説明

噴霧方法及び室内噴霧装置

【課題】本発明が解消しようとする課題は、次亜塩素酸殺菌水の噴霧により、薬害を発生させることなく天井や壁はもちろん空中も同時に殺菌ができ、しかも、水滴を生じない湿度で充分に殺菌効果が得られる屋内殺菌方法を提供することにある。
さらに次亜塩素酸溶液を室内に噴霧する装置において、室内全域に向けて大量に噴霧することができ、かつ雰囲気に応じて噴霧される次亜塩素酸溶液粒子の粒径を簡易な手段により制御することである。
【解決手段】 次亜塩素酸溶液を超音波振動子により霧化し、得られた霧化粒子を気流に搬送して室内に噴霧するにあたり、超音波振動子により次亜塩素酸溶液が霧化されてなる霧化粒子を気流により搬送すると共に、その霧化粒子を羽根に衝突させることにより、大径の霧化粒子を搬送する気流から除去する、微細粒子を室内に噴霧する噴霧方法及びその装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は次亜塩素酸溶液を噴霧する霧化器に関する。
【背景技術】
【0002】
室内等の空間に対して殺菌作用を有する水溶液を超音波振動子により霧化した上で噴霧して、空間内の空気を殺菌することは行われており、その殺菌作用を有する水溶液として次亜塩素酸水溶液を採用することは下記特許文献に記載されているように知られていた。
【0003】
特許文献1及び2に記載されているように、塩化ナトリウム等の塩化物イオン含有水溶液を電気分解して得られたpH3から7.5の、次亜塩素酸濃度10〜200ppmの次亜塩素酸水を含む殺菌液を、超音波霧化装置等により該殺菌液の粒径を0.5〜50μmや、0.2〜5μm、0.3μm以下、を主体とする霧状水粒子にして室内に噴霧又は放出することは公知である。
【0004】
このとき特に0.2〜5μmとする際には超音波霧化装置によって霧化を行うことができ、さらに部屋の湿度を90%以下に抑制した状態において噴霧すると比較的乾燥した状態で噴霧による殺菌効果が得られるものである。
【0005】
特許文献3に記載されているように、希塩酸を電気分解して塩素ガスを発生するガス発生装置と、塩素ガスと混合させて次亜塩素酸水とする水を貯蔵する貯蔵装置と、前記次亜塩素酸水を噴霧する噴霧装置を含む微酸性水噴霧器であり、該噴霧装置は超音波振動子を備えてなり、その超音波振動装置には、その微酸性水との接触部にビニール系の薄膜が設けられている構造を有することが記載されている。
【0006】
加えて、超音波振動子における振動周波数は特に限定されないが、比較的高い周波数が好ましいこと、一般の加湿器に使用される超音波振動子の周波数は1.6MHz程度であるが、この装置の周波数は2.2〜2.6MHzであることが記載されている。その結果、一般の加湿器では10ミクロン程度の水滴しかできなかったが、高い周波数を使用すると1〜5ミクロン程度にまで細かくできることが記載されている。
さらに、超音波振動子によって発生した次亜塩素酸水の微粒子は、その後、送風部の働きによって、噴霧状の次亜塩素酸水として噴霧筒の噴霧口から外部へ勢い良く出されることも記載されている。
【0007】
特許文献4には次亜塩素酸ナトリウム溶液をはじめとする殺菌等の効能を有する機能水又は薬液を超音波振動子を用いて霧化する霧化手段と、該霧化手段により霧化された機能水や薬液を装置本体外の建物内へ噴霧する吹出口を備えた噴霧装置が示されている。
そして、コンプレッサ等により得た圧縮空気を想起するダクトを設け、そのダクトの下流側に設けた二流体ノズルから該霧化手段により霧化された機能水や薬液を噴霧する装置を設けることも記載されている。
【0008】
特許文献5には、次亜塩素酸ソーダと、炭酸ソーダと、苛性ソーダ又は水酸化カルシウムとを含む水溶液からなる除菌消臭液を、超音波振動子により加えられた超音波振動によって霧化して放出することが記載されている。
【0009】
