説明

四塩化ケイ素をトリクロロシランへと連続的に変換するための触媒系

本発明は、触媒を含む水素化脱塩素反応器内での、水素を用いた四塩化ケイ素の変換のための改善された方法に関する。本発明は、さらに、かかる水素化脱塩素反応器のための触媒系に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒を含む水素化脱塩素反応器内での、四塩化ケイ素および水素の変換のための改善された方法に関する。本発明は、さらに、かかる水素化脱塩素反応器のための触媒系に関する。
【0002】
ケイ素化学における多くの技術的な方法の際、SiCl4およびHSiCl3が一緒に生じる。従って、これらの両方の生成物が互いに変換され、ひいては、その生成物の1つに応じたそれぞれの需要が満たされることが必須である。さらにまた、高純度HSiCl3は、ソーラーシリコンの製造の際の重要な出発物質原料である。
【0003】
四塩化ケイ素(STC)をトリクロロシラン(TCS)へと水素化脱塩素する際、技術標準に従って、熱的に制御された方法が用いられ、その際、STCは水素と一緒に、グラファイトで裏張りされた反応器、いわゆる「シーメンス炉」にみちびかれる。反応器中に存在するグラファイト棒は、抵抗加熱体として、1100℃またはそれより高い温度に達するように稼働される。高い温度および割り当てられた含水量によって、平衡状態が生成物のTCSのほうにシフトする。生成物混合物は、反応後に反応器から導き出され、且つ、煩雑な方法で分離される。反応器は連続的に貫流され、その際、反応器の内面は、耐食性材料としてのグラファイトからなっていなければならない。安定化のために、金属製の外被が用いられる。高温の際に熱い反応器壁で起き、ケイ素の堆積をみちびくことがある分解反応を可能な限り抑えるために、反応器の外壁を冷却しなければならない。
【0004】
必須且つ非経済的である非常に高い温度に基づく不利な分解の他に、反応器の定期的な洗浄も不利である。反応器の大きさが制限されていることに基づき、一連の独立した反応器が稼働されなければならず、このことも同様に経済的に不利である。さらなる欠点は、触媒を用いない、純粋に熱的に誘導される反応の実施であり、これは方法全体を非常に非効率的なものにする。
【0005】
さらにまた、現在の技術では、より高い空間収率/時間収率を達成するために、ひいては、例えば反応器の数を減らすために加圧下で稼働させるということはできない。
【0006】
EP0658359号においては、ハロゲン含有化合物の触媒性水素化脱ハロゲンのための方法が記載されており、そこでは、金属とケイ素との塩および水およびハロゲン含有ケイ素化合物を反応させるか、または微分散金属と、ハロゲン含有ケイ素化合物と、水とを反応させ且つ形成することによって、遷移金属シリサイドが得られる。実施例には完全な接触が記載されており、それは、触媒成分を完全に利用することなく、高い材料消費という結果となる。反応器のコーティング自体については、言及されていない。
【0007】
DE4108614号においては、必要とされる触媒のために、好ましくはSiO2/Al23からなる、例えば相応のゼオライトからなる微孔質材料が請求されている。かかる系の欠点は、記載された発熱工程における乏しい熱伝導率である。反応器のコーティングについては、言及されていない。
【0008】
EP0255877号においては、担持触媒が記載されており、そこでは、担体は好ましくは表面処理に供される。反応器のコーティングについては、言及されていない。
【0009】
WO2005/102928号においては、望ましい反応のための触媒中でのケイ素化によって電熱線が変換される。反応器壁の触媒コーティングについて、または担持触媒の使用については、言及されていない。
【0010】
本発明の課題は、ここで、四塩化ケイ素および水素をトリクロロシランに変換するための方法であって、効率的に作業され、且つ、比較しうる大きさの反応器を用いて高い変換率を達成でき、TCSの空間収率/時間収率も高める前記方法を提供することであった。さらに、本発明による方法は、TCSに関する高い選択性を可能にするものである。
【0011】
それらの問題の解決のために、STCと水素との混合物を、触媒作用を有する壁コーティングを備えられた管の形状の反応器を通じてみちびくことが見出された。該反応器を同時に加圧下で稼働できることも見出された。反応速度の改善のための触媒の使用と、選択性の向上並びに加圧稼働の反応との組み合わせは、経済的且つ環境的に非常に効果的な工程の流れをもたらすことができる。反応パラメータ、例えば触媒の配置、圧力、滞留時間、水素のSTCに対する比を適切に調節することによって、TCSの高い空間収率/時間収率が、高い選択性と共に得られる方法を示すことができる。
