説明

四級アンモニウム化合物を含有する防腐剤混合物

【課題】四級アンモニウム化合物を含有する防腐剤混合物の提供。
【解決手段】塩化ベンゼトニウムあるいは塩化ベンザルコニウム等の四級アンモニウム殺生物剤及び1つ以上のケトン酸、芳香族酸、それらの塩類又はそれらの混合物の相乗効果性混合物を含む殺生物剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2001年3月1日に出願した米国仮出願第60/273,082号及び2001年10月19日に出願した米国仮出願第60/345,878号の利益を請求し、この両者は参照により本明細書の記載の一部とする。
本発明の分野
本発明は、(a)(i)四級アンモニウム化合物、(ii)重合体の四級アンモニウム化合物又は(iii)それらの混合物、及び(b)(i)環状若しくは非環状ケトン酸又はその塩、(ii)芳香族カルボン酸若しくはその塩、又は(iii)それらの混合物を含む抗菌組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
塩化ベンゼトニウムのような多くの四級アンモニウム化合物は、抗菌剤及び防腐剤として効果があることが知られている。しかしながら、塩化ベンゼトニウム及び多くの他の四級アンモニウム化合物は高価である。更に、四級アンモニウム化合物は一般にアニオン性製剤に配合すると効果が減ずる。その結果、四級アンモニウム化合物を低濃度含有し、アニオン性製剤においてもその効能を維持する、改善された抗菌及び防腐組成物に対しては引き続き必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の概要
出願人は、ケトン酸、芳香族カルボン酸及びそれらの塩はある種の四級アンモニウム殺生物剤の性能を相乗的に増進することを発見した。本出願人はまた、これらの四級アンモニウム殺生物剤はアニオン性製剤中ではしばしば不活性であるが、少なくともこれらの四級アンモニウム殺生物剤の1つとケトン酸、芳香族カルボン酸、それらの塩又はそれらの混合物を含有する混合物がアニオン性製剤において活性であることを発見した。
【0004】
本発明は、
(a)(i)式N+1234-(式中、R1及びR2は独立に無置換又はヒドロキシ置換された直鎖又は分岐のC1〜C4アルキル、−(CH2CH2O)mCH2CH2OH又は−(CH2CHCH3O)mCH2CHCH3OHであり、ここで、mは1から10であり;R3は置換又は無置換のベンジル、エチルベンジル、メチルナフチル又は直鎖若しくは分岐のC1〜C22アルキルであり;R4は−R5(O)n(C65)R6であり、ここで、nは0又は1であり;R5は置換又は無置換のC1〜C8アルキル又はC1〜C8アルコキシアルキルであり;R6は水素又は置換若しくは無置換、直鎖若しくは分岐のC1〜C12アルキルであり;X-はクロライド、アセテート、ボラート、プロピオネート、カーボネート、炭酸水素塩又は水酸化物のようなアニオンである)を有する四級アンモニウム殺生物剤、
(ii)重合体の四級アンモニウム殺生物剤、又は
(iii)それらの混合物;及び
(b)(i)ケトン酸若しくはその塩、
(ii)芳香族カルボン酸若しくはその塩、又は
(iii)それらの混合物
を含む組成物を提供する。好ましくは、前記ケトン酸は環状ケトン酸である。前述混合物は相乗的に働く。
【0005】
本発明の他の態様は、本発明の組成物の抗菌又は防腐有効量を適用することによる、基質上における微生物の生育を阻止するための方法である。
【0006】
本発明の詳細な説明
特に断らない限り、本明細書で使用する用語「置換された」は、以下に限定されるわけではないが、次の置換基の少なくとも1つを含む:C1〜C12アルキル(例えばC1〜C4アルキル)、ハロゲン(例えば塩素)、ニトロ及びヒドロキシ。
【0007】
用語「殺生物剤」は、以下に限定されるわけではないが、殺菌剤、殺真菌剤、殺虫剤及び微生物や昆虫の成長を阻止及び/又は死滅させる薬剤を含む。
【0008】
本明細書で使用する用語「アニオン性製剤」は、アニオン性界面活性剤のような、アニオン化合物を1つ以上含有する製剤をいう。
