説明

噴霧装置

【課題】漏水検出用の電極が不要で、且つ気泡の付着や温度変化の影響を受けずに漏水を検知できる噴霧装置を構成する。
【解決手段】振動子32の励振電極Eと振動板31との間に切替回路103を介して駆動回路101又は抵抗値検出回路102が接続される。通常、切替回路103は駆動回路101を選択して、駆動回路101の駆動電圧を振動子32へ印加し、漏水検知を行うタイミングでは、抵抗値検出回路102を選択する。この状態で抵抗値検出回路102は振動子32の励振電極Eと振動板31との間の絶縁抵抗値に応じた電圧信号を発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水などの液体を霧化して噴霧する噴霧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波振動子を備えた噴霧装置に設けられる霧化器において、ホルダーケースの内部に水もれ検知用の電極を形成し、水もれが発生した時に直ちに駆動回路の励振を停止させる様にし、同時に水もれをランプ等で表示する様にした超音波霧化ユニットが特許文献1に開示されている。
【0003】
図1は特許文献1に示されている噴霧装置の霧化器部分の断面図である。この霧化器は、ホルダーケース4の底面に、電極11、12が形成され、圧電素子1がゴムパッキン3に設けた溝に挿入されて固定用金属ベース2に固定されている。もし取り付けが不完全でゴムパッキン3より水がホルダーケース内に侵入し、電極11、12に水が溜ると、ホルダーケース底面の一対の電極11、12が繋がる励振回路の動作が停止するように励振回路が構成されている。
【0004】
また、特許文献2には、液体金属冷却型高速炉に用いられる蒸気発生器において、伝熱管破損による液体金属中への水漏洩を検出する水漏洩検出装置において、破損して液体金属中に水あるいは蒸気が流出することによって発生する水素気泡が導波体に付着すると、圧電素子が先端に形成された導波体の共振状態が変化することによって、早い応答時間で水漏洩を検出することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−72665号公報
【特許文献2】特開2000−249784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
霧化用孔が形成された振動板を振動子で振動させることによって、液体が接している振動板の第1の面とは反対側の第2の面へ霧を発生させる霧化器に特許文献1,2の構造を適用した例を図2に示す。図2(A)は霧化器の斜視図、図2(B)はその分解斜視図である。この霧化器は液体輸送路の先端部に設けられる。霧化器は台座部43、霧化器ホルダー47、下部パッキン49、上部パッキン50、及びカバー部材51を備えている。下部パッキン49と上部パッキン50との間に、圧電素子を備えた振動板が挟持されている。
【0007】
台座部43には漏水検出用電極53S,54Sが配置され、外部に漏水検出用端子53T,54Tが引き出されている。また、振動板を振動させる圧電素子のリード線52が引き出されている。
【0008】
このように、特許文献1に示される漏水検知のための構造を霧化器に適用すると、漏水検出用の専用の電極を設ける必要があり、コスト上昇につながる。また、漏水検出用電極53S,54Sが振動板と離れた位置に配置されているため、下部パッキン49と上部パッキン50との間又はカバー部材51からあふれ出るほど漏水しなければ、漏水を検知できない。
【0009】
また、特許文献2の場合、導波体に水が付着すると、その付着量によって圧電素子のインピーダンスの周波数特性が変化する。したがって、漏水の有無に応じて発振周波数が変化するので、測定した発振周波数に基づいて漏水の有無を検知できる。
【0010】
ところが、液体に接した状態で振動板を振動させた時に霧化と同時に、キャビテーション現象が生じ液体中に気泡が発生することが知られているが、振動板に気泡が付着することによって共振周波数が変化する。また、温度変化によっても圧電素子の共振周波数が変化する。このため、圧電素子の共振周波数の変化に基づいて漏水を検知しようとすると、誤検知するおそれがある。
【0011】
本発明は、漏水検出用の電極が不要で、且つ気泡の付着や温度変化の影響を受けずに漏水を検知できる噴霧装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の噴霧装置は、振動板と、この振動板を振動させる振動子と、前記振動板へ液体の輸送する液体輸送手段とを備え、前記振動板の第1の面が液体に接し、当該液体に振動を与えて、第1の面とは反対側の第2の面から霧を発生させる噴霧装置において、
