説明

噴霧摂取可能な液状食品組成物及びその製造方法

【課題】本発明は、従来から摂取されている様々な天然食材から安全に有効成分が抽出されるとともに噴霧ノズルの目詰まりが発生しない噴霧摂取可能な液状食品組成物及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】天然食材の微粉末を水に懸濁して上清及び沈殿物を分離する水抽出工程と、水抽出工程で分離された沈殿物を温水に懸濁して上清及び沈殿物を分離する温水抽出工程と、温水抽出工程で分離された沈殿物をアルコールに懸濁して上清及び沈殿物を分離するアルコール抽出工程と、前記各工程で分離された上清を混合して液状食品を調製する調製工程とを備える製造方法で、調製工程において、天然食材から抽出して作成された賦形剤を添加するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然食材から抽出された栄養成分を噴霧により摂取可能とする液状食品組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運動不足、不適切な食事、喫煙、飲酒、食生活の欧米化、過度なストレスなどの生活環境変化、加齢や遺伝子な体質による誘因によって、心臓病、高血圧症、糖尿病、癌、高脂血症などの生活習慣病が問題とされている。
【0003】
生活習慣病は、偏食や過食などの不規則な食生活、運動不足や睡眠不足、ストレスが続く毎日、タバコや酒の飲みすぎ等の悪い習慣を長期間にわたって続けていると、長期間体に負担がかかった状態が継続してその結果さまざまな病気を発症したり進行したりする病気であるが、こうした生活習慣病の予防・改善及び健康に対する関心の高まりから食生活を改善するための補助食品として健康食品が注目されている。また、高齢化への対策や美容の観点からも健康食品が注目されており、ある調査によれば、国民の約40%が、疲労回復、健康増進、体質改善、肥満解消、病気予防等の理由で健康食品を摂取している。
【0004】
健康食品の種類は多種多様であるが、平成11年6月28日に公布された「日本人の栄養素要領の改訂について」(公衛審第13号)では、日本人に必要な栄養素の摂取量を策定して「日本人の栄養所要量」として公表しており、健康食品を摂取する上で目安となるものである。
【0005】
健康食品の主な摂取方法は、カプセル状、錠剤状、液状、顆粒状、粉末状に形成したものを直接摂取する方法、水、清涼飲料水又はお茶等の液体に混合して摂取する方法、食品に混合して摂取する方法などが行われている。これ以外にも例えば、特許文献1では、ビタミンおよび/またはミネラルを人体に導入するための組成物としてスプレイ可能な組成物を用い口内に噴霧により投与する点が記載されている。また、特許文献2では、I−メントール及び/又はI−カルボンと、茶ポリフェノールとを含有する口中スプレー組成物が記載されており、口臭のマスキング効果や気分のリフレッシュ効果を向上させるために噴霧により口内に投与される。また、特許文献3では、抗菌活性を有する飲食可能なポリフェノール、ポリフェノールの効力を維持するための飲食可能な抗酸化物質及び口腔内、咽頭内及び胃腸内の細菌による代謝産物として酸を産生しない飲食可能な糖類を含有する液状の口腔スプレー用組成物が記載されており、口腔内及び咽頭内に生息する感染菌に対してスプレーにより噴霧して口内投与される。
【特許文献1】特許第2969532号公報
【特許文献2】特許第2988928号公報
【特許文献3】特開2003−55179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1では、口内に噴霧により直接投与することで有効成分を舌下吸収させることができ、胃や腸での吸収よりも効率よく吸収させることができる。また、特許文献2及び3では、噴霧により口内全体に有効成分が拡がってその効果を一層高めることが可能となる。
【0007】
しかしながら、噴霧により有効成分を投与する場合噴霧ノズルの目詰まりが発生しないようにするために噴霧する液体は制約を受けざるを得ない。噴霧ノズルの目詰まりが発生しないように様々な化学処理を施すことが考えられるが、健康食品にこうした化学処理された成分が含まれることは人体に対してどのような影響が及ぶのかわからないため安易に用いられるべきではない。
【0008】
