説明

噴霧装置

【課題】水道圧を利用して液体を良好に加圧し噴霧することができ、しかも加圧タンクの破壊されることのない噴霧装置を提供する。
【解決手段】内部が変位膜により上部の空気室と下部の水圧室に区画された加圧タンク2と、内部が上部の空気室と下部の液体を溜める液体室に区画された液体タンク13を備え、加圧タンク2の空気室と液体タンク13の空気室を連通管路8で接続するとともに、加圧タンク2の水圧室には接続経路管11を介して水道管を接続し、接続経路管11に操作弁10を設けて、常にはこの操作弁10がドレン経路管12側と加圧タンク2内の水圧室を連通するようにして、ハンドル10aが操作された時のみ水道圧が加圧タンク2に作用するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道管の水圧を利用して液体を噴霧できる噴霧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、洗剤を入れることのできる内部が変位膜で仕切られた洗剤タンクに対し、水道管を直結し、水道管からの水圧で洗剤タンク内の洗剤を加圧し、洗剤を浴槽内に噴出させることのできる噴霧装置が存在する。
また、特許文献2に開示されているように、伸縮性シートで内部が気体室と液体室に区画された空気加圧器に、水道管を連通させ、水道管からの水圧で空気加圧器内の空気を加圧し、この加圧された空気を、液体を入れた粘性液体タンク内に供給して、加圧された空気により粘性液体タンク内の液体を加圧してノズルから噴出させるように構成した液体供給装置が存在する。
【特許文献1】特許第3218087号公報
【特許文献2】実開平6−282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示されている構造では、洗剤タンクに水道管から直に水圧がかかる構造であるため、洗剤タンク内の変位膜が破れた場合等には、水道水と洗剤が混ざる等して衛生上好ましくない事態が生じるという問題点があり、また、洗剤の噴霧時にホース等を介し噴霧ノズルは洗剤タンクに気密に接続されていなければならないため、洗剤タンクから遠い位置に洗剤を噴霧するような場合には長い管路が必要となるという問題点があった。
【0004】
なお、特許文献2に開示されている構造では、空気が媒体となって液体を加圧する構造であるため、液体と水が混ざるような事態は生じないが、水道管からの水圧が常に空気加圧器に作用しており、空気加圧器を頑丈なものとする必要があり、また、水道管の蛇口を急閉止した場合に生ずる大きな水撃圧力が空気加圧器内に作用して、空気加圧器の破損等のトラブルが起こり易いという新たな問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の問題点に鑑み案出したものであって、液体と水が混ざるようなことがなく、しかも加圧タンクに破損等が生じることのない噴霧装置を提供するものであり、その請求項1は、内部が変位膜により上部の空気室と下部の水圧室に区画された加圧タンクと、内部が上部の空気室と下部の液体を溜める液体室に区画された液体タンクを備え、前記加圧タンクの空気室と前記液体タンクの空気室を気密に連通する管路で接続するとともに、前記加圧タンクの水圧室には水道管を接続してなる噴霧装置において、前記加圧タンクの水圧室と水道管を接続する経路に、該経路を開閉操作できる操作弁を設けたことである。
【0006】
また、請求項2は、前記操作弁は三方弁で構成されて、ドレン経路が設けられ、該操作弁を操作することで、前記加圧タンクの水圧室に対し、前記水道管または前記ドレン経路の何れかが連通されるように構成したことである。
【0007】
また、請求項3は、前記操作弁は、常には前記加圧タンクの水圧室と前記ドレン経路が連通している状態に付勢されていることである。
【0008】
