説明

四節リンク機構型無段変速機

【課題】四節リンク機構型無段変速機の入力軸の剛性を高める。
【解決手段】四節リンク機構型無段変速機1は、入力軸2と、出力軸3と、6つの回転半径調節機構4と、出力軸3に一方向クラッチ17を介して設けられた揺動リンク18と、回転半径調節機構4と揺動リンク18とを連結するコネクティングロッド5と、ピニオン7とを備える。各回転半径調節機構4は、入力軸2に偏心して固定されるカムディスク5と、カムディスク5に回転自在に軸支される回転ディスク6とを備える。各回転ディスク6には、カムディスク5を軸方向で挟むように一対の内歯6bが設けられている。ピニオン7は、入力軸2に回転自在に軸支されると共に、カムディスク5の間に配置されて、1つのピニオン7が隣接する2つの回転ディスク6の内歯6bと夫々噛み合う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸に設けられた回転半径調節機構で入力軸側の回転運動の半径を調節することにより変速自在な四節リンク機構型無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に設けられたエンジン等の駆動源からの駆動力が伝達される入力軸と、入力軸と平行に配置された出力軸と、入力軸に設けられた複数の回転半径調節機構と、出力軸に揺動自在に軸支される複数の揺動リンクと、一方の端部に回転半径調節機構に回転自在に外嵌される入力側環状部を有し、他方の端部が揺動リンクの揺動端部に連結されるコネクティングロッドとを備える四節リンク機構型無段変速機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のものでは、各回転半径調節機構は、入力軸に偏心して設けられたカムディスクと、このカムディスクに偏心して回転自在に設けられた回転ディスクと、ピニオンシャフトとからなる。また、揺動リンクと出力軸との間には、一方向クラッチが設けられている。一方向クラッチは、揺動リンクが出力軸に対して一方側に相対回転しようとするときに、出力軸に揺動リンクを固定し、他方側に相対回転しようとするときに、出力軸に対して揺動リンクを空転させる。
【0004】
各カムディスクは、入力軸の軸方向に貫通する貫通孔と、入力軸に対する偏心方向に対向する位置に設けられ、カムディスクの外周面と貫通孔とを連通させる切欠孔とを備える。また、切欠孔は、カムディスクの軸方向一方の端面から他方の端面に亘って設けられている。隣接するカムディスク同士はボルトで固定され、これにより、カムディスク連結体が構成される。カムディスク連結体の軸方向一端は、入力軸に連結され、カムディスク連結体と入力軸とでカムシャフトが構成されている。
【0005】
カムディスク連結体は、各カムディスクの貫通孔が連なることにより、中空となっており、その内部にはピニオンシャフトが挿入される。挿入されたピニオンシャフトは各カムディスクの切欠孔から露出している。回転ディスクにはカムシャフトを受け入れる受入孔が設けられている。この受入孔を形成する回転ディスクの内周面には内歯が形成されている。
【0006】
内歯は、カムシャフトの切欠孔から露出するピニオンシャフトと噛合する。入力軸とピニオンシャフトとを同一速度で回転させると、回転半径調節機構の入力軸側の回転運動の半径が維持される。入力軸とピニオンシャフトの回転速度を異ならせると、回転半径調節機構の入力軸側の回転運動の半径が変更されて、変速比が変化する。
【0007】
入力軸を回転させることにより回転半径調節機構を回転させると、コネクティングロッドの入力側環状部が回転運動して、コネクティングロッドの他方の端部と連結される揺動リンクの揺動端部が揺動する。即ち、回転半径調節機構、コネクティングロッド、及び揺動リンクで、てこクランク機構が構成される。揺動リンクは、一方向クラッチを介して出力軸に設けられているため、一方側に回転するときのみ出力軸に回転駆動力(トルク)を伝達する。
【0008】
