説明

噴霧ノズル及び気体と液体との混合方法

【課題】構造が簡単で、可燃性や腐食性を有する流体に対しても適用可能で、かつ液だれ現象を防止する効果の高い噴霧ノズル及び気体と液体との混合方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る噴霧ノズルは気体と液体とを混合して噴霧するノズルであって、気体の供給を受ける外管2と、液体の供給を受ける内管3と、外管2に供給された気体の全部又は一部と内管3に供給された液体の全部又は一部とが二相状態で流れる二相流管4とを備え、内管3の先端部は、外管2内に外管2と同軸方向に配置されており、二相流管4は、外管2と同軸方向に配置されていることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体と液体とを混合して噴霧する噴霧ノズル及び気体と液体との混合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(以下、「LNG」という)を気化して都市ガスとして供給する際、熱量調整を行っている。近年はメタン成分の多いLNGの輸入が増加しており、都市ガス用に増熱する場合が多い。熱量調整は天然ガスに液化石油ガス(以下、「LPG」という)等の熱量調整剤を混合することにより行う。
このような熱量調整方法として、例えば特開昭63−265994号公報(特許文献1)には、気化した天然ガスをベンチュリ型の液・ガスミキサーに供給し、ベンチュリ管で発生する高速流れおよび低圧を利用して、ベンチュリ管に液体の状態で供給される熱量調整剤を微粒化・蒸発・混合させる技術が開示されている。
【0003】
また、都市ガスの増熱装置ではないが、内燃機関の燃料気化器に関する特開昭53−131328号公報(特許文献2)には、ベンチュリ管内に流路方向に移動可能な絞り部材を設ける技術が開示されている。
さらに、特開平8−75621号公報(特許文献3)には、定流量サンプリング装置に関し、ガスの流路となる管内に紡錘型のコアを固定し、コアの外側に配置されたスロート部をパルスモータによって流路方向に移動させることによって流路断面積を変化させる技術が開示されている。
また、実開昭56−41210号公報(特許文献4)、特開平4−248414号公報(特許文献5)には、流量測定制御装置に関し、ベンチュリ管のど部に円形の断面積が流路方向に沿って変化する面を有する可動体を配置し、この可動体を流路内に配置したモータによって駆動する技術が開示されている。
さらに、特開2011−56400(特許文献6)は流体の混合方法に関するもので、主流路よりも流路断面が小さい小径部を有する分岐流路を主流路から分岐して設け、分岐流路の出口側を主流路に配置し、分岐流路における小径部又はその近傍に第2流体の供給部を設け、主流路の流量を調整することにより分岐流路の小径部を流れる第1流体の流速を、第1流体と第2流体の混合に必要な流速に保つ技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−265994号公報
【特許文献2】特開昭53−131328号公報
【特許文献3】特開平8−75621号公報
【特許文献4】実開昭56−41210号公報
【特許文献5】特開平4−248414号公報
【特許文献6】特開2011−56400公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
天然ガスの流量は都市ガス需要量に応じて変動する。運転流量を定格流量で割った数値をターンダウン比というが、天然ガスのターンダウン比は、低いときは1/20程度で運転されることもある。
一方、ベンチュリ管は流量が低下するとその流速および低圧発生効果が低下する。特許文献1に開示されたものの様に、ベンチュリ管のど部の断面積が一定のものでは都市ガス需要量の変化が大きい場合には対応できないという問題がある。
ベンチュリ管などは、定格流量を基準にして設計されるが、天然ガスのターンダウン比が低いときはベンチュリ部の流速が低下するため、熱量調整剤として添加されるLPGが天然ガスと十分に気化混合されず、管底などに液が溜まる液だれ現象が生じてしまう。この現象が生じると、都市ガスの製造に支障が出る。
ベンチュリ管によって気化混合できる天然ガスのターンダウン比は、1/1〜1/5程度である。そのため、流量変動範囲の大きい適用先に特許文献1の技術を用いる場合には、流量範囲に応じて大きさの異なるベンチュリ管を用意する必要があり、装置の複雑化等の問題がある。
【0006】
この点、特許文献2に記載の技術においては、絞り部材の軸方向位置を変化させることによってベンチュリ管を通過する空気流量に変動があっても、対応できるようにしている。