また、請求項4は、前記液体タンクは、空気室内に加圧された空気を気密に保持したまま前記液体タンクに連通する管路から分離できるように構成されていることである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の噴霧装置は、内部が変位膜により上部の空気室と下部の水圧室に区画された加圧タンクと、内部が上部の空気室と下部の液体を溜める液体室に区画された液体タンクを備え、前記加圧タンクの空気室と前記液体タンクの空気室を気密に連通する管路で接続するとともに、前記加圧タンクの水圧室には水道管を接続してなる噴霧装置において、前記加圧タンクの水圧室と水道管を接続する経路に、該経路を開閉操作できる操作弁を設けたことにより、水道管の水圧を有効に利用して加圧タンク内の空気を加圧し、管路を通して加圧した空気を液体タンク内に導入して、液体タンク内の液体を押し出して噴霧することができ、加圧タンク内の変位膜が破れた場合でも、水道水と洗剤等の液体が混ざり難い構造であり、また、加圧タンクは操作弁の下流側に位置するため、水道管を急閉止した場合にも水撃圧力は加圧タンクに加わることがないため、加圧タンクの破損を防ぐことができるものとなる。
【0010】
また、前記操作弁は三方弁で構成されて、ドレン経路が設けられ、該操作弁を操作することで、前記加圧タンクの水圧室に対し、前記水道管または前記ドレン経路の何れかが連通されるように構成したことにより、加圧タンク内の水圧室と水道管が連通された状態では、加圧タンク内の空気を水道圧を利用して加圧することができ、また、加圧タンクの水圧室とドレン経路が連通した状態では、水圧室内の水を良好にドレン経路を通して排水することができ、1つの操作弁で加圧タンクの加圧とドレン排水の両方を操作できるものとなる。
【0011】
また、前記操作弁は、常には前記加圧タンクの水圧室と前記ドレン経路が連通している状態に付勢されていることにより、加圧タンクを加圧したい時だけ操作弁を操作して加圧タンク内に水道圧を作用させることができ、それ以外はドレン排水となるため圧力が開放されて加圧タンクは常に大気圧となり、加圧タンクに通常は水道圧がかかることがなく、加圧タンクの力学的負担を少なくして、加圧タンクの破損を防ぐことができるものとなる。
【0012】
また、前記液体タンクは、空気室内に加圧された空気を気密に保持したまま前記液体タンクに連通する管路から分離できるように構成されていることにより、液体タンクは内部に加圧された空気を気密に保持したまま分離することができるため、液体タンクを単独に自由に持ち運んで、遠く離れた場所でも液体を良好に噴霧させて使用できるものとなる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、噴霧装置の外観構成図であり、図2は、噴霧装置の内部構造を示した断面構成図である。
噴霧装置1は、加圧タンク2と、洗剤等の液体を投入して内部に溜めることのできる液体タンク13を備えている。
この加圧タンク2と液体タンク13は連通管路8で気密に連通されており、連通管路8に設けた着脱部20を介して液体タンク13を加圧タンク2から分離することができるように構成されている。
【0014】
先ず、加圧タンク2を説明すると、加圧タンク2内には変位膜3が設けられており、この変位膜3により、上部の空気室4と下部の水圧室5に内部が区画されており、図2では、内部に空気が吸い込まれて空気室4が膨張し大気圧となっている状態を示している。
加圧タンク2の上面には上方へ突出して空気出口管6が設けられており、この空気出口管6には逆止弁7が設けられている。また、空気出口管6には逆止弁7と反対側に連通管路8が接続されている。
【0015】
一方、加圧タンク2の底面側には下方へ湾曲して共通ポート管9が設けられており、この共通ポート管9には、内部に三方弁を内装した操作弁10が接続されており、操作弁10には内部の三方弁を切り替え操作できるハンドル10aが連結されている。
また、操作弁10には接続経路管11が接続されており、接続経路管11の端部には図示しない水道管を接続するための水道管接続部11aが設けられている。また、操作弁10から反対側へ延びてドレン経路管12が設けられている。
【0016】
なお、操作弁10のハンドル10aは、常には、このドレン経路管12側に付勢されて略水平状態に保持されるように構成されており、通常は操作弁10を介し加圧タンク2内の水圧室5とドレン経路管12が連通状態にされ、加圧タンク2の水圧室5内の水はドレン経路管12から排出されて、加圧タンク2内には逆止弁7から空気室4内に空気が導入された状態に保持される。
