説明

噴霧媒体を使用する塗料噴霧装置を制御するための噴霧パラメータを決定するための方法

【課題】噴霧媒体を使用する塗料噴霧装置を制御するための噴霧パラメータを決定する。
【解決手段】第一の噴霧媒体を使用するための、既知の噴霧パラメータにより決定された既知の噴霧パターンが与えられ;前記の噴霧パラメータ及び第二の噴霧媒体の特性を用いて、暫定的な噴霧パターンが計算され;更なる噴霧パターンを与える変更された噴霧パラメータを取得するために、前記既知の噴霧パラメータが変更され;前記更なる噴霧パターンが、前記既知の噴霧パターンに、基準の範囲内で類似するポイントに達するまで、前記変更された噴霧パラメータが変更され;前記更なる噴霧パターンに対応する前記変更された噴霧パラメータが、前期第二の噴霧媒体のための噴霧パラメータとして意図され、前記第二の噴霧媒体が使用されるときにはいつでも、前記塗料噴霧装置に与えられ;前記噴霧パラメータは、前記塗料噴霧装置の噴霧挙動に影響を与える複数の空気の流量を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
塗料噴霧装置を制御するための噴霧パラメータを決定するための方法が、塗料噴霧装置を制御するための方法とともに、規定される。
【背景技術】
【0002】
塗装される部品の複雑さの増大、色の増大、及び絶えず短くなりつつある製造サイクルのために、塗装プラントの運転に対する要求が増大している。既存の塗装プラント、例えばロボット技術に基づくプラントの変換によって、これらの要求が適合されることが可能である。しかしながら、塗装プラントためのロボット技術の使用は、新しい塗料および/または塗装プラントの新しいコンポーネント部品に適応させるための、塗装制御システムの設定に、かなり大きな手間を必要とする。
【0003】
独国特許出願公開第 DE 19 936 146 号明細書により、塗料噴霧装置のための噴霧パラメータを決定するための方法が知られている。
【特許文献1】独国特許出願公開第 DE 19 936 146 号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実現すべき一つの目的は、新しい噴霧媒体に使用するために、塗料噴霧装置のための噴霧パラメータを決定することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
噴霧媒体を使用する塗料噴霧装置を制御するための噴霧パラメータを決定するための方法が規定される。この方法において、第一のステップの中で、既知の噴霧パラメータにより、第一の噴霧媒体を使用するために決定された既知の噴霧パターンが与えられる。既知の噴霧パターン及び既知の噴霧パラメータの暫定値の中で、適切な情報を含むデータ・ファイルが調べられることが可能である。 更なるステップの中で、暫定的な噴霧パターンが、既知の噴霧パラメータ及び第二の噴霧媒体の特性を用いて計算されることが可能である。第二の噴霧媒体の特性は、ここでは、第二の噴霧媒体の固体の含有量、粘度または表面張力を含むことができる。次に、更なる噴霧パターンを与える変更された噴霧パラメータを取得するために、既知の噴霧パラメータが変更されることが可能である。ここで、更なる噴霧パターンは、一般的に、既知の噴霧パターンとは異なるであろう。その理由は、第一の噴霧媒体に対する第二の噴霧媒体の変更された特性が、塗料噴霧装置の異なる噴霧挙動をもたらすからである。
【0006】
変更された噴霧パラメータは、更なる噴霧パターンが、既知の噴霧パターンに類似性の基準の範囲内で類似するポイントに達するまで変更されることが可能である。既知の噴霧パターンに類似する更なる噴霧パターンに対応する変更された噴霧パラメータは、ここでは、第二の噴霧媒体のための噴霧パラメータとして意図されることが可能であり、第二の噴霧媒体が使用される時にはいつでも、塗料噴霧装置に与えられる。このことは、塗料噴霧装置のための更新された噴霧パラメータを含む更新されたデータ・ファイルの暫定値の形態で、実現されることが可能である。噴霧パラメータ、即ち、既知の及び変更された噴霧パラメータの双方は、塗料噴霧装置の噴霧挙動に影響を与える複数の空気の流量を有することができる。
【0007】