特許文献6には、酸性の次亜塩素酸水溶液からなる第1霧化微粒子と、アルカリ性の次亜塩素酸水溶液からなる第2霧化微粒子とを被処理空間に供給する環境浄化方法であり、第1霧化微粒子を生成する超音波霧化装置からなる第1霧化部、第2霧化微粒子を生成する超音波霧化装置からなる第2霧化部のうちの少なくとも一方は生成される霧化微粒子の粒径を調節する粒径制御手段を備えることが記載されている。
【0010】
そして、超音波霧化装置を用いた装置によれば、他の霧化機構を用いる場合に比較して、霧化微粒子をミクロンオーダーの微細な粒径にしやすいため、霧化微粒子の空中での浮遊時間を長くすることができる。
また超音波霧化装置の周波数を変更することで、生成された霧化微粒子の粒径を比較的自在に調整することが可能となる。
【0011】
さらにその超音波霧化装置の超音波振動子の表面は、ガラス、セラミック、ダイヤモンドライクカーボン、プラスチック、金属メッキ皮膜から選ばれた1層以上の皮膜層で被覆されても良い。
また、霧化された酸性又はアルカリ性の次亜塩素酸水溶液は別に設けた送風ファンから供給される風により室内に噴霧されるが、その風量を調整して吐出風速が変更されると、たとえ超音波振動子の周波数が一定であっても、第1霧化部及び第2霧化部による第1及び第2霧化微粒子の平均粒径が変化する場合があることも記載されている。
【0012】
しかしながら、上記の各霧化器は超音波振動子を使用した既存の室内用加湿器を転用したにすぎず、1台の霧化器にて継続的に殺菌を行える室内の広さは、最も好ましい季節にてせいぜい10畳程度にすぎず、室内の中を局所的に殺菌できるに留まるので、店舗、病院、幼稚園、事務所等より広い室内や空間に対して継続して殺菌し、そこにいる人に対して十分に快適な空間を提供することが困難であった。そして、それを解消するには霧化器を複数台設置することが唯一の手段であった。
このように複数の霧化器を設置すると、各霧化器に次亜塩素酸溶液の補充、電源のオン・オフを行う必要があると共に、室内における配置や、室内の美観に配慮することも必要であった。
【0013】
加えて、従来の霧化器は、噴霧される次亜塩素酸水溶液の粒子の粒径が一定に固定されているか、あるいは超音波振動子を振動させる周波数を変更することによって粒径を変化させるに留まっていた。
例えば夏場には霧化器から放出される水蒸気が煙のように見えて暑苦しく感じる等の状況を解消するため、季節や気候、設置場所の利用状況に応じて、柔軟かつ簡易な機構によって、噴霧する次亜塩素酸溶液の粒径を制御することが困難であった。
【0014】
また、次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合、次亜塩素酸ナトリウムの殺菌力は、水溶液に溶けている次亜塩素酸ナトリウムの一部が解離して次亜塩素酸(HOCl)になり、塩素化反応又は酸素化反応を起こして、殺菌作用を発揮するものであるため、有効な殺菌効果を得るためには、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度を高濃度にしておく必要がある。しかし、高濃度にすると高濃度の薬剤が残留し、目や肌を角に刺激することになっていた。
【0015】
また、次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の消毒剤を噴霧して殺菌するにしても、噴霧により室内湿度が100%以上になり、天井や壁から消毒剤が水滴となって滴り落ちるほど噴霧しないと殺菌効果が得られない。このため、人のいるときや、ふとん等の本来殺菌しなければならない物があるところでは湿度が高くなりすぎて作業ができないという不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平10−316517号公報
【特許文献2】特開平11−169441号公報
【特許文献3】特開2006−271449号公報
【特許文献4】特開2009−34361号公報
