説明

噴霧用液体芳香剤組成物

【課題】衣類等の対象物に持続的な強い香りを付与できる噴霧用液体芳香剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)特定のケイ酸エステル、(b)25℃における酸解離定数(pKa)が7.0〜9.0である特定のヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩、並びに水を含有し、25℃におけるpHが6.5〜8.5である噴霧用液体芳香剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧用液体芳香剤組成物、及びスプレー式芳香剤物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自分の香りを周りにアピールする為に、身体に適用する香水が用いられてきた。近年、身体に適用する香水のみならず、着用したり使用する衣類から、自分が気に入った香りを香らせ、自らを周囲にアピールする行動が増えてきている。それに伴い、トイレタリーメーカー各社から、衣類に種々の香りを付与し、香りの持続性に優れる柔軟剤組成物が販売されている。また、居住空間にも香りを香らせる置型の芳香剤や、スプレーで噴霧する芳香剤の市場も大きくなってきている。
【0003】
特許文献1及び2には、加水分解により香料アルコールを放出するケイ酸エステルを、繊維製品に付着させることで、衣類からの香りの持続性を向上させる技術が開示されている。特許文献3には、特定の構造を有するヒドロキシアミンを含有する組成物を、臭いを発する衣類に付着させることで、優れた消臭効果を有する消臭剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−526644号公報
【特許文献2】特開2010−133073号公報
【特許文献3】特開2007−160071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1又は2に記載のケイ酸エステルを含む組成物を、衣類に付着させることで、衣類から香るほのかな香りが長期間持続することが知られている。しかし、乾燥後の衣類から香る香りの強さを、より持続的に発現させる事が望まれている。これらの組成物では、乾燥後の衣類から香る香りを持続的に強くするために、衣類に付着させるケイ酸エステルを増加させると、衣類に付着させた後、乾燥途中の湿潤した衣類から香る香りが強くなりすぎてしまい、消費者によっては好まれない場合がある。本発明者らの検討の結果、特許文献1や2の組成物よりも、乾燥途中の湿潤した衣類から香る香りを強すぎない程度に抑え、且つ特に乾燥後の衣類から、持続的に強い香りを発生させることが出来る液体芳香剤組成物を消費者に提案することで、消費者の嗜好性がより高まることを見出した。また、特許文献3は消臭剤組成物に関するものであり、比較的強い香りを持続的に発現させるという、芳香剤としての課題については言及していない。
【0006】
本発明の課題は、衣類等の対象物に液体芳香剤組成物を噴霧により付着させた後、乾燥途中の湿潤状態の衣類等の対象物から香る香りの強さが抑制され、乾燥後の衣類等の対象物に持続的な強い香りを付与できる噴霧用液体芳香剤組成物及びこれを用いたスプレー式芳香剤物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分及び水を含有し、25℃におけるpHが6.5〜8.5である噴霧用液体芳香剤組成物に関する。
(a)成分:下記一般式(a1)で表されるケイ酸エステル
【0008】
【化1】

【0009】
〔式中、Xは−OH、−R1a、−OR2a又は−OR3aであり、YはX又は−OSi(X)3であり、R1aは炭素数1〜22の炭化水素基、R2aは分子内に炭素数6〜22の炭素原子を有する香料アルコールからヒドロキシ基を1つ除いた残基、R3aは炭素数1〜5の炭化水素基又はベンジル基、nは0〜5の数である。複数個のX及びYはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、一分子中に−OR2aを少なくとも1つ有する。〕
(b)成分:下記一般式(b1)で表される化合物、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンから選ばれる、少なくとも1種のpKaが7.0〜9.0のヒドロキシアミン化合物並びに該ヒドロキシアミン化合物の塩から選ばれる化合物
【0010】
【化2】

【0011】
〔式中、R1bは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基であり、R2bは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基であり、R3b及びR4bは、炭素数1〜5のアルカンジイル基である。R3b及びR4bは、同一でも異なっていてもよい。上記R1b〜R4bの基の種類は、一般式(b1)で表される化合物のpKa(25℃)が7.0〜9.0になるように選択される。〕
【0012】
また、本発明は、上記本発明の噴霧用液体芳香剤組成物を、スプレー容器に充填してなる、スプレー式芳香剤物品に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、衣類等の対象物に持続的な強い香りを付与できる噴霧用液体芳香剤組成物及びこれを用いたスプレー式芳香剤物品が提供される。本発明の噴霧用液体芳香剤組成物が適用された衣類等の対象物は、噴霧用液体芳香剤組成物が噴霧に適用された後の湿潤状態での衣類等の対象物から香る香りが抑制される一方、乾燥後の衣類等の対象物から香る初期の香り立ちがよく、しかも、保管中ないし保管後も香りが持続する。
【0014】