噴霧媒体の例は、一般的に、アトマイザによりアトマイズされることが可能である塗料、定着剤、または他のコーティング媒体であり、それらを使用する際には、コーティングされる対象物上での、特に均一なコーティング膜厚の分布が要求される。
【0008】
問題の第一の噴霧媒体は、塗料噴霧装置による使用のために噴霧パラメータが既に決定されている噴霧媒体であって、その噴霧パラメータは、従って、“既知の噴霧パラメータ”と表記される。
【0009】
塗料噴霧装置を制御するための噴霧パラメータがまだ決定されていない噴霧媒体は、第二の噴霧媒体として表記される。これは、始めて使用され、且つ第一の噴霧媒体とは異なるアトマイゼイション挙動を有する噴霧媒体であることが可能である。
【0010】
噴霧パターンとは、一般的に、アイテム上、特に塗装される対象物上での噴霧媒体分布を示す図または表現を意味している。このアイテムは、二次元の背景領域としての図で規定されることが可能である。ここでは、噴霧パターンは、二次元または三次元の噴霧媒体分布を示すことができる。噴霧媒体分布の三次元の表現において、分布上の各ポイントに、どのくらい噴霧媒体が存在するかが示される。これは、噴霧媒体分布のスナップショットを構成することが可能であり、このスナップショットは、準安定噴霧パターンとして理解されることができる。
【0011】
二次元表現においては、対象物上での噴霧媒体分布の単なる広がりが示される。二次元または三次元の噴霧パターンは、塗装される対象物上での噴霧媒体分布の横方向の直径により規定される幅を有している。この幅は、噴霧パターンの幅と表記される。
【0012】
噴霧パターンはまた、塗装ストリップの表現により構成されることが可能であり、この表現は、複数のスナップショット、または、一直線上に配置されたある期間に渡る噴霧媒体分布の準安定の噴霧パターンにより作り出される。そのとき、塗装ストリップの幅は、噴霧パターンの幅と表記されることが可能である。
【0013】
既知の噴霧パターンは、既知の噴霧パラメータを有する第一の噴霧媒体のために決定された噴霧パターンである。この既知の噴霧パラメータは、ここでは、この第一の噴霧媒体を使用するために適切であり、そして、第一の噴霧媒体が使用されるときにはいつでも、塗料噴霧装置により使用されることが可能である。
【0014】
反対に、暫定的な噴霧パターンは、第二の噴霧媒体に対して適応されていない設定において、この第二の噴霧媒体を塗料噴霧装置が使用するときに得られる噴霧パターンであって、暫定的な噴霧パターンの決定のために、第一の噴霧媒体に対して既に決定された既知の噴霧パラメータが使用される。暫定的な噴霧パターンは、既知の噴霧パターンとは異なっているであろう。その理由は、第二の噴霧媒体の特性が第一の噴霧媒体の特性とは異なっているからである。
【0015】
更なる噴霧パターンと表記されるものは、既知の噴霧パラメータが変更され、これらの変更された噴霧パラメータを用いて、且つ第二の噴霧媒体を用いて、塗料噴霧装置が運転された後に得られる噴霧パターンである。
【0016】
噴霧パラメータは、噴霧パターンまたはコーティング厚さの分布が作り出されることが可能であるように、塗料噴霧装置を設定するパラメータである。それはまた、特に、最終的にアトマイザから出るスプレイ・クラウドの形状に影響を与えるが、また、コーティングされる対象物上での噴霧媒体分布にも影響を与える空気の流量を有している。このように、空気の流量は、塗料噴霧装置により対象物に塗布されるコーティングの膜厚の分布に影響を与えるために適切である。空気の流量の値は、単位時間当たりの液体の量、例えば1分当りのリットル数で、示されることが可能である。
【0017】
暫定的な及び更なる噴霧パターンの両者は、好ましくは、適切なプログラム・プロダクトを備えたコンピュータにより実行されるシミュレイションから得られる。噴霧パラメータはまた、従って、シミュレイションの中で修正される。
【0018】
塗料噴霧装置を制御するための上記の噴霧パラメータを決定するための方法は、次のような利点を有している:即ち、塗料噴霧装置は、その噴霧挙動に影響を与える複数の空気の流量を用いて運転され、その塗料噴霧装置は、第二の噴霧媒体を使用するために、空気の流量に関係する既知の噴霧パラメータの変更を介して適応された噴霧挙動を示す。このようにして、新しい噴霧媒体を用いて、目的に適ったやり方で塗装することを可能にするために、塗料噴霧装置が機械的に改造される必要が無くなる。
