説明

噴流混合装置及び燃焼装置

【課題】 中空型の縦渦を速やかに形成することにより、流体の混合を高効率に行うことができ、且つ、混合状態を容易に制御することができる噴流混合装置及び燃焼装置を提供する。
【解決手段】 内外二重に配設され、内管ノズル2から噴出される第1流体Fと外管ノズル3から噴出される第2流体Aとを混合させる噴流混合装置であって、外管ノズル3を第2流体Aの流れ方向と平行な中心軸O周りに回転させる回転手段5と、外管ノズル3の内部に設けられるとともに、第2流体Aを流通可能な複数の孔を有するハニカム部4と、を備え、回転手段5による外管ノズル3の回転に伴ってハニカム部4を回転させ、ハニカム部4を流通する第2流体Aに剛体回転を与えることにより、中心軸Oから離れた所定の環状領域に渦度の極値を有する中空型の縦渦を発生させる噴流混合装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内管ノズル及び外管ノズルからそれぞれ噴出される流体の混合状態を制御する噴流混合装置及び流体の混合状態を制御して燃焼を行う燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超音速航空機用エンジンとして注目されているスクラムジェットエンジンや小型分散型エネルギーシステムとしての利用が期待されているマイクロガスタービン燃焼器では、燃焼器に供給される燃料と酸化剤の混合が抑制されやすい環境下において運転されるため、燃料と酸化剤の混合が効果的に行われ難い。
【0003】
スクラムジェットエンジンでは、超音速の大気を燃焼器に導き、超音速燃焼を行う過程において、燃焼器内で燃焼反応を起すために必要な燃料と酸化剤の滞留時間が極めて短い。また、超音速流によって引き起こされる流体の圧縮性の影響によって擾乱の成長が抑制され、燃料と酸化剤の混合層の成長率は非圧縮性の場合と比べて顕著に減少する。また、数kW級のマイクロガスタービン燃焼器では、低レイノルズ数の環境下で燃料と酸化剤が供給されるため、燃料と酸化剤の混合が速やかに促進され難い。そのため、このような環境下においては、燃料と酸化剤の混合を速やかに促進し、高効率にこれらの混合を行うことが要求される。
【0004】
従来、燃料と酸化剤の混合を高効率に行うために、例えば、外側ノズルの噴出口の近傍に、外側ノズル内の流体に擾乱を与え、外側ノズルを出た流体と内側ノズルを出た流体との混合を渦の発生下で促進するアクチュエータを配設した噴流混合装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、燃料と燃焼用空気の混合ガスが流れる円筒部の先端部に三角形状の縦渦発生板を有する保炎器を設けることにより、混合ガスの流れを縦渦発生板の三角形の2つの端縁で剥離し、下流側に流れ方向に中心軸を持つ縦渦を発生させて燃焼を促進させる燃焼装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。また、上記の燃焼装置等により発生される形状が中実且つ渦度分布が渦中心で最大値を持つ従来の縦渦ではなく、断面が渦中心でドーナツ状の形状をなし、渦度分布が渦中心において零で、円環状の周辺部で2個の極値を持っていることを特徴とする不安定中空縦渦を適用することにより、2相以上の流体の混合を短時間の内に促進できることが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3477513号公報
【特許文献2】特開平10−332115号公報
【特許文献3】特開平09−195779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の噴流混合装置は、中空縦渦を発生して混合を促進するものではなく、燃料と酸化剤の混合は燃焼器の下流部で行われることになる。また、噴出口近傍にアクチュエータが設けられるため、熱耐久性が低いという問題がある。また、特許文献2の燃焼装置も同様に中空縦渦を発生して混合を促進するものではない。また、円筒部の先端部に取り付けた三角形状の縦渦発生板により縦渦を発生させているため、構造上、流体の混合状態を制御することが困難である。また、特許文献3では、2相以上の流体の混合を促進する中空縦渦そのものの構造や性質については記載されているものの、このような中空縦渦を発生させるための手段等については記載されておらず、所望の中空縦渦を発生させて流体の混合を促進させる装置はこれまでなかった。
