噴霧容器
【課題】特殊な充填設備を要することなく、所要部品点数を最少に抑える。
【解決手段】ノズル部12を筒部11の前端に形成する本体10と、筒部11に挿入する筒体21を備えるプランジャ20とを備え、筒部11には、保持位置のプランジャ20の筒体21の前方に軟質包装剤SCを収納する。
【解決手段】ノズル部12を筒部11の前端に形成する本体10と、筒部11に挿入する筒体21を備えるプランジャ20とを備え、筒部11には、保持位置のプランジャ20の筒体21の前方に軟質包装剤SCを収納する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鼻孔内に点鼻薬を噴霧して投与するときなどに使用する噴霧容器に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンジバレルとプランジャとを組み合わせる使い捨ての点鼻薬容器が知られている(特許文献1)。
【0003】
シリンジバレルの前端には、噴霧孔が開口されており、シリンジバレル内には、センタストッパと、所定量の薬液と、ピストン付きのプランジャとが収納され、薬液は、センタストッパとピストンとによってシリンジバレルに封入されている。そこで、プランジャを介してピストンを前進させると、薬液とともにセンタストッパが前進し、薬液を噴霧孔に流出させる導入路を開放して噴霧孔から薬液を霧状に噴出させることができる。なお、ピストンの前進速度を高めて薬液を確実に霧状に噴出させるために、プランジャを一時的に保持する保持機構を設け、プランジャを一定の圧力以上に強く押すと、保持機構を乗り越えてプランジャがピストンとともに殆ど瞬時に前進限にまで前進移動するように工夫されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再表WO2009/057572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、シリンジバレルに薬液を充填するために真空充填設備のような特殊な設備を必要とする上、シリンジバレル内を摺動移動するセンタストッパ、ピストンを介して薬液を封止するので、所要部品点数が多くなり、使い捨ての用途に適用し難くなりがちであるという問題があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、液剤を封入した軟質包装剤を使用することによって、特殊な設備を要することなく、所要部品点数を最少に抑え、使い捨ての用途にも好適に適用し得る噴霧容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、噴霧孔を有するノズル部を筒部の前端に形成する本体と、筒部に挿入する筒体を備えるプランジャとを備えてなり、筒部の前端部には、後向きの突起を設け、筒部は、プランジャを保持位置に前進させて筒体の前方に軟質包装剤を保持し、保持位置を越えてプランジャを前進限にまで前進させると、突起により軟質包装剤が突き破られて破裂し、軟質包装剤の液剤が噴霧孔から霧状に噴出することをその要旨とする。なお、この発明において、「軟質包装剤」とは、ゼラチンを主成分とする水溶性の軟カプセルに油性の液剤を封入する軟カプセル剤の他、不溶性のプラスチックフィルムなどの軟質の包装材に水性または油性の液剤を封入する包装製剤を含んでいうものとする。
【0008】
なお、ノズル部には、本体と別体のロッドを収納し、突起は、ロッドの後方においてロッドの周囲に配置してもよく、ノズル部には、本体と一体のロッドを収納し、突起は、ロッドの後端に形成してもよく、筒部の前端部には、軟質包装剤を支持する突部を後向きに設けてもよい。
【0009】
また、本体は、一対の筒部を平行に連結してノズル部の先端を双方の鼻孔に挿入可能とし、プランジャは、一対の筒体を平行に連結して筒部に対応させることができる。
【発明の効果】
【0010】
かかる発明の構成によるときは、本体の筒部には、軟質包装剤を収納してプランジャの筒体を挿入し、プランジャを中間の保持位置に前進させて軟質包装剤を筒体の前方に保持することができる。そこで、プランジャの後端を手指で強く押して一定以上の押圧力を加えると、プランジャは、保持位置を越えて前進限にまで殆ど瞬時に高速前進し、筒部の前端部の後向きの突起により軟質包装剤が突き破られて破裂し、内部の液剤を筒部の前端のノズル部の噴霧孔から外部に霧状に噴出させることができる。すなわち、液剤を封入する軟質包装剤は、格別なストッパやピストンなどの封止部材を要することなく、筒部に安定に収納して保持することができ、したがって、所要部品点数を最少に抑えるとともに、特殊な充填用の設備を使用する必要もない。ただし、軟質包装剤には、1回分の投与量相当の所定量の液剤を封入するものとする。
【0011】
噴霧孔からの液剤は、プランジャが前進限に到達するときの前進速度や、軟質包装剤が破裂するときの圧力などにより噴霧の状態が変わり得るが、これらのパラメータは、プランジャが保持位置を越えるときのプランジャの所要押圧力や、軟質包装剤の強度などによって決まり、操作者の操作の仕方に大きく影響されることがない。すなわち、液剤は、誰でも一定の噴霧が可能である。また、この発明は、軟質包装剤を筒部に収納してプランジャの筒体を保持位置にまで挿入して全体を包装することにより、単回使用の使い捨ての用途に使用することができる。なお、軟質包装剤を別包装することにより、製剤の安定性を保証することも可能である。ただし、軟質包装剤に封入する液剤は、鼻孔内に噴霧する点鼻薬の他、口腔内に噴霧する口内炎薬や口臭薬、傷口などに噴霧する消毒薬などであってもよい。
【0012】
中空のノズル部の軸心上にロッドを収納すると、ノズル部の実効断面積を小さく絞り、ノズル部を前向きに流れる液剤の流速を高めて噴霧孔からの液剤を一層良好に霧化して噴霧することができる。一方、このようなロッドは、ノズル部を含む本体と別体、一体のいずれとしてもよく、軟質包装剤を破裂させる突起は、前者の場合、ロッドの後方においてロッドの周囲に配置し、後者の場合、ロッドの後端に形成すればよい。なお、筒部の前端部に設ける後向きの突部は、保持位置にあるプランジャの前方の筒部内の軟質包装剤を支持し、プランジャが保持位置を通過して突部上の軟質包装剤を適切に弾性変形させない限り、突起が軟質包装剤に接触したり、それによって軟質包装剤を不用意に傷付けたりすることがない。
【0013】
