説明

噛合チェーン

【課題】対向配置されて噛合した際に、対向内側に多様なケーブル類を収容可能な大きな空間を形成し、別途の案内部材やカバー部材等を用いることなく円滑にケーブル類をガイドする噛合チェーンを提供すること。
【解決手段】それぞれフック状部121、111を有する外リンクプレート120と内リンクプレート110が連結ピン131によりチェーン長手方向に多数連結された噛合チェーン100において、リンク列Lがチェーン幅方向に3列以上設けられ、リンク列Lの隣り合う2列の少なくとも1対が、チェーン幅方向に間隔をおいて設けられ該間隔には駆動用スプロケット101が係合しないこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種製造分野の製造設備、運輸分野の移送設備、医療福祉分野の介護設備、芸術分野の舞台設備などに用いて被駆動物を設置面に対して平行に進退動させる駆動装置に組み込まれる噛合チェーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、相互に噛み合って一体的に昇降する1対の噛合チェーン、所謂、チャックチェーンを用いて重量物などの被駆動物を昇降移動させる駆動装置がある公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような公知の噛合チェーン500は、図10および図11に示すように、左右1対で離間配置されたフック状部511を有する内リンクプレート510に前後1対のブシュ530を圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置されたフック状部521を有する外リンクプレート520の前後1対のピン孔に圧入嵌合する前後1対の連結ピン531によりチェーン長手方向に多数連結されている。
【0004】
すなわち、それぞれフック状部521、511を有する外リンクプレート520と内リンクプレート510とが連結ピン531によりチェーン長手方向に屈曲可能に多数連結されてリンク列L1、L2を形成し、該2列のリンク列L1、L2がチェーン幅方向に間隔をおいて設けられている。
【0005】
ブシュ530にはローラ532が外嵌されており、対向配置された1対の駆動用スプロケット501と該ローラ532が係合することで、噛合チェーン500は、それぞれ水平方向から垂直方向へ偏向しながら相互に対向する内リンクプレート510のフック状部511同士および外リンクプレート520のフック状部521同士をチェーン長手方向に半ピッチずらした状態で噛み合わせて一体に直線状に自立状態で駆動されるようになっている。
【0006】
また、1対の駆動用スプロケット501外方位置で分離状態のそれぞれの噛合チェーン500は、1対の内リンクプレート510の対向内面でローラ532が摺接するように設けられた案内板502よってその走行軌道が規定されるようになっている。
【特許文献1】特許第3370928号公報(特許請求の範囲、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、公知の噛合チェーン500は、ローラ532が駆動用スプロケット501と係合して駆動力を伝達するため左右1対の2列のリンク列L1、L2の間隔が駆動用スプロケット501の幅以上に広くできず、対向配置され噛合した噛合チェーン500の間隔も1対の駆動用スプロケット501及び両ローラ532が対向して狭くなるため、対向配置され噛合した1対の噛合チェーン500の内側に形成される空間Sが小さく、対向配置され噛合した噛合チェーン500に沿って給電、信号電送、給液、給気などを行う電気ケーブル、光ファイバーケーブル、流体供給用ホースなどの可撓性のケーブルやホースなど(以下、単に「ケーブル類」という)を配置する場合、空間Sにケーブル類を収容することができず、噛合チェーン500とは別のスペースに別の案内部材やカバー部材等を設けてケーブル類を配置しなければならないという問題があった。
【0008】
