説明

噴霧装置

【課題】液体、特に薬剤または化粧液を噴霧するための噴霧器を提供する。
【解決手段】噴霧器10は、液体貯蔵容器30と、噴霧室を持ち、さらに振動子を持つ噴霧装置20であって、振動子により噴霧室内に存在する液体が噴霧の目的のために振動させられることができる噴霧装置20と、取入れ通路であって、それを介して液体貯蔵容器30が噴霧装置20に連結される取入れ通路と、液体貯蔵容器30から噴霧室に液体を送出する目的のために前記取入れ通路70内に設けられているポンプ装置50と、ポンプ装置50及び前記振動子を制御するための電子制御装置40を含み、取入れ通路70とは別個でありかつ噴霧室から液体貯蔵容器30中に液体を排出するように作用する戻り通路82を具備する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体、特に薬剤または化粧液を噴霧するための噴霧器に関する。一般的な噴霧器は液体貯蔵容器及び噴霧装置を含み、噴霧装置は複数の出口オリフィスにより環境大気と連通する噴霧室、及び振動子を含み、この振動子により噴霧室内に存在する液体が噴霧の目的のために振動させられることができる。さらに、一般的な噴霧器は取入れ通路を含み、それにより液体貯蔵容器は噴霧装置、及び液体貯蔵容器から噴霧室に液体を運ぶ目的のために取入れ通路内に設けられたポンプ装置に連結される。電子制御装置はポンプ装置及び振動子を制御するために設けられる。
【背景技術】
【0002】
一般的な噴霧器は従来技術で既知である。それらは液体を微細な霧状に噴霧するために使用される。これらの液体は特に薬剤または化粧液である。薬剤液体の場合、噴霧の目的は、例えば噴霧器による極めて容易に吸入できる噴霧の生成にある。化粧液の場合、噴霧の目的は、例えば極めて均一な液体の層を皮膚のある領域上に生成するために噴霧器による非常に均一な排出を達成することにある。
【0003】
一般的な噴霧器のポンプ装置は、噴霧装置への液体の連続供給を提供する目的の役に立つことができる。しかし、ポンプ装置により生成されたポンプ輸送される体積流量が液体の噴霧の速度と完全に合うような方法でポンプ装置と噴霧装置を調和することは困難であることが見出された。極めて高いポンプ輸送される体積流量の場合、液体が排出オリフィスを通って非噴霧状態で流れ、噴霧装置から遠い排出オリフィスの側を液体膜で覆って噴霧を妨害するという噴霧特性の悪化の危険がある。極めて低いポンプ輸送される体積流量の場合、良好な品質の噴霧を達成することは同様に不可能である。なぜなら比較的大きな量の空気が噴霧室内に集まり、噴霧形態の液体の排出を妨げるからである。これらの欠点は、様々な位置での使用のために意図されている噴霧器で特に問題である。この位置の変化は様々な理由のために望ましい。従って、例えば薬剤の吸入のために使用される噴霧器では、噴霧器が患者により様々な位置で、例えば立った位置または横になった位置で使用可能であることが望ましい。皮膚の様々な領域で付与されるべき化粧品のために使用される噴霧器の場合、噴霧器が一定の変化しない位置に保たれているときにこれを行なうのは困難である。一般的な噴霧器の変化する向きは前述の問題を高める。なぜならそれは噴霧室中への空気の流入を助長するからである。加えて、噴霧室内の圧力状態は噴霧器の向き及び動きにかなりの程度で依存する。
【0004】
ポンプ装置と噴霧装置の間の調和を達成する問題を処理するために、従来技術では、例えばDE102004006452A1から、ポンプ装置と振動子を連続的に起動することが知られている。初めに、噴霧室自体及びそれに直接連結された毛管通路がポンプ装置により液体で満たされる。次いで噴霧室及び毛管通路中に導入された液体の量を排出するために振動子が起動される。かかる設計の欠点は、排出される液体の量が小さいことである。従って、連続噴霧工程を達成することは不可能である。これは、ある薬剤の場合、さらに化粧液の場合にかなりの不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ポンプ装置と噴霧装置の間の調和を達成するためのかなりの努力を避けながら連続噴霧工程を達成することにより一般的な噴霧器を開発することである。特に、様々な向きで保持されることができる噴霧工程で使用するために適している噴霧器を提供することが望まれている。
【0006】