各回転半径調節機構のカムディスクの偏心方向は、夫々位相を異ならせて入力軸周りを一周するように設定されている。従って、各回転半径調節機構に外嵌されたコネクティングロッドによって、揺動リンクが順にトルクを出力軸に伝達するため、出力軸をスムーズに回転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2005−502543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の四節リンク機構型無段変速機では、回転ディスクの内歯と中空のカムシャフトに挿入されたピニオンシャフトとを噛合させるべく、カムシャフトに切欠孔が設けられている。このため、カムシャフトの剛性が低いという問題がある。
【0011】
本発明は、以上の点に鑑み、カムシャフトの剛性を高めることができる四節リンク機構型無段変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第1態様は、駆動源からの駆動力が伝達される入力軸と、該入力軸と平行に配置された出力軸と、前記出力軸に揺動自在に軸支される揺動リンクを有し、前記入力軸の回転運動を前記揺動リンクの揺動運動に変換する複数のてこクランク機構と、前記揺動リンクと前記出力軸との間に設けられ、前記出力軸に対して一方側に相対回転しようとするときに前記出力軸に該揺動リンクを固定し、他方側に相対回転しようとするときに前記出力軸に対して該揺動リンクを空転させる一方向回転阻止機構とを備え、前記てこクランク機構が、前記入力軸側の回転運動の半径を調節自在な回転半径調節機構を備えた四節リンク機構型無段変速機であって、前記回転半径調節機構は、前記入力軸に偏心して設けられたカムディスクと、該カムディスクに対して偏心して回転自在に設けられた回転ディスクと、前記入力軸に回転自在に軸支されたピニオンとを備え、前記回転ディスクには、前記入力軸及び前記カムディスクを受け入れる受入孔が設けられ、前記ピニオンは、隣接する前記カムディスクの間に配置されて、隣接する2つの前記回転ディスクの受入孔に形成された内歯と夫々噛み合うことを特徴とする。
【0013】
本発明の第2態様は、駆動源からの駆動力が伝達される入力軸と、該入力軸と平行に配置された出力軸と、前記出力軸に揺動自在に軸支される揺動リンクを有し、前記入力軸の回転運動を前記揺動リンクの揺動運動に変換する複数のてこクランク機構と、前記揺動リンクと前記出力軸との間に設けられ、前記出力軸に対して一方側に相対回転しようとするときに前記出力軸に該揺動リンクを固定し、他方側に相対回転しようとするときに前記出力軸に対して該揺動リンクを空転させる一方向回転阻止機構とを備え、前記てこクランク機構が、前記入力軸側の回転運動の半径を調節自在な回転半径調節機構を備えた四節リンク機構型無段変速機であって、前記回転半径調節機構は、前記入力軸に偏心して設けられたカムディスクと、該カムディスクに対して偏心して回転自在に設けられた回転ディスクと、前記入力軸に回転自在に軸支された複数のピニオンとを備え、前記回転ディスクには、前記入力軸及び前記カムディスクを受け入れる受入孔が設けられ、前記複数のピニオンは前記カムディスクを挟むように配置され、前記カムディスクを挟んで隣接する2つの前記ピニオンは、前記回転ディスクの受入孔に軸方向へ間隔を存して形成された一対の内歯と夫々噛み合うことにより、前記カムディスクを挟んで隣接する2つの前記ピニオンのうちの一方のピニオンの回転が、前記回転ディスクを介して他方のピニオンに伝達されることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、ピニオンを入力軸に回転自在に軸支させているため、入力軸やカムディスクに切欠孔を設けることなく、ピニオンと回転ディスクの内歯とを噛み合わせることができる。また、ピニオンは、隣接する2つの回転ディスクの内歯に夫々噛合しているため、回転ディスクがカムディスクに対して回転することにより一方の回転半径調節機構の入力軸側の回転運動の半径が変化すると、カムディスクの間に位置するピニオンを介して隣接する回転半径調節機構も同様に入力軸側の回転運動の半径が変化する。従って、本発明によれば、ピニオン同士が連結されていなくても、各ピニオンを回転させて回転半径調節機構の入力軸側の回転運動の半径を調節することができる。そして、従来のように入力軸とカムディスクとで構成される中空のカムシャフトにピニオンシャフトを挿入すると共に、カムシャフトに切欠孔を形成する必要がなく、カムシャフトの剛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の四節リンク機構型無段変速機の実施形態を示す断面図。