また、図11に示すように、ローラ532が摺接するように設けられた案内板502が1対の駆動用スプロケット501の対向部まで伸びている場合は、そもそも、上記空間Sにケーブル類を導入することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、本発明が解決しようとする課題、すなわち、本発明の目的は、対向配置されて噛合した際に、対向内側に多様なケーブル類を収容可能な大きな空間を形成し、噛合チェーンに沿ってケーブル類を配置する場合でも別のスペースを必要とせず、別途の案内部材やカバー部材等を用いることなく円滑にケーブル類をガイドする噛合チェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本請求項1に係る発明は、それぞれフック状部を有する外リンクプレートと内リンクプレートとがチェーン長手方向に屈曲可能に多数連結されたリンク列を複数列有するとともに、1対の駆動用スプロケットに対向配置させて偏向しながら相互に対向するフック状部同士を噛み合わせて一体化されるとともに前記1対の駆動用スプロケットにより偏向しながらフック状部同士をそれぞれ噛み外して分離される噛合チェーンにおいて、前記リンク列が、チェーン幅方向に延びる連結ピンを介して3列以上設けられ、前記リンク列の隣り合う2列の少なくとも1対が、チェーン幅方向に間隔をおいて設けられるとともに、該間隔には駆動用スプロケットが係合しないことにより、前記課題を解決するものである。
【0011】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載された噛合チェーンの構成に加えて、前記複数のリンク列の隣り合う2列の少なくとも1対が、両リンク列の内リンクプレート同士を中空のブシュで固定され、外リンクプレート同士を該ブシュに遊嵌される連結ピンで固定され、前記駆動用スプロケットと係合するとともに、前記複数のリンク列の隣り合う2列の他の対が、前記連結ピンがチェーン幅方向に貫通して駆動用スプロケットが係合しない間隔として画定されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0012】
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載された噛合チェーンの構成に加えて、前記駆動用スプロケットが係合しない間隔の連結ピンに、ケーブルガイド部材が設けられていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の噛合チェーンは、それぞれフック状部を有する外リンクプレートと内リンクプレートとがチェーン長手方向に屈曲可能に多数連結されたリンク列を複数列有するとともに、1対の駆動用スプロケットに対向配置させて偏向しながら相互に対向するフック状部同士を噛み合わせて一体化されるとともに前記1対の駆動用スプロケットにより偏向しながらフック状部同士をそれぞれ噛み外して分離されることにより、駆動用スプロケットの回転によって被昇降物の昇降動作等の駆動力の伝達を等速かつ迅速に行うことができるとともに、以下のような格別の効果を奏することができる。
【0014】
すなわち、本請求項1に係る発明の噛合チェーンは、リンク列がチェーン幅方向に延びる連結ピンを介して3列以上設けられ、リンク列の隣り合う2列の少なくとも1対がチェーン幅方向に間隔をおいて設けられるとともに、該間隔には駆動用スプロケットが係合しないことにより、該間隔はチェーン幅方向で駆動用スプロケットの幅に拘束されずに任意の幅で設定可能となるため、空間を大きくしケーブル類を収容可能とすることができ、別途の案内部材やカバー部材等を用いることなく円滑にケーブル類をガイドできるとともに、該間隔には案内板を省略することができるため、当該空間へのケーブル類の導入を妨げることもない。
【0015】
そして、本請求項2に係る発明の噛合チェーンは、請求項1に係る噛合チェーンが奏する効果に加えて、複数のリンク列の隣り合う2列の少なくとも1対が、両リンク列の内リンクプレート同士を中空のブシュで固定され、外リンクプレート同士を該ブシュに遊嵌される連結ピンで固定され、駆動用スプロケットと係合するとともに、複数のリンク列の隣り合う2列の他の対が、連結ピンがチェーン幅方向に貫通して駆動用スプロケットが係合しない間隔として画定されていることにより、該間隔は対向方向でローラおよびブシュの厚さ分の空間が大きくなるため、ケーブル類を収容可能な空間をさらに大きくすることができ、別途の案内部材やカバー部材等を用いることなく円滑にケーブル類をガイドできるとともに、該間隔には案内板を省略することができるため、当該空間へのケーブル類の導入を妨げることもない。
【0016】
