説明

噴射装置

【課題】ガスの圧力で効率よく噴射物を噴射させることが可能でありながら、製品コストを低減しうる噴射装置を提供する。
【解決手段】噴射装置1は、収納されている液体11をガスの圧力で噴射させるものであって、起動信号を入力して所定量のガスを発生させるガス発生器2と、噴射物収容器3とを備え、噴射物収容器3は、液体11の収納された収納袋4を内蔵する収容室5と、ガス発生器2の発生するガスが収容室5に放出されるガス放出口10とを有すると共に、収容室5が口栓6で塞がれており、口栓6には、収容室5の内部と外界とを通じる噴射路12が形成されると共に、噴射路12の収容室5側の口部周囲には、収納袋4を破断する破断刃7が形成され、破断刃7の刃先7a近傍を周回する収容室5の内壁部分と収納袋4とを環状に固着して、収容室5がガス放出口10側と噴射路12側とに区画されて構成されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に収容する液体、気体、固体を、ガスの圧力で噴射させる噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば液体を噴射させる噴射装置には、自動販売機、現金自動預け払い機、自動両替機、現金収納ケースなどに装備され、盗難などの被害の際に、内蔵する着色インク液を噴射して紙幣束を汚損させるものがある。このような噴射装置が、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載された汚濁液噴出装置は、円筒形状の汚濁液貯蔵容器の内空が、容器軸方向に沿って容器内を移動可能な可動円板によって、ガス充填室と汚濁液収納袋内蔵室とに区画されている。この装置では、ガス発生器から放出されるガスの圧力によって可動円板が収納袋内蔵室の方に移動して、汚濁液収納袋を圧縮する。同時に、可動円板と汚濁液貯蔵容器との隙間からガスが汚濁液収納袋の方へ流れ込み汚濁液収納袋を圧縮する。この圧縮により、汚濁液収納袋内蔵室に設けられた口栓の鋭利なエッジで、汚濁液収納袋が破断して、口栓の液出口から汚濁液が外部に噴射する。汚濁液収納袋は、口栓のエッジ部分に対応して周回する容器の内壁に固着されているため、ガスは外界に漏れ出ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−159012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された噴射装置では、円筒形容器の軸方向に沿って可動円板をスムーズに移動させるために、可動円板が容器内壁に接触した際に互いが滑りあうよう、可動円板の縁を滑らかに形成する必要がある。また、ガスの圧力で折れ曲がったり変形したりしないように、可動円板を所定の強度で形成する必要がある。これらから、可動円板が高価なものになり、製品コストが高くなってしまうという課題があった。
【0006】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、ガスの圧力で効率よく噴射物を噴射させることが可能でありながら、製品コストを低減しうる噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された噴射装置は、収納されている液体、気体、および/または固体である噴射物を、ガスの圧力で噴射させる噴射装置であって、
起動信号を入力して所定量のガスを発生させるガス発生器と、噴射物収容器とを備え、
該噴射物収容器は、該噴射物の収納された収納袋を内蔵する収容室と、該ガス発生器の発生するガスが該収容室に放出されるガス放出口とを有すると共に、該収容室が口栓で塞がれており、
該口栓には、該収容室の内部と外界とを通じる噴射路が形成されると共に、該噴射路の該収容室側の口部周囲には、該収納袋を破断する破断刃が形成され、
該破断刃の刃先近傍を周回する該収容室の内壁部分と該収納袋とを環状に固着して、該収容室が該ガス放出口側と該噴射路側とに区画されて構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載された噴射装置は、請求項1に記載されたもので、前記ガス放出口と前記収納袋との間には、少なくとも該ガス放出口を覆う大きさで形成された耐燃性のガス遮蔽幕が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の噴射装置によれば、口栓に形成された破断刃近くで噴射物の収納袋を収容室の内壁に環状に固着して、収容室をガス放出口側と噴射路側とに区画してシールしていることにより、ガス発生器の発生したガスが噴射路から外界に漏れ出ないのでガスを無駄にすることなく効率よく収納袋を圧縮することができる。この収納袋の圧縮による変形で収納袋が破断刃によって破断され、さらに収納袋がガスによって圧縮されるため、収納袋内の噴射物を瞬時に噴射させることができる。背景技術に記載した従来の噴射装置のような所定の強度等を有する可動円板を備えないので、部品点数を減らすことができ、ひいては製品コストを低減することができる。また、従来の可動円板がなくても収納袋は充分に圧縮されるので、従来の可動円板を有する噴射装置と同様に、効率よく噴射物を噴射させることができる。