【0012】
場合によっては圧力を用いる、変換の触媒作用を有する、反応器の内壁コーティングの利用は、該方法の特徴であり、なぜなら、明らかに1000℃未満、好ましくは950℃を下回る比較的低い温度で既に、充分に多量のTCSを、熱分解による顕著な損失を受け容れる必要なく生成することができるからである。
【0013】
その際、反応器の反応管のために特定のセラミックス材料が使用できることが判明し、なぜなら、それらは充分に不活性であり、且つ、高温、例えば1000℃の際にも、場合によっては必須とされる耐圧性が保証され、セラミックス材料が、例えば構造を損傷し、ひいては機械的な負荷容量に悪影響しかねない相転移を経ることがない。この際、気密性の管を使用することが必須である。気密性および不活性性は、以下でより詳細に特定される高温耐性のセラミックスによって達成できる。
【0014】
触媒活性な内部コーティングの他に、反応器管を、追加的な措置として、流れの動力学を最適化するために、不活性なバラ材で満たすことができる。その際、該バラ材は、反応器の材料と同じ材料からなってよい。バラ材として、充填物、例えば環、球、棒、または他の適した充填物を使用できる。該充填物を、特別な実施態様において、追加的に触媒活性なコーティングで覆うことができる。
【0015】
反応器管の寸法付けおよび一体の反応器の設計は、管の幾何学的形状の使用可能性によって、並びに反応の進行のために必要な熱の導入に関する仕様によって決定される。その際、そのためにふさわしい周辺機器を有する個々の反応管と同様に、多くの反応器管の組み合わせを使用することができる。最後の場合、例えば天然ガスバーナーによって熱量がもたらされる加熱チャンバ内での、多くの反応器管の配置が重要であることがある。反応器管での局所的な温度ピークを回避するために、バーナーを管に直接的に向けるべきではない。それらは、例えば図1に例示的に示されるとおり、例えば反応室内に上から間接的に配列され、且つ、反応室にわたって分配されてよい。エネルギー効率を高めるために、反応器系を熱回収系につなげることができる。
【0016】
反応器壁、並びに場合によっては反応器充填物のための、単数または複数の触媒活性コーティングを製造する際、懸濁液もしくは塗料またはペーストが用いられ、その際、該懸濁液(以下で略して塗料またはペーストとしても示す)は、触媒活性金属または金属化合物を含有し、且つ、加熱段階の間に、反応器管または担持材料(固定床のバラ材)について固体の層を形成する。該懸濁液は通常、室温で流動性、即ち、塗料状の性質を有しているが、該懸濁液はペースト状でもあってもよい。該懸濁液の特徴は、反応器管または担体の表面が多孔質である必要がなく、且つ、粗さを高めるための前処理も必要としないことである。該懸濁液は、以下により詳細に記載される。該懸濁液は、塗布後、例えば空気または不活性ガスによって乾燥される。引き続き、例えば窒素または水素またはそれらの混合物下での昇温によって、部分的に分解され、その際、無機成分、例えば、付着のための表面を有する活性な金属がもたらされる。その際、引き続く反応のレベルとほぼ同じまたはより高い、従って少なくとも600℃、好ましくは800℃、特に好ましくは900℃である、好ましい温度に調節される。アニールを、管および充填物を反応室内に設置した後に行うことができる。
【0017】
上記で挙げられた課題の本発明による解決策は、種々の、または好ましい実施変法を含めて、以下でより詳細に記載される。
【0018】
本発明の対象は、水素化脱塩素反応器内で、四塩化ケイ素および水をトリクロロシランに変換するための方法であって、該変換が、水素化脱塩素反応器内で、変換の触媒作用を有する、反応器の内壁コーティングによって触媒される前記方法である。
【0019】
殊に、本発明による方法は、変換の際、四塩化ケイ素含有出発材料ガスと水素含有出発材料ガスとを水素化脱塩素反応器内で、熱を供給することによって反応させて、トリクロロシラン含有且つHCl含有生成物ガスを形成する方法である。生成物流の中には、場合により、副生成物、例えばジクロロシラン、モノクロロシランおよび/またはシランも含有されていてよい。生成物流の中には、通常、まだ反応していない出発材料、つまり、四塩化ケイ素および水素も含まれている。
【0020】
水素化脱塩素反応器内の平衡反応は、典型的には、700〜1000℃、好ましくは850℃〜950℃で、且つ、1〜10bar、好ましくは3〜8bar、特に好ましくは4〜6barの範囲の圧力で実施される。