しかしながら、特許文献2においては、絞り部材を軸方向に移動させるための駆動方法が開示されていない。また、仮に駆動源が流路外にあるとすると、駆動軸が流路外へ貫通することになり、頻繁に可動する面をシールすることになる。そのため、この面より流体が漏洩するおそれがあり、流体が可燃性であったり危険物であったりする場合には安全性に懸念が生じる。
また、特許文献3においても、紡錘型のコアの外側に配置したスロート部を流路方向に移動させるようにしているので、ガス流量の変動には対応可能であるが、駆動部が流路外に設置されているため、特許文献2の場合と同様、駆動機構が流路内外を貫通し、かつ可動する面(摺動面)でのシール性の問題が生ずる。
【0007】
また、特許文献4、5においても同様に、ガス流量の変動には対応可能であるものの、駆動源としてのモータをガス流路内に配設しているため、構造が複雑になる上に、駆動エネルギーを必要とし、さらに、モータ部への流体の流入を考慮すると、可燃性や腐食性を有している流体への適用が難しいという問題がある。
さらに、特許文献5に開示されたものにおいては、圧力・温度に基づいて「流量」を制御しているが、流体の混合の観点で重要となるのは、流量の変動に合わせてベンチュリ管のど部の流速を制御することであり、特許文献5のものではこのような制御をすることはできない。
【0008】
特許文献6に開示されたものは、これらの課題の解決を図ったものであり、広い流量範囲に対して高い混合効果を確実に得ることが可能で、可動体などの可動部が不要であり、それ故可動部を駆動するための駆動部も不要になり、構造を簡易なものにすることができ、可燃性や腐食性を有する流体に対しても適用できる。
しかし、気体と液体とを混合させる場合、流量などの条件が厳しいときは液体が必ずしも微粒化せず、液だれ現象が起きる懸念もあった。
【0009】
本発明は係る課題を解決するためになされたものであり、構造が簡単で、可燃性や腐食性を有する流体に対しても適用可能で、かつ液だれ現象を防止する効果の高い噴霧ノズル及び気体と液体との混合方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る噴霧ノズルは、気体と液体とを混合して噴霧するノズルであって、気体の供給を受ける外管と、液体の供給を受ける内管と、前記外管に供給された気体の全部又は一部と前記内管に供給された液体の全部又は一部とが二相状態で流れる二相流管とを備え、
前記内管の先端部は、前記外管内に前記外管と同軸方向に配置されており、
前記二相流管は、前記外管と同軸方向に配置されていることを特徴とするものである。
【0011】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記二相流管は前記外管の先端部よりも流路断面が小さい基端部を有し、
前記二相流管の基端は、前記外管の先端よりも下流側に配置され、
前記外管の先端部と前記二相流管の基端部とが下流側に向かって縮径する縮径部で接続されていることを特徴とするものである。
【0012】
(3)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記二相流管は前記外管内に配置され、前記二相流管の先端は前記外管の先端と同じ位置又は前記外管の先端よりも上流側に配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
(4)また、上記(3)に記載のものにおいて、前記二相流管の内面基端側に下流側に向かって縮径するテーパ部が設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
(5)また、上記(3)又は(4)に記載のものにおいて、前記二相流管の外側基端近傍に気体を前記二相流管側に案内する案内部が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
(6)また、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のものにおいて、前記二相流管は、内部を流れる流体の流れと並行して設けられた壁部材を有し、該壁部材によって前記二相流管の内部に複数の二相流流路を形成していることを特徴とするものである。
【0016】
(7)本発明に係る気体と液体との混合方法は、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の噴霧ノズルを用いた、気体と液体とを混合させる方法であって、
前記外管を流れる気体の流量を、前記二相流管における気体の空塔速度が毎秒10m以上になる様に調整することを特徴とするものである。
【0017】