【特許文献5】特開2011−67614号公報
【特許文献6】特開2011−152278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明が解消しようとする課題は、次亜塩素酸殺菌水の噴霧により、薬害を発生させることなく天井や壁はもちろん空中も同時に殺菌ができ、しかも、水滴を生じない湿度で充分に殺菌効果が得られる屋内殺菌方法を提供することにある。
さらに次亜塩素酸溶液を室内に噴霧する装置において、室内全域に向けて大量に噴霧することができ、かつ雰囲気に応じて噴霧される次亜塩素酸溶液粒子の粒径を簡易な手段により制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
1.次亜塩素酸溶液を超音波振動子により霧化し、得られた霧化粒子を気流で搬送して室内に噴霧するにあたり、超音波振動子により次亜塩素酸溶液が霧化されてなる霧化粒子を気流により搬送すると共に、その霧化粒子を羽根に衝突させることにより、大径の霧化粒子を搬送する気流から除去する、微細粒子を室内に噴霧する噴霧方法。
2.次亜塩素酸溶液を超音波振動子により霧化し、得られた霧化粒子を気流に搬送して室内に噴霧するための室内噴霧装置であって、超音波振動子により次亜塩素酸溶液が霧化されてなる霧化粒子を気流により搬送すると共に、その霧化粒子を羽根に衝突させることにより、大径の霧化粒子を搬送する気流から除去する、微細粒子を室内に噴霧するための室内噴霧装置。
3.該羽根の気流の流通方向に対する角度を変更可能にした2に記載の室内噴霧装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明は遊離残留塩素が次亜塩素酸の状態で存在する次亜塩素酸殺菌水を使用して屋内を殺菌するので、比較的低濃度で高い殺菌力による殺菌効果が得られる。このため、噴霧殺菌による室内全体の同時殺菌が可能になり、殺菌効率が著しく向上する。
【0020】
次亜塩素酸殺菌水は反応性が高く、反応後は空気中で単なる水分に戻り、残留性が少ない。従って、環境、人体に安全であり、従来の消毒剤とはまったく違った水の感覚で使用できるとともに、強力な殺菌力により、水滴が生ずるほどの湿度に噴霧する必要がないので、人がいたり物がある場所でもそのまま殺菌作業ができる。
【0021】
超音波により次亜塩素酸殺菌水をさらに微細な粒子に霧状化することにより、屋内殺菌効果を一層向上させることができる。このため、次亜塩素酸溶液を、広い室内全般に対して十分に殺菌を行い得るように噴霧することができ、かつ、室内雰囲気や室内の人数等の環境に応じて、簡易な機構により噴霧される次亜塩素酸溶液の粒子の粒径を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の室内噴霧装置の透過図
【図2】本発明の室内噴霧装置の羽根の設置角度を変更した場合の透過図
【図3】超音波振動子ユニットの設置概念図
【図4】図2のイの線により切断した断面図
【図5】図2のロの線により切断した断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明において使用される次亜塩素酸溶液は次亜塩素酸の水溶液の状態であり、次亜塩素酸の濃度に応じて、好ましくはpH3〜7.5、より好ましくはpH4〜6の範囲のpHの値を有するものである。
そのようなpHの範囲では、遊離残留塩素の80〜100%が殺菌力の強い次亜塩素酸(HClO)の形で存在する。この次亜塩素酸は、次亜塩素酸ナトリウムが水に溶けたときに生ずる次亜塩素酸イオンの80倍の殺菌力を有するので、比較的低濃度でも充分な殺菌効果が得られる。また、この次亜塩素酸は反応性が高く、残留性が少ないから人体に対する影響が少ない。
【0024】
そこで、本発明は上記の次亜塩素酸溶液を利用して屋内を殺菌することに着目したものである。上記のようなpHの範囲においては、次亜塩素酸は高い殺菌力を有し、10〜200ppmの濃度で水溶液中に存在することができる。
