説明

噴霧可能な水性ゲル状組成物

【課題】噴霧性が良好で、噴霧後に液だれしない水性ゲル状組成物を提供する。
【解決手段】平均粒子径が2μm以下で、平均重合度(DP)が100以下で、結晶化率が50%以下であるセルロース微粒子またはセルロース複合体微粒子(以下、透明セルロースゲルということもある)と、イオン性化合物と、水とを含有してなり、加圧による噴霧手段を備えた噴霧器から噴霧可能な水性ゲル状組成物であって、エーテル化度が0.4〜2.0であり、B型粘度計による25℃における1重量%水溶液の粘度が1〜1000mPa・sであるカルボキシメチルセルロースナトリウムを、セルロース微粒子またはセルロース複合体微粒子1重量部に対し1重量部以下の割合でさらに含有し、B型粘度計により、ローター回転数60rpm、25℃で測定した粘度が2000〜10000mPa・sであるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧による噴霧手段を備えた噴霧器からの噴霧性が良好な水性ゲル状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スプレー製品は広範な分野に適用されており、多くのスプレー装置に充填される液状組成物には多くの成分が使用されている。スプレー製品として望まれる特性には、様々な条件において噴霧性が良好なこと、吹き付けた組成物が垂直面や斜面に付着して液だれしないことなどがある。
【0003】
これに対し、例えば特許文献1には、セルロースを含有する水性ゲル状組成物が開示され、これは噴霧性が良好で、噴霧後の定着性、液だれ防止性、塗布時ののび、塗布後の仕上がりに優れているとされている。特にセルロースはゲルを形成する上で重要な役割を果たし、セルロースが平均重合度100以下で、セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下、セルロースII型結晶成分の分率が0.4以下で、かつ、平均粒子径が2μm以下であることが必要とされている。
【0004】
しかし、従来のセルロースを含有する水性ゲル状組成物はイオン性化合物が存在するとセルロースが凝集して減粘し、ゲルが形成されないという問題があった。
【特許文献1】特開2003−73229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決すること、すなわち、イオン性化合物が存在する場合も安定したゲル状を保ち、噴霧性が良好で、噴霧後に液だれしない水性ゲル状組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討し、エーテル化度が0.4〜2.0であり、B型粘度計による25℃における1重量%水溶液の粘度が1〜1000mPa・sであるカルボキシルメチルセルロースナトリウム(以下、CMC−Naと記載する場合もある)を加えることにより、上記課題を克服し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の水性ゲル状組成物は、平均粒子径が2μm以下で、平均重合度(DP)が100以下で、結晶化率が50%以下であるセルロース微粒子またはセルロース複合体微粒子(以下、透明セルロースゲルということもある)と、イオン性化合物と、水とを含有してなり、加圧による噴霧手段を備えた噴霧器から噴霧可能な水性ゲル状組成物であって、エーテル化度が0.4〜2.0であり、B型粘度計による25℃における1重量%水溶液の粘度が1〜1000mPa・sであるカルボキシメチルセルロースナトリウムを、セルロース微粒子またはセルロース複合体微粒子1重量部に対し1重量部以下の割合でさらに含有し、B型粘度計により、ローター回転数60rpm、25℃で測定した粘度が2000〜10000mPa・sであるものとする。
【0008】
上記においてイオン性化合物は、水溶性金属塩、イオン性界面活性剤、及びイオン性高分子電解質からなる群から選択された1種又は2種以上であることが好ましい。
【0009】
本発明の水性ゲル状組成物は、加圧による噴霧手段を備えた噴霧器に充填して使用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、イオン性化合物を含んでも噴霧性が良好で、噴霧後の定着性、液だれ防止性に優れるセルロースを含有する水性ゲル状組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で用いるセルロース微粒子またはセルロース複合体微粒子(透明セルロースゲル)は、通常、精製パルプのようなセルロース原料を60重量%以上の硫酸水溶液中で低温下処理して溶解させ、さらに水希釈した後に加温し、セルロースの加水分解を行ったものを、適度な固形分濃度で高圧ホモジナイズすることで得られる。本願発明では、このような処理を実施する際に、平均重合度が100以下で、結晶化率が50%以下になるようにする。平均重合度が100を越える場合は十分な透明性が得られず、また、結晶化率が50%を越える場合は分散安定性が不十分となる。また、平均粒子径が2μmを越えると透明性や分散安定性が悪くなる上、粒子の粗い部分(凝集物)が目詰まりの原因となって、均一な散布が困難となる。なお、本発明でいう「セルロース複合体微粒子」とは、酸加水分解によりカルボキシル基やスルホン基が導入されたセルロースを部分的に含むものである。