【0019】
例えば他の噴霧媒体のために、既に設定されている既存の動作プログラムが、塗料噴霧装置のために使用されることが可能である。その理由は、既知の噴霧パターンは、最終的に決定された噴霧パラメータによって得られた更なる噴霧パターンと、広く一致しているからである。
【0020】
本発明の一つの実施形態によれば、塗料噴霧装置は、高回転速度アトマイザを有し、その高回転速度アトマイザの中で、偏向空気の流量、特に内側及び外側の偏向空気の流量が、塗料噴霧装置の噴霧挙動に影響を与える。バルブにより、例えば計量機器のバルブまたはバルブ・フラップにより、空気の流量が、内側及び外側の偏向空気の流量として接続されることが可能である。偏向空気の流量は、互いに独立して制御され調整されることが可能である。
【0021】
空気の流量、特に内側及び外側の偏向空気の設定に関係するような空気の流量を含む噴霧パラメータは、選択され、且つ、ネストにされた反復ループ(nested iteration loops)の変更可能な値として反復されることが可能である。
【0022】
他の噴霧パラメータとともに行われる、反復ループの中の空気の流量の値の各漸進的な変更の後、更なる噴霧パターンが、ここで決定され、その既知の噴霧パターンとの類似性の基準がチェックされ、類似性の基準の検査のために、例えば、噴霧パターンの幅が使用される。十分な類似性が存在するときには、直ちに、適切な噴霧パラメータがデータ・ファイルに貯えられ、リードオフの形態(read-off form)で塗料噴霧装置に与えられることが可能である。
【0023】
ネストにされた反復ループの場合、複数の噴霧パラメータの組み合わせ(それらが、内側及び外側の偏向空気の流量を制御する)が、既知の噴霧パターンに特定の基準の範囲内で類似する噴霧パターンをもたらすので、好ましくは、当初の噴霧パラメータからの相違が最小の噴霧パターンのみが選択される。特に、内側及び外側の偏向空気の流量に関係するパラメータであって、対応する既知の噴霧パラメータからの相違が最小のパラメータが、選択される。
【0024】
このことは、好ましくも、塗料噴霧装置またはアトマイザが、ほぼ安定した作業ポイントで運転されると言う効果を有している。安定した作業ポイントと呼ばれるものは、運転の最中に、ラメータが僅かに変更されるだけのオペレーティング・ポイントである。その僅かな変更とは、例えば、噴霧パターンの幾何学的形状または噴霧パターンの幅に関して、移動変数(movement variable)(直径、幅)10%未満の変更である。このようにして、偏向空気の流量の変更、例えば、300NL/minから310NL/minまでの変更が、安定した作業ポイントと呼ばれることになるであろう。より大きな変更は、製造の信頼性を危険に曝すおそれがある。
【0025】
本発明の一つの実施形態によれば、空気の流量に関係する噴霧パラメータが、更なる噴霧パラメータに固定的に結合される。更なる噴霧パラメータは、例えば、使用される第二の噴霧媒体の量に、または、ロータリー・アトマイザが使用される場合にはアトマイザの回転速度に、関係することが可能である。もし、単に内側の偏向空気の流量が、噴霧パラメータ塗料の量または回転速度に結合される場合には、前記の反復ループは、所望の噴霧パターンまたは所望の噴霧パターンの幅が実現されるまで、外側の偏向空気の噴霧パラメータを用いて実行されても良い。本発明の方法のこの実施形態は、内側または外側のいずれかの偏向空気の流量に関して、僅かな反復ループが実行されることが要求され、それにより、計算の手間が減少すると言う利点を有している。
【0026】
内側および/または外側の偏向空気の流量に関係する噴霧パラメータの、他の噴霧パラメータへの固定された関数的割当て(functional assignment)は、リニアまたは比例的性質であっても良いし、他の関数または経験的ファクターを介して規定されても良い。
【0027】
更なる噴霧パラメータにも関わらず、内側の偏向空気の流量の噴霧パラメータまたは外側の偏向空気の流量の噴霧パラメータは、その代わりに固定的に予め規定された反復ループを実行することも可能であり、その反復ループは、それぞれ他の噴霧パラメータの反復ループと比べて、より短いかあるいはより僅かな値でトラバースする。
【0028】
