説明

噴射口詰まり防止機構および噴射口詰まり防止機構を備えたエアゾール式製品

【課題】エアゾール式製品において、噴射口の詰まりを防止する。
【解決手段】操作ボタン1を押下げて作動モードに移行させた時、容器本体11の内容物を外部空間域に噴射するのとは別経路で、容器内の噴射剤気相分(ガス)を外側上横孔部5aから貯留空間域Aへ流入させて貯留する。このとき貯留空間域Aの流出弁1c,4cは「閉」のままである。作動モード解除(操作ボタン1の押圧操作解除)にともない、貯留空間域Aに貯留済みの噴射剤気相分の圧力作用で操作ボタン1が上動し、流出弁1c,4cが開いて、噴射口2aやその近くに生じる残留内容物を、貯留空間域Aに貯留されていた噴射剤気相分の流出作用(図示点線矢印方向)で外部空間域へ噴射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射剤の作動で容器内容物が噴射口から外部空間域に噴射されるエアゾール式製品の作動モード設定操作を終了した際に内容物噴射口やその近くの通路部などに残留する内容物を、容器本体内部からの噴射剤気相分の作用で積極的に外部空間域へ流出させるようにした噴射口詰まり防止機構などに関する。
【0002】
この噴射口詰まり防止機構の作動により、エアゾール式製品における噴射口近くの残留内容物を外部空間域へといわば掃き出してしまうので、この残留内容物が噴射口に詰まったり固化したりすることを防止できる。
【0003】
本発明が適用される噴射対象の内容物には、例えばパウダー含有の制汗剤やペイント,接着剤をはじめとして、後述のように各種のものがある。
【0004】
なお、本明細書では必要に応じてノズルの噴射口の側を「先」,「前」と記す。
【背景技術】
【0005】
従来、エアゾール式製品の噴射口近くの残留内容物の固化防止対策としては内容物噴射口に対するシャットオフ機構が用いられている(後述の特許文献1参照)。
【0006】
シャットオフ機構は、エアゾール式製品の作動モード設定操作終了時に外部空間域への内容物噴射口を閉塞して、その近くの通路部などに残留する内容物が固化しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−56375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようにシャットオフ機構は、エアゾール式製品の噴射口およびその近くの通路部に残留する内容物を外部空間域からいわば遮断して密封するといった考えに基づくもので、所定の効果を奏している。
【0009】
一方、内容物噴射口の閉塞部材を、作動モード設定操作およびその解除に応じて当該内容物噴射口と接離させるための比較的複雑な駆動手段を用いているため、シャットオフ機構の組立てに手間がかかり、その製造コストも高くなるという点で改善の余地を有していた。
【0010】
本発明は、作動モード設定操作の終了にともなって噴射口やその近くに生じる残留内容物を、これまでのようにシャットオフ機構を用いてそこにいわば密封するのではなく、噴射口から積極的に外部空間域へ噴射するという新たな視点に立脚したものである。
【0011】
本発明はこれにより、エアゾール式製品の噴射口における残留内容物詰まり現象の効率的な阻止化,減少化を図ることを目的とする。
【0012】
また、シャットオフ機構組立ての手間を省き、エアゾール式製品の内容物噴射機構全体の製造コスト低減化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)エアゾール式製品の噴射口詰まり防止機構において、
第一の流入口(例えば後述の内側下横孔部3g)を持つ内容物通路部(例えば後述の中央縦通路部3a)、当該第一の流入口とは別の第二の流入口(例えば後述の内側上横孔部3d)を持つ噴射剤気相分通路部(例えば後述の環状縦通路部3b,横溝状部3c,縦孔部4g)、および当該噴射剤気相分通路部の流出側に配設される第一の貯留空間域設定部(例えば後述の内側筒状部4a,外側筒状部4d)を備えたステム(例えば後述のステム本体3,シール部材4)と、
前記ステムに取り付けられて、噴射口およびその上流側で前記内容物通路部と連通する噴射口側通路部(例えば後述のL字状通路部1b)、ならびに前記第一の貯留空間域設定部とともに前記噴射剤気相分通路部からの噴射剤気相分の貯留空間域(例えば後述の貯留空間域A)を形成する第二の貯留空間域設定部(例えば後述の内側環状垂下部1a,シール作用面1e)を備えた操作部(例えば後述の操作ボタン1)と、