一対の筒部を有する本体と、一対の筒体を有するプランジャとを組み合わせれば、プランジャを前進させることにより、双方の筒部のノズル部から液剤を同時に噴出させ、双方の鼻孔に対する投与を一挙に完了させることができる。ただし、このときの液剤は、点鼻薬である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】全体分解斜視図
【図2】全体組立縦断面図
【図3】本体の構成説明図(1)
【図4】本体の構成説明図(2)
【図5】一部破断要部拡大斜視図
【図6】図2の要部拡大図
【図7】要部拡大動作図
【図8】他の実施の形態を示す図5相当図
【図9】図8のY−Y矢視相当拡大断面図
【図10】他の実施の形態を示す図6相当図
【図11】他の実施の形態を示す図7相当図
【図12】他の実施の形態を示す図1相当図
【図13】図12の全体組立縦断面図
【図14】図13のB−B矢視相当断面図
【図15】図12の本体の構成説明図
【図16】図13の要部拡大図
【図17】図13の要部拡大動作図
【図18】軟質包装剤の斜視説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0016】
噴霧容器は、筒部11の前端にノズル部12を形成する本体10と、筒部11に挿入する筒体21を備えるプランジャ20とを備えてなる(図1、図2)。なお、本体10のノズル部12には、ロッド31が収納され、筒部11には、筒体21の前方に軟質包装剤SCを収納することができる。
【0017】
本体10の筒部11は、前端部を滑らかに縮径するとともに、小径のノズル部12が筒部11の前端に同一軸心上に突設されている。筒部11の後端部には、左右対称の羽根状の指掛け13、13が形成され、滑らかに湾曲する各指掛け13の前面側には、滑止め用の突条13a、13a…が形成されている。左右の指掛け13、13は、それぞれ筒部11の外周に対して滑らかに連続し、筒部11を挟んで互いに連続するように形成されている。
【0018】
筒部11の後端部は、内径do の最大径部11aとして、指掛け13、13の後面側にまで突出している(図3(A))。筒部11は、後端部の最大径部11aから前方のノズル部12に向けて、大小の斜めの段部11b、11cを介して内径d1 <do 、内径d2 <d1 に順に縮径され、前端部においてノズル部12に滑らかに連続している。なお、筒部11の前半部の内径d2 の部分には、前方側に緩く、後方側に急な断面非対称山形のリング状の係合リブ11dが段部11cに近い位置に周方向に形成されており(図3(A)、(B))、係合リブ11dの頂部は、滑らかに丸められている。ただし、係合リブ11dは、筒部11の周方向に連続させるに代えて、周方向に分断して形成してもよい。なお、図3(A)は、本体10の全体縦断面図であり、図3(B)は、図3(A)の要部拡大図である。
【0019】
ノズル部12の前端面には、浅い皿状の凹部14aを介して噴霧孔14がノズル部12の軸心C上に形成されている(図4(A))。ただし、図4(A)、(B)は、それぞれ図3(A)の要部拡大図、X−X矢視相当拡大断面図である。
【0020】
噴霧孔14は、ノズル部12の内部に向けて円錐台形に開拡しており、ノズル部12の天面には、噴霧孔14の開拡部14bの外周に向けて斜めの旋回溝14c、14c…が形成されている(図4(A)、(B))。また、ノズル部12の内周面には、中間部から前方の天面側に向けて、幅狭の平面部12a、12a…が周方向に等配されて形成され、ノズル部12の後部内面には、滑らかな内向きのリング状のリブ12bが形成されている。ノズル部12の後端は、筒部11の前端部において、筒部11内に開口するとともに、ブロック状の突部15、15…と、三角錐状の先鋭な突起16、16…とが交互に円周状に等配されて後向きに配列されている。各突部15、突起16は、ほぼ同一高さに揃えられている。
【0021】
プランジャ20は、筒体21の前端に係合フランジ22、柱状のヘッド23を同軸状に形成し、後端に外フランジ24を形成している(図1、図2)。筒体21の外周には、軸方向の長いガイドリブ21a、21a…が90°ごとに形成されており、係合フランジ22とヘッド23との間には、前方に向けて滑らかに湾曲するリング状の連結部22aと、ヘッド23のまわりを囲み、前方に向けて開口する環状溝23aとが形成されている。
【0022】
ロッド31は、円柱体の外周中間部に四角い抜止め用の突部31a、31a…を90°ごとに配置して形成されている。そこで、ロッド31は、筒部11側からノズル部12に押し込むようにしてノズル部12の軸心C上に収納することができる(図2、図5)。なお、ロッド31の前端は、ノズル部12の天面に当接し、ロッド31の前半部は、ノズル部12の内周の平面部12a、12a…に接するようにして位置決めされ(図5、図4(B)の二点鎖線)、ロッド31は、突部31a、31a…がノズル部12の後部のリブ12bに係合して抜止めされている。また、筒部11の前端部の突部15、15…、突起16、16…は、ロッド31の後方においてロッド31の周囲に配置されている。
【0023】
本体10の筒部11には、所定の液剤の所定量を軟質の包装材に封入する軟質包装剤SCを収納し、プランジャ20の筒体21を筒部11の後部から挿入して、使用に備えて待機する(図2、図5)。このときのプランジャ20は、前端部の係合フランジ22が筒部11の中間の係合リブ11dに係合して保持位置に位置決めされており、前端のヘッド23と、筒部11の前端部の突部15、15…との間に軟質包装剤SCを保持している。なお、プランジャ20の係合フランジ22は、係合リブ11dの前後の内径d2 の筒部11に対し、僅かな摺動抵抗を生じながら前後に摺動可能であり、中間の段部11cより後方の内径d1 >d2 、内径do >d1 の筒部11に対し、前後にフリーに移動可能である。また、係合フランジ22は、プランジャ20の後端に一定以上の強い押圧力を加えることにより、係合リブ11dを越えて前進させることができる。
【0024】
軟質包装剤SC内の液剤を投与するときは、ノズル部12の噴霧孔14を患部に向けながら、左右の指掛け13、13に人差指、中指を掛け、プランジャ20の後端の外フランジ24を親指で押して片手操作する。なお、操作前のプランジャ20は、係合フランジ22が筒部11の内径d2 の部分にあるため、筒部11から不用意に抜け出ることがない。また、プランジャ20は、筒部11の後端にまで突出する長いガイドリブ21a、21a…を介して筒部11の内面に対面するため、筒部11に対して過大に傾いたり、こじれたりするおそれがない。さらに、筒体21の前方の軟質包装剤SCは、プランジャ20が保持位置にある限り、突起16、16…に接触することがなく、不用意に破れたりすることがない。