本発明の効果が発現する作用機構は必ずしも明らかではないが、本発明者らは次のように考えている。特定のpKaを有するヒドロキシアミン化合物及び該ヒドロキシアミン化合物の塩から選ばれる化合物、ケイ酸エステル及び水を含有し、特定のpHを有する本発明の噴霧用液体芳香剤組成物が、衣類等の対象物に噴霧され付着した後、噴霧用液体芳香剤組成物中の水が揮発し乾燥する。その際、前記の特定のpKaを有するヒドロキシアミン化合物及び該ヒドロキシアミン化合物の塩から選ばれる化合物が、湿潤状態から乾燥状態に移行する過程でのケイ酸エステルの加水分解を抑制しているものと考えている。
【0015】
本発明者らが考える作用機構によれば、本発明の液体芳香剤組成物が噴霧用であることに意味を有する。即ち、本発明の噴霧用液体芳香剤組成物が、衣類等の対象物に噴霧より付着された後、ケイ酸エステル並びに該ヒドロキシアミン化合物及び該ヒドロキシアミン化合物の塩から選ばれる化合物が共に水中で共存した状態で、水が揮発する過程で本発明の作用機構が発現すると考えられる。よって、例えば、衣類等の対象物の質量に対して通常5倍以上の水が存在する、洗濯工程の洗浄液中や濯ぎ液中に、本発明の噴霧用液体芳香剤組成物を適用しても、比較的疎水性が高いと考えられるケイ酸エステルは衣類等の対象物に付着するが、比較的親水性が高いと考えられる該ヒドロキシアミン化合物は、洗浄液中や濯ぎ液中に多く残り、脱水後の乾燥工程において、ケイ酸エステル並びに該ヒドロキシアミン化合物及び該ヒドロキシアミン化合物の塩から選ばれる化合物が共存しない状態で乾燥されるため、本発明の効果は得られにくいと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[(a)成分]
本発明の(a)成分は、下記一般式(a1)で表されるケイ酸エステルである。一般式(a1)で表されるケイ酸エステルは、1種又は2種以上が用いられる。
【0017】
【化3】

【0018】
〔式中、Xは−OH、−R1a、−OR2a又は−OR3aであり、YはX又は−OSi(X)3であり、R1aは炭素数1〜22の炭化水素基、R2aは分子内に炭素数6〜22の炭素原子を有する香料アルコールからヒドロキシ基を1つ除いた残基、R3aは炭素数1〜5の炭化水素基又はベンジル基、nは0〜5の数である。複数個のX及びYはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、一分子中に−OR2aを少なくとも1つ有する。〕
【0019】
1aは置換基として炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基を示すが、製造の容易性の観点から、炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、炭素数1〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基がより好ましい。nが0の場合には、組成物への配合の容易性の観点から、炭素数1〜8の炭化水素基がより好ましく、炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基が更に好ましい。また、nが1〜5の場合には、組成物への配合の容易性の観点から、メチル基又はベンジル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0020】
2aは、分子内に炭素数6〜22の炭素原子を有する香料アルコールからヒドロキシ基を1つ除いた残基である。本明細書において香料アルコールとは、香料として用いられるアルコールを意味する。具体的な香料アルコールとしては、「香料と調香の基礎知識」(産業図書株式会社、中島基貴編著、2005年4月20日第4刷)に記載される、脂肪族アルコール、テルペン又はセスキテルペンアルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール及び合成サンダル(サンダルウッド様の香りを有する合成された香料アルコール)から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
【0021】
本発明における香りの強さとは、一般式(a1)の化合物が加水分解することで生成する、香料アルコール(R2aOH)由来の香りの強さを意味する。
【0022】
本発明において、R2aは、分子内に炭素数6〜22の炭素原子を有する香料アルコールからヒドロキシ基を1つ除いた残基である。衣類を保管した後の香りの強さを高める等、持続的な強い香りを発現させる観点から、R2aの由来となる、分子内に炭素数6〜22の炭素原子を有する香料アルコール(R2aOH)は、炭素数10〜14の香料アルコールが好ましく、より好ましくは炭素数10〜12の香料アルコールである。具体的には、炭素数10〜11の脂肪族アルコール、炭素数10のテルペン系アルコール、炭素数10の脂環式アルコール、炭素数10〜12の芳香族アルコール及び炭素数13〜14の合成サンダルから選ばれる香料アルコールが好ましい。
【0023】
炭素数10〜11の脂肪族アルコールとしては、9−デセノール、4−メチル−3−デセン−5−オール又は10−ウンデセノールが挙げられる。
【0024】
炭素数10のテルペン系アルコールとしては、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン−3−オール、3,7−ジメチル−トランス−2,6−オクタジエン−1−オール、3,7−ジメチル−シス−2,6−オクタジエン−1−オール、3,7−ジメチル−6−オクテン−1−オール、2−メチル−6−メチレン−7−オクテン−2−オール、2−イソプロペニル−5−メチル−4−ヘキセン−1−オール、3,7−ジメチルオクタノール、3,7−ジメチルオクタン−3−オール、2,6−ジメチル−7−オクテン−2−オール、3,7−ジメチル−4,6−オクタジエン−3−オール、p−メンタン−8−オール、1−p−メンテン−4−オール、p−メンタン−3−オール、1,7,7−トリメチル−ビシクロ[1,2,2−]ヘプタン−2−オール又はp−メンス−8−エン−3−オールが挙げられる。
【0025】
炭素数10〜12の脂環式アルコールとしては、4−イソプロピルシクロヘキサンメタノール、1−(4−イソプロピルシクロヘキシル)エタノール、p−t−ブチルシクロヘキサノール又はo−t−ブチルシクロヘキサノールが挙げられる。