容器本体側に取り付けられて、前記ステムの、少なくとも前記第一の流入口を含む上流側部分を収容し、かつ、作動モードにおいて前記第二の流入口と連通する噴射剤気相分通過用の第一の孔部(例えば後述の外側上横孔部5a)を備えたハウジング(例えば後述のハウジング5)と、
前記ハウジングに保持されて、前記第一の流入口との間でバルブ作用を呈する第一の弁部材(例えば後述の下側ステムラバー7)と、
前記ハウジングに保持されて、前記第二の流入口との間でバルブ作用を呈する第二の弁部材(例えば後述の上側ステムラバー6)と、を有し、
前記ステムおよび前記操作部を、
当該操作部が、当該ステムに対して移動可能な形で設けられ、
前記内容物通路部の流出側部分と前記噴射口側通路部の流入側部分とで前記貯留空間域の流出弁(例えば後述の流入口内縁部1c,環状テーパ面4c)を構成し、
作動モード設定操作の解除にともない、それまで閉じていた当該流出弁が当該貯留空間域の噴射剤気相分の圧力作用で開状態に移行して、当該噴射剤気相分が、当該噴射口側通路部および前記噴射口を経て外部空間域に噴射される、
態様で設定する。
(2)上記(1)において、
前記内容物通路部として、
前記ステムの中央の長手方向に形成された内側通路部(例えば後述の中央縦通路部3a)を用い、
前記噴射剤気相分通路部として、
前記内側通路部の回りの長手方向に形成された外側通路部(例えば後述の環状縦通路部3b,横溝状部3c,縦孔部4g)を用いる。
(3)上記(1),(2)において、
前記第一の弁部材および前記第二の弁部材を、
それぞれの間のハウジング内部に設けられたブッシュ部材(例えば後述のブッシュ8)で保持する。
(4)上記(3)において、
前記ブッシュ部材に、
前記第一の孔部から前記第二の流入口へと流れる前記容器本体内部の噴射剤気相分の通過部(例えば後述のL字状溝部8a)を備える。
(5)上記(1)〜(4)において、
前記ハウジングとして、
前記第一の弁部材よりも上流側の部分に、作動モードにおいて前記第一の流入口と連通する噴射剤気相分通過用の第二の孔部(例えば後述の外側下横孔部5b)を備えたものを用いる。
【0014】
このような構成からなる噴射口詰まり防止機構および、当該噴射口詰まり防止機構を備えたエアゾール式製品を本発明の対象としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上の課題解決手段により、
(11)エアゾール式製品の噴射口における残留内容物詰まりの発生防止の十全化を図り、
(12)シャットオフ機構組立ての手間を省き、エアゾール式製品の内容物噴射機構全体の製造コスト低減化を図る、
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】噴射口に対する内容物詰まり防止機構の静止モードを示す説明図である。
【図2】図1の内容物詰まり防止機構の操作ボタンを押下げて作動モードに移行させる際の初期段階、すなわち操作ボタン内部に形成される噴射剤気相分の貯留空間域の流出弁がそれまでの開状態から閉状態に移行した段階(貯留空間域へのいわば流入弁は閉状態のまま)を示す説明図である。
【図3】図2の初期段階に続く作動モード、すなわち内容物流入弁が開いて容器本体の内容物がステムから外部空間域に噴射され、かつ、貯留空間域への入力弁が開いて、内容物とは別ルートで容器本体の噴射剤気相分が貯留空間域に流入する段階を示す説明図である。
【図4】図3の作動モードの解除後の初期段階、すなわち内容物流入弁が静止モードと同じように閉じて通常の内容物噴射動作を終了し、かつ、貯留空間域へ流入済みの噴射剤気相分の圧力作用で操作ボタンが上動することにより貯留空間域の流出弁が開いて、噴射口から外部空間域へ噴射剤気相分が流出する段階を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜図4を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0018】
図1〜図4で用いるアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば内側環状垂下部1a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば操作ボタン1)の一部であることを示している。
【0019】
図1〜図4において、
Aは噴射剤気相分の貯留空間域,
Bは作動モードにおいて容器本体内部の噴射剤気相分が貯留空間域Aに流入するときの径路,
Cは作動モードにおいて容器本体内部の内容物が外部空間域へ噴射されるときの径路,