本発明の方法の更なる実施形態によれば、既知のまたは変更された噴霧パラメータが、第二の噴霧媒体に対して使用されたときに得られる第二の噴霧媒体の吐出量が計算される。もし、ロータリー・アトマイザが使用される場合には、計算された吐出量が、ロータリー・アトマイザの回転速度が増大されるかあるいは減少されるかについての基準となる。もし、回転速度の調整が必要である場合には、これが適用され、そして、噴霧パラメータの変更がシミュレイションの中で続けられる。
【0029】
本発明の方法の更なる実施形態によれば、既知の噴霧パターンと更なる噴霧パターンの間の所望の類似性が得られた後に、第二の噴霧媒体の吐出量が計算される。もしそのとき、吐出量が特定の許容範囲内に無い場合には、ロータリー・アトマイザの回転速度が変更されることが可能であり、そして、更なる噴霧パラメータの変更、特に空気の流量を含むパラメータの変更が、新たに開始されあるいは継続されることが可能である。このプロセスは、既知の噴霧パターンと更なる噴霧パターンの所望の類似性及び所望の噴霧媒体の吐出量が実現されるポイントに達するまで、実行されることが可能である。
【0030】
塗料噴霧装置を制御するための方法もまた、規定される。この方法においては、噴霧パラメータが、上述のタイプの噴霧パラメータを決定するための方法に基づいて決定され、第二の噴霧媒体を用いる対象物の塗装において使用される。
【0031】
ここで、第二の噴霧媒体が静電気的にコーティングまたは塗装される対象物の上にもたらされることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
上述の方法及びアイテムが、以下の図面及び例示的実施形態を参照してより詳細に説明される。
【0033】
様々な噴霧媒体が使用されるとき、ロボット・ベースの塗料噴霧装置の噴霧装置の動きが、一般的に、同一のままとどまることが好ましい。異なる特徴(例えば、使用される噴霧媒体の固体含有量または粘度)が、所望の噴霧パラメータ(例えば、塗料の量、偏向空気の値)により、考慮される。
【0034】
既知の噴霧パラメータの適応において、例えば塗料の量が変更されたときであっても、アトマイザの噴霧パターンの基本的な形状が維持されることが、更に好ましく、それによって、個別の塗装ストリップ(これは、塗装される対象物に塗布されることが可能である)の重複もまた、一様のままとどまることが可能である。
【0035】
図1は、噴霧パターンの幅W(噴霧パターン幅)の、外側の偏向空気の流量X、及び内側の偏向空気の流量βのそれぞれ値に対する依存性を示しており、それらの流量は、それぞれ、高回転速度アトマイザにより形成される塗料噴霧装置のスプレイ・クラウドに影響を与える。噴霧パターンの幅Wは、ここでは、縦軸(単位:ミリメートル)で示され、外側の偏向空気の流量は、下側のぼぼ水平な軸で示され、内側の偏向空気の流量は、もう一方の軸で示されている。偏向空気の流量は、1分間当りのノルマルリットルの値[NL/MIN]で、示されている。
【0036】
この図の中で黒く影が付けられた領域1,2,3は、特定の噴霧パターンの幅をもたらす外側及び内側の偏向空気の値の可能性のある組み合わせを示しており、噴霧パターンの幅は、1から始まって減少する。領域1,2及び3における噴霧パターンの幅は、所望の噴霧パターンの幅に近似することが可能であり、または、既知の噴霧パターンに近似する噴霧パターンの特徴となることが可能である。
【0037】
もし、二つの空気の流量のパラメータが変更される場合には、これらの空気の流量の値の多数の組み合わせが存在し、そのそれぞれが、新しい噴霧媒体に対する適応された噴霧パラメータを形成するために選択されることが可能であることが、この図面から明らかである。
【0038】
基本的には、もし、得られるべきコーティング厚さが中間(medium)であって、新しい塗料の個体の含有量が与えられた場合には、既知の噴霧パラメータ、例えば、塗料の吐出量、アトマイジング空気、回転速度及び偏向空気の流量が、要求された中間コーティング厚さが実現されるように、適応され、そして、噴霧パターンまたは最新の作り出された噴霧パターンは、既知の噴霧パラメータまたは噴霧パターンを包含するグループ・リファレンス(group reference)の対応する噴霧パターンに類似する。
【0039】