また、本請求項3に係る発明の噛合チェーンは、請求項1または請求項2に係る噛合チェーンが奏する効果に加えて、駆動用スプロケットが係合しない間隔の連結ピンに、ケーブルガイド部材が設けられていることにより、収容されたケーブル類が噛合チェーンの他の構成部材と衝突することが防止されるため、噛合チェーンやケーブル類の損傷や破損を防止することができ、より円滑にケーブル類をガイドできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の噛合チェーンは、それぞれフック状部を有する外リンクプレートと内リンクプレートとがチェーン長手方向に屈曲可能に多数連結されたリンク列を複数列有するとともに、1対の駆動用スプロケットに対向配置させて偏向しながら相互に対向するフック状部同士を噛み合わせて一体化されるとともに1対の駆動用スプロケットにより偏向しながらフック状部同士をそれぞれ噛み外して分離される噛合チェーンにおいて、リンク列が、チェーン幅方向に延びる共通の連結ピンで3列以上設けられ、リンク列の隣り合う2列の少なくとも1対が、チェーン幅方向に間隔をおいて設けられるとともに、該間隔には駆動用スプロケットが係合しないことにより、対向配置されて噛合した際に、対向内側に多様なケーブル類を収容可能な大きな空間が形成され、噛合チェーンに沿ってケーブル類を配置する場合でも別のスペースを必要とせず、別途の案内部材やカバー部材等を用いることなく円滑にケーブル類をガイドすることができるという効果を発揮するものであれば、その具体的な実施態様は如何なるものであっても何ら構わない。
【0018】
例えば、本発明の噛合チェーンで用いる内リンクプレートおよび外リンクプレートのフック状部の具体的な形状については、相互に対向する同種のプレート同士を相互に噛み合せて水平方向から垂直方向へ偏向しながら一体に自立状態で上昇するとともに垂直方向から水平方向へ偏向しながら相互に噛み外して分岐するものであれば如何なる形状を呈するものであっても良い。
【0019】
また、本発明の噛合チェーンにおいてチェーン幅方向に配置するリンク列の数は、必要とする駆動力に応じていかなる列数でも良い。
【0020】
そして、本発明の噛合チェーンが組み込まれる噛合チェーン式駆動装置は、床面に設置据え置き設置形態となるように設置されるものであっても、天井に吊り下げ設置形態となるように設置されるものであっても良く、さらには、垂直壁面に片持ち支持形態となるように設置されるものであっても良い。
【実施例】
【0021】
以下に、本発明の実施例である噛合チェーンについて、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例である噛合チェーンを用いた使用態様図であり、図2は、図1から昇降テーブルとパンタアームを除いた状態の斜視図であり、図3は、噛合チェーンの一部拡大図であり、図4は、本発明の第1実施例である噛合チェーンの一部断面正面図であり、図5は、図4の噛合チェーンの噛合時の説明図であり、図6は、本発明の第2実施例である噛合チェーンの噛合時の説明図であり、図7は、本発明の第3実施例である噛合チェーンの噛合時の説明図であり、図8は、本発明の第4実施例である噛合チェーンの斜視図であり、図9は、本発明の第4実施例である噛合チェーンの噛合時の説明図である。
【0022】
まず、本発明の一実施例である噛合チェーン100は、図1に示すように、重量物などの被駆動物(図示しない)を搭載する昇降テーブルTを設置面に対して平行に昇降させるために、作業床面に据え置き状態で設置された噛合チェーン式駆動装置Eに組み込まれて使用されるものである。
【0023】
前述した噛合チェーン式駆動装置Eは、図1および図2に示すように、前述した昇降テーブルTが平行に昇降する設置面に据え付けたベースプレートPと、このベースプレートPに対して平行に併置された1対の回転軸を中心に同一面内で相互に対向して反対方向に正逆回転する1対の駆動用スプロケット101と、これらの1対の駆動用スプロケット101と噛み外れることによって昇降テーブルTを昇降する1対の噛合チェーン100と、この噛合チェーン100の上端に固着されて一体に昇降する前述した昇降テーブルTと、1対の駆動用スプロケット101を駆動する駆動モータMと、1対の噛合チェーン100の走行経路を規定する案内溝103を形成する案内板102とを基本的な装置構成として備えている。
【0024】