【0021】
本発明による方法の、記載された全ての変法において、四塩化ケイ素含有出発材料ガスおよび水素含有出発材料ガスの合流として水素化脱塩素反応器にみちびくことができる。
【0022】
有利には、水素化脱塩素反応器は、1つまたは複数のセラミックス材料からなる反応器管を含み、その内壁には、変換の触媒作用を有するコーティングが備えられている。
【0023】
1つまたは複数の反応器管を構成し得るセラミックス材料は、有利には、Al23、AlN、Si34、SiCNまたはSiCから選択され、特に好ましくはSi含浸SiC、等方プレスされたSiC、熱間等方プレスされたSiCまたは無圧焼結されたSiC(SSiC)から選択される。
【0024】
中でも、SiC含有反応器管を備えた反応器が好ましく、なぜなら、それらは、反応のための一様な熱分布および良好な熱導入を可能にする特に良好な熱伝導率を有するからである。1つまたは複数の反応器管が、無圧焼結されたSiC(SSiC)からなる場合が特に好ましい。
【0025】
本発明の好ましい実施態様においては、四塩化ケイ素含有出発材料ガスおよび/または水素含有出発材料ガスを、加圧下にある流れとして、または加圧下にある合流として、加圧稼働している水素化脱塩素反応器にみちびき、且つ、その生成物ガスを、加圧下にある流れとして水素化脱塩素反応器から取り出す。
【0026】
本発明によれば、四塩化ケイ素含有出発材料ガスおよび/または水素含有出発材料ガスが、有利には1〜10barの範囲、好ましくは3〜8barの範囲、特に好ましくは4〜6barの範囲の圧力で、且つ、150℃〜900℃の範囲、好ましくは300℃〜800℃の範囲、特に好ましくは500℃〜700℃の範囲の温度で、水素化脱塩素反応器にみちびかれることが想定される。
【0027】
本発明によれば、水素化脱塩素反応器内での変換が、変換の触媒作用を有する、1つまたは複数の反応器管の内部コーティングによって触媒されることが想定される。しかしながら、水素化脱塩素反応器内での変換は、追加的に、変換の触媒作用を有する、反応器内もしくは1つまたは複数の反応器管内に配置された固定床のコーティングによって触媒され得る。このように、該触媒は、使用可能な表面積を最大化できる。
【0028】
従って、反応器内壁および/または場合により使用される固定床への単数または複数の触媒活性コーティングは、有利には、金属のTi、Zr、Hf、Ni、Pd、Pt、Mo、W、Nb、Ta、Ba、Sr、Ca、Mg、Ru、Rh、Irまたはそれらの組み合わせまたはそれらのシリサイド化合物から選択される少なくとも1つの活性成分を含有する組成物からなる。特に好ましい金属は、Pt、Pd、RhおよびIr、並びにそれらの混合物もしくは合金であり、殊にPt並びにPt/Pd、Pt/RhおよびPt/Irである。
【0029】
本発明のさらなる対象は、四塩化ケイ素をトリクロロシランへと変換するための反応器用の触媒系であって、その際、該反応器は1つまたは複数の反応器管を含み、該系が、四塩化ケイ素のトリクロロシランへの変換の触媒作用を有する、少なくとも1つの反応器管の内壁コーティングを含むことを特徴とする。
【0030】
本発明による系は、追加的に、四塩化ケイ素のトリクロロシランへの変換の触媒作用を有する、少なくとも1つの反応器管内に配置された固定床のコーティングを含み得ることが想定される。
【0031】
本発明の好ましい実施態様において、該触媒系は、触媒作用を有する内壁コーティングのほかに、セラミックス材料製の反応器管を含む。その際、好ましくは、該セラミックス材料は、Al23、AlN、Si34、SiCNまたはSiCから選択され、特に好ましくは、該セラミックス材料はSi含浸SiC、等方プレスされたSiC、熱間等方プレスされたSiCまたは無圧焼結されたSiC(SSiC)から選択される。
【0032】
1つまたは複数の反応器管を含む触媒系、並びに四塩化ケイ素のトリクロロシランへの変換を触媒するための内壁コーティングを、以下のとおりに製造できる:
a) 金属のTi、Zr、Hf、Ni、Pd、Pt、Mo、W、Nb、Ta、Ba、Sr、Ca、Mg、Ru、Rh、Irまたはそれらの組み合わせまたはそれらのシリサイド化合物から選択される少なくとも1つの活性成分、b) 少なくとも1つの懸濁化剤、および随意にc) 少なくとも1つの補助成分、殊に懸濁液を安定化させるための、懸濁液の貯蔵安定性を改善するための、コーティングされるべき表面上への懸濁液の付着を改善するための、および/またはコーティングされるべき表面上への懸濁液の施与を改善するための補助成分を含有する懸濁液、即ち塗料もしくはペーストを提供し、該懸濁液を、1つまたは複数の反応器管の内壁に施与し、且つ、随意に、該懸濁液を場合により備えられる固定床の充填物表面に施与し、施与された懸濁液を乾燥させ、且つ、施与され且つ乾燥された懸濁液を500℃〜1500℃の範囲の温度で、不活性ガスまたは水素下でアニールする。その後、アニールされた充填物を、1つまたは複数の反応器管に詰めてよい。しかしながら、アニールおよびその前の任意の乾燥を、充填物を先に詰めてから行ってもよい。
【0033】
本発明による懸濁液、即ち塗料もしくはペーストの成分b)による懸濁化剤、殊に結合特性を有するような懸濁化剤(略して結合剤としても示す)として、有利に、顔料および塗料産業において用いられるような熱可塑性ポリマーのアクリル樹脂を使用できる。これには、例えばポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリプロピルメタクリレートまたはポリブチルアクリレートが含まれる。それは、通常の市販の系、例えば商品名Degalan(登録商標)としてEvonik Industriesから入手可能であるものである。
【0034】
随意に、さらなる成分として、即ち、成分c)の意味で、有利には、1つまたは複数の助剤もしくは補助成分を用いることができる。
【0035】
例えば、補助成分c)として、随意の溶剤または希釈剤を用いることができる。有利には、有機溶剤、殊に芳香族溶剤もしくは希釈剤、例えばトルエン、キシレン、並びにケトン、アルデヒド、エステル、アルコールまたは先に挙げられた溶剤もしくは希釈剤の少なくとも2つの混合物が適している。
【0036】
(必要な場合は)懸濁液の安定化を、有利には無機または有機の流動添加剤によって達成することができる。成分c)としての好ましい無機の流動添加剤には、例えばケイ藻土、ベントナイト、スメクタイト、およびアタパルジャイト、合成層状シリケート、熱分解シリカ、または沈降シリカが含まれる。有機の流動添加剤もしくは補助成分c)には、有利にはヒマシ油およびそれらの誘導体、例えばポリアミド変性ヒマシ油、ポリオレフィンまたはポリオレフィン変性ポリアミド、並びにポリアミドおよびその誘導体、例えば商品名Luvotix(登録商標)として販売されているもの、並びに、無機流動添加剤と有機流動添加剤との混合系が含まれる。
【0037】
有利な付着を達成するために、補助成分c)として、シランまたはシロキサンの群からの適した接着促進剤も使用できる。これについて、例えば(しかし排他的ではなく)、ジメチル−、ジエチル−、ジプロピル−、ジブチル−、ジフェニルポリシロキサンまたはそれらの混合系、例えばフェニルエチル−またはフェニルブチルシロキサンまたは他の混合系、並びにこれらの混合物などが挙げられる。
【0038】
本発明による塗料もしくはペーストを、比較的容易且つ経済的に、例えば、出発物質(成分a)、b)および随意のc)を参照)の混合、攪拌もしくは混練によって、当業者に公知の相応する通常の装置内で得ることができる。さらに、本発明による実施例を示す。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、例として且つ模式的に、本発明の様式において四塩化ケイ素と水素とのトリクロロシランへの変換のために使用できる水素化脱塩素反応器であって、相応する触媒活性コーティング(図示せず)で仕上げられているものを示す。
【0040】
図1に示した水素化脱塩素反応器は、燃焼室15内に配置された複数の反応器管3a、3b、3c、該複数の反応器管3a、3b、3cに導かれる合流出発材料ガス1、2、並びに、複数の反応器管3a、3b、3cから引き出される生成物流用ライン4を示す。図示された反応器は、さらに、燃焼室15、並びに燃焼ガス18用のライン、および燃焼空気19用のラインを含み、それらは燃焼室15の4つの図示されたバーナーに通じる。なお、燃焼室15から引き出される煙道ガス20用ラインも最後に図示されている。本発明による、反応器管3a、3b、3cの内壁に備えられた触媒作用を有するコーティング、並びに随意に反応器管3a、3b、3c内に配置される固定床は図示されていない。
【0041】
実施例
実施例1:
塗料状の、触媒含有ペーストを、以下の成分を一緒に混合することによって製造した:
7gの白金黒、10gのアルミニウム粉末(d50 約11μm)、3.5gのフェニルエチルポリシロキサン(オリゴマー)、0,3gの熱分解法シリカ(Aerosil(登録商標) 300、Evonik Degussa GmbH)、トルエン中40%の混合物としての10gのポリ(メチル/ブチル)メタクリレート、40mlのトルエン。
