説明

嚥下用ゼリー

【課題】適度な固さでまとまりを持っており、かつ、離水が少なく、付着性が低減した嚥下用ゼリー、並びに、コーヒー風味や紅茶風味を可能とする嚥下用ゼリーを提供する。
【解決手段】寒天、ローカストビーンガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ペクチン、タラガム、タマリンド種子ガム、ファーセルラン、アルギン酸、カードランから選ばれる1種または2種以上のゼリー成分を0.070〜0.163質量%、及び、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、澱粉、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ガッティガム、プルランから選ばれる1種または2種以上のトロミ成分を0.260〜0.370質量%含有し、コーヒー風味や紅茶風味となる添加物を配合した嚥下用ゼリー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼリー特性に優れた嚥下用ゼリーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本の高齢者の人口は年々増加傾向にあり、65歳以上の高齢者の総人口に占める割合は2005年に19.1%、2025年に25.8%になると試算されている(総務庁の統計調査)。また、2025年には後期高齢者(75歳以上の高齢者)の割合が、前期高齢者(65〜74歳)の割合を超えると言われている。
【0003】
このように年々増加する高齢者にとって重大な問題の1つは、摂食・嚥下機能の低下である。その機能低下の原因としては、老化による嚥下筋の筋力低下や、虫歯や歯槽膿漏などで歯または歯ぐきが弱り、咀嚼力が低下することなどが挙げられる。
【0004】
摂食・嚥下障害は、高齢者以外でも、小児障害者の摂食・嚥下障害や、脳卒中による摂食・嚥下障害などが存在する。
【0005】
摂食・嚥下障害になると、栄養が取れなくなることによる栄養失調や食べ物が肺などに入る、いわゆる「誤嚥」による肺炎などを発症し、最悪の場合、死に至るケースもある。
【0006】
また、摂食・嚥下障害患者にとって、栄養のみならず、日々の水分補給(1日に1.5L程度の水分摂取が必要)の手段を確保することも重要である。
【0007】
近年の高齢者の増加により、摂食・嚥下障害者の数は増加傾向にあるため、摂食・嚥下障害患者が安心して飲食できる飲食品の開発が急務になっている。
【0008】
これまでの「嚥下食」としては、手軽な水分補給手段としてトロミをつけた飲料や、食事に近いものとしては寒天やゼラチンを用いたゼリーや、調理した野菜や魚介類をミキサーにかけて食べやすくしたペースト状の食事などが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−144064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような嚥下食は毎日食べるものであるため、毎食同じ物性のものを作ること(再現性の確保)が重要であるが、毎回調理をする際に、加える水の量を揃えたり、加熱時間を統一したりすることはとても困難な作業であり、作業のマニュアル化の徹底が求められる。
【0011】
その一方で、毎食同じ物性、同じ風味のものを提供できるものとして各種商品が販売されている。例えば、ゼリーについてみると、市場には摂食・嚥下障害患者を対象にした水分、栄養補給ゼリーが数多く存在する。これらは手軽で風味も良好なため、使用者にとっては便利なものであるが、一方でいくつかの不満の声もある。
【0012】
使用者の不満として、「離水」の問題がある。離水とはゼリーから水分が流出する現象のことで、摂食・嚥下障害患者にとっては流出した水分が誤嚥の原因となる。
【0013】
また、「付着性」の問題もある。すなわち、口腔内に付着したゼリーに菌が繁殖し、それを誤嚥することで、誤嚥性肺炎が引き起こされたり、ゼリーの付着性(粘着力)が強すぎてゼリーが容器に付着し、容器からなかなか出てこない、という問題である。
【0014】
また、ゼリーが固すぎることが原因で、ストローで吸ってもなかなか口まで到達しなかったり、容器の注ぎ口からゼリーが出てくる際、クラッシュしてばらばらになってしまい、或いは口腔内でゼリーがばらばらになってしまい誤嚥の原因になることも報告されている。
【0015】
更に、風味についても、市販品は限られた種類しかなく、「たまには他の味のゼリーが食べたい」という声も多く聞かれている。
【0016】
