士をそれぞれ噛み外して相互に分岐自在となる一対の噛合チェーンと、この一対の噛合チェーンに取り付けられているとともに駆動用スプロケットにより駆動される一対の噛合チェーンの進退動作に応じて進退駆動される被駆動体と、相互に噛み外れて分岐した一対の噛合チェーンのそれぞれを一対のチェーン収納軌道のそれぞれに沿って出没自在に走行させて収納する一対の噛合チェーン収納ガイドを有するチェーン収納ガイドプレートとを備え、一対のチェーン収納軌道のうち少なくとも一方のチェーン収納軌道が、m本(mは任意の自然数)の曲線状チェーン収納軌道のチェーン進入側のそれぞれでm本の曲線状チェーン収納軌道をm本の直線状チェーン収納軌道にそれぞれ接続したm個の曲線開始点Sを有し、一対の噛合チェーンを相互に噛み外す噛み外れ位置に近い位置から順序付けされた曲線開始点Sのそれぞれから噛み外れ位置までを占めるチェーン収納軌道部分の長さXi(iは一方のチェーン収納軌道にm個存在する曲線開始点Sのうち一対の噛合チェーンを相互に噛み外す噛み外れ位置に近い位置から順序付けされた曲線開始点Sの順序を示す自然数であってm以下の自然数)を一対の連結ピンのピンピッチに対応するピッチPで除して算出された複数の剰余Tiが、相互に異なっているものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
なお、「曲線開始点」は、噛合チェーン収納時にチェーン収納軌道が直線状チェーン収納軌道から曲線状チェーン収納軌道へ変化する軌道変化点を意味する。
また、本発明の「一対の連結ピンのピンピッチに対応するピッチ」は、ブシュ、ローラが設けられていない場合にはチェーン長手方向に沿って相互に並設されているとともにフック状内歯プレートおよびフック状外歯プレートを相互に接続する一対の連結ピンのピン間距離を意味し、連結ピンに対応してブシュまたはローラが設置されている場合には、チェーン長手方向に沿って相互に並設されているブシュ間またはローラ間の距離を意味する。
【0023】
本発明の噛合チェーン式進退作動装置で用いるフック状内歯プレートおよびフック状外歯プレートなどのプレートの具体的な形状については、相互に対向する同種のフック状プレート同士をそれぞれ噛み合せて一体とするとともにそれぞれ噛み外して分岐するものであれば如何なる形状を呈するものであってもよい。
【0024】
また、本発明の噛合チェーン式進退作動装置は、少なくとも一方のチェーン収納軌道が、m本の曲線状チェーン収納軌道のチェーン退出側のそれぞれでm本の曲線状チェーン収納軌道にm本の直線状チェーン収納軌道にそれぞれ接続したm個の曲線終了点Fを有し、噛み外れ位置に近い位置から順序付けされた曲線終了点Fのそれぞれから噛み外れ位置までを占めるチェーン収納軌道部分の長さYj(jは一方のチェーン収納軌道にm個存在する曲線終了点Fのうち一対の噛合チェーンを相互に噛み外す噛み外れ位置に近い位置から順序付けされた曲線終了点Fの順序を示す自然数であってm以下の自然数)を一対の連結ピンのピンピッチに対応するピッチPで除して算出された複数の剰余Ujが、相互に異なっていてもよい。
【0025】
ここで、「曲線終了点」は、チェーン収納時にチェーン収納軌道が曲線状チェーン収納軌道から直線状チェーン収納軌道へ変化する軌道変化点を意味する。
また、チェーン収納時に噛合チェーンを走行させるチェーン走行方向とは逆向きに噛合チェーンを走行させてチェーン収納ガイドから噛合チェーンの噛み外れ位置に噛合チェーンを送り出すチェーン送り出し時には、噛合チェーン収納時とは逆にチェーン収納時の「曲線終了点」がチェーン送り出し時の「曲線開始点」になるとともにチェーン収納時の「曲線開始点」がチェーン送り出し時の「曲線終了点」になる。
したがって、本発明の「曲線開始点」および「曲線終了点」は、噛合チェーンをチェーン収納ガイドに収納するチェーン収納時と噛合チェーンをチェーン収納ガイドから送り出す送り出し時とで相互に役割を入れ替えたものとして定義される。
【0026】
また、本発明の噛合チェーン式進退作動装置は、設置面が据え置き設置形態となる床面であっても、吊り下げ設置形態となる天井面であっても進退動作に何ら支障はなく、さらには、片持ち支持形態となる垂直壁面であっても前述した進退動作に何ら支障はない。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動装置100を図1乃至図11に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の実施例である噛合チェーン式進退作動装置の正面図であり、図2は、チェーン収納ガイドの一部を拡大した正面拡大図であり、図3は、一対の噛合チェーンの分解斜視図であり、図4は、曲線開始点SRiおよびチェーン収納軌道部分の長さXiの相互関係を示した概念図であり、図5は、曲線開始点SRiで発生するチェーン衝突音の振幅とチェーン接触騒音全体の振幅との関係を示した概念図であり、図6は、曲線終了点FRjおよびチェーン収納軌道部分の長さYjの相互関係を示した概念図であり、図7は、曲線終了点FRjで発生するチェーン衝突音の振幅とチェーン接触騒音全体の振幅との関係を示した概念図であり、図8は、ピッチ(除数)Pに対するチェーン収納軌道部分の長さ(被除数)Xi、Xk、剰余Ti、Tk、商Mi、Mkの関係の一例を示した一覧表であり、図9は、曲線開始点SRi、SLiで発生するチェーン衝突音の振幅とチェーン接触騒音全体の振幅との関係を示した概念図であり、図10は、ピッチ(除数)Pに対するチェーン収納軌道部分の長さ(被除数)Yj、Yl、剰余Uj、Ul、商Mj、Mlの関係の一例を示した一覧表であり、図11は、曲線終了点FRj、FLjで発生するチェーン衝突音の振幅とチェーン接触騒音全体の振幅との関係を示した概念図である。
