説明

噴射装置

【課題】 複数本のエアゾール缶が安定した姿勢で保持されて、且つ操作性、経済性が極めて高い噴射装置を提供する。
【解決手段】 各エアゾール缶A,Bのカール部3の端面直下に形成された間隙4に、保持板5に配設された各切欠き6の縁部7が差込まれて、保持板5に各エアゾール缶A,Bが保持される。したがって、各エアゾール缶A,Bが容易に着脱されると共に各エアゾール缶A,Bが安定した姿勢で保持される。また、構成が簡素化されて軽量化される。これにより、極めて操作性が高い噴射装置1を提供することが可能になる。さらに、使い捨てタイプの噴射装置と比較した場合には、製造コストが大幅に削減されて経済性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射装置に関して、特に複数本のエアゾール缶が保持されて、各エアゾール缶から噴射される噴射剤が混合されて噴射される噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、保冷コンテナは、パネルの接合部がウレタン樹脂によってシールされる。一般に、保冷コンテナのシールでは、持ち運びが容易なことから、主剤が充填されたエアゾール缶(以下、エアゾール缶Aと称する。)の噴射口と、硬化剤が充填されたエアゾール缶(以下、エアゾール缶Bと称する。)の噴射口と、が略Y字状の混合チューブによって接続される二缶並列型の噴射装置が用いられる。該噴射装置では、エアゾール缶Aから噴射される主剤とエアゾール缶Bから噴射される硬化剤とが上記混合チューブによって混合されて噴射される。このような噴射装置では、例えば特許文献1に記載されたスプレー装置(以下、従来の噴射装置と称する。)が知られている。この従来の噴射装置では、2本のエアゾール缶が上面開口の箱状体内に並列に載置状態で収容されて、これらエアゾール缶の天部には、手動押し操作によって、主剤と硬化剤とが噴射される噴射部が設けられる。
【0003】
また、上記従来の噴射装置では、上記箱状体の前側壁体に上方へ延びる上方延設部が付設されて、その上方延設部の最上部には、突起部を左右に一体に備える平面視十字状の板状体によって形成された噴射レバーの先端直線部が枢支される。そして、上記従来の噴射装置では、上記噴射レバーを、その先端側の直線枢支部周りに、先端側から手前側へ回動操作することにより、当該噴射レバーの姿勢を左右の突起部が各噴射部を上から押圧可能な姿勢にする。この状態で、噴射レバーの手前側端部が片手で手動押し操作されて各噴射部が同時に押し操作されることにより、該各噴射口から噴射された主剤と硬化剤とが混合チューブによって混合されて噴射される。しかしながら、上記従来の噴射装置では、エアゾール缶を装着するのが容易であるが、他方、各エアゾール缶が箱状体内に載置状態で収容されているため、各エアゾール缶の姿勢が不安定であった。
【0004】
このため、従来の噴射装置では、各エアゾール缶を安定させるために、噴射レバーによって各エアゾール缶の各噴射部を押さえる必要があるのに加えて、当該噴射装置の下部(箱状体)が重くなるため、噴射レバーによって各エアゾール缶の各噴射部が不意に押し操作されてしまうことがある。そこで、箱状体の深さを深く形成したり、各エアゾール缶をベルト等で上方延設部に固定することが考えられるが、重量の増大や操作性の悪化を招くことになる。そこで、各エアゾール缶の上部がプラスチック製のアタッチメントに嵌着される噴射装置があるが、使い捨てであるため、製造コストが増大される。
【特許文献1】実開平6−71487号公報(段落番号0010〜0012、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、複数本のエアゾール缶が安定した姿勢で保持されて、且つ操作性、経済性が極めて高い噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、複数本のエアゾール缶が並列に保持されて各エアゾール缶の噴射口から噴射される各噴射剤が混合されて噴射される噴射装置であって、所定幅に形成されて一端が開口される切欠きがエアゾール缶の並列方向に配設される保持板と、該保持板にヒンジを介して設けられる操作部と、を具備して、エアゾール缶のカール部の端面直下に形成される間隙に保持板の切欠きの縁部が差込まれることにより保持板に各エアゾール缶が保持されて、操作部がヒンジの回りに回動されることにより該操作部によって各エアゾール缶の各噴射部が押圧されるように構成されることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の噴射装置において、保持板の操作部が操作可能位置にグリップが設けられることを特徴とする。