従って、本発明の目的は、適度な固さでまとまりを持っており、かつ、離水が少なく、付着性が低減した嚥下用ゼリーを提供することである。また、本発明の別の目的は、コーヒー風味や紅茶風味を可能とする嚥下用ゼリーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記目的を達成するために、寒天、ローカストビーンガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ペクチン、タラガム、タマリンド種子ガム、ファーセルラン、アルギン酸、カードランから選ばれる1種または2種以上のゼリー成分を0.070〜0.163質量%、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、澱粉、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ガッティガム、プルランから選ばれる1種または2種以上のトロミ成分を0.260〜0.370質量%含有することを特徴とする嚥下用ゼリーを提供する。
【0018】
また、本発明は、上記目的を達成するために、寒天、ローカストビーンガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ペクチン、タラガム、タマリンド種子ガム、ファーセルラン、アルギン酸、カードランから選ばれる1種または2種以上のゼリー成分を0.060〜0.163質量%、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、澱粉、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ガッティガム、プルランから選ばれる1種または2種以上のトロミ成分を0.260〜0.370質量%、及び甘味料を含有することを特徴とする嚥下用ゼリーを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、適度な固さでまとまりを持っており、かつ、離水が少なく、付着性が低減した嚥下用ゼリーを提供することができる。また、コーヒー風味や紅茶風味を可能とする嚥下用ゼリーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔本発明の実施の形態に係る嚥下用ゼリー〕
本発明の実施の形態に係る嚥下用ゼリーは、ゼリー成分を0.070〜0.163質量%、トロミ成分を0.260〜0.370質量%含有する。後述する甘味料を配合する場合には、ゼリー成分配合量の下限を0.060質量%にすることができる(以下、同じ)。
【0021】
(ゼリー成分)
本実施の形態において、ゼリー成分とは、寒天、ローカストビーンガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ペクチン、タラガム、タマリンド種子ガム、ファーセルラン、アルギン酸、カードランから選ばれる1種または2種以上の事である。これらは、主にゲル化に寄与する増粘多糖類である。これらを用いることが離水と付着性の低減効果を発揮させる上で好ましい。特に、寒天及びローカストビーンガムを用いることが好ましい。
【0022】
ゼリー成分は、嚥下用ゼリーにおいて0.070〜0.163質量%の含量となるように添加する。後述する甘味料を配合する場合には、0.060〜0.163質量%、すなわち、ゼリー成分配合量の下限を0.060質量%にすることができる。この範囲を外れると特にゼリーの固さとまとまりの点において本発明の効果を奏することが難しくなる。好ましくは、0.070〜0.153質量%となるように添加し、後述する甘味料を配合する場合には、0.060〜0.100質量%添加するのがより好ましい。
【0023】
寒天及びローカストビーンガムを用いる場合には、寒天が0.040〜0.090質量%、ローカストビーンガムが0.010〜0.070質量%となるように添加することがゼリーの固さとまとまりを良好とする上で好ましい。より好ましくは、寒天が0.040〜0.087質量%、ローカストビーンガムが0.015〜0.066質量%となるように添加する。更に好ましくは、寒天が0.040〜0.087質量%、ローカストビーンガムが0.030〜0.066質量%となるように添加する。
【0024】
嚥下用ゼリーをコーヒー風味とする場合には、ゼリーのpHが低めになる(pH4.5〜5.5)ので、pHを中性に近づける方向へ調整することが好ましい。また、ゼリー成分を0.100〜0.163質量%含有させることが好ましい。後述する甘味料を配合する場合にはゼリー成分を0.060〜0.100質量%含有させることが好ましく、0.060〜0.080質量%含有させることがより好ましく、0.070〜0.080質量%含有させることが更に好ましい。これにより、良好な固さとまとまりのあるゼリーとすることができる。pHの調整はpH調整剤を少量添加する方法によって行うことが好ましい。使用するpH調整剤は食品添加物として認められているものならば特に限定されない。
【0025】
嚥下用ゼリーを紅茶風味とする場合には、ゼリーのpHがコーヒー風味の場合に比べて中性に近づく(pH5.6〜6.6)ので、特にpHを調整する必要はない。また、ゼリー成分を0.070〜0.099質量%含有させることが好ましい。これにより、良好な固さとまとまりのあるゼリーとすることができる。
【0026】
(トロミ成分)