【0042】
材料の長さ=1100mm、内径=5mmを有するSSiC製の反応管内に、約1gの乾燥された触媒ペーストが一様に内部の管表面にあるように、この塗料をもたらした。
【0043】
実施例2:
配合物を、実施例1のとおりに製造したが、しかしながら白金黒の代わりに同量のタングステンシリサイド(Sigma−Aldrich)を使用した。
【0044】
実施例3:
SSiC管を、触媒活性ペーストを使用しないで用いた。
【0045】
実施例4:
配合物を、実施例1のとおりに製造したが、しかしながら白金黒の代わりに同量のニッケル粉末を使用した。
【0046】
実施例5:
実施例1〜4について有効な一般的な試験の実施: 反応器管を電気加熱可能な管型炉内に設置した。まず初めに、それぞれの管を有する管型炉を900℃にし、その際、窒素を3bar(絶対)で反応管を通じてみちびいた。2時間後、窒素を水素と交換する。同様に3bar(絶対)下での水素流中でさらに1時間後、36.3ml/時間の四塩化ケイ素を反応管内にポンプ輸送した。水素流は、4.2対1のモル過剰に調節された。反応器排出物を、オンラインでガスクロマトグラフィーによって分析し、且つそこから四塩化ケイ素変換率およびトリクロロシランへのモル選択性を計算した。
【0047】
結果を、表1に示す。
【0048】
副成分として、実施例2〜4においてはジクロロシランのみが見つかった。生じる塩化水素は、そこから算出されず、且つ評価されなかった。
【0049】
表1: STCと水素との触媒変換の結果
【表1】

【符号の説明】
【0050】
(1) 四塩化ケイ素含有出発材料ガス
(2) 水素含有出発材料ガス
(1,2) 合流出発材料ガス
(3) 水素化脱塩素反応器
(3a、3b、3c) 反応器管
(4) 生成物流
(15) 加熱室または燃焼チャンバ
(18) 燃焼ガス
(19) 燃焼空気
(20) 煙道ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化脱塩素反応器(3)内で四塩化ケイ素と水素とをトリクロロシランへ変換するための方法であって、該水素化脱塩素反応器(3)内での変換を、変換の触媒作用を有する、反応器内壁のコーティングによって触媒することを特徴とする前記方法。
【請求項2】
前記変換の際、四塩化ケイ素含有出発材料ガス(1)と水素含有出発材料ガス(2)とを、水素化脱塩素反応器(3)内で、熱を供給することによって反応させて、トリクロロシラン含有且つHCl含有生成物ガスを形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
四塩化ケイ素含有出発材料ガス(1)と水素含有出発材料ガス(2)とを合流(1、2)の形で水素化脱塩素反応器(3)にみちびくことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
水素化脱塩素反応器(3)が、1つまたは複数の反応器管(3a、3b、3c)を含み、該反応器管(3a、3b、3c)の内壁には触媒作用を有するコーティングが配置されており、且つ、該反応器管(3a、3b、3c)はセラミックス材料からなることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
セラミックス材料が、Al23、AlN、Si34、SiCNまたはSiCから選択されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
セラミックス材料が、Si含浸SiC、等方プレスされたSiC、熱間等方プレスされたSiCまたは無圧焼結されたSiC(SSiC)から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
1つまたは複数の反応器管(3a、3b、3c)が、無圧焼結されたSiC(SSiC)からなることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
四塩化ケイ素含有出発材料ガス(1)および/または水素含有出発材料ガス(2)を、加圧下にある流れとして、または加圧下にある合流(1、2)として、加圧稼働している水素化脱塩素反応器(3)にみちびき、且つ、その生成物ガスを加圧下にある流れ(4)として水素化脱塩素反応器(3)から取り出すことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
