説明

噴霧ユニット及び静電噴霧装置

【課題】針状のノズルを備えた噴霧ユニット及び静電噴霧装置において、噴霧性状の向上及び安全性の向上の両立を図る。
【解決手段】液体が充填された容器(11)と、該容器(11)の内外を連通する液体通路が内部に形成された針状のノズル(21)とを備え、容器(11)内の液体に所定の電圧を印加すると共に容器(11)内を加圧して液体をノズル(21)の先端(21a)から噴霧する静電噴霧装置(1)に設けられる噴霧ユニットを前提とする。該噴霧ユニットには、ノズル(21)が容器(11)から突出した突出位置と該突出位置より容器(11)側に後退した後退位置とに移動自在となるようにノズル(21)を支持する支持部(22)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴霧するための噴霧ユニット及び静電噴霧装置に関し、特に、針状のノズルを備えた噴霧ユニット及び静電噴霧装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、人体に有用な物質を含む液体を室内へ噴霧するため、液体を充填した容器の先端にノズルを設け、容器内の液体に電圧を印加すると共に該容器内を加圧して該液体をノズルの先端に供給し、該ノズルの先端に形成される電界によって液体を噴霧するようにした静電噴霧装置が知られている(例えば、下記特許文献1を参照)。
【0003】
ところで、上記静電噴霧装置において液体を噴霧する際に、細い針状のノズルを用いて噴霧すると、液体の粒径が安定し、噴霧性状が向上する。そのため、以前より、細い針状のノズルを用いた静電噴霧装置が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−138081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような細い針状のノズルを用いることとすると、使用者が誤ってノズルの先端等に触れて負傷してしまう虞があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、針状のノズルを備えた噴霧ユニット及び静電噴霧装置において、噴霧性状の向上及び安全性の向上の両立を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、液体が充填された容器(11)と、該容器(11)の内外を連通する液体通路が内部に形成された針状のノズル(21)とを備え、上記容器(11)内の液体に所定の電圧を印加すると共に上記容器(11)内を加圧して液体を上記ノズル(21)の先端(21a)から噴霧する静電噴霧装置(1)に設けられる噴霧ユニットであって、上記ノズル(21)が上記容器(11)から突出した突出位置と該突出位置より上記容器(11)側に後退した後退位置とに移動自在となるように上記ノズル(21)を支持する支持部(22,29)を備えている。
【0008】
第1の発明では、針状のノズル(21)が用いられているため、該ノズル(21)から噴射される液体の粒径が安定し、噴霧性状が向上する。また、噴霧ユニット(10)は、針状のノズル(21)が突出位置と該突出位置より容器(11)側に後退した後退位置とに移動自在となるようにノズル(21)を支持する支持部(22,29)を備えている。そのため、使用者が誤って針状のノズル(21)の先端に触れてしまっても、ノズル(21)が突出位置から容器(11)側に後退することで針状のノズル(21)が指等に刺さらない。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、上記支持部(22)は、上記ノズル(21)が固定されて該ノズル(21)の軸方向に弾性変形自在な弾性部材(13,26)を備えている。
【0010】
第2の発明では、ノズル(21)は該ノズル(21)の軸方向に弾性変形自在な弾性部材(13,26)に固定されている。よって、例えば、ノズル(21)に対して軸方向の容器(11)側向きに外力を加えると、ノズル(21)を介して弾性部材(13,26)にノズル(21)の軸方向の容器(11)側向きの力が加わり、弾性部材(13,26)が変形する。これにより、ノズル(21)が突出位置から軸方向の容器(11)側向きに後退して後退位置に至る。一方、ノズル(21)にかかる外力が取り除かれると、弾性部材(13,26)が復元してノズル(21)が元の突出位置に戻る。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、上記支持部(22)は、上記ノズル(21)が挿通される挿通孔(14d,27d)が形成されて上記弾性部材(13,26)を覆うカバー(14,27)を有し、上記後退位置における上記ノズル(21)の先端(21a)が上記カバー(14,27)の外面よりも内側に位置するように構成されている。
【0012】
第3の発明では、ノズル(21)は、弾性部材(13,26)を覆うカバー(14,27)に形成された挿通孔(14d,27d)に挿通され、後退位置において先端(21a)が上記カバー(14,27)の外面よりも内側に位置するように支持部(22)に支持されている。つまり、使用者が誤ってノズル(21)の先端(21a)に触れてしまった場合であっても、ノズル(21)が後退位置まで後退すると、使用者の指はカバー(14,27)の外面に当接する一方、ノズル(21)の先端(21a)は支持部(22)のカバー(14,27)内に収容される。
【0013】
第4の発明は、第1の発明において、上記支持部(29)は、上記容器(11)に形成されて上記ノズル(21)の軸方向に伸縮自在な蛇腹部(11c)を備えている。
【0014】
第4の発明では、支持部(29)がノズル(21)の軸方向に伸縮自在な蛇腹部(11c)を備えている。そのため、ノズル(21)は、蛇腹部(11c)が軸方向に伸縮することによって軸方向に移動自在に支持される。これにより、使用者が誤ってノズル(21)の先端(21a)に触れてしまった場合には、蛇腹部(11c)が収縮することによってノズル(21)が突出位置から軸方向に関して容器(11)側に後退する。一方、使用者の手がノズル(21)から離れると、蛇腹部(11c)が元の形状に復元されてノズル(21)は自動的に元の突出位置に戻る。
【0015】
第5の発明は、第1乃至第4のいずれか1つの噴霧ユニット(10)を備え、上記容器(11)内の液体に所定の電圧を印加すると共に上記容器(11)内を加圧して液体を上記ノズル(21)の先端から噴霧する静電噴霧装置である。
【0016】
第5の発明では、電圧が印加された容器(11)内の液体は、容器(11)内が加圧されることによってノズル(21)の先端(21a)に供給されて該ノズル(21)の先端(21a)に電界を形成する。これにより、ノズル(21)の先端(21a)の液体が連続して霧状に噴射される。また、針状のノズル(21)が用いられているため、該ノズル(21)から噴射される液体の粒径が安定し、噴霧性状が向上する。さらに、針状のノズル(21)が所定の突出位置と後退位置とに移動自在となるように構成されているため、使用者が誤って針状のノズル(21)の先端(21a)に触れてしまっても、ノズル(21)が突出位置から軸方向に後退して容器(11)側に引っ込む。
【0017】
第6の発明は、ハウジング(41)と、該ハウジング(41)内に収納され、且つ液体が充填された容器(11)と、該容器(11)に取り付けられ、該容器(11)の内外を連通する液体通路が内部に形成された針状のノズル(21)とを備え、上記容器(11)内の液体に所定の電圧を印加すると共に上記容器(11)内を加圧して液体を上記ノズル(21)の先端(21a)から噴霧する静電噴霧装置であって、上記ノズル(21)が所定の基準位置と該基準位置よりも軸方向に関して後退した後退位置とに移動自在となるように、上記容器(11)を上記ノズル(21)の軸方向に移動自在に支持する支持部材(60)を備えている。
【0018】
第6の発明では、針状のノズル(21)が用いられているため、該ノズル(21)から噴射される液体の粒径が安定し、噴霧性状が向上する。また、支持部材(60)によって、上記容器(11)はノズル(21)の軸方向に関して基準位置と後退位置とに移動可能に支持される。そのため、使用者が誤ってノズル(21)の先端(21a)に触れてしまっても、容器(11)がノズル(21)の軸方向に後退することによって、ノズル(21)も軸方向に後退するため、針状のノズル(21)が指等に刺さらない。
【0019】
