説明

噴霧ノズル

【課題】空気混入式専用のノズルでありながら、多量散布と少量散布とを切り替えて行なうことのできる噴霧ノズルが求められている。
【解決手段】噴霧ノズル1は、第1オリフィス板12が下流側本体3の進退ホルダ6に配備され、第1オリフィス板12の下流側に空気導入路20が形成され、上流側本体4に操作用筒体9が回動自在に取付けられていて、進退ホルダ6を進退させることにより、上流側本体4の流路22と第1中央オリフィス穴13とが連通される一方で周辺オリフィス穴14が閉止され、あるいは中央オリフィス穴13および周辺オリフィス穴14と流路22とが連通するものであり、進退ホルダ6の流路24に、第2中央オリフィス穴11を有する第2オリフィス板10が配備され、進退ホルダ6と操作用筒体9との間に、第1オリフィス板12が上流側本体4の先端面4Dに対し密着したときおよび離間したときのいずれも空気導入路20とノズル外部とを連通する、連通空間28を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液などを空気と混合した散布に使用されるノズルであって、特に噴霧量を切替可能な噴霧ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の噴霧ノズルとしては、例えば下記の特許文献1に記載されたものが知られている。この文献記載の噴霧ノズル51は、図7に示すように、散布杆などが接続される上流側本体54と、噴板58を有する下流側本体53とを備えている。下流側本体53は、噴板58を止めるキャップ69を有するノズルホルダ55と、ノズルホルダ55の末端側に連結される進退ホルダ56とから構成される。下流側本体53の末端側には、流路軸心C上に配置される第1中央オリフィス穴63と、第1オリフィス穴63の周囲に配置された周辺オリフィス穴64とを有する第1オリフィス板62が配備されている。下流側本体53の第1オリフィス板62と噴板58との間には、流路74と本体外部とを連通して本体外部の空気を流路内に導入するための空気導入路70が形成されている。下流側本体53の外方周囲には操作用筒体59が配置され、この操作用筒体59は上流側本体54の枢支部54Bに周方向回動自在に取り付けられている。
【0003】
そして、操作用筒体59の内周面に形成された雌ネジ部59Cが下流側本体53の外周面に形成された雄ネジ部56Aと螺合して下流側本体53を上流側本体54に対しノズル軸心C方向に進退させるようになっている。これにより、第1オリフィス板62が上流側本体54の先端面54Dに密着したときは、上流側本体54の流路72と第1オリフィス板52の中央オリフィス穴53とが連通され、且つ、上流側本体54の先端面54Dが第1オリフィス板62の周辺オリフィス穴64を閉止する。一方、第1オリフィス板62が上流側本体54の先端面54Dから離間したときは、上流側本体54の流路72と、第1オリフィス板62の中央オリフィス穴63および周辺オリフィス穴64のすべてとが連通する。
【0004】
この噴霧ノズル51は、噴霧粒径が大きいことから風に同伴した飛散量(ドリフト量)が少なく且つ薬液散布量が少ない空気混入式の噴霧態様と、噴霧粒径が小さく且つ薬液散布量が多い空気非混入式の噴霧態様との切り替えられるようになっている。噴霧粒径が小さい空気非混入式は例えば殺虫剤用として使用され、噴霧粒径が大きい空気混入式は例えば除草剤用として使用されている。
まず、空気混入式のときは、操作用筒体59を手で回して、図7に示した状態のようにすると、周辺オリフィス穴64が閉止されるとともに連通空間78が開かれる。これにより、上流側本体54の流路72の薬液は第1オリフィス板62の第1中央オリフィス穴63のみから流路74に勢いよく噴出する。そこで、流路74内の薬液は空気導入路70から吸引された空気が混入されたのち、流路76および噴口57を経て噴射される。
一方、前記の空気混入式から空気非混入式に切り替える場合は、操作用筒体59を逆に回すと、O−リング81が操作用筒体59の内周段差面80に当接して連通空間78を塞ぎ、空気導入路70から流路74への空気の導入が止められる。同時に、第1オリフィス板62の他端面が上流側本体54の先端面54Dから離れ、それらの間に空間が生じる。そこで、上流側本体54の流路72からの薬液が前記した空間に流入したのち、第1中央オリフィス穴63を通るものと、周辺オリフィス穴64を通るものとに分かれる。そして、第1中央オリフィス穴63および周辺オリフィス穴64を通った薬液は流路70に流出し、そのまま空気を混入されることなく流路76および噴口57を経て噴射されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−319365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、従来の噴霧ノズル51は、上流側本体54の先端面54Dの当接・離間により、第1オリフィス板62の周辺オリフィス穴64を開閉して、空気混入式と空気非混入式とに切り替えるようになっているが、既述したように空気非混入式の場合は噴霧粒径が小さくドリフト現象を引き起こしやすいことから、或る種の薬剤、例えば除草剤には不向きなノズルであった。