このように、次亜塩素酸溶液は充分な屋内殺菌効果が得られるものであり、本発明は好ましくはpH3〜7.5、次亜塩素酸濃度10〜200ppmの前記電解次亜塩素酸水を屋内殺菌の殺菌水として利用することができる。
【0025】
本発明は、次亜塩素酸溶液を殺菌性のある溶液として、室内空中、天井、壁、床を含む室内全体にゆきわたらせるために、粒径が0.01〜10μm、好ましくは0.1〜5.0μm。さらに好ましくは0.5〜3μmの霧状水粒子に微細化して屋内に噴霧する。すなわち、前記殺菌水を0.5μm〜50μmを主体とする霧状水粒子化することにより、空気中の菌やほこりに結合し易くするとともに、噴霧することにより、室内全域に行きわたらせることができるようにしたものである。
【0026】
この場合、次亜塩素酸殺菌溶液は殺菌力が強いので、天井や壁に殺菌水の水滴がつくほど噴霧しなくとも充分な室内殺菌効果が得られる。従って、本発明は次亜塩素酸殺菌溶液を使用したことにより、室内の人や物に支障のない噴霧を可能にしたものであり、次亜塩素酸殺菌溶液の選択と、噴霧による殺菌は有機的に関連して、室内を過度に加湿することなく効率の良い屋内殺菌効果を奏している。
【0027】
本発明は、好ましくはpH3〜7.5、次亜塩素酸濃度10〜200ppmの次亜塩素酸溶液を、0.01〜10μmを主体とする霧状水粒子に微細化して屋内に噴霧するものであり、その際に湿度を70%位にすると室内の殺菌効果が顕著にあらわれる。
【0028】
次亜塩素酸溶液を霧化する場合、霧化により得た粒子が小さいほど単位量の殺菌水の総表面積が大きくなるので殺菌対象物との接触効率が高まり、殺菌効果が増大する。従って、殺菌効果を向上させるには殺菌水をできるだけ小さな霧状粒子に微細化することが望ましい。
ただし、霧状粒子の粒子径を小さくし過ぎると、室内への次亜塩素酸溶液の噴霧量が低下して、室内全域の殺菌効率が落ちるので、その殺菌効率を考慮してある程度の粒子径の範囲とすることが望ましい。
【0029】
本発明の装置について以下に説明する。
本発明の室内噴霧装置は、噴霧の際に霧化室に溜まった次亜塩素酸溶液に、超音波振動子によって発生させた超音波を作用させる。この超音波の作用により、液面から次亜塩素酸水の霧化粒子が生成される。これらの霧化粒子は、その後、送風部で発生させて通路を通過した気流に担持される。
図1は本発明の室内噴霧装置1であり、次亜塩素酸溶液が貯留されているタンク2を有し、超音波振動子4を駆動するための電源及び回路3を備えている。
超音波振動子4は霧化室5の底部に設置されており、図1においては3つの超音波振動子が設置されている。これらの各々の超音波振動子4は独立して、印加される電圧、周波数等を制御・調整することができるし、またこれらの超音波振動子4を一体として、印加される電圧や周波数等を制御・調整することも可能である。
【0030】
室内噴霧装置1の外部表面に操作パネルPが設けてある。使用者は、例えば、操作パネルP上に設けた所定の押ボタンスイッチを押す等によって、次亜塩素酸溶液の噴霧、停止、噴霧量や霧化粒子径の調整等を行うことができる。更に、噴霧時間を例えば時間単位で設定することもできる。
また、リモコンにより上記の操作を可能とすることもできる。また、室内噴霧装置1の運転状況、つまり風量、噴霧量、タンク内の次亜塩素酸溶液の残量等を表示するための表示板を設けることもできる。
【0031】
図1においては操作パネルPを室内噴霧装置1の前面に設けたが、本発明において操作パネルCを設ける箇所は前面でなくてもよく、図2に示すように装置一般にて設けることが可能な上面や側面等の任意の位置に設けることができる。
室内噴霧装置1の上部表面には、霧化された次亜塩素酸溶液を室内に噴霧するための噴霧口6が設けられている。この噴霧口6は縦横に板を設け、これらを組み合わせてなる格子状のフレームにより開口部が設けられたもので良く、この縦横の板はその向きが固定されていても良く、これらの板の向きが変更可能とされて、霧化された次亜塩素酸溶液の噴霧方向を変更することができてもよい。
