説明

噴射ヘッド駆動回路、噴射ヘッド駆動方法

【課題】電力効率が高く、小形化の可能な噴射ヘッドの駆動技術を提供する。
【解決手段】異なる電圧値の電力を発生する複数の電源部と、各電源部に対する負帰還制御部を設け、各負帰還制御部に目標電圧波形を入力して負帰還制御を行いながら、電源部からの電力を噴射ヘッドに供給可能に構成しておく。そして、これら複数の電源部(および負帰還制御部)の中から、印加する電圧値または目標電圧波形の電圧値に基づいて一の電源部(および負帰還制御部)を選択して噴射ヘッドに接続するとともに、残余の電源部(および負帰還制御部)は噴射ヘッドから切断する。こうすれば、印加すべき駆動電圧に近い電圧値を発生する電源部を用いて噴射ヘッドを駆動することができ、加えて噴射ヘッドから電力を回収することもできるので、電力消費を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な噴射ノズルが設けられた噴射ヘッドに駆動電圧波形を供給することによって、該噴射ヘッドから流体を吐出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるインクジェットプリンタでは、微細な噴射ノズルから、正確な分量のインクを正確な位置に吐出することによって、高画質の画像を印刷することが可能であり、今日では広く使用されている。また、この技術を利用して、インクの代わりに各種の流体を基板に向けて吐出してやれば、電極や、センサ、バイオチップなどの微細な各種部品を製造することも可能と考えられる。
【0003】
このような技術では、インクなどの流体を、正確な位置に、正確な分量だけ吐出することが可能なように、専用の噴射ヘッドが用いられる。また、噴射ヘッドを駆動する方式には幾つかの方式が存在するが、代表的なものとしては、噴射ヘッドの内部に設けた小さな流体室をアクチュエータで変形させて、その時の流体室の容積変化を利用して、噴射ノズルから流体室内の流体を吐出する方式が知られている。アクチュエータとしては、応答性が高くしかも強い力を発生させることが可能なことから、圧電素子が広く使用されている。
【0004】
また、画質を維持したまま迅速に画像を印刷するためには、吐出するインクの分量および位置精度を維持したまま、高い繰り返し周波数でインクを吐出する必要がある。そこで、圧電素子などのアクチュエータに印加する駆動電圧波形を、単純な矩形波状の駆動波形ではなく、電圧の立ち上がり部分や立ち下がり部分をスロープ状とした台形波状の駆動電圧波形とすることも行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−178907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、高い繰り返し周波数で正確な分量の流体を吐出するために、台形波状の駆動波形を印加しようとすると、次のような問題が生じる。まず、印加する駆動電圧波形を発生させる段階では、波形の立ち上がりまたは立ち下がりの部分でスロープ状に変化する電圧波形を生成するために、大きな電力損失が発生するという問題がある。また、圧電素子などのように、アクチュエータが容量成分を有している場合には、噴射ヘッド側でも大きな電力損失が発生するので、益々、電力効率が低下するという問題がある。更に加えて、損失した電力は熱に変換されるから、駆動電圧波形の発生回路および噴射ヘッドで何らかの放熱対策を講じなければならず、装置が大型化してしまうという問題も引き起こす。
【0007】
この発明は、従来の技術における上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、電力効率が高く、装置を小形化することが可能な噴射ヘッドの駆動技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の噴射ヘッド駆動回路は次の構成を採用した。すなわち、
噴射ノズルから流体を噴射させるために、該噴射ノズルが設けられた噴射ヘッドに対して駆動電圧波形を供給する噴射ヘッド駆動回路であって、
前記噴射ヘッドに供給するべき目標電圧波形として、電圧値が時間の時間の経過とともに増加する電圧漸増部と、該電圧値が維持される電圧維持部と、該電圧値が時間の経過とともに減少する電圧漸減部とを少なくとも含んだ電圧波形を出力する目標電圧波形出力部と、
互いに異なる電圧値の電力を発生する複数の電源部と、
複数の前記電源部と前記噴射ヘッドとの間に該電源部毎に設けられて各電源部からの電力を該噴射ヘッドに供給するとともに、該噴射ヘッドに印加される電圧値が前記目標電圧波形と一致するように、該電圧値の負帰還制御を行う複数の負帰還制御部と、
前記噴射ヘッドに印加されている電圧値または前記目標電圧波形の電圧値に基づいて、複数の前記電源部の中から一の該電源部を選択し、選択した該電源部を該噴射ヘッドに接続するとともに残余の電源部については該噴射ヘッドから切断する電源接続部と
を備えることを要旨とする。
【0009】
また、上記の噴射ヘッド駆動回路に対応する本発明の噴射ヘッド駆動方法は、
噴射ノズルから流体を噴射させるために、該噴射ノズルが設けられた噴射ヘッドに対して駆動電圧波形を供給する噴射ヘッド駆動方法であって、
前記噴射ヘッドに供給するべき目標電圧波形として、電圧値が時間の時間の経過とともに増加する電圧漸増部と、該電圧値が維持される電圧維持部と、該電圧値が時間の経過とともに減少する電圧漸減部とを少なくとも含んだ電圧波形を出力する工程と、
複数の電源部から互いに異なる電圧値の電力を発生させる工程と、
前記噴射ヘッドに印加されている電圧値または前記目標電圧波形の電圧値に基づいて、複数の電源部の中から一の電源部を選択する工程と、
選択された前記電源部からの電力を受け取って前記噴射ヘッドに供給するとともに、該噴射ヘッドに印加される電圧値が前記目標電圧波形と一致するように、該電圧値の負帰還制御を行う工程と
を備えることを要旨とする。
【0010】
このような本発明の噴射ヘッド駆動回路および噴射ヘッド駆動方法においては、噴射ヘッドに供給するべき目標電圧波形として、電圧値が時間の時間の経過とともに増加する電圧漸増部と、該電圧値が維持される電圧維持部と、該電圧値が時間の経過とともに減少する電圧漸減部とを少なくとも含んだ電圧波形を予め記憶しておく。また、互いに異なる電圧値の電力を発生する電源部を複数設けるとともに、それぞれの電源部に対して負帰還制御部を設け、各負帰還制御部に目標電圧波形を入力する。その結果、各負帰還制御部では、目標電圧波形に従って負帰還制御を行いながら、それぞれの電源部から受け取った電力を噴射ヘッドに供給することが可能となる。そして、このように構成された複数の電源部(および負帰還制御部)の中から、噴射ヘッドに印加されている電圧値または目標電圧波形の電圧値に基づいて一の電源部(および負帰還制御部)を選択して噴射ヘッドに接続するとともに、残余の電源部(および負帰還制御部)については噴射ヘッドから切断する。
【0011】
高い繰り返し周波数で正確な分量の流体を吐出しようとして、台形波状の駆動電圧波形を噴射ヘッドに印加すると、駆動電圧波形を発生させる回路側、および噴射ヘッド側で大きな電力損失が発生し、更に、電力損失にともなって生じる放熱対策の結果として、装置が大型化してしまう。これに対して、異なる電圧値の電力を発生する複数の電源部を切り換えながら、噴射ヘッドを駆動すれば、電源部で発生する電圧値と噴射ヘッドに印加する電圧値との電位差を小さくすることができるので、噴射ヘッドを駆動する際の電力消費を抑制することが可能となる。
【0012】
また、上述した本発明の噴射ヘッド駆動回路においては、電源部として、外部から供給された電力を蓄えておくことが可能な電源部を使用するとともに、次のようにして噴射ヘッドを駆動することとしても良い。まず、噴射ヘッドに印加されている電圧値または前記目標電圧波形の電圧値を検出する。そして、検出した電圧値よりも高い電圧値を発生する電源部と、低い電圧値を発生する電源部とを選択し、これら選択した電源部を噴射ヘッドに接続するとともに、残余の電源部は噴射ヘッドから切断して、噴射ヘッドを駆動するようにしても良い。
【0013】
こうすれば、噴射ヘッドに印加されている電圧値が目標電圧波形よりも高い場合には、噴射ヘッドに印加されている電力を出力電圧値の低い電源部で回収することによって、速やかに電圧値を目標電圧波形に近づけることができる。逆に、噴射ヘッドに印加されている電圧値が目標電圧波形よりも低い場合には、出力電圧値の高い電源部から噴射ヘッドに電力を供給することによって、速やかに電圧値を目標電圧波形に近づけることができる。このため、正確な駆動電圧波形を用いて噴射ヘッドを駆動することが可能となる。
【0014】
また、上述した本発明の噴射ヘッド駆動回路においては、次のようにして噴射ヘッドを駆動しても良い。まず、電源部として、外部から供給された電力を蓄えておくことが可能な電源部を採用する。また、電源部から見て電源接続部よりも下流側には、外部から供給された電力を蓄えておくことが可能な負荷を、噴射ヘッドと並列に接続しておく。そして、噴射ヘッドに印加されている電圧値または目標電圧波形の電圧値に基づいて、噴射ヘッドに接続する電源部を選択すると、選択した電源部を噴射ヘッドおよび負荷に接続するとともに、他の電源部は、噴射ヘッドおよび負荷から切断することとしても良い。
【0015】