なお、以下では、説明の便宜上、チェーン収納ガイド141R、141Lで規定されたチェーン収納軌道142R、142Lにおいてそれぞれ曲線開始点S、曲線終了点Fを曲線開始点SR、SL、曲線終了点FR、FLと表記して図中左右方向について互いに区別するとともに、一方のチェーン収納ガイド141Rで規定された曲線状チェーン収納軌道の本数および曲線開始点SR、曲線終了点FRのそれぞれの個数を示す“m”として“m=5”を一例として挙げ、他方のチェーン収納ガイド141Lで規定された曲線状チェーン収納軌道の本数および曲線開始点SL、曲線終了点FLの個数を示す“n”として“n=5”を一例として挙げている。
【0028】
まず、本実施例の噛合チェーン式進退作動装置100は、図1ないし図3に示すように、チェーン幅方向Wに離間配置された一対のフック状内歯プレート111からなる内リンクユニット111Uおよびこの内リンクユニット111Uに隣接するフック状外歯プレート112がフック状内歯プレート111およびフック状外歯プレート112のそれぞれに設けられた前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピン113によりチェーン長手方向に多数連結され、相互に対向するフック状内歯プレート111同士および相互に対向するフック状外歯プレート112同士をそれぞれ噛み合わせて一体に剛直化するとともに相互に噛み合ったフック状内歯プレート111同士および相互に噛み合ったフック状外歯プレート112同士をそれぞれ噛み外して相互に分岐自在となる一対の噛合チェーン110R、110Lと、この一対の噛合チェーン110R、110Lに取り付けられているとともに駆動用スプロケット120により駆動される一対の噛合チェーン110R、110Lの進退動作に応じて進退駆動される被駆動体130と、相互に噛み外れて分岐した一対の噛合チェーン110R、110Lのそれぞれを一対のチェーン収納軌道142R、142Lのそれぞれに沿って出没自在に走行させて収納する一対の噛合チェーン収納ガイド141R、141Lを有するチェーン収納ガイドプレート140とを基本的な装置構成として備え、設置面Gに据え置き状態で設置されて、重量物などの被搬送物(図示しない)を搭載するテーブルなどの被駆動体130を設置面Gに対して平行に昇降させるものである。
【0029】
また、本実施例の噛合チェーン式進退作動装置100では、図1および図3に示すように、一対の噛合チェーン110R、110Lが、フック状内歯プレート111に対してチェーン長手方向にずらして重なり合うフック状外歯プレート112とチェーン幅方向Wで相互に向かい合うフック状内歯プレート111間に設けられたブシュ114とを備えているとともに設置面G上で相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることにより、一対の噛合チェーン110R、110Lの進退動作すなわち昇降動作に応じて不図示の被搬送物を昇降させるようになっている。
【0030】
次に、前述した本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100が最も特徴とする構成の具体的な形態について、図1ないし図11に基づいてより詳しく説明する。
実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100は、図1、図2および図4に示すように、一対のチェーン収納軌道142R、142Lのうち少なくとも一方のチェーン収納軌道142Rが、5本の曲線状チェーン収納軌道B1ないしB5のチェーン進入側のそれぞれで5本の曲線状チェーン収納軌道B1ないしB5を5本の直線状チェーン収納軌道A1ないしA5にそれぞれ接続した5個の曲線開始点SR1ないしSR5を有し、一対の噛合チェーン110R、110Lを相互に噛み外す噛み外れ位置Oに近い位置から順序付けされた曲線開始点SR1ないしSR5のそれぞれから噛み外れ位置Oまでを占めるチェーン収納軌道部分の長さXi(i=1、2、3、4、5)をピッチPで除して算出された複数の剰余Tiが、相互に異なっていることにより、5個の曲線開始点SR1ないしSR5のそれぞれで発生するチェーン衝突音の振幅が重ならないため、少なくとも一方のチェーン収納ガイド141Rで発生する複数のチェーン衝突音の振幅に比べてチェーン接触騒音の振幅を増大させないでチェーン接触騒音の増大を回避するようになっている。
【0031】
より具体的には、図1、図2、図4、図5に示すように、チェーン収納軌道部分の長さXi(i=1、2、3、4、5)および剰余Ti(i=1、2、3、4、5)が、下記に示す式(1)および(2)によって規定されている。
【数1】