【0032】
タンク2としては任意の形状を有することができ、その容積も室内噴霧装置1を設置する室内の広さ、容積、殺菌の程度、次亜塩素酸溶液をタンク2外部から供給する頻度、室内噴霧装置1の連続運転時間に応じて、任意に変更することができる。なおその際に形状や大きさ、デザイン性等も考慮して形状を変更することも可能である。
室内噴霧装置1の高さにもよるが、室内噴霧装置1の上部から次亜塩素酸溶液を供給するための図示しない供給口を設けることができるし、室内噴霧装置1の下部に別に用意した図示しないタンクのユニットを接続することも可能である。
【0033】
そして、本発明の室内噴霧装置1は、底部に設置された超音波振動子4を有する霧化室5の上部に粒子径調整室7を設け、さらにその上に上記噴霧口6を設けてなることを基本としている。
タンク2に貯留された次亜塩素酸溶液は、ポンプユニット8によって霧化室5に供給される。そのポンプユニット8の入口側にタンク2の底部に接続された管を接続し、ポンプユニット8の出口側には霧化室に接続する管を接続してもよい。
霧化室5には一定量の次亜塩素酸溶液が常に溜められていることが必要である。噴霧量や霧化粒子の粒子径を一定にできるように、また調整可能なように運転するには、霧化室5に溜められた次亜塩素酸溶液の量が多すぎたり、少なすぎるというムラが発生することを防止する必要がある。
また、その量が多すぎると、霧化室底部に設置された超音波振動子4による霧化粒子の発生量が低下する可能性がある。
【0034】
そのため、ポンプユニット8又は霧化室5の内壁面に次亜塩素酸溶液の液面を検知するための図示しないセンサを設置することもできる。そのようなセンサとしては、液面を検知するためのセンサとして公知のもの、例えば水位の下限を検知するためのフロートセンサと上限を検知するためのフロートセンサの組み合わせを採用することができる。
一般の室内へ次亜塩素酸溶液を噴霧するための装置には、霧化する装置にて発生した霧化微粒子を室内に向けて噴霧する噴霧口6に誘導するための経路が設けられているのみではあるが、本発明においてはそのような誘導路を設けるものではない。
【0035】
本発明においては、上記霧化室5にて発生した次亜塩素酸溶液の霧化粒子を、室内に向けて噴霧する前に、粒子径調整室7を通過させることによって、該霧化粒子の粒径を調整して、大粒径のものを除去することができる。その結果本発明の装置から室内に噴霧される次亜塩素酸溶液の霧化粒子はその粒径が0.01〜10μmであるものが主体となる。
このような作用を備えた粒子径調整室7は、霧化室5と連続して室内噴霧装置1の上部に向けて開口するようにして設けられる。そのため、粒子径調整室7の幅や奥行きは霧化室5の幅や奥行きと同程度あるいはそれ以上であることが、発生した霧化粒子を効率よく粒子径調整室7に導入するために好ましい。
【0036】
粒子径調整室7の幅や奥行きが霧化室5の幅や奥行きよりも小さいと、霧化室5にて発生した霧化粒子が粒子径調整室7に導入される際に、互いに衝突する確率が高くなり、粒子径調整室7に導入される前に、過剰に霧化粒子が減少する可能性がある。
【0037】
粒子径調整室7においては、1枚以上の羽根9が下部の霧化室5から気流に搬送されて供給された霧化粒子の流路上に位置するように設置される。下部の霧化室5から上昇して供給された霧化粒子及び該霧化粒子を担持して流通する気流は、羽根9の存在により流通する方向を乱される結果、部分的に乱流を生じる。この乱流によって該霧化粒子同士が衝突し、あるいは大粒子が乱流によっても流通する方向を十分に変更することができず、そのまま羽根9に衝突する。
【0038】