噴射ヘッドには複数の噴射ノズルが設けられており、全ての噴射ノズルが同時に駆動される場合もあれば、ごく一部の噴射ノズルしか駆動されない場合、あるいは全く駆動されない場合も起こり得る。このことから、噴射ヘッドに駆動電圧波形を供給する駆動回路の作動環境は、噴射ヘッドの使用状況に応じて大きく変動する。そして、作動環境の変動による影響を受けることなく、安定した波形の駆動電圧波形を供給可能とするためには、駆動回路側の能力に十分な余力を確保しておく必要があり、その結果として、駆動回路の大型化を招くことになる。これに対して、外部からの電力を蓄えておくことが可能な負荷を、噴射ヘッドと並列に接続しておけば、噴射ヘッドの使用状況が変動しても、駆動電圧波形を供給する駆動回路の作動環境が大きく変動することがない。このため、駆動回路に余分な能力を確保する必要が無くなるので、駆動回路を小形化することが可能となる。
【0016】
尚、噴射ヘッドに対して並列に接続される負荷の容量を、噴射ヘッドの使用状況に応じて変更可能としても良い。例えば、駆動する噴射ノズルの数が少なくなるほど、負荷の容量を増加させ、逆に駆動する噴射ノズルの数が多くなるほど、負荷の容量を減少させるようにしても良い。このように、噴射ヘッドの負荷容量の変動を打ち消すように、負荷の容量を変動させれば、駆動回路にとっての負荷の変動を抑制することができる。その結果、駆動回路を小形化しながら、安定した駆動電圧波形を用いて噴射ヘッドを駆動することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例の噴射ヘッド駆動回路の大まかな構成を示した説明図である。
【図2】噴射ヘッドに供給される駆動電圧波形を例示した説明図である。
【図3】動作電位差の抑制効果のみを利用した第1実施例の噴射ヘッド駆動回路の構成を例示した説明図である。
【図4】第1実施例の噴射ヘッド駆動回路が負荷を駆動する動作を示した説明図である。
【図5】単一の電源と単一の負帰還回路を用いて負荷を駆動する比較のための噴射ヘッド駆動回路を例示した説明図である。
【図6】第1実施例の噴射ヘッド駆動回路において動作電位差を抑制することで電力消費が抑制される理由を示した説明図である。
【図7】電圧値が正負に変化する駆動電圧を負荷に印加することの可能な噴射ヘッド駆動回路を例示した説明図である。
【図8】動作電位差の抑制に加えて電力回収を行う第2実施例の噴射ヘッド駆動回路の構成を例示した説明図である。
【図9】第2実施例の噴射ヘッド駆動回路が容量性の負荷を駆動する動作を示した説明図である。
【図10】第2実施例の噴射ヘッド駆動回路において動作電位差の抑制に加えて電力回収を行うことで電力消費が抑制される理由を示した説明図である。
【図11】第1の変形例の噴射ヘッド駆動回路100を用いて噴射ヘッド50を駆動する様子を示した説明図である。
【図12】第2の変形例の噴射ヘッド駆動回路を例示した説明図である。
【図13】第3の変形例の噴射ヘッド駆動回路を例示した説明図である。
【図14】第4の変形例の噴射ヘッド駆動回路100を用いて噴射ヘッド50を駆動する様子を示した説明図である。
【図15】第5の変形例の噴射ヘッド駆動回路を例示した説明図である。
【図16】第6の変形例の噴射ヘッド駆動回路を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.実施例の概要:
B.第1実施例(動作電位差抑制による効果を利用する実施例):
B−1.噴射ヘッド駆動回路の構成:
B−2.噴射ヘッド駆動回路の動作:
C.第2実施例(動作電位差抑制および電力回収による効果を利用する実施例):
C−1.噴射ヘッド駆動回路の構成:
C−2.噴射ヘッド駆動回路の動作:
D.変形例:
D−1.第1の変形例:
D−2.第2の変形例:
D−3.第3の変形例:
D−4.第4の変形例:
D−5.第5の変形例:
D−6.第6の変形例:
【0019】
A.実施例の概要 :
本願発明の噴射ヘッド駆動回路には、種々の形態の実施例を考えることが可能であり、各実施例について説明するが、理解の便宜を考慮して、先ず始めに、各実施例に共通する概要について簡単に説明しておく。
【0020】
図1は、インクジェットプリンタの噴射ヘッドを駆動する様子を概念的に示した説明図である。周知のようにインクジェットプリンタには、インク滴を吐出する噴射ヘッド50が搭載されている。また、噴射ヘッド50は、走査ベルト62を介して走査モータ60に接続されている。そして、走査モータ60を駆動して、噴射ヘッド50を印刷媒体(印刷用紙など)に対して相対的に移動させながら、噴射ヘッド50からインク滴を吐出することによって、印刷媒体上に画像を印刷することが可能となっている。
【0021】
図1には、噴射ヘッド50の内部構造も概念的に示されている。図示されるように、噴射ヘッド50には、インク滴を吐出する複数の噴射ノズルが設けられ、噴射ノズル毎にインク室が設けられている。また、各インク室および図示しない圧電素子が設けられている。インク室にインクを供給した状態で圧電素子に電圧を印加すると、圧電素子によってインク室が変形し、その時の容積減少によって、インク室内のインクを噴射ノズルから吐出させることが可能となる。
【0022】
また、前述したように、小さなインク滴を高い繰り返し周波数で、しかも同じ大きさで安定して吐出可能とするために、各圧電素子に印加される電圧は、後述する特別な波形の駆動電圧波形が用いられる。この駆動電圧波形は、後述する噴射ヘッド駆動回路100によって生成されて、トランスミッションゲートを介して、各噴射ノズルの圧電素子に供給される。トランスミッションゲートにはノズル選択回路が接続されており、ノズル選択回路でトランスミッションゲートがON状態に設定されると、そのトランスミッションゲートでは、噴射ヘッド駆動回路100からの駆動電圧波形が通過して、圧電素子に供給される。ノズル選択回路には、いわゆるプリンタドライバが接続されている。プリンタドライバは、印刷しようとする画像の画像データを受け取ると、画像データに対して各種の画像処理を施すことによって、何れの画素にインクドットを形成すれば良いかを判断する。そして、その判断結果に基づいてノズル選択データを生成した後、ノズル選択回路に出力する。ノズル選択回路では、受け取ったノズル選択データに従ってトランスミッションゲートをON状態あるいはOFF状態に切り換える。その結果、ON状態に設定されたトランスミッションゲートの噴射ノズルのみが駆動されてインク滴を吐出することにより、印刷媒体上の画像が印刷されるようになっている。
【0023】
図2は、噴射ノズルを駆動するための駆動電圧波形を例示した説明図である。図示された駆動電圧波形では、波形の前半部分と後半部分とで、1つずつ、合計では2つのインク滴を吐出することが可能となっている。従って、波形の前半部分あるいは後半部分のみを、トランスミッションゲートを通過させて圧電素子に供給すれば、1つのインク滴が吐出され、また、波形全体を通過させて圧電素子に供給すれば、2つのインク滴が吐出される。そして、1つのインク滴を吐出した場合には、印刷媒体上には小さなインクドットが形成され、2つのインク滴を吐出した場合には、大きなインクドットが形成される。このようにして、異なる大きさのインクドットを形成することが可能となっている。
【0024】
また、駆動電圧波形は、詳細には、電圧値が時間の経過とともに少しずつ増加していく電圧漸増部と、電圧値が一定値に維持されている電圧維持部と、時間の経過とともに少しずつ減少していく電圧漸減部から構成されている。尚、駆動電圧波形は、これらのみから構成された波形に限られるものではなく、電圧値がステップ状に変化する部分を含んでいても良い。ここで、電圧漸増部では噴射ヘッド50に印加する電圧値が次第に増加しており、このことは、噴射ヘッド50に電力が供給されていることを示している。また、このとき投入される電力は、流入する電流値および電位差(電力を供給する電源の電圧と噴射ヘッド50の電圧との電圧差。以降、この電位差を、本明細書中では「動作電位差」と呼ぶ)に比例する。一方、電圧漸減部では噴射ヘッド50に印加する電圧値が次第に減少しており、このことは、噴射ヘッド50から電力が捨てられていることを示している。従って、このような駆動電圧波形を発生させようとすると、駆動回路側で大きな電力を消費する。そこで、できるだけ効率よく駆動波形を発生させることが望まれる。
【0025】
また、噴射ヘッド50に搭載された圧電素子は、いわゆる容量性の負荷であるため、電圧漸増部で供給された電力は噴射ヘッド50側に蓄えられている。従って、電圧漸減部で噴射ヘッド50から捨てられる電力を回収しておき、再び噴射ヘッド50に供給して電圧値を増加させるために使用することができれば、電力損失を大きく抑制できると考えられる。こうした点に鑑みて、図1に示した本実施例の噴射ヘッド駆動回路100では、次のような構成が採用されている。
【0026】
すなわち、図1に示した本実施例の噴射ヘッド駆動回路100には、噴射ヘッド50に供給する電力を発生する電源部10が複数設けられており、それぞれの電源部10には、負帰還制御部30が設けられている。また、噴射ヘッド駆動回路100には、噴射ヘッド50に印加すべき目標電圧波形を出力する目標電圧波形出力部20が設けられている。そして、電源部10毎に設けられた各負帰還制御部30は、目標電圧波形出力部20から目標電圧波形を受け取ると、噴射ヘッド50に印加する電圧値が目標電圧波形と一致するように負帰還制御を行いながら、電源部10で発生した電力を噴射ヘッド50に供給する。換言すれば、それぞれの電源部10、および各電源部10に対応する負帰還制御部30の一組一組が、言わば小さな駆動回路を構成している。そして、それぞれの駆動回路に対して、目標電圧波形出力部20から目標電圧波形を供給することで、噴射ヘッド50を駆動することが可能に構成されている。図1では、それぞれの電源部10、および対応する負帰還制御部30を、細い一点鎖線の矩形で囲うことによって、それぞれが小さな駆動回路を構成していることを表している。また、複数の電源部10は、互いに異なる電圧値の電力を発生している。図示した例では、4つの電源部10が設けられており、各電源部10が発生する電圧値は、E1、E2、E3、E4(但し、E1<E2<E3<E4)となっている。もちろん、電源部10の数は、4個に限らず、2個以上の任意の個数とすることができる。