【0026】
炭素数10〜12の芳香族アルコールとしては、1−フェニル−2−メチル−2−プロパノール、2−プロピル−5−メチルフェノール、2−メチル−5−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−4−アリールフェノール、2−メトキシ−4−(1−プロペニル)−フェノール、4−フェニル−2−メチル−2−ブタノール、5−プロペニル−2−エトキシフェノール、1−フェニル−3−メチル−3−ペンタノール又は3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノールが挙げられる。
【0027】
炭素数13〜14の合成サンダルとしては、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−ブタン−1−オール、3−メチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−ペンタン−2−オール又は2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オールが挙げられる。
【0028】
本発明において、持続的な強い香りを発現させる観点から、分子内に炭素数6〜22の炭素原子を有する香料アルコールは、炭素数10のテルペン系アルコール、炭素数10〜12の芳香族アルコール並びに炭素数13〜14の合成サンダルから選ばれる香料アルコールが好ましい。更に、炭素数10のテルペン系アルコールが好ましい。
【0029】
3aは、ケイ酸エステルの製造の容易性の観点から、メチル基、エチル基又はベンジル基が好ましい。分子内にR3aが複数存在する場合には、各々のR3aは同一であっても異なっていても良い。
【0030】
一般式(a1)において、nは0〜5の数であり、持続的な強い香りを発現させる観点から、0〜3の数が好ましく、0の数がより好ましい。
【0031】
一般式(a1)において、nが0のケイ酸エステル〔以下、(a11)成分という〕の場合には、持続的な強い香りを発現させる観点から、4個のXのうち2〜4個、好ましくは3又は4個が−OR2aであり、残りが−OR2aである化合物が好適である。
【0032】
nが0の場合の好ましい化合物〔(a11)成分〕としては、下記式(a11−1)又は(a11−2)で表される化合物が挙げられる。
【0033】
【化4】

【0034】
〔式中、R2a及びR3aは前記と同じ意味を示す。〕
【0035】
一般式(a1)において、nが1〜5のケイ酸エステル〔以下、(a12)成分という〕の場合には、持続的な強い香りを発現させる観点から、噴霧用液体芳香剤組成物中に含まれる全ての(a)成分中のX及びYの合計の数に対して、1/5以上、好ましくは1/2以上が−OR2aであり、残りが−OR3aである化合物が好適であり、全てのX及びYが−OR2aである化合物がより好ましい。
【0036】
nが1〜5の場合の好ましい化合物〔(a12)成分〕としては、下記式(a12−1)又は(a12−2)で表される化合物が挙げられる。
【0037】
【化5】

【0038】
〔式中、R2a及びR3aは前記と同じ意味を示す。mは1〜5の数を示し、Tは、−OR2a又は−OR3aを示す。〕
【0039】
香りの持続性の観点から、mとしては、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましく、持続的な強い香りを発現させる観点から、mは1が更に好ましい。
【0040】
一般式(a1)で表される化合物は、特許文献2の段落0029〜0041などに記載されている方法で入手することができる。
【0041】
上記一般式(a1)において、nが0のケイ酸エステル〔(a11)成分〕とnが1〜5のケイ酸エステル〔(a12)成分〕を併用して用いることもできる。噴霧用液体芳香剤組成物中の(a11)成分と(a12)成分の割合は、質量比で(a11)成分/(a12)成分=1〜200が好ましく、2〜110がより好ましく、3〜100が更に好ましい。
【0042】
[(b)成分]
本発明の(a)成分は、(b)成分である、25℃における酸解離定数(pKa)(以後、「pKa(25℃)」という)が7.0〜9.0である、特定のヒドロキシアミン化合物及びその塩から選ばれる化合物と共存することにより、湿潤状態で適用された後から乾燥するまでの過程では香りが抑制され、乾燥後には持続的な強い香りを発現させることができる。
【0043】
本発明の(b)成分の特定のヒドロキシアミン化合物のpKa(25℃)は、持続的な強い香りを発現させる観点から、7.3〜8.8が好ましく、7.5〜8.8がより好ましく、7.9〜8.8がより好ましく、7.9〜8.6が特に好ましい。
【0044】
本発明の(b)成分の特定のヒドロキシアミン化合物のpKa(25℃)は、水を溶媒とした時に、(b)成分の特定のヒドロキシアミン化合物の0.1mol/Lの濃度におけるpKa(25℃)を示す。
【0045】
酸解離定数(pKa)は、「日本化学会編 化学便覧 基礎編 改訂5版」(平成16年2月20日、丸善株式会社発行、II−334〜II−343頁)に記載されている25℃におけるpKaを用いることができる。化学便覧に記載されていない場合は、各アミンの0.1mol/L水溶液のpHを測定し、pKa=〔2×(pHの測定値)〕−14−〔(1/2)×log(0.1)〕から計算する事が出来る。pHは次に示す方法で測定する。
【0046】
<pHの測定方法>
pH測定装置は測定の1時間前に電源を入れる。未使用のpH電極を用い、電極を予め25℃±0.2℃のイオン交換水に24時間浸しておいたものを使用する。ゼロ校正とスパン校正は、以下に記載のpH標準液を用いて、25℃におけるpHの指示値が、標準pH±0.02になるまで繰り返し校正を行う。校正後にpH電極に25℃のイオン交換水200mLをかけて洗浄後、各測定サンプル(ヒドロキシアミン化合物)の水溶液(濃度0.1mol/L)を3回繰り返し測定する。尚、1回測定を終える度に、ゼロ校正とスパン校正を行う。得られた3回の測定値の平均値をpH測定値とする。