本発明によれば、この目的は、取入れ通路とは別個でありかつ噴霧室から液体貯蔵容器中に液体を排出する作用をする戻り通路の提供により達成される。従って、液体がポンプ装置により液体貯蔵容器から噴霧装置の噴霧室に運ばれる取入れ通路に加えて噴霧室から液体貯蔵容器へ通ずる通路がかかる設計では設けられる。この戻り通路の主たる仕事は、過剰な液体を噴霧室から液体貯蔵容器に再循環することである。これは、噴霧室が噴霧装置により噴霧されることができるときの排出される体積流量より有意に大きい体積流量の液体で供給されることを可能にする。過剰量の液体は出口オリフィスを通して排出されず、その代わりそれは戻り通路を通して液体貯蔵容器中に戻る。戻り通路はこの目的のために適切に寸法決定されることができる。この構造は液体の連続噴霧を確実にし、その間、噴霧された体積流量より明らかに大きな体積流量の液体が噴霧室に連続的に供給されることで十分な液体が常に噴霧の目的のために利用可能である。さらに、たとえ空気が出口オリフィスを通して噴霧室に入ったとしても、戻り通路は、この空気が噴霧室から除去され、過剰液体と一緒に液体貯蔵容器中へ流れることを可能にする。従って、本発明の噴霧器は、非常に再現性がある一定の噴霧工程を確実にする。
【0007】
本発明の噴霧器の噴霧装置は、従来技術で知られている噴霧装置と類似している。噴霧室に存在する液体は、好ましくは圧電振動子の形の振動子により振動させられ、かくして複数の非常に小さな出口オリフィスを通しての液体の再現性ある排出が噴霧室内の実質的に一定の圧力条件下で達成される。排出された液体は、ポンプ装置により、液体貯蔵容器からの液体と置き換えられる。この目的のために、ポンプ装置は好ましくはマイクロポンプの形である。かかるマイクロポンプは、例えば入口弁と出口弁を備えかつ一つ以上の圧電作動器により周期的に容積を拡大かつ減少されるポンプ室を持つことができる。
【0008】
均一な排出挙動を達成する目的のために、ポンプ装置により噴霧室に供給される液体のポンプ輸送される体積流量は、出口オリフィスを通過する液体の排出される体積流量より大きい。排出される体積流量は、噴霧装置の設計、及び制御装置による振動子の起動に有意に依存する。ポンプ輸送される体積流量は、ポンプ装置自体の設計、及び制御装置によるその起動、及び液体を運ぶ通路の設計に依存する。排出される体積流量より大きい望ましいポンプ輸送される体積流量は、噴霧装置、ポンプ装置、及び通路の適切な設計により、特に制御装置によるその起動により達成されることができる。
【0009】
噴霧工程時にポンプ輸送される体積流量が排出される体積流量より少なくとも20%大きいときに特に有利である。ポンプ輸送される体積流量がさらにより大きな程度まで排出される体積流量より大きいときに一層有利である。ポンプ輸送される体積流量が排出される体積流量より40%以上大きいときにさらに一層有利である。噴霧工程の均一性は、ポンプ装置により送出される液体の量が噴霧装置により噴霧される液体の量より有意に大きいときに非常に効果的に確保される。
【0010】
原理的には、制御装置は、開始信号に応答して、例えば使用者による起動に応答してポンプ装置及び振動子を同時に始動させるように構成されることが可能である。しかし、制御装置が噴霧工程が始まる前にポンプ装置をまず準備段階で起動し、さらに準備段階の終了で振動子を起動するように構成されるときに有利であると考えられる。好ましくは少なくとも0.3秒、より好ましくは少なくとも0.8秒続く準備段階は、噴霧室が振動子の起動の前に液体で完全に満たされること、及びその装置の起動のために噴霧室内に正圧が起こることを確実にする。これらは、振動子の続く起動のため、従って噴霧工程を起こすための理想的な諸条件である。
【0011】
特に液体が準備段階時にポンプ装置により発生された圧力下で噴霧装置の出口オリフィスを通して排出されるのを防ぐために、準備段階の噴霧室内に起こる圧力が出口オリフィスを通して液体を押しやるのに十分でないようにポンプ装置が構成され及び/または制御装置により起動されること及び噴霧装置の出口オリフィスが構成されることが有利である。これは、小さな出口オリフィスの使用により、出口オリフィスの好適な形状を選ぶことにより、及び/または噴霧室内に低圧を確立することにより達成されることができる。圧力は、それが振動子により作られた振動と組み合わせてのみ出口オリフィスを通して液体を押しやるのに十分であるように調整されなければならない。比較的低い圧力は、ポンプ装置の適切な調整により噴霧室内に作られることができる。しかし、ポンプ装置とは別個である絞り弁がこの目的のために有利である。
【0012】