第7の発明は、第6の発明において、上記支持部材(60)は、上記容器(11)を上記ノズル(21)の軸方向にスライド自在に支持するスライド機構(61)と、該スライド機構(61)と上記ハウジング(41)との間に介装され、上記ノズル(21)が上記基準位置に位置するように上記スライド機構(61)を付勢するバネ部材(62)とを備えている。
【0020】
第7の発明では、支持部材(60)は、スライド機構(61)とバネ部材(62)とによって構成され、容器(11)はスライド機構(61)によってノズル(21)の軸方向にスライド自在に支持され、該スライド機構(61)はバネ部材(62)によってノズル(21)が基準位置に位置するように付勢されている。これにより、使用者が誤ってノズル(21)の先端(21a)に触れてしまった場合には、ノズル(21)に加えられた力がスライド機構(61)に伝達されて容器(11)がノズル(21)の軸方向に後退する。これにより、ノズル(21)も後退する。一方、使用者の手がノズル(21)から離れると、バネ部材(62)の復元力によってスライド機構(61)と共に容器(11)が元の位置に戻り、ノズル(21)も基準位置に復元する。
【0021】
第8の発明は、第1の発明において、上記容器(11)の内壁は、該容器(11)内部に充填される液体に対して親和性を有する部材によって構成される一方、上記容器(11)内には、上記ノズル(21)の一端部(21b)が配置されると共に、該ノズルの一端部(21b)よりも上方に該容器(11)内の気泡が溜まる空気溜まり(66)が形成されている。
【0022】
ところで、容器(11)内に液体を充填する際、僅かではあるが空気が混入してしまう。そのため、液体がノズル(21)の極小径の液体通路に供給される際に、気泡も混入してしまう虞がある。そのような場合には、液体を押し出すために容器(11)内を加圧しても、液体通路の気泡が圧縮されるために液体が搬送されず、排出されなくなる(所謂エアロック状態となる)虞がある。
【0023】
しかしながら、第8の発明では、上記構成により、容器(11)内に気泡が混入してしまった場合であっても、気泡は容器(11)内壁に吸着せず、浮力によって上方へ上昇し、ノズル(21)の一端部(21b)よりも上方の空気溜まり(66)に集められる。空気溜まり(66)に集められた気泡は、ノズル(21)の一端部(21b)よりも上方にあるため、ノズル(21)内の液体通路に流入し難くなる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、針状のノズル(21)を、突出位置と該突出位置より容器(11)側に後退した後退位置とに移動自在となるように構成することにより、使用者が誤ってノズル(21)の先端(21a)に触れてしまっても、ノズル(21)を突出位置から容器(11)側に後退させることができる。従って、針状のノズル(21)を用いることによって噴霧性状の向上を図ることができると共に、該ノズル(21)を支持部(22,29)によって突出位置と後退位置とに移動自在に支持することで安全性の向上を図ることができる。
【0025】
また、第2の発明によれば、ノズル(21)を該ノズル(21)の軸方向に弾性変形自在な弾性部材(13,26)に固定することで、使用者が誤ってノズル(21)の先端に触れてしまった場合には、ノズル(21)を後退位置まで後退させて使用者の負傷を避けることができる一方、使用者の手がノズル(21)から離れると該ノズル(21)を容易に元の突出位置に戻すことができる。また、このような噴霧ユニット(10)を容易に構成することができる。
【0026】
また、第3の発明によれば、使用者が誤ってノズル(21)の先端(21a)に触れてしまった場合であっても、ノズル(21)が軸方向に後退して後退位置に至ると、使用者の指はカバー(14,27)の外面に当接する一方、ノズル(21)の先端(21a)は支持部(22)のカバー(14,27)内に収容される。そのため、ノズル(21)の先端(21a)が使用者の指等に刺さることをより確実に防止することができる。従って、噴霧ユニット(10)の安全性のさらなる向上を図ることができる。
【0027】
また、第4の発明によれば、容器(11)に形成された蛇腹部(11c)を備えた支持部(29)によってノズル(21)を支持することにより、ノズル(21)を軸方向に移動可能に構成することができる。そのため、使用者が誤ってノズル(21)の先端(21a)に触れてしまった場合にノズル(21)を軸方向に後退させて負傷を避ける一方、使用者の手がノズル(21)から離れると突出位置に戻るように噴霧ユニット(10)を容易に構成することができる。
【0028】
また、第5及び第6の発明によれば、噴霧性状及び安全性に優れた静電噴霧装置(1)を提供することができる。
【0029】
また、第7の発明によれば、容易な構成によって、使用者が誤ってノズル(21)の先端(21a)に触れてしまった場合でも、使用者の負傷が防止される構造を実現することができる。
【0030】
また、第8の発明によれば、容器(11)の内壁を、充填される液体に対して親和性を有する部材によって構成し、容器(11)内であってノズル(21)の一端部(21b)よりも上方に空気溜まり(66)を形成した。そのため、容器(11)内に気泡が混入してしまった場合であっても、容器(11)内に充填される液体が容器(11)の内壁に吸着するために気泡が該内壁に吸着せず、浮力によって上方へ上昇する。そのため、気泡をノズル(21)の一端部(21b)よりも上方の空気溜まり(11)に集めることができる。よって、簡単な構成により、容器(11)内の気泡がノズル(21)の液体通路に流入するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、実施形態1に係る静電噴霧装置の構成を第1カバー側から視て示す斜視図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る静電噴霧装置の構成を第2カバー側から視て示す斜視図である。
【図3】図3は、実施形態1に係る静電噴霧装置の構成を示す正面図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る静電噴霧装置の構成を示す縦断面図である。
【図5】図5は、加圧手段の構成を示す斜視図である。
【図6】図6は、噴霧カートリッジの構成を示す断面図である。
【図7】図7は、ノズル部の動作を示す図であり、(A)はノズル本体が突出位置に位置する状態を示し、(B)はノズル本体が後退位置に位置する状態を示す。
【図8】図8は、実施形態2に係る静電噴霧装置のノズル部の動作を示す図であり、(A)はノズル本体が突出位置に位置する状態を示し、(B)はノズル本体が後退位置に位置する状態を示す。
【図9】図9は、実施形態3に係る静電噴霧装置のノズル部の動作を示す図であり、(A)はノズル本体が突出位置に位置する状態を示し、(B)はノズル本体が後退位置に位置する状態を示す。
【図10】図10は、実施形態4に係る静電噴霧装置のノズル部の動作を示す図であり、(A)はノズル本体が基準位置に位置する状態を示し、(B)はノズル本体が後退位置に位置する状態を示す。
【図11】図11は、実施形態1〜4の変形例1に係る噴霧カートリッジの構成を示す断面図である。
【図12】図12(A)、(B)及び(C)は、実施形態1〜4の変形例2に係る噴霧カートリッジの取付動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0033】
《発明の実施形態1》
図1〜図6に示すように、本実施形態の静電噴霧装置(1)は、卓上等に設置されて使用されるものである。この静電噴霧装置(1)は、本体部(40)と、台座用カバー(42)と、支持部(43)とを備えている。
【0034】
上記本体部(40)は、ハウジング(41)と、該ハウジング(41)に着脱自在に装着される噴霧カートリッジ(10)と、加圧手段(8)とを備えている。
【0035】
上記ハウジング(41)は、ハウジング本体(41a)と、ハウジング本体(41a)の両端をそれぞれ覆う一対のカバー部材(41b,41c)とを備えている。
【0036】
上記ハウジング本体(41a)は、円筒状に形成されている。ハウジング本体(41a)の下部には、該ハウジング本体(41a)を支持する支持部(43)が設けられている。一方、ハウジング本体(41a)の上部には、後述する噴霧カートリッジ(10)のノズル本体(21)を保護するためのシュラウド部(31)が形成されている。このシュラウド部(31)は、ハウジング本体(41a)の周方向の一部が外部へ膨出してなっている。シュラウド部(31)の中央には、ノズル本体(21)の周囲を覆うように凹部(32)が形成されている。