【0027】
電源接続部40は、噴射ヘッド50に印加されている電圧値、あるいは目標電圧波形出力部20が出力する目標電圧波形の電圧値に基づいて、複数の電源部10の中から1つの電源部10(従って、その電源部10を含む駆動回路)を選択する。例えば、噴射ヘッド50に印加するべき電圧値が低いときには、低い電圧値の電源部10を含む駆動回路を選択する。図1に示した例では、「a」と表示した駆動回路または「b」と表示した駆動回路が選択されることになる。また、印加するべき電圧値が高いときには、高い電圧値の電源部10を含む駆動回路(図1の例では、「c」または「d」と表示した駆動回路)を選択し、中間の電圧値を印加する場合には、中間の電圧値の電源部10を含む駆動回路(図1の例では、「b」または「c」と表示した駆動回路)を選択する。そして、電源接続部40は、選択した駆動回路(すなわち、電源部10および負帰還制御部30)を噴射ヘッド50に接続し、その他の駆動回路は噴射ヘッド50から切断する。すると、噴射ヘッド50に接続された駆動回路の負帰還制御部30は、目標電圧波形出力部20から供給される目標電圧波形に従って負帰還制御を行いながら、電源部10からの電力を用いて噴射ヘッド50を駆動する。このようにすれば、前述した「動作電位差」を小さな値に保っておくことができるので、図2に示すような駆動電圧波形を発生させる際の電力消費を抑制することが可能となる。
【0028】
また、目標電圧波形の電圧値を次第に低くするように制御している状態では、噴射ヘッド50の各圧電素子に蓄えられていた電力が、電源部10に回収される。こうして噴射ヘッド50から回収された電力は、再び目標電圧波形の電圧値を増加させる際に、再利用することが可能となる。
【0029】
このように、本実施例の噴射ヘッド駆動回路100では、発生する電圧値の異なる複数の電源部10と、各電源部10に対応する負帰還制御部30とが設けられている。そして、噴射ヘッド50に印加するべき電圧値に応じて、電源部10および負帰還制御部30を切り換えながら噴射ヘッド50を駆動することで、動作電位差を小さな値に保ったまま、噴射ヘッド50に駆動電圧波形を供給する。このため、電力の消費を抑制することが可能となる。また、噴射ヘッド50に印加する目標電圧が低下するように制御している状態では、噴射ヘッド50側に蓄えられていた電力が電源部10に回収されて、再び目標電圧を増加させる際に再利用することができるので、全体としての電力消費を大幅に抑制することが可能となる。
【0030】
尚、前述したように、電源部10の個数は2個以上の任意の個数とすることができるが、電源部10の数が多くなるほど、電源部10で発生する電圧値と噴射ヘッド50に印加する電圧値との電圧差を小さくすることができるので、電力の消費を抑制することが可能となる。
【0031】
また、図1に示した例では、負帰還制御部30と噴射ヘッド50との間に電源接続部40が設けられている。しかし、図1は、噴射ヘッド駆動回路100の具体的な構成を示したものではなく、噴射ヘッド駆動回路100に含まれる機能を概念的に表したものである。そして、上述したように、電源接続部40の機能は、電源部10と負帰還制御部30とによって構成される小さな駆動回路を、印加するべき電圧値に応じて、噴射ヘッド50に接続したり、切断したりすることである。従って、このような機能を実現できるのであれば、必ずしも、負帰還制御部30と噴射ヘッド50との間に電源接続部40を設ける必要はなく、例えば、電源部10と負帰還制御部30との間に、電源接続部40を設けることも可能である。
【0032】
同様なことは、電源部10や、負帰還制御部30についても当て嵌まる。例えば、図1では、各電源部10が直列に接続されている場合が示されている。しかし、異なる電圧値の電力を発生することができるのであれば、各電源部10を別々に設けてもよい。また、負帰還制御部30についても、図1に示されるように各負帰還制御部30が完全に独立している必要はなく、一部を共用するような構成とすることも可能である。
【0033】
以下では、このような本実施例の噴射ヘッド駆動回路100について、具体的に説明する。尚、上述したように、本実施例の噴射ヘッド駆動回路100では、大きくは2つの効果、すなわち、電源部10を切り換えて動作電位差を小さな値に保つことで、電力消費を抑制する効果と、噴射ヘッド50に蓄えられた電力を回収することによって電力消費を抑制する効果の2つの効果を利用することで、電力消費を大幅に抑えながら、効率よく噴射ヘッド50を駆動することが可能となっている。そこで理解の便宜を図るために、先ず初めは、動作電位差抑制による効果のみを利用した単純化した噴射ヘッド駆動回路100について説明する。そして、その説明を踏まえて、動作電位差抑制による効果と、電力回収による効果とを利用する実際の噴射ヘッド駆動回路100に付いて説明する。
【0034】
B.第1実施例(動作電位差抑制による効果を利用する実施例) :
B−1.噴射ヘッド駆動回路の構成 :
図3は、第1実施例の噴射ヘッド駆動回路の構成を例示した説明図である。図示した例では、4つの電源E1〜E4が設けられており、それぞれの電源E1〜E4が発生する電力が、ユニポーラ型のNMOSトランジスタNtr1〜Ntr4を介して、噴射ヘッド50に接続された構成となっている。尚、第1実施例の噴射ヘッド駆動回路100は、動作電位差の抑制による効果のみを利用して電力消費を抑制することとしており、噴射ヘッド50からの電力回収による効果は利用しない。このような場合であれば、電源E1〜E4としては、互いに異なる電圧値を発生する電源であれば、一次電池や、二次電池、単なるコンデンサ、いわゆる電源回路など、どのような電源を用いることもできる。また、トランジスタNtr1〜Ntr4は、ユニポーラ型のトランジスタに限らず、バイポーラ型など、他の方式のトランジスタを用いることも可能である。
【0035】
尚、図3の中で、トランジスタNtr1〜Ntr4と噴射ヘッド50との間にダイオードが挿入されているのは、本実施例で用いているユニポーラ型のトランジスタが大電力駆動用の縦型トランジスタ構造となっており、ドレインとソースとの間に寄生ダイオードが形成されているために電流の逆流が発生し得るので、これを防止するためである。図3の場合には、図示はしていないが、負荷側がアノード、電源側がカソードの向きに寄生ダイオードが内蔵されていることになる。よって、負荷の電圧が電源(E1〜E4)の電圧よりも高くなると、トランジスタの寄生ダイオードが順バイアスされるため、たとえトランジスタをオフ状態にしていても、寄生ダイオードを介して負荷から電源に電流が逆流してしまうことになる。そこで、この逆流を阻止する方向にダイオードが挿入されているのである。尚、電流の逆流が生じないトランジスタ(バイポーラ型など)を用いた場合には、このダイオードは不要となる。
【0036】
各トランジスタNtr1〜Ntr4のゲート電極には、オペアンプOpampの出力端子が接続されている。尚、各トランジスタNtr1〜Ntr4は、誤動作を回避するためにゲート電極がプルダウン処理されているが、図が煩雑となることを避けるために、図示は省略されている。周知のようにNMOS型トランジスタは、ゲート電極とソース電極との間に正電圧を印加すると、トランジスタ内部に、チャネルと呼ばれる電荷(ここでは電子)の通り道が形成される。またゲート−ソース電極間に印加する電圧値を高くするほど、大きなチャネルが形成されて電荷が通り易く(等価的な抵抗値が小さく)なり、逆に、ゲート−ソース電極間に印加する電圧値を低くすれば、電荷が通り難くなって等価的な抵抗値が大きくなる。
【0037】
尚、トランジスタNtr1〜Ntr4には、NMOS型トランジスタの代わりにPMOS型トランジスタを用いても良い。図3に示すように、NMOS型トランジスタを用いる場合には、電源(E1〜E4)側にドレイン電極が接続され、噴射ヘッド50側にソース電極が接続されるように配置する。一方、PMOS型トランジスタを用いる場合には、電源(E1〜E4)側にソース電極が接続され、噴射ヘッド50側にドレイン電極が接続されるように配置する。また、PMOS型トランジスタの場合は、ゲート電極とソース電極との間に負電圧を印加することによって制御を行う。
【0038】
オペアンプOpampには2本の入力端子が設けられている。このうちの一方の入力端子には、DAコンバータ(以下、DACと表記する)から出力されたアナログ電圧が接続されており、他方の入力端子には、噴射ヘッド50に印加された電圧が入力抵抗Rsを介して接続されている。そして、オペアンプOpampの出力はフィードバック抵抗Rfを介して入力端子に戻されて、いわゆる負帰還回路を形成している。
【0039】
例えば、噴射ヘッド50に印加されている電圧値が、DACの出力するアナログ電圧よりも低かったとすると、オペアンプOpampの出力が増加して、ゲート電極にかかる電圧が増加し、トランジスタの等価的な抵抗値が減少する。その結果、トランジスタでの電圧降下量が小さくなるので、噴射ヘッド50にかかる電圧値が増加することになる。逆に、噴射ヘッド50にかかる電圧値が、DACの出力するアナログ電圧よりも高くなると、オペアンプOpampの出力が減少するので、ゲート電極にかかる電圧が減少してトランジスタの等価的な抵抗値が増加する。その結果、トランジスタでの電圧降下量が大きくなるために、噴射ヘッド50にかかる電圧値が減少することになる。従って、DACの出力するアナログ電圧に合わせて、噴射ヘッド50に印加する電圧値を変化させることができる。