一方で、空気混入式の噴霧ノズルが多用される除草剤において、その種類によっては単位面積当たりの散布すべき量が異なる場合がある。例えば、或る種の除草剤では1アール当り25Lが必要であり、別種の除草剤では1アール当り100Lが必要になるといった具合である。このような場合でも、上記の噴霧ノズル1では、空気混入式のまま散布量だけを切り替えられないという不具合があった。尚、原液に対する希釈倍率が比較的小さく毒性が強い除草剤と、希釈倍率が比較的大きい殺虫剤とをひとつの噴霧ノズルで使い分けすることは、通常は行なわれない。
【0007】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、空気混入式専用のノズルでありながら、多量散布と少量散布とを切り替えて行なうことのできる噴霧ノズルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る噴霧ノズルは、ノズル本体に貫通形成された流路の先端部に、噴板が配備され、ノズル本体が、上流側本体と、噴板を有する下流側本体とに流路軸心方向に分割して形成され、流路軸心上に配置される第1中央オリフィス穴と、第1中央オリフィス穴の周囲に配置された周辺オリフィス穴とを有する第1オリフィス板が下流側本体の末端側に配備され、下流側本体の第1オリフィス板と噴板との間に、流路と本体外部とを連通して本体外部の空気を流路内に導入するための空気導入路が形成され、下流側本体の周囲に配置された操作用筒体が、上流側本体に周方向回動自在に取り付けられていて、操作用筒体の内周面に形成された雌ネジ部が下流側本体の外周面に形成された雄ネジ部と螺合して下流側本体を上流側本体に対しノズル軸心方向に進退させることにより、第1オリフィス板が上流側本体の先端面に密着したときは、上流側本体の流路と第1オリフィス板の中央オリフィス穴とが連通されるとともに上流側本体の先端面が第1オリフィス板の周辺オリフィス穴を閉止する構成とされ、第1オリフィス板が上流側本体の先端面から離間したときは、上流側本体の流路と第1オリフィス板の中央オリフィス穴および周辺オリフィス穴とが連通する構成となっている噴霧ノズルであって、下流側本体における空気導入路と第1オリフィス板との間の流路に、流路軸心上に配置される第2中央オリフィス穴を有する第2オリフィス板を配備し、下流側本体の外周面と操作用筒体の内周面との間に、第1オリフィス板が上流側本体の先端面に密着したとき、および第1オリフィス板が上流側本体の先端面から離間したときのいずれのときも空気導入路とノズル外部とを連通している連通空間を設けた構成にしてある。
【0009】
また、前記構成において、上流側本体の先端面が、ノズル本体の流路軸心上に配置される流路を有する弾性部材で構成されているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る噴霧ノズルによれば、第1オリフィス板が上流側本体の先端面と密着したとき、または離間したときのいずれの場合も、連通空間はノズル外部と連通しているので、常に、ノズル外部の空気を連通空間および空気導入路から下流側本体内の流路に導入することができる。また、空気導入路と第1オリフィス板との間の下流側本体に、第2オリフィス板が配備されているので、多量散布時には、第1中央オリフィス穴を通る薬液と周辺オリフィス穴を通る薬液とが、第2オリフィス板の手前で再び合流したのち、第2中央オリフィス穴から勢いよく噴出する。これにより、第2中央オリフィス穴からの薬液が空気導入路から十分な量の空気を混入したのちに噴口から多量に噴出させることができる。すなわち、この噴霧ノズルは、空気混入式の大噴霧量ノズルと空気混入式の小噴霧量ノズルを変更するといった不便さをもたらすことなく、多量散布と少量散布とをひとつのノズルの切り替えだけで行なうことができる
【0011】