(8)また、上記(7)に記載のものにおいて、前記噴霧ノズルは、気体が流れる気体配管に設けられており、
前記気体配管は、前記噴霧ノズルの設置位置の下流側近傍にベンチュリ部を有することを特徴とするものである。
【0018】
(9)また、上記(7)又は(8)に記載のものにおいて、前記気体配管を流れる気体と前記外管を流れる気体は、組成が同一であることを特徴とするものである。
【0019】
(10)また、上記(7)乃至(9)のいずれかに記載のものにおいて、気体は天然ガスであり、液体は液化石油ガスであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、広い流量範囲に対して高い混合効果を確実に得ることが可能であり、液だれ現象を防止する効果が高い。
また、可動体などの可動部が不要で、その可動部を駆動するための駆動部も不要なので、構造を簡易なものにすることができる。
さらに、基本的に管部材のみで構成されるので、材料の選択の自由度が高く、適切な材料を選ぶことによって可燃性や腐食性を有する流体に対しても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に係る噴霧ノズルの説明図である。
【図2】水平管内を流れる液相及び気相の流速の違いによる流動様式を模式的に説明する説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る噴霧ノズルの他の態様の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る噴霧ノズルの他の態様の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る噴霧ノズルの説明図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る噴霧ノズルの他の態様の説明図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る噴霧ノズルの他の態様の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る噴霧ノズルの他の態様の説明図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係る気液混合装置の説明図である。
【図10】本発明の実施の形態4に係る気液混合装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る噴霧ノズル1は、気体と液体とを混合して噴霧する噴霧ノズルである。
噴霧ノズル1によって混合される気体と液体との性状や用途は特に限定されないが、一例として、LNGを気化した天然ガス(気体)にLPG(液体)を添加・混合して都市ガスを製造する場合が挙げられる。
以下、本実施の形態1の噴霧ノズルを主として図1に基づいて説明する。なお、図1において、白抜き矢印は気体の流れの方向を示し、斜線の矢印は液体の流れの方向を示している。
また、本明細書において気体及び/又は液体の流路に配置された部材の部位を特定する用語として、先端とは部材における気体、液体の流れ方向下流端をいい、基端とは部材における気体、液体の流れ方向上流端をいう。そして、先端部とは部材の先端近傍をいい、基端部とは部材の基端近傍をいう。
【0023】
本実施の形態に係る噴霧ノズル1の基本構成は、図1に示すように、気体の供給を受ける外管2と、液体の供給を受ける内管3と、外管2に供給された気体の全部又は一部と内管3に供給された液体の全部又は一部とが二相状態で流れる二相流管4とを備えているものである。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0024】
<内管>
内管3の先端部は、外管2と同軸方向に外管2の内側に配置されている。内管3は基端側に、図示しない液体供給管から液体の供給を受けて先端側で液体を噴出する。噴出とは内管3の内部側からの力によって液体が勢いよく吐出する場合のみならず、内管3の先端部に供給された液体が内管3の外部の気流に巻き込まれて吐出する場合を含む。なお、内管3の先端部は、外管2と同軸方向であれば、外管2の内壁と接して配置してもよく、空間を介して配置してもよい。
内管3の断面形状は特に問わず、円でも多角形でもよい。また、内管3は、図1に示すように、先端を開口しただけのものでもよいし、あるいは先端に多孔質体やメッシュリングなどを設置して微粒化を促進の機能を付加してもよい。さらに、内管3の内部に通過する液体に旋回流を与える構造、例えば旋回羽根を設けるようにしてもよい。
なお、内管3の先端や内部に付属させる部材は着脱可能にしてもよい。