四塩化ケイ素含有出発材料ガス(1)および/または水素含有出発材料ガス(2)または合流出発材料ガス(1、2)が、1〜10barの範囲、好ましくは3〜8barの範囲、特に好ましくは4〜6barの範囲の圧力で、且つ、150℃〜900℃の範囲、好ましくは300℃〜800℃の範囲、特に好ましくは500℃〜700℃の範囲の温度で、水素化脱塩素反応器(3)にみちびかれることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記変換が追加的に、該変換の触媒作用を有する、反応器(3)内もしくは1つまたは複数の反応器管(3a、3b、3c)内に配置された固定床のコーティングによって触媒されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
単数または複数の触媒活性コーティングが、金属のTi、Zr、Hf、Ni、Pd、Pt、Mo、W、Nb、Ta、Ba、Sr、Ca、Mg、Ru、Rh、Irまたはそれらの組み合わせまたはそれらのシリサイド化合物から選択される少なくとも1つの活性成分を含む組成物からなることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
四塩化ケイ素をトリクロロシランに変換するための反応器(3)用の触媒系であって、該反応器(3)は1つまたは複数の反応器管(3a、3b、3c)を含み、該触媒系が、四塩化ケイ素のトリクロロシランへの変換の触媒作用を有する、該反応器管(3a、3b、3c)の少なくとも1つの内壁コーティングを含むことを特徴とする前記触媒系。
【請求項13】
前記系が追加的に、四塩化ケイ素のトリクロロシランへの変換の触媒作用を有する、少なくとも1つの反応器管(3a、3b、3c)内に配置された固定床のコーティングを含むことを特徴とする、請求項12に記載の触媒系。
【請求項14】
前記系が追加的に、単数または複数の触媒作用を有する内壁コーティングを備えた反応器管(3a、3b、3c)を含み、且つ、該単数または複数の反応器管(3a、3b、3c)がセラミックス材料からなることを特徴とする、請求項12または13に記載の触媒系。
【請求項15】
セラミックス材料が、Al23、AlN、Si34、SiCNまたはSiCから選択されていることを特徴とする、請求項14に記載の触媒系。
【請求項16】
セラミックス材料が、Si含浸SiC、等方プレスされたSiC、熱間等方プレスされたSiC、または無圧焼結されたSiC(SSiC)から選択されていることを特徴とする、請求項15に記載の触媒系。
【請求項17】
前記系が以下の工程:
・ a) 金属のTi、Zr、Hf、Ni、Pd、Pt、Mo、W、Nb、Ta、Ba、Sr、Ca、Mg、Ru、Rh、Irまたはそれらの組み合わせまたはそれらのシリサイド化合物から選択される少なくとも1つの活性成分、b) 少なくとも1つの懸濁化剤、および随意にc) 懸濁液を安定化させるための、懸濁液の貯蔵安定性を改善するための、コーティングされるべき表面上への懸濁液の付着を改善するための、および/またはコーティングされるべき表面上への懸濁液の施与を改善するための、少なくとも1つの補助成分を含有する懸濁液を提供する工程、
・ 該懸濁液を、1つまたは複数の反応器管(3a、3b、3c)の内壁に施与する工程、
・ 随意に、場合により備えられる固定床の充填物表面に該懸濁液を施与する工程、
・ 施与された懸濁液を乾燥させる工程、
・ 施与され且つ乾燥された懸濁液を500℃〜1500℃の範囲の温度で、不活性ガスまたは水素下でアニールする工程
・ 随意に、アニールされた充填物を1つまたは複数の反応器管(3a、3b、3c)に詰める工程、その際、アニールおよびその前の任意の乾燥も、充填物を先に詰めてから行ってもよい、
を含む方法によって製造されることを特徴とする、請求項12から16までのいずれか1項に記載の触媒系。

【図1】
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【公表番号】特表2013−517209(P2013−517209A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549272(P2012−549272)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069920
【国際公開番号】WO2011/085900
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】