なお、図1および図2に示す符号Dは、駆動モータMの出力軸側に同軸配置した1対の駆動側スプロケットであり、符号Cは、駆動側スプロケットDから1対の駆動用スプロケット101側へ動力伝達するためのローラチェーンからなる1対の動力伝達チェーンであり、符号Gは、1対の動力伝達チェーンCから一方向の回転を変速するとともに1対の駆動用スプロケット101へ相互に反対方向に正逆回転するように動力伝達するための同期ギア群であり、符号Aは、昇降テーブルTと設置面側のベースプレートPとの間に設置されたX字状のパンタアームと称するインナーアームA1とアウターアームA2とからなる上下2段連結形態の昇降補助ガイド手段であり、符号Rは、昇降動作に応じたインナーアームA1の下端の往復動を摺動案内するスライドレールであり、符号Bは、相互に噛み外れて分岐した1対の噛合チェーン100の一方を収納する巻き取り型のチェーン収納ボックスである。
【0025】
噛合チェーン式駆動装置Eにおいて1対で用いられる本発明の第1実施例の噛合チェーン100は、図2乃至図5に示すように、それぞれフック状部121、111を有する外リンクプレート120と内リンクプレート110とがチェーン長手方向に屈曲可能に多数連結されてリンク列L1、L2、L3、L4を形成し、該4列のリンク列L1、L2、L3、L4がチェーン幅方向に間隔をおいて設けられている。
【0026】
リンク列L1、L2およびリンク列L3、L4の対は、それぞれ、左右1対の離間配置されたリンク列のフック状部111を有する内リンクプレート110に前後1対のブシュ130を圧入嵌合してなる内リンクユニットが、チェーン幅方向のその外側に配置されたフック状部121を有する外リンクプレート120の前後1対のピン孔に圧入嵌合する前後1対の連結ピン131によりチェーン長手方向に多数連結され、それぞれのブシュ130にローラ132が外嵌されたローラチェーン部105を形成している。
【0027】
そして、噛合チェーン100のローラチェーン部105は、対向配置された1対の駆動用スプロケット101がローラ132に係合することで、それぞれ水平方向から垂直方向へ偏向しながら相互に対向する内リンクプレート110のフック状部111同士および外リンクプレート120のフック状部121同士をチェーン長手方向に半ピッチずらした状態で噛み合わせて一体に直線状に自立状態で駆動されるようになっている。
【0028】
一方、リンク列L2、L3の間は連結ピン131のみが存在してチェーン幅方向に所定の間隔を確保されており、噛合チェーン100が対向配置され噛合した時に、ケーブル類104を収容する空間Sが画定される。
【0029】
該空間Sを確定するそれぞれの噛合チェーン100のリンク列L2、L3の間の間隔には、駆動スプロケット101は係合しないため、画定された空間Sが全てケーブル類104の収容空間として使用できるとともに、該間隔には案内板102も存在しないため、噛合チェーン100が噛合う部分からケーブル類104を導入することができる。
【0030】
このことで、噛合チェーン100に沿ってケーブル類104を配置する場合でも別のスペースを必要とせず、別途の案内部材やカバー部材等を用いることなく円滑にケーブル類104をガイドすることができる。
【0031】
なお、リンク列L2、L3の間の間隔は、収容するケーブル類104の太さや数に応じて適宜定めることができる。
また、リンク列L1、L2およびリンク列L3、L4で構成される駆動スプロケット101が係合するローラチェーン部105の部分は、さらに多数の内リンクプレート110および外リンクプレート120をチェーン幅方向に交互に密に配置し、内リンクプレート110および外リンクプレート120のフック状部111、121の背面側に駆動スプロケット101が係合する、いわゆるサイレントチェーンの形式としても良い。
【0032】
本発明の第2実施例の噛合チェーン200は、図6に示すように、それぞれフック状部121、111を有する外リンクプレート120と内リンクプレート110とがチェーン長手方向に屈曲可能に多数連結されてリンク列L1、L2、L3、L4、L5、L6を形成し、該6列のリンク列L1、L2、L3、L4、L5、L6がチェーン幅方向に間隔をおいて設けられている。
【0033】
リンク列L1、L2、リンク列L3、L4およびリンク列L5、L6の対は、それぞれ、左右1対の離間配置されたリンク列のフック状部111を有する内リンクプレート110に前後1対のブシュ130を圧入嵌合してなる内リンクユニットが、チェーン幅方向のその外側に配置されたフック状部121を有する外リンクプレート120の前後1対のピン孔に圧入嵌合する前後1対の連結ピン131によりチェーン長手方向に多数連結され、それぞれのブシュ130にローラ132が外嵌されたローラチェーン部105を形成している。