そのため、羽根9には、霧化粒子が衝突することによって形成された水滴が多く付着することになり、さらに水滴同士が合体しながら、羽根9より下方に落下する。図1においては、羽根9から落下した水滴、つまり次亜塩素酸溶液は再び霧化室5内の次亜塩素酸溶液に供給されることになる。
このような羽根9の作用によって、霧化室5にて発生した霧化粒子の中でも小さい粒径のもののみが気流中に残るので、本発明の装置により噴霧される粒子の粒径は上記の通り0.01〜10μmを主体としたものである。
【0039】
図1においては、羽根9を水平に多数設置したが、図2に示すように羽根9を斜めに設置することもできる。霧化された次亜塩素酸溶液の粒子が気流に担持されて流通する方向に対する羽根の設置角度を調整するために、各羽根又は一部の羽根を一斉又は個別に回動させる構造を設けても良いし、設置角度や枚数を変えた羽根を固定したプレートを各種用意して、求める噴霧状態に応じてその羽根付のプレートを交換するようにしてもよい。ただし、このように羽根9を設置する場合には、霧化粒子の流路を考慮して噴霧口6の一方の部分に偏って、霧化粒子を流通させることがないようにすべきである。
本発明においては、その羽根9の設置枚数を多くすること、羽根9の一枚の大きさを大きくすること、さらには斜めに設置した場合の羽根9の水平からの角度を小さくすることにより、大粒径の霧化粒子の量をより削減でき、そうでない場合には、大粒子の霧化粒子の量が多くなる。
このようにして粒子径が調整された霧化粒子は、整流板10によって上方に向けた流れに乗って噴霧口6を通じて室内に噴霧される。この整流板10によって整えられた霧化粒子の流れは、霧化粒子の粒径が小さいことも相まって、室内の遠くにまで噴霧されることになる。
【0040】
図3に示すように、超音波振動子4は、霧化室5の底部に設けた穴に、下方から支持された状態で超音波振動子ユニット18ごと収められている。超音波振動子4の熱を放出するため、超音波振動子4に接続させて図示はしないが冷却板を設けてもよい。
超音波振動子ユニット18は、図1及び2に示す超音波振動子4の設置状態となるように、霧化室5内に設置することもできる。この際にも、霧化室5の底部への設置方法としては図3に記載の構造によることを基本とする。
【0041】
この超音波振動子4は、常時次亜塩素酸溶液にさらされているため、非常に腐食しやすい状態にある。このような問題はより深刻であり、なにも対応しなければ極めて短期間毎に超音波振動子4をそのユニット毎交換しなければならない。よって、本発明においては、超音波振動子4の腐食を防止するために、金属シート(例えば、SUSシート)を使用し、また、耐腐食性を高めるために、チタンメッキ、金メッキや、フッ素コーティング等を施すことになる。その中でもチタンメッキすることが超音波振動子4の腐食防止効果が大きい。
【0042】
加えて、本発明では、超音波振動子4の少なくとも次亜塩素酸水との接触部において、金属シート(例えば、SUSシート)の表面に、要すればフッ素グリースやシリコングリースを含むグリース等の潤滑油を塗布した後に、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のビニール系の薄膜を貼付することとした。これにより、動作の信頼性を維持しつつ、耐腐食性を著しく向上させることができる。特にポリ塩化ビニルによる薄膜を設けることが腐食防止にとって好ましい。
【0043】
さらに本発明においては、本装置で使用される次亜塩素酸溶液に対する耐腐食性の付与と共に、超音波振動子4が発した振動エネルギーが次亜塩素酸溶液等の質量のある媒体に直接伝達されなかった場合に、全ての振動エネルギーが自身に集中し、超音波振動子4の構造や、超音波振動子ユニットの設置構造を自らの動作で破壊してしまう可能性がある。
【0044】
このため、本発明においては、図3に示すように、超音波振動子4の上部周囲を取り囲むように超音波振動子4の形状に合わせて円形の壁15を形成することとした。これにより、超音波振動子4及びその超音波振動子ユニットに対する自身の振動の影響を小さくすることができる。
