説明

噴霧ノズル装置

【課題】噴霧ノズルにおける様々な制限を解消して使用者側で流量、スプレー角度、スプレー幅、流量密度分布等を調整することが可能な一流体式の噴霧ノズル装置を提供する。
【解決手段】液体を噴霧する一流体ノズルの外周に、該一流体ノズルを囲繞するカバーを設けるとともに、該カバーの先端を前記一流体ノズルの先端より噴霧方向に突出させる。特に、一流体ノズルが渦巻き噴射式である場合に好適であり、前記カバーの軸線方向の位置を調節可能としておくことにより、スプレー角度、スプレー幅、流量密度分布等を容易に調整することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧ノズル装置に関し、詳しくは、ガス吸収や蒸発冷却、噴霧乾燥等、液体を微粒化して各種産業用途に使用される噴霧ノズルであって、特に、燃焼排ガス等の高温排ガスの冷却に使用する噴霧ノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を微粒化して噴霧するノズルの噴霧方式として、流体エネルギーを利用した一流体ノズルと二流体ノズルとが広く知られており、従来から様々な構造の噴霧ノズルが提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。さらに、一流体ノズルの噴霧方式として、単一噴孔式や噴流衝突式、渦巻き噴射式(接線流入、螺旋流入、スロット流入等)が知られており、二流体ノズルの噴霧方式としては、外部混合形と内部混合形とが知られている。
【特許文献1】特開2004−16846号公報
【特許文献2】特開2006−175358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
液体噴霧ノズルは、その用途に応じて必要とされる噴霧特性を有する必要がある。流量、スプレー角度、スプレー幅、流量密度分布等、それぞれのノズルが有する特性のグラフ等を検討し、目的に合致したノズルを選定していた。しかしながら、選定したノズルにおいて、使用者側の運転条件によって調整可能な噴霧特性は限られていた。また、市販されているノズルは、その内部構造において超精密な加工が施されているため、その噴霧特性を細かく調整するために、より微細な加工を追加することは不可能であった。このため、市販のノズルに対して外部から簡便な方法で噴霧特性を調整できることが望まれていた。
【0004】
また、液体の微粒化において、一般に公表されているカタログ等の資料を参考にすると、水及び水の物性に近い液体では、その平均径が100μm以下の液滴を得るためには二流体式のものが適しているが、気流の制御の正確さが要求され、ノズル構造も複雑であるため、圧力微粒化法である一流体ノズルで100μm以下の液滴を得る簡便な方法が必要とされていた。一方、二流体式のものは高速気流を使用することから、噴霧後の後流の流れを制御すると本来の性能が得られなくため、比較的大きな容積を必要とした。さらに、ノズル一個当たりの液体の噴霧量も、高速気流のエネルギーを利用して微粒化するため、大きく制約を受ける等の欠点を有していた。
【0005】
そこで本発明は、従来の噴霧ノズルにおける様々な制限を解消して使用者側で流量、スプレー角度、スプレー幅、流量密度分布等を調整することが可能な一流体式の噴霧ノズル装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の噴霧ノズル装置は、液体を噴霧する一流体ノズルの外周に、該一流体ノズルを囲繞するカバーを設けるとともに、該カバーの先端を前記一流体ノズルの先端より噴霧方向に突出させたことを特徴としている。さらに、本発明の噴霧ノズル装置は、前記一流体ノズルが渦巻き噴射式であること、また、前記カバーの軸線方向の位置を調節可能としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の噴霧ノズル装置によれば、一流体ノズルを囲繞するカバーの状態、例えば、カバーの内径、一流体ノズルの先端からのカバーの突出量を適宜設定することにより、所望の噴霧状態を得ることができる。特に、一流体ノズルが渦巻き噴射式の場合に効果的であり、カバーの軸線方向の位置を調節可能として一流体ノズルの先端からのカバーの突出量を調整することによって、必要に応じて噴霧状態を容易に変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明の噴霧ノズル装置の一形態例を示す説明図、図2は噴霧ノズルからの液滴の噴霧状態を示す説明図、図3は液滴の噴霧状態を測定したときの状態を示す説明図、図4は液滴の噴霧状態を示す図である。
【0009】
噴霧ノズル装置11は、一流体ノズル12の外周に、該一流体ノズル12を囲繞するように円筒状のカバー13を設けたものであって、カバー13の先端13aは、一流体ノズル12の先端12aより噴霧方向に突出させた状態で設けられている。カバー13の内径R及び一流体ノズル12に対する突出量Pは、一流体ノズル12の噴霧方式及び特性と噴霧目的とに応じて設定される。
【0010】