新しい塗料ための噴霧パラメータを決定するとき、他の噴霧パラメータが一定のままとどまると仮定して、同様な噴霧パターンを得るためのプロファイリング変数の決定は、重要な基準であって、それにより、所望の噴霧パラメータの計算において、計算の手間が限界内に保たれる。
【0040】
高回転速度アトマイザに関するプロファイリング変数が、この場合に、特に評価されることが可能なので、偏向またはプロファイリングの目的のために使用される空気の流量、特に、内側及び外側の偏向空気の流量は、特に影響を有している。グループ・リファレンスの既知の噴霧パラメータが、ここでは、新しい塗料の特性を用いてシミュレイトされることが可能であり、変更された噴霧パターンの幅を有する新しい、更なる噴霧パターンが作り出される。
【0041】
次に、更なる噴霧パターンの噴霧パターンの幅が、最小値から、この幅が対応するグループ・リファレンスの幅よりも大きくなるまで、徐々に増大されることが可能である。ロータリー・アトマイザにおいて、噴霧パターンの幅の増大は、内側のまたは外側の偏向空気の流量の、その最大値からの漸進的な減少により実現されることが可能である。内側のまたは外側の偏向空気の流量の最終的な値は、最大値のリニアな補間により実現されることが可能である。
【0042】
一つの実施形態によれば、内側の偏向空気の値の漸進的な変更は、新しい噴霧媒体の量に基づいて、またはロータリー・アトマイザの回転速度の値に基づいて、実行されることが可能であり、内側及び外側の偏向空気の流量の追加的な変数により生ずる計算の手間は、限界内に保たれることが可能である。
【0043】
それに代わって、新しい噴霧媒体の量またはロータリー・アトマイザの回転速度の値に基づいて、内側の偏向空気の流量の代わりに、外側の偏向空気の流量を変更することも可能である。
【0044】
図2は、噴霧パラメータの決定のための複数のステップが規定されるフローチャートを示している。これらのステップは、他の塗料のための既存の噴霧パラメータからの、新しい塗料のための噴霧パラメータの自動的な計算を、ともに有している。
【0045】
第一のステップ“a”において、データ・ファイルとして且つ塗料噴霧装置または塗装ロボットにより読み込み可能な形態で存在する既知の噴霧パラメータが与えられ、その既知の噴霧パラメータは、塗料噴霧装置で使用可能な与えられた動作指示と結合されて、特定の噴霧媒体を用いる特定の対象物の塗装を可能にする。
【0046】
これらの既知の噴霧パラメータは、いわゆるブラシ・テーブル(brush table)の形態で存在することが可能であり、また、グループ・リファレンスと表記されることも可能である。このグループ・リファレンスはまた、噴霧パラメータに加えて、使用される噴霧機器のタイプ、例えばアトマイザ・タイプについて、塗装により形成可能な塗布される塗料の平均コーティング厚さについて、および/または、塗料の固体含有量についての情報を含有することも可能である。これらの既知の噴霧パラメータは、更に、既知の噴霧パターンを与える。
【0047】
第二のステップ“b”において、ブラシ・テーブルの既知の噴霧パラメータのセット(=シングル・ブラシ)のために、後続のステップ“c”から“k”が実行される。対象物の塗装において、塗装される領域に基づいて異なる噴霧パターン(例えば、広い、厚いまたは薄い噴霧パターン)が与えられることが、適切である。このようにして、様々なパラメータのセット(=シングル・ブラシ)が作り出され、それらは、ロボットまたはその制御システムの中にテーブルの形態でファイルされる。
【0048】
ステップ“c”において、暫定的な噴霧パターンがシミュレイトされ、その噴霧パターンは、既知の噴霧パラメータと新しい塗料の特性に関する情報が結合されたときに、得られる。
【0049】
ステップ“d”において、新しい塗料の吐出量が計算され、その吐出量は、既知の噴霧パラメータが新しい塗料のために使用されたときに得られる。その吐出量が許容可能な量のフレームの範囲内にあるか否かが、決定される。
【0050】
もし、吐出量が、許容可能なフレームの範囲内に無い場合、あるいは、中間の塗料コーティングレイヤの達成ために適切でない場合には、ステップ“d”において、新しい塗料の吐出量を所望の量に設定するために、塗料噴霧装置により使用された高回転速度アトマイザの回転速度が、シミュレイションの中で変更されることが可能である。
【0051】