【0037】
また、上記ハウジング本体(41a)の外周面において、シュラウド部(31)の下側にはLEDライト(46)が取り付けられている(図1では2個)。このLEDライト(46)は、噴霧カートリッジ(10)のノズル本体(21)の先端(21a)から噴霧される液体に向かって照射され、使用者が噴霧状態を確認するためのものである。
【0038】
上記カバー部材(41b,41c)は、対となる第1カバー(41b)と第2カバー(41c)とで構成されている。
【0039】
図1に示すように、上記第1カバー(41b)は、ハウジング本体(41a)の一端面とほぼ同外形の円形に形成され、ハウジング本体(41a)の一端面を覆うように取り付けられている。第1カバー(41b)は、使用者が、ハウジング本体(41a)の周方向に回すことができるように取り付けられている。また、第1カバー(41b)の表面には、電荷を帯びた液体に対する帯状の対向電極(44)が設けられる一方、第1カバー(41b)の裏面には、図示はしないが、第1カバー(41b)より小径の円筒状の巻上部が形成されている。この巻上部には、巻上部の周方向に沿って螺旋状に切り込まれた切り欠きが形成され、後述する加圧ステージ(52)の移動を規制している。
【0040】
一方、図2に示すように、上記第2カバー(41c)は、ハウジング本体(41a)の他端面とほぼ同外形の円形に形成され、ハウジング本体(41a)の他端面を覆うように取り付けられている。第2カバー(41c)の表面には、電荷を帯びた液体に対する帯状の対向電極(44)が設けられる一方、電源部の出力調整ボリューム(図示せず)と連動するボリュームつまみ(45)が設けられている。ボリュームつまみ(45)を回転させることで、電源部からの出力電圧が適宜調整される。なお、電源部は、0kV以上で、12kV以下の値に電圧を変換するように構成されていればよい。
【0041】
上記台座用カバー(42)は、ハウジング本体(41a)の円筒状の側面に沿った碗状に形成されている。台座用カバー(42)は、使用時には支持部(43)に取り付けられて台座として用いられる(図1や図2を参照)。また、台座用カバー(42)は、非使用時(保管時)には本体部(40)のシュラウド部(31)を覆うように取り付けられてノズル本体(21)を保護する。なお、この静電噴霧装置(1)は、支持部(43)から台座用カバー(42)を取り外して使用することで、静電噴霧装置(1)の高さを2段階に調節することができる。
【0042】
上記加圧手段(8)は、噴霧カートリッジ(10)の容器(11)を圧迫して該容器(11)内の液体をノズル本体(21)の先端(21a)に搬送するためのものである。加圧手段(8)は、図5に示すように、上記第1カバー(41b)と、2つの定荷重ゼンマイ(51)と、加圧ステージ(52)と、仕切板(53)とを備えている。
【0043】
上記加圧ステージ(52)は、有底円筒形状の本体部(52a)と、2つのゼンマイ支持部(52b)とを有している。有底円筒形状の本体部(52a)は、その底部が第2カバー(41c)側を向くように配設されている。一方、2つのゼンマイ支持部(52b)は、本体部(52a)の軸心を中心に180°反転させた位置に形成され、それぞれ本体部(52a)の外周面から径方向外側に向かって平行に突出する一対の板状部材を有している。該一対の板状部材には、上記2つの定荷重ゼンマイ(51)の軸(51a)の両端部と回転自在に係合する切り欠きがそれぞれ形成されている。
【0044】
また、加圧ステージ(52)の本体部(52a)の第1カバー(41b)側端部の内側面には、軸心方向に向かって突出する凸部(52c)が形成されている。この凸部(52c)を第1カバー(41b)の巻上部に形成された切り欠きに係合させて、第1カバー(41b)をハウジング本体(41a)の周方向に回転させると、該凸部(52c)が、螺旋状の切り欠きに沿って第1カバー(41b)側に案内される。これに伴って、加圧ステージ(52)が第1カバー(41b)側に移動し、第1カバー(41b)に保持される。この状態において、噴霧カートリッジ(10)の容器(11)は、加圧ステージ(52)と離間している。一方、第1カバー(41b)を逆回転させると、凸部(52c)が巻上部の螺旋状の切り欠きに沿って第2カバー(41c)側に案内され、凸部(52c)はやがて巻上部から外れる。このときに、加圧ステージ(52)は、第1カバー(41b)に対して移動可能な状態となる。つまり、第1カバー(41b)を回転させることで、加圧ステージ(52)の保持と解放とを切り換えるよう構成されている。
【0045】
上記定荷重ゼンマイ(51)は、軸(51a)と、該軸(51a)周りに一定の曲率で巻き付けられた帯状の金属板(51b)とを有している。また、定荷重ゼンマイ(51)は、金属板(51b)を引き出すときに復元力(荷重)が生じ、その金属板(51b)の引き出し量(ストローク)が所定の長さを越えると、復元力(荷重)がストロークに拘わらず一定となるように構成されている。また、軸(51a)は、加圧ステージ(52)のゼンマイ支持部(52b)の切り欠きに回転自在に係合されている。一方、金属板(51b)は、一部が第2カバー(41c)側に引き出された状態で、その終端(51c)がハウジング本体(41a)に固定されている。
【0046】
上記仕切板(53)は、平板状の板部材で形成され、ハウジング(41)内において、加圧ステージ(52)に対して、噴霧カートリッジ(10)の容器(11)を挟んで対向するよう設置されている。仕切板(53)は、ハウジング本体(41a)に取り付けられている。
【0047】
なお、加圧手段(8)の第1カバー(41b)を除く各要素は、ハウジング本体(41a)内の第1カバー(41b)から第2カバー(41c)に向かって順に、加圧ステージ(52)(定荷重ゼンマイ(51)が係合)、噴霧カートリッジ(10)の容器(11)、仕切板(53)の順に配設されている。
【0048】
以上の構成により、上記加圧手段(8)では、第1カバー(41b)を所定方向に回動させて該第1カバー(41b)に保持されていた加圧ステージ(52)が解放されると、該加圧ステージ(52)が定荷重ゼンマイ(51)の復元力によって第2カバー(41c)側に押圧されて移動する。これにより、噴霧カートリッジ(10)の容器(11)は、加圧ステージ(52)の本体部(52a)によって第2カバー(41c)側に押圧され、仕切板(53)との間において圧迫されて加圧される。一方、第1カバー(41b)を上記所定方向と逆方向に回動させると、加圧ステージ(52)が第1カバー(41b)と再び係合して該第1カバー(41b)側に移動すると共に該第1カバー(41b)に保持される。これにより、加圧ステージ(52)が容器(11)から離間して加圧が解除される。
【0049】
また、上記ハウジング(41)内には電圧用スイッチ(47)が設けられ、加圧ステージ(52)には電圧用スイッチ(47)をオンオフするためのプッシャー(49)が設けられている。このプッシャー(49)は、第1カバー(41b)がハウジング本体(41a)に対して相対的に回動して加圧ステージ(52)が移動することで、電圧用スイッチ(47)に接触するようになっている。加圧手段(8)が加圧動作にあるときは、プッシャー(49)が電圧用スイッチ(47)に接触し続けて該電圧用スイッチ(47)がオン状態に維持される。これにより、容器(11)内の液体に高電圧が印加される。加圧手段(8)の加圧動作が解除されたときは、プッシャー(49)が電圧用スイッチ(47)から離間して該電圧用スイッチ(47)がオフ状態となる。これによって、容器(11)内の液体への電圧印加が解除される。
【0050】
このように、本実施形態では、第1カバー(41b)を回動させることで、容器(11)への加圧動作と電圧用スイッチ(47)のオンオフが同時に行われる。
【0051】
上記噴霧カートリッジ(10)は、図4や図6に示すように、容器(11)と、ノズル部(20)と、ノズルベース(33)とを備えている。そして、これら容器(11)、ノズル部(20)及びノズルベース(33)は一体に組み付けられている。
【0052】
上記容器(11)は、扁平な袋状に形成されている。具体的には、容器(11)は液体を浸透させない比較的柔軟な材料で構成された2枚の矩形状のシートを重ね合わせることによって形成されている。これらの2枚のシートは、互いの4辺が張り合わされ、短辺側の1辺には、外側に突出して開口する口(11a)が形成されている。容器(11)の内部には、保湿成分や抗酸化成分を含んだ化粧用の液体(例えば、ヒアルロン酸を含む液体)が充填されている。この液体は、電気抵抗率が1.0×10Ωcm以上1.0×10Ωcm以下となるように濃度が調整されている。