【0007】
本発明は、上記のような種々の課題に鑑みてなされたものであって、中空型の縦渦を速やかに形成することにより、流体の混合を高効率に行うことができ、且つ、混合状態を容易に制御することができる噴流混合装置及び燃焼装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の噴流混合装置は、流体を噴出するそれぞれのノズルが内外二重に配設され、内管ノズルから噴出される第1流体と外管ノズルから噴出される第2流体とを混合させる噴流混合装置であって、前記外管ノズルを前記第2流体の流れ方向と平行な中心軸周りに回転させる回転手段と、前記外管ノズルの内部に設けられるとともに、前記第2流体を流通可能な複数の孔を有するハニカム部と、を備え、前記回転手段による前記外管ノズルの回転に伴って前記ハニカム部を回転させ、該ハニカム部を流通する前記第2流体に剛体回転を与えることにより、前記中心軸から離れた所定の環状領域に渦度の極値を有する中空型の縦渦を発生させることを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の噴流混合装置は、前記回転手段が、回転力を付与するモータと、該モータの出力軸に固定される第1タイミングプーリと、前記外管ノズルに固定され、前記モータによる回転力が前記第1タイミングプーリ及びタイミングベルトを介して伝達される第2タイミングプーリとを有することを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の噴流混合装置は、前記ハニカム部が、セラミック材料からなることを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の燃焼装置は、前記噴流混合装置の外管ノズルの先端に燃焼器を備え、前記第1流体として燃料、前記第2流体として酸化剤を用いることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の噴流混合装置によれば、内部にハニカム部が設けられた外管ノズルを回転させることにより、中心軸周りには、ほとんど渦度が存在せず、中心軸から離れた所定の環状領域に渦度の極値を有する不安定な中空型の縦渦を速やかに形成することができる。これにより、外管ノズルから噴出される第2流体からなる中空型の縦渦自身は噴出された後、速やかに崩壊するので、流体の混合が困難な低レイノルズ数環境下においても、内管ノズルから噴出される第1流体との混合を高効率に行うことができる。
【0013】
請求項2記載の噴流混合装置によれば、外管ノズルを回転させるための回転力をモータから得ているので、このモータの回転数を制御することにより、容易に所望の渦度を有する中空型の縦渦を生じさせることができる。
【0014】
請求項3記載の噴流混合装置によれば、ハニカム部が、セラミック材料により形成されているので、熱耐久性に優れており、高温な環境下においても有効に用いることができる。
【0015】
請求項4記載の噴流混合装置によれば、燃料と酸化剤の混合を速やかに促進させることができるので、高効率な完全燃焼を実現することができる。これにより、燃焼に必要な燃料の使用量を軽減することができるので、コストを抑制するとともに省資源化を図ることができる。また、燃料の使用量軽減に伴って、窒素酸化物や一酸化炭素等の燃焼排出物や未燃炭化水素系燃料の排出を低減することができ、燃焼器の破損や騒音に繋がる振動燃焼も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る噴流混合装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る噴流混合装置の一例を示す概略平面図である。
【図3】回転手段の一例を示す概略模式図である。
【図4】中空型縦渦の不安定化の過程の一例を示す図である。
【図5】実施例1のZ=1.0における混合状態の様子を示す図である。
【図6】実施例2のZ=1.0における混合状態の様子を示す図である。