【0047】
<測定サンプルの水溶液の調製>
測定サンプルの水溶液(濃度0.1mol/L)200mLを、200mL容積のガラス製のトールビーカーに入れる。水が蒸散しないように、ビーカーの口を食品包装用ラップフィルム〔例えば、サランラップ(登録商標)〕で封をし、ウォーターバス中で、液温が25±0.2℃になるように調整する。
【0048】
〔pH標準液〕
堀場製作所株式会社製pH標準液を用いる。
・pH標準液100−7(中性りん酸塩標準液、精度;±0.02pH)
・pH標準液100−9(ホウ酸塩標準液、精度;±0.02pH)
〔pH測定装置〕
・株式会社堀場製作所製のpHメータ「D−52S」
・pH電極:6367−10D
【0049】
本発明の(b)成分は、下記一般式(b1)で表される化合物、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンから選ばれる、少なくとも1種のpKaが7.0〜9.0のヒドロキシアミン化合物並びに該ヒドロキシアミン化合物の塩から選ばれる化合物である。
【0050】
【化6】

【0051】
〔式中、R1bは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基であり、R2bは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基であり、R3b及びR4bは、炭素数1〜5のアルカンジイル基である。R3b及びR4bは、同一でも異なっていてもよい。上記R1b〜R4bの基の種類は、一般式(b1)で表される化合物のpKa(25℃)が7.0〜9.0になるように適宜選択される。〕
【0052】
一般式(b1)において、R1bは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基である。炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基が挙げられる。また、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。R1bは、香りの持続性及び入手性の観点から、上記の中では水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましく、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基がより好ましく、メチル基、ヒドロキシメチル基が最も好ましい。
【0053】
2bは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表す。炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、R1bと同じものが挙げられる。R2bは、香りの持続性及び入手性の観点から、上記の中では水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシエチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0054】
3b及びR4bは、炭素数1〜5のアルカンジイル基である。R3b及びR4bは、同一でも異なっていてもよい。炭素数1〜5のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基等が好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0055】
上記R1b〜R4bの基の種類は、一般式(b1)で表される化合物のpKa(25℃)が7.0〜9.0になるように適宜選択される。
【0056】
一般式(b1)で表される化合物を塩として用いる場合の酸としては、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸)、又は有機酸(例えば、グリコール酸、乳酸、クエン酸、炭酸等の炭素数1〜6の炭素原子を有する有機酸)を用いることが出来る。
【0057】
(b)成分の具体例としては、例えば、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(pKa(25℃)=8.8)、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(pKa(25℃)=8.2)、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、4−アミノ−4−ヒドロキシプロピル−1,7−ヘプタンジオール、2−(N−エチル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−エチル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、ジエタノールアミン(pKa(25℃)=8.9)、トリエタノールアミン(pKa(25℃)=7.8)等、及びそれらと塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸等との塩が挙げられる。
【0058】
これらの中では、香りの持続性の観点から、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(pKa(25℃)=8.8)、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(pKa(25℃)=8.2)、ジエタノールアミン(pKa(25℃)=8.9)、トリエタノールアミン(pKa(25℃)=7.8)及びそれらと塩酸等の酸との塩から選ばれる1種以上が好ましい。
【0059】
ヒドロキシアミン化合物を塩酸等の塩として用いる場合は、塩基や酸を添加することにより、本発明の噴霧用液体芳香剤組成物のpHを調整することができる。用いることができる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらの中では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸を用いることが出来る。また、グリコール酸、乳酸、クエン酸、炭酸等の炭素数1〜6の炭素原子を有する有機酸を用いることも出来る。
