説明

噴霧ノズル

【課題】 ノズルホルダに備わるキャップの操作性の向上、およびノズルホルダの外周面に雑草等の周辺物が絡み付きにくくして作業性の向上を図ることができる噴霧ノズルを提供する。
【解決手段】 第1ホルダ部材11と第2ホルダ部材12との結合によってノズルホルダ10を構成し、第1ホルダ部材11の外周面に、第1キャップ1を回転自在に支持するための縮径部11Dを形成し、第2ホルダ部材12の外周面に、縮径部11Dよりも径方向外方に膨出する拡径部12Dを形成し、第1および第2キャップ1,7の内周面に形成される雌ねじ部を同径のねじサイズとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬などの薬液や種々の液体を噴霧するための噴霧ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7および図8は、従来の噴霧ノズルの構成例を説明するための図である。このような噴霧ノズルと同様の構成は、特許文献1にも記載されている。
符号20は、噴霧ノズル本体としてのノズルホルダであり、その基端側の外周部には、液体の圧送管Pの外周部にねじ付け可能な第1キャップ1が回転可能に備えられ、また、その先端側の外周部には、外噴板21と中子22を取り付けるための第2キャップ23がねじ付けられている。符号24はOリングである。圧送管Pの通路PAには、噴霧器から薬液などの薬剤や種々の液体が圧送され、その液体は、三つ切りパッキン25のスリット25A、網26、オリフィス板27の開孔穴27Aからノズルホルダ20の通路20Aを通り、さらに、中子22によって形成される渦室R2内にて渦流となってから、外噴板21の溝21Aの開口部(噴口)21Bから外方に噴出される。その際、空気孔20Bを通して外部の空気が空気取入れ口20Cから液体内に取入れられることにより、液体は空気と混合されて開口部21Bから噴霧されることになる。その噴霧パターンは、図8のような扇形パターンP2となる。符号1Aは、圧送管Pの雄ねじ部PBとねじ合う第1キャップ1の雌ねじ部であり、また符合23Aは、ノズルホルダ20の雄ねじ部20Dとねじ合う第2キャップ23の雌ねじ部である。ノズルホルダ20に対しては、第1キャップ1がはめ合わされてから、第2キャップ23がねじ合わされることになる。
【0003】
【特許文献1】実公平1−33177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来の噴霧ノズルにおいては、第2キャップ23が第1キャップ1に比べて小さく、それを作業者が素手によって締め付けることが難しかった。また、第1キャップ1とは異なる第2キャップ23を必要とする分、部品点数の増加およびコストアップを招くことにもなる。さらに、ノズルホルダ20の外径が第1キャップ1に対して小さく、それらの外周面の間に大きな段差があるため、噴霧ノズルの使用時に雑草等の周辺物が絡み付くおそれがあった。仮に、ノズルホルダ20の外径を大きくした場合には、そのノズルホルダ20に第1キャップ1をはめ合わせることができなくなってしまう。また、噴霧器から液体圧送管Pに圧送される液体の圧力が規定以上となって、万が一、液体が空気取入れ口20Cから空気孔20Bを通って外部に漏れた場合には、それが周囲に飛散するおそれがある。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、ノズルホルダに備わるキャップの操作性の向上、およびノズルホルダの外周面に雑草等の周辺物が絡み付きにくくして作業性の向上を図ることができる噴霧ノズルを提供することを目的とする。
また、本発明は、部品の共通化によって製造コストの低減を図ることができる噴霧ノズルを提供することを目的とする。