また、上流側本体の先端面が、ノズル本体の流路軸心上に配置される流路を有する弾性部材で構成されているものでは、上流側第2オリフィス板に第1オリフィス板を当接させたときに、弾性部材が弾性変形して第1オリフィス板の末端面に緻密に密着するので、周辺オリフィス穴を確実に封止できる。従って、周辺オリフィス穴からの液漏れを防いで、第1オリフィス板から第2オリフィス板への液流状態を一定に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係る噴霧ノズルおよび散布杆の正面図である。
【図2】前記噴霧ノズルの分解斜視図である。
【図3】前記噴霧ノズルにおいて第1オリフィス板の末端面と上流側本体の先端面が密着している状態を示す側断面図である。
【図4】前記噴霧ノズルにおいて第1オリフィス板の末端面と上流側本体の先端面とが離間している状態を示す側断面図である。
【図5】本発明の実施形態2に係る噴霧ノズルにおいて第1オリフィス板の末端面と上流側本体の弾性部材の先端面が密着している状態を示す側断面図である。
【図6】前記実施形態2の噴霧ノズルにおいて第1オリフィス板の末端面と上流側本体の弾性部材の先端面とが離間している状態を示す側断面図である。
【図7】従来の噴霧ノズルを示す一部断面を含む側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。
「実施形態1」:
図1は本発明の実施形態1に係る噴霧ノズルおよび散布杆の正面図、図2は前記噴霧ノズルの分解斜視図、図3は前記噴霧ノズルにおいて第1オリフィス板の末端面と上流側本体の先端面が密着している状態を示す側断面図である。
各図において、この実施形態に係る噴霧ノズル1は、それぞれ後述する、上流側本体4、O−リング21、第1オリフィス板12、第2オリフィス板10、進退ホルダ6、操作用筒体9、連結用キャップ15、ノズルホルダ5、中子16、O−リング18、噴板8、および先端キャップ19から構成される。この噴霧ノズル1は、連結用キャップ15の連結用口27の雌ネジ部15Aに角度付き連結具40の先端側が螺止される。そして、角度付き連結具40の末端側がジョイント部41を介して散布杆42と連結されて、除草剤など薬液の噴霧に使用される。尚、この実施形態において、先端側は液体流通方向の下流側と同義であり、末端側は液体流通方向の上流側と同義である(以下同じ)。
【0014】
前記したノズル本体2は、先端側と末端側とを一連に貫通して形成された流路22,23,24,25,26,17を有しており、上流側本体4と、噴板8を有する下流側本体3とに、流路軸心C方向に分割して形成されている。すなわち、流路22,23,24,25,26,17の先端部に、噴口7を有する噴板8が配備されている。下流側本体3は、上流側本体4に対し流路軸心C方向に移動自在に連結される進退ホルダ6と、進退ホルダ6先端の係合穴6Cに係止突部5Bが係止されるノズルホルダ5とから構成されている。ノズルホルダ5内には、混合流路25が貫通形成されており、混合流路25の前方にディヒューザ流路26が形成されている。このディヒューザ流路26の前方に、薬液を衝突させたのちに噴口7に案内する中子16が装着されている。この中子16には、衝突後の薬液を流す流路17が形成されている。中子16の周囲でノズルホルダ5の先端面上にはO−リング18が置かれ、更にO−リング18の先端側に噴板8が置かれ、これらの上から先端キャップ19が被せられる。先端キャップ19はその雌ネジ部19Aがノズルホルダ5の雄ネジ部5Aと螺合して、噴板8、O−リング18、中子16を一体に固定する。
【0015】
進退ホルダ6の流路23,24の末端側には、進退ホルダ6の先端側に向かって陥没した凹部6Dが形成されている。この凹部6D内に第1オリフィス板12が配備されている。第1オリフィス板12は、流路軸心C上に配置される第1中央オリフィス穴13と、第1中央オリフィス穴13の周囲に配置された例えば2つの周辺オリフィス穴14,14とを有している。進退ホルダ6の凹部6D内における空気導入路20と第1オリフィス板12との間、すなわち合流用流路23と集合用流路24との境目に、第2オリフィス板10が配備されている。この第2オリフィス板10の第2中央オリフィス穴11も流路軸心C上に配置されている。そして、第2オリフィス板10は第1オリフィス板12から流路軸心C方向に離間して配備され、これらの間は第1中央オリフィス穴13および周辺オリフィス穴14,14をそれぞれ通過した噴霧液が合流する合流用流路23となっている。
【0016】