【0060】
上記のヒドロキシアミン化合物類(a)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0061】
[噴霧用液体芳香剤組成物及びスプレー式芳香剤物品]
本発明の噴霧用液体芳香剤組成物中の(a)成分、(b)成分の含有量は、使用形態、繊維製品の種類、香らせる香りの強さの程度などによって適宜調整することができる。
【0062】
(a)成分の組成物中の含有量は、香りの持続性の点で、0.0001質量%以上が好ましく、また、衣類等に適用した場合に乾燥途中で香る香りが強すぎない点で0.1質量%以下が好ましい。従って、(a)成分の組成物中の含有量は、0.0001〜0.1質量%が好ましく、0.0003〜0.03質量%がより好ましく、0.0005〜0.01質量%が更に好ましい。
【0063】
(b)成分の組成物中の含有量は、持続的な強い香りを発現させる点で、0.01質量%以上が好ましく、また、経済的な点で1質量%以下が好ましい。0.01〜1質量%がより好ましく、0.02〜0.9質量%が更に好ましく、0.02〜0.8質量%がより更に好ましい。尚、本明細書において、(b)成分の含有量とは、(b)成分がアミンの状態で存在すると仮定した時の含有量を示す。
【0064】
本発明の噴霧用液体芳香剤組成物において、(b)成分は、(a)成分と併用することで、適用後、乾燥する途中での香りを抑制しつつ、衣類を保管した後の香りの強さを高める等、持続的な強い香りを発現させることが出来る。持続的な強い香りを発現させる観点から、(a)成分及び(b)成分の質量比は、(a)成分/(b)成分=0.001〜1が好ましく、より好ましくは0.005〜0.5、更に好ましくは0.002〜0.2、特に好ましくは0.01〜0.1である。
【0065】
本発明の噴霧用液体芳香剤組成物において、(a)成分及び(b)成分以外の残部は水とすることができる。使用する水は、蒸留水やイオン交換水等からイオン成分を除去したものが好ましい。組成物中の水の含有量は、噴霧用液体芳香剤組成物の調製のし易さの点から、75〜99.9質量%が好ましく、80〜99.8質量%が更に好ましい。
【0066】
また必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、界面活性剤、溶剤、硫酸ナトリウム等の塩、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、染料、顔料、紫外線吸収剤等の他の成分を添加することができる。
【0067】
溶剤〔以下、(c)成分という〕としては、炭素数2〜4の1価アルコール(例えば、エタノール等)、2〜6価で1分子の総炭素数が2〜12の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等)、又は前記アルコールのアルキル(炭素数1〜6)のエーテル誘導体が挙げられる。これらの中では、保存安定性の点から、エタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールが好ましい。(c)成分の組成物中の含有量は0.05〜10質量%、エタノールを含有する場合には、3〜9質量%が好ましく、4〜8質量%がより好ましい。ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールを含有する場合には、0.1〜2質量%が好ましく、0.2〜1質量%がより好ましい。とすることができる。
【0068】
界面活性剤〔以下、(d)成分という〕としては、特に制限はなく、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤の中から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中では、噴霧用液体芳香剤組成物の安定性を高める観点や持続的な強い香りを発現させる観点から、非イオン性界面活性剤が好ましく、下記一般式(d1)で表される化合物がより好ましい。
1d−Z−[(EO)s/(PO)t]−R2d (d1)
〔式(d1)中、R1dは、炭素数10〜22の脂肪族炭化水素基、好ましくは炭素数12〜16の炭化水素基、より好ましくは炭素数12〜16のアルキル基又はアルケニル基であり、R2dは、水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基であり、Zは−O−又は−COO−のいずれかであり、EOは、オキシエチレン基であり、POはオキシプロピレン基であり、(EO)と(PO)はランダム付加でもブロック付加でもいずれでもよく、(EO)と(PO)の付加順序は問わない。s及びtは平均付加モル数であり、sは4〜40の数、好ましくは5〜25の数、tは2以下の数、好ましくは0の数である。持続的な強い香りを発現させる観点からs+tの合計は5〜20の数が好ましく、5〜15の数が好ましい。〕
【0069】
組成物の配合性の観点から、一般式(d1)で表される化合物のR1dは、好ましくは炭素数10〜16、更に好ましくは炭素数10〜14のアルキル基又はアルケニル基であり、R2dは、好ましくは水素原子、又は炭素数1〜2のアルキル基、より好ましくは水素原子又はメチル基、更に好ましくは水素原子である。
【0070】
一般式(d1)で表される化合物としては、ポリオキシエチレン(s=6〜12)−1−ドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(s=5〜12)モノアルキル(炭素数12〜14の2級の炭化水素基)エーテル、ラウリン酸ポリオキシチレン(s=6〜13)メチルエーテルから選ばれる1種以上が好ましい。
【0071】
(d)成分の組成物中の含有量は、ケイ酸エステル〔(a)成分〕の配合性の観点から、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜1質量%である。