更なるステップ“g”及び“f”で、所望の噴霧パターンまたは所望の噴霧パターンの幅を実現するために、高回転速度アトマイザの偏向空気の流量に影響を与える噴霧パラメータが変更される。特に、ステップ“g”で示されているように、シミュレイションの中で、所望の噴霧パターンの幅が得られるまで、外側の偏向空気の流量が変更されることが可能である。
【0052】
外側の偏向空気の流量が、所望の噴霧パターンの幅が得られるまで、このように変更されるところで、内側の偏向空気の流量が、高回転速度アトマイザの回転速度またはステップ“g”における塗料の吐出量の変化と結合されて、変更されることが可能である。内側の偏向空気の流量の噴霧パラメータの、回転速度の噴霧パラメータまたは塗料の吐出量の噴霧パラメータとの結合は、ブロック“g”で示されている。このようにして、一つの噴霧パラメータへの変更の数、即ち、内側の偏向空気の流量の数が、減少され、そして、新しい塗料のために適応される噴霧パラメータの計算のために要する手間が軽減される。
【0053】
それに代わって、ステップ“g”において、外側の偏向空気の流量の代わりに、内側の偏向空気の流量を、シミュレイションの中で所望の噴霧パターンの幅が得られるまで、変更することも可能である。従って、上述のように計算の手間を減らすために、外側の偏向空気の流量の変更が、ここでは、回転速度または塗料の吐出量(ブロック“f”)の変更に結合されることが可能である。
【0054】
ステップ“h”において、塗料噴霧装置の計算された噴霧挙動の有効性が計算されることが可能である。ここで、特定の質の特定の塗料のコーティング厚さを作り出すために、どの位の量の塗料が使用されるかについて、決定される。
【0055】
もし、既知の噴霧パラメータを有する他の塗料のために既に決定された噴霧パターンに対して、有効性が変更された場合には、計算オペレーションが、ステップ“d”で新たに始められ、そこで吐出量が計算され、それに続いて、高回転速度アトマイザの回転速度の変更により、変更されることが可能である。有効性に変更に関する知見は、ブロック“i”で示されている。
【0056】
ステップ“j”において、増大されたまたは減少された吐出量を用いる塗料のサブクラス、または、シミュレイションでテストされた新しい塗料または第二の噴霧媒体が、計算されることが可能である。塗料のサブクラスのために、上述のステップまたはループが新たに実行され、対応する噴霧パラメータが決定されることが可能である。
【0057】
ステップ“k”において、第二の噴霧媒体に適応された噴霧パラメータを用いる新しいブラシ・テーブルが記述され、塗料噴霧装置で使用可能にされることが可能である。
【0058】
基本的には、内側及び外側の偏向空気の値のためのネストにされた反復ループが、実行されることが可能である。その結果得られる交差のポイントは、既知の噴霧パラメータから得られた噴霧パターン類似する噴霧パターンを与えるものであって、それらは、データ・ファイルの中に貯えられる。
【0059】
反復ループが実行された後に、内側及び外側のループは、更なる噴霧パラメータに、例えば塗料の量及びロータリー・アトマイザの回転速度に、依存することが可能になり、新しい噴霧パラメータの有効性が計算される。もし、十分な有効性が与えられた場合には、即ち他の塗料に対して知られている噴霧パターンに対する十分な類似性が与えられた場合、更新されたブラシ・テーブルが書き込まれ、塗料噴霧装置で使用可能にされることが可能である。もし、有効性が不十分な場合には、既知の噴霧パラメータが、所望の噴霧パラメータに、特に、内側の及び外側の偏向空気の流量のパラメータを用いて、他の塗料に対して知られている噴霧パターンに対する十分な類似性が得られるまで、もう一度適応されることが可能である。
【0060】
図3は、複数の偏向空気のクラス5〜10のグラフィック表現を規定している。各偏向空気のクラスは、複数の内側及び外側の偏向空気の組み合わせまたは座標(X,β)の総和に対応する領域を包含している。一つのクラスの偏向空気の組み合わせは、ここでは、特定の噴霧パターンの幅をもたらす。外側の偏向空気の値は、X[NL/MIN]で示され、内側の偏向空気の値は、β[NL/MIN]で示されている。
【0061】
