説明

噴射器チップ組立体及び燃料噴射方法

【課題】ガス化用の噴射器ノズルを提供する。
【解決手段】ノズル用の噴射器チップは、燃焼器の燃焼帯34に燃料流32を噴射するように構成された複数の中央本体開口部16を先端部に有する中央本体12を含む。1つ以上の燃料通路20,22,24は、中央本体12の周囲に配設され、燃焼帯34に燃料スラリーを噴射するように構成される。1つ以上の酸素通路20,22,24は、中央本体12の周囲に配設され、燃焼帯34に酸素流36を噴射するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化及び燃焼器に関する。より詳細には、本発明はガス化用の噴射器ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの公知の統合型ガス化複合サイクル(IGCC)プラントは、少なくとも1つの発電タービンシステムと統合されるガス化システムを含む。例えば、少なくとも一部の公知のガス化システムは、燃料、空気又は酸素、蒸気、及び/又はCO2の混合気を合成ガス、即ち「シンガス」に転化する。シンガスは、ガスタービンエンジンの燃焼器に送られて、発電機に動力を供給し、発電機は電力網に電力を供給する。少なくとも一部の公知のガスタービンエンジンからの排気は、熱回収蒸気発生器(HRSG)に供給され、蒸気タービンを駆動する蒸気を発生する。蒸気タービンにより発生した動力もまた、発電機を駆動し、電力網に電力を提供する。
【0003】
少なくとも一部のガス化システムは、ガス化装置の炉にプロセス流体を供給して少なくとも1つの発熱反応を促進する噴射システムを含む。一部のガス化システムは、複数のタイプの燃料を使用してガス化プロセスを駆動する。例えば、石炭ガス化プラントは、主に燃料として石炭スラリーを利用してガス化を推進し、石炭中の炭素をガス燃料に転化して電気を生産する。しかしながら、ガス化装置が起動された時、ガス化室の下流のシステム構成要素はまだ設計点作動圧力ではないので、プロセス効率が不足する。従って、石炭スラリーのガス化は、下流の構成要素の圧力が上昇するまでに、硫黄及び/又はNOx等の望ましくない排出物を大量に生じさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの排出物問題を軽減するために、始動中は石炭スラリーの代わりに天然ガス等のよりクリーンな燃焼の燃料がガス化室に導入されることが多い。天然ガスは、石炭スラリーのものとは別個の専用ノズルを介してガス化装置に噴射される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、ガス化装置の燃焼器ノズル用の噴射器チップは、燃焼器の燃焼帯に燃料流を噴射するように構成された複数の中央本体開口部を先端部に有する中央本体を含む。1つ以上の燃料通路は、中央本体の周囲に配設され、燃焼帯に燃料スラリーを噴射するように構成される。1つ以上の酸素通路は、中央本体の周囲に配設され、燃焼帯に酸素流を噴射するように構成される。
【0006】
本発明の別の態様によれば、燃焼器への燃料噴射方法は、噴射器チップの中央本体の先端部の複数の中央本体開口部を通して燃焼器の燃焼帯に燃料流の第1部分を噴射するステップを含む。燃料流の第2部分は、中央本体の周囲に配設された1つ以上の燃料通路を介して燃焼帯に噴射される。燃料流の第2部分の噴射は中断され、燃料スラリーが1つ以上の燃料通路を介して燃焼帯に噴射される。
【0007】
これら及びその他の利点及び特徴は、図面に関連してなされる以下の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ガス化装置ノズル用の噴射器チップの一実施形態の概略断面図である。
【図2】始動運転中のガス化装置ノズル用の噴射器チップの一実施形態の動作概略図である。
【図3】石炭スラリー運転中のガス化装置ノズル用の噴射器チップの一実施形態の動作概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明と見なされる主題は、本明細書の結びの部分の特許請求の範囲において具体的に指摘され明確に請求されている。本発明の上記及びその他の特徴及び利点は、添付図面に関連してなされる以下の詳細な説明から明らかである。
【0010】
詳細な説明は、例として図面を参照して、利点及び特徴と共に本発明の実施形態を説明する。