【0053】
上記ノズル部(20)は、針状に形成されたノズル本体(21)と、該ノズル本体(21)を支持するノズル支持部(22)とを備えている。
【0054】
上記ノズル本体(21)は、内部に液体通路が形成され、例えば外径が0.50mm程度に形成されている。また、ノズル本体(21)は、金属材料で形成されている。そして、ノズル本体(21)は、ノズル支持部(22)を貫通するように設けられ、容器(11)の内外を連通している。
【0055】
一方、ノズル支持部(22)は、導電部材(12)と、弾性部材(13)と、押さえ部材(14)とを備え、容器(11)の口(11a)に固定されている。
【0056】
上記導電部材(12)は、金属等の導電性材料で形成されており、容器(11)内の液体に電荷を付与する(高電圧を印加する)ための電圧印加手段を構成する。導電部材(12)は、容器(11)の口(11a)に挿入され、容器(11)内の液体に接触する挿入部(12a)と、該挿入部(12a)の外側端に一体形成され、容器(11)の口(11a)よりも大径に形成されたフランジ(12b)とで構成されている。この導電部材(12)は、フランジ(12b)が電源部(図示せず)と電気的に接続され、挿入部(12a)を介して容器(11)内の液体に高電圧を印加するように構成されている。フランジ(12b)の挿入部(12a)と反対側の端部には、弾性部材(13)を設置するための座面(12c)が形成されている。また、導電部材(12)には、挿入部(12a)側の端面からフランジ(12b)側の端面(座面(12c))に亘って貫通孔(12d)が形成されている。貫通孔(12d)は、挿入部(12a)側の小径部(12e)とフランジ(12b)側の大径部(12f)とを有している。
【0057】
上記弾性部材(13)は、本実施形態では、弾性変形する板状のゴムによって構成されている。上記ノズル本体(21)は、該弾性部材(13)の中央部を貫通して該弾性部材(13)に固定されている。そして、弾性部材(13)は、上記導電部材(12)の座面(12c)に当接すると共に、該弾性部材(13)に固定されたノズル本体(21)が導電部材(12)の貫通孔(12d)に挿通されるように設けられている。
【0058】
上記押さえ部材(14)は、円筒部(14a)と、該円筒部(14a)の一端側を閉塞する閉塞部(14b)と、円筒部(14a)の他端部から径方向内側に突出した円環状の爪部(14c)とを備えている。円板状の閉塞部(14b)の中央部には、挿通孔(14d)が形成されている。そして、押さえ部材(14)は、導電部材(12)のフランジ(12b)と弾性部材(13)とを覆い、爪部(14c)がフランジ(12b)の端面に引っかかるように設けられている。また、閉塞部(14b)の挿通孔(14d)には、弾性部材(13)に固定されたノズル本体(21)が挿通されている。なお、挿通孔(14d)は、ノズル本体(21)は挿通可能である一方、使用者の指等が挿入できない大きさに形成されている。
【0059】
以上のようにして、ノズル本体(21)を板状のゴムからなる弾性部材(13)に固定し、ノズル本体(21)を導電部材(12)及び押さえ部材(14)の各々の貫通孔(12d,14d)に挿通しつつ、弾性部材(13)を導電部材(12)と押さえ部材(14)とによって挟み込む。このとき、弾性部材(13)の外周部は導電部材(12)のフランジ(12b)の座面(12c)と当接するが、ノズル本体(21)の周辺を含む内周部は、導電部材(12)に形成された貫通孔(12d)の大径部(12f)と対向する。つまり、弾性部材(13)は、その内周部が貫通孔(12d)の大径部(12f)側に膨出可能なように、導電部材(12)と押さえ部材(14)とによって挟持されている。
【0060】
このような構成により、ノズル本体(21)に軸方向の力(容器(11)側向き)が加えられると、ノズル本体(21)が固定された弾性部材(13)の内周部が容器(11)側に膨出するように撓み、これに伴ってノズル本体(21)が容器から突出した突出位置(図7(A)参照)から軸方向に関して容器(11)側に後退して後退位置に至る(図7(B)参照)。一方、ノズル本体(21)に加えられていた力が取り除かれると、弾性部材(13)が復元し、これに伴ってノズル本体(21)が軸方向に関して上記後退位置から前進して突出位置に戻る(図7(A)参照)。
【0061】
このように、ノズル本体(21)は、軸方向に弾性変形自在に構成された弾性部材(13)を有するノズル支持部(22)を介して容器(11)に取り付けられている。そのため、ノズル本体(21)は、ノズル支持部(22)によって、所定の突出位置と軸方向に関して該突出位置より容器(11)側に後退した後退位置とに移動自在に支持されることとなる。
【0062】
なお、ノズル支持部(22)は、突出位置におけるノズル本体(21)の先端(21a)が外面よりも外側に位置する一方、後退位置におけるノズル本体(21)の先端(21a)が外面よりも内側に位置するように構成されている。つまり、ノズル本体(21)は、その先端(21a)が、突出位置においてはノズル支持部(22)の押さえ部材(14)の外面から突き出る一方、後退位置においては押さえ部材(14)の外面よりも内側にまで後退可能なように、ノズル支持部(22)の弾性部材(13)に固定されている。このように、ノズル本体(21)がノズル支持部(22)の外面よりも外側に突き出ることにより、使用時にノズル本体(21)の先端(21a)に形成される電界の状態を安定させることができる。一方、使用者が誤ってノズル本体(21)の先端(21a)に触れてしまった場合には、ノズル本体(21)がノズル支持部(22)の外面と同位置又は外面よりも内側の位置まで後退する一方、使用者の指はノズル支持部(22)の外面に当接することにより、指にノズル本体(21)が刺さってしまうことを防止することができる。
【0063】
また、上記ノズル部(20)には、非使用時にノズル本体(21)内の液体の乾燥を防止するためにノズルキャップ(23)(図1参照)が着脱自在に取り付けられるようになっている。そして、図4に示すように、噴霧カートリッジ(10)は、ノズル本体(21)の先端(21a)が斜め上方に向いてシュラウド部(31)の凹部(32)に露出するように、ハウジング(41)内に着脱自在に配設される。
【0064】
上記ノズルベース(33)は、図6に示すように、容器(11)やノズル部(20)に固定されている。ノズルベース(33)の内側(容器(11)側)には、ノズル部(20)が収容される取付凹部(36)が形成されている。ノズルベース(33)の外側には、ノズル本体(21)の先端(21a)が収容されるノズル凹部(34)が設けられている。ノズル本体(21)の先端(21a)はノズル凹部(34)から突出しないように設けられている。このノズル凹部(34)は、取付凹部(36)と連通している。
【0065】
また、上記ノズルベース(33)は、図1や図2に示すように、ハウジング本体(41a)のシュラウド部(31)の一部を構成している。つまり、ノズルベース(33)のノズル凹部(34)がシュラウド部(31)の凹部(32)の一部となる。ノズルベース(33)は、シュラウド部(31)の周方向に延びる形となっており、シュラウド部(31)に嵌め込まれている。ノズルベース(33)の両端部には、取出し用つまみ(3a)が形成されている。
【0066】
さらに、上記ハウジング(41)内には使用時に噴霧カートリッジ(10)を保持するロック部材(図示省略)が設けられている。
【0067】
また、上記噴霧カートリッジ(10)は、加圧手段(8)によって容器(11)が圧迫されると、容器(11)内の液体がノズル本体(21)へ供給される。一方、容器(11)内の液体に導電部材(12)を介して高電圧が印加されると、ノズル本体(21)の先端(21a)に電界が形成される。これにより、ノズル本体(21)の先端(21a)から液体が連続して霧状に噴射される。噴霧カートリッジ(10)は、容器(11)内の液体がなくなるか、少なくなると交換される。噴霧カートリッジ(10)を交換する際には、ノズルベース(33)の取出し用つまみ(3a)を引っ張ることで、ノズルベース(33)を含む噴霧カートリッジ(10)が一体でハウジング(41)から取り出される。そして、ノズルベース(33)を含む新たな噴霧カートリッジ(10)が装着される。つまり、本実施形態では、ノズルベース(33)がノズル部(20)等と一体で交換される。したがって、噴霧カートリッジ(10)を交換する際、少なくともシュラウド部(31)の一部であるノズルベース(33)とノズル本体(21)の先端(21a)との位置関係が変動しないため、噴霧環境を一定に保持することができる。