【図2】本実施形態の変速機構を一部断面で示す斜視図。
【図3】本実施形態の回転半径調節機構、コネクティングロッド、揺動リンクを軸方向から示す説明図。
【図4】本実施形態の回転半径調節機構の偏心量(入力軸側の回転運動の半径)の変化を説明する説明図。
【図5】本実施形態の回転半径調節機構の偏心量(入力軸側の回転運動の半径)の変化と、揺動リンクの揺動運動の範囲との関係を示す説明図であり、(a)は偏心量が最大、(b)は偏心量が中、(c)は偏心量が小であるときの揺動リンクの揺動範囲を夫々示している。
【図6】本実施形態の回転半径調節機構の偏心量(入力軸側の回転運動の半径)の変化に対する、揺動リンクの角速度の変化を示すグラフ。
【図7】本実施形態の無段変速機において、夫々60度ずつ位相を異ならせた6つの四節てこクランク機構により出力軸が回転される状態を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の四節リンク機構型無段変速機の実施形態を説明する。本実施形態の無段変速機は、変速比i(i=入力軸の回転速度/出力軸の回転速度)を無限大(∞)にして出力軸の回転速度を「0」にできる変速機、所謂インフィニティ・バリアブル・トランスミッション(IVT)の一種である。
【0017】
図1から図3を参照して、本実施形態の無段変速機1は、図示省略した内燃機関であるエンジンや電動機等の車両用駆動源からの回転動力を受けることで入力中心軸線P1を中心に回転する入力軸2と、入力軸2に平行に配置され、図外のデファレンシャルギアやプロペラシャフト等を介して車両の駆動輪(図示省略)に回転動力を伝達させる出力軸3と、入力軸2に設けられた6つの回転半径調節機構4とを備える。
【0018】
各回転半径調節機構4は、カムディスク5と、回転ディスク6とで構成される。カムディスク5は、円盤状であり、入力中心軸線P1から偏心して入力軸2と一体的に回転するように入力軸2に夫々スプライン結合されている。各回転半径調節機構4のカムディスク5は、夫々位相を60度異ならせて、6つのカムディスク5で入力軸2の周方向を一回りするように配置されている。また、各カムディスク5には、カムディスク5を受け入れる受入孔6aを備える円盤状の回転ディスク6が偏心させて回転半径調節機構用ベアリング4aを介し回転自在に外嵌されている。
【0019】
回転ディスク6は、カムディスク5の中心点をP2、回転ディスク6の中心点をP3として、入力中心軸線P1と中心点P2の距離Raと、中心点P2と中心点P3の距離Rbとが同一となるように、カムディスク5に対して偏心している。各回転ディスク6の受入孔6aには、カムディスク5を軸方向で挟み込むように一対の内歯6b,6bが設けられている。
【0020】
入力軸2には、カムディスク5を挟み込むようにカムディスク5と交互に配置された7つのピニオン7が回転自在に軸支されている。各ピニオン7は、回転ディスク6の内歯6bと噛合する。また、隣接するカムディスク5の間に位置するピニオン7は、隣接する2つの回転ディスク6の内歯6bに跨って噛合している。
【0021】
入力軸2の一方の端部に軸支されたピニオン7には、大径歯車8がピニオン7の歯部とスプライン結合されている。大径歯車8には、電動機からなるアクチュエータ9の回転軸に固定された小径歯車9aが噛合されている。アクチュエータ9で小径歯車9a及び大径歯車8を介して入力軸2の一方の端部に位置するピニオン7が回転される。
【0022】
カムディスク5が固定された入力軸2の回転速度とピニオン7の回転速度とが同一である場合には、回転ディスク6はカムディスク5と共に一体に回転する。入力軸2の回転速度とピニオン7の回転速度とに差がある場合には、回転ディスク6はカムディスク5の中心点P2を中心にカムディスク5の周縁を回転する。