一般に、一流体ノズル12の特徴として、図1に示すように、一流体ノズル12からのスプレー距離L、スプレー角度A、スプレー幅(W)には、噴射直後のスプレー角度に対して距離と共に理論上のスプレー幅W1よりも実際のスプレー幅W2が狭くなる傾向があるといわれている。これは、スプレーの外周付近では、液滴の高速流れによって周囲の気体を巻き込むため、この外周部分を流れる液滴のエネルギーが失われるためと考えられる。
【0011】
一方、この外周部分の液滴の流量は、一流体ノズル12から噴出される液滴の全体流量に比べると極めて少ない流量であるが、この外周部分の液滴の流れを制御することにより、一流体ノズル12における噴霧特性の改善と液滴の有効利用とを図ることができる。
【0012】
このような一流体ノズル12の噴霧特性に対して、前記カバー13を設けることにより、スプレーの外周部分を流れる液滴の状態を制御し、一流体ノズル12における噴霧特性を使用目的に合わせて最適な状態に改善することができる。例えば、図3及び図4に示すように、市販の渦巻き噴射式の一流体ノズル12(スプレーイング システムス ジャパン(株)社製)に圧力0.3MPaで水を供給したとき、一流体ノズル12の先端からの距離Lが150mmの位置における液滴の到達状態(流量比)を測定した。
【0013】
図4に示す実線Aは、カバー13を設けずに一流体ノズル12を単独(標準状態)で用いたときの測定結果を示すもので、中心からの距離(スプレー半径)は17〜18cmで、半径8〜9cmの位置に流量比のピークが見られる。一方、一流体ノズル12の外径14mmに対して内径20mmのカバー13を装着し、一流体ノズル12の先端からカバー13の先端までの距離(突出量P)を5mmとしたときには、図4に破線Sで示すように、スプレー半径が25cmまで拡がり、液滴のピークは半径10〜11cmの位置に移動してピーク高さも低くなっていることから、標準状態よりも広範囲に均一に液滴を噴霧できることがわかる。また、突出量Pを10mmにすると、図4に破線Tで示すように、液滴を半径10cmの範囲内、特に半径5cmの範囲内に集中的に噴霧できることがわかる。また、液滴の粒子径を測定したところ、標準状態では45〜102μm、突出量Pが5mmのときは56〜98μm、突出量Pが10mmのときは55〜100μmの範囲であり、平均粒子径はほとんど変化しないことがわかった。
【0014】
したがって、広範囲に平均的に噴霧する必要がある場合にはカバー13の突出量Pを小さめとすればよいことがわかる。また、通常の渦巻き噴射式の一流体ノズルでは、噴霧中心軸付近の液滴数密度が噴霧周辺部に比べて著しく小さい中空噴霧となる噴霧パターンを、カバー13の突出量Pを大きめに調整することにより、噴霧中心軸付近にも十分液滴が存在するような中実噴霧状態となることから、中実噴霧パターンが求められる用途に一流体ノズルを使用することが可能となる。
【0015】
例えば、ダクト中を流れる高温の排出ガスを噴霧水により冷却する際に、カバー13の突出量Pを大きめに調整した噴霧ノズル装置11を使用することにより、中空部分のガスのすり抜けがなくなり、噴霧水とガスとの接触効率を向上させることができ、冷却効率を改善することができ、同一水量ならば冷却後の排ガス温度を下げることができ、排ガス温度を同一にする場合には使用水量を削減することができる。
【0016】
さらに、一流体ノズル12に対してカバー13の軸方向の位置、すなわち、突出量Pを調整可能としておくことにより、流量、スプレー角度、スプレー幅、流量密度分布等を容易に調整することができ、使用目的に対応した噴霧パターンを容易に設定することができる。なお、使用する一流体ノズルに特に制限はないが、渦巻き噴射式の一流体ノズルに特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の噴霧ノズル装置の一形態例を示す説明図である。
【図2】噴霧ノズルからの液滴の噴霧状態を示す説明図である。
【図3】液滴の噴霧状態を測定したときの状態を示す説明図である。
【図4】液滴の噴霧状態を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
11…噴霧ノズル装置、12…一流体ノズル、12a…先端、13…カバー、13a…先端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴霧する一流体ノズルの外周に、該一流体ノズルを囲繞するカバーを設けるとともに、該カバーの先端を前記一流体ノズルの先端より噴霧方向に突出させたことを特徴とする噴霧ノズル装置。
【請求項2】
前記一流体ノズルは、渦巻き噴射式であることを特徴とする請求項1記載の噴霧ノズル装置。
【請求項3】
前記カバーは、軸線方向の位置を調節可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の噴霧ノズル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−226282(P2009−226282A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73077(P2008−73077)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】