【0011】
ガス化装置用の噴射器ノズルチップ10の一実施形態を図1に示す。図1の実施形態のノズルチップ10は、ノズルチップ10を通る4つの別個の異なる物質流の流路を含む。まず、ノズルチップ10は、一部の実施形態では、ノズルチップ10の中心軸14に位置付けられた中央本体12を含む。中央本体12は、中央本体12の先端部18に位置付けられた複数の中央本体開口部16を含む。
【0012】
複数の燃料通路、又はランスは、中央本体12を取り囲んで配設される。内側通路20は中央本体12の周囲に位置付けられており、一部の実施形態では、中央本体12と同心である。中間通路22は、内側通路20の外側寄りの中央本体12の周囲に位置付けられており、一部の実施形態では、中央本体12及び/又は内側通路20と同心である。図1に示すように、外側通路24は、中間通路22の外側寄りの中央本体12の周囲に位置決めされており、一部の実施形態では、中央本体12、内側通路20、及び/又は中間通路22と同心である。一部の実施形態では、内側通路端部26、中間通路端部28、及び/又は外側通路端部30は、中央本体12の先端部18と同一平面である。
【0013】
ガス化装置の始動時、図2に示すように、燃料流32、例えば、天然ガス等の低硫黄燃料は、中央本体開口部16を介して中央本体12を通してノズルチップ10の下流の燃焼帯34に噴射される。低硫黄燃料の燃料流32はまた、中間通路22を通して燃焼帯34に噴射される。一次酸素流36は、外側通路24を通して燃焼帯34に供給される。一次酸素36は、燃焼帯34内で燃料流32と混合されて、そこで燃焼される。一部の実施形態では、二次酸素流38を内側通路20を通して燃焼帯34に噴射し、更なる酸素を供給して燃料流32と燃焼させてもよい。
【0014】
次に図3を参照すると、ガス化装置の石炭スラリーモード運転中、中間通路22は、石炭スラリー40等のガス化装置燃料流を燃焼帯34へ運ぶために利用される。一次酸素36及び二次酸素38は、それぞれ、外側通路24及び内側通路20を通して供給される。通常運転中は、石炭スラリー流40がガス化プロセスを駆動するので、中央本体12を通る燃料流32は停止され、二酸化炭素(再循環させてもよい)、窒素、蒸気、又は水等の異なる流体流42が中央本体開口部16を通して流される。流体42は、パージガス、モデレータガス又は冷却液であってもよい。流体42は中央本体12に対する冷却を行なって、更に石炭スラリー40の燃焼粒子による中央本体開口部16の詰まりを防止する。更に、流体42は、中央本体12内で燃焼生成物が中央本体開口部16を通って上流に戻る燃焼逆流(burnback)を防止する。
【0015】
例えば、始動運転及び石炭スラリーモード運転から動作が移行する間は、燃料流32及び石炭スラリー40の両方を燃焼帯34に噴射してもよく、燃料流32は中央本体開口部16を通して噴射され、石炭スラリー40は中間通路22を通して噴射される。始動モード(全て燃料流32)から石炭スラリーモード(全て石炭スラリー40)への移行が起こると、各々の流量を徐々に変化させて2つのモード間でスムーズな移行を行なうことができる。例えば、動作が始動モードから石炭スラリーモードへ移行すると、中央本体開口部16を通して噴射される燃料流32の量が徐々に減らされる一方、中間通路22を通して噴射される石炭スラリー40の量は徐々に増やされる。更に、ノズルチップ10は別々の中央本体12と中間通路22とを介して片方又は両方のタイプの燃料を噴射する機能があるので、石炭スラリー流40が停止されて燃料流32の噴射が再開される、石炭スラリーモードと待機モードとの間の切り換えを素早く起こすことができる。
【0016】
一部の実施形態では、内側通路端部26、中間通路端部28、及び/又は外側通路端部30は、中央本体12の先端部18と同一平面である。端部を全て互いに同一平面にすることによって、ガス化装置の性能に害を及ぼす可能性がある、燃料と一次酸素との予混合を防止する。更に、同一平面端部構成によって、石炭スラリーモード運転中の燃焼逆流が防止される。
【0017】