【0034】
そして、噛合チェーン200のローラチェーン部105は、対向配置された1対の駆動用スプロケット101がローラ132に係合することで、それぞれ水平方向から垂直方向へ偏向しながら相互に対向する内リンクプレート110のフック状部111同士および外リンクプレート120のフック状部121同士をチェーン長手方向に半ピッチずらした状態で噛み合わせて一体に直線状に自立状態で駆動されるようになっている。
【0035】
一方、リンク列L2、L3およびリンク列L4、L5の間は連結ピン131のみが存在してチェーン幅方向に所定の間隔を確保されており、噛合チェーン200が対向配置され噛合した時に、それぞれケーブル類104を収容する空間S1、S2が画定される。
【0036】
該空間S1、S2を確定するそれぞれの噛合チェーン200のリンク列L2、L3およびリンク列L4、L5の間の間隔には、駆動スプロケット101は係合しないため、画定された空間S1、S2が全てケーブル類104の収容空間として使用できるとともに、該間隔には案内板102も存在しないため、噛合チェーン200が噛合う部分からケーブル類104を導入することができる。
【0037】
このことで、噛合チェーン200に沿ってケーブル類104を配置する場合でも別のスペースを必要とせず、別途の案内部材やカバー部材等を用いることなく円滑にケーブル類104をガイドすることができるとともに、空間を2つに区分することができるため、ケーブル同士が接触したり絡まったりすると支障のある複数のケーブル類104を分けて収容することができる。
【0038】
なお、リンク列L2、L3およびリンク列L4、L5の間の間隔は、収容するケーブル類104の太さや数に応じて適宜定めることができる。
また、リンク列L1、L2、リンク列L3、L4およびリンク列L5、L6で構成される駆動スプロケット101が係合するローラチェーン部105の部分は、さらに多数の内リンクプレート110および外リンクプレート120をチェーン幅方向に交互に密に配置し、内リンクプレート110および外リンクプレート120のフック状部111、121の背面側に駆動スプロケット101が係合する、いわゆるサイレントチェーンの形式としても良い。
【0039】
本発明の第3実施例の噛合チェーン300は、図7に示すように、それぞれフック状部121、111を有する外リンクプレート120と内リンクプレート110とがチェーン長手方向に屈曲可能に多数連結されてリンク列L1、L2、L3、L4、L5を形成し、該6列のリンク列L1、L2、L3、L4、L5がチェーン幅方向に間隔をおいて設けられている。
【0040】
リンク列L1、L2およびリンク列L4、L5の対は、それぞれ、左右1対の離間配置されたリンク列のフック状部111を有する内リンクプレート110に前後1対のブシュ130を圧入嵌合してなる内リンクユニットが、チェーン幅方向のその外側に配置されたフック状部121を有する外リンクプレート120の前後1対のピン孔に圧入嵌合する前後1対の連結ピン131によりチェーン長手方向に多数連結され、それぞれのブシュ130にローラ132が外嵌されたローラチェーン部105を形成している。
【0041】
そして、噛合チェーン300のローラチェーン部105は、対向配置された1対の駆動用スプロケット101がローラ132に係合することで、それぞれ水平方向から垂直方向へ偏向しながら相互に対向する内リンクプレート110のフック状部111同士および外リンクプレート120のフック状部121同士をチェーン長手方向に半ピッチずらした状態で噛み合わせて一体に直線状に自立状態で駆動されるようになっている。
【0042】
一方、リンク列L2、L3およびリンク列L3、L4の間は連結ピン131のみが存在してチェーン幅方向に所定の間隔を確保されており、噛合チェーン300が対向配置され噛合した時に、それぞれケーブル類104を収容する空間S1、S2が画定される。
【0043】
該空間S1、S2を確定するそれぞれの噛合チェーン300のリンク列L2、L3およびリンク列L3、L4の間の間隔には、駆動スプロケット101は係合しないため、画定された空間S1、S2が全てケーブル類104の収容空間として使用できるとともに、該間隔には案内板102も存在しないため、噛合チェーン300が噛合う部分からケーブル類104を導入することができる。