【図7】実施例2のZ=0.5における混合状態の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る噴流混合装置の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本発明に係る噴流混合装置1は、流体の混合が困難な低レイノルズ数の環境下においても、流体の混合を速やかに促進させるためのものであって、図1及び図2に示すように、円筒形状の内管ノズル2と、該内管ノズル2と同軸に配設される外管ノズル3と、該外管ノズル3の内部に設けられるハニカム部4と、外管ノズル3を中心軸O周りに回転させるための回転手段5とを備えるものである。
【0018】
図1及び図2に示すように、内管ノズル2及び外管ノズル3は、内外二重に同軸になるように配設されている。内管ノズル2は、その内部に形成される流路2aを通じて噴出口2bから第1流体Fを噴出する。外管ノズル3は、内管ノズル2と外管ノズル3との間に形成される円環状の流路3aを通じて、噴出口3bから第2流体Aを噴出する。また、図1では、本実施形態に係る噴流混合装置1は、燃焼装置に適用される場合について示しており、外管ノズル3の先端には、燃焼器6が連結されている。このように噴流混合装置1が燃焼装置に利用される場合には、第1流体Fとして、天然ガスや石油等の所謂燃料が用いられ、第2流体Aとして、燃焼用の酸化剤等が用いられる。
【0019】
第1流体F及び第2流体Aは、詳細は図示しないが、例えば、それぞれ高圧ボンベ等から質量流量計へと供給され、質量流量計によって指定された供給流量に制御されて、内管ノズル2の流路2a及び外管ノズル3の流路3aへと供給される。尚、図1では、第2流体Aは、外管ノズル3の流路3aへと供給される前に、固定されている外管7の内部に設けられる拡散部71にて均等に拡散され、流れ方向に長尺な複数の孔を有するハニカムからなる整流部72にて不必要な乱れが生じないように十分に整流される。また、図1では、第1流体Fについては、内管ノズル2の流路2aへと直接供給されているが、流路2aと供給される前に、第2流体Aと同様に拡散及び整流が行われるように構成しても良い。
【0020】
このように、第2流体Aが供給される外管ノズル3は、外管7の先端にベアリング8(8a、8b)を介して取り付けられており、このベアリング8によって中心軸O周りに回転自在に支持されている。また、外管ノズル3の下端側に設けられるベアリング8aは、円筒状のベース板9によって、外管ノズル3の外周に取付けらており、上方に設けられるベアリング8bは、ベース板9に複数のボルト10を介して上方に連結されている円筒状の天板11によって外管ノズル3の外周に取り付けられている。
【0021】
外管ノズル3の内部にあたる流路3aには、第2流体Aが流通可能な複数の孔4aを有するハニカム部4が隙間なく敷き詰められている。このハニカム部4は、外管ノズル3の回転に伴って回転するように外管ノズル3の内周に固定されており、内管ノズル2の外周と接する部分は、摩擦力の影響等が軽減されるように滑り易く形成されている。また、ハニカム部4は、回転手段5により外管ノズル3とともに回転した場合に、孔4aを流通する第2流体Aに剛体回転を与えるために、第2流体Aの流れ方向に長尺に形成されている。尚、ハニカム部4の材質としては、高温の環境下等においても十分な耐久性が得られるように熱耐久性に優れたセラミック材料等により形成されることが好ましい。
【0022】
回転手段5は、中心軸O周りに外管ノズル3を回転させるためのものであって、図3に示すように、回転力を付与するためのモータ51と、該モータ51の出力軸52に固定される第1タイミングプーリ53と、外管ノズル3の外周に固定される第2タイミングプーリ54と、第1タイミングプーリ53と第2タイミングプーリ54とを巻き掛けするタイミングベルト55とを備えている。この回転手段5では、モータ51により第1タイミングプーリ53を回転させることにより、タイミングベルト55を介して所定のギア比に応じて第2タイミングプーリ54を回転させることができる。従って、モータ51の回転速度を制御することにより、外管ノズル3を所望の回転速度にて中心軸O周りで回転させることができる。
【0023】