【0072】
本発明の噴霧用液体芳香剤組成物において、持続的な強い香りを発現させる観点から、(a)成分及び(d)成分の質量比は、(a)成分/(d)成分=0.001〜0.5が好ましく、より好ましくは0.002〜0.1、更に好ましくは0.003〜0.03である。
【0073】
本発明の噴霧用液体芳香剤組成物の25℃におけるpHは、持続的な強い香りを発現させる観点から、6.5〜8.5であり、6.8〜8.5が好ましく、7.0〜8.3がより好ましく、7.0〜8.0が更に好ましく、7.0〜7.7が最も好ましい。本発明の噴霧用液体芳香剤組成物のpHは、塩酸等の酸、又は水酸化ナトリウム等のアルカリを添加することにより調整することができる。噴霧用液体芳香剤組成物のpHは実施例に記載の方法で測定した値である。
【0074】
本発明の噴霧用液体芳香剤組成物の25℃における粘度は、スプレー容器での噴霧適性の観点から、15mPa・s以下が好ましく、より好ましくは1〜10mPa・s、更に好ましくは1〜5mPa・sである。本発明の噴霧用液体芳香剤組成物において、25℃における粘度が15mPa・s以下であると噴霧パターンが適正となる。粘度は、東京計器株式会社製、B型粘度計(モデル形式BM)に、No.1のローターを取り付け、噴霧用液体芳香剤組成物を200mL容量のガラス製トールビーカーに充填し、ウォーターバスにて25±0.3℃に調製し、ローターの回転数を60r/minに設定し、測定を始めてから60秒後の指示値である。
【0075】
本発明の噴霧用液体芳香剤組成物をスプレー容器に充填してスプレー式芳香剤物品を得ることができる。本発明のスプレー式芳香剤物品は、本発明の噴霧用液体芳香剤組成物と、スプレー容器とを含んで構成される物品である。本発明の噴霧用液体芳香剤組成物は水を含有するミストタイプであり、これをスプレー容器に充填し、一回の噴霧量を0.1〜3mlに調整したものが好ましい。使用するスプレー容器としては、トリガースプレー容器(直圧あるいは蓄圧型)やディスペンサータイプのポンプスプレー容器、耐圧容器を具備したエアゾールスプレー容器等が挙げられる。性能を効果的に発現するために、トリガー式スプレーヤーあるいはエアゾールスプレーヤーを具備するスプレー容器が好ましく、本発明においては、耐久性や布付着性の点から、トリガー式スプレーヤーを具備するスプレー容器がより好ましい。
【0076】
スプレー容器としては、噴射口から噴射方向に10cm離れた地点における噴霧液滴の平均粒径が10〜200μmとなり、噴射口から噴射方向に15cm離れた地点における粒径200μmを超える液滴の数が噴霧液滴の総数の1%以下となり、噴射口から噴射方向に10cm離れた地点における粒径10μm未満の液滴の数が噴霧液滴の総数の1%以下となる噴霧手段を備えたものが好ましい。噴霧液滴の粒子径分布は体積平均粒子径であり、例えば、レーザー回折式粒度分布計(日本電子株式会社製)により測定することができる。
【0077】
本発明の噴霧用液体芳香剤組成物及びスプレー式芳香剤物品は、繊維製品用として好適であり、かかる噴霧用液体芳香剤組成物は、噴霧により繊維製品に付着させて、対象物に香りを付与することが出来る。前記スプレー式芳香剤物品はこの方法に好適に用いられる。繊維製品としては、スーツ、セーター等の衣類、カーテン、ソファー等が挙げられる。
【0078】
本発明の噴霧用液体芳香剤組成物を、噴霧より繊維製品に対象物に付着させる方法が本発明の効果を享受出来る点で好ましい。付着させる量は、対象物が繊維製品である場合には、噴霧された繊維製品の乾燥時間を短くする点で、噴霧用液体芳香剤組成物が付着した範囲の繊維製品の質量に対して、100質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。繊維製品に対して均一に付着させる点で、噴霧用液体芳香剤組成物が付着した範囲の繊維製品の質量に対して5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。対象物の質量が容易に測定できない場合(例えば、大型家具などの布張部分、建物等に固定されている繊維製品等)には、対象物の10cm2の面積に対して0.1〜3g、好ましくは0.3〜2.5g、より好ましくは0.5〜2.0gとなる量の噴霧用液体芳香剤組成物を付着させることが、本発明の効果が得られる点で好ましい。
【実施例】
【0079】
実施例及び比較例で用いた各配合成分をまとめて以下に示す。なお、(b)成分及び(b’)成分の酸解離定数(pKa)は、「日本化学会編 化学便覧 基礎編 改訂5版」(平成16年2月20日、丸善株式会社発行、II−334〜II−343頁)に記載されている25℃におけるpKaを用いた。
【0080】
(a)成分
・a−1:下記合成例1で得られたポリ(ゲラニルオキシ)シロキサン
・a−2:下記合成例2で得られたテトラキス(ゲラニルオキシ)シラン
・a−3:下記合成例3で得られたテトラキス(シトロネルオキシ)シラン
・a−4:下記合成例4で得られたテトラキス(フェニルエチルオキシ)シラン
(a’)成分:(a)成分の比較化合物
・a’−1:ゲラニオール
(b)成分
・b−1:トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(pKa(25℃)=8.2)
・b−2:2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(pKa(25℃)=8.8)
・b−3:ジエタノールアミン(pKa(25℃)=8.9)
・b−4:トリエタノールアミン(pKa(25℃)=7.8)
(b’)成分〔(b)成分の比較化合物〕
・b’−1:2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(pKa(25℃)=9.8)
・b’−2:モノエタノールアミン(pKa(25℃)=9.6)
その他成分
・c−1:エタノール
・d−1:ポリオキシエチレン(平均付加モル数=8)−1−ドデシルエーテル
・d−2:ポリオキシエチレン(平均付加モル数=20)−1−ドデシルエーテル