【0025】
保持位置のプランジャ20の後端に一定以上の押圧力を加えると、係合フランジ22が筒部11側の係合リブ11dを越えて通過するため、プランジャ20は、前方の軟質包装剤SCを押し潰しながら殆ど瞬時に前進限にまで前進する(図6の矢印方向、図7)。なお、プランジャ20の前進限は、ヘッド23の前端面がノズル部12内のロッド31の後端面に当接することによって規定され、このとき、本体10側の突部15、15…、突起16、16…は、プランジャ20側の環状溝23aに収納される。
【0026】
一方、このようにしてプランジャ20が保持位置を越えて高速前進すると、軟質包装剤SCは、ヘッド23と突部15、15…とに挟まれて弾性変形し、少なくとも1個の突起16の先端に接触して破裂する。そこで、軟質包装剤SC内の液剤は、前方のノズル部12に向けて飛散し、ノズル部12の内面とロッド31との間の隙間を通り、ノズル部12の天面の旋回溝14c、14c…、噴霧孔14の開拡部14bを介して噴霧孔14から外部に霧状に噴出して噴霧することができる(図7)。なお、軟質包装剤SCは、前方の突起16により突き破られて破裂するため、破裂後の包装材によって液剤がノズル部12に向けて飛散することが妨げられるおそれがない。ただし、軟質包装剤SC内の液剤が点鼻薬の場合、噴霧操作に際してノズル部12を鼻孔内に挿入するとよい。また、液剤が消毒薬などである場合、ノズル部12を患部に向けて噴霧操作すればよい。
【他の実施の形態】
【0027】
筒部11の前端部の突起16は、ノズル部12に収納するロッド31の後端に形成することができる(図8、図9)。
【0028】
図8、図9において、突起16を有するロッド31は、導通孔31c、31c…を形成するリング状の連結部31bを介して本体10と一体に成形されている。また、ノズル部12の前部の段付きの嵌合凹部12cには、噴霧孔14を有するノズルチップ14dが圧入され、ノズルチップ14dの天面は、ロッド31の前端面に密着している。なお、ノズルチップ14dの天面には、噴霧孔14の開拡部14bが開口しており(図10)、開拡部14bには、図4(B)と同様の旋回溝14c、14c…が付設形成されている。また、プランジャ20の前端のヘッド23は、前方に開口する円錐形の凹部23bを取り巻くリング状に形成されており、凹部23bは、突起16に対応し、リング状のヘッド23は、突起16のまわりのリング状の連結部31bに対応している。
【0029】
そこで、保持位置にあるプランジャ20の後端に一定以上の押圧力を加えてプランジャ20を前進限にまで高速前進させると(図10の矢印方向、図11)、筒体21の前方の軟質包装剤SCが突起16によって突き破られて破裂し、内部の液剤は、導通孔31c、31c…を経てノズル部12内のノズルチップ14dに流入し、最終的に噴霧孔14から霧状に噴出させることができる。一方、このときのプランジャ20の前進限は、リング状のヘッド23の前面が突起16のまわりのリング状の連結部31bに当接することにより規定されている。
【0030】
以上の説明において、プランジャ20を中間の保持位置に保持するための筒部11側の係合リブ11d、プランジャ20側の係合フランジ22は、それぞれ筒部11の中間部、プランジャ20の前端部に形成するに代えて、他の任意の場所に形成してもよい。たとえば、係合フランジ22を筒体21の先端に設けてもよい。ただし、このときの筒部11、ノズル部12は、同一径に形成し、プランジャ20は、前端部の外形を突部15、15…用の環状溝23a、突起16用の凹部23b付きのストレートに形成することが好ましい。
【0031】
また、本体10のノズル部12は、筒部11に対して斜めに傾けて形成してもよい。液剤の噴霧方向を自在に選択することができる。なお、このときの指掛け13、13は、全体として単純な円形の外フランジ形に形成してもよい。
【0032】
本体10は、ブリッジ17を介して一対の筒部11、11を平行に連結し、プランジャ20は、ブリッジ25を介し、筒部11、11に対応する一対の筒体21、21を平行に連結することができる(図12、図13)。なお、筒部11、11は、前端のノズル部12、12を双方の鼻孔に挿入可能な間隔に設定され、ノズル部12、12は、それぞれ鼻孔に挿入するに適する形状、サイズに設定されている。
【0033】
本体10の筒部11、11の後端の指掛け13、13は、筒部11、11の間において横方向に突出する拡幅部13b、13bを介して連結されており(図12、図14)、各拡幅部13bの前面側にも、滑止め用の突条13a、13aが形成されている。一方、プランジャ20の各筒体21の後端の外フランジ24、24も、筒体21、21の間において横方向に膨出する拡張部24a、24aを介して連結されている。そこで、片手操作によりプランジャ20を本体10に挿入する際には、人差指、中指を指掛け13、13、拡幅部13b、13bのいずれに掛けても、親指により拡張部24a、24a付きの外フランジ24、24を押してプランジャ20を前進させることができる。
【0034】
本体10のブリッジ17は、1枚の板状に形成され、ブリッジ17の後方には、後向きのスリット17aを形成する2重の壁体17b、17bが連続して形成されている(図13、図14)。スリット17aの左右両側は、筒部11、11に向けて開放されており、したがって、プランジャ20の筒体21、21を筒部11、11に挿入すると、プランジャ20の板状のブリッジ25の前端部がスリット17aに進入する。なお、ブリッジ25の前端縁には、断面台形の係合突部25aが形成され、スリット17aの後端部内面には、係合突部25aに対応する低い係合リブ17c、17cが相対向して形成されている。係合突部25aは、係合リブ17c、17cに係合し、本体10に挿入されているプランジャ20を軽く抜止めする。
【0035】