また、ハンドル10aを時計方向に引き下げて垂直状態にすると、操作弁10を介して加圧タンク2の水圧室5と接続経路管11が連通状態となり、この状態で、水道管からの水圧が接続経路管11および共通ポート管9を通り加圧タンク2内の水圧室5内に流入されて、空気室4が加圧されるように構成されている。
なお、図3は、水圧室5内に水道水が供給されて加圧タンク2内の空気室4が加圧された状態を示している。
【0017】
次に、液体タンク13を説明する。
液体タンク13は、内部に350cc程度の液体を溜めることのできる液体室14が下部に形成されており、上部には加圧空気を導入する空気室15が形成されて、全体として500cc〜600cc程度のタンク容量に形成されている。
この空気室15の上面側には、逆止弁16を介して空気流路18が連通されており、この空気流路18の上端は外側へ突出した接続管19に連通され、接続管19には、前述した如くカプラで構成される着脱部20を着脱可能に連結して連通管路8を接続できるものである。
なお、空気室15の上面側には、抜き取り部17が抜き取り可能に挿着されており、抜き取り部17に前記逆止弁16を介して空気流路18が形成されており、また、抜き取り部17には、空気流路18と平行状に液体流路21が縦設され、液体流路21の下端には挿入管22が連結されて、挿入管22は液体室14の底側まで延びて開口されている。
【0018】
なお、液体タンク13の下端には、液体タンク13を自立可能に支持する台座23が設けられている。
また、液体タンク13の上面側にはキャップ24が設けられており、このキャップ24の上端と抜き取り部17間にはクイックファスナー31が取り付けられて、クイックファスナー31により連結されており、このクイックファスナー31を横方向へ引っ張って引き抜くことにより、抜き取り部17は上方側へ抜き取ることができるように構成されている。
【0019】
なお、抜き取り部17には逆止弁16および挿入管22が設けられているため、これらも一体で液体タンク13から引き抜いて、その状態で液体タンク13内に洗剤等の液体を投入できるように構成されている。
抜き取り部17の上端には、液体出口管25が連結されており、液体出口管25にはホース26が連結されて、ホース26の先端側には、内部に弁部28を有する手持ち部27が設けられ、手持ち部27には弁部28を開閉操作できるボタン30が設けられている。また、先端側には洗剤等の液体をミスト状に噴霧することのできるスプレーノズル29が設けられている。
【0020】
このような構造において、通常は操作弁10のハンドル10aはドレン経路管12側に付勢されて、ドレン経路管12から加圧タンクの水圧室5内の水は排出されている。
この状態でハンドル10aを垂直方向に回転させて操作弁10を切り替えると、水道管の水圧が加圧タンク2の水圧室5に流入され、空気室4を図3に示すように圧縮し、圧縮された加圧空気が連通管路8を通り、液体タンク13の空気室15に導入され、空気室15が加圧されることで、液体タンク13内に溜められている液体室14内の液体が加圧されて、液体は挿入管22を通り、液体流路21から液体出口管25を通り、更にホース26を通って外側へ押し出される。この状態で手持ち部27を手で持ちボタン30を操作すると、弁部28が開いて、液体はスプレーノズル29から噴出されることとなる。
なお、液体タンク13には逆止弁16が設けられているため、空気室15内の加圧空気が外部に漏れることはなく、そのため着脱部20を構成するカプラをワンタッチで外して液体タンク13のみを分離させ、液体タンク13を自由に持ち運んで遠く離れた場所にも良好に液体を噴霧することができるものとなる。
【0021】
なお、加圧タンク2の水圧室5内には、ハンドル10aを操作した時のみ水道水が流入されるものであり、通常はドレン経路管12から水圧室5内の水は排出されて加圧タンク2には水圧は作用しておらず、加圧タンク2内の変位膜3等の損傷が防がれるものである。
また、通常は加圧タンク2と水道管は操作弁10を介し遮断されているため、水道管の蛇口を急閉止した場合に生ずる大きな水撃圧力が加圧タンク2に作用することがなく、加圧タンク2の破損を防ぐことができるものである。そのため、加圧タンク2はさほど頑丈な構造にする必要はないものである。
【0022】