【0068】
−運転動作−
次に、本実施形態の静電噴霧装置(1)の動作について説明する。この静電噴霧装置(1)では、いわゆるコーンジェットモードのEHD噴霧が行われる。
【0069】
先ず、使用者が手動で第1カバー(41b)をハウジング本体(41a)の周方向に回すと、加圧ステージ(52)に対する第1カバー(41b)の規制が解除される。規制が解除されると、加圧ステージ(52)には定荷重ゼンマイ(51)の復元力による第2カバー(41c)側向きの力が作用し、加圧ステージ(52)が仕切板(53)に向かって移動する。移動した加圧ステージ(52)と仕切板(53)とで、容器(11)を圧迫する。圧迫された容器(11)内の液体は、ノズル本体(21)の内部に流入する。ノズル本体(21)の内部に流入した液体は、ノズル本体(21)の先端(21a)に移動する。
【0070】
一方、第1カバー(41b)を周方向に回すと、電圧用スイッチ(47)がオンされ、電源部より導電部材(12)を介して容器(11)内の液体に高電圧が印加される。高電圧が印加されて電荷を帯びた液体は分極し、ノズル本体(21)の先端(21a)の気液界面の近傍に+(プラス)の電荷を帯びた液体が集まる。そして、ノズル本体(21)の先端(21a)では、対向電極(44)との電位差によって気液界面が引き延ばされて円錐状(コーン状)となり、この円錐状となった気液界面の頂部から一部の水液体が引きちぎられて液滴化する。なお、本実施形態の印加電圧の大きさ及び液体の電気抵抗率であれば、ノズル本体(21)の先端(21a)から飛散する液滴の大きさは、概ね50μmから200μmの範囲の大きさになる。ノズル本体(21)から飛散した液体は、ノズル本体(21)の先端(21a)から40〜50cm程度離れた距離まで到達する。使用者が、50cm程度前方に、顔面にノズル本体(21)の先端(21a)を向けて静電噴霧装置(1)を設置すると、飛散した液滴が使用者の顔面に付着する。
【0071】
−ノズル本体の動作−
本実施形態の静電噴霧装置(1)では、使用者が誤ってノズル本体(21)に触れてしまった場合に指を負傷しないように、ノズル本体(21)が、ノズル支持部(22)によって、所定の突出位置(図7(A)参照)と軸方向に関して該突出位置より容器(11)側に後退した後退位置(図7(B)参照)とに移動自在に支持されている。
【0072】
具体的には、使用者の指がノズル本体(21)に触れて該ノズル本体(21)に軸方向の力(容器(11)側向き)が加えられた場合には、ノズル本体(21)が固定された弾性部材(13)の内周部が容器(11)側に膨出するように撓む。これに伴い、弾性部材(13)の内周部に固定されたノズル本体(21)が、軸方向に関して容器(11)側に後退して後退位置に至る(図7(B)参照)。一方、使用者の指がノズル本体(21)から離れる等して該ノズル本体(21)に加えられていた力が取り除かれると、弾性部材(13)が復元する。これに伴い、ノズル本体(21)が軸方向に関して上記後退位置から前進して突出位置に戻る(図7(A)参照)。
【0073】
−実施形態の効果−
以上により、本静電噴霧装置(1)の噴霧カートリッジ(10)によれば、針状のノズル本体(21)が用いられているため、該ノズル本体(21)から噴射される液体の粒径を安定させて噴霧性状を向上させることができる。また、針状のノズル本体(21)を、容器(11)の内外を連通すると共に、所定の突出位置と軸方向に関して該突出位置よりも容器(11)側に後退した後退位置とに移動自在となるように構成している。そのため、使用者が誤って針状のノズル本体(21)の先端(21a)に触れてしまっても、ノズル本体(21)を突出位置から軸方向に後退させて容器(11)側に引っ込ませることができる。従って、針状のノズル本体(21)を用いることによって噴霧性状の向上を図ることができると共に、該ノズル本体(21)を突出位置と後退位置との間で移動自在に構成することで安全性の向上を図ることができる。
【0074】
また、本静電噴霧装置(1)の噴霧カートリッジ(10)によれば、ノズル本体(21)を該ノズル本体(21)の軸方向に弾性変形自在な弾性部材(13)に固定することにより、例えば、使用者が誤ってノズル本体(21)の先端(21a)に触れてしまった場合には、ノズル本体(21)を後退させて使用者の負傷を避けることができる一方、使用者の手がノズル本体(21)から離れると該ノズル本体(21)を容易に突出位置に戻すことができる噴霧カートリッジ(10)を容易に構成することができる。従って、噴霧性状及び安全性に優れた噴霧カートリッジ(10)を容易に構成することができる。
【0075】
また、本静電噴霧装置(1)の噴霧カートリッジ(10)によれば、ノズル支持部(22)を、ノズル本体(21)の先端(21a)がノズル本体(21)の突出位置においてノズル支持部(22)の外面(本実施形態では、押さえ部材(14)の閉塞部(14b)の外面)よりも外側に位置し、ノズル本体(21)の後退位置においてノズル支持部(22)の外面よりも内側に位置するように構成している。そのため、使用者が誤ってノズル本体(21)の先端(21a)に触れてしまっても、ノズル本体(21)が後退位置まで後退すると、その先端(21a)はノズル支持部(22)の内部に収容されるため、ノズル本体(21)の先端(21a)が使用者の指等に刺さることを確実に防止することができる。
【0076】
《発明の実施形態2》
実施形態2に係る静電噴霧装置(1)は、実施形態1のノズル支持部(22)の構成を変更したものである。なお、その他の構成については実施形態1と同様であるため説明を省略し、以下では、ノズル支持部(22)の構成及び動作についてのみ説明する。
【0077】
図8(A)に示すように、実施形態2に係るノズル支持部(22)は、導電部材(25)と、弾性部材(26)と、押さえ部材(27)とを備えている。
【0078】
上記導電部材(25)は、実施形態1の導電部材(12)と同様に、金属等の導電性材料で形成されており、容器(11)内の液体に電荷を付与する(高電圧を印加する)ための電圧印加手段を構成する。導電部材(25)は、容器(11)の口(11a)に挿入され、容器(11)内の液体に接触する挿入部(25a)と、該挿入部(25a)の外側端に一体形成され、容器(11)の口(11a)よりも大径に形成されたフランジ(25b)とで構成されている。この導電部材(25)は、フランジ(25b)が電源部(図示せず)と電気的に接続され、挿入部(25a)を介して容器(11)内の液体に高電圧を印加するように構成されている。また、導電部材(25)には、挿入部(25a)側の端面からフランジ(25b)側の端面に亘って貫通孔(25d)が形成されている。貫通孔(25d)は、挿入部(25a)側の小径部(25e)とフランジ(25b)側の大径部(25f)とを有している。
【0079】
上記弾性部材(26)は、実施形態2では、固定部材(26a)と、該固定部材(26a)に一端が連接されたコイルバネ(26b)とによって構成されている。
【0080】
上記固定部材(26a)は、上記導電部材(25)の貫通孔(25d)の大径部(25f)の内径よりも僅かに小さい外形を有する円柱形状に形成され、該大径部(25f)内に設けられている。固定部材(26a)には、貫通孔(25d)の貫通方向にノズル本体(21)が貫通して固定されている。そして、固定部材(26a)は、貫通孔(25d)の大径部(25f)に、ノズル本体(21)の軸方向に移動自在となるように設けられている。また、固定部材(26a)の外周面には、図示しないOリングが嵌め込まれ、固定部材(26a)の外周面と貫通孔(25d)を形成する導電部材(25)の内壁面との間をシールしている。
【0081】
上記コイルバネ(26b)は、固定部材(26a)の容器(11)側の端面に連接され、上記ノズル本体(21)を取り巻くように設けられている。また、コイルバネ(26b)は、上記固定部材(26a)と共に、上記導電部材(25)の貫通孔(25d)の大径部(25f)内に設けられ、上記ノズル本体(21)の軸方向に弾性変形するように構成されている。そして、コイルバネ(26b)は、上記固定部材(26a)を容器(11)と反対側に向きに付勢している。
【0082】