【0009】
前記ケトン酸又は芳香族カルボン酸は、前記四級アンモニウム殺生物剤の殺生物効果を増進する。これらの組成物は、製紙産業、繊維産業、農業及び塗装産業において、及びパーソナルケア製品、家庭製品、工業製品及び業務製品における抗細菌、殺真菌及び殺菌性薬剤及び防腐剤として有用である。前記組成物は、微生物生育がしやすい基質中に防腐系として配合することができる。例えば、この防腐系は、シャンプー、コンディショナー、クリーム、ローション、化粧品又は石鹸のようなパーソナルケア製品;織編物用柔軟剤、洗濯用洗剤又は硬質床洗浄剤のような家庭用製品;又は塗料、木材、織物、接着剤、シーラント、皮革、綱、紙パルプ、プラスチック、燃料、油、ゴム加工油剤、金属加工油剤、澱粉又は粘土、炭酸カルシウム若しくは酸化チタン(TiO3)のスラリーのような鉱物スラリーのような工業製品に配合することができる。
【0010】
本出願人はまた、塩化ベンゼトニウムのような四級アンモニウム殺生物剤はしばしばアニオン性製剤中では不活性であるのに、ケトン酸類、芳香族カルボン酸類及びそれらの塩が存在する製剤においては活性であることを見出した。
【0011】
一般に、本発明の防腐系は迅速に作用し(例えば、典型的には一時間以内に細菌数の95、99、99.9又は99.99%を減少させる)、効能(例えば、10cfu/g未満に維持する)を長期間(例えば、少なくとも28日間)維持する。
【0012】
四級アンモニウム殺生物剤
1つの好ましい態様によれば、R5は−CH2CH2OCH2CH2−である。より好ましくは、R4は[2−[2−(4−ジイソブチルフェノキシ)エトキシ]エチル]である。他の好ましい態様によれば、R4はベンジルである。
【0013】
好ましい四級アンモニウム殺生物剤は、以下に限定されるわけではないが、塩化ベンゼトニウム(Fair Lawn,NJのLonza Inc.からハイアミン(登録商標)1622として入手できる)のようなベンゼトニウム([2−[2−(4−ジイソブチルフェノキシ)エトキシ]エチル]ジメチルベンジルアンモニウム)の塩(ベンゼトニウム塩ともいう);塩化ベンザルコニウム(Fair Lawn,NJのLonza Inc.からBarquat(登録商標)MB−50及びBarquat(登録商標)MB−80として入手できる)のようなベンザルコニウム(ベンジルアルキルジメチルアンモニウム)の塩を含む。好ましいベンザルコニウム塩は、以下に限定されるわけではないが、塩化(C12〜C18)アルキルベンジルジメチルアンモニウムのような(C12〜C18)アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩を含む。
【0014】
更なる他の好ましい態様によれば、前記アニオンX-はカーボネートである。
【0015】
前記四級アンモニウム殺生物剤は、任意選択的に、所望の溶媒又は製剤に対するその溶解度を増加させるために、当該技術分野で知られている任意の方法でカプセル化することができる。例えば、前記四級アンモニウム殺生物剤は、シクロデキストリン;4−tert−ブチルカリ[4]アレーンのようなカリックスアレーン類;リポソーム類;カテゾーン類又は両親媒性ベタイン重合体中にカプセル化することができる。
【0016】
重合体の四級アンモニウム殺生物剤
好適な重合体の四級アンモニウム殺生物剤は、以下に限定されるわけではないが、米国特許第4,970,201号及び第5,304,237号(これらは参照により本明細書の記載の一部とする)に記載されているような重合体の四級アンモニウムボラート及びポリ[オキシエチレン(ジメチルイミノ)−エチレン(ジメチルイミノ)](Memphis,TNのBuckman LaboratoriesからBuckman WSCPとして入手可能)を含む。
【0017】
ケトン酸類
前記ケトン酸は環状又は非環状ケトン酸とすることができる。本明細書で使用する用語「環状ケトン酸」は、カルボニル基を含有する環を有する化合物を含む。
【0018】
好適な環状ケトン酸類は、以下に限定されるわけではないが、式、
【化1】