前記振動子は励振電極を備えた圧電素子であり、前記圧電素子の励振電極に印加する駆動電圧を発生する駆動電圧発生回路と、前記圧電素子の励振電極間の抵抗値(またはその抵抗値に対応して変位する電気的変量)を検出する抵抗値検出回路と、前記駆動電圧発生回路を前記励振電極に接続する状態と、前記抵抗値検出回路を前記励振電極に接続する状態とを切り替える回路切替手段と、を備えている。
【0013】
例えば、前記振動板は金属板であり、前記振動子は前記振動板に貼付された圧電素子であり、前記励振電極の一つは前記振動板である。
【0014】
また、前記抵抗値検出回路の検出結果に基づいて、前記液体輸送手段による液体の輸送を停止させる液体輸送制御手段を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、漏水検出用の電極が不要であり、しかも気泡の付着や温度変化の影響を受けずに漏水を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は特許文献1に示されている噴霧装置の霧化器部分の断面図である。
【図2】図2は、霧化用孔が形成された振動板を振動子で振動させることによって、液体が接している振動板の第1の面とは反対側の第2の面へ霧を発生させる霧化器に特許文献1,2の構造を適用した例を示す図である。
【図3】図3は第1の実施形態に係る噴霧装置100の断面図である。
【図4】図4は、図3に示した霧化器部分の構造を示す一部破断斜視図である。
【図5】図5は振動板31の断面図である。
【図6】図6は振動板31の平面図である。
【図7】図7は振動子に接続される回路のブロック図である。
【図8】図8は、駆動回路101、抵抗値検出回路102及び切替回路103の回路図である。
【図9】図9は圧電素子Y1の励振電極間の絶縁抵抗値(振動子32の励振電極Eと振動板31との間の絶縁抵抗値)と付着する水の質量との関係を示す図である。
【図10】図10は抵抗値検出回路102の出力電圧と絶縁抵抗IRとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
《第1の実施形態》
図3は第1の実施形態に係る噴霧装置100の断面図である。この噴霧装置100は、霧化器30と、液体貯留部22と、この液体貯留部22から霧化器30まで液体を輸送する液体輸送路23と、ブロア21を備えている。ブロア21は液体貯留部22内の液体Wの液面に圧力を加えることによって、液体貯留部22から霧化器30の方向へ液体輸送路23を介して液体を水頭差を利用して輸送する。霧化器30には、多数の霧化孔が形成された振動板31が設けられている。
【0018】
この例では、液体貯留部22に貯留する液体Wは除菌・脱臭効果のある活性酸素を含んだ電解水である。具体的には、液体貯留部22内に電気分解用の電極を設けていて、水道水の電気分解により、水道水に含まれる塩化物イオン(Cl-)を使用して、「次亜塩素酸(HCIO)」と「OHラジカル」という2種類の活性酸素を生成する。この電解水を室内に噴霧することによって室内の空気を除菌・脱臭する。
図4は、図3に示した霧化器部分の構造を示す一部破断斜視図である。霧化器30は液体輸送路23の先端部に設けられている。液体輸送路23の先端には、霧化器30を設置する台座部33が形成されている。霧化器30が霧化器ホルダー37に保持された状態で台座部33に設置されている。
【0019】
霧化器30は、振動板31、振動子32、下部パッキン39、上部パッキン40、及びカバー部材41を備えている。振動板31は円板状の金属板であり、この金属板の中央部には直径0.08mm以下の多数の霧化孔が形成されている。振動子32はリング状の圧電素子であり、振動板31に対して同心位置に貼付されている。振動板31は、その周辺部が下部パッキン39と上部パッキン40とによって挟持されている。
【0020】
図5は振動板31の断面図である。前記圧電素子である振動子32の上面には励振電極が形成されていて、この励振電極と振動板31との間に交流電圧が印加されることにより振動子32が拡がり振動する。この振動子32が振動板31に貼付されていることにより、振動板31は屈曲振動する。
【0021】
台座部33、霧化器ホルダー37、及び下部パッキン39により、振動板31の下部に形成される空間には、液体輸送路23を輸送される電解水が満たされる。駆動回路によって振動子32が例えば160kHzで振動すると振動板31に設けられた無数の霧化孔から水が霧となって放出される.