このような回転手段5を用いて、例えば、図2に矢印で示すような回転方向に外管ノズル3を回転させることにより、中空型縦渦を発生させることができる。この中空型縦渦は、中心軸Oから離れた所定の環状領域に渦度を有し、中心軸O周りにはほとんど渦度を有しないものであり、前記所定の環状領域に渦度の極値が存在する。また、この中空型縦渦は、従来の渦中心に渦度の極値を有する中実の縦渦に比べて不安定であるという性質を持っているので、内管ノズル2の噴出口2bから噴出される第1流体Fとの混合を促進するのに効果的である。
【0024】
図4は、噴出口2b、3b近傍における中空型縦渦の不安定化の過程について示すものであり、図中の白い部分が第2流体Aの噴流(外管噴流)を示しており、白い部分に囲まれた黒い部分が第1流体Fの噴流(内管噴流)を示している。尚、図4は、中心軸Oに垂直な方向、言い換えれば噴出口2b、3b断面と平行な断面(横断面)の様子を示めしている。図4(a)は、外管ノズル3を回転させていない状態を示すものであり、この状態では中空型縦渦は形成されていない。この状態から外管ノズル3を回転させることにより、中空型縦渦が発生し、外管ノズル3の回転数を増加させるのに伴って、中空型縦渦の不安定化が進む。
【0025】
そして、外管ノズル3の回転数の増加に伴って、中空型縦渦の不安定化が進むと、外管噴流の外側せん断層に複数の角が形成され、図4(b)に示すように、角から第2流体Aが飛び出して、図4(c)に示すような外管ノズル3の回転方向と逆向きで第2流体Aの流れ方向と平行な軸を持つ複数の縦渦構造が形成される。更に不安定化が進むと、図4(d)に示すように、外管噴流の内側せん断層においても第2流体Aが飛び出し、図4(e)に示すように、中空型縦渦内に外側せん断層に形成された縦渦構造とは逆向きの複数の小規模な縦渦構造(孤立渦)が形成される。また、更に不安定化が進むと、外側せん断層に形成された縦渦構造も小規模な縦渦構造へと移行するとともに、これらの小規模な縦渦構造の数が増加する。また、これらの小規模な渦構造が形成、発達、崩壊を繰り返すことにより、図4(f)に示すように外管噴流が大きく内側に入り込んで、外管噴流と内管噴流の混合が促進される。尚、本実施形態では、噴流混合装置1が燃焼装置に利用される場合について説明したが、本発明に係る噴流混合装置1の用途はこれに限定されるものではなく、低レイノルズ環境下における様々な流体の混合を促進する装置として有効に利用することができる。また、本実施形態では、内外二重に同軸になるように内管ノズル2と外管ノズル3が配設された噴流混合装置について説明しているが、更に外管ノズル3の外側に同軸となるように、中心軸O周りに回転可能な円筒状のノズルを配設することにより、3重同軸の噴流混合装置を構成することも考えられる。このような構成を採ることにより、更なる流体の多様な混合の促進を図ることができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る噴流混合装置1を用いて、流体の混合を行った場合の実施例について説明する。
【0027】
(実施例1)
実施例1では、内管ノズル2として内径10mm、高さ284mm、肉厚1mmの円筒管、外管ノズル3として内径20mm、高さ80mmの円筒管を用いた。外管ノズル3の内部に設けるハニカム部4には、内径1.4mm、外径1.6mm、長さ40mmのセラミック製のストローが敷き詰められてなるストローハニカムを用いた。また、このストローハニカムは、その出口が外管ノズルの噴出口より、30mm上流側に位置するように設けた。外管ノズルを回転させるためのモータには、ACスピードコントロールモータ(オリエンタルモーター、MSS540−011WU−S)を用いた。第1流体F及び第2流体AにはともにAir(空気)を用いるとともに、レーザートモグラフィー法を用いて渦構造を可視化するために第2流体Aにトレーサー粒子を混入させた。また、第1流体Fの平均流速Vi、第2流体Aの平均流速Voは、ともに1.0m/sとなるように設定した。
【0028】