プランジャ20の筒体21、21は、それぞれ前端部の係合フランジ22の前方側を含めてストレートに形成されている(図12、図13)。各筒体21の前端は、外周を斜めに切り欠くとともに、本体10側のロッド31の後端の突起16に対応する円錐形の凹部23bが前端面中央に形成されている。また、本体10の各筒部11の内面には、係合フランジ22と係合してプランジャ20の保持位置を規定する複数の係合リブ11d、11d…が周方向に分散して軸方向の同一位置に形成されている(図13、図15(A))。なお、各係合リブ11dは、図3(B)の周方向に連続する係合リブ11dと同様の断面形状とする(図15(C))。ただし、図15(A)は、本体10の中央縦断面図、同図(B)、(C)は、それぞれ同図(A)のC−C矢視断面図、D−D矢視拡大断面図である。
【0036】
本体10の各筒部11は、保持位置のプランジャ20の前端に相当する位置において、プランジャ20の筒体21の外径とほぼ同径に縮径されている(図13、図16)。また、各筒部11は、筒体21の前方においてさらに縮径され、突起16付きのロッド31を一体に成形するノズル部12に連続している。
【0037】
ロッド31の後部は、後方に開口するリング状の深溝31dを介してノズル部12と区画されている(図15(A)、図16)。また、ロッド31の前部は、ノズルチップ14dを圧入する嵌合凹部12cを介してノズル部12と区画されており、ロッド31の中間部は、円弧状の導通孔31c、31c…を円形に配列するリング状の連結部31bを介してノズル部12と一体に形成されている(図15(A)、(B))。ただし、導通孔31c、31c…は、それぞれ前方の嵌合凹部12c、後方の深溝31dを連通させている。
【0038】
ロッド31の前部の外径は、ノズルチップ14dの内径に適合している(図16)。ロッド31の前端部は、斜めの段部31eを介して縮径されており、段部31eの後方には、複数の軸方向の平面状の切欠き31f、31f…を介し、ロッド31の外周とノズルチップ14dの内周との間に隙間が形成されている。ただし、切欠き31f、31f…は、図4(B)の平面部12a、12a…に倣ってロッド31の外周に等配して形成するものとする。なお、図16には、1面の切欠き31fのみが図示されている。ノズルチップ14dの天面には、図4(B)と同様の旋回溝14c、14c…が形成され、旋回溝14c、14c…の外周縁は、ノズルチップ14dの内周に沿う下向きの細溝14eを介して連結されている。なお、ノズルチップ14dの外周には、抜止め用の滑らかなリブ14fが周方向に形成され、嵌合凹部12cの内面には、リブ14fに対応する凹条12dが形成されている(図15(A))。
【0039】
軟質包装剤SCは、円形のシート状の包装材SC1 上に軟質の包装材SC2 をドーム状に膨出させて付設し(図12)、包装材SC2 の内部に点鼻薬の液剤を封入している。そこで、軟質包装剤SC、SCは、筒部11、11に収納してプランジャ20を保持位置に前進させると、それぞれ包装材SC1 の外縁が筒部11の前部の縮径用の斜めの段部に係合して筒体21の前方に保持され(図13、図16)、突起16に接触することがない。ただし、軟質包装剤SCは、突起16に接触しても不用意に傷付いたり破れたりしない限り、必ずしも包装材SC1 を斜めの段部に係合させて保持する必要がない。
【0040】
そこで、ノズル部12、12の先端を双方の鼻孔に挿入し、保持位置のプランジャ20の後端に一定以上の押圧力を加えてプランジャ20を前進限にまで高速前進させると(図16の矢印方向、図17)、各筒体21の前方の軟質包装剤SCが突起16によって突き破られて破裂し、内部の液剤は、深溝31d、導通孔31c、31c…と、ロッド31の切欠き31f、31f…によるノズルチップ14d内の隙間とを通り、最終的に噴霧孔14から外部に霧状に噴出させることができる。なお、このときのプランジャ20の前進限は、各筒体21のヘッド23の前端面がロッド31の後端面に当接することにより規定されている。
【0041】
以上の説明において、液剤を封入する軟質包装剤SCは、種々に変形可能である。たとえば、円形のシート状の包装材SC1 の上下に軟質の包装材SC2 、SC2 をドーム状に膨出させて付設してもよく(図18(A))、シート状の包装材SC1 上に軟質の包装材SC2 を円錐台形状に膨出させてもよい(同図(B))。また、軟質の包装材SC2 による袋体の上下をシールしてもよく(同図(C))、軟質の包装材SC2 の三方をシールして袋体としてもよい(同図(D))。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明は、点鼻薬や、口臭薬、消毒薬などの液剤を噴霧して投与するために、使い捨て用の用途に対して広く好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
SC…軟質包装剤
10…本体
11…筒部
12…ノズル部
14…噴霧孔
15…突部
16…突起
20…プランジャ
21…筒体
31…ロッド
特許出願人 伸晃化学株式会社
【技術分野】
【0001】
この発明は、鼻孔内に点鼻薬を噴霧して投与するときなどに使用する噴霧容器に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンジバレルとプランジャとを組み合わせる使い捨ての点鼻薬容器が知られている(特許文献1)。
【0003】
シリンジバレルの前端には、噴霧孔が開口されており、シリンジバレル内には、センタストッパと、所定量の薬液と、ピストン付きのプランジャとが収納され、薬液は、センタストッパとピストンとによってシリンジバレルに封入されている。そこで、プランジャを介してピストンを前進させると、薬液とともにセンタストッパが前進し、薬液を噴霧孔に流出させる導入路を開放して噴霧孔から薬液を霧状に噴出させることができる。