【数2】

(ここで、Pは一対の連結ピンのピンピッチに対応するピッチであり、Miはチェーン収納軌道部分の長さXiを被除数とし、ピッチPを除数とする商である。)
【0032】
これにより、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100は、互いにピッチPを隔ててチェーン長手方向LにピッチPで並設されたブシュ114が剰余Ti(i=1、2、3、4、5)を噛合チェーン110Rのチェーン収納時走行速度で除して算出された時間だけ相互に異なるタイミングで曲線開始点Si(i=1、2、3、4、5)に対応する曲面状内壁143R2に衝突してチェーン衝突音を発生させるため、少なくとも一方のチェーン収納ガイド141Rで発生する複数のチェーン衝突音の振幅より大きい振幅を有するチェーン接触騒音の発生を確実に回避してチェーン接触騒音の増大をより一層回避するようになっている。
【0033】
また、図1、図2および図6に示すように、少なくとも一方のチェーン収納軌道142Rが、5本の曲線状チェーン収納軌道B1ないしB5のチェーン退出側のそれぞれで5本の曲線状チェーン収納軌道B1ないしB5に5本の直線状チェーン収納軌道A1ないしA5をそれぞれ接続した5個の曲線終了点FR1ないしFR5を有し、噛み外れ位置Oに近い位置から順序付けされた曲線終了点FR1ないしFR5のそれぞれから噛み外れ位置Oまでを占めるチェーン収納軌道部分の長さYj(j=1、2、3、4、5)をピッチPで除して算出された複数の剰余Ujが相互に異なっていることにより、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100は、噛合チェーン110Rをチェーン収納ガイド141Rから噛み外れ位置Oに送り出すチェーン送り出し時に5個の曲線終了点FR1ないしFR5のそれぞれで発生するチェーン衝突音の振幅が重ならないため、噛合チェーン110Rのチェーン送り出し時に少なくとも一方のチェーン収納ガイド141Rで発生する複数のチェーン衝突音の振幅に比べてチェーン接触騒音の振幅を増大させないでチェーン接触騒音の増大を回避するようになっている。
【0034】
より具体的には、図1、図2、図6、図7に示すように、チェーン収納軌道部分の長さYj(j=1、2、3、4、5)および剰余Uj(j=1、2、3、4、5)が、下記に示す式(3)および(4)によって規定されている。
【数3】