【0045】
その超音波振動子4及び超音波振動子ユニットの設置構造を図3に示す。図3は霧化室5の底部16に、超音波振動子4を備えた超音波振動子ユニット18を設けた構造を示す。
霧化室はアクリル樹脂等の硬質の樹脂からなる材料により構成されている。このような硬質の材料に直接超音波振動子ユニットを設置すると、超音波振動子から発生した超音波が次亜塩素酸溶液を霧化するためにそのエネルギーを消費すると共に、超音波振動子ユニットや霧化室5を振動させることにもなる。
【0046】
このような状態では、振動が継続するにつれて超音波振動子ユニットを霧化室に確実に固定していたとしても、少しずつ固定部のネジ止め等のネジが緩むことになり、超音波ユニット毎霧化室から脱落する危険がある。そのような危険性を排除するために、霧化室底部の硬質の樹脂からなる材料と超音波ユニットとの間に、図3に示すように、軟質樹脂層17を配置させる。
このような構造とすることにより超音波振動子から発生した超音波が霧化室の底部16を介してすぐに超音波振動子ユニット18を振動させることがなく、軟質樹脂層霧化室の底部16はアクリル樹脂からなり、霧化室5に対して軟質樹脂層17を介在させることで、超音波振動子ユニットに伝達される振動は相当に減衰されることによって、超音波振動子ユニットが霧化室5の底部16から脱落することがない。
なお、超音波振動子ユニット18と軟質樹脂層17との間を密着させて配置することが必要であり、その密着部にOリング等の気密性を与えることができる気密部材19を介在させることが必要である。
【0047】
超音波振動子4における振動周波数は特に限定されるものではないが、比較的高い周波数が好ましい。例えば、従来一般の加湿器に用いられている超音波振動子の周波数は1.6MHz程度であるのに対し、本装置の超音波振動子4では1.6〜2.6MHz(具体的には2.4MHz)程度の周波数を用いる。比較的高い周波数を用いることにより噴霧される水を細かくできる。例えば、一般の加湿器では10μm程度の水滴しか生成できないのに対して、上述したような比較的高い周波数を用いれば0.01〜10μm程度の細かな水滴を生成することができる。この大きさは、雑菌に到達してそれらを消滅させるのに十分な大きさである。また、このように細かな水滴とすることにより、空中での滞留時間を高めることができ、殺菌能力を落とさずにすむため、少ない次亜塩素酸水で効率よく殺菌を行うことができる。
【0048】
また、粒径が小さいといわゆるドライミストとして噴霧することができ、本発明の室内噴霧装置から噴霧される水蒸気が湯気のように見える状態ではなく、まるで加湿していないかのように湯気のように見えずに噴霧される状態にもできる。また、単位時間あたりの次亜塩素酸溶液の噴霧量が少なくなるので、室内の湿度を過度に上昇させることもない。
【0049】
図4に示すように、霧化室5において超音波振動子4によって発生した次亜塩素酸溶液の噴霧粒子は担持流発生部23に設置された送風部11に示すDCファン等のファンによって発生させた空気流を矢印にて示すように通路12を通じて霧化部5に供給することにより、上方に向けて該空気流に担持させて流れることになり、粒子径調整室7に導入される。
【0050】
超音波振動子4によって発生した次亜塩素酸溶液の微粒子は、上記のように粒子径調整室7において粒径が調整された後、噴霧口6から噴霧されると同時に、あるいは噴霧される直前に、噴霧口6の内部にて隣接する区域から流出する空気流であり、図5において空気流発生部20に設置した送風部21に示すDCファン等のファンにより発生された空気流に乗るようにして噴霧させることもできる。このようにして噴霧されることにより、担持する空気量がさらに多くなり、さらに遠くにまで次亜塩素酸溶液の霧化粒子を到達させることが可能になる。
【0051】