そこで、本発明は、従来から摂取されている様々な天然食材から安全に有効成分が抽出されるとともに噴霧ノズルの目詰まりが発生しない噴霧摂取可能な液状食品組成物及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る噴霧摂取可能な液状食品組成物の製造方法は、天然食材の微粉末を水に懸濁して上清及び沈殿物を分離する水抽出工程と、水抽出工程で分離された沈殿物を温水に懸濁して上清及び沈殿物を分離する温水抽出工程と、温水抽出工程で分離された沈殿物をアルコールに懸濁して上清及び沈殿物を分離するアルコール抽出工程と、前記各工程で分離された上清を混合して液状食品を調製する調製工程とを備えたことを特徴とする。さらに、前記調製工程において、天然食材から抽出して作成された賦形剤を添加することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る噴霧摂取可能な液状食品組成物は、天然食材の水抽出液と、前記天然食材の温水抽出液と、前記天然食材のアルコール抽出液とを含むことを特徴とする。さらに、天然食材から抽出して作成された賦形剤が添加されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上のような構成を備えることで、天然食材から水、温水及びアルコールにより順次抽出するので、天然食材に含まれる栄養成分を安全に抽出して液状食品を製造することができ、さらに、3つの溶媒で3段階に分けて抽出を行うので、熱やアルコールに弱い物質については予め水抽出し、水で抽出できない物質については温水やアルコールで抽出でき、天然食材に含まれる幅広い栄養成分を損なうことなく抽出した栄養豊かな液状食品を得ることができる。したがって、本発明に係る液状食品組成物を用いて噴霧摂取により口内投与を行えば、舌下吸収により効率よく栄養分が体内に吸収されるとともに天然食材のみから安全に抽出された栄養分で構成されているため、優れた健康食品として機能する。
【0012】
また抽出された上清を混合するので、噴霧ノズルに目詰まりするような固形物等が除去されて目詰まりすることがほとんどなくなり繰り返し摂取する場合でも持続して噴霧摂取可能な液状食品組成物を得ることができる。
【0013】
そして、本発明は、ほとんどの種類の天然食材に対して適用できることから、健康食品として優れているだけでなく、何らかの疫病、怪我、加齢で食欲が減退し栄養素が経口摂取できない場合にも様々な種類の天然食材の栄養成分を舌下吸収により直接毛細血管に吸収させることができ、非常に効果的な摂取を行うことが可能となる。
【0014】
また、天然食材から抽出して作成された賦形剤を添加することで、液状食品組成物を沈殿物の発生しない安定した状態に保つことができ、より噴霧摂取しやすくなる。また、天然食材から抽出された賦形剤を用いているので、食品としての安全性も確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0016】
本願発明が適用可能な天然食材は特に限定されないが、天然食材から抽出される栄養成分としては、コエンザイムQ10、DHA(ドコサヘキサエン酸)、DPA(ドコサペンタエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、L−カルニチン、MSM(メチルサルフォニルメタン)、αリポ酸、β−カロチン、β−グルカン、亜鉛、青汁、アガリクス、アセロラ、アミノ酸、イチョウ葉エキス、ウコン、海藻エキス、カテキン、カバノアナタケ、カルシウム、ガルシニア、キチン・キトサン、キャッツクロウ、グルコサミン、黒酢、クロム、食物繊維、大豆イソフラボン、鉄分、梅肉エキス、パン酵母エキス、ヒアルロン酸、ビタミン類、フコイダン、ブルーベリーエキス、プロポリス、マカ、マグネシウム、ルチン、ローヤルゼリー、キシリトールといったものが挙げられる。表1は、これらの栄養成分が抽出される天然食材例を示している。
【0017】
【表1】

【0018】
こうした天然食材を用いる場合には、水等に懸濁可能な程度に粒径が2.5μm〜3μmの微粉末にするとよい。天然食材を微粉末にする方法としては、公知の食材微粉砕法を用いることができるが、粉砕の際の熱による影響を避けるためには冷凍粉砕法が好適である。
【0019】
水抽出工程では、蒸留水又は日本薬局方に定められた精製水を用いて常温で抽出を行うとよく、天然食材の微粉末の量に対して懸濁可能な十分の量の水を用いる。微粉末の懸濁にはミキサー等の撹拌器を使用するとよい。
【0020】
温水抽出工程では、水抽出工程と同様に蒸留水又は精製水を用いて70℃〜80℃に加熱して抽出を行う。天然食材の微粉末の量に対して懸濁可能な十分の量の温水を用い、微粉末の懸濁にはミキサー等の撹拌器を使用するとよい。
【0021】
アルコール抽出工程では、エタノール又は含水エタノール等のアルコールを用いて常温で抽出を行う。天然食材の微粉末の量に対して懸濁可能な十分の量のアルコールを用い、微粉末の懸濁にはミキサー等の撹拌器を使用するとよい。
【0022】
調製工程では、上記各工程で分離された上清を適量ずつ用いて混合し液状食品組成物を調製する。各工程の上清の混合割合は天然食材に応じて設定すればよい。混合する際には、天然食材から抽出して作成された賦形剤を添加するとよい。賦形剤としては、豚皮由来コラーゲン、キシリトール、アミノ酸等が挙げられる。添加量としては、0.1mg/ミリリットル〜0.3mg/ミリリットルが好ましい。