【数4】

(ここで、Pは一対の連結ピンのピンピッチに対応するピッチであり、Mjはチェーン収納軌道部分の長さYjを被除数とし、ピッチPを除数とする商である。)
【0035】
これにより、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100は、互いにピッチPを隔ててチェーン長手方向Lに並設されたブシュ114が剰余Ujを噛合チェーン110Rの送り出し時走行速度で除して算出された時間だけ相互に異なるタイミングで曲線終了点Fjに対応する一方のチェーン収納ガイド141Rの曲面状内壁143R2に衝突してチェーン衝突音を発生させるため、チェーン収納ガイド141Rにおけるチェーン送り出し時に少なくとも一方のチェーン収納ガイド141Rで発生する複数のチェーン衝突音の振幅を相互に重畳させないでチェーン接触騒音全体の振幅増大を回避するようになっている。
【0036】
また、図1、図8ないし図11に示すように、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100では、一方のチェーン収納軌道142Rについて規定されたチェーン収納軌道部分の長さXi、Yj(i、j=1、2、3、4、5)および剰余Ti、Uj(i、j=1、2、3、4、5)と、一対のチェーン収納軌道142R、142Lのうち他方のチェーン収納軌道142Lについて規定されたチェーン収納軌道部分の長さXk、Yl(k、l=1、2、3、4、5)、および剰余Tk、Ul(k、l=1、2、3、4、5)とが、下記に示す式(5)ないし式(12)により規定されている。
【0037】
【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