このようにして、図5の送風部21による働きにより、次亜塩素酸溶液が噴霧口6から室内へと勢いよく放出される。噴霧流発生部20は、本体底部に配置した送風部21とダクト22から成る。送風部21によって発生した空気流を、ダクト22を通じて、噴霧口6へ導き、該噴霧口6から勢いよく噴出させる。この気流が霧化粒子を伴って霧状に搬送されることにより、次亜塩素酸溶液が噴霧されることになる。
【0052】
図示する構造において、送風部11や21、ダクト22、担持流発生部23や噴霧流発生部20、タンク2等の構造や配置は、任意に変更することが可能である。また、送風部11や21のための空気取り入れ口も装置の前部、背面、底面等の任意の位置に設けることができ、超音波振動子4を次亜塩素酸溶液の液面に対して斜めに向くように、超音波振動子ユニット18を霧化室5の底面に斜めになるように設置することも可能である。
【0053】
さらに、図においては噴霧口6を室内噴霧装置1の上面に設けたが、室内への噴霧を室内噴霧装置1の前面上部から下方の任意の箇所から行うこともできる。この場合、ダクト22と粒子径調整室7の経路を曲げる等の修正を行うことを必要とする。
【0054】
本発明においては、例えば建物や室内の入り口あるいは食堂内に設置して、手指を局所的に殺菌するために、霧化室5にて発生した粒径調整前の霧化粒子を取り出して噴霧口6とは別の噴霧口から噴射させる構造とすることも可能である。その際には、室内噴霧装置1の上面あるいは前面等の手指をかざすことができる高さの位置に該別の噴霧口を設けることになる。この次亜塩素酸溶液の20μm以上の粒子を、特に局所的に噴霧すること、例えば限定された周囲の環境、清掃器具その他の機械器具、手指などにシャワーのようにして使用するときわめて有効な殺菌効果が得られる。
【0055】
本発明の室内噴霧装置に付随して、例えば該装置前面に運転状況や広告等の室内噴霧装置を設置する室を利用する人向けの情報を提供するための、液晶パネルや電子ペーパー等の公知の表示装置を設けることができる。
【符号の説明】
【0056】
1・・・室内噴霧装置
2・・・タンク
3・・・回路
4・・・超音波振動子
5・・・霧化室
6・・・噴霧口
7・・・粒子径調整室
8・・・ポンプユニット
9・・・羽根
10・・整流板
11・・送風部
12・・通路
15・・壁
16・・底部
17・・軟質樹脂層
18・・超音波振動子ユニット
19・・気密部材
20・・噴霧流発生部
21・・送風部
22・・ダクト
23・・担持流発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸溶液を超音波振動子により霧化し、得られた霧化粒子を気流に搬送して室内に噴霧するにあたり、超音波振動子により次亜塩素酸溶液が霧化されてなる霧化粒子を気流により搬送すると共に、その霧化粒子を羽根に衝突させることにより、大径の霧化粒子を搬送する気流から除去する、微細粒子を室内に噴霧する噴霧方法。
【請求項2】
次亜塩素酸溶液を超音波振動子により霧化し、得られた霧化粒子を気流に搬送して室内に噴霧するための室内噴霧装置であって、超音波振動子により次亜塩素酸溶液が霧化されてなる霧化粒子を気流により搬送すると共に、その霧化粒子を羽根に衝突させることにより、大径の霧化粒子を搬送する気流から除去する、微細粒子を室内に噴霧するための室内噴霧装置。
【請求項3】
該羽根の気流の流通方向に対する角度を変更可能にした請求項2に記載の室内噴霧装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−99472(P2013−99472A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245770(P2011−245770)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(511271546)Penta−C株式会社 (1)
【Fターム(参考)】