進退ホルダ6の凹部6D内には、上流側本体4先端側の小径部4Fが装着される。この小径部4Fの外周面には、周溝部4Cが全周にわたって形成されている。この周溝部4Cに嵌着されたO−リング21が、進退ホルダ6の凹部6Dの内周面を流路軸心C方向に液封状態で摺動する。進退ホルダ6における第1オリフィス板12の下流側には、空気導入路20が形成されている。この空気導入路20は、集合用流路24と本体外部とを連通して本体外部の空気を集合用流路24内に導入するためのものである。進退ホルダ6の周囲には、操作用筒体9が配備されており、この操作用筒体9末端部の外周鍔部9Bが、上流側本体4の枢支部4Bに周方向回動自在に取り付けられている。上流側本体4末端の外周面には雄ネジ部4Aが形成されており、キャップ15の雌ネジ部15Aと螺合する。操作用筒体9の外周鍔部9Bは、キャップ15先端部の内周鍔部により回動可能に且つ抜け止め係止されている。
【0017】
そして、操作用筒体9の内周面9Aに形成された雌ネジ部9Cが進退ホルダ6の外周面6Bに形成された雄ネジ部6Aと螺合して、進退ホルダ6を上流側本体4に対し流路軸心C方向に進退させるようになっている。これにより、第1オリフィス板12の末端面12Aが上流側本体4の先端面4Dに密着したときは、上流側本体4の先端面4Dが第1オリフィス板12の周辺オリフィス穴14,14を閉止する。また、第1オリフィス板12が上流側本体4の先端面4Dから離間したとき、上流側本体4の流路22は周辺オリフィス穴14,14と連通するようになっている。尚、上流側本体4に対する下流側本体3の進退状態によらず、上流側本体4の流路22と第1オリフィス板12の第1中央オリフィス穴13は、常に連通している。進退ホルダ6の末端側には、例えば2つの係合溝部6E, 6Eが形成されている。これらの係合溝部6E, 6Eは、上流側本体4の小径部4Fの外周面に形成された回り止め突部4E,4Eと係合する。これにより、上流側本体4に対し進退ホルダ6を周方向に回転させないようになっている。また、進退ホルダ6の外周面6Bと操作用筒体9の内周面9Aとの間には、連通空間28が形成されている。この連通空間28により、常に、空気導入路20とノズル外部とが連通している。すなわち、第1オリフィス板12が上流側本体4の先端面4Dに密着したとき、および、第1オリフィス板12が上流側本体4の先端面4Dから離間したときのいずれの場合も、空気導入路20とノズル外部とは連通している。
【0018】
更に、噴板8と第2オリフィス板10と第1オリフィス板12には、次のような条件が設定される。例えば、第2中央オリフィス穴11と第1中央オリフィス穴13は共通の流路軸心C上に配置されている。また、噴板8の噴口7の穴面積(または穴径)は第2中央オリフィス穴11の穴面積(または穴径)よりも大きくされる。第1オリフィス板12における全てのオリフィス穴13,14,14からの噴霧量は第2オリフィス板10の第2中央オリフィス穴11からの噴霧量よりも多くなるように、それぞれのオリフィス穴11,13,14の穴面積と、周辺オリフィス穴14の個数が決められる。そして、噴霧量は、少量散布時は第1オリフィス板12の第1中央オリフィス穴13の穴面積で決まり、多量散布時は第2オリフィス板10の第2中央オリフィス穴11の穴面積で決まる。尚、噴板8の噴口7の穴面積は噴霧量に影響しない。尚、空気混入式のノズルとするためには、噴口7の穴面積を第2オリフィス板10の第2中央オリフィス穴11の穴面積よりも大きくしなければならない。
【0019】
上記した各部品の材質は特に限定されるものでないが、ノズルホルダ5、先端キャップ19、中子16、連結用キャップ15、操作用筒体9、進退ホルダ6、および上流側本体4は、例えばポリアセタールやポリプロピレンなどの合成樹脂で構成するとよい。噴板8、第1オリフィス板12、および第2オリフィス板10は、例えばステンレス鋼や真鍮などの金属で構成するとよい。O−リング18,21は例えばNBRやフッ素ゴムなどで構成するとよい。
【0020】
上記した構成の噴霧ノズル1の作用を次に説明する。
まず、少量散布(例えば0.5L/分)の場合を説明する。進退ホルダ6を上流側本体4に当接させるように操作用筒体9が回されると、図4に示すように、第1オリフィス板12の他端面12Aが上流側本体4の先端面4Dに当接する。このとき、第1オリフィス板12では、第1中央オリフィス穴13が集合用流路23と連通する一方、周辺オリフィス穴14,14は閉止されている。その結果、上流側本体4の流路22からは、少量の薬液が第1中央オリフィス穴13のみを通って合流用流路23に流出し、更に第2オリフィス板10の第2中央オリフィス穴11から集合用流路24に流出する。集合用流路24内の薬液は更に混合流路25およびディヒューザ流路26を流れ、それにより空気導入路20から空気を吸引する。そして、集合用流路24では、第2中央オリフィス穴11からの薬液に空気導入路20からの空気が混入され、中子16の末端面に衝突したのちに流路17を通って噴口7から噴射される。