基本的にどのような形の液溜めも液体貯蔵容器として使用されることができる。最も簡単な場合、液体貯蔵容器は例えば寸法的に安定な液溜めであることができ、その中にポンプ装置に連結された立上り管が延びる。特に様々な向きの噴霧器の機能的効率に対しては、液体貯蔵容器がその内部容積に関してそこに存在する液体の量にそれ自体適合することができる寸法的に柔軟な液体含有袋の形であるときに有利であると考えられる。かかる寸法的に柔軟な液体含有袋はどのような通気も必要としない。なぜなら残る容積にかかわらず、液体含有袋内の液体の圧力は有意に変らず、代わりに周囲圧力に常に等しいからである。かかる液体貯蔵容器は、以下に述べる気体状残留物を除き、液体でもっぱら満たされ、従ってポンプ装置は常に液体を引き込むであろう。本発明の場合、液体貯蔵容器は二つの開口を持ち、その一つは取入れ通路に連結され、他方は戻り通路に連結される。液体含有袋の使用は、それと関連した汚染の非常に低い危険のためにさらに有利である。
【0013】
脱泡装置を設けることは有利である。なぜなら、特に、かかる液体含有袋を使用した場合であっても液体含有袋が液体で満たされるときに気体が液体含有袋に入る可能性を完全に排除できないし、同様に出口オリフィスを通って噴霧室中に入った空気が戻り通路により液体貯蔵容器に入る可能性を完全に排除できないからである。脱泡装置は、好ましくは取入れ通路内に、より好ましくはポンプ装置と噴霧室の間に設けられる。
【0014】
この脱泡装置は、噴霧室に供給された液体が気泡を少なくとも有意な範囲まで含まないことを確実にする。ポンプ装置と噴霧室の間の脱泡装置の配置はさらに、ポンプ出力側で作られた圧力によって脱泡装置内の液体からの気泡の除去を助ける。好ましくは、脱泡装置はダクトを含み、それを通して液体は噴霧室へのその道中を流れ、部分的にフィルター表面により境界を定められる。このフィルター表面は、気体がポンプ装置により作られた圧力で逃げることを可能にし、一方、ポンプの出力側の圧力は、液体をフィルター表面を通して押しやるのに十分でない。好ましくは、フィルター表面は、液体との接触を出来る限り減らすために疎水性であり、従っていかなる気泡もフィルター表面に吸着されるであろう。
【0015】
脱泡装置の特に有利な設計では、前述のダクトは、ベース要素内に設けられかつこのベース要素に付与された平坦な多孔性フィルター表面により閉じられる溝により形成される。これは構造的に非常に簡単な解決策である。ベース要素は好ましくはプラスチック要素の形で設けられることができ、そこでは溝は要素の製造時に形成され、この溝を通して液体は噴霧室へのその道中を流れるであろう。その開口側で、この溝は多孔性フィルター表面により閉じられ、この表面はこの目的のために平坦設計のものであり、従って非常に費用効果的に作られることができる。ベース要素、及び好ましくは膜の形であるフィルター表面は、接着または溶接により一緒に結合されることができる。
【0016】
脱泡装置の前述のダクトが少なくとも一つの湾曲したまたは曲がった部分を含むときに特に有利であると考えられる。ここで、多孔性フィルター表面がまたこの部分に沿って設けられることは重要である。かかる湾曲した部分が多孔性フィルター表面を通る気体の逃避を促進することが見出された。これは、おそらく気泡の殆どが曲線の内側湾曲領域に集まり、この領域内で減速した速度で運ばれるからである。好ましくは、数個の湾曲したまたは曲がった部分が設けられ、それらは互いに対して可変的に配向され、従って気泡の除去は噴霧器の様々な向きで可能である。さらに、好ましくは直線部を相互連結する湾曲した部分を含むダクトは、比較的小さな要素の場合であっても液体のための長い流路を作り、従って気泡は比較的長い時間に渡って多孔性フィルター表面を通して取入れ通路を離れることができる。
【0017】
上述のように、液体貯蔵容器内に存在する液体が活性薬剤成分を含み、かつ/または化粧品、特にセルフ・タンニング・ローションであるときに特に有利である。
【0018】
本発明の噴霧器は、排出工程時に噴霧される液体の量を差を取ることにより正確に決定することを可能にするために、取入り通路内と戻り通路内の両者に流量計を含むことができる。
【0019】
本発明の噴霧器は好ましくは移動式装置の形である。この目的のため、それは電池または蓄電池を含む。一つの特別な実施態様では、この装置は、特別なツールを必要とせずかつ少なくとも液体含有袋を含む使用者交換可能な消耗品のパックを含む。この消耗品のパックはさらに、電池を含むことができる。電子制御装置、ポンプ装置、脱泡装置、及び噴霧装置のような比較的高価な要素、及び任意選択的に蓄電池は、ベースユニットの要素であることができ、それには消耗品の外部パックが結合されることができる。