なお、ピストンの前進速度を高めて薬液を確実に霧状に噴出させるために、プランジャを一時的に保持する保持機構を設け、プランジャを一定の圧力以上に強く押すと、保持機構を乗り越えてプランジャがピストンとともに殆ど瞬時に前進限にまで前進移動するように工夫されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再表WO2009/057572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、シリンジバレルに薬液を充填するために真空充填設備のような特殊な設備を必要とする上、シリンジバレル内を摺動移動するセンタストッパ、ピストンを介して薬液を封止するので、所要部品点数が多くなり、使い捨ての用途に適用し難くなりがちであるという問題があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、液剤を封入した軟質包装剤を使用することによって、特殊な設備を要することなく、所要部品点数を最少に抑え、使い捨ての用途にも好適に適用し得る噴霧容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、噴霧孔を有するノズル部を筒部の前端に形成する本体と、筒部に挿入する筒体を備えるプランジャとを備えてなり、筒部の前端部には、後向きの突起を設け、筒部は、プランジャを保持位置に前進させて筒体の前方に軟質包装剤を保持し、保持位置を越えてプランジャを前進限にまで前進させると、突起により軟質包装剤が突き破られて破裂し、軟質包装剤の液剤が噴霧孔から霧状に噴出することをその要旨とする。なお、この発明において、「軟質包装剤」とは、ゼラチンを主成分とする水溶性の軟カプセルに油性の液剤を封入する軟カプセル剤の他、不溶性のプラスチックフィルムなどの軟質の包装材に水性または油性の液剤を封入する包装製剤を含んでいうものとする。
【0008】
なお、ノズル部には、本体と別体のロッドを収納し、突起は、ロッドの後方においてロッドの周囲に配置してもよく、ノズル部には、本体と一体のロッドを収納し、突起は、ロッドの後端に形成してもよく、筒部の前端部には、軟質包装剤を支持する突部を後向きに設けてもよい。
【0009】
また、本体は、一対の筒部を平行に連結してノズル部の先端を双方の鼻孔に挿入可能とし、プランジャは、一対の筒体を平行に連結して筒部に対応させることができる。
【発明の効果】
【0010】
かかる発明の構成によるときは、本体の筒部には、軟質包装剤を収納してプランジャの筒体を挿入し、プランジャを中間の保持位置に前進させて軟質包装剤を筒体の前方に保持することができる。そこで、プランジャの後端を手指で強く押して一定以上の押圧力を加えると、プランジャは、保持位置を越えて前進限にまで殆ど瞬時に高速前進し、筒部の前端部の後向きの突起により軟質包装剤が突き破られて破裂し、内部の液剤を筒部の前端のノズル部の噴霧孔から外部に霧状に噴出させることができる。すなわち、液剤を封入する軟質包装剤は、格別なストッパやピストンなどの封止部材を要することなく、筒部に安定に収納して保持することができ、したがって、所要部品点数を最少に抑えるとともに、特殊な充填用の設備を使用する必要もない。ただし、軟質包装剤には、1回分の投与量相当の所定量の液剤を封入するものとする。
【0011】
噴霧孔からの液剤は、プランジャが前進限に到達するときの前進速度や、軟質包装剤が破裂するときの圧力などにより噴霧の状態が変わり得るが、これらのパラメータは、プランジャが保持位置を越えるときのプランジャの所要押圧力や、軟質包装剤の強度などによって決まり、操作者の操作の仕方に大きく影響されることがない。すなわち、液剤は、誰でも一定の噴霧が可能である。また、この発明は、軟質包装剤を筒部に収納してプランジャの筒体を保持位置にまで挿入して全体を包装することにより、単回使用の使い捨ての用途に使用することができる。なお、軟質包装剤を別包装することにより、製剤の安定性を保証することも可能である。ただし、軟質包装剤に封入する液剤は、鼻孔内に噴霧する点鼻薬の他、口腔内に噴霧する口内炎薬や口臭薬、傷口などに噴霧する消毒薬などであってもよい。
【0012】
中空のノズル部の軸心上にロッドを収納すると、ノズル部の実効断面積を小さく絞り、ノズル部を前向きに流れる液剤の流速を高めて噴霧孔からの液剤を一層良好に霧化して噴霧することができる。一方、このようなロッドは、ノズル部を含む本体と別体、一体のいずれとしてもよく、軟質包装剤を破裂させる突起は、前者の場合、ロッドの後方においてロッドの周囲に配置し、後者の場合、ロッドの後端に形成すればよい。なお、筒部の前端部に設ける後向きの突部は、保持位置にあるプランジャの前方の筒部内の軟質包装剤を支持し、プランジャが保持位置を通過して突部上の軟質包装剤を適切に弾性変形させない限り、突起が軟質包装剤に接触したり、それによって軟質包装剤を不用意に傷付けたりすることがない。
【0013】
一対の筒部を有する本体と、一対の筒体を有するプランジャとを組み合わせれば、プランジャを前進させることにより、双方の筒部のノズル部から液剤を同時に噴出させ、双方の鼻孔に対する投与を一挙に完了させることができる。ただし、このときの液剤は、点鼻薬である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】全体分解斜視図
【図2】全体組立縦断面図
【図3】本体の構成説明図(1)
【図4】本体の構成説明図(2)
【図5】一部破断要部拡大斜視図
【図6】図2の要部拡大図
【図7】要部拡大動作図
【図8】他の実施の形態を示す図5相当図
【図9】図8のY−Y矢視相当拡大断面図
【図10】他の実施の形態を示す図6相当図
【図11】他の実施の形態を示す図7相当図
【図12】他の実施の形態を示す図1相当図
【図13】図12の全体組立縦断面図
【図14】図13のB−B矢視相当断面図
【図15】図12の本体の構成説明図
【図16】図13の要部拡大図
【図17】図13の要部拡大動作図
【図18】軟質包装剤の斜視説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0016】
噴霧容器は、筒部11の前端にノズル部12を形成する本体10と、筒部11に挿入する筒体21を備えるプランジャ20とを備えてなる(図1、図2)。なお、本体10のノズル部12には、ロッド31が収納され、筒部11には、筒体21の前方に軟質包装剤SCを収納することができる。
【0017】
本体10の筒部11は、前端部を滑らかに縮径するとともに、小径のノズル部12が筒部11の前端に同一軸心上に突設されている。筒部11の後端部には、左右対称の羽根状の指掛け13、13が形成され、滑らかに湾曲する各指掛け13の前面側には、滑止め用の突条13a、13a…が形成されている。左右の指掛け13、13は、それぞれ筒部11の外周に対して滑らかに連続し、筒部11を挟んで互いに連続するように形成されている。
【0018】