さらに本発明は、万が一、空気孔から液体が漏れた場合に、それが周囲に飛散することのない噴霧ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の噴霧ノズルは、ノズルホルダの基端側の外周部に、液体の圧送管の外周部にねじ付け可能な第1キャップが備えられ、前記ノズルホルダの先端側の外周部に、液体の噴出口が形成された外噴板を取り付けるための第2キャップがねじ付けられ、前記ノズルホルダの基端側から導入した前記液体を前記外噴板の噴出口から噴霧可能な噴霧ノズルにおいて、前記ノズルホルダは、前記基端側の第1ホルダ部材と前記先端側の第2ホルダ部材との結合によって構成され、前記第1ホルダ部材の外周面に、前記第1キャップを回転自在に支持するための縮径部を形成し、前記第2ホルダ部材の外周面に、前記縮径部よりも径方向外方に膨出する拡径部を形成し、前記第1および第2キャップの内周面に形成される雌ねじ部を同径のねじサイズとしたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の噴霧ノズルは、請求項1に記載の発明において、前記第1および第2キャップは同じものであることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の噴霧ノズルは、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記第2ホルダ部材の拡径部と前記第1キャップとの間に、前記ノズルホルダの長手方向に対して傾斜する隙間を形成し、前記第1ホルダ部材の縮径部に、前記隙間を通して前記ノズルホルダ内の液体中に空気を取り込むための空気孔を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の噴霧ノズルによれば、縮径部が形成された第1ホルダ部材と、拡径部が形成された第2ホルダ部材と、の結合によってノズルホルダを構成して、第1ホルダ部材を液体の圧送管に取り付けるための第1キャップと、第2ホルダ部材に外噴板を取り付けるための第2キャップと、を同径のねじサイズとすることにより、第2キャップの操作性を向上させることができる。しかも、ノズルホルダの外周面における段差を小さく抑えて、噴霧ノズルの使用時に、雑草等の周辺物がノズルホルダの外周面に絡み付きにくくして作業性を向上させることができる。
【0010】
また、第1キャップと第2キャップとして同じものを用いることにより、部品を共通化して、製造コストを低減することができる。
【0011】
また、第2ホルダ部材の拡径部と第1キャップとの間に、ノズルホルダの長手方向に対して傾斜する隙間を形成することにより、万が一、空気孔から液体が漏れた場合に、その液体の飛散を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
符号10は、噴霧ノズル本体としてのノズルホルダであり、基端側の第1ホルダ部材11と先端側の第2のホルダ部材12との結合によって構成されている。すなわち、第1ホルダ部材11の上部の外周面11Aと第2のホルダ部材12の下部の内周面12Aとがはまり合い、それらの外周面11Aおよび内周面12Aに形成された爪部11Bと溝部12Bとによって抜け止めされる。さらに、それらの外周面11Aおよび内周面12Aに形成された複数の突起11Cと溝部12Cとのはめ合いによって、第1および第2ホルダ部材11,12は回り止めされている。また、爪部11Bが溝部12Bに圧入されることにより、ノズルホルダ10の内部からの液体の漏れが阻止される。
【0013】
このような第1および第2ホルダ部材11,12の結合に際しては、予め、第1ホルダ部材11の縮径部11Dに、前述した従来例と同様の第1キャップ1を回転自在にはめ合わせておく。それは、第2ホルダ部材12の外周部に、縮径部11Dよりも径方向外側に膨出する拡径部12Dが形成されているからである。このようにして、第1および第2ホルダ11,12を一体的に結合することにより、第1キャップ1を回転自在かつ所定量だけ上下方向に移動自在に備えたノズルホルダ10が構成される。第1ホルダ部材11の外周部には、工具または治具によって回し操作可能なフランジ12Eが形成されている。本例の場合、そのフランジ12Eは図2のように2面幅とされている。また前述した従来例と同様に、第1キャップ1には圧送管Pの雄ねじ部PBとねじ合う雌ねじ部1Aが形成され、圧送管Pの通路PAには、噴霧器から薬液などの薬剤や種々の液体が圧送される。第1ホルダ部材11の下側外周面には凸部11K(図6参照)が形成されており、その凸部11Kと、圧送管Pの外周面に形成された複数の凹部PCのいずれかと、がはまり合うことによって、圧送管Pに対してノズルホルダ10が回り止めされる。