内管3は外管2に固定されているが、その固定方法は特に問わず、例えばステー(図示なし)によって固定するようにすればよい。
【0025】
<外管>
外管2は基端側から気体の供給を受ける。外管2が気体の供給を受ける態様としては、例えば外管2を気体が通流する配管内に配置する場合や、あるいは外管2の基端側を、気体を供給する図示しない気体供給管に接続する場合がある。
【0026】
<二相流管>
二相流管4は、外管2と同軸方向に配置されており、内管3から噴出された液体の少なくとも一部と外管2に供給された気体の少なくとも一部とが二相状態で流れる。二相流管4は、図示しないステー等によって外管2と同軸方向になるように固定される。
【0027】
二相流とは、二つの相、たとえば液相と気相が混ざり合って流動する現象をいう。霧は空気中に非常に小さな水の液滴が存在するが、これは噴霧流(ミスト流)と呼ばれる二相流で、気相中に液相が分散されている。
一方、例えばコップの中に注がれたビールは、ビールの中に小さな炭酸ガスの気泡がたくさん含まれているが、このような形態は気泡流(バブル流)と呼ばれる二相流で、液相中に気相が分散している。噴霧流中の液滴や気泡流中の気泡は分散相と呼ばれ、一方噴霧流中の気相や気泡流中の液相は連続相と呼ばれている。
地上の大気圏のような開かれた空間では、通常は分散相が連続相中にほぼ均一に分散し、噴霧流や気泡流のような均質な流れが存在している。しかし、管内のような閉ざされた空間を流れる二相流は、均質な流れだけではなく不均質な流れも生ずる。
【0028】
二相流の流動形態は気相と液相の流速に依存しており、これらによって流動形態がどのようになるかを示す状態図が実験的に得られている。
図2には、水平管内を流れる液相及び気相の流速の違いによる流動様式を模式的に示す図が示されている。ここに示された図は、書籍「気液二相流」(著者:植田辰洋、出版社:養賢堂)に記載のものである。水平管内を流れる液相及び気相は、流速の違いによって次の様な流動様式を示す。なお、液相及び気相の流速とは、それぞれ気相、液相の流量を流路断面積で割った見掛け流速のことで、空塔速度ともいう。以下、本明細書において流速とは空塔速度をいう。
気相の流速の違いによる流動様式の変遷を示すと以下のようになる。
(1)気相の流速が遅い場合
液相の流速も遅いと、液相は配管の底面に沿って流れる(成層流)。一方、液相の流速が速くなると、せん状流や気泡流となる。
(2)気相の流速がやや速い場合
気相流速が速くなると気液界面が波立ち、波状流またはスラグ流となる。
(3)気相の流速が速い場合
さらに気相流速が増すと液の一部が飛散するようになり、液相が壁面方向に押しやられて管壁に沿った環状液膜として流れ、気相が管中央部を連続的にかなりの流速で流れる、環状流または環状噴霧流となる。
なお、流動様式は配管姿勢の影響を受ける場合があり、重力方向が水平配管と異なる鉛直配管などは、流動様式が一部異なる。しかし、気相流速が速いときは流速(慣性力)が重力より相対的に支配的になるため、流動様式に対する配管姿勢の影響は小さくなる。すなわち、気相流速が速いときは、配管姿勢によらずに環状流または環状噴霧流となる。
【0029】
本実施の形態の噴霧ノズル1では、二相流管4内で環状噴霧流を生じさせると、液体の微粒化が促進され、液体と気体の混合が高まる。
環状噴霧流を生じさせるには、液体と気体の流量比にもよるが、気体の空塔速度を毎秒10m以上、より望ましくは毎秒20m以上にすればよい。なお、環状流の状態でも液体の微粒化効果は得られるが、環状噴霧流とすることでその効果をより高めることができる。逆に、二相流管4内の気体流速が小さくなると、環状流や環状噴霧流状態を保てなくなり、波状流、スラグ流、気泡流などの流動状態に遷移する。その場合、二相流管4内での液相の分散性・均一性が劣化するとともに、気液接触面積が減少するため、微粒化性能が低下することになる。
【0030】
気体の空塔速度と液ダレの有無の関係を調査する実験を行ったので、これについて以下説明する。
実験条件は以下の通りである。
・気体:天然ガス
・液体:LPG
・気体質量流量:液体質量流量=1:約0.1〜0.2(表1)
・気体質量流量:液体質量流量=1:約0.5〜1.0(表2)
・液だれの有無の確認方法:LPG添加下流側配管(水平管部)の上部と下部の表面温度の差および可視化部(サイトグラス)観察によって確認した。
実験結果を表1、表2に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
表1に示す結果によると、気体の空塔速度が遅いと液だれ現象が起きるので、気体の空塔速度を毎秒10m以上とするのが良いことが分かる。