【0040】
尚、上述したように図3に示した噴射ヘッド駆動回路100では、それぞれのトランジスタNtr1〜Ntr4と、オペアンプOpampとを組み合わせて、噴射ヘッド50に印加する電圧値の負帰還制御を行っている。従って、それぞれのトランジスタNtr1〜Ntr4およびオペアンプOpampによって構成される負帰還回路が、図1における負帰還制御部30に対応している。また、オペアンプOpampに対してアナログ電圧を出力するDACが、図1における目標電圧波形出力部20に対応している。尚、噴射ヘッド50とオペアンプOpampとの間に挿入されたバッファ回路Bufferは、噴射ヘッド50と入力抵抗Rsとを直接接続すると、噴射ヘッド50に影響が及ぶ場合があるので、これを防止するために挿入された回路である。従って、影響が無視できる場合、例えば、噴射ヘッド50の抵抗が入力抵抗Rsよりも十分に小さい場合などには、バッファ回路Bufferを省略することができる。
【0041】
また、オペアンプOpampからの出力は、スイッチSN1〜SN4を介して各トランジスタNtr1〜Ntr4のゲート電極に接続されており、スイッチSN1〜SN4は、ゲートセレクタ回路140によって制御されている。ゲートセレクタ回路140は、DACの出力するアナログ電圧や、噴射ヘッド50に印加される電圧値(場合によっては、オペアンプOpampの出力電圧)を検出して、スイッチSN1〜SN4の何れかを接続するとともに、他のスイッチを切断する機能を有している。前述したようにトランジスタNtr1〜Ntr4の各ゲート電極はプルダウン処理されているので、スイッチが切断されると、そのスイッチに対応するトランジスタのゲート電極には電圧がかからなくなる。その結果、トランジスタ内のチャネルが消失して電流が流れなくなり、そのトランジスタの上流側にある電源が噴射ヘッド50から電気的に切断された状態となる。
【0042】
このように、図3に示した噴射ヘッド駆動回路100では、ゲートセレクタ回路140が、スイッチSN1〜SN4を接続することによって電源E1〜E4が噴射ヘッド50に接続され、逆に、スイッチSN1〜SN4を切断することによって電源E1〜E4が噴射ヘッド50から切断される。従って、ゲートセレクタ回路140およびスイッチSN1〜SN4が、図1における電源接続部40に対応している。
【0043】
B−2.噴射ヘッド駆動回路の動作 :
図4は、第1実施例の噴射ヘッド駆動回路100が噴射ヘッド50を駆動する動作を示した説明図である。説明の便宜から、以下では、電源E1は電圧値E1の電力を発生しており、電源E2は電圧値E2の電力を発生し、電源E3は電圧値E3の電力を、そして電源E4は電圧値E4の電力を発生しているものとする。また、それぞれの電圧値は、E1<E2<E3<E4となっているものとする。
【0044】
今、DACから出力されるアナログ電圧が、0(V)から増加する場合について考える。図3を用いて前述したように、DACから出力されるアナログ電圧は、噴射ヘッド50に印加するべき目標電圧となっている。噴射ヘッド50に印加するべき目標電圧が0(V)付近にある場合は、ゲートセレクタ回路140は、スイッチSN1を接続して(ONにして)、他のスイッチSN2〜SN4を切断する(OFFにする)。その結果、電源E1〜E4の中で最も電圧値の低い電源E1が噴射ヘッド50に接続され、そして、トランジスタNtr1とオペアンプOpampとによって負帰還回路が形成されて、噴射ヘッド50に印加される電圧値がDACの出力と一致するように、負帰還制御が行われる。図4(a)では、トランジスタNtr1とオペアンプOpampとによって負帰還回路が形成される様子が、太い実線で表されている。その結果、電源E1の電力が、トランジスタNtr1およびダイオードを介して、噴射ヘッド50に印加されることになる。
【0045】
ここで、トランジスタNtr1の等価的な抵抗値は、ゲート電極に加える電圧を高くすることによって小さくすることができ、等価的な抵抗値を小さくするほど噴射ヘッド50に印加する電圧値を高くすることができる。しかし当然ながら、電源E1が発生する電圧値(すなわち、E1)以上に高くすることはできない。また、厳密に言えば、トランジスタNtr1の等価的な抵抗値を完全に0にすることはできず、更に、ダイオードも何某かの抵抗を有している。従って、噴射ヘッド50に印加する電圧値は、電源E1の発生する電圧値よりも、トランジスタNtr1やダイオードなどで生じる電圧降下分だけ低い電圧値までしか、上昇させることができない。
【0046】
このように、図4(a)に太い実線で示した負帰還回路によって噴射ヘッド50に印加可能な電圧値には上限値がある。そこで、DACの出力する電圧値(あるいは噴射ヘッド50に印加される電圧値)が、その上限値よりも高くなると、これをゲートセレクタ回路140が検出して、スイッチSN1を切断(OFFに)するとともに、スイッチSN2を接続(ONに)する。その結果、トランジスタNtr1およびオペアンプOpampによる負帰還回路(図4(a)で太い実線で示した回路)が、トランジスタNtr2およびオペアンプOpampによる新たな負帰還回路(図4(a)中で太い破線で示した回路)に切り換わり、それに伴って、噴射ヘッド50に電力を供給する電源が電源E1から電源E2に切り換わる。上述したように、電源E2は電源E1よりも高い電圧値の電力を発生するから、このように電源を切り換えてやれば、DACの出力する電圧値が更に高くなっても、これに合わせて、噴射ヘッド50に印加する電圧値を上昇させることが可能となる。
【0047】
もちろん、電源E2によって噴射ヘッド50に印加できる電圧値にも上限値がある。しかし、DACの出力する電圧値(あるいは噴射ヘッド50に印加される電圧値)が、その上限値に達したら、今度は、スイッチSN2をOFFにするとともに、スイッチSN3をONにすることにより、電源E3を用いて噴射ヘッド50に電力を供給すればよい。
【0048】
図4(b)には、印加するべき電圧値に応じて、負帰還回路および電源を切り換えながら、噴射ヘッド50に電圧を印加する様子が示されている。また、図4(c)には、負帰還回路および電源を切り換えるために、スイッチSN1およびスイッチSN2をON、OFFさせる様子が示されている。図4(b)および図4(c)に示されるように、噴射ヘッド50に印加する電圧(駆動電圧)が0(V)から上昇してE1に達するまでは、スイッチSN1はONに、スイッチSN2はOFFにすることにより、図4(a)中に太い実線で示した負帰還回路を用いて、電源E1の発生する電力を噴射ヘッド50に供給する。尚、厳密に言えば、トランジスタNtr1〜Ntr4やダイオードなどで何某かの電圧降下が発生するために、電源E1の発生する電圧値E1よりも低い電圧値までしか、噴射ヘッド50に印加することはできない。しかし、ここでは説明が煩雑となることを避けるため、トランジスタNtr1〜Ntr4やダイオードで発生する電圧降下は無視できるものとしている。
【0049】
噴射ヘッド50に印加する電圧(駆動電圧)が電圧値E1より高くなると、図4(a)中に太い破線で示した負帰還回路を用いて、電源E2からの電力を噴射ヘッド50に供給する。図4(c)に示したように、スイッチSN1をONからOFFに切り換えるとともに、スイッチSN2をOFFからONに切り換えてやれば、電源E2からの電力を、図4(a)中に太い破線で示した負帰還回路を用いて噴射ヘッド50に供給することができる。この状態から、噴射ヘッド50に印加する電圧を減少させる場合には、増加させる場合と逆の操作を行えばよい。先ず、スイッチSN1〜SN4の状態はそのままで、DACの出力する電圧値を減少させる。すると、オペアンプOpampからの出力が減少し、トランジスタNtr2のゲート電極にかかる電圧が低下するので、トランジスタの等価的な抵抗値が増加する。また、ここでは噴射ヘッド50は抵抗性の負荷であるとしているから、トランジスタの等価的な抵抗値が増加すれば、噴射ヘッド50に加わる電圧値が低下する。そして、印加する電圧が電圧値E1まで減少したら、図4(c)に示したように、スイッチSN2をOFFに切り換えるとともに、スイッチSN1をONに切り換えることにより、負帰還回路を、図4(a)中で太い破線で示した回路から、太い実線で示した回路に切り換える。こうして負帰還回路を切り換えた後は、新たな回路に含まれるトランジスタNtr1の等価的な抵抗値を増加させるほど、噴射ヘッド50に印加される電圧値を減少させることが可能となる。
【0050】
このように、第1実施例の噴射ヘッド駆動回路100では、噴射ヘッド50に印加することのできる電圧範囲が、0(V)〜E1、E1〜E2、E2〜E3、およびE3〜E4の4つの電圧範囲に分割されており、それぞれの電圧範囲毎に、電源および負帰還回路が予め設定されている。そして、噴射ヘッド50に印加するべき駆動電圧が、何れかの電圧範囲にあれば、その電圧範囲に対応付けられた電源および負帰還回路を用いて噴射ヘッド50を駆動するが、噴射ヘッド50の駆動電圧が電圧範囲を跨いだ場合には、電源および負帰還回路を切り換えて、新たな電圧範囲に対応する電源および負帰還回路を用いて噴射ヘッド50を駆動する。この結果、動作電位差(電力を供給する電源の出力電圧と、噴射ヘッド50の電圧との電圧差)が抑制されて、噴射ヘッド50を駆動する際の電力の消費を抑制することが可能となる。以下では、この点について補足して説明する。