【0007】
したがって、請求項1に記載の発明では、各エアゾール缶のカール部の端面直下の間隙に保持板の各切欠きの縁部が差込まれて各エアゾール缶が保持される。そして、操作部が操作されて該操作部が保持板に対して回動されることにより、該操作部によって各エアゾール缶の各噴射部が押圧されて各噴射部の噴射口から各噴射剤が噴射される。
請求項2に記載の発明では、グリップを握った手で操作部を操作することができる。
【発明の効果】
【0008】
複数本のエアゾール缶が安定した姿勢で保持されて、且つ操作性、経済性が極めて高い噴射装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。図1に示されるように、本噴射装置1は、2本のエアゾール缶A,Bが並列に保持されて、各エアゾール缶A,Bの各噴射口2(図2参照)から噴射される各噴射剤が混合されて噴射されるものであって、各エアゾール缶A,Bのカール部3の端面直下に形成された間隙4に、保持板5に配設された各切欠き6の縁部7が差込まれることにより、上記保持板5に各エアゾール缶A,Bが保持される構造になっている。なお、本噴射装置1では、各エアゾール缶A,Bに充填される各噴射剤が二液混合型ウレタン樹脂の主剤及び硬化剤である。図2に示されるように、各エアゾール缶A,Bは、エアゾールバルブ8が支持体9によって支持される。また、各エアゾール缶A,Bは、該支持体9の外周縁部と蓋体10の内周縁部とがかしめられてカール部3が形成される。そして、各エアゾール缶A,Bは、上記カール部3の端面12と蓋体10の上面13との間(カール部3の端面12直下)に所定間隔の間隙4が形成される。
【0010】
なお、各エアゾール缶A,Bは、上記蓋体10の外周縁部と有底円筒状に形成された本体15の上端部とが、かしめられて接合される。図1に示されるように、本噴射装置1は、上記保持板5の板厚が、当該保持板5に形成される切欠き6の縁部7が各エアゾール缶A,Bのカール部3の端面12直下に形成された間隙4に嵌合されるように設定される。また、各切欠き6は、一端が保持板5の一辺に開口されて、該保持板5の一辺から他辺に向けて相互に平行に延びるようにして当該保持板5に所定間隔で並設される。なお、各切欠き6の他端は、各エアゾール缶A,Bの蓋体10の内周縁部のカール部3の端面12直下の外径に整合されたR形状(半円形)に形成される。また、本噴射装置1は、上記保持板5の他辺に所定高さの立片16が設けられる。さらに、該立片16には、ヒンジ17を介して操作板18(操作部)が設けられる。
【0011】
そして、本噴射装置1は、操作板18が操作されて上記保持板5に対してヒンジ17の回りに閉じる側(保持板5に対して操作板18が対向される側)へ回動されることにより、該操作板18の各押圧部19が各エアゾール缶A,Bの各噴射部20に当接されて、この状態で操作板18の操作レバー21が操作されることにより、各エアゾール缶A,Bの各噴射部20が押下げられるように構成される。また、図5に示されるように、本噴射装置1は、各エアゾール缶A,Bの各噴射部20の各噴射口2が略Y字状に形成された混合チューブ23に接続されて、操作板18の操作レバー21が操作されて各エアゾール缶A,Bの各噴射部20が押下げられることにより、各噴射口2から噴射された主剤と硬化剤とが上記混合チューブ23によって混合されて噴射される構造になっている。なお、上記混合チューブ23は、適宜市販のものが使用される。また、図1に示されるように、本噴射装置1は、上記保持板5の手前側(図1における紙面視下側)下面にグリップ24が設けられて、該グリップ24を握った手で上記操作板18の操作レバー21が操作可能に構成される。
【0012】
次に、本噴射装置1の作用を説明する。まず、図5に示されるように、予め、各エアゾール缶A,Bの各噴射部20の各噴射口2に混合チューブ23を接続する。次に、保持板5に対して操作板18が開かれた状態(図4に示される状態)で、図3に示されるように、各エアゾール缶A,Bのカール部3の端面12直下に形成された間隙4に保持板5に配設された各切欠き6の縁部7を差込むことにより、保持板5に各エアゾール缶A,Bを装着させる。そして、保持板5に対して操作板18がヒンジ17の回りに閉じる側(保持板5に対して操作板18が対向される側)へ回動されて、該操作板18の各押圧部10が各エアゾール缶A,Bの各噴射部20に当接される。この状態で、グリップ24を握った手の親指で操作板18の操作レバー21が操作されることにより、当該操作板18の各押圧部19によって各エアゾール缶A,Bの各噴射部20が押下げられて、各エアゾール缶A,Bの各噴射部20の各噴射口2からそれぞれ主剤と硬化剤とが噴射される。そして、各エアゾール缶A,Bの各噴射部20の各噴射口2から噴射された主剤と硬化剤とが、混合チューブ23によって混合されて当該混合チューブ23の噴射口から噴射される。