【数9】

【数10】

【数11】

【数12】

(ここで、Mk、Mlはチェーン収納軌道部分の長さXk、Ylを被除数とし、ピッチPを除数とする商であり、n=5であり、k、lは、他方のチェーン収納軌道142Lに5個存在する曲線開始点SLkおよび曲線終了点FLlのうち一対の噛合チェーン110R、110Lを相互に噛み外す噛み外れ位置Oに近い位置から順序付けされた曲線開始点SLkおよび曲線終了点FLkの順番を示す1〜5の自然数である。)
これにより、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100は、噛合チェーン110R、110Lを一対のチェーン収納ガイド141R、141Lのそれぞれに収納するチェーン収納時および各チェーン収納ガイド141R、141Lから送り出すチェーン送り出し時のそれぞれにおいて一対のチェーン収納ガイド141R、141Lのそれぞれで発生したチェーン衝突音が相互に重畳されないため、チェーン接触騒音全体について振幅の増大をより一層回避するようになっている。
【0038】
より具体的には、図1、図8および図9に示すように、一対の噛合チェーン110R、110Lをチェーン収納ガイド141R、141Lにそれぞれ収納する際に、曲線開始点SR1ないしSR5、SL1ないしSL5のそれぞれで剰余Ti(i=1、2、3、4、5)、Tk(k=1、2、3、4、5)が、P/11、2P/11.3P/11、4P/11、5P/11、6P/11、7P/11、8P/11、9P/11、10P/11となって相互に異なるため、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100は、曲線開始点SR1ないしSR5、SL1ないしSL5のそれぞれでブシュ114が剰余Ti、Tkを噛合チェーン110Rの収納時走行速度で除して算出された時間だけ相互に異なるタイミングで曲線開始点SR1ないしSR5、SL1ないしSL5に対応するチェーン収納ガイド141R、141Lの曲面状内壁143R2、143L2に衝突してチェーン衝突音を発生させるため、チェーン収納ガイド141R、141Lに噛合チェーン110R、110Lを収納する際にチェーン収納ガイド141R、141Lのそれぞれで発生する複数のチェーン衝突音の振幅を相互に重畳させないでチェーン接触騒音の振幅増大を回避するようになっている。
【0039】
また、図1、図10および図11に示すように、一対の噛合チェーン110R、110Lをチェーン収納ガイド141R、141Lから送り出すチェーン送り出し時に、曲線終了点FR1ないしFR5、FL1ないしFL5のそれぞれで剰余Uj(j=1、2、3、4、5)、Ul(l=1、2、3、4、5)が、P/11、2P/11.3P/11、4P/11、5P/11、6P/11、7P/11、8P/11、9P/11、10P/11となって相互に異なるため、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100は、噛合チェーン110R、110Lの送り出し時に曲線終了点FR1ないしFR5、FL1ないしFL5のそれぞれでブシュ114が剰余Uj、Ulを噛合チェーン110R、110Lの送り出し時走行速度で除して算出された時間だけ相互に異なるタイミングで曲線終了点FR1ないしFR5、FL1ないしFL5に対応するチェーン収納ガイド141R、141Lの曲面状内壁143R2、143L2に衝突してチェーン衝突音を発生して噛合チェーン110R、110Lのチェーン送り出し時にチェーン収納ガイド141R、141Lのそれぞれで発生する複数のチェーン衝突音の振幅を相互に重畳させないでチェーン接触騒音の振幅増大を回避するようになっている。
【0040】
このようにして得られた本実施例の噛合チェーン式進退作動装置100は、チェーン幅方向Wに離間配置された一対のフック状内歯プレート111からなる内リンクユニット111Uおよびこの内リンクユニット111Uに隣接するフック状外歯プレート112がフック状内歯プレート111およびフック状外歯プレート112のそれぞれに設けられた前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピン113によりチェーン長手方向に多数連結され、相互に対向するフック状内歯プレート111同士および相互に対向するフック状外歯プレート112同士をそれぞれ噛み合わせて一体に剛直化するとともに相互に噛み合ったフック状内歯プレート111同士および相互に噛み合ったフック状外歯プレート112同士をそれぞれ噛み外して相互に分岐自在となる一対の噛合チェーン110R、110Lと、この一対の噛合チェーン110R、110Lに取り付けられているとともに駆動用スプロケット120により駆動される一対の噛合チェーン110R、110Lの進退動作に応じて進退駆動される被駆動体130と、相互に噛み外れて分岐した一対の噛合チェーン110R、110Lのそれぞれを一対のチェーン収納軌道142R、142Lのそれぞれに沿って出没自在に走行させて収納する一対の噛合チェーン収納ガイド141R、141Lを有するチェーン収納ガイドプレート140とを備え、一対のチェーン収納軌道142R、142Lのうち少なくとも一方のチェーン収納軌道142Rが、5本の曲線状チェーン収納軌道B1ないしB5のチェーン入り口側のそれぞれで5本の曲線状チェーン収納軌道B1ないしB5を5本の直線状チェーン収納軌道A1ないしA5にそれぞれ接続した5個の曲線開始点SR1ないしSR5を有し、一対の噛合チェーン110R、110Lを相互に噛み外す噛み外れ位置Oに近い位置から順序付けされた曲線開始点SR1ないしSR5のそれぞれから噛み外れ位置Oまでを占めるチェーン収納軌道部分の長さXi(i=1、2、3、4、5)をピッチPで除して算出された複数の剰余Tiが相互に異なっていることにより、少なくとも一方のチェーン収納ガイド141Rで発生する複数のチェーン衝突音の振幅に比べてチェーン接触騒音の振幅を増大させないでチェーン接触騒音の増大を回避することができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0041】
100、200 ・・・ 噛合チェーン式進退作動装置
110R、110L、210R、210L ・・・ 噛合チェーン
111 ・・・ フック状内歯プレート
111U ・・・ 内リンクユニット
112 ・・・ フック状外歯プレート
113 ・・・ 連結ピン
114 ・・・ ブシュ
120、220 ・・・ 駆動用スプロケット
130、230 ・・・ 被駆動体
140、240 ・・・ チェーン収納ガイドプレート
141R、141L、241R、241L ・・・ チェーン収納ガイド
142R、142L、242R、242L ・・・ チェーン収納軌道
143R、143L、243R、243L ・・・ チェーン収納ガイドの内壁
143L1、143R1、243R1 ・・・ 平面状内壁
143L2、143R2、243R2 ・・・ 曲面状内壁
FL1〜FL5、FR1〜FR5 ・・・ 曲線終了点
SL1〜SL5、SR1〜SR5 ・・・ 曲線開始点
A1〜A5 ・・・ 直線状チェーン収納軌道
B1〜B5 ・・・ 曲線状チェーン収納軌道
G ・・・ 設置面
L ・・・ チェーン長手方向
W ・・・ チェーン幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェーン幅方向に離間配置された一対のフック状内歯プレートからなる内リンクユニットおよび該内リンクユニットに隣接するフック状外歯プレートが前記フック状内歯プレートおよびフック状外歯プレートのそれぞれに設けられた前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、相互に対向するフック状内歯プレート同士および相互に対向するフック状外歯プレート同士をそれぞれ噛み合わせて一体に剛直化するとともに相互に噛み合ったフック状内歯プレート同士および相互に噛み合ったフック状外歯プレート同士をそれぞれ噛み外して相互に分岐自在となる一対の噛合チェーンと、該一対の噛合チェーンに取り付けられているとともに駆動用スプロケットにより駆動される一対の噛合チェーンの進退動作に応じて進退駆動される被駆動体と、相互に噛み外れて分岐した一対の噛合チェーンのそれぞれを一対のチェーン収納軌道のそれぞれに沿って出没自在に走行させて収納する一対の噛合チェーン収納ガイドを有するチェーン収納ガイドプレートとを備えた噛合チェーン式進退作動装置であって、
前記一対のチェーン収納軌道のうち少なくとも一方のチェーン収納軌道が、m本(mは任意の自然数)の曲線状チェーン収納軌道のチェーン進入側のそれぞれで前記m本の曲線状チェーン収納軌道をm本の直線状チェーン収納軌道にそれぞれ接続したm個の曲線開始点Sを有し、
前記一対の噛合チェーンを相互に噛み外す噛み外れ位置に近い位置から順序付けされた曲線開始点Sのそれぞれから前記噛み外れ位置までを占めるチェーン収納軌道部分の長さXi(iは一方のチェーン収納軌道にm個存在する曲線開始点Sのうち一対の噛合チェーンを相互に噛み外す噛み外れ位置に近い位置から順序付けされた曲線開始点Sの順序を示す任意の自然数であってm以下の自然数)を前記一対の連結ピンのピンピッチに対応するピッチPで除して算出された複数の剰余Tiが、相互に異なっていることを特徴とする噛合チェーン式進退作動装置。
【請求項2】
前記チェーン収納軌道部分の長さXiおよび剰余Tiが、下記に示す式(1)および(2)によって規定されていることを特徴とする請求項1に記載の噛合チェーン式進退作動装置。
【数1】