(式中、R7、R8及びR9は独立にC1〜C10アルキル、C1〜C10アルケニル、C1〜C10アルケニル、アリール、ハロゲン置換アリール、又は(C1〜C10アルキル)アリールである)
を有するもの及びその塩類を含む。好ましくは、R7、R8及びR9は独立にC1〜C4アルキルであるか;又はR7及びR8は5〜12員環を形成する。
好ましい環状ケトン酸類は、以下に限定されるわけではないが、式、
【化2】


を有するもの及びその塩を含む。より好ましい環状ケトン酸は、デヒドロ酢酸ナトリウム(例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム水和物及びデヒドロ酢酸ナトリウム一水和物)のようなデヒドロ酢酸及びその塩類(その水和物を含む)である。
【0019】
前記環状ケトン酸の所望の溶媒又は製剤中での溶解度を増加させるには、任意選択的に当該技術分野で知られている任意の方法によりカプセル化することができる。例えば、前記環状ケトン酸は、シクロデキストリン;4−tert−ブチルカリ[4]アレーンのようなカリックスアレーン類;リポソーム類;カテゾーン類又は両親媒性ベタイン重合体中にカプセル化することができる。前記環状ケトン酸は当該技術分野で知られている任意の方法でカプセル化することができる。
【0020】
環状ケトン及び四級アンモニウム殺生物剤の好ましい組合せは、デヒドロ酢酸又はその塩と塩化ベンゼトニウムである。より好ましい組合せは、デヒドロ酢酸ナトリウムと塩化ベンゼトニウムである。
【0021】
芳香族カルボン酸
好適な芳香族カルボン酸は、以下に限定されるわけではないが、安息香酸、その誘導体及びその塩類を含む。1つの態様によれば、前記芳香族カルボン酸は、式、
【化3】


(式中、R10及びR11は独立にH、−OH又は−OC(O)CH3であり;R12はH、Na、K、Ca又はMgである)を有する。R12がCa又はMgのとき、前記芳香族カルボン酸対Ca又はMgの比率は1:1又は2:1とすることができる。
【0022】
例えば、前記芳香族カルボン酸は、ヒドロキシ安息香酸、その誘導体又はそれらの塩とすることができる。好ましいヒドロキシ安息香酸はサリチル酸及びその塩である。サリチル酸の好適な塩は、以下に限定されるわけではないが、サリチル酸ナトリウムを含む。
【0023】
芳香族カルボン酸若しくはその塩と四級アンモニウム殺生物剤との好ましい組合せは、サリチル酸ナトリウムと塩化ベンゼトニウムである。
【0024】
前記組成物は、水及び、以下に限定されるわけではないが、アルコール類、グリコール類(例えばグリセリン、ジグリセリン、ブチレングリコール、ブトキシジグリコール、プロピレングリコール及びジプロピレングリコール)、エステル類、エーテル類、ポリエーテル類及び前記のいずれかの任意の組合せを含む水混和性溶媒のような溶媒を含むことができる。例えば、前記溶媒は、水並びに、フェノキシエタノール及び/又はベンジルアルコールのようなアルコールを含むことができる。