【0012】
上のような処理により得られた透明セルロースゲルは、通常ナノサイズにまで微小化されたセルロース微粒子が分散された状態であり、セルロースに由来する多数の水酸基により、セルロース微粒子が水素結合を介して三次元的にネットワークを形成し、ゲル状態を発現する。また、非イオン性の多くの極性化合物を混合した際に、セルロース微粒子のもつ水酸基による引力的な相互作用によって、優れた分散安定性を示すことが可能となる。
【0013】
しかし、水素結合を介するネットワーク構造を破壊しうるイオン性化合物を混合した際にはセルロース微粒子同士が凝集し、ゲル状態を保持することができなくなる。
【0014】
上記透明セルロースゲルとして、本発明では平均粒子径が2μm以下で、平均重合度(DP)が100以下で、結晶化率が50%以下であるものを用いる。透明セルロースゲルの平均粒子径が2μmを超えると、粒子の粗い部分が目詰まりを生じ、均一な散布ができない。平均重合度が100を越えると、透明性が不十分となる。また、結晶化率が50%を越えると、分散安定性が低下する。
【0015】
また、イオン性化合物は、水溶性金属塩、イオン性界面活性剤、及びイオン性高分子電解質のうちの1種又は2種以上であることが好ましい。
【0016】
水溶性金属塩の例としては、無機酸又は有機酸のカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩等が挙げられるが、この限りではない。
【0017】
無機酸としては、炭酸、塩酸、オルトホウ酸、メタホウ酸、三メタホウ酸、次ホウ酸、シアン酸、イソシアン酸、雷酸、硝酸、ペルオキソ硝酸、亜硝酸、ペルオキソ亜硝酸、ニトロキシル酸、次亜硝酸、(オルト)リン酸、ピロリン酸、三リン酸、メタリン酸、三メタリン酸、四メタリン酸、ペルオキソ一リン酸、ペルオキソ二リン酸、亜リン酸、ピロ亜リン酸、次亜リン酸、ホスフィン酸、硫酸、ピロ硫酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸、チオ硫酸、二チオン酸、亜硫酸、ピロ亜硫酸、チオ亜硫酸、亜二チオン酸及びスルホキシル酸が挙げられる。
【0018】
有機酸としては、グリシンやアラニン、フェニルアラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、プロリン、ヒドロキシプロリン、リジン、アルギニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、スレオニン、ヒスチジン等の各種アミノ酸、蟻酸、酢酸、乳酸、ピルビン酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、ニコチン酸、サリチル酸、アルギン酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、安息香酸等が挙げられる。
【0019】
イオン性界面活性剤の例としては、アニオン界面活性剤としてアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸等が挙げられ、両性界面活性剤としてアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0020】
イオン性高分子電解質の例としては、ナフタリンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0021】
上記イオン性化合物の含有量は、0.0001〜10重量%の範囲が好ましく、0.001〜2重量%の範囲がより好ましい。
【0022】
次に、本発明で用いるカルボキシメチルセルロースナトリウム塩は、エーテル化度が、0.4〜2.0であり、B型粘度計により、25℃で測定した1重量%水溶液の粘度が1〜1000mPa・sのものであることが好ましい。エーテル化度が0.4未満では水溶性が不十分であり、均一なゲル状にならず、例えば噴霧時の目詰まりの原因となり易い。また、エーテル化度が2.0を越えると価格的に高価になり経済的に不利となる。粘度は1〜1000mPa・sであるが、より好ましくは1〜100mPa・sであり、さらに好ましくは1〜10mPa・sである。100mPa・sを越えると曳糸性が強く出るために、スプレーを用いて散布する際に霧状にならない場合がある。また、粘度が小さいほど、水性ゲル状組成物の粘度を調整しやすくなる。
【0023】
カルボキシメチルセルロースナトリウムの含有量は、0.01〜10重量%の範囲が好ましく、0.1〜1重量%の範囲がより好ましい。また、カルボキシメチルセルロースナトリウムの含有量は散布性を良好なものとするために透明セルロースゲルの含有量1重量部に対し1重量部以下とする。