【0010】
本発明の噴射装置によれば、ガス放出口と収納袋との間には、少なくともガス放出口を覆う大きさで形成された耐燃性を有するガス遮蔽幕が配置されていることにより、放出されるガスや爆轟波、燃焼残渣の収納袋への直撃が防止され、収納袋の破損を防止することができる。したがって、収納袋は耐燃性を有する必要がないので安価なものを使用することができる。さらに、ガス遮蔽幕は、収納袋にガス等の直撃を阻止可能であるものであれば、撓んだり変形したりしてもよく、収容室内を移動させる必要もないので、従来の噴射装置の可動円板よりも安価な材質で形成することができ、製品コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用する噴射装置の断面図である。
【図2】本発明を適用する噴射装置の使用状態を示す断面図である。
【図3】本発明を適用する噴射装置の口栓の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの例に限定されるものではない。
【0013】
図1に示す噴射装置1は、一例として、非図示の自動現金預け払い装置の現金収納ケース内に設置されて、盗難などの際に着色液を噴射して現金を着色汚損させるためのものである。この噴射装置1は、起動信号を入力して所定量のガスを発生させるガス発生器2、および噴射物収容器3を備えている。
【0014】
ガス発生器2は、アゾ化合物などのガス発生剤21、ガス発生剤21を伝熱体などで加熱する起動部22、および、起動部22に起動信号を外部から入力するためのリード線23を備えている。
【0015】
噴射物収容器3は、切削加工や鋳物若しくは成形による円筒形状の金属又は樹脂製であり、その内空は、青色インクなどの有色インクや紫外線に反応するインク等の液体11の収納された収納袋4を内蔵する収容室5になっている。この噴射物収容器3の円筒の一端側には、ガス発生器2が装着されると共に、そのガス発生器2の発生するガスを収容室5に放出するためのガス放出口10が形成されている。また、噴射物収容器3の円筒の他端側には、口栓6が装着されて、収容室5がこの口栓6で塞がれている。
【0016】
口栓6には、収容室5の内部と外界とを通じる噴射路12が形成されている。この噴射路12には、非図示の噴射ノズルなどが取り付けられる。また、図1,3に示すように、口栓6には、噴射路12の収容室5側の口部周囲に、収納袋4を破断する環状の破断刃7が形成されている。この口栓6の外周縁部は、破断刃7の刃先7aと同じ高さで、破断刃7を取り囲む壁状に形成されている。
【0017】
図1に示す収納袋4は、ポリエチレンなどの柔軟な樹脂製の袋であり、青色インクなどの有色インクや紫外線に反応するインク等の液体11で満たされて密封されている。この収納袋4は、刃先7aの近傍を周回する収容室5の内壁部分に、接着剤8で環状に固着されている。この固着により、収容室5がガス放出口10側と噴射路12側とに区画されてシールされている。収納袋4は、刃先7aに近接しつつ非接触となるように、内壁に固着することが望ましい。また、収納袋4は、口栓6の外周縁部に固着されていてもよい。
【0018】
接着剤8には、一例としてRTV(Room Temperature Vulcanizing)ゴム、またはシリコーン系接着剤が用いられる。
【0019】
ガス放出口10と収納袋4との間には、少なくともガス放出口10を覆う大きさで形成された、耐燃性のガス遮蔽幕9が配置されている。ガス遮蔽幕9には、耐燃性を有する薄い紙、布、樹脂シート、マイラーシート、または、マイカシートが用いられる。ガス遮蔽幕9の形状は、ガス放出口10を覆う大きさであれば、円形状、四角形状、または、多角形状など任意の形状のものが用いられる。
【0020】