【0023】
回転ディスク6がカムディスク5に対して回転すると、カムディスク5を挟んで反対側の内歯6bに噛合するピニオン7も入力軸2の一方の端部に位置するピニオン7と同様に回転する。隣接するカムディスク5の間に位置するピニオン7は、隣接する回転ディスク6の内歯6bと噛合しているため、隣接する回転ディスク6も同様にカムディスク5に対して回転する。
【0024】
このようにして、隣接する2つの回転ディスク6の内歯6bに跨って噛合するピニオン7を介して、入力軸2の一方の端部に位置するピニオン7を回転させるだけで、全ての回転ディスク6がカムディスク5に対して同様に回転する。これにより、全ての回転半径調節機構4の偏心量(入力軸側の回転運動の半径)を調整することができる。なお、本実施形態においては、入力軸2の他方の端部にもピニオン7が配置されているが、このピニオン7は、隣接する2つの回転ディスク6に跨って内歯6bに噛合するものではなく、一方の端部に位置するピニオン7の回転を隣接する回転半径調節機構4に伝達させる役割を有していない。従って、この他方の端部に位置するピニオン7は省略してもよい。
【0025】
また、図3に示すように、回転ディスク6は、カムディスク5に対して距離Raと距離Rbとが同一となるように偏心されているため、回転ディスク6の中心点P3を入力中心軸線P1と同一軸線上に位置するようにして、入力中心軸線P1と中心点P3との距離、即ち偏心量R1(入力軸側の回転運動の半径)を「0」とすることもできる。
【0026】
入力軸2は、入力軸用ベアリング2aを介して変速機ケース1aに軸支される。入力軸用ベアリング2aは、変速機ケース1aに設けられた孔に圧入されている。また、入力軸2も、入力軸用ベアリング2aに圧入されている。尚、入力軸用ベアリング2a又は入力軸2は、変速機ケース1a又は入力軸用ベアリング2aに対して微小の隙間を存するように嵌合させてもよいが、圧入すればガタを防止でき、無段変速機1の変速比の調節精度が向上される。
【0027】
回転ディスク6の周縁には、一方の端部に大径の入力側環状部15aを備え、他方の端部に入力側環状部15aの径よりも小径の出力側環状部15bを備えるコネクティングロッド15の入力側環状部15aが、コネクティングロッド用のローラベアリング16を介して回転自在に外嵌されている。出力軸3には、一方向回転阻止機構としての一方向クラッチ17を介して、揺動リンク18がコネクティングロッド15に対応させて6個設けられている。
【0028】
揺動リンク18は、環状に形成されており、その上方には、コネクティングロッド15の出力側環状部15bに連結される揺動端部18aが設けられている。揺動端部18aには、出力側環状部15bを軸方向で挟み込むように突出した一対の突片18bが設けられている。一対の突片18bには、出力側環状部15bの内径に対応する貫通孔18cが穿設されている。貫通孔18c及び出力側環状部15bには、連結ピン19が挿入されている。これにより、コネクティングロッド15と揺動リンク18とが連結される。
【0029】
図4は、回転半径調節機構4の偏心量R1を変化させた状態のピニオン7と回転ディスク6との位置関係を示す。図4(a)は偏心量R1を「最大」とした状態を示しており、入力中心軸線P1と、カムディスク5の中心点P2と、回転ディスク6の中心点P3とが一直線に並ぶように、ピニオン7と回転ディスク6とが位置する。このときの変速比iは最小となる。
【0030】
図4(b)は偏心量R1を図4(a)よりも小さい「中」とした状態を示しており、図4(c)は偏心量R1を図4(b)よりも更に小さい「小」とした状態を示している。変速比iは、図4(b)では図4(a)の変速比iよりも大きい「中」となり、図4(c)では図4(b)の変速比iよりも大きい「大」となる。図4(d)は偏心量R1を「0」とした状態を示しており、入力中心軸線P1と、回転ディスク6の中心点P3とが同心に位置する。このときの変速比iは無限大(∞)となる。
【0031】