1は鞘状筐体からなり、その内部空間に貯留空間域Aが設定される操作ボタン,
1aは内容物および噴射剤気相分の流入部として作用する内側環状垂下部,
1bは内側環状垂下部1aの流入口部分から外部空間域まで連続するL字状通路部,
1cは内側環状垂下部1aの流入口内縁部,
1dは噴射対象の噴射剤気相分の貯留空間域を画定する外側環状垂下部,
1eは当該外側環状垂下部の上側内周面からなるシール作用面,
1fは当該外側環状垂下部の下端側内周面に形成されて、後述のシール部材4との係合作用により当該操作ボタンの上動位置を規制して抜け防止作用を呈する環状膨出部,
をそれぞれ示している。
【0020】
また、
2はL字状通路部1bの出口側に嵌合保持されたノズル,
2aは先端に形成された噴射口,
3は操作ボタン1の作動モード設定操作にともない、噴射対象内容物に対する周知の弁作用を呈し、かつ、噴射口2aの残留内容物除去用の噴射剤気相分に対する弁機能を備えたステム本体,
3aは内容物通過用の中央縦通路部(ステム本体の長手方向通路部),
3bは中央縦通路部3aの回りに形成された噴射剤気相分通過用の環状縦通路部(ステム本体の長手方向通路部),
3cは環状縦通路部3bの上端部に形成された横溝状部,
3dは環状縦通路部3bの下端側に連通する態様で形成された複数の内側上横孔部
3eは内側上横孔部3dの直外方に形成された環状上段部,
3fは内側上横孔部3dの上方外周面に形成された上側逆スカート面(環状テーパ面),
3gは中央縦通路部3aの下端側に連通する態様で形成された複数の内側下横孔部,
3hは内側下横孔部3gの直外方に形成された環状下段部,
3jは内側下横孔部3gの上方外周面に形成された下側逆スカート面(環状テーパ面),
をそれぞれ示している。
【0021】
また、
4はステム本体3の上端側に嵌合状態で取り付けられて、操作ボタン1への弁作用およびシール作用を呈する環状のシール部材(ステム構成要素),
4aはステム本体3の中央縦通路部3aに続く内容物通路域を形成し、かつ、貯留空間域Aの流出弁として作用する内側筒状部,
4bは当該内側筒状部の一部であって、中央縦通路部3aの流出側に連続する内容物通過用の開口部,
4cは当該内側筒状部の一部であって、操作ボタン1の流入口内縁部1cとの接離により上記流出弁として作用する環状テーパ面,
4dは内側筒状部4aの周りに形成された外側筒状部,
4eは当該外側筒状部の上側部分であって、操作ボタン1のシール作用面1eと密接する逆スカート部,
4fは当該外側筒状部の下側部分であって、操作ボタン1の環状膨出部1fとの当接作用により当該操作ボタンの上動位置を規制する環状凸部,
4gは内側筒状部4aと外側筒状部4dとの連結部分に複数形成された噴射剤気相分通過用の縦孔部,
をそれぞれ示している。
【0022】
また、
5はステム本体3の下側部分を収容するハウジング,
5aは当該ハウジングの周面上部分に形成されて、作動モードのとき、貯留空間域Aと連通する(ステム本体3の中央縦通路部3aには連通しない)外側上横孔部,
5bは当該ハウジングの周面下部分に形成されて、作動モードのとき、中央縦通路部3aと連通する(貯留空間域Aには連通しない)外側下横孔部,
5cは当該ハウジングの上開口側に形成された環状上端部分,
5dは当該ハウジングの内周面段部の内端側に形成された環凸状部分,
をそれぞれ示している。
【0023】
また、
6はステム本体3の環状上段部3eに当接する形で配設されて、内側上横孔部3dへの弁作用を呈する環状の上側ステムラバー,
7はステム本体3の環状下段部3hに当接する形で配設されて、内側下横孔部3gへの弁作用を呈する環状の下側ステムラバー,
8はハウジング5の内周面上部分に当接する形で配設されて、上側ステムラバー6の下面部分および下側ステムラバー7の上面部分のそれぞれを押圧保持する鞘状のブッシュ,
8aは当該ブッシュの外周面および上面に形成された噴射剤気相分通過用の例えば計三個のL字状溝部,
8bは下端部分が下側ステムラバー7の上面部分へ図示のようにいわば食込み状態で設定されて、少なくとも静止モードの下側ステムラバー7を、ステム本体3の環状下段部3hおよびハウジング5の環凸状部分5dとの間に挟みこむための内外計二個の環状垂下部,
をそれぞれ示している。
【0024】
また、
9はハウジング5の内部空間域に配設され、ステム本体3を上方向に付勢して静止モード位置に設定するためのコイルスプリング,
10はハウジング5の下端側筒状部に取り付けられた内容物通過用のチューブ,
11は後述の内容物および噴射用ガスを収納したエアゾール式製品の容器本体,