【0051】
図5は、比較のために、単一の電源と単一の負帰還回路を用いて噴射ヘッド50を駆動する噴射ヘッド駆動回路を例示した説明図である。図5(a)には、具体的な回路構成が示されており、図5(b)には、噴射ヘッド50の駆動電圧を、0(V)から電圧値E4まで上昇させた後、再び0(V)まで下降させる様子が示されている。このように、0(V)〜E4の範囲で噴射ヘッド50に電圧を印加するのであれば、少なくともE4以上の電圧値を発生する電源を使用する必要がある。尚、トランジスタNtrやダイオードなどの抵抗を考慮すると、電源が発生する電圧値は、E4よりも高くなければならないが、ここでは理解を容易にするために、トランジスタNtrやダイオードなどの抵抗は無視できるとしている。
【0052】
電源E4は、常に電圧値E4の電力を発生している。従って、図5に示した駆動回路では、噴射ヘッド50に印加するべき駆動電圧の電圧値に拘わらず、トランジスタNtrの上流側には、常に電圧値E4がかかっている。そして、この電圧値E4を、噴射ヘッド50に印加するべき駆動電圧まで低下させる際に、トランジスタNtr内で電力が消費される。この電力消費量は、トランジスタNtrが動作する電圧差(すなわち、トランジスタNtrの上流側と下流側との電圧差(動作電位差))が大きくなるほど増加する。その結果、図5に示した駆動回路では、噴射ヘッド50に印加するべき駆動電圧が低い場合には、たいへんに多くの電力が消費されることになる。
【0053】
これに対して、図3に示した第1施例の噴射ヘッド駆動回路100では、発生する電圧値の異なる4つの電源E1〜E4と、それぞれの電源に対する負帰還回路とを備えている。そして、図4を用いて前述したように、噴射ヘッド50に印加する駆動電圧が、0(V)〜E1、E1〜E2、E2〜E3、またはE3〜E4の何れの電圧範囲にあるかによって、電源E1〜E4および負帰還回路を切り換えながら、噴射ヘッド50を駆動する。
【0054】
図6は、第1実施例の噴射ヘッド駆動回路100において、電源E1〜E4を切り換えながら噴射ヘッド50を駆動する様子を表している。このため、例えば噴射ヘッド50に印加するべき駆動電圧が、0(V)〜E1の電圧範囲にある場合には、電源E1から電力が供給されるので、トランジスタNtr1には電圧値E1しかかからない。また、噴射ヘッド50に印加するべき駆動電圧が、E1〜E2の電圧範囲に上昇した場合でも、電力を供給する電源が電源E2に切り換わるので、トランジスタNtr2には電圧値E2しかかからない。噴射ヘッド50の駆動電圧が更に上昇した場合でも、噴射ヘッド50に電力を供給する電源を電源E3、E4と切り換えてやれば、結局は、トランジスタNtr1〜Ntr4が動作する電位差(動作電位差)を、高々、0(V)〜E1、E1〜E2、E2〜E3、E3〜E4程度の電圧差に抑制することができる。その結果、図5に示すように、単一の電源と単一の負帰還回路を用いて噴射ヘッド50を駆動する従来の噴射ヘッド駆動回路に較べて、電力の消費を大きく抑制することが可能となるのである。
【0055】
尚、以上の説明では、噴射ヘッド50に印加する駆動電圧は、0(V)から正の電圧値を取るものとして説明した。しかし負の電圧値を発生する電源を用いることにより、負の値を取る駆動電圧を印加することも可能である。もちろん、負の電圧値を発生する電源と正の電圧値を発生する電源とを使用すれば、電圧値が正負に変化する駆動電圧を噴射ヘッド50に印加することも可能となる。
【0056】
図7は、電圧値が正負に変化する駆動電圧を噴射ヘッド50に印加することの可能な噴射ヘッド駆動回路100を例示した説明図である。図示した例では、電源E5〜E8の4つの電源については、図3に示した噴射ヘッド駆動回路100と同様に、正の電圧値の電力を発生しているが、電源E1〜E4の4つの電源については、負の電圧値の電力を発生している。また、このことと対応して、電源E5〜E8の4つの電源については、図3と同様に、NMOS型の各トランジスタ(Ntr5〜Ntr8)のドレイン電極が、電源(E5〜E8)に接続され、各トランジスタ(Ntr5〜Ntr8)のソース電極が、噴射ヘッド50側に接続されている。これに対して、電源E1〜E4の4つの電源については、PMOS型の各トランジスタ(Ptr1〜Ptr4)のドレイン電極が、電源(E1〜E4)に接続され、各トランジスタ(Ptr1〜Ptr4)のソース電極が、噴射ヘッド50側に接続されている。また、PMOS型トランジスタ(Ptr1〜Ptr4)については、噴射ヘッド50との間に挿入される逆流防止用のダイオードの向きが、NMOS型トランジスタ(Ntr5〜Ntr8)とは逆向きに(トランジスタPtr1〜Ptr4のドレイン電極から噴射ヘッド50に向かう方向が順方向となるように)、逆流防止用のダイオードが挿入されている。
【0057】
そして、これら電源の発生する電圧値E1〜E8の大きさが、E1<E2<E3<E4<0<E5<E6<E7<E8であったとすると、噴射ヘッド50に印加する駆動電圧が正の電圧値であれば、電圧値が大きくなるに従って、ONにするスイッチを、スイッチSN5からスイッチSN8へと切り換えることにより、0(V)〜E8(正の電圧値)の駆動電圧を噴射ヘッド50に印加することができる。また、印加する駆動電圧が負の電圧値であれば、電圧値が小さく(絶対値は大きく)なるに従って、ONにするスイッチを、スイッチSN4からスイッチSN1へと切り換えることにより、E1(負の電圧値)〜0(V)の駆動電圧を噴射ヘッド50に印加することが可能となる。
【0058】
以上に説明した第1実施例では、複数の電源部10を切り換えて動作電位差を抑制することにより、電力消費を抑制する効果のみを用いた噴射ヘッド駆動回路100について説明した。しかし、前述したように噴射ヘッド50に搭載されている圧電素子は、容量性の負荷であり、供給された電力は噴射ヘッド50に蓄えられている。尚、容量性の負荷とは、供給された電力の少なくとも一部を蓄える性質を有する負荷である。従って、噴射ヘッド50から電力を回収して、再び使用することができれば、更に、電力消費を抑制することが可能となる。実際の噴射ヘッド駆動回路100では、第1実施例として説明した動作電位差抑制による効果と、電力回収による効果の2つの効果を利用して、電力消費を大きく抑制することが可能となっている。以下では、このような第2実施例の噴射ヘッド駆動回路100について説明する。
【0059】
C.第2実施例(動作電位差抑制および電力回収による効果を利用する実施例) :
C−1.噴射ヘッド駆動回路の構成 :
図8は、第2実施例の噴射ヘッド駆動回路100の構成を例示した説明図である。第2実施例の噴射ヘッド駆動回路100においても、図3に示した第1実施例の噴射ヘッド駆動回路100と同様に、4つの電源E1〜E4が設けられており、それぞれ電圧値E1、E2、E3、E4の電力を発生する。また、各電源E1〜E4からの電力は、ユニポーラ型のNMOSトランジスタNtr1〜Ntr4を介して、噴射ヘッド50に接続されている。尚、第2実施例においては、噴射ヘッド50に蓄えられた電力を回収して再利用する必要があるため、電源E1〜E4としては、二次電池や、コンデンサなどのように、外部から供給された電力の少なくとも一部を蓄えることが可能な電源が使用される。
【0060】
また、図8に示されるように第2実施例の噴射ヘッド駆動回路100は、図3に示した第1実施例の噴射ヘッド駆動回路100とは異なり、噴射ヘッド50からの電力をグランドまたは電源E1〜E3の各電源へ還流させる方向に、ユニポーラ型のPMOSトランジスタPtr0〜Ptr3が設けられている。尚、トランジスタPtr0〜Ptr3は、ユニポーラ型のトランジスタに限らず、バイポーラ型など、他の方式のトランジスタを用いることも可能である。また、トランジスタPtr0〜Ptr3と噴射ヘッド50との間にも、逆流防止用のダイオードが挿入されているが、逆流が生じない構造のトランジスタ(バイポーラ型など)を用いた場合は、このダイオードは不要となる。
【0061】
電源E1〜E4の電力を噴射ヘッド50に供給する側の各トランジスタNtr1〜Ntr4には、それぞれのゲート電極に、スイッチSN1〜SN4を介してオペアンプOpampの出力端子が接続されている。これは、図3に示した第1実施例の噴射ヘッド駆動回路100と同様である。しかし、上述したように第2実施例の噴射ヘッド駆動回路100には、噴射ヘッド50の電力を還流させるトランジスタPtr0〜Ptr3も設けられており、これらのトランジスタPtr0〜Ptr3のゲート電極にもオペアンプOpampの出力端子が接続され、各ゲート電極とオペアンプOpampの出力端子との間には、スイッチSP0〜SP3が設けられている。尚、各トランジスタPtr0〜Ptr3は、誤動作を回避するためにゲート電極がプルアップ処理されているが、図が煩雑となることを避けるために、図示は省略されている。
【0062】
ゲートセレクタ回路140は、これらのスイッチSN1〜SN4およびスイッチSP0〜SP3の状態を、ONまたはOFFに切り換える。そして、スイッチSN1〜SN4あるいはスイッチSP0〜SP3の何れのスイッチがONになるかによって、対応するトランジスタNtr1〜Ntr4あるいはトランジスタPtr0〜Ptr3、およびオペアンプOpampによって負帰還回路が形成される。その結果、DACの出力するアナログ電圧に追随させて、噴射ヘッド50に印加する電圧値を負帰還制御することが可能となる。以下、この点について、詳しく説明する。
【0063】