【0020】
本発明の追加の態様及び利点は、請求項、及び図面に関して説明される本発明の好ましい例示的実施態様の以下の説明に示される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の噴霧器の全体図である。
【0022】
【図2】図2は、ハウジング外殻の除去後の図1に示された噴霧器を示す。
【0023】
【図3】図3は、図1及び2に示された噴霧器の部分的な分解組立図である。
【0024】
【図4】図4は、図1から3に示された噴霧器の噴霧装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の手持ち噴霧器10の全体図である。噴霧器10は、ほぼ携帯電話の寸法でありかつ二つのハウジング外殻14,16を含むハウジング12を含む。凹所14aが上部ハウジング外殻14内に設けられ、その後ろに噴霧装置20(以下に詳細に説明される)が配置されている。さらに、制御スイッチ18が、ハウジング外殻14により形成された噴霧器の表面に設けられ、それにより噴霧器10が起動されることができる。
【0026】
図2及び3は、開放状態(すなわち上部ハウジング外殻14の除去後の状態)の噴霧器10を示す。図3は、全ての重要な要素を識別することを可能にするためにハウジング12から除去された位置の幾つかの要素を示す。
【0027】
二つの別個の領域12a,12bがハウジング12の内側に設けられている。領域12aは液体含有袋30の形の液体貯蔵容器30を含む。二つの開口(図には隠れている)が液体含有袋30上に設けられ、それらのそれぞれの上に結合装置32,34が柔軟チューブへの連結のために設けられている。
【0028】
前述の制御スイッチ18と前述の噴霧装置20はハウジング12の領域12bに配置されている。さらに、制御装置40とエネルギー貯蔵装置としての蓄電池(図示せず)がこの領域に設けられている。領域12bはさらに、圧電ポンプ装置50と脱泡装置60を含む。
【0029】
液体含有袋30は以下の態様で噴霧装置20に連結されている。結合装置32が柔軟チューブ70によりポンプ装置50の入力側50aに連結されている。脱泡装置60の入口60aに連結された追加の柔軟チューブ72がポンプ装置50の出力側50bに設けられている。この入口60aは、脱泡装置60のベース要素62の溝として形成された脱泡通路66に結合する。図2に示すように、ベース要素62は、噴霧器10の組み立てられた状態では膜64により、特に疎水性上部被覆を持ちかつ溝の周辺領域でベース要素62に接着または溶接されることができるアクリル共重合体系膜により液密態様で閉じられる。この膜64は、多孔性膜の形であり、通路66を通して流れる液体から気泡を逃がすことを可能にする目的の役目をする。通路66の反対端に、びん首領域68の形の絞り弁が設けられ、その断面積はその上流の通路部66のそれより実質的に小さい。このびん首領域68は、脱泡装置60の出口オリフィス60bに結合する。噴霧装置20(図4に拡大して示される)は、脱泡装置60のこの出口60bに直接設けられ、この直接連結を可能にするために貫通穴64aが膜64に設けられている。
【0030】
噴霧装置20は、液体入口20aと液体出口20bの間に設けられた噴霧室22を含む。上部ハウジング外殻14の開口14a近くのその側で、この噴霧室22は、複数の出口オリフィス24aを含む穿孔板24により境界を定められている。穿孔板24から遠いその側に、噴霧室22は壁26を備えており、それにケーブルにより制御装置40に連結された圧電振動子28が取り付けられている。圧電振動子28を収容しかつ配線するためにベース要素62と膜64に貫通穴が設けられている。
【0031】
噴霧室22から流れる過剰液体のために液体出口20bが設けられている。噴霧器の組立て状態では、この液体出口20bは、脱泡装置60のベース要素62をその出口80bまでこの通路部分80に脱泡機能が割り当てられることなく通過する液体通路80の入口80aと連通する。液体含有袋30の前述の第二結合装置34につながる柔軟チューブ82は出口80bに連結されている。
【0032】
従って、液体含有袋30は通路部70,72,66により噴霧装置20に連結される。これが取入れ通路である。戻り通路は通路部80及び82により形成される。