【0044】
このことで、噛合チェーン300に沿ってケーブル類104を配置する場合でも別のスペースを必要とせず、別途の案内部材やカバー部材等を用いることなく円滑にケーブル類104をガイドすることができるとともに、空間を2つに区分することができるため、ケーブル同士が接触したり絡まったりすると支障のある複数のケーブル類104を分けて収容することができ、さらに、2つの空間S1、S2はリンク列L3のみで分割されているため、噛合チェーン300の幅が狭くても2つの収容空間を得ることができる。
【0045】
なお、リンク列L2、L3およびリンク列L3、L4の間の間隔は、収容するケーブル類104の太さや数に応じて適宜定めることができる。
また、リンク列L1、L2およびリンク列L4、L5で構成される駆動スプロケット101が係合するローラチェーン部105の部分は、さらに多数の内リンクプレート110および外リンクプレート120をチェーン幅方向に交互に密に配置し、内リンクプレート110および外リンクプレート120のフック状部111、121の背面側に駆動スプロケット101が係合する、いわゆるサイレントチェーンの形式としても良い。
【0046】
本発明の第4実施例の噛合チェーン400は、図8および図9に示すように、それぞれフック状部121、111を有する外リンクプレート120と内リンクプレート110とがチェーン長手方向に屈曲可能に多数連結されてリンク列L1、L2、L3、L4を形成し、該4列のリンク列L1、L2、L3、L4がチェーン幅方向に間隔をおいて設けられている。
【0047】
リンク列L1、L2およびリンク列L3、L4の対は、それぞれ、左右1対の離間配置されたリンク列のフック状部111を有する内リンクプレート110に前後1対のブシュ130を圧入嵌合してなる内リンクユニットが、チェーン幅方向のその外側に配置されたフック状部121を有する外リンクプレート120の前後1対のピン孔に圧入嵌合する前後1対の連結ピン131によりチェーン長手方向に多数連結され、それぞれのブシュ130にローラ132が外嵌されたローラチェーン部105を形成している。
【0048】
そして、噛合チェーン400のローラチェーン部105は、対向配置された1対の駆動用スプロケット101がローラ132に係合することで、それぞれ水平方向から垂直方向へ偏向しながら相互に対向する内リンクプレート110のフック状部111同士および外リンクプレート120のフック状部121同士をチェーン長手方向に半ピッチずらした状態で噛み合わせて一体に直線状に自立状態で駆動されるようになっている。
【0049】
一方、リンク列L2、L3の間は連結ピン131が存在してチェーン幅方向に所定の間隔を確保されており、噛合チェーン400が対向配置され噛合した時に、ケーブル類104を収容する空間Sが画定されるとともに、ケーブル類104を固定するためのケーブルガイド部材133が連結ピン131に嵌合するように設けられている。
【0050】
該空間Sを確定するそれぞれの噛合チェーン400のリンク列L2、L3の間の間隔には、駆動スプロケット101は係合しないため、画定された空間Sが全てケーブル類104の収容空間として使用できるとともに、該間隔には案内板102も存在しないため、噛合チェーン100が噛合う部分からケーブル類104を導入することができる。
【0051】
このことで、噛合チェーン400に沿ってケーブル類104を配置する場合でも別のスペースを必要とせず、別途の案内部材やカバー部材等を用いることなく円滑にケーブル類104をガイドすることができるとともに、ケーブルガイド部材133がケーブル類104を挟持して収容されたケーブル類104が噛合チェーン400の他の構成部材と衝突することを防止するため、噛合チェーン400やケーブル類104の損傷や破損を防止することができる。
【0052】
なお、リンク列L2、L3の間の間隔及びケーブルガイド部材133の形状や材質は、収容するケーブル類104の太さ、数、材質等に応じて適宜定めることができる。
また、リンク列L1、L2およびリンク列L3、L4で構成される駆動スプロケット101が係合するローラチェーン部105の部分は、さらに多数の内リンクプレート110および外リンクプレート120をチェーン幅方向に交互に密に配置し、内リンクプレート110および外リンクプレート120のフック状部111、121の背面側に駆動スプロケット101が係合する、いわゆるサイレントチェーンの形式としても良い。