【0025】
当業者に知られているとおり、他の補助剤を前記組成物に含めることができる。好適な補助剤は、以下に限定されるわけではないが、防腐剤類;可溶化剤類;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩類のようなキレート剤並びにゼオライト類;カチオン性、アニオン性、非イオン性及び両性界面活性剤のような界面活性剤類;ブチルヒドロキシアニソール(BHA)及びブチルヒドロキシトルエン(BHT)のような抗酸化剤;アミンオキシド類;三級アミン類;亜鉛化合物類;ハイドロトロープ(hydrotropes);フッ化物化合物類;マグネシウム塩類;カルシウム塩類;カルボン酸類;ホスフェート類;ホスホナート類;ホルムアルデヒド供与体類;グリセレス−7;ミリスチン酸ミリスチル;グルタルアルデヒド類;ビグアニド類;ゲラノイル、ウスニン酸及びティーツリー油などの天然生産物及び前記のいずれかの任意の組合せを含む。
【0026】
好適な防腐剤は、以下に限定されるわけではないが、塩化四級アンモニウム;四級アンモニウムカーボナート類;塩化ベンザルコニウム;3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート(IPBC)のようなヨウ素含有化合物類;ジメチルヒダントイン及びハロゲン化ヒダントイン類のようなヒダントイン類;イソチアゾリノン類;メチルパラベン、エチルパラベン及びプロピルパラベンのようなパラベン類;クロロキシレノール;クロルヘキシジン;フェノキシエタノール;ベンジルアルコール;フェネチルアルコール;安息香酸及びその塩類;クロロブタノール;ソルビン酸及びその塩類;トリクロサン;トリクロカルバン及び前記のいずれかの任意の組合せを含む。
【0027】
典型的には、前記組成物は水系又は油系であり、エマルションではない。油系では、前記四級アンモニウム殺生物剤は好ましくはカプセル化されておらず、前記ケトン酸は好ましくは水和物ではない。油系に適した溶媒は、フェノキシエタノール及び/又はベンジルアルコールである。
【0028】
前記組成物は、液体又は固体とすることができる。
【0029】
(1)ケトン酸、芳香族カルボン酸、それらの塩又はそれらの混合物対(2)四級アンモニウム殺生物剤、重合体の四級アンモニウム殺生物剤又はそれらの混合物の重量比率は、該して約0.00056:1から約1990:1の範囲、好ましくは約0.0056:1から約1400:1の範囲である。
【0030】
本発明の組成物を含有する製剤を調製するには、濃縮物を一般的にまず調製する。表Aは、典型的な濃縮物中に存在する成分及び成分の範囲(濃縮物の全重量100%を基準として)を示す。
【0031】
【表1】