【0013】
この実施の形態では以下の効果を奏する。
本噴射装置1では、各エアゾール缶A,Bのカール部3の端面12直下に形成された間隙4に、保持板5に配設された各切欠き6の縁部7が差込まれて、上記保持板5に各エアゾール缶A,Bが保持される。
したがって、本噴射装置1は、各エアゾール缶A,Bが容易に着脱されると共に各エアゾール缶A,Bが安定した姿勢で保持される。また、本噴射装置1は、従来の噴射装置のように、各エアゾール缶A,Bの本体15を収容するための容器(箱状体)が必要ないため、当該従来の噴射装置と比較して構成が簡素化されて軽量化される。これにより、極めて操作性が高い噴射装置1を提供することが可能になる。
さらに、各エアゾール缶A,Bの本体15の上部がプラスチック製のアタッチメントに嵌着された使い捨てタイプの噴射装置と比較した場合には、製造コストが大幅に削減されて経済性を向上させることができる。
【0014】
なお、実施の形態は上記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
本噴射装置1では、保持板5に設けられた切欠き6の縁部7を各エアゾール缶A,Bのカール部3の端面12直下に形成された間隙4に差し込むことで各エアゾール缶A,Bを保持板5で保持したが、各エアゾール缶A,Bのカール部3を保持するように構成されていれば、各エアゾール缶A,Bを保持させる部材が板形状である必要はなく、例えば、相互に平行に延びるアームを各エアゾール缶A,Bのカール部3の端面12直下に形成された間隙4に差し込むことで各エアゾール缶A,Bを保持板5で保持するように噴射装置1を構成してもよい。
本噴射装置1は、保持板5の2箇所に切欠き6を配設して2本のエアゾール缶A,Bを保持するように構成したが、例えば、保持板5の3箇所に切欠き6を配設して3本のエアゾール缶を保持するように噴射装置1を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本噴射装置の説明図であって、特に、各エアゾール缶が装着された状態を示す図である。
【図2】エアゾール缶の構造を示すための図である。
【図3】本噴射装置の説明図であって、特に、各エアゾール缶が装着された状態を示す正面図である。
【図4】本噴射装置の斜視図である。
【図5】本噴射装置の説明図であって、特に、各エアゾール缶の各噴射部の各噴射口が混合チューブによって接続された状態を示す図である。
【符号の説明】
【0016】
1 噴射装置、2 噴射口、3 カール部、4 間隙、5 保持板、6 切欠き、7 縁部、17 ヒンジ、18 操作板(操作部)、24 グリップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のエアゾール缶が並列に保持されて各エアゾール缶の噴射口から噴射される各噴射剤が混合されて噴射される噴射装置であって、所定幅に形成されて一端が開口される切欠きが前記エアゾール缶の並列方向に配設される保持板と、該保持板にヒンジを介して設けられる操作部と、を具備して、前記エアゾール缶のカール部の端面直下に形成される間隙に前記保持板の前記切欠きの縁部が差込まれることにより前記保持板に各エアゾール缶が保持されて、前記操作部が前記ヒンジの回りに回動されることにより該操作部によって各エアゾール缶の各噴射部が押圧されるように構成されることを特徴とする噴射装置。
【請求項2】
前記保持板の前記操作部が操作可能位置にグリップが設けられることを特徴とする請求項1に記載の噴射装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−131264(P2006−131264A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322300(P2004−322300)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【Fターム(参考)】