12はハウジング5を保持してその環状上端部分5cとの間に上側ステムラバー6を挟持し、かつ、容器本体11の開口部に巻締め態様により取り付けられたマウンティングキャップ,
をそれぞれ示している。
【0025】
ここで、操作ボタン1,ノズル2,ステム本体3,シール部材4,ハウジング5,ブッシュ8およびチューブ10などはポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。
【0026】
また、上側ステムラバー6および下側ステムラバー7はゴム製のものであり、コイルスプリング9は金属製,プラスチック製のものであり、容器本体11およびマウンティングキャップ12は金属性のものである。
【0027】
図示の内容物噴射機構の基本的特徴は、
(21)図1の静止モードの操作ボタン1を押し下げて作動モードに移行させるとき、先ず、当該操作ボタンのみが下動して、その流入口内縁部1cがシール部材4の環状テーパ面4cと当接することにより、操作ボタン内部の貯留空間域Aと外部空間域とのそれまでの連通状態が阻止され(図2参照)、
(22)その後の操作ボタン1およびステム本体3の連動にともない、上側ステムラバー6の内端側周回部分が下方に湾曲して、ステム本体3の内側上横孔部3dがそれまでの閉状態から開状態へと移行することにより、容器本体11の噴射剤気相分が径路Bのように流れて貯留空間域Aにいったん貯留され(図3参照)、
(23)また、上記(22)の連動にともない、下側ステムラバー7の内端側部分が下方に変位して、ステム本体3の内側下横孔部3gがそれまでの閉状態から開状態へと移行することにより、容器本体11の内容物が噴射剤の作用で径路Cのように流れてノズル2の噴射口2aから外部空間域に噴射され(図3参照)、
(24)操作ボタン1の押下げ操作の解除にともない、コイルスプリング9の作用でステム本体3が上方向に移動してその内側上横孔部3dおよび内側下横孔部3gがそれぞれ閉状態の静止モード位置へと復帰し、かつ、貯留空間域Aに貯留済みの噴射剤気相分の圧力作用で操作ボタン1がシール部材4に対して上動することにより流入口内縁部1cが環状テーパ面4cから離間し、その結果、貯留空間域Aの噴射剤気相分が操作ボタン1のL字状通路部1bからノズル2の噴射口2aを経て外部空間域に流出する(図4参照)、
ことである。
【0028】
そして、上記(24)の噴射剤気相分の外部空間域への流出により、作動モード終了後の操作ボタン1のL字状通路部1bからノズル2の噴射口2aまでの残留内容物が外部空間域へと噴射されることになる。
【0029】
図1の静止モードでは、
(31)ステム本体3の内側上横孔部3dおよび内側下横孔部3gが閉じ、
(32)貯留空間域Aのいわば流出弁(操作ボタン1の流入口内縁部1cとシール部材4の環状テーパ面4cとの間)が開いている。
【0030】
そのため当然のことながら、容器本体11の内容物が外部空間域に噴射されることもなく、また、容器本体11の噴射剤気相分が貯留空間域Aに貯留されることもない。
【0031】
なお、静止モード位置の操作ボタン1を例えば利用者が不意に軽く押下げた(ステム本体3は下動しない)場合など、図2のように、上記(32)の流出弁が閉じてしまうことがある。
【0032】
図2の押下げ操作初期モードでは、
(41)ステム本体3は静止モードと同じ位置にあり、その内側上横孔部3dおよび内側下横孔部3gがそれぞれ「閉」に設定されたまま、
(42)操作ボタン1の流入口内縁部1cがシール部材4の環状テーパ面4cに当接する。
状態になっている。
【0033】
図3の作動モードでは、
(51)上記(42)の当接後におけるステム本体3の下動にともない、上側ステムラバー6および下側ステムラバー7の各内端側周回部分がそれぞれ上側逆スカート面3fおよび下側逆スカート面3jで押下げられて下方に湾曲することにより、当該上側ステムラバーおよび当該下側ステムラバーがそれぞれ環状上段部3eおよび環状下段部3hから離間して、内側上横孔部3dおよび内側下横孔部3gはそれまでの「閉」から「開」へと変化し、
(52)操作ボタン1の流入口内縁部1cは、図2の押下げ操作初期モードと同じようにシール部材4の環状テーパ面4cに当接した「閉」のままに維持されている。
【0034】
この作動モードのとき、
(61)容器本体11の噴射剤気相分は、「ハウジング5の外側上横孔部5a−ハウジング5の上側内部空間域(その1)−ブッシュ8のL字状溝部8a−ハウジング5の上側内部空間域(その2)−ステム本体3の内側上横孔部3d−ステム本体3の環状縦通路部3b−シール部材4の開口部4b」を経て、貯留空間域Aに流入し(径路B)、