C−2.噴射ヘッド駆動回路の動作 :
図9は、第2実施例の噴射ヘッド駆動回路100が噴射ヘッド50を駆動する動作を示した説明図である。尚、第2実施例においても、電源E1、E2、E3、E4は、それぞれ電圧値E1、E2、E3、E4の電力を発生し、各電圧値は、0(V)<E1<E2<E3<E4となっているものとする。また、説明が煩雑となることを避けるために、第2実施例においても、各トランジスタNtr1〜Ntr4、Ptr0〜Ptr3や、ダイオードなどの内部抵抗は無視できるものとする。
【0064】
噴射ヘッド50に印加するべき駆動電圧(DACが出力するアナログ電圧)が増加する場合には、第2実施例の噴射ヘッド駆動回路100は、図4を用いて前述した第1実施例と全く同様に動作する。すなわち、駆動電圧が0(V)〜E1の電圧範囲にある場合は、ゲートセレクタ回路140によってスイッチSN1をONにするとともに、その他のスイッチ(スイッチSN2〜SN4、およびスイッチSP0〜SP3)は全てOFFにする。その結果、トランジスタNtr1およびオペアンプOpampによる負帰還回路が形成され、DACが出力するアナログ電圧に従って、電源E1の電力が噴射ヘッド50に印加される。また、噴射ヘッド50に印加するべき駆動電圧が、電源E1から供給可能な電圧値を越えた場合は、スイッチSN1をOFFにするとともに、スイッチSN2をONにする。その結果、トランジスタNtr1およびオペアンプOpampによる負帰還回路が、トランジスタNtr2およびオペアンプOpampによる負帰還回路に切り換わり、電源E2の電力が噴射ヘッド50に供給されるようになる。
【0065】
図9(b)には、駆動電圧が0(V)からE1に向かって上昇している間は、電源E1からトランジスタNtr1を介して噴射ヘッド50に電力が供給され、駆動電圧がE1からE2に上昇している間は、電源E2からトランジスタNtr2を介して噴射ヘッド50に電力が供給される様子が示されている。このように、噴射ヘッド50に印加するべき駆動電圧が上昇している間は、スイッチSN1〜SN4を切り換えることにより、噴射ヘッド50に電力を供給する電源を次々と切り換えていけばよい。
【0066】
これに対して、噴射ヘッド50に印加するべき駆動電圧(DACが出力するアナログ電圧)が減少する場合には、スイッチSN1〜SN4を全てOFFにするとともに、駆動電圧に応じて、スイッチSP0〜SP3の何れかをONにする。例えば、駆動電圧をE2からE1に向かって減少させる場合について考える。駆動電圧がE1〜E2の範囲にあって、減少させる場合は、スイッチSP1をONにする。すると、オペアンプOpampの出力が、トランジスタPtr1のゲート電極に入力されて、トランジスタPtr1内に正孔によるチャネルが形成され、噴射ヘッド50と電源E1とが電気的に接続される。噴射ヘッド50には電圧値E2が印加されていたから、噴射ヘッド50に蓄えられていた電力が電源E1に還流する。そして、電源E1が、例えば二次電池などのように、外部から供給された電力を蓄えることが可能な電源であった場合には、蓄えておいた電力を用いて噴射ヘッド50を駆動することができるので、電力の消費を大幅に抑制することが可能となる。
【0067】
また、トランジスタPtr1は、ゲート電極に加える電圧が低くなるほど、トランジスタPtr1の等価的な抵抗値も小さくなる。このため、DACが出力するアナログ電圧(噴射ヘッド50に印加すべき目標電圧)と、噴射ヘッド50に実際に印加されている駆動電圧とをオペアンプOpampに入力するとともに、オペアンプOpampの出力をゲート電極に加えることで、負帰還回路が形成されて、噴射ヘッド50に印加する駆動電圧を制御することが可能となる。例えば、噴射ヘッド50に印加している駆動電圧が、DACの出力する目標電圧よりも高い場合、オペアンプOpampの出力が減少するので、トランジスタPtr1の等価的な抵抗値が減少する。その結果、噴射ヘッド50に印加されている駆動電圧が減少して、DACの出力する目標電圧に近付くようになる。
【0068】
図9(a)には、スイッチSP1がONにされたときに、トランジスタPtr1およびオペアンプOpampによって形成される負帰還回路が、太い実線で示されている。こうして、負帰還制御を行いながら、噴射ヘッド50の駆動電圧を電圧値E2から電圧値E1に減少させると、噴射ヘッド50に蓄えられた電力が、トランジスタPtr1を介して電源E1に還流されて、その結果として、駆動電圧が減少していくことになる。図9(b)には、噴射ヘッド50の電力が、トランジスタPtr1を介して電源E1に還流される様子が、太い実線の矢印によって表されている。
【0069】
噴射ヘッド50の駆動電圧が、電圧値E1よりも低くなった場合には、ゲートセレクタ回路140を用いてスイッチSP1をOFFにするとともに、スイッチSP0をONにする。その結果、トランジスタPtr1およびオペアンプOpampによる負帰還回路(図9(a)で太い実線で示した回路)が、トランジスタPtr0およびオペアンプOpampによる新たな負帰還回路に切り換わる。図9(a)では、新たに切り換わった負帰還回路を、太い破線で表している。その結果、噴射ヘッド50に蓄えられた電力は、トランジスタPtr0を介してグランドに放出され、それに伴って、噴射ヘッド50に加わる駆動電圧が低下することになる。図9(b)には、噴射ヘッド50の電力が、トランジスタPtr0を介してグランドに放出される様子が、太い破線の矢印によって表されている。また、このように駆動電圧を減少させている状態から、再び上昇させる場合には、前述したようにスイッチSN1〜SN4の中から、現在の電圧値に応じたスイッチをONにすればよい。
【0070】
このように、第2実施例の噴射ヘッド駆動回路100においても、噴射ヘッド50に印加することのできる電圧範囲が、0(V)〜E1、E1〜E2、E2〜E3、およびE3〜E4の4つの電圧範囲に分割されており、それぞれの電圧範囲を受け持つ電源E1〜E4が予め設定されている。そして、噴射ヘッド50に印加する駆動電圧を上昇させる場合は、その電圧範囲を受け持つ電源を噴射ヘッド50に接続して、負帰還制御を行いながら、噴射ヘッド50に駆動電圧を印加する。例えば、駆動電圧が電圧値E1と電圧値E2との中間にあれば、E1〜E2の電圧範囲を受け持つ電源E2を用いて噴射ヘッド50を駆動することになる。これに対して、噴射ヘッド50に印加する駆動電圧を減少させる場合には、現在の電圧よりも一つ低い電圧範囲を受け持つ電源を噴射ヘッド50に接続する。そして、噴射ヘッド50に蓄えられた電力を電源に還流させながら、負帰還制御を行って、噴射ヘッド50に印加する駆動電圧を減少させる。例えば、駆動電圧が電圧値E1と電圧値E2との中間にある場合は、0(V)〜E1の電圧範囲を受け持つ電源E1を噴射ヘッド50に接続して、噴射ヘッド50の電力を電源E1に蓄える。こうすることにより、噴射ヘッド50を駆動する際の電力の消費を抑制することができる。特に、電源E1〜E4が、二次電池やコンデンサなどのように、外部から供給された電力の少なくとも一部を蓄えることが可能な電源であった場合には、電力の消費を、更に大きく抑制することが可能となる。以下では、この理由について説明する。
【0071】
図10は、第2実施例の噴射ヘッド駆動回路100において、噴射ヘッド50に印加する駆動電圧を、0(V)〜E4まで上昇させた後、E4〜0(V)まで減少させる様子を示した説明図である。図10(a)には、駆動電圧の増減にともなって、電源部10から噴射ヘッド50に電力が供給され、あるいは噴射ヘッド50から電源部10に電力が回収される様子が示されている。また、図10(b)には、駆動電圧が増減するにともなって、スイッチSN1〜SN4、SP0〜SP3が、ONまたはOFFに切り換えられる様子が示されている。図10(b)に示されているように、駆動電圧を0(V)〜E1に上昇させる際には、スイッチSN1をONにすることにより、電源E1の電力を、トランジスタNtr1を介して噴射ヘッド50に供給しながら、駆動電圧を上昇させる。駆動電圧がE1に達したら、スイッチSN1をOFFにするとともにスイッチSN2をONにして、電源E2の電力を、トランジスタNtr2を介して噴射ヘッド50に供給しながら、駆動電圧を上昇させる。駆動電圧がE2に達したら、スイッチSN2をOFFにして、スイッチSN3をONにすることによって、電源E3の電力を、トランジスタNtr3を介して噴射ヘッド50に供給する。更に、駆動電圧がE3に達したら、スイッチSN3をOFFに、スイッチSN4をONにして、電源E4の電力を、トランジスタNtr4を介して噴射ヘッド50に供給する。図10には、このようにして電源E1〜E4を切り換えながら、噴射ヘッド50に印加する駆動電圧を次第に上昇させる様子が示されている。尚、図10(a)に示されるように、この間は、電源部E1,E2,E3,E4からトランジスタNtr1〜Ntr4を介して噴射ヘッド50に電力が供給されている。また、この時、各トランジスタNtr1〜Ntr4が動作する電圧差は、高々、各電源E1〜E4が発生する電圧差、すなわち、0(V)〜E1、E1〜E2、E2〜E3、E3〜E4程度の電圧差にしかならない。このため、第1実施例の噴射ヘッド駆動回路100と同様に、動作電位差を抑制することによる効果によって、電力の消費が抑制される。
【0072】