筒部11の後端部は、内径do の最大径部11aとして、指掛け13、13の後面側にまで突出している(図3(A))。筒部11は、後端部の最大径部11aから前方のノズル部12に向けて、大小の斜めの段部11b、11cを介して内径d1 <do 、内径d2 <d1 に順に縮径され、前端部においてノズル部12に滑らかに連続している。なお、筒部11の前半部の内径d2 の部分には、前方側に緩く、後方側に急な断面非対称山形のリング状の係合リブ11dが段部11cに近い位置に周方向に形成されており(図3(A)、(B))、係合リブ11dの頂部は、滑らかに丸められている。ただし、係合リブ11dは、筒部11の周方向に連続させるに代えて、周方向に分断して形成してもよい。なお、図3(A)は、本体10の全体縦断面図であり、図3(B)は、図3(A)の要部拡大図である。
【0019】
ノズル部12の前端面には、浅い皿状の凹部14aを介して噴霧孔14がノズル部12の軸心C上に形成されている(図4(A))。ただし、図4(A)、(B)は、それぞれ図3(A)の要部拡大図、X−X矢視相当拡大断面図である。
【0020】
噴霧孔14は、ノズル部12の内部に向けて円錐台形に開拡しており、ノズル部12の天面には、噴霧孔14の開拡部14bの外周に向けて斜めの旋回溝14c、14c…が形成されている(図4(A)、(B))。また、ノズル部12の内周面には、中間部から前方の天面側に向けて、幅狭の平面部12a、12a…が周方向に等配されて形成され、ノズル部12の後部内面には、滑らかな内向きのリング状のリブ12bが形成されている。ノズル部12の後端は、筒部11の前端部において、筒部11内に開口するとともに、ブロック状の突部15、15…と、三角錐状の先鋭な突起16、16…とが交互に円周状に等配されて後向きに配列されている。各突部15、突起16は、ほぼ同一高さに揃えられている。
【0021】
プランジャ20は、筒体21の前端に係合フランジ22、柱状のヘッド23を同軸状に形成し、後端に外フランジ24を形成している(図1、図2)。筒体21の外周には、軸方向の長いガイドリブ21a、21a…が90°ごとに形成されており、係合フランジ22とヘッド23との間には、前方に向けて滑らかに湾曲するリング状の連結部22aと、ヘッド23のまわりを囲み、前方に向けて開口する環状溝23aとが形成されている。
【0022】
ロッド31は、円柱体の外周中間部に四角い抜止め用の突部31a、31a…を90°ごとに配置して形成されている。そこで、ロッド31は、筒部11側からノズル部12に押し込むようにしてノズル部12の軸心C上に収納することができる(図2、図5)。なお、ロッド31の前端は、ノズル部12の天面に当接し、ロッド31の前半部は、ノズル部12の内周の平面部12a、12a…に接するようにして位置決めされ(図5、図4(B)の二点鎖線)、ロッド31は、突部31a、31a…がノズル部12の後部のリブ12bに係合して抜止めされている。また、筒部11の前端部の突部15、15…、突起16、16…は、ロッド31の後方においてロッド31の周囲に配置されている。
【0023】
本体10の筒部11には、所定の液剤の所定量を軟質の包装材に封入する軟質包装剤SCを収納し、プランジャ20の筒体21を筒部11の後部から挿入して、使用に備えて待機する(図2、図5)。このときのプランジャ20は、前端部の係合フランジ22が筒部11の中間の係合リブ11dに係合して保持位置に位置決めされており、前端のヘッド23と、筒部11の前端部の突部15、15…との間に軟質包装剤SCを保持している。なお、プランジャ20の係合フランジ22は、係合リブ11dの前後の内径d2 の筒部11に対し、僅かな摺動抵抗を生じながら前後に摺動可能であり、中間の段部11cより後方の内径d1 >d2 、内径do >d1 の筒部11に対し、前後にフリーに移動可能である。また、係合フランジ22は、プランジャ20の後端に一定以上の強い押圧力を加えることにより、係合リブ11dを越えて前進させることができる。
【0024】
軟質包装剤SC内の液剤を投与するときは、ノズル部12の噴霧孔14を患部に向けながら、左右の指掛け13、13に人差指、中指を掛け、プランジャ20の後端の外フランジ24を親指で押して片手操作する。なお、操作前のプランジャ20は、係合フランジ22が筒部11の内径d2 の部分にあるため、筒部11から不用意に抜け出ることがない。また、プランジャ20は、筒部11の後端にまで突出する長いガイドリブ21a、21a…を介して筒部11の内面に対面するため、筒部11に対して過大に傾いたり、こじれたりするおそれがない。さらに、筒体21の前方の軟質包装剤SCは、プランジャ20が保持位置にある限り、突起16、16…に接触することがなく、不用意に破れたりすることがない。
【0025】
保持位置のプランジャ20の後端に一定以上の押圧力を加えると、係合フランジ22が筒部11側の係合リブ11dを越えて通過するため、プランジャ20は、前方の軟質包装剤SCを押し潰しながら殆ど瞬時に前進限にまで前進する(図6の矢印方向、図7)。なお、プランジャ20の前進限は、ヘッド23の前端面がノズル部12内のロッド31の後端面に当接することによって規定され、このとき、本体10側の突部15、15…、突起16、16…は、プランジャ20側の環状溝23aに収納される。
【0026】
一方、このようにしてプランジャ20が保持位置を越えて高速前進すると、軟質包装剤SCは、ヘッド23と突部15、15…とに挟まれて弾性変形し、少なくとも1個の突起16の先端に接触して破裂する。そこで、軟質包装剤SC内の液剤は、前方のノズル部12に向けて飛散し、ノズル部12の内面とロッド31との間の隙間を通り、ノズル部12の天面の旋回溝14c、14c…、噴霧孔14の開拡部14bを介して噴霧孔14から外部に霧状に噴出して噴霧することができる(図7)。なお、軟質包装剤SCは、前方の突起16により突き破られて破裂するため、破裂後の包装材によって液剤がノズル部12に向けて飛散することが妨げられるおそれがない。ただし、軟質包装剤SC内の液剤が点鼻薬の場合、噴霧操作に際してノズル部12を鼻孔内に挿入するとよい。また、液剤が消毒薬などである場合、ノズル部12を患部に向けて噴霧操作すればよい。
【他の実施の形態】
【0027】
筒部11の前端部の突起16は、ノズル部12に収納するロッド31の後端に形成することができる(図8、図9)。
【0028】