【0021】
一方、多量散布(例えば1.4L/分)のために、進退ホルダ6を上流側本体4から離すように操作用筒体9が回されると、図4に示すように、進退ホルダ6が矢印Uのように移動し、第1オリフィス板12の他端面12Aが弾性部材30の先端面30Cから離れ、それらの間に流路29が生じる。その結果、上流側本体4の流路22から多量の薬液が流路29に流入したのち、第1中央オリフィス穴13を通るものと、両側の周辺オリフィス穴14,14を通るものとに分かれる。そして、第1中央オリフィス穴13および周辺オリフィス穴14,14を通った薬液は、合流用流路23で再度合流したのち、第2オリフィス板10の第2中央オリフィス穴11から集合用流路24に流出して空気を混入されたのち、噴口7から噴射されるのである。
【0022】
上記したように、この噴霧ノズル1では、第1オリフィス板12が上流側本体4の先端面4Aに密着したとき、または第1オリフィス板12が上流側本体4の先端面4Aから離間したときのいずれの場合も、進退ホルダ6と操作用筒体9の間の連通空間28はノズル外部と連通しているので、常に、ノズル外部の空気を連通空間28および空気導入路20から進退ホルダ6内の集合用流路24に導入することができる。また、空気導入路20との進退ホルダ6内に、第2オリフィス板10が配備されており、第1オリフィス板12と第2オリフィス板10との間に合流用流路23が設けられているので、多量散布時には、第1中央オリフィス穴13を通る薬液と周辺オリフィス穴14,14を通る薬液とが、合流用流路23で再び合流したものが、第2オリフィス板10の第2中央オリフィス穴11から勢いよく噴出される。これにより、第2中央オリフィス穴11からの薬液が空気導入路20から十分な量の空気を混入したのちに噴口7から多量に噴出されるのである。すなわち、この噴霧ノズル1は、少量散布(例えば0.5L/分)と多量散布(例えば1.4L/分)のいずれの場合も、空気混入式の噴霧態様だけで薬液散布が行なうことができる。
【0023】
「実施形態2」:
次に、本発明の実施形態2に係る噴霧ノズルを説明する。図5および図2に示すように、実施形態2の噴霧ノズル1Aは前記した実施形態1の噴霧ノズル1と多くの構成が共通であるが、構成の異なるところは、上流側本体4の流路22の先端部に係合穴部4Gが形成され、この係合穴部4Gに、例えばゴム材料などから成る弾性部材30が装着されていることである。弾性部材30は、円盤部30Dと、円盤部30Dから他端側に突出して形成された係止突部30Bとから構成されている。そして、流路軸心C上に配置される流路30Aが円盤部30Dの盤中央から係止突部30B内を貫通して形成されている。弾性部材30は例えばNBRやフッ素ゴムなどのゴム材、あるいは熱可塑性エラストマーなどで構成される。弾性部材30はその係止突部30Bが上流側本体4の係合穴部4Gに差し込まれて掛止されることにより固定される。すなわち、弾性部材30により上流側本体4の先端部が構成される。
【0024】
従って、操作用筒体9を回して弾性部材30の先端面30Cに第1オリフィス板12の末端面12Aを当接させたとき、弾性部材30が弾性変形して第1オリフィス板12の末端面12Aに緻密に密着する(図5参照)。これにより、周辺オリフィス穴14,14を確実に封止できる。その結果、周辺オリフィス穴14,14からの液漏れを防ぎ、薬液を専ら第1中央オリフィス穴13から第2オリフィス板10の第2中央オリフィス穴11へと流すことができる。また、剛体同士の当接ではなく弾性部材30が柔らかく当接するので、当接音は生じることがなく静かである。
【0025】
一方、進退ホルダ6を上流側本体4から離すように操作用筒体9が回されると、図6に示すように、進退ホルダ6が矢印Uのように移動し、第1オリフィス板12の他端面12Aが弾性部材30の先端面30Cから離れ、それらの間に流路29が生じる。その結果、弾性部材30の流路30Aからの薬液は、流路29において、第1中央オリフィス穴13を通るものと、両側の周辺オリフィス穴14,14を通るものとに分かれる。そして、第1中央オリフィス穴13および周辺オリフィス穴14,14を通った薬液は、合流用流路23で再度合流したのち、第2オリフィス板10の第2中央オリフィス穴11から集合用流路24に流出して空気を混入されたのち、噴口7から噴射される。