【0032】
使用する前に前記濃縮物を希釈するが、好ましくは濃縮物に使用したのと同じ溶媒で希釈する。前記組成物の使用希釈物は、典型的には、(1)四級アンモニウム殺生物剤及び/又は重合体の四級アンモニウム殺生物剤(即ち、成分(a))及び/又は(2)成分(a)と(b)(成分(b)はケトン酸、芳香族カルボン酸若しくはそれらの塩、又はそれらの混合物)との混合物を殺生物的、殺真菌的又は殺菌的に有効な量含む。前記使用希釈物はまた、典型的には、ケトン酸若しくはその塩、芳香族カルボン酸若しくはその塩、又はそれらの混合物(即ち、成分(b))を、殺生物性、殺真菌性又は殺菌性を増進(強化)する有効量含む。一般に、使用希釈物は前記濃縮物を約0.0001重量%又は0.01重量%から約2重量%含有する。1つの好ましい態様によれば、使用希釈物は前記濃縮物を約0.1から約1重量%含有する。表Bは、使用希釈物に存在する成分及び成分の一般的な範囲(使用希釈物の全重量100%を基準として)を示す。
【0033】
【表2】

【0034】
更に他の好ましい態様は、デヒドロ酢酸、塩化ベンゼトニウム、サリチル酸、及び任意選択的に、安息香酸、フェノキシエタノール及びベンジルアルコールを含む防腐剤製剤である。濃縮形態の製剤は、防腐剤製剤の全重量100%を基準として、デヒドロ酢酸を約5から約40重量%、塩化ベンゼトニウムを約1から約20重量%、サリチル酸を約2.5から約20重量%、及び任意選択的に、安息香酸を約2.5から約20重量%、フェノキシエタノールを約20から約50重量%及びベンジルアルコールを約5から約50重量%含有することができる。前記防腐製剤のより好ましい態様は、防腐剤製剤の全重量100%を基準として、デヒドロ酢酸を約10重量%、塩化ベンゼトニウムを約5重量%、サリチル酸を約10重量%、及び任意選択的に、安息香酸を約10重量%、フェノキシエタノールを約35重量%及びベンジルアルコールを約30重量%含有する。
【0035】
本発明の他の態様は、本発明の組成物の抗菌的、殺菌的又は殺真菌的有効量を基質に適用することにより、微生物、細菌(例えば、S.aureus(ATCC#6538)、P.aeruginosa(ATCC#9027)及びE.Coli(ATCC#8739))及び/又は真菌(例えば、Candida albicans及びAspergillus niger)の基質上における生育を阻止するための方法である。前記組成物は、以下に限定されるわけではないが、塗布、浸漬、浸透、減圧含浸及び加圧処理を含む、当該技術分野で知られている任意の方法により、基質に適用することができる。
【0036】
本発明の組成物は、前記ケトン酸若しくはその塩、前記芳香族カルボン酸若しくはその塩、四級アンモニウム殺生物剤、重合体の四級アンモニウム殺生物剤、溶媒及び補助剤を混合することにより調製することができる。前記混合物は、加熱及び/又は攪拌して混合を促進することができる。
【実施例】
【0037】
好ましい態様の説明
以下の例は、本発明を説明するものであって、限定するものではない。全ての部及びパーセントは特に断らない限り重量で示す。
【0038】
例1
以下の表1にある各アニオン性シャンプー試料を以下のように試験した。標準化混合細菌溶液を以下の手順に従って調製した。S.aureus(ATCC#6538)、P.aeruginosa(ATCC#9027)及びE.coli(ATCC#8739)の3種の寒天高層培地を別々に約35℃で約24時間培養した。各高層培地は、その後、滅菌0.85%生理食塩水3mLで洗浄した。これら3種の高層培地の洗液を一緒にプールし、生物体混合物を形成した。前記生物体混合物の530nmでの吸光度を、生理食塩水を加えることにより、約1.00に調節した。その分光計は生理食塩水で校正した。前記生物体混合物の5mLアリコットを共に混合して標準化混合微生物溶液を作成した。その後、各シャンプー試料40gに前記標準化混合細菌溶液0.2mLを接種して混合した。前記混合物の1gを滅菌20×150mmスクリューキャップ試験管に加えた。
【0039】
滅菌D/E中和剤ブイヨンを前記試験管に加え、混合して10-1希釈物を作成した。リン酸塩緩衝水を用いて連続的希釈を行い10-6まで希釈した。これらの連続的希釈物をTryptic Soy Agar上に蒔き、約35℃で2日間培養した。細菌の計数を初日(0日後)及び14日後に実施した。結果は表1に示す。
【0040】
前記アニオン性蛋白質シャンプー組成物は、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム35重量%;ラウリル硫酸トリエタノールアミン25重量%;ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(コカミドDEA)3重量%;Austin、MNのHormel FoodsからPolypro 5000(商標)として入手可能な加水分解コラーゲン1重量%;及び脱イオン水36重量%からなる。
【0041】
デヒドロ酢酸ナトリウム一水塩、サリチル酸ナトリウム及びHyamine(登録商標)1622シャンプー試料を前記防腐剤及び前記アニオン性蛋白質シャンプー組成物の適当量を混合し、その混合物を約50℃で約15分間加熱することにより調製した。
【0042】
【表3】