このような固定部材(26a)とコイルバネ(26b)により、弾性部材(26)は全体としてノズル本体(21)の軸方向に弾性変形自在に構成されている。また、弾性部材(26)は、ノズル本体(21)の容器(11)側の端部が導電部材(25)の貫通孔(25d)の小径部(25e)に挿通されるように大径部(25f)に設けられている。
【0083】
上記押さえ部材(27)は、実施形態1の押さえ部材(14)と同様に、円筒部(27a)と、該円筒部(27a)の一端側を閉塞する閉塞部(27b)と、円筒部(27a)の他端部から径方向内側に突出した円環状の爪部(27c)とを備えている。円板状の閉塞部(27b)の中央部には、挿通孔(27d)が形成されている。そして、押さえ部材(27)は、導電部材(25)のフランジ(25b)と弾性部材(26)とを覆い、爪部(27c)がフランジ(25b)の端面に引っかかるように設けられている。また、閉塞部(27b)の挿通孔(27d)には、弾性部材(26)に固定されたノズル本体(21)が挿通されている。なお、挿通孔(27d)は、ノズル本体(21)は挿通可能である一方、使用者の指等が挿入できない大きさに形成されている。
【0084】
以上のようにして、ノズル本体(21)を弾性部材(26)の固定部材(26a)に固定し、弾性部材(26)を、ノズル本体(21)が貫通孔(26d)に挿通されるように該貫通孔(26d)の大径部(26f)に設置する。そして、ノズル本体(21)が挿通孔(27d)に挿通されるように、弾性部材(26)を押さえ部材(27)によって押圧する。
【0085】
このような構成により、ノズル本体(21)に軸方向の力(容器(11)側向き)が加えられると、ノズル本体(21)が固定された弾性部材(26)の固定部材(26a)を介してコイルバネ(26b)に力が加わり、コイルバネ(26b)が収縮する。これに伴ってノズル本体(21)が軸方向に関して容器(11)側に後退して後退位置に至る(図8(B)参照)。一方、ノズル本体(21)に加えられていた力が取り除かれると、弾性部材(13)が復元し、これに伴ってノズル本体(21)が軸方向に関して上記後退位置から前進して突出位置に戻る(図8(A)参照)。
【0086】
このように、ノズル本体(21)は、軸方向に弾性変形自在に構成された弾性部材(26)を有するノズル支持部(22)を介して容器(11)に取り付けられている。そのため、ノズル本体(21)は、ノズル支持部(22)によって、所定の突出位置と軸方向に関して該突出位置より容器(11)側に後退した後退位置とに移動自在に支持されることとなる。
【0087】
なお、ノズル支持部(22)は、突出位置におけるノズル本体(21)の先端(21a)が外面よりも外側に位置する一方、後退位置におけるノズル本体(21)の先端(21a)が外面よりも内側に位置するように構成されている。つまり、ノズル本体(21)は、その先端(21a)が、突出位置においてはノズル支持部(22)の押さえ部材(27)の外面から突き出る一方、後退位置においては押さえ部材(27)の外面よりも内側にまで後退可能なように、ノズル支持部(22)の弾性部材(26)に固定されている。このように、ノズル本体(21)がノズル支持部(22)の外面よりも外側に突き出ることにより、使用時にノズル本体(21)の先端(21a)に形成される電界の状態を安定させることができる。一方、使用者が誤ってノズル本体(21)の先端(21a)に触れてしまった場合には、ノズル本体(21)がノズル支持部(22)の外面と同位置又は外面よりも内側の位置まで後退する一方、使用者の指はノズル支持部(22)の外面に当接することにより、指にノズル本体(21)が刺さってしまうことを防止することができる。
【0088】
以上により、実施形態2に係るノズル支持部(22)を用いた場合であっても、実施形態1と同様の効果を奏することができる。
【0089】
《発明の実施形態3》
実施形態3の静電噴霧装置(1)は、実施形態1の噴霧カートリッジ(10)の構成を変更したものである。なお、その他の構成については実施形態1と同様であるため説明を省略し、以下では、噴霧カートリッジ(10)の構成及び動作についてのみ説明する。
【0090】
図9(A)に示すように、実施形態3に係る噴霧カートリッジ(10)は、容器(11)と、ノズル部(20)とを備えている。
【0091】
上記容器(11)は、実施形態1と同様に、扁平な袋状に形成されている。なお、実施形態2では、容器(11)は、円筒形状に形成された口(11a)と、2枚のシートが重ね合わされて形成された容器本体(11b)と、上記口(11a)と容器本体(11b)との間に設けられて両者を連結する蛇腹部(11c)とを備えている。容器(11)の口(11a)には、ノズル部(20)が取り付けられている。
【0092】
上記蛇腹部(11c)は、環状に形成されて外周側に突出する山折り部と、該山折り部に連続するように環状に形成されて内周側に突出する谷折り部とが軸方向に交互に形成されている。このような構成により、蛇腹部(11c)は、軸方向に伸縮自在に構成されている。
【0093】
上記ノズル部(20)は、実施形態1と同様に針状に形成されたノズル本体(21)と、該ノズル本体(21)が挿通されると共に固定された導電部材(28)とを備えている。該導電部材(28)は、金属等の導電性材料で形成されており、容器(11)内の液体に電荷を付与する(高電圧を印加する)ための電圧印加手段を構成する。導電部材(28)は、容器(11)の口(11a)に挿入され、容器(11)内の液体に接触する挿入部(28a)と、該挿入部(28a)の外側端に一体形成され、容器(11)の口(11a)よりも大径に形成されたフランジ(28b)とで構成されている。この導電部材(28)は、フランジ(28b)が電源部(図示せず)と電気的に接続され、挿入部(28a)を介して容器(11)内の液体に高電圧を印加するように構成されている。また、導電部材(28)には、挿入部(28a)側の端面からフランジ(28b)側の端面に亘って貫通孔が形成され、該貫通孔に上記ノズル本体(21)が嵌入されて移動不能に固定されている。
【0094】
このような構成により、ノズル本体(21)は、導電部材(28)、容器(11)の口(11a)及び蛇腹部(11c)によって、ノズル本体(21)が容器(11)から突出した突出位置と該突出位置より容器(11)側に後退した後退位置とに移動自在となるように支持されている。つまり、実施形態3では、導電部材(28)、容器(11)の口(11a)及び蛇腹部(11c)が本発明に係るノズルを突出位置と後退位置とに移動自在に支持する支持部(29)を構成している。
【0095】
以上より、実施形態3では、ノズル本体(21)は、導電部材(28)を介して容器(11)に移動不能に固定されている。しかしながら、容器(11)にノズル本体(21)の軸方向に伸縮自在な蛇腹部(11c)を形成したことにより、ノズル本体(21)が該蛇腹部(11c)の伸縮動作に伴って所定の突出位置と軸方向に関して突出位置より容器本体(11b)側に後退した後退位置とに軸方向に移動する。
【0096】
具体的には、ノズル本体(21)に軸方向の力(容器本体(11b)側向き)が加えられると、ノズル本体(21)及び導電部材(28)を介して口(11a)に容器本体(11b)側向きの力が伝達される。これにより、蛇腹部(11c)の隣り合う山折り部どうしの距離及び隣り合う谷折り部どうしの距離がそれぞれ縮まり、該蛇腹部(11c)が収縮する。これに伴ってノズル本体(21)が軸方向に関して容器(11)側に後退して後退位置に至る(図9(B)参照)。
【0097】
一方、ノズル本体(21)に加えられていた力が取り除かれると、蛇腹部(11c)がもとの形状に復元する。つまり、蛇腹部(11c)の隣り合う山折り部どうしの距離及び隣り合う谷折り部どうしの距離がそれぞれ元の状態となるように拡がる。これに伴ってノズル本体(21)が軸方向に関して上記後退位置から前進して突出位置に戻る(図9(A)参照)。
【0098】
以上により、ノズル本体(21)を容器(11)の蛇腹部(11c)の伸縮に伴って突出位置と後退位置とに軸方向に移動可能に容器(11)に取り付けることで、実施形態1と同様に、使用者が誤ってノズル本体(21)の先端(21a)に触れてしまった場合にノズル本体(21)を後退させて負傷を避けることができる一方、使用者の手がノズル本体(21)から離れると突出位置に容易に戻るような噴霧カートリッジ(10)を容易に構成することができる。
【0099】
《発明の実施形態4》
実施形態4の静電噴霧装置(1)は、噴霧カートリッジ(10)の構造及び該噴霧カートリッジ(10)の本体部(40)への取付構造を変更したものである。以下、噴霧カートリッジ(10)の構造及び該噴霧カートリッジ(10)の取付構造について図10を用いて説明する。