このような条件で、モータを制御して外管ノズル3の回転速度を調節して、流体の混合状態について観察した。図5は、無次元高さZ=z/di=1.0の位置における噴出口2b、3b断面と平行な断面(横断面)から見た流体の混合状態の様子を示めしている。但し、zは噴出口3bからの高さ、diは外管ノズル3の内径を表している。尚、上述したように、図5〜7は、レーザートモグラフィー法を用いて渦構造の可視化を行ったものであって、白い部分が第2流体Aの噴流(外管噴流)を示しており、白い部分に囲まれた黒い部分が第1流体Fの噴流(内管噴流)を示している。
【0029】
図5(a)は、スワール数S=0.52のときの渦構造を示しており、中空型縦渦の不安定化が進み、外管噴流の外側せん断層に形成された複数の角から外管噴流が飛び出し始めている。図5(b)は、スワール数S=0.59のときの渦構造を示しており、外管ノズル3の回転方向と逆向きの複数の縦渦構造が形成され、外管噴流の内側せん断層においても第2流体Aが飛び出し始めている。スワール数S=0.92としたときには、図5(c)に示すように、中空型縦渦内に外側せん断層に形成された縦渦構造とは逆向きの複数の小規模な縦渦構造(孤立渦)が形成され始める。スワール数S=1.31としたときには、更に不安定化が進み、図5(d)に示すように、外側せん断層に形成された縦渦構造も小規模な縦渦構造へと移行するとともに、これらの小規模な縦渦構造の数が増加する。図5(e)のようにスワール数S=1.57のときには、外管噴流が大きく内側に入り込み始め、図5(f)のようにスワール数S=1.96のときには、外管噴流が内側を覆うようになり、外管噴流と内管噴流の混合が促進される。
【0030】
このように、本発明に係る噴流混合装置によれば、第1流体Fの平均流速Viと第2流体Aの平均流速Voに速度差がないような場合でも噴出口3b近傍において流体の混合を速やかに促進することができる。つまり、渦構造を発生させる従来手法において不可欠であった内管噴流と外管噴流の軸流速度の差に由来する渦度場が存在しない条件下においても、内管ノズル2を固定した状態で外管ノズル3の中心軸O周りの回転を調節することにより不安定な中空型縦渦を形成して、速やかに崩壊させることにより高効率に流体の混合を行うことができる。
【0031】
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同様の噴流混合装置を用いて、第1流体Fの平均流速Viは0.5m/s、第2流体Aの平均流速Voは1.0m/sとなるように設定し、モータを制御して外管ノズル3の回転速度を調節して、流体の混合状態について観察した。
【0032】
図6は、無次元高さZ=1.0の位置における噴出口2b、3b断面と平行な断面(横断面)から見た流体の混合状態の様子を示めしている。図6(a)は、スワール数S=0.52のときの渦構造を示しており、中空型縦渦の不安定化が進み、外管噴流の外側せん断層に形成された複数の角から外管噴流が飛び出し始めている。図6(b)は、スワール数S=0.59のときの渦構造を示しており、外管ノズル3の回転方向と逆向きの複数の縦渦構造が形成され、外管噴流の内側せん断層においても第2流体Aが飛び出し始めている。スワール数S=0.92としたときには、図6(c)に示すように、中空型縦渦内に外側せん断層に形成された縦渦構造とは逆向きの複数の小規模な縦渦構造(孤立渦)が形成され始め、スワール数S=1.31としたときには、更に不安定化が進み、図6(d)に示すように、外管噴流が内側へ入り込んでいる。スワール数S=1.57、S=1.96としたときには、それぞれ図6(e)及び図6(f)に示すように、外管噴流が大きく内側に入り込んで、外管噴流が内側を完全に覆うようになり、外管噴流と内管噴流の混合が促進されている。
【0033】
図7では、更に噴出口2b、3b近傍である無次元高さZ=0.5の位置における横断面から見た流体の混合状態の様子を示めしている。図7(a)に示すように、スワール数S=0.52のときには、外管噴流の外側せん断層に形成された複数の角から外管噴流が飛び出し始め、スワール数S=0.59のときには、図7(b)に示すように、角から外管噴流が飛び出して、外管ノズル3の回転方向と逆向きの複数の縦渦構造が形成される。図7(c)に示すように、スワール数S=0.92としたときには、更に不安定化が進み外管噴流の内側せん断層においても第2流体Aが飛び出し、スワール数S=1.31のときには、図7(d)に示すように、中空型縦渦内に外側せん断層に形成された縦渦構造とは逆向きの複数の小規模な縦渦構造(孤立渦)が形成される。また、外側せん断層に形成された縦渦構造も小規模な縦渦構造へと移行するとともに、これらの小規模な縦渦構造の数が増加している。図7(e)のようにスワール数S=1.57のときには、外管噴流が大きく内側に入り込む様子が観察され、図7(f)のようにスワール数S=1.96のときには、外管噴流がほとんど内側を覆い尽しており、外管噴流と内管噴流の混合が促進されている。