(62)容器本体11の内容物は、周知のように噴射剤の作用で「チューブ10−ハウジング5の下側内部空間域−ステム本体3の内側下横孔部3g−ステム本体3の中央縦通路部3a−シール部材4の内側筒状部4a−操作ボタン1のL字状通路部1b−ノズル2の噴射口2a」を経て、外部空間域に噴射される(径路C)。
【0035】
作動モードでは、上述のように貯留空間域Aの流出弁(操作ボタン1の流入口内縁部1cとシール部材4の環状テーパ面4cとの間)が閉じているため、貯留空間域Aに流入する噴射剤気相分は操作ボタン1のL字状通路部1bへと流出せずに、当該貯留空間域にとどまることになる。
【0036】
また、内容物噴射用の径路Cの一部であるハウジング5の下側内部空間域には、容器本体11の噴射剤気相分が外側下横孔部5bを介して直接流入する。この噴射剤気相分の流入により内容物の噴射動作が効率的に行なわれる。
【0037】
図4の内容物噴射操作解除モードでは、
(71)操作ボタン1の押下げ操作の解除にともない、ステム本体3がコイルスプリング9の弾性作用により上方向に移動して静止モード位置へと復帰し、すなわちステム本体3の内側上横孔部3dおよび内側下横孔部3gがそれぞれ「開」から「閉」へと変化して、容器本体11の内容物および噴射剤気相分のそれまでのステム本体3(中央縦通路部3aおよび環状縦通路部3b)への流入が終了し、
(72)押下げ操作力を受けない操作ボタン1は、貯留空間域Aに貯留済みの噴射剤の圧力によりステム本体3に対して上動し、
(73)この操作ボタン1の上動の結果、流出弁(操作ボタン1の流入口内縁部1cとシール部材4の環状テーパ面4cとの間)が「開」状態となり、
(74)貯留空間域Aの噴射剤が、「操作ボタン1のL字状通路部1b−ノズル2の噴射口2a」を経て外部空間域に流出する。
【0038】
このように利用者が内容物噴射操作を止めると、内容物の噴射動作が終了するともに、貯留空間域Aに貯留済みの噴射剤が操作ボタン1のL字状通路部1bおよびノズル2の噴射口2aを通って外部空間域へと流出する。
【0039】
この内容物噴射動作の終了にともなう噴射剤の流出作用により、L字状通路部1bや噴射口2aの残留内容物が外部空間域に噴射されるので、噴射対象内容物のいわゆるノズル詰まりを効率的に防止することができる。
【0040】
なお、貯留空間域Aの噴射剤の噴射口2aからの流出が終了すると、操作ボタン1はステム本体3に対してそのときの上下方向位置に、操作ボタン1のシール作用面1eとシール部材4の逆スカート部4eとの摩擦作用によって保持される。この保持状態は図1の静止モードでもある。
【0041】
本発明が以上の実施形態に限定されないことは勿論であって、例えばトリガレバーを用いるタイプのエアゾール式製品にも適用できる。
【0042】
本発明が適用されるエアゾール式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0043】
容器本体に収納する内容物は、液状,クリーム状,ゲル状など種々の形態のものを用いることができ、内容物に配合される成分としては例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などが挙げられる。
【0044】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0045】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0046】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,グリセリン,1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0047】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0048】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,ヒドロキシエチルセルロース,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0049】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0050】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0051】
内容物噴射用ガスとしては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【符号の説明】