また、気体の流量に対する液体の流量を表1よりも多くした表2に示す結果によると、気体の空塔速度を毎秒20m以上とするのが良いことが分かる。
【0034】
なお、二相流管4が配置される位置は、外管3の外部でも内部でもどちらでもよい。
前述した通り、二相流の流動形態は気相と液相の流速に依存する。噴霧する液体の流量に基づき、二相流管4において環状噴霧流が生じる流速が得られる様に、二相流管4の流路断面積を決めることが望ましい。
また、二相流管4の流路方向の長さは、二相流管4の流路径の5倍以上とすることが望ましい。二相流管4の流路長さを上記に設定することで、気体流路が十分な速度を有する場合において、二相流管4内部において環状噴霧流が形成されやすくなる。
【0035】
上記のように構成された本実施の形態に係る噴霧ノズル1の作用について説明する。
気体は噴霧ノズル1の基端側から供給され、液体が図示しない液体供給管を介して内管3に供給される。
基端側から供給された気体は、その一部が二相流管4に流れる。
【0036】
液体供給管を介して内管3に供給された液体は、内管3の先端で外管2を流れる気体と合流して二相流管4を二相状態で流れる。このように、二相流管4を設けることにより、内管3に供給された液体が一旦二相流管4内に導入されて二相状態を形成するので、液だれが生ずるのを防止できる。
二相流管4内では、気相の流速によって様々な流動形態をとることは前述の通りである。なお、二相流管4を流れる混合流動状態が環状流もしくは環状噴霧流となっている状態が最も液体の微粒化が良好、すなわち微粒液滴径が小さくなるので好ましい。
【0037】
気相の流速が環状噴霧流を形成できる流速であった場合、内管3を介して供給された液体は、環状噴霧流となって二相流管4の内壁面上に液膜を形成しながら流れる。二相流管4の出口部分において、二相流管4内壁面上に形成されている液膜は、二相流管4の管軸方向に液膜状態を保ったまま噴出する。その液膜の内側には二相流管4内を流れてきた気体流れが存在し、液膜は内面側で気相と接し、液膜と気相の流速差に起因するせん断力によって液膜が引きちぎられ微粒化される。
【0038】
なお、二相流管4内の流動態様が環状流もしくは環状噴霧流を保てる範囲に気相流速を維持するのが好ましく、逆にこの範囲内であれば気相流速を小さくできる(気相側圧力が小さくてよい)。概略、気相流速が毎秒10m以上、好ましくは毎秒20m以上となるように維持すればよい。
【0039】
二相流管4における液膜は気相流れで形成するので、液膜形成のために液相流路の断面積を絞る必要がなく、液相の流路は単純かつ断面積も大きくでき、液相側の圧力損失を小さく保てる。
また、噴霧ノズル1における気相側流路は概直管状であり、なんらの障害物もないので圧力損失が小さい。
【0040】
以上のように、本実施の形態の噴霧ノズル1は、構造が簡単で、可燃性や腐食性を有する流体に対しても適用可能で、かつ液だれ現象を防止する効果が高い。
【0041】
なお、上記の実施の形態においては、外管2の先端側と二相流管4の基端側とは接続されていないものであったが、本発明はこれに限られるものではなく、外管2の先端と二相流管4の基端とを連結して、外管2を流れる気体が全て二相流管4に流れるようにしてもよい。
図3はこのような態様を示す図であり、図3において図1と同一部分には同一の符号を付してある。図3に示す噴霧ノズル5は、二相流管4の基端を外管3の先端よりも下流側に配置し、二相流管4の基端部の流路断面を外管3の先端部の流路断面よりも小さくし、それらの間を下流側に向かって縮径する縮径部7で接続したものである。このように縮径部7で、外管2の先端と二相流管4の基端を接続することにより、二相流管4内により多くの気体を流入させることができ、二相流管4における気体流速を速くすることが出来る。これによって、二相流管4における流動態様を環状噴霧流にすることがより容易になる。
【0042】
なお、縮径部7は外管2を流れる気体を二相流管4に案内する役割をしており、その意味で本発明における案内部としての機能を備えている。二相流管4に気体をより多く流入させるための案内部の他の態様として、縮径部7を設ける他に、外管2の内壁側から二相流管4側に向かって傾斜する板状の傾斜部材を設けるようなものであってもよい。
【0043】
また、上記の実施の形態では、二相流管4の流路が単路のものであったが、本発明に係る噴霧ノズルにおける二相流管4の流路は複数流路からなるものであってもよい。
図4は、二相流管4の流路を複数流路から構成した一例を説明する説明図であり、図4(a)が噴霧ノズル9の軸方向(流体の流れ方向)に沿う断面図であり、図4(b)が二相流管4における軸方向直交断面図である。なお、図4において、図1と同一部分には同一の符号が付してある。
【0044】