【0100】
実施形態4に係る噴霧カートリッジ(10)は、容器(11)と、ノズル部(20)とを備えている。
【0101】
上記容器(11)は、実施形態1と同様に、扁平な袋状に形成されている。なお、容器(11)は、実施形態1と同様に形成されている。そして、容器(11)の口(11a)には、ノズル部(20)が取り付けられている。
【0102】
上記ノズル部(20)は、実施形態1と同様に針状に形成されたノズル本体(21)と、該ノズル本体(21)が挿通されると共に固定された導電部材(30)とを備えている。該導電部材(30)は、金属等の導電性材料で形成されており、容器(11)内の液体に電荷を付与する(高電圧を印加する)ための電圧印加手段を構成する。導電部材(30)は、容器(11)の口(11a)に挿入され、容器(11)内の液体に接触する挿入部(30a)と、該挿入部(30a)の外側端に一体形成され、容器(11)の口(11a)よりも大径に形成されたフランジ(30b)とで構成されている。この導電部材(30)は、フランジ(30b)が電源部(図示せず)と電気的に接続され、挿入部(30a)を介して容器(11)内の液体に高電圧を印加するように構成されている。また、導電部材(30)には、挿入部(30a)側の端面からフランジ(30b)側の端面に亘って貫通孔が形成され、該貫通孔に上記ノズル本体(21)が嵌入されて移動不能に固定されている。
【0103】
また、上記噴霧カートリッジ(10)は、実施形態1のようなロック部材によって使用時に移動不能に固定されるのではなく、実施形態4では、支持部材(60)によってノズル本体(21)の軸方向に移動自在に支持されている。
【0104】
具体的には、図10(A)、(B)に示すように、支持部材(60)は、容器(11)をノズル本体(21)の軸方向にスライド自在に支持するスライド機構(61)と、ノズル本体(21)が所定の基準位置(図10(A)の位置)に位置するように上記スライド機構(61)を付勢するバネ部材(62)とを備えている。
【0105】
上記スライド機構(61)は、容器(11)を挟持して支持する支持部(63)を有し、該支持部(63)がノズル本体(21)の軸方向にスライド自在となるように構成されている。また、該支持部(63)とハウジング(41)のハウジング本体(41a)との間に上記バネ部材(62)が介装されている。
【0106】
なお、実施形態4においても、実施形態1と同様に、容器(11)は、加圧ステージ(52)と仕切板(53)との間において両者に挟み込まれることによって圧迫されるように構成されている(図5参照)。そのため、実施形態4では、上記支持部(63)は、加圧ステージ(52)と仕切板(53)とによって構成されている。そして、支持部(63)としての加圧ステージ(52)及び仕切板(53)が共にノズル本体(21)の軸方向にスライド自在となるように構成されている。
【0107】
このような構成により、例えば、使用者が誤ってノズル本体(21)の先端(21a)に触れて該ノズル本体(21)に軸方向の力(容器(11)側向き)が加えられると、導電部材(30)及び容器(11)を介して支持部(63)(加圧ステージ(52)及び仕切板(53))に力が伝達される。これにより、支持部(63)と共に容器(11)がノズル本体(21)の軸方向にスライドして後退する。これにより、ノズル本体(21)も所定の基準位置から軸方向に後退して後退位置に至る(図10(B)参照)。
【0108】
一方、使用者の手がノズル本体(21)から離れて該ノズル本体(21)に加えられていた力が取り除かれると、バネ部材(62)の復元力によって支持部(63)と共に容器(11)が基準位置まで復元される。これに伴ってノズル本体(21)が軸方向に関して上記後退位置から前進して基準位置に戻る(図10(A)参照)。
【0109】
以上により、実施形態4では、容器(11)が支持部材(60)によってノズル本体(21)の軸方向において基準位置と後退位置との間でスライド自在に支持されることとした。これにより、使用者が誤ってノズル本体(21)の先端(21a)に触れてしまった場合であっても、容器(11)がノズル本体(21)の軸方向に後退することによって、ノズル本体(21)も軸方向に後退するため、使用者の負傷を防止することができる。また、支持部材(60)を、上記スライド機構(61)と、バネ部材(62)とによって構成することで、ノズル本体(21)に加えられた力が取り除かれると、バネ部材(62)の復元力によってスライド機構(61)と共に容器(11)を元の位置に戻してノズル本体(21)を基準位置に容易に復元させることができる。また、容易な構成によって、使用者が誤ってノズル本体(21)の先端(21a)に触れた場合に、使用者の負傷が防止される構造を実現することができる。
【0110】
《発明の実施形態1〜4の変形例1》
ところで、容器(11)内に液体を充填する際、僅かではあるが空気が混入してしまう。そのため、液体がノズル本体(21)の内部に形成された極小径の液体通路に供給される際に、気泡も混入してしまう虞がある。そのような場合には、液体を押し出すために容器(11)内を加圧しても、液体通路の気泡が圧縮されるために液体が搬送されず、排出されなくなる(所謂エアロック状態となる)虞がある。
【0111】
そこで、変形例1に係る静電噴霧装置(1)では、ノズル本体(21)の液体通路に気泡が混入しないように噴霧カートリッジ(10)の構成を変更している。以下、変更部分についてのみ説明する。
【0112】
図11に示すように、本変形例1に係る噴霧カートリッジ(10)では、ノズル本体(21)が、その一端部(21b)(容器(11)側の端部)が容器(11)内に位置するように長く形成されている。具体的には、本変形例1では、ノズル本体(21)の一端部(21b)は、容器(11)を上層部、中層部、下層部に三等分したときの上層部と中層部との境界付近まで延びている。
【0113】
また、本変形例1に係る噴霧カートリッジ(10)では、容器(11)は、内壁表面に充填される液体に対して親和性を有するように親和性処理が施された部材によって構成されている。具体的には、内壁表面に高分子非生成プラズマ処理がなされている。このようにして内壁表面を充填される液体(本実施形態では水)と親和性を有する部材(本実施形態では、親水性処理が施された部材)によって構成することで、容器(11)内の液体が内壁表面と結びつきやすくなる一方、該容器(11)内に混入された気泡が内壁表面に吸着され難くなる。そのため、容器(11)内の気泡は、内壁表面に吸着することなく浮力によって容器(11)の上層部に向かって上昇する。
【0114】
また、容器(11)内には、ノズル本体(21)の一端部(21b)よりも上方に該容器(11)内に混入した気泡が溜まる空気溜まり(66)が形成されている。具体的には、本変形例1では、上記実施形態1〜4において矩形状に形成されると共に上面が設置面に対して傾斜して配置されていた容器(11)の該上面を、設置面に対する傾斜がさらに大きくなるように上方側の角隅部に向かって傾斜させる一方、該角隅部をさらに上方に膨出させることによって空気溜まり(66)が形成されている。なお、空気溜まり(66)の形状は、ノズル本体(21)の一端部(21b)よりも上方に空気が溜まるスペースが確保されればいかなる形状であってもよい。
【0115】
以上により、本変形例1に係る静電噴霧装置(1)では、容器(11)の内壁を、充填される液体に対して親和性を有する部材によって構成し、また、容器(11)内にノズル本体(21)の一端部(21b)を配置すると共に、該ノズル本体(21)の一端部(21b)よりも上方に空気溜まり(66)を形成している。そのため、容器(11)内に気泡が混入してしまった場合であっても、気泡は容器内壁に吸着せず、浮力によって上方へ上昇し、ノズル本体(21)の一端部(21b)よりも上方の空気溜まり(66)に集められる。従って、本変形例1に係る静電噴霧装置(1)によれば、簡単な構成により、容器(11)内の気泡がノズル本体(21)の液体通路に流入することを防止することができる。よって、ノズル本体(21)における所謂エアロック状態を回避することができ、ノズル本体(21)の先端(21a)から液体を確実に噴霧させることができる。
【0116】
なお、上記容器(11)の内壁の親水性処理として、上記高分子非生成プラズマ処理の他、高分子生成プラズマ処理、プラズマジェット処理、グロー放電処理等のプラズマ処理の他、溶剤等を用いて内壁表面を溶解又は侵食させて粗化させてもよく、親水性高分子鎖を結合してグラフト共重合体として形成してもよい。また、内壁表面を改質するのではなく、該内壁表面を酸化チタン等の親水性を有する材料でコーティングしてもよい。さらに、親水性材料を付加した内壁表面を加工して表面粗さを加えることによって、親水性をさらに高めることとしてもよい。