【0052】
A:噴射剤気相分の貯留空間域
B:容器本体内部の噴射剤気相分が貯留空間域Aに流入するときの径路
C:容器本体内部の内容物が外部空間域へ噴射されるときの径路,
1:操作ボタン
1a:内側環状垂下部
1b:L字状通路部
1c:流入口内縁部
1d:外側環状垂下部
1e:シール作用面
1f:環状膨出部
【0053】
2:ノズル
2a:噴射口
3:ステム本体
3a:内容物通過用の中央縦通路部
3b:噴射剤気相分通過用の環状縦通路部
3c:横溝状部
3d:内側上横孔部
3e:環状上段部
3f:上側逆スカート面(環状テーパ面)
3g:内側下横孔部
3h:環状下段部
3j:下側逆スカート面(環状テーパ面)
【0054】
4:シール部材
4a:内側筒状部
4b:開口部
4c:環状テーパ面
4d:外側筒状部
4e:逆スカート部
4f:環状凸部
4g:噴射剤気相分通過用の縦孔部
【0055】
5:ハウジング
5a:外側上横孔部
5b:外側下横孔部
5c:環状上端部分
5d:環凸状部分
【0056】
6:上側ステムラバー
7:下側ステムラバー
8:鞘状のブッシュ
8a:L字状溝部
8b:環状垂下部
9:コイルスプリング
10:内容物通過用のチューブ
11:容器本体
12:マウンティングキャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の流入口を持つ内容物通路部、当該第一の流入口とは別の第二の流入口を持つ噴射剤気相分通路部、および当該噴射剤気相分通路部の流出側に配設される第一の貯留空間域設定部を備えたステムと、
前記ステムに取り付けられて、噴射口およびその上流側で前記内容物通路部と連通する噴射口側通路部、ならびに前記第一の貯留空間域設定部とともに前記噴射剤気相分通路部からの噴射剤気相分の貯留空間域を形成する第二の貯留空間域設定部を備えた操作部と、
容器本体側に取り付けられて、前記ステムの、少なくとも前記第一の流入口を含む上流側部分を収容し、かつ、作動モードにおいて前記第二の流入口と連通する噴射剤気相分通過用の第一の孔部を備えたハウジングと、
前記ハウジングに保持されて、前記第一の流入口との間でバルブ作用を呈する第一の弁部材と、
前記ハウジングに保持されて、前記第二の流入口との間でバルブ作用を呈する第二の弁部材と、を有し、
前記ステムおよび前記操作部は、
当該操作部が、当該ステムに対して移動可能な形で設けられ、
前記内容物通路部の流出側部分と前記噴射口側通路部の流入側部分とで前記貯留空間域の流出弁を構成し、
作動モード設定操作の解除にともない、それまで閉じていた当該流出弁が当該貯留空間域の噴射剤気相分の圧力作用で開状態に移行して、当該噴射剤気相分が、当該噴射口側通路部および前記噴射口を経て外部空間域に噴射される、
態様で設定されている、
ことを特徴とする噴射口詰まり防止機構。
【請求項2】
前記内容物通路部は、
前記ステムの中央の長手方向に形成された内側通路部であり、
前記噴射剤気相分通路部は、
前記内側通路部の回りの長手方向に形成された外側通路部である、
ことを特徴とする請求項1記載の噴射口詰まり防止機構。
【請求項3】
前記第一の弁部材および前記第二の弁部材は、
それぞれの間のハウジング内部に設けられたブッシュ部材により保持されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の噴射口詰まり防止機構。
【請求項4】
前記ブッシュ部材は、
前記第一の孔部から前記第二の流入口へと流れる容器本体内部の噴射剤気相分の通過部を備えている、
ことを特徴とする請求項3記載の噴射口詰まり防止機構。
【請求項5】
前記ハウジングは、
前記第一の弁部材よりも上流側の部分に、作動モードにおいて前記第一の流入口と連通する噴射剤気相分通過用の第二の孔部を備えている、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の噴射口詰まり防止機構。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の噴射口詰まり防止機構を備え、かつ、噴射剤および内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−125695(P2012−125695A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279213(P2010−279213)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】