図4に示す噴霧ノズル9は、二相流管4に流路を流れ方向に分割して複数の流路を形成する壁部材11を設けたものである。
壁部材11を設ける理由は以下の通りである。
二相流管4を流れる気相の流量が多い場合は、二相流管4の断面積を大きくする必要がある。しかしながら、二相流管4内の流動様式が環状流もしくは環状噴霧流となっている状態では、液相は二相流管4の内壁表面上を液膜状に流れており、二相流管4の断面積が大きくなるほど、二相流管4の流路容積に対する液相と気相の界面面積(気相と液相の接触面積)が相対的に小さくなる。微粒化は、気相と液相の流速差に起因するせん断力で液相を気相で引きちぎる作用を利用するため、気相と液相の接触面積が相対的に小さくなることは、微粒化性能の低下につながる。
そこで、二相流管4を流れ方向に分割する壁部材11を設けることにより、薄い液相の流れである液膜が複数の壁部材面上に形成され、液膜表面積すなわち気液接触面積が増大し、微粒化性能が向上する。
【0045】
壁部材11は、図4に示したように、平板状のものでもよいし、あるいは二相流管4と同軸方向に延びる管状のものでもよく(図8参照)、またあるいはハニカム形状のもの(図示せず)でもよい。
【0046】
[実施の形態2]
本実施の形態に係る噴霧ノズル15を図5に基づいて説明する。図5において、図1と同一部分又は対応する部分には同一の符号を付してある。
本実施の形態に係る噴霧ノズル15は、実施の形態1と同様に、気体と液体とを混合して噴霧するノズルである。その基本構成は、図5に示すように、気体の供給を受ける外管2と、液体の供給を受ける内管3と、外管2に供給された気体の全部又は一部と内管3に供給された液体の全部又は一部とが二相状態で流れる二相流管4とを備えている。さらに、二相流管4は外管2内に外管2の内壁と空間を介して配置され、二相流管4の先端は外管2の先端と同じ位置又は外管2の先端よりも上流側に配置され、外管2内面と二相流管4の外面に挟まれた空間に主として気体が流れる気流流路17が形成されている。
本実施の形態の噴霧ノズル15は、実施の形態1に係る噴霧ノズル1とは、気流流路17の有無が異なる。他の構成については実施の形態1の噴霧ノズル1と構成が同じであり、機能も変わらないので、以下においては気流流路17について説明する。
【0047】
<気流流路>
気流流路17は、主として外管2を流れてきた気体が流れる。二相流管4内で形成されている環状流もしくは環状噴霧流状態の流れは、二相流管4の出口部分において、二相流管4の内壁面上に形成されている液膜が、二相流管4の管軸方向に液膜状態を保ったまま噴出する。その液膜の内側には二相流管4を流れてきた気体流れが存在し、液膜の外側には気流流路17を流れてきた気体流れが存在する。すなわち、液膜は内外両面で気相と接し、液膜と気相の流速差に起因するせん断力によって液膜が引きちぎられ微粒化される。
このように、本実施の形態の噴霧ノズル15においては、二相流管4の外周に気流流路17を形成したことにより、上述したように、液膜状となった液体を気体の流れで挟み込むことによって液体の微粒化をより促進することができる。
また、液体の流量が増加して二相流管4に占める液流路断面積が増大した場合でも、気相は気流流路17へより多く流れるように自律的に分流し、圧力損失の過度の増大を防止できる。
気流流路17の機能をよりよく発揮させるには、二相流管4において環状流、より好ましくは環状噴霧流状態を保ち、液膜を連続的に生じさせることが望ましい。
【0048】
なお、気流流路17は、二相流管4を流れてきた液膜を引きちぎる機能があればよいので、主として気体が流れる流路であれば、液体の流量が多い場合などに少量の液体が流れ込んでしまうものでもよい。
【0049】
外管2を流れる気体を二相流管4により多く流入させるために、図6に示す噴霧ノズル19のように、二相流管4の基端側に下流側に向かって縮径するテーパ部21を設け、外管2を流れる気体を二相流管4に案内するようにしてもよい。このようにすることで、二相流管4を流れる気体流速を速くして、二相流管4において環状噴霧流の形成を促進することができる。テーパ部21は、内管3を流れてきた液体をより多く二相流管4に流入させる効果も有する。
なお、図6に示す例では、外管2の先端部を縮径させ、気流流路17を通過する気体流速が先端部で速くなるようにしている。気流流路17を通過する気体流速が速くなることで、二相流管4の内壁面上に形成されている液膜を引きちぎるせん断力が大きくなり、より微粒化が促進される。
【0050】
テーパ部21は外管2を流れる気体を二相流管4に案内する役割をしている。二相流管4に気体をより多く流入させるための他の態様として、図7に示す噴霧ノズル23のように、外管2に、外管2の内壁側から二相流管4側に向かって縮径する案内部25を設けるようにしてもよい。テーパ部21や案内部25は、外管2を流れる気体を二相流管4側に案内する機能を有するものであれば他の態様であってもよい。