・抗菌剤:プロキセルBDN(アビシア株式会社製、10%水溶液)
【0081】
〔(a)成分の合成〕
合成例1(ポリ(ゲラニルオキシ)シロキサンの合成)
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン145.92gと水酸化カリウム0.48g、イオン交換水0.8mLを入れ、窒素気流下120〜125℃、33kPa〜101kPa(常圧)で約37時間反応を行った。この間イオン交換水を0.8mL追加した。反応後、33kPaで更に2時間反応させた後、冷却、濾過を行い、134.58gのエトキシシランの縮合物を淡黄色液体として得た。
【0082】
続いて、100mLの四つ口フラスコに先のテトラエトキシシラン縮合物25.00gとゲラニオール(沸点230℃、logP値2.77)62.93g(0.41mol)、4.8%水酸化ナトリウム水溶液0.17gを入れ、エタノールを留出させながら95〜119℃でさらに2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら116〜119℃でさらに3時間攪拌した。3時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、ポリ(ゲラニルオキシ)シロキサン(式(a1)において、X=Y=−OR2aで、R2aがゲラニオールから水酸基を除いた残基、nが平均4の化合物である)を含む65.39gの淡黄色油状物を得た。
【0083】
合成例2(テトラキス(ゲラニルオキシ)シランの合成)
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン35.45g(0.17mol)、ゲラニオール100.26g(0.65mol)、2.8%ナトリウムメトキシドメタノール溶液1.34mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら118〜120℃で約2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら112〜119℃でさらに3時間攪拌した。3時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、テトラキス(ゲラニルオキシ)シラン(式(a1)において、X=−OR2aで、R2aがゲラニオールから水酸基を除いた残基、nが0の化合物である)を含む薄茶色油状物を得た。
【0084】
合成例3(テトラキス(シトロネルオキシ)シランの合成)
ゲラニオールの代わりにシトロネロール(沸点225℃、logP値3.26)を101.57g(0.65mol)用いる以外は合成例2と同様にして、テトラキス(シトロネルオキシ)シラン(式(a1)において、X=−OR2aで、R2aがシトロネロールから水酸基を除いた残基、nが0の化合物である)を含む薄茶色油状物を得た。
【0085】
合成例4(テトラキス(フェニルエチルオキシ)シランの合成)
ゲラニオールの代わりにフェニルエチルアルコールを79.41g(0.65mol)用いる以外は合成例2と同様にして、テトラキス(フェニルエチルオキシ)シラン(式(a1)において、X=−OR2aで、R2aがフェニルエチルアルコールから水酸基を除いた残基、nが0の化合物である)を含む薄茶色油状物を得た。
【0086】
実施例1〜14及び比較例1〜5
<噴霧用液体芳香剤組成物の調製>
表1に示す配合成分を用い、表1に示す組成の噴霧用液体芳香剤組成物を調製した。得られた組成物は、1規定の塩酸で表1に示すpH(25℃)に調整した。また、表1において、(b)成分又は(b’)成分を含有しない(その分を水に置き換える)基準組成物を調製した。基準組成物のpHはそれぞれの表1記載の噴霧用液体芳香剤組成物と同じpH(25℃)になるように、1規定の塩酸で調製した。得られた組成物について、下記方法で香りの強さを評価した。噴霧用液体芳香剤組成物のpHの測定は以下の測定方法で行った。
【0087】
<pHの測定方法>
pHの測定で使用したpH測定装置及びpH標準液を下記に示す。
〔pH標準液〕
堀場製作所(株)製pH標準液を用いた。
・pH標準液100−7(中性りん酸塩標準液、精度;±0.02pH)
・pH標準液100−9(ホウ酸塩標準液、精度;±0.02pH)
〔pH測定装置〕
・株式会社堀場製作所製のpHメータ「D−52S」
・pH電極:6367−10D
【0088】
pH測定装置は測定の1時間前に電源を入れた。未使用のpH電極を用い、電極を予め25℃±0.2℃のイオン交換水に24時間浸しておいたものを使用した。ゼロ校正とスパン校正は、以下に記載のpH標準液を用いて、25℃におけるpHの指示値が、標準pH±0.02になるまで繰り返し校正を行った。
【0089】
噴霧用液体芳香剤組成物200gを200mL容量のガラス製トールビーカーに入れ、サランラップ(登録商標)で封をし、ウォーターバス中で、噴霧用液体芳香剤組成物の温度が25±0.2℃になるように調整した。
【0090】
校正後にpH電極に25℃のイオン交換水200mLをかけて洗浄後、各噴霧用液体芳香剤組成物を3回繰り返し測定した。得られた3回の測定値の平均値をpH測定値とした。
【0091】
<香りの強さの評価>
(1)評価用布の調製
綿メリヤスニット布((株)谷頭商店製、染色試材、綿ニット未シル)2kgを市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)製、アタック高活性バイオEX(登録商標)、2009年発売品)を用いて全自動洗濯機(日立NW−7FT)で洗濯した(洗剤濃度0.0667質量%、水道水(20℃)40L使用、標準コース、洗濯9分−すすぎ2回−脱水6分)。洗濯終了後の綿メリヤスニット布を、25℃、50%RHの恒温室に干し、12時間乾燥させた。綿メリヤスニット布を裁断(10cm×10cm)し評価用布とした。
【0092】
(2)木綿タオルの調製