図6は振動板31の平面図である。振動板31の中央部には薄肉部31Cが形成されていて、この薄肉部31Cに多数の霧化孔MHが形成されている。これらの霧化孔MH内に充填される微少な電解水が振動板31の振動によって霧状となって振動板31から離間し、振動板31の上面へ放出(浮遊)される。
【0022】
また、台座部33には、液体輸送路23とは別に空気排出孔35が形成されており、空気排出孔35の入り口には防水通気シート36が形成されている。振動板31の下部の空間に電解水が満たされた状態で、振動板31を振動させると、キャビテーション現象により気泡が発生することがある。この気泡は振動板31の霧化孔を塞いでしまうと、霧化を妨げる恐れがある。そこで、入り口が防水通気シート36で覆われた空気排出孔35を形成することによって、電解水を外部に漏らさずに、気泡を効率よく排出することができる。
【0023】
図7は前記振動子に接続される回路のブロック図である。
振動子32の励振電極Eと振動板31との間に切替回路103を介して駆動回路101及び抵抗値検出回路102が接続される。通常、切替回路103は駆動回路101を選択して、駆動回路101の駆動電圧を振動子32へ印加し、漏水検知を行うタイミングでは、抵抗値検出回路102を選択する。この状態で抵抗値検出回路102は振動子32の励振電極Eと振動板31との間の絶縁抵抗値に応じた電圧信号を発生する。
【0024】
図8は前記駆動回路101、抵抗値検出回路102及び切替回路103の回路図である。駆動回路101において、トランジスタQ1,Q2及び抵抗R10はバッファ回路を構成していて、このバッファ回路がオペアンプU1Aの出力端に接続されている。オペアンプU1Aの非反転入力端とバッファ回路の出力端との間には、切替回路103のリレーである光MOS FET RY2,RY3を介して圧電素子Y1が接続されている。また、オペアンプU1Aの反転入力端とバッファ回路の出力端との間にキャパシタC3と抵抗R9の並列回路が接続されている。オペアンプU1Aの非反転入力端と反転入力端は抵抗R1,R2を介して基準電位に接地されている。
【0025】
切替回路103の光MOS FET RY2,RY3の5,6番端子間はノーマリーオフ、7,8番端子間はノーマリーオンである。光MOS FET RY2,RY3の2,4番端子は接地されていて、1,3番端子に選択電圧(正電圧)が印加されると、5,6番端子間が導通し、7,8番端子間が開放される。したがって、Select端子が接地電位である通常状態では、圧電素子Y1が駆動回路101に接続されて発振動作する。Select端子がハイレベルである抵抗検知状態では、圧電素子Y1が抵抗値検出回路102に接続される。このとき圧電素子の第1端に基準電圧V6が印加され、第2端の電圧が抵抗値検出回路102に入力される。
【0026】
抵抗値検出回路102のオペアンプU2Dの出力端と反転入力端との間には抵抗R19が接続されている。抵抗値検出回路102の入力部とオペアンプU2Dの反転入力端との間に抵抗R18が接続されている。この構成によって、抵抗値検出回路102と圧電素子Y1とで反転増幅回路として作用する。
【0027】
漏水が無ければ、抵抗検知状態で抵抗値検出回路102の入力電圧は0Vであるので、IR OUT端子の出力電圧は0Vとなる。もし漏水していれば、圧電素子Y1の励振電極間の絶縁抵抗値が低下して、抵抗検知状態で抵抗値検出回路102に或る正電圧が入力されるので、IR OUT端子の出力電圧は或る負電位となる。
【0028】
前記Select端子にはマイコンの出力ポートが接続されていて、マイコンの制御によって駆動モードと抵抗検知モードとを交互に所定のインターバルで切り替える。また、抵抗値検出回路102のIR OUT端子はマイコンの入力ポートに接続されていて、IR OUT端子の電圧がマイコンで読み取られる。