【0051】
また、本実施の形態2においても、実施の形態1で説明したのと同様に、二相流管4に流路を流れ方向に分割して複数の流路を形成する壁部材を設けるようにしてもよい。
図8はこのような態様の噴霧ノズル27の説明図であり、図8(a)が噴霧ノズル27の軸方向(流体の流れ方向)に沿う断面図であり、図8(b)が二相流管4における軸方向直交断面図である。なお、図8において、図5と同一又は対応する部分には同一の符号を付してある。
図8に示す噴霧ノズル27は、二相流管4を流れ方向に分割する壁部材として、二相流管4内に管状部材29を配置したものである。管状部材29は、例えば図示しないステー等で二相流管4に固定すればよい。なお、図8(a)(b)には管状部材29が二相流管4と概同軸状に1つ配設されている例を示したが、概同軸状に複数であってもよいし、また図8(c)に示すように流路方向に互いに平行して並ぶように配設してもよい。
壁部材としての管状部材29の機能は、図4に基づいて説明した壁部材11の機能と同様である。
【0052】
なお、噴霧ノズル27における内管3には、内管3に液体を供給する液体供給管30が接続されている。
【0053】
[実施の形態3]
本実施の形態に係る気液混合装置31を図9に基づいて説明する。図9では、気液を混合する容器状の気液混合部33に図3に示した噴霧ノズル5が設置されて構成されている。
気液混合部33には、噴霧ノズル5の先端側が気液混合部33内に延出するように噴霧ノズル5が設置されている。また、気液混合部33の側面上側には気体が流入する気体入口35が設けられ、側面下側には混合ガスが流出する混合ガス出口37が設けられている。なお、噴霧ノズル5、気体入口35、混合ガス出口37の位置関係は、気液を混合することができる他の態様であってもよい。
【0054】
上記のように構成された気液混合装置31においては、噴霧ノズル5における外管2に気体が供給され、内管3には気体に混合される液体が供給される。内管3に供給された液体は内管3の先端で外管2を流れる気体と合流して二相流管4を二相状態で流れる。二相流管4内の気体の空塔速度が所定の値(少なくとも毎秒10m以上)であれば、二相流管4を流れる混合流動状態が環状噴霧流となり、二相流管4の内壁面上に液膜を形成しながら流れる。二相流管4の出口部分において、二相流管4内壁面上に形成されている液膜が二相流管4内を流れる気体によって引きちぎられるようにして微粒化され、気液混合部33内に噴射される。なお、気体の空塔速度は、外管の上流側に流量検出器(図示せず)と流量調整弁(図示せず)を設けるなど、公知の技術手段を用いて調整することができる。また、二相流管が外管内に配置されている噴霧ノズルにおいては、気体の流量を(二相流管が配置されている位置での)外管の断面積で割って算出した値を、二相流管における気体の空塔速度とみなしてよい。
【0055】
気体入口35からは噴霧ノズル5に供給される気体と同じ組成の気体が供給され、噴霧ノズル5から噴射される混合ガスと希釈混合される。希釈混合された混合ガスは混合ガス出口37から排出されて必要箇所に供給される。
【0056】
[実施の形態4]
本実施の形態に係る気液混合装置41を図10に基づいて説明する。気液混合装置41は、気体が流れる気体配管43内に図3に示した噴霧ノズル5を配置したものであって、噴霧ノズル5の下流側に気体配管43の流路を絞ったベンチュリ部45を設けたものである。
噴霧ノズル5の内管3には液体を供給する液体供給管47が接続され、外管2には気体を供給する気体供給管49が接続されている。気体供給管49は、気体配管43から分岐したものでもよいし、別系統から接続されたものでもよい。
この実施の形態に係る気液混合装置41は、LNGを気化した天然ガス(気体)にLPG(液体)を添加することにより増熱して都市ガスを製造する際に用いるものとして好適である。
【0057】
気体配管43にベンチュリ部45を設けることで、ベンチュリ部45において気体流速が増し、液体の微粒化が促進され、気体との気液混合の効果がさらに高まる。
気体配管43を流れる気体の流量が少ないときは、主に噴霧ノズル5の作用により、気体と液体との混合が行われる。すなわち、噴霧ノズル5において、気体と液体とが環状噴霧流となり、液体が微粒化されるからである。