ガス遮蔽幕9がガス放出口10を覆う位置からずれないように、ガス放出口10の周辺部、または、収容室5の内壁に、ガス遮蔽幕9の一部を接着剤などで位置決め固定しておいてもよい。一例として、ガス遮蔽幕9の縁部を一ヵ所、もしくは縁部の対向する二か所、または、縁部の三か所を固定する。
【0021】
この噴射装置1は、以下のように用いられる。
【0022】
例えば、非図示の自動現金預け払い装置が扉のこじ開けなどの異常を検知した際に、噴射装置1に起動信号を出力する。この起動信号がガス発生器2のリード線23に入力されると、起動部22が直ちに加熱し、ガス発生剤21が性状変化して一挙に大量のガスを発生する。
【0023】
図2に二点鎖線矢印で示すように、発生したガスは、爆轟波や燃焼残渣と共にガス放出口10から収容室5内に急激に放出されるが、これらはガス遮蔽幕9に当たるため、収納袋4を直撃しない。このため、収納袋4が高強度で耐燃性の材質で形成されていなくても、その破損を防止することができる。
【0024】
同図に示すように、収納袋4は、収容室5内のガス圧力の急激な高まりで圧縮されて変形し、口栓6に押し付けられて切断刃7によって破断して、さらにガス圧力で圧縮される。これにより、同図に二点鎖線白抜矢印で示すように、収納袋4内の液体11が、噴射路12から噴射し、非図示の紙幣に液体11を吹き掛けることができる。
【0025】
この際に、収納袋4の接着剤8による固着でガス放出口10側と噴射路12側とがシールされているため、ガスは噴射路12から漏れ出ないので、ガスを無駄にすることなく効率的に収納袋4を圧縮することができ、液体11を最後まで勢いよく噴射させることができる。噴射装置1は、一例として、起動信号の入力から数100ms程度で液体11の噴射を完了する。
【0026】
ガス遮蔽幕9は、ガスの放出の勢いで撓んだり変形したり収容室内を移動したりしたとしても、ガス遮蔽幕9にガスが直撃することで、収納袋4の破損を防止できる。
【0027】
この場合、ガス遮蔽幕9の一部が位置決め固定されていると、ガス遮蔽幕9がガスの放出で移動しないので、ガス遮蔽幕9にガスが確実に当たるため、収納袋4へのガスの直撃が防止され、収納袋4の破損を確実に防止することができる。
【0028】
なお、上記では、着色した溶液を収納袋4に収容した例について説明したが、着色剤を添加したゲル、着色した粘着性の粉を収容してもよい。また、噴射装置1は、紙幣を汚損させる用途以外にも用いることができ、収納袋4に、液体、気体、および/または、粉や粒状の固体を収納して、それを噴射させることができる。
【0029】
また、上記ではガス遮蔽幕9を備えた例について説明したが、この幕9を備えなくてもよい。その場合、ガスが収納袋4を直撃するので、例えばアルミニウム蒸着したポリエチレンなどの高強度で耐熱性を有する素材で収納袋4を形成する必要があるが、部品点数を減らすことができる。
【符号の説明】
【0030】
1は噴射装置、2はガス発生器、3は噴射物収容器、4は収納袋、5は収容室、6は口栓、7は破断刃、7aは刃先、8は接着剤、9はガス遮蔽幕、10はガス放出口、11は液体、12は噴射路、21はガス発生剤、22は起動部、23はリード線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納されている液体、気体、および/または固体である噴射物を、ガスの圧力で噴射させる噴射装置であって、
起動信号を入力して所定量のガスを発生させるガス発生器と、噴射物収容器とを備え、
該噴射物収容器は、該噴射物の収納された収納袋を内蔵する収容室と、該ガス発生器の発生するガスが該収容室に放出されるガス放出口とを有すると共に、該収容室が口栓で塞がれており、
該口栓には、該収容室の内部と外界とを通じる噴射路が形成されると共に、該噴射路の該収容室側の口部周囲には、該収納袋を破断する破断刃が形成され、
該破断刃の刃先近傍を周回する該収容室の内壁部分と該収納袋とを環状に固着して、該収容室が該ガス放出口側と該噴射路側とに区画されて構成されていることを特徴とする噴射装置。
【請求項2】
前記ガス放出口と前記収納袋との間には、少なくとも該ガス放出口を覆う大きさで形成された耐燃性のガス遮蔽幕が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−25194(P2011−25194A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175443(P2009−175443)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000232922)日油技研工業株式会社 (67)
【Fターム(参考)】