表1中の全てのパーセントは、全シャンプーの100重量%を基準とするパーセントである。
1デヒドロ酢酸ナトリウム一水塩は、Fair Lawn,NJのLonza Inc.から入手可能である。
2Hyamine(登録商標)1622は、塩化ジイソブチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウム(塩化ベンゼトニウム)であり、Fair Lawn,NJのLonza Inc.から入手可能である。
3サリチル酸ナトリウムは、St.Louis、MOのSigma Chemical Co.から入手可能である。
−特定した防腐剤濃度未満では、前記シャンプーは14日後において≧10cfu/gを含んでいた。
【0043】
表1のデヒドロ酢酸ナトリウム一水和物/Hyamine(登録商標)1622及びサリチル酸ナトリウム/Hyamine(登録商標)1622溶液のS.aureus、P.aeruginosa及びE.coliに対する相乗効果は、C.E.Kullら「抗真菌剤としての四級アンモニウム化合物と長鎖脂肪酸の混合物(Mixtures of Quaternary Ammonium Compounds and Long−chain Fatty Acids as Antifungal Agents)」、Applied Microbiology、9:538〜541(1961)に記載された方法により計算した。表2の相乗効果値(QA/Qa+QB/Qb)を求めた。QAは、前記細菌の100%抑制を生じ、即ち、14日後で<10cfu/gのプレート計数となるデヒドロ酢酸ナトリウム一水和物又はサリチル酸ナトリウム(重量パーセント)の前記混合物中の濃度である。Qaは、前記細菌の100%抑制を生じるのに必要なデヒドロ酢酸ナトリウム一水和物又はサリチル酸ナトリウム単独の濃度(重量パーセント)である。QBは、前記細菌の100%抑制を生じるHyamine(登録商標)1622(重量パーセント)の前記混合物中における濃度である。Qbは、前記細菌の100%抑制を生じるのに必要なHyamine(登録商標)1622単独の濃度(重量パーセント)である。
【0044】
(QA/Qa+QB/Qb)の値が1未満であれば、前記混合物は相乗効果を発揮しているのである。(QA/Qa+QB/Qb)の値が1及び1より大であれば、それぞれ相加効果及び拮抗作用を示すのである。
【0045】
前記結果は下の表2に示す。
【表4】

【0046】
例2
例1に記載した手順を以下の表3のアニオン性シャンプーにつき繰り返し行った。前記細菌計数は初日(0日後)及び7日後に行った。デヒドロ酢酸(Fair Lawn、N.J.のLonza Inc.から入手可能)及びHyamine(登録商標)1622シャンプー試料は、前記防腐剤及びアニオン性蛋白質シャンプー組成物の適切な量を混合し、その混合物を約50℃で約15分間加熱することにより調製した。その結果は下の表3に示す。
【0047】
【表5】

【0048】
表3におけるデヒドロ酢酸/Hyamine(登録商標)1622混合物のS.aureus、P.aeruginosa及びE.coliに対する相乗効果を、例1に記載した手順で求めた。その結果は下の表4に示す。
【0049】
【表6】

【0050】
例3
例1に記載した手順を下の表5におけるアニオン性シャンプーにつき繰り返し行った。前記サリチル酸(New Brunswick、N.J.のSpectrum Chemicalから入手可能)及びHyamine(登録商標)1622シャンプー試料は、前記防腐剤及びアニオン性蛋白質シャンプー組成物の適切量を混合し、その混合物を約50℃で約15分間加熱することにより調製した。その結果は下の表5に示した。
【0051】
【表7】

【0052】
表5にあるサリチル酸/Hyamine(登録商標)1622溶液のS.aureus、P.aeruginosa及びE.coliに対する相乗効果を、例1に記載した手順で求めた。その結果は下の表6に示す。
【0053】
【表8】

【0054】
例4
下の表7に記載した防腐剤製剤を、その成分を混合することにより調製した。
【0055】
【表9】

【0056】
例5
下の表8に記載したような防腐剤製剤を、その成分を混合することにより調製した。
【0057】
【表10】

【0058】
例6
下の表9の各アニオン性シャンプー試料は以下のようにして試験を行った。標準混合細菌溶液を以下の手順に従って調製した。Candida albicansの2個の寒天斜面培地及びAspergillus nigerの4個の寒天斜面培地を別々に約25℃でそれぞれ約48時間及び7日間培養した。各斜面培地を滅菌0.85%生理食塩水3mLで洗浄し、集めて組織磨砕器で柔軟化した。各斜面培地に0.85%生理食塩水溶液の十分量を加え、C.albicans及びA.nigerの各接種物のNeubauer Hemocytometer付顕微鏡下目視計数を得た。C.albicans及びA.nigerの各標準化接種物の等容量を一緒に混合して標準化混合真菌溶液を生成した。
【0059】
各シャンプー試料の40gに標準化混合真菌溶液0.4mLを接種して混合した。その混合物1gを滅菌20×150mmスクリューキャップ試験管に加えた。
【0060】
滅菌D/E中和剤ブイヨン9mLを試験管に加え、混合して10-1希釈物を生成した。リン酸塩緩衝水を用いて10-6希釈までの連続希釈物を調製した。前記連続希釈物をSabourandデキストロース寒天上に蒔いて、約25℃で5日間培養した。真菌計数を初日(0日後)及び14日後に実施した。その結果を表9に示す。
【0061】
前記アニオン性蛋白質シャンプー組成物は例1に記載したものである。前記シャンプー試料は前記防腐剤及び前記アニオン性蛋白質シャンプー組成物の適当量を混合し、その混合物を約50℃で約15分間加熱することにより調製した。
【0062】
【表11】