【0014】
第1ホルダ部材11の下端と圧送管Pとの対向部には三つ切りパッキン2とストレーナ3が組み付けられる。三つ切りパッキン2は合成ゴム等の可撓性材料によって成形されており、図4のように、外周部2Aと中央部2Bが肉厚とされ、それらの中間にリング状の薄肉の膜2Cが形成されている。その膜2Cには放射状に3つのスリット2Dが形成されている。外周部2Aはパッキンとして機能し、また膜2Cにおけるスリット2Dの部分は、液体噴霧後の液だれを防止するための弁として機能する。ストレーナ3は、図5のように、リング状のパッキン3Aの内周面に形成したスリット3Bに、椀状の網3Cの外周部をはめ付けた構成となっている。第1キャップ1を圧送管Pにねじ付けることにより、第1ホルダ部材11と圧送管Pとの間において、三つ切りパッキン2の外周部2Aとストレーナ3のパッキン3Aが圧縮されて、液体の漏れが防止される。
【0015】
第1ホルダ部材11の内部には、椀状のオリフィス板4が圧入されている。オリフィス板4には、図3のように、フランジ部4Aと、上方(液体の流動方向下流側)に膨出する膨出部4Bと、その膨出部4Bの中央に位置する小穴4Cと、が形成されている。第1ホルダ部材11内の通路11Fはフランジ部4Aの外径よりも小径とされていて、その通路11F内にフランジ部4Aが圧入される。通路11Fの上面は、膨出部4Bを支えるように円錐状の凹面とされている。
【0016】
また、第1ホルダ部材11内の通路11Gには、オリフィス板4の近傍に位置する空気取入れ口11Hが形成されており、その空気取入れ口11Hに連通する空気孔11Jは縮径部11Dの外周面に開口している。空気孔11Jは、縮径部11Dと第1キャップ1との間の隙間、および第2ホルダ部材12の膨出部12Dと第1キャップ1との間の隙間を通して、外気に連通されている。膨出部12Dと第1キャップ1との対向面は円錐状の凹面1Bおよび円錐状の凸面12Fとされており、それらの間には、ノズルホルダ10の長手方向(図1中の上下方向)に対して傾斜する隙間、つまり図1中の上方に向かって拡開する円筒状の隙間が形成されている。
【0017】
第2ホルダ部材12の外周部には、外噴板5と中子6を取り付けるための第2キャップ7がねじ付けられている。8はOリングである。第2ホルダ部材12の雄ねじ部12Gにねじ合う第2キャップ7の雌ねじ部7Aは、第1キャップ1の雌ねじ部1Aと同径のねじサイズである。本例の場合、第2キャップ7は第1キャップ1と同一のものである。外噴板5には噴出口5Aが形成され、中子6には旋回穴6Aが形成されている。
【0018】
次に、作用について説明する。
図1のような噴霧ノズルの取り付け状態において、圧送管Pの通路PAから圧送される液体は、三つ切りパッキン2のスリット2D、ストレーナ3の網3C、通路11F、およびオリフィス板4の小穴4Cを通って、通路11Gに入る。さらに、その液体は中子6の旋回穴6Aを通って周方向に旋回され、渦室R1内にて渦流となってから、外噴板5の噴出口5Aから外方に噴出される。その際、オリフィス板4の小穴4Cの下流側が負圧となり、空気孔11Jを通して外部の空気が空気取入れ口11Hから液体内に取入れられることによって、液体は空気と混合されて噴出口5Aから噴霧されることになる。その噴霧パターンは、図2のような円環状パターンP1となる。つまり液体は、噴出口5Aから拡開するような中空円錐状に噴出されることになる。その液体と空気との混合により、細かい噴霧粒子が結合して大きな粒子径となり、噴霧される液体が飛散し難くなる。例えば、100μm以下の細かい薬液の噴霧粒子が結合して、150〜250μm程度の大きな粒子径となり、散布される薬剤が飛散し難くなる。
【0019】
渦室R1内における液体と空気の混合流は、パッキン8の内周面に沿って激しく旋回しながら噴出口5Aから噴出される。その噴出口5Aからの噴出角度および噴霧粒子径は、噴出口5Aの内径、液体の流量を規制するオリフィス板4の小穴4Cの内径、空気の取入れ量を規制する空気取入れ口11Hの内径、および液体の圧送圧力などに応じて設定することができる。