なお、この噴霧装置1は、例えば図4の平面概略図に示すような浴室の洗い場33に、浴槽34側から横設されるカウンター35の下面側に隠蔽状に組み込んでおくことができるものであり、例えば図5に示すように、カウンター35を載せるカウンター載置面36aが上面に形成された支持箱体36内に加圧タンク2を組み込み、支持箱体36の底側の洗い場33側の部分に切欠36bを設けておき、この切欠36bに操作弁10のハンドル10aを配置させて、ハンドル10aを洗い場33側から操作できるように構成しておくことができ、ドレン経路管12からの排水は、良好に洗い場33に排水できるものである。
また、収納部37内には液体タンク13を収納させることができ、収納部37の上面側にはヒンジ39を介して開閉できる開閉蓋38を設けておき、この開閉蓋38を開けて収納部37から液体タンク13を取り出して使用できるように構成しておくことができる。
【0023】
なお、浴室にこのような噴霧装置1が組み込まれている場合には、浴室内の掃除に使用することができ、例えばバスマジックリン(登録商標)等の洗剤を液体タンク13の液体室14内に入れて、スプレーノズル29から洗剤をミスト状に噴霧させて使用することができるものである。
なお、浴室の天井や換気扇の洗浄にも使用することができ、また、窓ガラスの洗浄等にも使用することができるものであり、更には、浴室内から液体タンク13を持ち出して、屋外で洗車等にも使用することができるものである。
なお、液体タンク13内には、洗剤に限らず殺虫剤等を入れて、殺虫目的等に噴霧装置1を使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】噴霧装置の外観構成図である。
【図2】噴霧装置の内部構造を示す断面構成図である。
【図3】図2の状態から水道圧が加圧タンク内に作用した状態の断面構成図である。
【図4】浴室の平面概略構成図である。
【図5】支持箱体および収納部内に噴霧装置を組み込んだ状態の斜視構成図である。
【符号の説明】
【0025】
1 噴霧装置
2 加圧タンク
3 変位膜
4 空気室
5 水圧室
6 空気出口管
7 逆止弁
8 連通管路
9 共通ポート管
10 操作弁(三方弁)
10a ハンドル
11 接続経路管
12 ドレン経路管
13 液体タンク
14 液体室
15 空気室
16 逆止弁
17 抜き取り部
18 空気流路
19 接続管
20 着脱部
21 液体流路
22 挿入管
23 台座
24 キャップ
25 液体出口管
26 ホース
27 手持ち部
28 弁部
29 スプレーノズル
30 ボタン
33 洗い場
35 カウンター
36 支持箱体
36b 切欠部
37 収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が変位膜により上部の空気室と下部の水圧室に区画された加圧タンクと、
内部が上部の空気室と下部の液体を溜める液体室に区画された液体タンクを備え、
前記加圧タンクの空気室と前記液体タンクの空気室を気密に連通する管路で接続するとともに、前記加圧タンクの水圧室には水道管を接続してなる噴霧装置において、
前記加圧タンクの水圧室と水道管を接続する経路に、該経路を開閉操作できる操作弁を設けたことを特徴とする噴霧装置。
【請求項2】
前記操作弁は三方弁で構成されて、ドレン経路が設けられ、該操作弁を操作することで、前記加圧タンクの水圧室に対し、前記水道管または前記ドレン経路の何れかが連通されるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の噴霧装置。
【請求項3】
前記操作弁は、常には前記加圧タンクの水圧室と前記ドレン経路が連通している状態に付勢されていることを特徴とする請求項2に記載の噴霧装置。
【請求項4】
前記液体タンクは、空気室内に加圧された空気を気密に保持したまま前記液体タンクに連通する管路から分離できるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載の噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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