図3に示すように、本実施形態の回転半径調節機構4、コネクティングロッド15、揺動リンク18は四節てこクランク機構20を構成する。本実施形態の無段変速機1は合計6個の四節てこクランク機構20を備えている。偏心量R1が「0」でないときに、入力軸2を回転させると共に、ピニオン7を入力軸2と同一速度で回転させると、各コネクティングロッド15が、60度ずつ位相を変えながら偏心量R1に基づき入力軸2と出力軸3との間で出力軸3側に押したり入力軸2側に引いたりを交互に繰り返す。
【0032】
コネクティングロッド15の出力側環状部15bは、出力軸3に一方向クラッチ17を介して設けられた揺動リンク18に連結されているため、揺動リンク18がコネクティングロッド15によって押し引きされて揺動すると、揺動リンク18が押し方向側又は引張り方向側の何れか一方に揺動リンク18が回転するときだけ、出力軸3が回転し、揺動リンク18が他方に回転するときには、出力軸3に揺動リンク18の揺動運動の力が伝達されず、揺動リンク18が空回りする。各回転半径調節機構4は、60度毎に位相を変えて配置されているため、出力軸3は各回転半径調節機構4で順に回転させられる。
【0033】
図5(a)は偏心量R1が図4(a)の「最大」である場合(変速比iが最小である場合)、図5(b)は偏心量R1が図4(b)の「中」である場合(変速比iが中である場合)、図5(c)は偏心量R1が図4(c)の「小」である場合(変速比iが大である場合)の、回転半径調節機構4の回転運動に対する揺動リンク18の揺動範囲θ2を示している。図5から明らかなように、偏心量R1が小さくなるにつれ、揺動リンク18の揺動範囲θ2が狭くなる。尚、偏心量R1が「0」であるときは、揺動リンク18は揺動しなくなる。また、本実施形態では、揺動リンク18の揺動端部18aの揺動範囲θ2のうち、入力軸2に最も近い位置を内死点、入力軸2から最も離れる位置を外死点とする。
【0034】
図6は、無段変速機1の回転半径調節機構4の回転角度θ1を横軸、揺動リンク11の角速度ωを縦軸として、回転半径調節機構4の偏心量R1の変化に伴う角速度ωの変化の関係を示す。図6から明らかなように、偏心量R1が大きい(変速比iが小さい)ほど揺動リンク11の角速度ωが大きくなることが分かる。
【0035】
図7は、60度ずつ位相を異ならせた6つの回転半径調節機構4を回転させたとき(入力軸2とピニオン7とを同一速度で回転させたとき)の回転半径調節機構4の回転角度θ1に対する、各揺動リンク18の角速度ωを示している。図7から、6つの四節てこクランク機構20により出力軸3がスムーズに回転されることが分かる。
【0036】
本実施形態の四節リンク機構型無段変速機1によれば、ピニオン7が入力軸2に軸支されているため、従来のように入力軸とカムディスクとで構成されるカムシャフトに切欠孔を設けることなく、ピニオン7と回転ディスク6の内歯6bとを噛み合わせることができる。また、ピニオン7は、隣接する2つの回転ディスク6の内歯6b,6bに跨って夫々噛合しているため、一方の回転半径調節機構4の偏心量が変化すると、2つの回転ディスク6の間に位置するピニオンを介して隣接する回転半径調節機構4も同様に偏心量が変化する。従って、本実施形態の四節リンク機構型無段変速機1によれば、入来のように入力軸2とカムディスク5とで構成されるカムシャフトに切欠孔を形成する必要がなく、入力軸2及びカムディスク5の剛性を向上させることができる。
【0037】
また、この種の変速機においては、一般的に、入力軸2が撓むと回転半径調節機構による偏心量にバラつきが生じ、変速比の調節精度が低下する。しかしながら、本実施形態の無段変速機1によれば、入力軸2の剛性が向上させることに伴い、入力軸2の撓みが抑制されて、回転半径調節機構4による偏心量の調節精度が向上される。
【0038】
尚、本実施形態においては、一方向回転阻止機構として、一方向クラッチ17を用いているが、本発明の一方向回転阻止機構は、これに限らず、揺動リンク18から出力軸3にトルクを伝達可能な揺動リンク18の出力軸3に対する回転方向を切換自在に構成される二方向クラッチ(ツーウェイクラッチ)で構成してもよい。
【0039】