【0026】
従って、この噴霧ノズル1Aによれば、少量散布と多量散布のいずれの場合も、空気混入式だけで薬液散布を行なえるのは無論のこと、少量散布時には、弾性部材30が第1オリフィス板12の末端面12Aに当接して密着し周辺オリフィス穴14,14を確実に封止することができる。その結果、少量散布量を規定量に保持することができ、噴霧状態も安定する。
【0027】
尚、上記の実施形態では、第1オリフィス板12の周辺オリフィス穴14,14を、第1中央オリフィス穴13の両側位置で直線状に配置したが、本発明の噴霧ノズルはそれに限定されるものでなく、周辺オリフィス穴14の開口位置は、上流側本体4の先端面4Dまたは弾性部材30で閉止することができる位置であれば、どこでも構わない。また、第1オリフィス板12に設けられる周辺オリフィス穴14の数は2つに限らない。
また、第1中央オリフィス穴13、第2中央オリフィス穴11、および噴口7のそれぞれの穴面積を変更することで、様々な噴霧量の空気混入式の噴霧ノズルを提供することができる。
【符号の説明】
【0028】
1,1A 噴霧ノズル
2 ノズル本体
3 下流側本体
4 上流側本体
4B 枢支部
4D 先端面
5 ノズルホルダ
6 進退ホルダ
6A 雄ネジ部
6B 外周面
7 噴口
8 噴板
9 操作用筒体
9A 内周面
9C 雌ネジ部
10 第2オリフィス板
11 第2中央オリフィス穴
12 第1オリフィス板
12A 末端面
13 第1中央オリフィス穴
14 周辺オリフィス穴
17 流路
20 空気導入路
22 流路
23 合流用流路
24 集合用流路
25 混合流路
26 ディヒューザ流路
27 装着用口
28 連通空間
29 流路
30 弾性部材
30A 流路
30C 先端面
40 角度付き連結具
41 ジョイント部
42 散布杆
C 流路軸心
U 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル本体に貫通形成された流路の先端部に、噴板が配備され、
ノズル本体が、上流側本体と、噴板を有する下流側本体とに流路軸心方向に分割して形成され、
流路軸心上に配置される第1中央オリフィス穴と、第1中央オリフィス穴の周囲に配置された周辺オリフィス穴とを有する第1オリフィス板が下流側本体の末端側に配備され、
下流側本体の第1オリフィス板と噴板との間に、流路と本体外部とを連通して本体外部の空気を流路内に導入するための空気導入路が形成され、
下流側本体の周囲に配置された操作用筒体が、上流側本体に周方向回動自在に取り付けられていて、
操作用筒体の内周面に形成された雌ネジ部が下流側本体の外周面に形成された雄ネジ部と螺合して下流側本体を上流側本体に対しノズル軸心方向に進退させることにより、第1オリフィス板が上流側本体の先端面に密着したときは、上流側本体の流路と第1オリフィス板の中央オリフィス穴とが連通されるとともに上流側本体の先端面が第1オリフィス板の周辺オリフィス穴を閉止する構成とされ、第1オリフィス板が上流側本体の先端面から離間したときは、上流側本体の流路と第1オリフィス板の中央オリフィス穴および周辺オリフィス穴とが連通する構成となっている噴霧ノズルであって、
下流側本体における空気導入路と第1オリフィス板との間の流路に、流路軸心上に配置される第2中央オリフィス穴を有する第2オリフィス板を配備し、
下流側本体の外周面と操作用筒体の内周面との間に、第1オリフィス板が上流側本体の先端面に密着したとき、および第1オリフィス板が上流側本体の先端面から離間したときのいずれのときも空気導入路とノズル外部とを連通している連通空間を設けたことを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項2】
上流側本体の先端面が、ノズル本体の流路軸心上に配置される流路を有する弾性部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の噴霧ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−239964(P2012−239964A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111360(P2011−111360)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(397002360)ヤマホ工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】