【数2】

(ここで、Pは一対の連結ピンのピンピッチに対応するピッチであり、Miはチェーン収納軌道部分の長さXiを被除数とし、ピッチPを除数とする商である。)
【請求項3】
前記少なくとも一方のチェーン収納軌道が、前記m本の曲線状チェーン収納軌道のチェーン退出側のそれぞれで前記m本の曲線状チェーン収納軌道にm本の直線状チェーン収納軌道をそれぞれ接続したm個の曲線終了点Fを有し、
前記噛み外れ位置に近い位置から順序付けされた曲線終了点Fのそれぞれから前記噛み外れ位置までを占めるチェーン収納軌道部分の長さYj(jは一方のチェーン収納軌道にm個存在する曲線終了点Fのうち一対の噛合チェーンを相互に噛み外す噛み外れ位置に近い位置から順序付けされた曲線終了点Fの順序を示す任意の自然数であってm以下の自然数)を前記ピッチPで除して算出された複数の剰余Ujが、相互に異なっていることを特徴とする請求項2に記載の噛合チェーン式進退作動装置。
【請求項4】
前記チェーン収納軌道部分の長さYjおよび剰余Ujが、下記に示す式(3)および(4)によって規定されていることを特徴とする請求項3に記載の噛合チェーン式進退作動装置。
【数3】

【数4】

(ここで、Pは一対の連結ピンのピンピッチに対応するピッチであり、Mjはチェーン収納軌道部分の長さYjを被除数とし、ピッチPを除数とする商である。)
【請求項5】
前記一方のチェーン収納軌道について規定されたチェーン収納軌道部分の長さXi、Yj、および剰余Ti、Ujと、前記一対のチェーン収納軌道のうち他方のチェーン収納軌道について規定されたチェーン収納軌道部分の長さXk、Yl、および剰余Tk、Ulとが、下記に示す式(5)ないし式(12)により規定されていることを特徴とする請求項4に記載の噛合チェーン式進退作動装置。
【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

【数9】

【数10】

【数11】

【数12】

(ここで、Mk、Mlはチェーン収納軌道部分の長さXk、Ylを被除数とし、ピッチPを除数とする商であり、nは任意の自然数であり、k、lは、他方のチェーン収納軌道にn個存在する曲線開始点Sおよび曲線終了点Fのうち一対の噛合チェーンを相互に噛み外す噛み外れ位置に近い位置から順序付けされた曲線開始点Sおよび曲線終了点Fの順番を示す自然数である。)


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−96854(P2012−96854A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243471(P2010−243471)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】