【実施例】
【0023】
<微粉砕工程>
まず、天然食材として大麦若葉を用い、軽くスライスして−195℃の液体窒素中に投入する。1分後凍結した食材をパワーカッティングミル(株式会社レッチェ製SM2000)により250μmの大きさに粉砕する。粉砕物を再度−195℃の液体窒素中に投入して1分間凍結させる。再凍結した粉砕物をジェットミル(日本ニューマティック工業株式会社製LJ型)により粒径2.5μmになるように微粉砕して微粉末を作成する。
【0024】
<水抽出工程>
作成された微粉末4gを精製水100ミリリットルに懸濁させた後、ミキサー(回転数12,000rpm)を使用して1分間攪拌し、懸濁液を得た。30分間室温に放置した後、吸引ろ過(ワットマンNo.4)により上清(水抽出物)と沈殿に分離した。
【0025】
<温水抽出工程>
水抽出工程において分離された沈殿に80℃の温水100ミリリットルを入れて懸濁させた後、ミキサー(回転数12,000rpm)を使用して1分間攪拌し、懸濁液を得た。30分間室温に放置した後、吸引ろ過(ワットマンNo.4)により上清(温水抽出物)と沈殿に分離した。抽出操作では、懸濁液を80℃に加温しながら行った。
【0026】
<アルコール抽出工程>
温水抽出工程において分離された沈殿にエタノール100ミリリットルを入れて常温で懸濁させた後、ミキサー(回転数12,000rpm)を使用して1分間攪拌し、懸濁液を得た。30分間室温に放置した後、吸引ろ過(ワットマンNo.4を二重使用)により上清(アルコール抽出物)と沈殿に分離した。
【0027】
<調製工程>
上記各工程で得られた上清をそれぞれ2ミリリットルを用いて、容器内で混合した。混合液に、豚皮由来コラーゲンを10mg/ミリリットルになるように添加し溶解させた。
【0028】
調製工程で得られた溶液を室温で2時間放置し、沈殿の生成を判定することにより溶液の安定性を見た。沈殿の生成は目視により判定した結果、再沈殿は目視では確認できなかった。
【0029】
調製工程で得られた溶液をスプレー容器(25ミリリットル;1プッシュ0.166ミリリットル)に充填したものを10本用意した。各容器を150プッシュ行って(充填量をすべて噴霧した場合)その間の噴霧ノズルの状態をチェックしたが、噴霧ノズルに目詰まりなどのトラブルは発生せず、すべてのスプレー容器において最後まで良好な噴霧状態を維持することができた。
【0030】
以上説明したように、本発明では、水、温水及びアルコールにより段階的に抽出することで従来から摂取されている様々な食材から安全に栄養成分を抽出して液状食品組成物を製造することができ、製造された液状食品組成物は、噴霧により口内投与することで栄養成分を舌下吸収して効率よく人体に吸収させることができる。また、繰り返し噴霧しても噴霧ノズルに目詰まりが生じることがなく、良好な噴霧状態を安定して継続することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る噴霧摂取可能な液状食品組成物は、天然食材から安全な抽出方法により製造されたもので、健康食品や食事を摂れない患者用食品に好適であり、携帯用のスプレー容器に充填して使用すれば気軽に摂取できる補助食品としても用いることができ、幅広い分野で利用することが可能である。また、人間以外にもペット用動物に対しても、歯周病等の疾患で摂食できない場合に、噴霧により口内投与することで容易に栄養分を十分摂らせることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然食材の微粉末を水に懸濁して上清及び沈殿物を分離する水抽出工程と、水抽出工程で分離された沈殿物を温水に懸濁して上清及び沈殿物を分離する温水抽出工程と、温水抽出工程で分離された沈殿物をアルコールに懸濁して上清及び沈殿物を分離するアルコール抽出工程と、前記各工程で分離された上清を混合して液状食品を調製する調製工程とを備えたことを特徴とする噴霧摂取可能な液状食品組成物の製造方法。
【請求項2】
前記調製工程において、天然食材から抽出して作成された賦形剤を添加することを特徴とする請求項1に記載の噴霧摂取可能な液状食品組成物の製造方法。
【請求項3】
天然食材の水抽出液と、前記天然食材の温水抽出液と、前記天然食材のアルコール抽出液とを含むことを特徴とする噴霧摂取可能な液状食品組成物。
【請求項4】
天然食材から抽出して作成された賦形剤が添加されていることを特徴とする請求項3に記載の噴霧摂取可能な液状食品組成物。

【公開番号】特開2007−14281(P2007−14281A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199676(P2005−199676)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(591084447)株式会社エル・ローズ (20)
【Fターム(参考)】