この図面の中で、最も大きいコヒーレント領域は、既知の偏向空気のクラス5であり、それは、既知の塗料に対して、特定の噴霧パターンの幅を有する既知の噴霧パターンをもたらす領域または偏向空気の組み合わせ総和を規定している。既知の偏向空気のクラス5の最も近くに偏向空気のクラス6があり、このクラスは、上述の噴霧パラメータを決定するための方法を用いて、新しい塗料のための噴霧パラメータとして得られた偏向空気の組み合わせの領域により特徴付けられる。この新しい偏向空気のクラス6は、周縁領域6aを有し、その周縁領域は、既知の偏向空気のクラス5の偏向空気の値の組み合わせに最も近似する偏向空気の組み合わせにより構成される。
【0062】
近接性の基準として、この場合には、二乗平均値が好ましくは使用され、この二乗平均値は、新しく計算された偏向空気のクラスの領域と既知の偏向空気のクラスの間の特定の近接性を規定する。偏向空気のクラス6の中で、どのポイントが、既知の偏向空気のクラス5の範囲内で、選択可能なポイント(白い“X”で示されている)の最も近くにあるかが計算される。捜し出されたポイントは、黒い“X”で示されていて、この図の中に示された円の半径に対応する白い“X”までの距離を有している。
【0063】
ここでは、黒い“X”は、約436[NL/MIN]の外側の偏向空気の値X、及び約240[NL/MIN]の内側の偏向空気の値β、を規定している。反対に、既知の噴霧パラメータに基づく白い“X”は、約280[NL/MIN]の内側の偏向空気の値、及び約570[NL/MIN]外側の偏向空気の値に対応している。
【0064】
新しい噴霧媒体のための、以上に記載された方法による、噴霧パラメータとして使用される特定の偏向空気の流量の選択は、既知の噴霧パターンと更なる噴霧パターンまたはそれらの幅の間の類似性の基準に加えて、更なる基準が存在しており、それを用いて、単一のまたは少なくとも少数の僅かな偏向空気の値の組み合わせ選択されることが可能であると言う利点を有している。
【0065】
これらの僅かな偏向空気の値の組み合わせを用いて、塗料噴霧装置が、新しいまたは第二の噴霧媒体のために運転されることが可能であり、そして、コーティングされる対象物の上で、既知の塗料及び既知の噴霧パラメータに対する先行する既知のコーティング厚さの分布に対応する噴霧パターンまたはコーティング厚さの分布が、作り出されることが可能である。新しい塗料の使用による塗料噴霧装置のコストの掛る変換は、それ故に、完全に解放され、あるいは少なくとも軽減されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、外側の偏向空気の流量及び内側の偏向空気の流量のそれぞれの、作り出された噴霧パターンの幅の依存性のグラフィック表現を示す。
【図2】図2は、所望の噴霧パラメータを決定するための複数のステップ規定されるフローチャートを示す。
【図3】図3は、偏向空気の組み合わせの領域を含有する複数のクラスのグラフィックな表現を示し、一つのクラスの中で、既知のクラスの偏向空気の組み合わせに近似する偏向空気の組み合わせが選択される。
【符号の説明】
【0067】
1〜4…様々な噴霧パターンの幅、5…第一の偏向空気のクラス、6…次の偏向空気のクラス、6a…次の偏向空気のクラスの周縁領域、7〜10…更なる偏向空気のクラス;
a……既知の噴霧パラメータの暫定値、b…シングル・ブラシの全てを覆うループ、c…暫定的な噴霧パターンのシミュレイション、d…第二の噴霧媒体の吐出量の計算、e…高回転速度アトマイザの回転速度の適応、f…偏向空気のパラメータの更なる噴霧パラメータへの結合、g…他の偏向空気のパラメータの変更、h…有効性の計算、i…有効性の変化に関する知見、j…増大または減少された吐出量を用いた塗料のサブクラスの計算、k…更新された噴霧パラメータを用いた更新されたブラシ・テーブルの暫定値;
X…外側の偏向空気の値、β…内側の偏向空気の値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧媒体を使用する塗料噴霧装置を制御するための噴霧パラメータを決定するための方法であって、
− 第一の噴霧媒体を使用するための、既知の噴霧パラメータにより決定された既知の噴霧パターンが与えられ;
− 暫定的な噴霧パターンが、前記既知の噴霧パラメータ及び第二の噴霧媒体の特性を用いて計算され;
− 更なる噴霧パターンを与える変更された噴霧パラメータを取得するために、前記既知の噴霧パラメータが変更され;