本実施の形態において、トロミ成分とは、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、澱粉、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ガッティガム、プルランから選ばれる1種または2種以上の事である。これらは、主に増粘に寄与する増粘多糖類である。これらを用いることが離水と付着性の低減効果を発揮させる上で好ましい。特に、キサンタンガム及びカラギーナンを用いることが好ましい。
【0027】
トロミ成分は、嚥下用ゼリーにおいて0.260〜0.370質量%の含量となるように添加する。この範囲を外れると特にゼリーの固さとまとまりの点において本発明の効果を奏することが難しくなる。好ましくは、0.261〜0.366質量%となるように添加する。また、後述する甘味料を配合する場合には、トロミ成分を0.260〜0.300質量%含有させることが好ましい。
【0028】
キサンタンガム及びカラギーナンを用いる場合には、キサンタンガムが0.120〜0.230質量%、カラギーナンが0.110〜0.150質量%となるように添加することがゼリーの固さとまとまりを良好とする上で好ましい。より好ましくは、キサンタンガムが0.122〜0.224質量%、カラギーナンが0.110〜0.142質量%となるように添加する。更に好ましくは、キサンタンガムが0.150〜0.190質量%、カラギーナンが0.110〜0.142質量%となるように添加する。
【0029】
(ゼリー成分とトロミ成分)
以上より、ゼリー成分である寒天を0.040〜0.090質量%、同ローカストビーンガムを0.010〜0.070質量%、トロミ成分であるキサンタンガムを0.120〜0.230質量%、同カラギーナンを0.110〜0.150質量%含有させる実施形態が特に好ましい。
【0030】
また、上記の特に好ましい実施形態において、寒天に替えてサイリウムシードガムを0.02〜0.05質量%添加する形態も好ましい。
【0031】
(嚥下用ゼリー)
本実施の形態に係る嚥下用ゼリーは、pHが4〜7であることが好ましく、より好ましくはpH4.8〜6.6であり、最も好ましくはpH5.6〜6.6である。pHをこの範囲内にすることにより、適度な固さとまとまりをもつゼリーを得られる。
【0032】
また、本発明の嚥下用ゼリーには、味の調整や、ゼリー成分及びトロミ成分の水分散性を高め、保存時の離水を抑制するために、甘味料を配合することができる。甘味料を配合すると、ゼリー成分及びトロミ成分との混合時に甘味料が賦形剤として働くだけでなく、ゼリー成分及びトロミ成分の使用量も減らすことができるので、ゼリー成分及びトロミ成分の水への分散性をより高くすることができ、製造時の作業性が向上する。
【0033】
甘味料としては、砂糖、オリゴ糖、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、及びステビアから選ばれる1種又は2種以上の甘味料を使用することができ、特に、風味の点で砂糖を使用することが最も好ましい。
【0034】
嚥下ゼリー中の甘味料の含量は、0.01〜7質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましく、2〜5質量%であることが最も好ましい。
【0035】
嚥下用ゼリーを紅茶風味とする場合の紅茶風味の付与方法は特に制限はないが、紅茶パウダーやフレーバーを少量添加する方法が好ましい。
嚥下用ゼリーを紅茶風味とする場合には、pH5.6〜6.6の範囲内とすることが好ましく、より好ましくはpH6.1〜6.5の範囲内とする。
【0036】
嚥下用ゼリーをコーヒー風味とする場合のコーヒー風味の付与方法は特に制限はないが、コーヒーエキスを少量添加する方法が好ましい。
嚥下用ゼリーをコーヒー風味とする場合には、pH5.6〜6.6の範囲内とすることが好ましく、pH5.8〜6.3の範囲内とすることが最も好ましい。特に、甘味料を使用した場合に、このpH範囲内とすることで、嚥下用ゼリーがより適度な固さの食感となり、また、付着性がないものを得ることができるからである。
【0037】
嚥下用ゼリーの水分含量は、90〜97.72質量%であることが好ましく、より好ましくは95〜97.72質量%であり、前述の甘味料を配合する場合には水分含量は、90〜94質量%であることが好ましく、92〜94質量%であることがより好ましい。水分含量をこの範囲内にすることにより、ゼリーを適度な固さにする事が出来る。
【0038】
嚥下用ゼリーの固さは、10℃および20℃に調整したゼリーを直径40mm、高さ15mmの容器に15mm充填し、直線運動により物質の圧縮応力を測定することが可能な装置(RE-33005 RHEONER (YAMADEN))を用いて、直径20mm、高さ8mmの樹脂製のプランジャーを用いて、圧縮速度10mm/s、クリアランス5mmで2回圧縮により測定した値が600〜1500N/mであることが好ましく、より好ましくは700〜1400N/mである。また、前述の甘味料を配合する場合には、当該測定値が600〜2000N/mであることが好ましく、より好ましくは700〜1700N/mである。ゼリーの固さをこの範囲内にすることにより、適度な固さとまとまりをもつゼリーを得られる。
