説明

噴射剤組成物

【課題】 本発明は従来のR134aの代替となるとともに、図1に示すように該R134aの夏季の高温時に噴射圧力よりも小さくでき、冬季の低温時の噴射圧力よりも大きくできる噴射剤組成物を得るにある。
【解決手段】 スプレー缶に充填される、あるいは遊戯用ガスガン内に充填される噴射剤が1234zeとR32の混合ガスからなり、前記1234zeの重量比率を70〜95%にして噴射剤組成物を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスプレー缶や遊戯用ガスガン内に充填されるR134aの代替となる噴射剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の噴射剤用ガスとしては不燃ガスであるR134aが使用されていた。
しかしながら、このR134aガスは地球温暖化係数GWPが1300で、地球温暖化の観点から、近い将来、使用できなくなると考えられている。
また、一部で炭酸ガスや炭化水素系、LPG、DME、R152a等が使用されているが、炭酸ガスは高圧であること、炭化水素やその他のガスは燃焼範囲が大きく、安全性に問題があった。
【0003】
特に、遊戯用ガンの噴射剤としては、現在R134aやR152a等が使用されている。R134aの使用時にはスプレー缶より液状のR134aを遊戯用ガスガン内に充填し、R134aが気化する圧力によって弾を噴射させている。
しかしながら、気化圧力は環境温度に依存するため、図1に示すように夏季の高温時には噴射圧力が高くなり、冬季の低温時には噴射圧力が低下するという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−532520
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、従来のR134aの代替となるとともに、図1に示すように該R134aの夏季の高温時に噴射圧力よりも小さくでき、冬季の低温時の噴射圧力よりも大きくできる噴射剤組成物を提供することを目的としている。
【0006】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
【0007】
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明はスプレー缶に充填される、あるいは遊戯用ガスガン内に充填される噴射剤が1234ze(トランス1,3,3,3−テトラフルオロプロペンHFO−1234ze(E))とR32の混合ガスからなり、前記1234zeの重量比率を70〜95%にして噴射剤組成物を構成している。
【発明の効果】
【0009】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1により、1234zeとR32の混合ガスで、かつ1234zeの重量比率が70〜95%であるので、将来使用できなくなるであろう、従来のR134aの代替として使用できるとともに、図1に示すように夏季の高温時には噴射圧力がR134aよりも低くなり、冬季の低温時にはR134aよりも噴射圧力が高くできる。
【0010】
したがって、従来のR134aよりも性能が優れている。
(2)前記(1) により、地球温暖化係数GWPを200以下にでき、R134aよりも環境負荷を小さくすることができる。
(3)前記(1)により、遊戯用ガスガンに使用することにより、夏季の高温時と冬季の低温時の噴射圧力の差を小さくでき、夏季や冬季でも最適に遊戯用ガスガンを使用することができる。
(4)請求項2も前記(1)〜(3)と同様な効果が得られるとともに、R134aとほぼ同等の圧力で地球温暖化係数GWPを100以下に小さくでき、かつ不燃状態に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】R134a、R152aおよび本発明の噴射剤組成物の蒸気圧曲線を示す図。
【図2】本発明を実施するための第1の形態の説明図。
【図3】本発明を実施するための第2の形態の説明図。
【図4】R134aと本発明の噴射剤組成物の物性比較の説明図。
【図5】R134aと本発明の噴射剤組成物の温度と圧力との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0013】
図2に示す本発明を実施するための第1の形態において、(1)は従来のR134aの代替として使用することができる本発明の噴射剤組成物で、この噴射剤組成物(1)はスプレー缶(2)あるいは遊戯用ガスガン(3)内に充填される1234ze(4)とR32(5)の混合ガスからなり、前記1234ze(4)の重量比率が70〜95%である。
【0014】
このような噴射剤組成物(1) の1234ze(4)は地球温暖化係数GWPが6で小さく、微燃性のガスである。一方、R32(5) は地球温暖化係数GWPが550、燃焼範囲が13.6〜28.4vol%であるので、これらが前記条件で混合されると地球温暖化係数GWPが200以下で、不燃状態に近づけることができる。
【0015】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図3ないし図5に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、この本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0016】
図3ないし図5に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、1234ze(4)とR32(5)の混合ガスの、1234ze(4)の重量比率が90〜95%、本発明の実施の形態では93.1%の噴射剤組成物(1A)にした点で、このような噴射剤組成物(1A)とR134aとの物性を比較すると、図4に示すようになり、温度による圧力の変化は図5に示すようになった。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明はスプレー缶や遊戯用ガスガンに充填される噴射用ガスを製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0018】
1、1A:噴射剤組成物、 2:スプレー缶、
3:遊戯用ガスガン、 4:1234ze、
5:R32。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレー缶に充填される、あるいは遊戯用ガスガン内に充填される噴射剤が1234zeとR32の混合ガスからなり、前記1234zeの重量比率が70〜95%でGWPが200以下であることを特徴とする噴射剤組成物。
【請求項2】
1234zeとR32の混合ガスの、1234zeの重量比率が90〜95%、あるいは93%でGWPが100以下であることを特徴とする請求項1記載の噴射剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−184585(P2011−184585A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51822(P2010−51822)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000187149)昭和炭酸株式会社 (60)
【出願人】(397066627)エヌ・ケイ・ケイ株式会社 (18)