図8、図9において、突起16を有するロッド31は、導通孔31c、31c…を形成するリング状の連結部31bを介して本体10と一体に成形されている。また、ノズル部12の前部の段付きの嵌合凹部12cには、噴霧孔14を有するノズルチップ14dが圧入され、ノズルチップ14dの天面は、ロッド31の前端面に密着している。なお、ノズルチップ14dの天面には、噴霧孔14の開拡部14bが開口しており(図10)、開拡部14bには、図4(B)と同様の旋回溝14c、14c…が付設形成されている。また、プランジャ20の前端のヘッド23は、前方に開口する円錐形の凹部23bを取り巻くリング状に形成されており、凹部23bは、突起16に対応し、リング状のヘッド23は、突起16のまわりのリング状の連結部31bに対応している。
【0029】
そこで、保持位置にあるプランジャ20の後端に一定以上の押圧力を加えてプランジャ20を前進限にまで高速前進させると(図10の矢印方向、図11)、筒体21の前方の軟質包装剤SCが突起16によって突き破られて破裂し、内部の液剤は、導通孔31c、31c…を経てノズル部12内のノズルチップ14dに流入し、最終的に噴霧孔14から霧状に噴出させることができる。一方、このときのプランジャ20の前進限は、リング状のヘッド23の前面が突起16のまわりのリング状の連結部31bに当接することにより規定されている。
【0030】
以上の説明において、プランジャ20を中間の保持位置に保持するための筒部11側の係合リブ11d、プランジャ20側の係合フランジ22は、それぞれ筒部11の中間部、プランジャ20の前端部に形成するに代えて、他の任意の場所に形成してもよい。たとえば、係合フランジ22を筒体21の先端に設けてもよい。ただし、このときの筒部11、ノズル部12は、同一径に形成し、プランジャ20は、前端部の外形を突部15、15…用の環状溝23a、突起16用の凹部23b付きのストレートに形成することが好ましい。
【0031】
また、本体10のノズル部12は、筒部11に対して斜めに傾けて形成してもよい。液剤の噴霧方向を自在に選択することができる。なお、このときの指掛け13、13は、全体として単純な円形の外フランジ形に形成してもよい。
【0032】
本体10は、ブリッジ17を介して一対の筒部11、11を平行に連結し、プランジャ20は、ブリッジ25を介し、筒部11、11に対応する一対の筒体21、21を平行に連結することができる(図12、図13)。なお、筒部11、11は、前端のノズル部12、12を双方の鼻孔に挿入可能な間隔に設定され、ノズル部12、12は、それぞれ鼻孔に挿入するに適する形状、サイズに設定されている。
【0033】
本体10の筒部11、11の後端の指掛け13、13は、筒部11、11の間において横方向に突出する拡幅部13b、13bを介して連結されており(図12、図14)、各拡幅部13bの前面側にも、滑止め用の突条13a、13aが形成されている。一方、プランジャ20の各筒体21の後端の外フランジ24、24も、筒体21、21の間において横方向に膨出する拡張部24a、24aを介して連結されている。そこで、片手操作によりプランジャ20を本体10に挿入する際には、人差指、中指を指掛け13、13、拡幅部13b、13bのいずれに掛けても、親指により拡張部24a、24a付きの外フランジ24、24を押してプランジャ20を前進させることができる。
【0034】
本体10のブリッジ17は、1枚の板状に形成され、ブリッジ17の後方には、後向きのスリット17aを形成する2重の壁体17b、17bが連続して形成されている(図13、図14)。スリット17aの左右両側は、筒部11、11に向けて開放されており、したがって、プランジャ20の筒体21、21を筒部11、11に挿入すると、プランジャ20の板状のブリッジ25の前端部がスリット17aに進入する。なお、ブリッジ25の前端縁には、断面台形の係合突部25aが形成され、スリット17aの後端部内面には、係合突部25aに対応する低い係合リブ17c、17cが相対向して形成されている。係合突部25aは、係合リブ17c、17cに係合し、本体10に挿入されているプランジャ20を軽く抜止めする。
【0035】
プランジャ20の筒体21、21は、それぞれ前端部の係合フランジ22の前方側を含めてストレートに形成されている(図12、図13)。各筒体21の前端は、外周を斜めに切り欠くとともに、本体10側のロッド31の後端の突起16に対応する円錐形の凹部23bが前端面中央に形成されている。また、本体10の各筒部11の内面には、係合フランジ22と係合してプランジャ20の保持位置を規定する複数の係合リブ11d、11d…が周方向に分散して軸方向の同一位置に形成されている(図13、図15(A))。なお、各係合リブ11dは、図3(B)の周方向に連続する係合リブ11dと同様の断面形状とする(図15(C))。ただし、図15(A)は、本体10の中央縦断面図、同図(B)、(C)は、それぞれ同図(A)のC−C矢視断面図、D−D矢視拡大断面図である。
【0036】
本体10の各筒部11は、保持位置のプランジャ20の前端に相当する位置において、プランジャ20の筒体21の外径とほぼ同径に縮径されている(図13、図16)。また、各筒部11は、筒体21の前方においてさらに縮径され、突起16付きのロッド31を一体に成形するノズル部12に連続している。
【0037】
ロッド31の後部は、後方に開口するリング状の深溝31dを介してノズル部12と区画されている(図15(A)、図16)。また、ロッド31の前部は、ノズルチップ14dを圧入する嵌合凹部12cを介してノズル部12と区画されており、ロッド31の中間部は、円弧状の導通孔31c、31c…を円形に配列するリング状の連結部31bを介してノズル部12と一体に形成されている(図15(A)、(B))。ただし、導通孔31c、31c…は、それぞれ前方の嵌合凹部12c、後方の深溝31dを連通させている。
【0038】
ロッド31の前部の外径は、ノズルチップ14dの内径に適合している(図16)。ロッド31の前端部は、斜めの段部31eを介して縮径されており、段部31eの後方には、複数の軸方向の平面状の切欠き31f、31f…を介し、ロッド31の外周とノズルチップ14dの内周との間に隙間が形成されている。ただし、切欠き31f、31f…は、図4(B)の平面部12a、12a…に倣ってロッド31の外周に等配して形成するものとする。なお、図16には、1面の切欠き31fのみが図示されている。ノズルチップ14dの天面には、図4(B)と同様の旋回溝14c、14c…が形成され、旋回溝14c、14c…の外周縁は、ノズルチップ14dの内周に沿う下向きの細溝14eを介して連結されている。なお、ノズルチップ14dの外周には、抜止め用の滑らかなリブ14fが周方向に形成され、嵌合凹部12cの内面には、リブ14fに対応する凹条12dが形成されている(図15(A))。