【0039】
(嚥下用ゼリーの製造方法)
本実施の形態に係る嚥下用ゼリーの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、以下のようにして製造することができる。
(1)ゼリー成分及びトロミ成分の粉末を混合し、ホモミキサーで撹拌しながら、水に溶解する。
(2)これに液体原料(フレーバーやエキスなど)を加える。
(3)ゼリー成分及びトロミ成分が充分膨潤するまで15〜30分撹拌する。
(4)撹拌後、UHT(超高温)殺菌を行なう(例えば、140℃、5秒間)。
(5)殺菌後の液(70〜80℃)を40〜50℃に冷却し、容器に無菌充填する。
(6)容器に充填後、5℃〜10℃の部屋で冷やし、固める。
【0040】
上記(4)におけるUHT(超高温)殺菌は、風味を劣化させないために、短時間(5〜60秒程度)で行なうことが好ましい。温度は130〜140℃程度が好ましい。
【0041】
コーヒー風味の嚥下用ゼリーを製造する場合、分散性が良好となるため、デキストリンを添加することが好ましい。
【0042】
また、甘味料を配合した嚥下用ゼリーを製造する場合には、上記(1)で、ゼリー成分及びトロミ成分の粉末を混合する際に甘味料を添加することにより製造することができる。
【0043】
〔本発明の実施の形態の効果〕
本発明の実施の形態によれば、摂食・嚥下障害患者が安心して食べることが可能な、適度な固さ(より好ましい形態では丁度良い固さ)でまとまりを持っており、かつ、離水が少なく(より好ましい形態では離水が殆ど無く)、付着性が低減した嚥下用ゼリーを提供することができる。
【0044】
本発明の実施の形態に係る嚥下用ゼリーは、直径2cm程度の口栓付500mLゲーブルトップ容器に充填して、容器からゼリーを出す際に、ゼリーがクラッシュしても、やわらかくまとまりを持っているため、ゼリーの塊同士がばらばらにならず、誤嚥しにくい物性を実現した。また、ゼリーの塊同士にまとまりがあり、口腔内でばらけない。
【0045】
上記の特徴から、本発明の嚥下用ゼリーは摂食・嚥下障害患者用として特に好適に用いる事が出来る。
【0046】
また、これまでにないコーヒーや紅茶という高齢者に人気の高い風味の嚥下用ゼリーを実現でき、摂食・嚥下障害患者だけでなく、介護者をはじめとして誰もがおいしく食べることができる美味な嚥下用ゼリーを提供することができる。
【0047】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
〔コーヒー風味のゼリーの製造〕
コーヒー風味のゼリー(実施例1〜4、比較例1〜2)を表1に記載の配合に従って、以下の手順で製造した。
初めに、ゼリー成分とトロミ成分を全て混合した。次に、この混合物にデキストリン及びpH調整剤を少量添加し、十分混合した。これを75±5℃に加温した水に添加し、攪拌した。ゼリー成分とトロミ成分が十分に膨潤したことを確認し、コーヒーエキスを少量加え、攪拌した。十分に攪拌した後、この溶液を133℃で60秒間UHT(超高温)殺菌し、その後、500mLの口栓付ゲーブルトップ容器に充填し、冷却して目的のゼリーを得た。
【0049】
〔紅茶風味のゼリーの製造〕
紅茶風味のゼリー(実施例5〜6、比較例3〜5)を表2に記載の配合に従って、以下の手順で製造した。
初めに、ゼリー成分とトロミ成分を全て混合した。次に、この混合物に紅茶パウダーと砂糖を少量添加し、十分混合した。これを75±5℃に加温した水に添加し、攪拌した。ゼリー成分とトロミ成分が十分に膨潤したことを確認し、フレーバーを少量加え、攪拌した。十分に攪拌した後、この溶液を133℃で60秒間、UHT(超高温)殺菌し、その後、500mLの口栓付ゲーブルトップ容器に充填し、冷却して目的のゼリーを得た。
【0050】
〔ゼリーの物性評価〕
製造したコーヒー風味のゼリー及び紅茶風味のゼリーの物性について、以下の評価を常温下で行なった。評価結果を表1及び表2に示す。なお、コーヒー風味のゼリーのpHはいずれも5.00〜6.50の範囲内であり、紅茶風味のゼリーのpHはいずれも6.25〜6.35の範囲内であった。
【0051】
(固さ)
ゼリーの固さについて、下記の3段階で官能評価した。評価は社内パネル5名で行った。
◎:とても良い(丁度良い固さ)
○:良い(多少、固い又はゆるい)
×:悪い(×1:固すぎる、×2:ゆるすぎる)
【0052】
なお、実施例2の固さについて、RE-33005 RHEONER (YAMADEN)で測定したところ、915±121N/m(10℃)、1028±128N/m(20℃)であった(n=3、Ave±SD)。また、実施例5の固さについて、RE-33005 RHEONER (YAMADEN)で測定したところ、1109±282N/m(10℃)、915±196N/m(20℃)であった(n=3、Ave±SD)。
【0053】
(まとまり)