【0029】
図9は前記圧電素子Y1の励振電極間の絶縁抵抗値(振動子32の励振電極Eと振動板31との間の絶縁抵抗値)と付着する水の質量との関係を示す図である。また、図10は抵抗値検出回路102の出力電圧と絶縁抵抗IRとの関係を示す図である。
【0030】
ここでは、付着した水の質量が0.1gを超える状態が漏水状態と見なす。付着した水の質量が0.1gであるときの抵抗値は、図9に示したように約1MΩである。絶縁抵抗値が1MΩであるとき、抵抗値検出回路102の出力電圧は図10に示したように−9Vに達する。したがって、例えば−5Vをしきい値と定め、抵抗値検出回路102の出力電圧が−5Vを下回ったとき漏水状態であるものと見なす。漏水状態と見なせば、漏水状態である旨を表すインジケータを表示するとともにブロア21を停止することによって、それ以上の漏水の進行を防止する。ブロア21による水の輸送を停止した状態で振動板を駆動すると、振動板の上面に滲み出た過剰の水が徐々に霧化されて漏水は解消される。漏水状態が解消されれば、ブロア21を再び駆動して通常の動作に戻る。
【0031】
なお、切り替え回路に設けるリレーは、半導体リレー以外に機械式リレーを用いてもよい。
【符号の説明】
【0032】
E…励振電極
IR…絶縁抵抗
MH…霧化孔
Q1,Q2…トランジスタ
U1…オペアンプ
U1A…オペアンプ
U2…オペアンプ
U2D…オペアンプ
U3…オペアンプ
W…液体
Y1…圧電素子
21…ブロア
22…液体貯留部
23…液体輸送路
30…霧化器
31…振動板
31C…薄肉部
32…振動子
33…台座部
37…霧化器ホルダー
39…下部パッキン
40…上部パッキン
41…カバー部材
43…台座部
47…霧化器ホルダー
49…下部パッキン
50…上部パッキン
51…カバー部材
52…リード線
53S,54S…漏水検出用電極
53T,54T…漏水検出用端子
100…噴霧装置
101…駆動回路
102…抵抗値検出回路
103…切替回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板と、この振動板を振動させる振動子と、前記振動板へ液体の輸送する液体輸送手段とを備え、前記振動板の第1の面が液体に接し、当該液体に振動を与えて、第1の面とは反対側の第2の面から霧を発生させる噴霧装置において、
前記振動子は励振電極を備えた圧電素子であり、
前記圧電素子の励振電極に印加する駆動電圧を発生する駆動電圧発生回路と、
前記圧電素子の励振電極間の抵抗値を検出する抵抗値検出回路と、
前記駆動電圧発生回路を前記励振電極に接続する状態と、前記抵抗値検出回路を前記励振電極に接続する状態とを切り替える回路切替手段と、
を備えた、噴霧装置。
【請求項2】
前記振動板は金属板であり、前記振動子は前記振動板に貼付された圧電素子であり、前記励振電極の一つは前記振動板である、請求項1に記載の噴霧装置。
【請求項3】
前記抵抗値検出回路の検出結果に基づいて、前記液体輸送手段による液体の輸送を停止させる液体輸送制御手段を備えた、請求項1又は2に記載の噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−11320(P2012−11320A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150552(P2010−150552)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】