【0024】
発明の水性ゲル状組成物には、上記カルボキシメチルセルロースナトリウム塩に以下のものを組み合わせて使用することもできる。天然由来のもの及び化学合成により得られるもののどちらを用いてもよいが、例えば、天然系のものでは、キサンタンガム、ジェランガム、ポリグルタミン酸、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、デンプン、キトサン、ペクチン、およびそれらの誘導体、また、セルロース誘導体や合成系有機高分子であるポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド等が例示できる。また、カルボキシメチルセルロースおよびそのナトリウム塩以外の、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体も使用することができる。これらの水溶性高分子を併用する場合は、水溶性高分子全体の中で上記特定のエーテル化度及び粘度を有するカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の含有量が50重量%以上となるように使用することが好ましい。
【0025】
本発明の水性ゲル状組成物は、B型粘度計により、ローター回転数60rpm、25℃で測定した粘度が2000〜10000mPa・sになるよう調整するのが好ましい。2000mPa・s未満ではゲル状とはならず、ゾル状になるか、あるいは均一分散されず、沈殿が生じるおそれがある。また、10000mPa・sを越えると散布性が低下する。また、TI値が11以下であることが好ましい。11を越えると、ゲル状組成物の流動性が悪く、ポンプによりゲル状組成物を吸い上げることができず、スプレーの吸い込み口付近が空洞になり、ゲル状組成物が噴霧できなくなるためである。
【0026】
本発明の水性ゲル状組成物は、さらに樹脂エマルジョン、界面活性剤、油脂、アルコール類、有機酸およびその塩、顔料、防腐剤、抗菌剤等を1種類以上含むものとすることができる。
【0027】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤や両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などが使用される。具体的にはアニオン性界面活性剤として、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩などが挙げられる。また、両性界面活性剤として、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタインなどが、非イオン界面活性剤として、グリセリンやソルビタン、ショ糖の脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロック共重合体、脂肪酸ポリエチレングリコール、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
樹脂エマルジョンとしては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、アクリル酸−スチレン共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン等のエマルジョンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
油脂としては、オリーブ油、カカオ油、カルナバワックス、月桃油、ゴマ油、サフラワー油、シリコン油、スクワレン、大豆油、菜種油、パーム油、パーム核油、ヒノキ油、ヒバ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ホホバ油、綿実油、ヤシ油、ラノリン等の天然系動植物油のほか、トリグリセリド、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン等の炭化水素類、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸等の高級脂肪酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
アルコール類としては、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン等のほか、トレハロース、マルトース、ショ糖、グルコース、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等の糖および糖アルコール類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