限られた数の実施形態のみに関して本発明を詳細に説明してきたが、本発明がそのような開示した実施形態に限定されるものではないことは、容易に理解されるはずである。むしろ、本発明は、これまで説明していないが本発明の技術思想及び技術的範囲に相応するあらゆる数の変形、変更、置換又は同等の構成を組み込むように修正することができる。更に、本発明の様々な実施形態について説明してきたが、本発明の態様は説明した実施形態の一部のみを含むことができることを理解されたい。従って、本発明は、上記の説明によって限定されるものと見なすべきではなく、特許請求の範囲の技術的範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0018】
10 ノズルチップ
12 本体
14 軸
16 開口部
18 先端部
20 内側通路
22 中間通路
24 外側通路
26 内側通路端部
28 中間通路端部
30 外側通路端部
32 燃料流
34 燃焼帯
36 一次酸素
38 二次酸素
40 石炭スラリー
42 流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器の燃焼帯(34)に燃料流(32)を噴射するように構成された複数の中央本体開口部(16)を先端部(18)に有する中央本体(12)と、
前記中央本体(12)の周囲に配設され、前記燃焼帯(34)に燃料スラリーを噴射するように構成された1つ以上の燃料通路(20,22,24)と、
前記中央本体(12)の周囲に配設され、前記燃焼帯(34)に酸素流を噴射するように構成された1つ以上の酸素通路(20,22,24)とを備える、
ノズル用の噴射器チップ(10)。
【請求項2】
前記1つ以上の燃料通路(20,22,24)の少なくとも1つ又は前記1つ以上の酸素通路(20,22,24)の少なくとも1つは、前記中央本体(12)と実質的に同心である、請求項1に記載の噴射器チップ(10)。
【請求項3】
前記1つ以上の燃料通路(20,22,24)の少なくとも1つ又は前記1つ以上の酸素通路(20,22,24)の少なくとも1つは、前記中央本体(12)の前記先端部(18)と実質的に同一平面である、請求項1に記載の噴射器チップ(10)。
【請求項4】
前記中央本体(12)は、前記燃焼帯(34)にパージ流体を噴射するように更に構成される、請求項1に記載の噴射器チップ(10)。
【請求項5】
前記1つ以上の燃料通路(20,22,24)は、前記燃焼帯(34)に燃料流(32)及び/又は燃料流(32)と燃料スラリーの混合物を噴射するように更に構成される、請求項1に記載の噴射器チップ(10)。
【請求項6】
燃焼器への燃料噴射方法であって、
噴射器チップ(10)の中央本体(12)の先端部(18)の複数の中央本体開口部(16)を通して前記燃焼器の燃焼帯(34)に燃料流(32)の第1部分を噴射するステップと、
前記中央本体(12)の周囲に配設された1つ以上の燃料通路(20,22,24)を介して前記燃焼帯(34)に前記燃料流(32)の第2部分を噴射するステップと、
前記燃料流(32)の前記第2部分の噴射を中断するステップと、
1つ以上の燃料通路(20,22,24)を介して前記燃焼帯(34)に燃料スラリーを噴射するステップとを含む、方法。
【請求項7】
前記燃料流(32)の前記第1部分の噴射を中断するステップと、
前記複数の中央本体開口部(16)を介して前記燃焼帯(34)に燃料を噴射するステップとを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記燃料流(32)の前記第2部分を噴射するステップ及び前記燃料スラリーを噴射するステップは、前記1つ以上の燃料通路(20,22,24)を介して前記燃焼帯(34)に前記燃料流(32)の前記第2部分の噴射と前記燃料スラリーの噴射とを同時に行なうステップである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記燃料スラリーを噴射するステップは、石炭スラリー(40)を噴射するステップである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記中央本体(12)の周囲に配設された1つ以上の酸素通路を介して前記燃焼帯(34)に酸素流を噴射するステップを更に含む、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−255436(P2012−255436A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−122581(P2012−122581)
【出願日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】