【0117】
《発明の実施形態1〜4の変形例2》
上記実施形態1〜4では、噴霧カートリッジ(10)は、容器(11)と、ノズル部(20)と、ノズルベース(33)とを備え、これらは一体に組み付けられていた。そして、噴霧カートリッジ(10)を交換する際には、ノズルベース(33)の取出し用つまみ(3a)を引っ張ることで、ノズルベース(33)を含む噴霧カートリッジ(10)が一体でハウジング(41)から取り出される一方、ノズルベース(33)を含む新たな噴霧カートリッジ(10)も一体でハウジング(41)に装着されていた。しかしながら、噴霧カートリッジ(10)の構成及び交換手法はこれに限られない。
【0118】
例えば、噴霧カートリッジ(10)は、ノズルベース(33)を備えないものであってもよい。つまり、容器(11)とノズル部(20)のみで構成されていてもよい。そして、このような噴霧カートリッジ(10)を交換する際、図12に示すように、位置決め部材(70)を用いて位置決めすることとしてもよい。
【0119】
具体的には、図12(A)に示すように、ハウジング(41)に設けられた山形に折り曲げられた板状部材からなる位置決め部材(70)に向かってノズル本体(21)を近づけるように噴霧カートリッジ(10)を移動させる。そして、図12(B)に示すように、ノズル本体(21)を位置決め部材(70)に当接させた後、ハウジング(41)に設けられて移動可能に構成された固定部材(71)をノズル本体(21)及び位置決め部材(70)側に移動させる。そして、図12(C)に示すように、固定部材(71)をノズル本体(21)に当接させて該ノズル本体(21)を位置決め部材(70)との間に挟み込むことによって、該ノズル本体(21)を所定の位置に固定する。
【0120】
なお、噴霧カートリッジ(10)をハウジング(41)に設置する際、液体噴霧のために十分な電界を生成するための空間を確保するために正確に位置決めする必要がある。しかしながら、例えば、容器(11)をハウジング(41)内に嵌め込むことによって位置決めすることとすると、容器(11)及び該容器(11)を収容するハウジング(41)側の収容部を精密に製作しなければならず、コストがかかる。
【0121】
しかしながら、上述のように、簡易な構造の位置決め部材(70)を設けることによって、ノズル本体(21)の先端(21a)の正確な位置決めを行うことができる。これにより、上記構成によれば、液体噴霧のために十分な電界を生成するための空間を確保できる位置に噴霧カートリッジ(10)を容易に且つ安価に設置することができる。
【0122】
《その他の実施形態》
上記各実施形態において、容器(11)内に充填される液体に、液体の表面張力を増加させる添加物を含有させることで、容器(11)内の気泡直径を小さくするようにしてもよい。また、噴霧する液体としてヒアルロン酸を含有した水液体やテアニンの水液体を用いてもよい。その他、カテキンやプロアントシアニジン等の抗酸化剤の水液体を用いてもよい。また、微生物の繁殖を抑制する機能や微生物を死滅させる機能を有する物質を含んだ液体や、空気中の臭気分子を中和などによる化学変化で無臭化する物質を含んだ液体を用いてもよい。また、各種の香料や害虫の忌避剤等を含んだ液体を用いてもよい。
【0123】
また、上記各実施形態では、本発明に係る噴霧ユニットは、少なくとも容器(11)とノズル部(20)とが一体的に交換可能な噴霧カートリッジ(10)によって構成されていたが、本発明に係る噴霧ユニットはこれに限られない。例えば、容器(11)のみが交換可能に構成された噴霧カートリッジであってもよい。
【0124】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0125】
以上説明したように、本発明は、液体を噴霧するための噴霧ユニット及び静電噴霧装置に関し、特に、針状のノズルを備えた噴霧ユニット及び静電噴霧装置について有用である。
【符号の説明】
【0126】
1 静電噴霧装置
10 噴霧カートリッジ(噴霧ユニット)
11 容器
11c 蛇腹部
13 弾性部材
14 押さえ部材(カバー)
14d 貫通孔
21 ノズル本体
21a 先端
22 ノズル支持部(支持部)
26 弾性部材
27 押さえ部材(カバー)
27d 貫通孔
29 支持部
41 ハウジング
60 支持部材
61 スライド機構
62 バネ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が充填された容器(11)と、該容器(11)の内外を連通する液体通路が内部に形成された針状のノズル(21)とを備え、上記容器(11)内の液体に所定の電圧を印加すると共に上記容器(11)内を加圧して液体を上記ノズル(21)の先端(21a)から噴霧する静電噴霧装置(1)に設けられる噴霧ユニットであって、
上記ノズル(21)が上記容器(11)から突出した突出位置と該突出位置より上記容器(11)側に後退した後退位置とに移動自在となるように上記ノズル(21)を支持する支持部(22,29)を備えている
ことを特徴とする噴霧ユニット。
【請求項2】
請求項1において、
上記支持部(22)は、上記ノズル(21)が固定されて該ノズル(21)の軸方向に弾性変形自在な弾性部材(13,26)を備えている
ことを特徴とする噴霧ユニット。
【請求項3】
請求項2において、
上記支持部(22)は、上記ノズル(21)が挿通される挿通孔(14d,27d)が形成されて上記弾性部材(13,26)を覆うカバー(14,27)を有し、上記後退位置における上記ノズル(21)の先端(21a)が上記カバー(14,27)の外面よりも内側に位置するように構成されている
ことを特徴とする噴霧ユニット。
【請求項4】
請求項1において、
上記支持部(29)は、上記容器(11)に形成されて上記ノズル(21)の軸方向に伸縮自在な蛇腹部(11c)を備えている
ことを特徴とする噴霧ユニット。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つの噴霧ユニットを備え、上記容器(11)内の液体に所定の電圧を印加すると共に上記容器(11)内を加圧して液体を上記ノズル(21)の先端から噴霧する静電噴霧装置。
【請求項6】
ハウジング(41)と、該ハウジング(41)内に収納され、且つ液体が充填された容器(11)と、該容器(11)に取り付けられ、該容器(11)の内外を連通する液体通路が内部に形成された針状のノズル(21)とを備え、上記容器(11)内の液体に所定の電圧を印加すると共に上記容器(11)内を加圧して液体を上記ノズル(21)の先端(21a)から噴霧する静電噴霧装置であって、
上記ノズル(21)が所定の基準位置と該基準位置よりも軸方向に関して後退した後退位置とに移動自在となるように、上記容器(11)を上記ノズル(21)の軸方向に移動自在に支持する支持部材(60)を備えている
ことを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項7】
請求項6において、
上記支持部材(60)は、上記容器(11)を上記ノズル(21)の軸方向にスライド自在に支持するスライド機構(61)と、該スライド機構(61)と上記ハウジング(41)との間に介装され、上記ノズル(21)が上記基準位置に位置するように上記スライド機構(61)を付勢するバネ部材(62)とを備えている
ことを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項8】
請求項1において、
上記容器(11)の内壁は、該容器(11)内部に充填される液体に対して親和性を有する部材によって構成される一方、
上記容器(11)内には、上記ノズル(21)の一端部(21b)が配置されると共に、該ノズルの一端部(21b)よりも上方に該容器(11)内の気泡が溜まる空気溜まり(66)が形成されている
ことを特徴とする静電噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−269271(P2010−269271A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124414(P2009−124414)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】