また、本実施形態においては、自動車等の車両に用いられる変速機として説明したが、本発明の四節リンク型無段変速機は、これに限らず、例えば、船舶等に用いられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…無段変速機、1a…変速機ケース、2…入力軸、2a…入力軸用ベアリング、3…出力軸、4…回転半径調節機構、5…カムディスク、6…回転ディスク、6a…受入孔、6b…内歯、7…ピニオン、8…大径歯車、9…アクチュエータ(電動機)、9a…小径歯車、15…コネクティングロッド、15a…入力側環状部、17…一方向クラッチ(一方向回転阻止機構)、18…揺動リンク、18a…揺動端部、18b…突片、18c…貫通孔、19…連結ピン、20…四節てこクランク機構、P1…入力中心軸線、P2…カムディスクの中心点、P3…回転ディスクの中心点、Ra…P1とP2の距離、Rb…P2とP3の距離、R1…偏心量(P1とP3の距離。入力軸側の回転運動の半径。)、θ1…回転半径調節機構の回転角度、θ2…揺動範囲、ω…揺動リンクの角速度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの駆動力が伝達される入力軸と、
該入力軸と平行に配置された出力軸と、
前記出力軸に揺動自在に軸支される揺動リンクを有し、前記入力軸の回転運動を前記揺動リンクの揺動運動に変換する複数のてこクランク機構と、
前記揺動リンクと前記出力軸との間に設けられ、前記出力軸に対して一方側に相対回転しようとするときに前記出力軸に該揺動リンクを固定し、他方側に相対回転しようとするときに前記出力軸に対して該揺動リンクを空転させる一方向回転阻止機構とを備え、
前記てこクランク機構が、前記入力軸側の回転運動の半径を調節自在な回転半径調節機構を備えた四節リンク機構型無段変速機であって、
前記回転半径調節機構は、前記入力軸に偏心して設けられたカムディスクと、該カムディスクに対して偏心して回転自在に設けられた回転ディスクと、前記入力軸に回転自在に軸支されたピニオンとを備え、
前記回転ディスクには、前記入力軸及び前記カムディスクを受け入れる受入孔が設けられ、
前記ピニオンは、隣接する前記カムディスクの間に配置されて、隣接する2つの前記回転ディスクの受入孔に形成された内歯と夫々噛み合うことを特徴とする四節リンク機構型無段変速機。
【請求項2】
駆動源からの駆動力が伝達される入力軸と、
該入力軸と平行に配置された出力軸と、
前記出力軸に揺動自在に軸支される揺動リンクを有し、前記入力軸の回転運動を前記揺動リンクの揺動運動に変換する複数のてこクランク機構と、
前記揺動リンクと前記出力軸との間に設けられ、前記出力軸に対して一方側に相対回転しようとするときに前記出力軸に該揺動リンクを固定し、他方側に相対回転しようとするときに前記出力軸に対して該揺動リンクを空転させる一方向回転阻止機構とを備え、
前記てこクランク機構が、前記入力軸側の回転運動の半径を調節自在な回転半径調節機構を備えた四節リンク機構型無段変速機であって、
前記回転半径調節機構は、前記入力軸に偏心して設けられたカムディスクと、該カムディスクに対して偏心して回転自在に設けられた回転ディスクと、前記入力軸に回転自在に軸支された複数のピニオンとを備え、
前記回転ディスクには、前記入力軸及び前記カムディスクを受け入れる受入孔が設けられ、
前記複数のピニオンは前記カムディスクを挟むように配置され、
前記カムディスクを挟んで隣接する2つの前記ピニオンは、前記回転ディスクの受入孔に軸方向へ間隔を存して形成された一対の内歯と夫々噛み合うことにより、前記カムディスクを挟んで隣接する2つの前記ピニオンのうちの一方のピニオンの回転が、前記回転ディスクを介して他方のピニオンに伝達されることを特徴とする四節リンク機構型無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−36537(P2013−36537A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172892(P2011−172892)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】