他に、有機酸としては、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、アスコルビン酸、アミノ酸等があげられ、顔料としては、二酸化チタン、二酸化亜鉛、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、カーボンブラック等が、防腐剤や抗菌剤としては、安息香酸およびその塩、パラオキシ安息香酸アルキルエステルおよびその塩、サリチル酸およびその塩、ソルビン酸およびその塩、フェノキシエタノール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、農薬原体については特に限定されず、農薬登録されているものの有効成分が該当する。
【0032】
本発明の水性ゲル状組成物の噴霧手段としては、手動ポンプやアトマイザーのように物理的に加圧するものや噴射ガス組成中に混合したエアゾールタイプのものなどを用いることができ、噴霧手段としては特にこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
以下に実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
なお、本明細書における、セルロースの平均粒子径、平均重合度、粘度及び結晶化率は、以下の方法により測定したものとする。
【0035】
〈「セルロースの平均粒子径」の測定方法〉
平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置:LA−920:下限検出値は0.02μm)で測定した。
【0036】
分散媒体中のセルロース粒子間の会合を可能な限り切断した状態で粒子径を測定するために、次の工程で試料を調製した。
【0037】
まず、セルロース濃度が約0.5重量%になるようにセルロース分散体を水で希釈した後、回転速度15,000rpm以上の能力を持つブレンダーで10分間混合処理を行い、均一な懸濁液を作製した。次いで、この懸濁液に超音波を照射する超音波処理を30分間施して得られた水分散試料を前記粒度分布測定装置のセルに供給し、再び超音波処理(3分間)を行った後、粒径分布を測定した。
【0038】
なお、本発明でいう平均粒子径は、Mie散乱理論式から算出される体積換算の粒度分布から求められる重量平均粒子径(体積平均粒子径と同等)に相当する。
【0039】
〈「平均重合度」の測定方法〉
平均重合度(DP)は、上述の乾燥セルロース試料をカドキセンに溶解した希薄セルロース溶液の比粘度をウベローデ型粘度計で測定し(25℃)、その極限粘度数[η]から次式により算出した値を採用した。ここで、Mwは重量平均分子量を示す。
【0040】
粘度式:[η]=3.85×10-2×Mw0.76
換算式:DP=Mw/162
【0041】
〈結晶化率の測定方法)
結晶化率を求めたいセルロース試料を粉状に粉砕し、錠剤に成形して、線源CuKα、反射法での広角X線回折法(リガク(株)製、RINT−ULtimaIII)により得られた回折図において、セルロースI型結晶(110)面ピークに帰属される2θ=15.0°における絶対ピーク強度h0と、この面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1とから、下記式(1)によりセルロースI型結晶の分率(χI)を求めた。
【0042】
同様に前記回折図において、セルロースII型結晶(110)面ピークに帰属される2θ=12.6°における絶対ピーク強度h0*とこの面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1*とから、下記式(2)よりセルロースII型結晶成分の分率(χII)を求めた。
【0043】
χI=h1/h0 …式(1)
χII=h1*/h0* …式(2)
【0044】
結晶化率は、セルロースI型結晶の分率(χI)とセルロースII型結晶成分の分率(χII)とを足し合わせることで算出した。
【0045】
〈粘度の測定方法〉
液温25℃に調製した試料をBM型粘度計(ブルックフィールド社製、ローターNo.4)を用いて測定した。測定は、前記粘度計で回転数が2.5rpmの場合を測定した。
【0046】
〈透明セルロースゲル(TCG)の製造方法〉
セルロース濃度が5重量%になるようにセルロース粉末を、−5℃の65重量%硫酸水溶液に加えて、150rpmの攪拌条件下で10分間溶解し、セルロース加水分解物を作製した。セルロース加水分解物は、均一透明で溶解班は観察されなかった。
【0047】
このセルロース加水分解物を重量で2.5倍量の水中(5℃)に攪拌しながら注ぎ、セルロースをフロック状に凝集させて懸濁液を調製した。懸濁液を85℃で20分間加水分解し、次いで洗液のpHが4以上になるまで十分に水洗と減圧脱水を繰り返し、セルロース濃度が15重量%のゲル状物を得た。
【0048】
ゲル状物のセルロース濃度(固形分濃度)が4重量%になるように水で希釈し、分散機(プライミクス社製、機種名:TKロボミックス)を用いて10,000rpmの攪拌条件下で15分間処理し、その後、超高圧ホモジナイザー(みづほ工業(株)社製、機種名:マイキウロフルイダイザーM−110−E/H、圧力:100MPa)で5回繰り返して粉砕処理を行った。