ゼリーのまとまりについて、下記の3段階で官能評価した。評価は社内パネル5名で行った。
◎:とても良くまとまっている
○:良くまとまっている
×:まとまりが悪い(ぶつぶつ切れる)
【0054】
(離水の有無)
ゼリーの離水の有無について、評価した。評価は社内パネル5名で行った。
◎:離水なし
××:評価不能
【0055】
(付着性)
ゼリーの付着性について、評価した。評価は社内パネル5名で行った。
◎:付着なし
○:多少、付着性があった
×:かなり付着性があった
××:評価不能
【0056】
【表1】

【0057】
表1より、ゼリー成分0.070〜0.163質量%、トロミ成分0.260〜0.370質量%となる範囲内である実施例1〜4において本発明の効果が得られ、この範囲を外れた比較例1,2では本発明の効果が得られていないことが判る。
【0058】
【表2】

【0059】
表2より、ゼリー成分0.070〜0.163質量%、トロミ成分0.260〜0.370質量%となる範囲内である実施例5,6において本発明の効果が得られ、この範囲を外れた比較例3〜5では本発明の効果が得られていないことが判る。
【0060】
〔コーヒー風味のゼリーの製造〕
コーヒー風味のゼリー(実施例7、8)を表3に記載の配合に従って、以下の手順で製造した。
初めに、ゼリー成分とトロミ成分、砂糖、少量のpH調整剤(重曹)を混合した。これを75±5℃に加温した水に添加し、攪拌した。ゼリー成分とトロミ成分が十分に膨潤したことを確認し、コーヒーエキスを少量加え、攪拌した。十分に攪拌した後、この溶液を133℃で60秒間、UHT(超高温)殺菌し、その後、500mLの口栓付ゲーブルトップ容器に充填し、冷却して目的のゼリーを得た。
【0061】
得られたゼリーの物性評価(固さ、まとまり、離水、付着性)について、実施例1〜6と同様の評価方法で評価した。評価結果を、表3に記載する。なお、実施例7のゼリーのpHは5.05であり、実施例8のゼリーのpHは6.09であった。また、実施例8のゼリーについて、実施例2、5のゼリーの固さの測定と同様の方法で固さを測定したところ、1595±257N/m(20℃)であった(n=3、Ave±SD)。
また、実施例7及び8のゼリーについて、40℃、7週間の保存加速試験を行い、保存後の様子を調べた。
【0062】
【表3】

【0063】
甘味料を配合することで、ゼリー成分及びトロミ成分の使用量を少なくすることができ(例えば実施例2と実施例8の比較、同等の効果を得るための使用量を減らせる)、製造コストを抑えることができた。また、甘味料を配合することで、製造時のゼリー成分及びトロミ成分の水への分散性が高くなり、製造時の作業性が向上した。そして、表3の結果からわかるように、コーヒー風味のゼリーに甘味料として砂糖を配合した場合、ゼリーのpHを、5.05とした場合(実施例7)よりも、6.09とした場合(実施例8)の方が、より適度な固さの食感となり、また、付着性のないものとなった。
また、甘味料を配合した実施例7及び8のゼリーは、40℃、7週間の保存加速試験においても離水が生じることなく、離水性において極めて良好な性質を有することがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寒天、ローカストビーンガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ペクチン、タラガム、タマリンド種子ガム、ファーセルラン、アルギン酸、カードランから選ばれる1種または2種以上のゼリー成分を0.070〜0.163質量%、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、澱粉、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ガッティガム、プルランから選ばれる1種または2種以上のトロミ成分を0.260〜0.370質量%含有することを特徴とする嚥下用ゼリー。
【請求項2】
前記ゼリー成分は、寒天及びローカストビーンガムであることを特徴とする請求項1に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項3】
前記トロミ成分は、キサンタンガム及びカラギーナンであることを特徴とする請求項1に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項4】
前記ゼリー成分は、寒天及びローカストビーンガムであり、前記トロミ成分は、キサンタンガム及びカラギーナンであることを特徴とする請求項1に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項5】
前記寒天を0.040〜0.090質量%、前記ローカストビーンガムを0.010〜0.070質量%含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項6】
前記キサンタンガムを0.120〜0.230質量%、前記カラギーナンを0.110〜0.150質量%含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項7】