次に、駆動電圧をE4から減少させる際には、先ず、スイッチSN4をOFFにした後、スイッチSP3をONにする。すると、前述したように、噴射ヘッド50に蓄えられていた電力が、トランジスタPtr3を介して電源E3に還流し、それに伴って噴射ヘッド50に印加されている駆動電圧が減少する。この時、電源E3が、供給された電力を蓄えることが可能な電源であれば、噴射ヘッド50から還流した電力が回収されて、電源E3に蓄えられることになる。噴射ヘッド50の駆動電圧が電圧値E3まで減少したら、スイッチSP3をOFFにして、スイッチSP2をONにすることにより、噴射ヘッド50の電力を、今度はトランジスタPtr2を介して電源E2に還流させる。その結果、噴射ヘッド50から回収された電力が、今度は電源E2に蓄えられる。更に、駆動電圧が電圧値E2まで減少したら、スイッチSP2をOFFに、スイッチSP1をONにして、噴射ヘッド50の電力を、トランジスタPtr1を介して電源E1に還流させる。電源E2あるいは電源E1が、電力を蓄えることが可能であれば、噴射ヘッド50から還流した電力は、それぞれ電源E2あるいは電源E1に蓄えられる。駆動電圧が電圧値E1まで減少したら、最後に、スイッチSP1をOFFにして、スイッチSP0をONにする。すると、噴射ヘッド50の電力は、トランジスタPtr0を介してグランドに放出され、それに伴って、噴射ヘッド50に印加している駆動電圧が0(V)まで減少する。
【0073】
図10には、このようにして、噴射ヘッド50に印加されている駆動電圧を、より低い電圧値の電力を発生する電源に還流させながら、噴射ヘッド50に印加の駆動電圧を次第に減少させる様子が示されている。第2実施例の噴射ヘッド駆動回路100では、噴射ヘッド50から電力が還流される電源E1〜電源E3を、二次電池など、外部から供給された電力を蓄えることが可能な電源が用いられている。図10中に太い実線で示した矢印は、噴射ヘッド50から還流された電力を、電源E1〜E3に蓄えながら、駆動電圧を減少させている様子を表している。
【0074】
このように、動電圧を減少させる際に、噴射ヘッド50からの電力を回収して電源に蓄えておけば、次に駆動電圧を上昇させる際には、蓄えておいた電力を用いることができる。例えば、再び、駆動電圧を0(V)〜E1に上昇させる際には、電源E1から電力を供給することになるが、この時、噴射ヘッド50から回収して蓄えておいた電力を供給すれば、実質的には新たな電力を供給することなく、噴射ヘッド50の駆動電圧を上昇させることができる。同様に、電源E2および電源E3にも、噴射ヘッド50からの電力が回収して蓄えられているので、駆動電圧をE1〜E2に上昇させる際、更にはE2〜E3に上昇させる際には、電源E2および電源E3に蓄えておいた電力を噴射ヘッド50に供給することで、実質的に新たな電力を供給することなく、噴射ヘッド50に印加する駆動電圧を上昇させることができる。結局、噴射ヘッド50から回収した電力を電源に蓄えておけば、0(v)〜E3までの駆動電圧であれば、新たな電力を供給することなく印加することが可能となり、その結果、電力の消費を大幅に抑制することが可能となるのである。
【0075】
尚、以上の説明では、噴射ヘッド駆動回路100には、電源E1〜E4の4つの電源が設けられているものとして説明した。しかし、より多くの電源を設けて、噴射ヘッド50に印加する電圧範囲をより細かく分割すれば、新たな電力を供給することなく噴射ヘッド50に印加することの可能な駆動電圧の範囲を拡大することができる。その結果、電力の消費をより一層大幅に抑制することが可能となる。また、第2実施例の噴射ヘッド駆動回路100においても、第1実施例と同様に、負の駆動電圧を印加したり、あるいは、正負に変化する駆動電圧を噴射ヘッド50印加することも可能である。
【0076】
D.変形例 :
以上に説明した各種の実施例の他にも、幾つかの変形例を考えることができる。以下では、これら変形例について説明する。
【0077】
D−1.第1の変形例 :
上述した第2実施例では、駆動電圧が増加している間は、噴射ヘッド50に印加されている電圧値よりも高い電圧を発生する電源部E1〜E4を噴射ヘッド50に接続し、逆に、駆動電圧が減少している間は、噴射ヘッド50に印加されている電圧値よりも低い電圧の電源部E1〜E4を噴射ヘッド50に接続するものとして説明した。従って、図10(b)に示されているように、SN1〜SN4およびSP0〜SP3の各スイッチは、常に何れか1つのスイッチのみがONになっていた。これに対して、噴射ヘッド50に印加されている電圧値よりも、高い電圧値を発生する電源部と、低い電圧値を発生する電源部とを同時に接続しながら、噴射ヘッド50を駆動するようにしても良い。
【0078】
図11は、このような第1の変形例の噴射ヘッド駆動回路100において、噴射ヘッド50を駆動する様子を示した説明図である。図11(a)には、電源部E1〜E4の負帰還回路を切り換えながら、噴射ヘッド50に駆動電圧を印加している様子が示されている。また、図11(b)には、このときのSN1〜SN4、SP0〜SP3の各スイッチの設定状態が示されている。図11(b)に示されているように、第1の変形例の噴射ヘッド駆動回路100では、噴射ヘッド50に印加する電圧値よりも高い電圧を発生する電源部の負帰還回路と、低い電圧を発生する電源部の負帰還回路とが、常にONの状態となっている。
【0079】
図11(c)に示されるように、噴射ヘッド50に印加されている電圧値は、目標電圧波形の電圧値と完全に一致することはあり得ず、目標電圧波形よりも高くなったり、低くなったりしながら、制御されていることが通常である。ここで、第1の変形例の噴射ヘッド駆動回路100では、噴射ヘッド50に印加する目標電圧を増加させている途中で、印加電圧が目標電圧を越えてしまった場合には、低い電圧値を発生している電源部で電力を回収することによって、印加電圧を目標電圧に速やかに近づけることができる。また逆に、噴射ヘッド50に印加する目標電圧を減少させている途中で、印加電圧が目標電圧を下回ってしまった場合には、高い電圧値を発生している電源部から電力を供給することによって、印加電圧を目標電圧に速やかに近づけることができる。このように、第1の変形例の噴射ヘッド駆動回路100では、目標電圧の増加中に印加電圧のオーバーシュートが発生したり、逆に目標電圧の減少中に印加電圧のアンダーシュートが発生した場合でも、印加電圧を目標電圧に速やかに近づけて、正確な駆動電圧波形を噴射ヘッド50に供給することが可能となる。
【0080】
尚、SN1〜SN4、SP0〜SP3の各スイッチを切り換えるタイミングは、駆動電圧が、それぞれの電源部E1〜E4が発生する電圧値に達したタイミングであるが、実際には、これらスイッチ類やトランジスタなどの内部抵抗の分だけ電圧降下が発生する。そこで、電源部から噴射ヘッド50に電力を供給する側のスイッチSN1〜SN4については、駆動電圧が電源部の発生する電圧値に達するよりも少し低いタイミングで切り換えてやることが望ましい。逆に、噴射ヘッド50から電源部に電力を回収する側のスイッチSP0〜SP3については、駆動電圧が電源部の発生する電圧値に達するよりも少し高いタイミングで切り換えてやることが望ましい。図11(b)では、こうしたことを考慮したて、SN1〜SN4のスイッチを切り換えるタイミングと、SP0〜SP3のスイッチを切り換えるタイミングとが、少しだけずれて設定されている。
【0081】
D−2.第2の変形例 :
上述した各種の実施例では、電源E1〜E4は何れも、常に安定した電圧値の電力を発生しているものとして説明した。しかし、コンデンサのように、電力を供給するに従って電圧値が低下する電源や、二次電池のように安定した電圧値の電力を発生するとは限らない電源も存在する。更には、電源の能力に対して、噴射ヘッド50に供給する電力が過大なために、安定した電圧値の電力を供給することが困難な場合も生じ得る。このような場合は、各電源が発生する電圧値を監視しておき、噴射ヘッド50に印加すべき駆動電圧に応じて、最適な電圧値を発生している電源が噴射ヘッド50に接続されるように、スイッチSN1〜SN4あるいはスイッチSP0〜SP3を切り換えるようにしても良い。
【0082】
図12は、このような第2の変形例の噴射ヘッド駆動回路100を例示した説明図である。図12に示した噴射ヘッド駆動回路100では、電源E1〜E4の発生する電圧値、および噴射ヘッド50に印加すべき駆動電圧(DACの出力電圧)が、ゲートセレクタ回路140に入力されている。そして、ゲートセレクタ回路140は、駆動電圧が上昇しているのか、減少しているのか、および、駆動電圧値、各電源が発生する電圧値に応じて、スイッチSN1〜SN4あるいはスイッチSP0〜SP3を切り換える。例えば、駆動電圧が上昇中であれば、駆動電圧よりも一定以上高い電圧値を発生している電源の中で、最も低い電圧値の電源から噴射ヘッド50に電力が供給されるように、スイッチSN1〜SN4の対応するスイッチをONにする。逆に、駆動電圧が減少中であれば、駆動電圧よりも一定以上低い電圧値を発生している電源の中で、最も高い電圧値の電源に、噴射ヘッド50の電力が回収されるように、スイッチSP0〜SP3の対応するスイッチをONにする。こうすれば、たとえ、各電源の発生する電圧値が安定していない場合でも、電力の消費を抑制しながら、噴射ヘッド50に適切な駆動電圧を印加することが可能となる。
【0083】
D−3.第3の変形例 :
また、上述した各種の実施例では、噴射ヘッド50に印加する駆動電圧を、そのままオペアンプOpampに入力して、負帰還制御を行うものとして説明した。しかし、駆動電圧を直接、オペアンプOpampに入力するのではなく、一旦、分圧した後に、オペアンプOpampに入力してもよい。
【0084】