【0020】
仮に、液体の圧送圧力が規定以上となって、万が一、液体が空気取入れ口11Hから空気孔11Jを通って外部に漏れた場合には、それが周囲に飛散するおそれがない。すなわち、空気孔11Jを通って外部に放出される液体は、まずは第1キャップ1の内周面に当たり、それから、円錐状の凹面1Bと凸面12Fとの間の斜めの隙間を通ってから落下することになる。
【0021】
ところで、第2キャップ7の締め付けに際しては、それが第1キャップ1と同様に大きいため、作業者は素手によっても締め付けることができる。さらに本例においては、第2キャップ7を第1キャップ1と同一部品として、それらを共通化しているため、部品の管理コストとよび噴霧ノズルの生産コストを低減することができる。また、第2ホルダ部材12の拡径部12Dによって、ノズルホルダ10の外周面と第1キャップ1との間の段差が小さくなるため、噴霧ノズルの使用時に、雑草等の周辺物が絡み付きにくくすることができる。また本例のように、噴出口5Aから中空円錐状に液体を噴霧することは、特に、作物に対して農薬を散布する場合に有利であり、作物に対して角度をもって農薬を接触させることができて散布死角ができにくい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る噴霧ノズルの断面図である。
【図2】図1の噴霧ノズルの分解斜視図である。
【図3】図1における三つ切りパッキン、ストレーナ、およびオリフィス板の斜視図である。
【図4】図3における三つ切りパッキンを上方から視た斜視図である。
【図5】図1におけるストレーナの分解斜視図である。
【図6】図1における第1ホルダ部材の底面視図である。
【図7】従来の噴霧ノズルの断面図である。
【図8】図7の噴霧ノズルの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 第1キャップ
1A 雌ねじ部
2 三つ切りパッキン
3 ストレーナ
4 オリフィス板
5 外噴板
5A 噴出口
6 中子
7 第2キャップ
7A 雌ねじ部
8 パッキン
10 ノズルホルダ
11 第1ホルダ部材
11D 縮径部
11H 空気取入れ口
11J 空気孔
12 第2ホルダ部材
12D 拡径部
P 圧送管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルホルダの基端側の外周部に、液体の圧送管の外周部にねじ付け可能な第1キャップが備えられ、前記ノズルホルダの先端側の外周部に、液体の噴出口が形成された外噴板を取り付けるための第2キャップがねじ付けられ、前記ノズルホルダの基端側から導入した前記液体を前記外噴板の噴出口から噴霧可能な噴霧ノズルにおいて、
前記ノズルホルダは、前記基端側の第1ホルダ部材と前記先端側の第2ホルダ部材との結合によって構成され、
前記第1ホルダ部材の外周面に、前記第1キャップを回転自在に支持するための縮径部を形成し、
前記第2ホルダ部材の外周面に、前記縮径部よりも径方向外方に膨出する拡径部を形成し、
前記第1および第2キャップの内周面に形成される雌ねじ部を同径のねじサイズとした
ことを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項2】
前記第1および第2キャップは同じものであることを特徴とする請求項1に記載の噴霧ノズル。
【請求項3】
前記第2ホルダ部材の拡径部と前記第1キャップとの間に、前記ノズルホルダの長手方向に対して傾斜する隙間を形成し、
前記第1ホルダ部材の縮径部に、前記隙間を通して前記ノズルホルダ内の液体中に空気を取り込むための空気孔を形成した
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の噴霧ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−326384(P2006−326384A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149313(P2005−149313)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】