前記寒天を0.040〜0.090質量%、前記ローカストビーンガムを0.010〜0.070質量%、前記キサンタンガムを0.120〜0.230質量%、前記カラギーナンを0.110〜0.150質量%含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項8】
pHが4〜7であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項9】
pHが5.6〜6.6であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項10】
前記ゼリー成分を0.100〜0.163質量%含有し、かつコーヒー風味であることを特徴とする請求項8に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項11】
前記ゼリー成分を0.070〜0.099質量%含有し、かつ紅茶風味であることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項12】
水分含量が90〜97.72質量%であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項13】
ゼリーの固さが600〜1500N/m(測定温度10〜20℃)であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項14】
上記嚥下用ゼリーが摂食・嚥下障害患者用ゼリーである請求項1〜13のいずれか1項に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項15】
さらに、甘味料を含有することを特徴とする請求項1〜9,11,12及び14のいずれか1項に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項16】
寒天、ローカストビーンガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ペクチン、タラガム、タマリンド種子ガム、ファーセルラン、アルギン酸、カードランから選ばれる1種または2種以上のゼリー成分を0.060〜0.163質量%、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、澱粉、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ガッティガム、プルランから選ばれる1種または2種以上のトロミ成分を0.260〜0.370質量%、及び甘味料を含有することを特徴とする嚥下用ゼリー。
【請求項17】
水分含量が90〜94質量%であることを特徴とする請求項16に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項18】
上記嚥下用ゼリーが摂食・嚥下障害患者用ゼリーである請求項16又は請求項17に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項19】
前記ゼリー成分を0.060〜0.100質量%含有することを特徴とする請求項16〜18のいずれか1項に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項20】
前記トロミ成分を0.260〜0.300質量%含有することを特徴とする請求項16〜19のいずれか1項に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項21】
前記甘味料が、砂糖、オリゴ糖、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、及びステビアから選ばれる1種又は2種以上の甘味料であることを特徴とする請求項16〜20のいずれか1項に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項22】
前記甘味料の嚥下用ゼリー中の含量が、0.01〜7質量%であることを特徴とする請求項16〜21のいずれか1項に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項23】
ゼリーの固さが600〜2000N/m(測定温度10〜20℃)であることを特徴とする請求項16〜22のいずれか1項に記載の嚥下用ゼリー。
【請求項24】
コーヒー風味又は紅茶風味であることを特徴とする請求項16〜23のいずれか1項に記載の嚥下用ゼリー。

【公開番号】特開2010−88422(P2010−88422A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131357(P2009−131357)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】