図13は、このような第3の変形例の噴射ヘッド駆動回路100を例示した説明図である。図13に示した噴射ヘッド駆動回路100では、噴射ヘッド50に印加されている駆動電圧が、抵抗を用いた分圧回路で1/nに分圧された後に、オペアンプOpampに入力されている。こうすれば、DACが発生する電圧は、噴射ヘッド50に印加すべき駆動電圧の1/nの電圧でよい。このため、出力範囲の小さなDACを用いて、大きな変動量の駆動電圧を制御することが可能となる。
【0085】
D−4.第4の変形例 :
また、上述した各種の実施例および変形例では、トランジスタ内の寄生ダイオードが順バイアスされて、電流の逆流が発生することを避けるために、トランジスタと噴射ヘッド50との間に逆流防止用のダイオードが挿入されていた。このため、逆流防止用ダイオードの内部抵抗により、電圧降下および電力損失が発生していた。しかし、NMOS型トランジスタとPMOS型トランジスタとを直列に接続すれば、逆流防止用のダイオードを省略することが可能である。
【0086】
図14は、NMOS型トランジスタとPMOS型トランジスタとを直列に接続した第4の変形例の噴射ヘッド駆動回路100を例示した説明図である。図14(a)には、NMOS型トランジスタとPMOS型トランジスタとを直列に接続した回路図が示されており、図14(b)には、噴射ヘッド駆動回路100の動作状態に応じて、各トランジスタを動作させる様子が示されている。尚、図14(b)では、各トランジスタの寄生ダイオードも表示されている。
【0087】
このように、NMOS型トランジスタとPMOS型トランジスタとを直列に接続しておき、各トランジスタの動作状態を切り換えることで、噴射ヘッド50に電力を投入したり、噴射ヘッド50から電力を回収することが可能となる。例えば、噴射ヘッド駆動回路100を動作させない場合には、NMOS型トランジスタおよびPMOS型トランジスタの何れもスイッチング素子として使用して、スイッチ状態をOFF状態にすればよい。NMOS型トランジスタおよびPMOS型トランジスタには、それぞれに寄生ダイオードが形成されているが、寄生ダイオードの向きが逆方向となっているので、各トランジスタをOFF状態としている限り、電流が逆流することはない。
【0088】
また、電源部から噴射ヘッド50に対して電力を投入する場合には、噴射ヘッド50に印加している電圧よりも高電圧側の電源部En+1、および低電圧側の電源部Enのそれぞれに接続されているトランジスタを次のように動作させる。まず、高電圧側のNMOS型トランジスタはスイッチング素子として機能させてスイッチ状態をON状態に設定するとともに、PMOS型トランジスタについては増幅素子として機能させて、負帰還制御を行う。また、低電圧側については、NMOS型トランジスタおよびPMOS型トランジスタの何れもスイッチング素子として機能させて、スイッチ状態をOFF状態とする。
【0089】
反対に、噴射ヘッド50から電源部に対して電力を回収する場合には、噴射ヘッド50の電圧値よりも高電圧側については、NMOS型トランジスタおよびPMOS型トランジスタの何れもスイッチング素子として機能させて、スイッチ状態をOFF状態とする。また、低電圧側については、PMOS型トランジスタはスイッチング素子として機能させてスイッチ状態をON状態に設定するとともに、NMOS型トランジスタについては増幅素子として機能させて、負帰還制御を行う。
【0090】
このように、NMOS型トランジスタおよびPMOS型トランジスタを直列に接続しておき、それぞれのトランジスタの動作状態を切り換えてやることで、噴射ヘッド50に対して電力を投入したり、噴射ヘッド50から電力を回収することが可能となる。また、逆流防止用のダイオードを挿入する必要が無いので、ダイオードの内部抵抗による電圧降下や電力損失の発生を回避することが可能となる。
【0091】
D−5.第5の変形例 :
また、上述した第4の変形例では、直列に接続したNMOS型トランジスタおよびPMOS型トランジスタのうち、少なくとも噴射ヘッド50側のトランジスタのゲート電極については、フローティング駆動する必要があり、フローティング駆動用の電源が別途必要となった。しかし、図15に示すように、MOS型トランジスタの基板をソース電極から分離して、電源もしくはグランドに接続してやれば、フローティング駆動が不要となる。また、このような構成では、トランジスタに寄生ダイオードが形成されないので、逆流防止用のダイオードを挿入する必要もない。
【0092】
D−6.第6の変形例 :
また、噴射ヘッド50には複数の噴射ノズルが設けられているが、これらの噴射ノズルが常に駆動されるわけではなく、印刷しようとする画像に応じて、同時に駆動される噴射ノズルの数は大きく変動する。そして、噴射ノズルの数が大きく変動すると、噴射ヘッド50を駆動する噴射ヘッド駆動回路100にも影響が出るので、駆動電圧波形を安定して発生させることが困難となる。こうした点に鑑みて、噴射ヘッド50と並列に、ダミー負荷を接続するようにしても良い。
【0093】
図16は、噴射ヘッド50と並列にダミー負荷55を接続した第6の変形例の噴射ヘッド駆動回路100を例示した説明図である。図示されているように、噴射ヘッド50と並列にダミー負荷55を接続しておけば、たとえ駆動する噴射ノズルの数が大きく変動した場合でも、噴射ヘッド駆動回路100に与える影響を抑制することが可能となる。例えば、ダミー負荷55の負荷の大きさを、噴射ヘッド50と同程度としておけば、たとえ同時に駆動される噴射ノズルが全ノズルと0個との間で変動しても、噴射ヘッド50とダミー負荷55とを合わせた全ての負荷として見れば、負荷の変動率は約半分となる。このため、噴射ヘッド駆動回路100に与える影響が小さくなるので、安定した駆動電圧波形を用いて噴射ヘッド50を駆動することが可能となる。
【0094】
以上、各種の噴射ヘッド駆動回路について説明したが、本発明は上記すべての実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0095】
10…電源部、 20…目標電圧波形出力部、 30…負帰還制御部、 40…電源接続部、 50…負荷、 100…噴射ヘッド駆動回路、 140…ゲートセレクタ回路、 E1,E2,E3,E4…電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射ノズルから流体を噴射させるために、該噴射ノズルが設けられた噴射ヘッドに対して駆動電圧波形を供給する噴射ヘッド駆動回路であって、
前記噴射ヘッドに供給するべき目標電圧波形として、電圧値が時間の時間の経過とともに増加する電圧漸増部と、該電圧値が維持される電圧維持部と、該電圧値が時間の経過とともに減少する電圧漸減部とを少なくとも含んだ電圧波形を出力する目標電圧波形出力部と、
互いに異なる電圧値の電力を発生する複数の電源部と、
複数の前記電源部と前記噴射ヘッドとの間に該電源部毎に設けられて各電源部からの電力を該噴射ヘッドに供給するとともに、該噴射ヘッドに印加される電圧値が前記目標電圧波形と一致するように、該電圧値の負帰還制御を行う複数の負帰還制御部と、
前記噴射ヘッドに印加されている電圧値または前記目標電圧波形の電圧値に基づいて、複数の前記電源部の中から一の該電源部を選択し、選択した該電源部を該噴射ヘッドに接続するとともに残余の電源部については該噴射ヘッドから切断する電源接続部と
を備える噴射ヘッド駆動回路。
【請求項2】
請求項1に記載の噴射ヘッド駆動回路において、
前記電源部は、外部から供給された電力を蓄えておくことが可能な電源部であり、
前記電源接続部は、前記噴射ヘッドに印加されている電圧値または前記目標電圧波形の電圧値よりも、発生する電圧値の高い前記電源部と、発生する電圧値の低い前記電源部とを選択して、前記噴射ヘッドに接続する接続部である噴射ヘッド駆動回路。
【請求項3】
請求項1に記載の噴射ヘッド駆動回路において、
前記電源部から見て前記電源接続部の下流側で、前記噴射ヘッドと並列に接続されるとともに、外部から供給された電力を蓄えておくことが可能な負荷を備え、
前記電源部は、外部から供給された電力を蓄えておくことが可能な電源部であり、
前記電源接続部は、前記選択した電源部を、前記噴射ヘッドと前記負荷とに接続する接続部である噴射ヘッド駆動回路。
【請求項4】
噴射ノズルから流体を噴射させるために、該噴射ノズルが設けられた噴射ヘッドに対して駆動電圧波形を供給する噴射ヘッド駆動方法であって、
前記噴射ヘッドに供給するべき目標電圧波形として、電圧値が時間の時間の経過とともに増加する電圧漸増部と、該電圧値が維持される電圧維持部と、該電圧値が時間の経過とともに減少する電圧漸減部とを少なくとも含んだ電圧波形を出力する工程と、
複数の電源部から互いに異なる電圧値の電力を発生させる工程と、
前記噴射ヘッドに印加されている電圧値または前記目標電圧波形の電圧値に基づいて、複数の電源部の中から一の電源部を選択する工程と、
選択された前記電源部からの電力を受け取って前記噴射ヘッドに供給するとともに、該噴射ヘッドに印加される電圧値が前記目標電圧波形と一致するように、該電圧値の負帰還制御を行う工程と
を備える噴射ヘッド駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−100043(P2010−100043A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206759(P2009−206759)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【分割の表示】特願2008−275231(P2008−275231)の分割
【原出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】