【0034】
このように、第2流体Aの流速Voが、第1流体Fの流速Viよりも速くなるように設定することにより、内管噴流と外管噴流の境界における軸流速度の差に由来する渦度場の影響も付加され、より効率的な混合を行うことができ、無次元高さZ=0.5のような更に噴出口3b近傍でも流体の混合を速やかに促進することができる。尚、本実施例では、第1流体Fと第2流体Aの平均流速の速度差がない場合及び第2流体Aの平均流速を第1流体Fの平均流速より速く設定した場合について示しているが、第1流体Fの流速を第2流体Aの流速より速く設定した場合も流体の混合を促進することができる。また、本実施例では、実験的に第1流体F及び第2流体Aとして、ともにAir(空気)を用いているが、第1流体Fとして燃料、第2流体Aとして酸化剤を用いた場合も同様に効率的に混合が促進される。また、逆に第1流体Fとして酸化剤、第2流体Aとして燃料を採用した場合等も同様に混合を促進することができ、様々な流体の混合に対して有効である。
【0035】
尚、本発明の実施の形態は上述の形態に限るものではなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る噴流混合装置は、低レイノルズ数のみならず、より広いレイノルズ数の範囲で流体を高効率に混合させるための装置として有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 噴流混合装置
2 内管ノズル
3 外管ノズル
4 ハニカム部
5 回転手段
51 モータ
52 出力軸
53 第1タイミングプーリ
54 第2タイミングプーリ
55 タイミングベルト
6 燃焼器
F 第1流体(燃料)
A 第2流体(酸化剤)
O 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を噴出するそれぞれのノズルが内外二重に配設され、内管ノズルから噴出される第1流体と外管ノズルから噴出される第2流体とを混合させる噴流混合装置であって、
前記外管ノズルを前記第2流体の流れ方向と平行な中心軸周りに回転させる回転手段と、
前記外管ノズルの内部に設けられるとともに、前記第2流体を流通可能な複数の孔を有するハニカム部と、を備え、
前記回転手段による前記外管ノズルの回転に伴って前記ハニカム部を回転させ、該ハニカム部を流通する前記第2流体に剛体回転を与えることにより、前記中心軸から離れた所定の環状領域に渦度の極値を有する中空型の縦渦を発生させることを特徴とする噴流混合装置。
【請求項2】
前記回転手段は、回転力を付与するモータと、該モータの出力軸に固定される第1タイミングプーリと、前記外管ノズルに固定され、前記モータによる回転力が前記第1タイミングプーリ及びタイミングベルトを介して伝達される第2タイミングプーリとを有することを特徴とする請求項1記載の噴流混合装置。
【請求項3】
前記ハニカム部は、セラミック材料からなることを特徴とする請求項1又は2記載の噴流混合装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の噴流混合装置の前記外管ノズルの先端に燃焼器を備え、前記第1流体として燃料、前記第2流体として酸化剤を用いることを特徴とする燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−172955(P2012−172955A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38662(P2011−38662)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【出願人】(592069539)
【出願人】(511050114)
【Fターム(参考)】