【0049】
[実施例1]
4%に調整した透明セルロースゲル(TCG、平均粒子径:0.2μm、平均重合度:44、結晶化率:10%)500g、CMC−Na(エーテル化度:0.75、1重量%水溶液粘度(25℃):5mPa・s)10g、CaCl1g、パラオキシ安息香酸メチル1gを混合し、軽く攪拌した後、蒸留水を加えて1000gとし、ホモミキサー(T.K.Lobo.micsTM,特殊機化(株)製)を用いて10000rpmの回転速度で10分間分散処理を実施した。調製後、粘度測定用に500mLのビーカーに、また、散布性確認用に50mLのディスペンサー型スプレー容器に一部を移し替え、24時間25℃にて静置した。
【0050】
[比較例1〜3]
TCG他、各成分の配合を表1に示したとおりにした以外は実施例1と同様にして、水性ゲル状組成物を調製し、静置した。
【0051】
上記各実施例及び比較例の評価を、ゲルの形成、散布性、散布した組成物の液だれの有無の観察により行った。結果を表1に示す。なお、散布性の評価は、均一なミスト状に散布されることと容器内の組成物が全て散布されることの2点に関し、散布した組成物が、両方に問題ない場合は「○」、一方に問題がある場合は「△」、いずれにも問題がある場合は「×」とした。
【0052】
【表1】

【0053】
比較例1及び2は、CMC−Naを使用していない例であり、CaClの存在により減粘し、ゲル状物を形成しなかった。このうち比較例2はCMC−Naに代えてPVAを使用した例であり、PVAでは所望の効果が得られないことが分かる。また、比較例3はTCG量を超えてCMC−Naを用いた例であり、その場合、散布性が悪いことが分かる。
【0054】
[実施例2]
4%に調整したTCG375g、CMC−Na10g、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩10g、パラオキシ安息香酸メチル1gを混合し、軽く攪拌した後、蒸留水を加えて1000gとし、ホモミキサー(T.K.Lobo.micsTM,特殊機化(株)製)を用いて10000rpmの回転速度で10分間分散処理を実施した。調製後、粘度測定用に500mLのビーカーに、また、散布性確認用に50mLのディスペンサー型スプレー容器に一部を移し替え、24時間25℃にて静置した。
【0055】
[実施例3,比較例4,5]
TCG他、各成分の配合を表2に示したとおりにした以外は実施例2と同様にして、水性ゲル状組成物を調製し、静置した。
【0056】
【表2】

【0057】
比較例4はCMC−Naを使用していない例であり、イオン性活性剤の存在により減粘し、ゲル状物を形成しないことが分かる。比較例5は粘度が10000以上では散布できないことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の水性ゲル状組成物は、スキンケア製品,ヘアケア製品,外用医薬品,経口用医薬品,防虫剤,芳香剤,消臭剤,抗菌剤,滅菌剤,消口臭剤,洗浄剤,塗料,防曇用コーティング剤,帯電防止用コーティング剤,防腐剤、農業用資材などスプレー製品全般に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が2μm以下で、平均重合度(DP)が100以下で、結晶化率が50%以下であるセルロース微粒子またはセルロース複合体微粒子と、イオン性化合物と、水とを含有してなり、加圧による噴霧手段を備えた噴霧器から噴霧可能な水性ゲル状組成物であって、
エーテル化度が0.4〜2.0であり、B型粘度計による25℃における1重量%水溶液の粘度が1〜1000mPa・sであるカルボキシメチルセルロースナトリウムを、前記セルロース微粒子またはセルロース複合体微粒子1重量部に対し1重量部以下の割合でさらに含有し、
B型粘度計により、ローター回転数60rpm、25℃で測定した粘度が2000〜10000mPa・sである
ことを特徴とする噴霧可能な水性ゲル状組成物。
【請求項2】
前記イオン性化合物が、水溶性金属塩、イオン性界面活性剤、及びイオン性高分子電解質からなる群から選択された1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の噴霧可能な水性ゲル状組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水性ゲル状ミスト組成物を加圧による噴霧手段を備えた噴霧器に充填したことを特徴とする製剤。

【公開番号】特開2009−161483(P2009−161483A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1099(P2008−1099)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】