木綿タオル(武井タオル(株)製、TW−220、白色、綿100%)24枚を市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)アタック高活性バイオEX(登録商標)、2009年発売品)を用いて全自動洗濯機(日立NW−7FT)で洗濯した(洗剤濃度0.0667質量%、水道水(20℃)40L使用、標準コース、洗濯9分−すすぎ2回−脱水6分)。洗濯終了後の木綿タオルを、25℃、50%RHの恒温室に干し、12時間乾燥させた。
【0093】
(3)香りの強さの評価方法
(3−1)試験布の調製
前記評価用布1枚を用い、200メッシュのステンレス製金網の上に平らに置いた。評価用布の乾燥時質量(前記(1)評価用布の調製において、洗濯終了後に25℃、50%RHで12時間乾燥した直後の質量)に対して、表1に示す組成物を50質量%噴霧した後、25℃/50%RHの恒温室にて24時間自然乾燥させて試験布を得た。また、噴霧直後から25℃/50%RHの恒温室にて2時間経過後の湿潤状態にある評価用試験布も用意した。スプレー容器は、キャニオン製T−7500を用いた。試験布は、各条件ごとに、1組成当たり5枚調製した。長辺を4つ折りにした木綿タオル(武井タオル(株)製、TW−220、白色、綿100%)6枚を重ね、重ねた6枚の木綿タオルで、24時間自然乾燥後の試験布5枚を交互に挟み、内容積約60Lのプラスチック製収納ボックス(容器の内寸は横64cm×縦40cm×高さ23cm、ヨシカワ製、ネオテナーミドルM23)に入れ、25℃/50%RHで7日間保管した。噴霧直後から2時間後の湿潤状態にある評価用布、24時間自然乾燥させた後の評価用布及び7日間保管後の評価用布を、試験布として用いた。
【0094】
(3−2)基準試験布の調製
表1記載の噴霧用液体芳香剤組成物において(b)成分又は(b’)成分を含まない基準組成物を用いた以外は、前記「(3−1)試験布の調製」と同じ方法で、各条件に対応する基準試験布を調製した。
【0095】
(4)香りの強さの評価
各条件ごとに1組成当たり5枚の試験布を用い、5枚の試験布を重ねて、30歳代の男性5人及び女性5人の計10人のパネラーで経時的な香りの強さを評価した。25℃、50%RHで2時間経過後の湿潤状態にある試験布、25℃、50%RHで24時間乾燥後の試験布、及び7日間保管後の試験布の香りの強さを評価した。評価は、各条件に対応する5枚の基準試験布を重ねて用いて下記の基準で比較評価し、その平均値を求め、表1に示した。24時間乾燥後及び7日保管後の香りの強さとしては、香りの持続性の点で、いずれの香りの強さも平均点3未満であることが好ましい。一方で、噴霧直後から2時間後の湿潤状態の試験布の香りの強さとしては、湿潤状態での香り抑制の点で、平均点が3.6以上が好ましい。
0:基準試験布よりも明らかに香りが強い
1:基準試験布よりも香りが強い
2:基準試験布よりもやや香りが強い
3:基準試験布よりも僅かに香りが強い
4:基準試験布よりやや香りが弱い
5:基準試験布よりも香りが弱い
【0096】
【表1】

【0097】
表1から、比較例1〜5の噴霧用液体芳香剤組成物は、香りの持続性が乏しいのに対し、実施例1〜14の噴霧用液体芳香剤組成物は、噴霧後の湿潤状態では香りが抑制され、衣類保管時の乾燥状態では香りの持続性が優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分及び水を含有し、25℃におけるpHが6.5〜8.5である噴霧用液体芳香剤組成物。
(a)成分:下記一般式(a1)で表されるケイ酸エステル
【化1】


〔式中、Xは−OH、−R1a、−OR2a又は−OR3aであり、YはX又は−OSi(X)3であり、R1aは炭素数1〜22の炭化水素基、R2aは分子内に炭素数6〜22の炭素原子を有する香料アルコールからヒドロキシ基を1つ除いた残基、R3aは炭素数1〜5の炭化水素基又はベンジル基、nは0〜5の数である。複数個のX及びYはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、一分子中に−OR2aを少なくとも1つ有する。〕
(b)成分:下記一般式(b1)で表される化合物、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンから選ばれる、少なくとも1種のpKaが7.0〜9.0のヒドロキシアミン化合物並びに該ヒドロキシアミン化合物の塩から選ばれる化合物
【化2】


〔式中、R1bは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基であり、R2bは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基であり、R3b及びR4bは、炭素数1〜5のアルカンジイル基である。R3b及びR4bは、同一でも異なっていてもよい。上記R1b〜R4bの基の種類は、一般式(b1)で表されるヒドロキシアミン化合物のpKa(25℃)が7.0〜9.0になるように選択される。〕
【請求項2】
(b)成分の25℃における酸解離定数(pKa)が7.3〜8.8である、請求項1記載の噴霧用液体芳香剤組成物。
【請求項3】
(a)成分と(b)成分の質量比が、(a)成分/(b)成分=0.001〜1である、請求項1又は2の何れかに記載の噴霧用液体芳香剤組成物。
【請求項4】
(b)成分が、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、及びトリエタノールアミンから選ばれる1種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の噴霧用液体芳香剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の噴霧用液体芳香剤組成物を、スプレー容器に充填してなる、スプレー式芳香剤物品。

【公開番号】特開2013−44074(P2013−44074A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184638(P2011−184638)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】