− 前記更なる噴霧パターンが、前記既知の噴霧パターンに、類似性の基準の範囲内で類似するポイントに達するまで、前記変更された噴霧パラメータが変更され;
− 前記更なる噴霧パターンに対応する前記変更された噴霧パラメータが、前記第二の噴霧媒体のための噴霧パラメータとして意図され、そして前記第二の噴霧媒体が使用されるときにはいつでも、前記塗料噴霧装置に与えられ;
− 前記噴霧パラメータは、前記塗料噴霧装置の噴霧挙動に影響を与える複数の空気の流量を有している。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載の方法:
前記塗料噴霧装置は、少なくとも一つの高回転速度アトマイザを有し、そのアトマイザの噴霧挙動は、内側及び外側の偏向空気の流量により影響を与えられ、且つ、それらの偏向空気の流量は、変更可能な噴霧パラメータとして使用される。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項2に記載の方法:
前記高回転速度アトマイザの回転速度が、噴霧パラメータとして使用される。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項3に記載の方法:
前記第二の噴霧媒体の吐出量が計算され、
前記第二の噴霧媒体の計算された吐出量に基づいて、前記回転速度の噴霧パラメータが変更される。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項2から4のいずれか1項に記載の方法:
前記内側の偏向空気及び前記外側の偏向空気の流量の噴霧パラメータが、ネストにされた反復ループの変数値(x,β)として選択され、そして、反復される。
【請求項6】
下記特徴を有する請求項3から5のいずれか1項に記載の方法:
前記内側の偏向空気の流量の噴霧パラメータが、前記高回転速度アトマイザの回転速度の噴霧パラメータに固定的に結合される。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項3から5のいずれか1項に記載の方法:
前記外側の偏向空気の流量の噴霧パラメータが、高回転速度アトマイザの回転速度の噴霧パラメータに固定的に結合される。
【請求項8】
下記特徴を有する請求項1から7のいずれか1項に記載の方法:
空気の流量の噴霧パラメータが、少なくとも更なる噴霧パラメータに、関数的割当てにより結合される。
【請求項9】
下記特徴を有する請求項1から8のいずれか1項に記載の方法:
前記類似性の基準は、前記既知の噴霧パターンの噴霧パターンの幅の、前記更なる噴霧パターンの噴霧パターンの幅との比較を有している。
【請求項10】
下記特徴を有する請求項1から9のいずれか1項に記載の方法:
前記塗料噴霧装置に供給するため、第一の噴霧媒体に対して知られている噴霧パラメータからの相違が最小の空気の流量が選択される。
【請求項11】
下記特徴を有する請求項10に記載の方法:
噴霧パラメータとして選択される前記空気の流量は、二乗平均に関して、前記第一の噴霧媒体に対して知られている噴霧パラメータに対して、最小の偏差を有している。
【請求項12】
塗料噴霧装置を制御するための方法であって、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法に従って噴霧パラメータを決定するための方法が使用される方法。
【請求項13】
下記特徴を有する請求項12に記載の方法:
前記アトマイザの噴霧挙動が、噴霧パラメータとして使用される空気の流量により影響を与えられる。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−36625(P2008−36625A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−161773(P2007−161773)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(591079203)アーベーベー・パテント・ゲーエムベーハー (16)
【氏名又は名称原語表記】ABB PATENT GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】