【0033】
噴霧器10の動作を以下に説明する。
【0034】
液体を液体貯蔵容器30から排出する目的のため、使用者は制御スイッチ18を起動する。この制御スイッチの起動は電子制御装置40により記録される。続いての噴霧工程のための準備策を実現するために、電子制御装置40は、圧電的に作動されるマイクロポンプ50を最初は単独で起動する。結果として、液体が、液体貯蔵容器30から柔軟チューブ70を通して吸い込まれ、さらに柔軟チューブ72を通して脱泡装置60に輸送される。ここで、液体は通路部66中に流れる。ポンプ装置50の出力50bでびん首領域68の絞り効果とともに確立されたポンプ圧のため、比較的高い圧力が通路部66内に形成される。周囲に対する通路部66内の正圧は好ましくは100ミリバールから500ミリバールの範囲である。この正圧は、吸い込まれた液体から多孔性膜64を通して気泡を追い出すのに十分であり、ガスは次いでハウジング12の隙間を通して逃げることができる。マイクロポンプ50によって送出された液体は前述の正圧では多孔性膜64を通して逃げることができない。従って、びん首領域68に入る液体は気泡をほとんど含まない。通路部66のW形状をした構成、特に三つの曲線66a,66b,66cは泡を除去する工程を促進する。なぜなら泡は三つの曲線66a,66b,66cの領域の内側湾曲部に集まり、さらに比較的ゆっくりとこの領域内で運ばれるからである。これは、気泡が多孔性膜64を通して逃げるための十分な時間を与える。噴霧装置20の上流に直接連結されたびん首領域68は液体の圧力の有意な減少に導く。それゆえ、気泡をほとんど含まない液体は減圧で噴霧室22中に流れる。この時点では振動子28はまだ起動されていないので、液体は噴霧装置20の入口側20aから噴霧装置20の出口側20bに直接流れる。びん首領域68により0ミリバールから30ミリバール、好ましくは2ミリバールから10ミリバールの範囲の正圧に減少される液圧は、最初は出口オリフィス24aにより環境中に液体を押しやるのに十分でない。従って、出口オリフィス24aはぬれない。代わりに、送出された全ての液体は、通路部80,82内の低い流れ抵抗のために準備段階では液体貯蔵容器中に戻るように流れる。準備段階では、ポンプ装置50のみが起動されるが、振動子28は起動されておらず、従って液体のポンプ輸送される全容積が再循環される。制御スイッチ18の起動前に噴霧室22内になお存在するかもしれない空気は、液体が噴霧室中に流れるときに噴霧室22から出口オリフィス24aを通して押しやられるか、または通路部80,82を通して液体含有袋30中に押しやられるかのいずれかで液体が続いて引き出されるときに脱泡装置60内で液体から除去される。
【0035】
準備段階の終了で、好ましくは約1秒後に、振動子28がまた制御装置40により起動される。結果として、噴霧室22内に存在する液体は振動させられ、それは、極めて小さな滴の形で出口オリフィス24aを通しての液体の排出をもたらす。従って、微細液体噴霧が上部ハウジング外殻14のオリフィス14aを通して送出され、この液体噴霧が例えば薬剤として吸入されることができ、または適切な液体が使用されるとき、化粧品付着物の形で皮膚上に送出されることができる。
【0036】
いったん振動子28が作動に切り替えられると、ポンプ装置50により噴霧装置20に送出された液体のポンプ輸送された容積の一部、好ましくは半分または主要部が出口オリフィス24aを通して送出される。ポンプ装置50により送出された液体のかなりの部分がなお残っており、この部分は通路部80,82を通して液体含有袋30に再循環される。これは、噴霧室22に不注意に入ったかもしれないいずれの空気も信頼性をもってそこから除去されることを確実にする。同時に、ポンプ輸送された体積流量が排出された体積流量より大きいという事実は、液体の十分な量が常に噴霧室22内に存在することを信頼性をもって確実にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体、特に薬剤または化粧液を噴霧するための噴霧器(10)であって、
− 液体貯蔵容器(30)
− 複数の出口オリフィス(24a)を介して環境大気と連通する噴霧室(22)を持ち、さらに振動子(28)を持つ噴霧装置(20)であって、振動子(28)により噴霧室(22)内に存在する液体が噴霧の目的のために振動させられることができる噴霧装置(20)、
− 取入れ通路であって、それを介して前記液体貯蔵容器(30)が噴霧装置(20)に連結される取入れ通路、