【0053】
以上述べたように、本発明の噛合チェーンによれば、対向配置されて噛合した際に、対向内側に多様なケーブル類を収容可能な大きな空間が形成され、噛合チェーンに沿ってケーブル類を配置する場合でも別のスペースを必要とせず、別途の案内部材やカバー部材等を用いることなく円滑にケーブル類をガイドすることができるなど、その効果は甚大である。
【0054】
なお、各実施例におけるローラチェーン部105は、ローラ132を省略して駆動用スプロケットが直接ブシュ130に係合する、いわゆる、ブシュチェーンの形態としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例である噛合チェーンを用いた使用態様図。
【図2】図1から昇降テーブルとパンタアームを除いた状態の斜視図。
【図3】噛合チェーンの一部拡大図。
【図4】本発明の第1実施例である噛合チェーンの一部断面正面図。
【図5】図4の噛合チェーンの噛合時の説明図。
【図6】本発明の第2実施例である噛合チェーンの噛合時の説明図。
【図7】本発明の第3実施例である噛合チェーンの噛合時の説明図。
【図8】本発明の第4実施例である噛合チェーンの斜視図。
【図9】本発明の第4実施例である噛合チェーンの噛合時の説明図。
【図10】従来の噛合チェーンの一部断面平面図。
【図11】従来の噛合チェーンと駆動スプロケットの噛合の説明図。
【符号の説明】
【0056】
100、500 ・・・噛合チェーン
200、300 ・・・噛合チェーン
400 ・・・噛合チェーン
101、501 ・・・駆動用スプロケット
102 ・・・案内板
103 ・・・案内溝
104 ・・・ケーブル類
105 ・・・ローラチェーン
110、510 ・・・内リンクプレート
111、511 ・・・フック状部
120、520 ・・・外リンクプレート
121、521 ・・・フック状部
130、530 ・・・ブシュ
131、531 ・・・連結ピン
132、532 ・・・ローラ
133 ・・・ケーブルガイド部材
E ・・・噛合チェーン式昇降装置
T ・・・昇降テーブル
P ・・・ベースプレート
M ・・・駆動モータ
D ・・・駆動側スプロケット
C ・・・動力伝達チェーン
G ・・・同期ギア群
A ・・・昇降補助ガイド手段
A1 ・・・インナーアーム
A2 ・・・アウターアーム
R ・・・スライドレール
B ・・・チェーン収納ボックス
L ・・・リンク列
S ・・・空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれフック状部を有する外リンクプレートと内リンクプレートとがチェーン長手方向に屈曲可能に多数連結されたリンク列を複数列有するとともに、1対の駆動用スプロケットに対向配置させて偏向しながら相互に対向するフック状部同士を噛み合わせて一体化されるとともに前記1対の駆動用スプロケットにより偏向しながらフック状部同士をそれぞれ噛み外して分離される噛合チェーンにおいて、
前記リンク列が、チェーン幅方向に延びる連結ピンを介して3列以上設けられ、
前記リンク列の隣り合う2列の少なくとも1対が、チェーン幅方向に間隔をおいて設けられるとともに、該間隔には駆動用スプロケットが係合しないことを特徴とする噛合チェーン。
【請求項2】
前記複数のリンク列の隣り合う2列の少なくとも1対が、両リンク列の内リンクプレート同士を中空のブシュで固定され、外リンクプレート同士を該ブシュに遊嵌される連結ピンで固定され、前記駆動用スプロケットと係合するとともに、
前記複数のリンク列の隣り合う2列の他の対が、前記連結ピンがチェーン幅方向に貫通して駆動用スプロケットが係合しない間隔として画定されていることを特徴とする請求項1に記載の噛合チェーン。
【請求項3】
前記駆動用スプロケットが係合しない間隔の連結ピンに、ケーブルガイド部材が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の噛合チェーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−127396(P2010−127396A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303123(P2008−303123)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)