【0039】
軟質包装剤SCは、円形のシート状の包装材SC1 上に軟質の包装材SC2 をドーム状に膨出させて付設し(図12)、包装材SC2 の内部に点鼻薬の液剤を封入している。そこで、軟質包装剤SC、SCは、筒部11、11に収納してプランジャ20を保持位置に前進させると、それぞれ包装材SC1 の外縁が筒部11の前部の縮径用の斜めの段部に係合して筒体21の前方に保持され(図13、図16)、突起16に接触することがない。ただし、軟質包装剤SCは、突起16に接触しても不用意に傷付いたり破れたりしない限り、必ずしも包装材SC1 を斜めの段部に係合させて保持する必要がない。
【0040】
そこで、ノズル部12、12の先端を双方の鼻孔に挿入し、保持位置のプランジャ20の後端に一定以上の押圧力を加えてプランジャ20を前進限にまで高速前進させると(図16の矢印方向、図17)、各筒体21の前方の軟質包装剤SCが突起16によって突き破られて破裂し、内部の液剤は、深溝31d、導通孔31c、31c…と、ロッド31の切欠き31f、31f…によるノズルチップ14d内の隙間とを通り、最終的に噴霧孔14から外部に霧状に噴出させることができる。なお、このときのプランジャ20の前進限は、各筒体21のヘッド23の前端面がロッド31の後端面に当接することにより規定されている。
【0041】
以上の説明において、液剤を封入する軟質包装剤SCは、種々に変形可能である。たとえば、円形のシート状の包装材SC1 の上下に軟質の包装材SC2 、SC2 をドーム状に膨出させて付設してもよく(図18(A))、シート状の包装材SC1 上に軟質の包装材SC2 を円錐台形状に膨出させてもよい(同図(B))。また、軟質の包装材SC2 による袋体の上下をシールしてもよく(同図(C))、軟質の包装材SC2 の三方をシールして袋体としてもよい(同図(D))。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明は、点鼻薬や、口臭薬、消毒薬などの液剤を噴霧して投与するために、使い捨て用の用途に対して広く好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
SC…軟質包装剤
10…本体
11…筒部
12…ノズル部
14…噴霧孔
15…突部
16…突起
20…プランジャ
21…筒体
31…ロッド
特許出願人 伸晃化学株式会社
【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧孔を有するノズル部を筒部の前端に形成する本体と、前記筒部に挿入する筒体を備えるプランジャとを備えてなり、前記筒部の前端部には、後向きの突起を設け、前記筒部は、前記プランジャを保持位置に前進させて前記筒体の前方に軟質包装剤を保持し、保持位置を越えて前記プランジャを前進限にまで前進させると、前記突起により軟質包装剤が突き破られて破裂し、軟質包装剤の液剤が前記噴霧孔から霧状に噴出することを特徴とする噴霧容器。
【請求項2】
前記ノズル部には、前記本体と別体のロッドを収納し、前記突起は、前記ロッドの後方において前記ロッドの周囲に配置することを特徴とする請求項1記載の噴霧容器。
【請求項3】
前記ノズル部には、前記本体と一体のロッドを収納し、前記突起は、前記ロッドの後端に形成することを特徴とする請求項1記載の噴霧容器。
【請求項4】
前記筒部の前端部には、軟質包装剤を支持する突部を後向きに設けることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載の噴霧容器。
【請求項5】
前記本体は、一対の前記筒部を平行に連結して前記ノズル部の先端を双方の鼻孔に挿入可能とし、前記プランジャは、一対の前記筒体を平行に連結して前記筒部に対応させることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか記載の噴霧容器。
【請求項1】
噴霧孔を有するノズル部を筒部の前端に形成する本体と、前記筒部に挿入する筒体を備えるプランジャとを備えてなり、前記筒部の前端部には、後向きの突起を設け、前記筒部は、前記プランジャを保持位置に前進させて前記筒体の前方に軟質包装剤を保持し、保持位置を越えて前記プランジャを前進限にまで前進させると、前記突起により軟質包装剤が突き破られて破裂し、軟質包装剤の液剤が前記噴霧孔から霧状に噴出することを特徴とする噴霧容器。
【請求項2】
前記ノズル部には、前記本体と別体のロッドを収納し、前記突起は、前記ロッドの後方において前記ロッドの周囲に配置することを特徴とする請求項1記載の噴霧容器。
【請求項3】
前記ノズル部には、前記本体と一体のロッドを収納し、前記突起は、前記ロッドの後端に形成することを特徴とする請求項1記載の噴霧容器。
【請求項4】
前記筒部の前端部には、軟質包装剤を支持する突部を後向きに設けることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載の噴霧容器。
【請求項5】
前記本体は、一対の前記筒部を平行に連結して前記ノズル部の先端を双方の鼻孔に挿入可能とし、前記プランジャは、一対の前記筒体を平行に連結して前記筒部に対応させることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか記載の噴霧容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−250768(P2012−250768A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−79914(P2012−79914)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【出願人】(000190068)伸晃化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【出願人】(000190068)伸晃化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
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