− 前記液体貯蔵容器(30)から前記噴霧室(22)に液体を送出する目的のために前記取入れ通路(70,72,66,68)内に設けられているポンプ装置(50)、及び
− 前記ポンプ装置(50)及び前記振動子(28)を制御するための電子制御装置(40)、
を含むものにおいて、
− 前記取入れ通路(70,72,66,68)とは別個でありかつ前記噴霧室(22)から前記液体貯蔵容器(30)中に液体を排出するように作用する戻り通路(80,82)、
を具備することを特徴とする噴霧器(10)。
【請求項2】
前記噴霧装置(20)及び前記ポンプ装置(50)が、噴霧時に前記ポンプ装置(50)により輸送される液体のポンプ輸送された体積流量が、前記噴霧装置(20)により達成される前記出口オリフィス(24a)を通して排出される体積流量より大きいような態様で構成されること、及び/またはそのような態様で前記制御装置(40)により制御されることを特徴とする請求項1に記載の噴霧器(10)。
【請求項3】
噴霧時のポンプ輸送された体積流量が、排出された体積流量より少なくとも20%大きいことを特徴とする請求項2に記載の噴霧器(10)。
【請求項4】
前記制御装置(40)が、排出操作の開始前の準備段階において、まず第一に前記ポンプ装置(50)のみを起動し、次いで前記準備段階の終了で前記振動子(28)を追加的に起動するように適合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の噴霧器(10)。
【請求項5】
前記ポンプ装置(50)が、前記準備段階で噴霧室(22)内に達成される圧力が前記出口オリフィス(24a)を通して液体を押しやるのに十分でないような態様で構成されること、及び/またはそのような態様で前記制御装置(40)により制御されること、及び前記噴霧装置(20)の前記出口オリフィス(24a)がそのような態様で構成されることを特徴とする請求項4に記載の噴霧器(10)。
【請求項6】
前記液体貯蔵容器(30)が寸法的に柔軟な液体含有袋(30)の形であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の噴霧器(10)。
【請求項7】
脱泡装置(60)が、好ましくは前記ポンプ装置(50)と前記噴霧室(22)の間に設けられることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の噴霧器(10)。
【請求項8】
前記脱泡装置(60)が通路部(66)を持ち、それを通して液体が前記噴霧室(22)へのその道中を流れ、それがフィルター表面(64)により部分的に境界付けられていることを特徴とする請求項7に記載の噴霧器(10)。
【請求項9】
前記ポンプ装置(50)が、前記脱泡装置(60)内に確立された圧力が多孔性フィルター表面(64)を通して気体を押しやるのに十分であるが前記多孔性フィルター表面(64)を通して液体を押しやるのに不十分であるような態様で構成されること、及び/またはそのような態様で前記制御装置(40)により制御されること、及び前記脱泡装置(60)がそのような態様で構成されることを特徴とする請求項8に記載の噴霧器(10)。
【請求項10】
前記脱泡装置(60)に付属する前記通路部(66)が
− 第一ベース要素(62)内の溝により形成され、それが前記要素に付与された前記平坦な多孔性フィルター表面(64)により閉じられること、及び/または
− 少なくとも一つの湾曲部分(66a,66b,66c)により相互連結されている少なくとも二つの直線部分を持つこと、
を特徴とする請求項8または9に記載の噴霧器(10)。
【請求項11】
前記液体貯蔵容器(30)内に存在する液体が、薬理活性物質を含むこと及び/または化粧品、特にセルフ・タンニング・ローションであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の噴霧器(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−453(P2012−453A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126311(P2011−126311)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(595154764)インジ エリッヒ プファイファ ゲーエムベーハ (16)
【Fターム(参考)】