一方、気体配管43を流れる気体の流量が多いときは、熱量調整剤として添加されるLPG、すなわち噴霧ノズル5を流れる液体の流量も多くなるため、二相流管4において環状噴霧流が生じにくくなり、噴霧ノズル5のみの作用によっては液体が十分微粒化されない場合が生ずる。この場合、気体の流量が多くなっていることからベンチュリ部45における流速が増し、噴霧ノズル5から噴出されたまだ十分に微粒化されていない液体がベンチュリ部45の作用によって微粒化されて気体と液体との混合が促進される。
【0058】
本実施の形態においては、噴霧ノズル5を、ベンチュリ部45を有する気体配管43におけるベンチュリ部45の上流側に配置したことにより、気体配管を流れる気体の流量に応じて適切な液体の微粒化及び混合を実現できる。
【0059】
なお、実施の形態3の気液混合装置31及び実施の形態4の気液混合装置41においては、図3に示した噴霧ノズル5を用いた例を示したが、これ以外にも図1に示した噴霧ノズル1、図4に示した噴霧ノズル9、図5に示した噴霧ノズル15、図6に示した噴霧ノズル19、図7に示した噴霧ノズル23、図8に示した噴霧ノズル27を気液混合装置31及び気液混合装置41に用いることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 噴霧ノズル
2 外管
3 内管
4 二相流管
5 噴霧ノズル
7 縮径部
9 噴霧ノズル
11 壁部材
15 噴霧ノズル
17 気流流路
19 噴霧ノズル
21 テーパ部
23 噴霧ノズル
25 案内部
27 噴霧ノズル
29 管状部材
30 液体供給管
31 気液混合装置
33 気液混合部
35 気体入口
37 混合ガス出口
41 気液混合装置
43 気体配管
45 ベンチュリ部
47 液体供給管
49 気体供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体と液体とを混合して噴霧するノズルであって、気体の供給を受ける外管と、液体の供給を受ける内管と、前記外管に供給された気体の全部又は一部と前記内管に供給された液体の全部又は一部とが二相状態で流れる二相流管とを備え、
前記内管の先端部は、前記外管内に前記外管と同軸方向に配置されており、
前記二相流管は、前記外管と同軸方向に配置されていることを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項2】
前記二相流管は前記外管の先端部よりも流路断面が小さい基端部を有し、
前記二相流管の基端は、前記外管の先端よりも下流側に配置され、
前記外管の先端部と前記二相流管の基端部とが下流側に向かって縮径する縮径部で接続されていることを特徴とする請求項1に記載の噴霧ノズル。
【請求項3】
前記二相流管は前記外管内に配置され、前記二相流管の先端は前記外管の先端と同じ位置又は前記外管の先端よりも上流側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の噴霧ノズル。
【請求項4】
前記二相流管の内面基端側に下流側に向かって縮径するテーパ部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の噴霧ノズル。
【請求項5】
前記二相流管の外側基端近傍に気体を前記二相流管側に案内する案内部が設けられていることを特徴とする請求項3又は4のいずれかに記載の噴霧ノズル。
【請求項6】
前記二相流管は、内部を流れる流体の流れと並行して設けられた壁部材を有し、該壁部材によって前記二相流管の内部に複数の二相流流路を形成していることを特徴とする請求項1及至5のいずれかに記載の噴霧ノズル。
【請求項7】
請求項1及至6のいずれかに記載の噴霧ノズルを用いた、気体と液体とを混合させる方法であって、
前記外管を流れる気体の流量を、前記二相流管における気体の空塔速度が毎秒10m以上になる様に調整することを特徴とする気体と液体との混合方法。
【請求項8】
前記噴霧ノズルは、気体が流れる気体配管に設けられており、
前記気体配管は、前記噴霧ノズルの設置位置の下流側近傍にベンチュリ部を有することを特徴とする請求項7に記載の気体と液体との混合方法。
【請求項9】
前記気体配管を流れる気体と前記外管を流れる気体は、組成が同一であることを特徴とする請求項7又は8のいずれかに記載の気体と液体との混合方法。
【請求項10】
気体は天然ガスであり、液体は液化石油ガスであることを特徴とする請求項7及至9のいずれかに記載の気体と液体との混合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−81923(P2013−81923A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225146(P2011−225146)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【Fターム(参考)】