【0063】
表9の結果から、アニオン性製剤では塩化ベンゼトニウムが不活性化されることがわかる。塩化ベンゼトニウムの1.0%又は10,000ppmは、アニオン性シャンプーでは前記混合真菌を低減する効果がない。例4を0.6%含有するシャンプー試料(塩化ベンゼトニウム60ppm)は真菌プレート計数では対数で2の低減を示した。例5を0.6%含有するシャンプー試料(塩化ベンザルコニウム300ppm)は真菌プレート計数において対数で4の低減を示した。これは、本発明の防腐剤混合物がアニオン性製剤において塩化ベンゼトニウムの殺真菌性効能の有効性を高めることを示すものである。
【0064】
例7
下の表10における各クリーム試料は、例1に記載した手順で試験を行った。下の表10に記載したようなモノステアリン酸グリセリル(GMS)クリームを以下のようにして調製した。ポリオキシエチレンモノステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、セテアリールアルコール及びプロピオン酸ミリスチルを混合し、第一容器中で60℃に加熱した。グリセリン及び滅菌脱イオン水を混合し、第二容器中で60℃に加熱した。前記第一容器中の溶液を前記第二容器に投入した。その第二容器を10分間60℃に保った。第二容器中の溶液を冷却した。前記溶液のpHを水酸化ナトリウムでpH7に調整し、GMSクリームを得た。
【0065】
【表12】

【0066】
例5の0.4%試料を、前記防腐剤及び前記GMSクリームの適当量を混合し、その混合物を50℃で10〜15分間加熱することにより調製した。その結果は下の表11に示した。
【0067】
【表13】


多くの防腐剤は緩慢な効能(例えば、微生物の数を減少させるには3日以上必要とする)を有するのに、表11に示した防腐剤系は迅速(例えば、典型的には1時間以内)に作用して長時間(例えば、少なくとも28日間)効能を維持する。
【0068】
上で言及した全ての特許、出願、論文、公報及び試験法は、参照により本明細書の記載の一部とする。
【0069】
上記の詳細な説明を考慮すれば、当業者に対して、本発明の多くの変形が自ずと示唆されるであろう。かかる自明な変形は、添付した請求項の意図する範囲内に含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)式N+1234-を有する四級アンモニウム殺生物剤、
(ii)重合体の四級アンモニウム殺生物剤、又は
(iii)それらの混合物;及び
(b)(i)ケトン酸若しくはその塩、
(ii)芳香族カルボン酸若しくはその塩、又は
(iii)それらの混合物
を含み、
式中、R1及びR2は独立に無置換又はヒドロキシ置換された直鎖又は分岐のC1〜C4アルキル、−(CH2CH2O)mCH2CH2OH又は−(CH2CHCH3O)mCH2CHCH3OHであって、mは1から10であり;R3は置換又は無置換のベンジル、エチルベンジル、メチルナフチル、又は直鎖又は分岐のC1〜C22アルキルであり;R4は−R5(O)n(C65)R6であって、nは0又は1であり;R5は置換又は無置換のC1〜C8アルキル又はC1〜C8アルコキシアルキルであり;R6は水素又は置換又は無置換の直鎖又は分岐のC1〜C12アルキルであり;そしてX-はアニオンである、組成物。
【請求項2】
5が−CH2CH2OCH2CH2−である、請求項1の組成物。
【請求項3】
4が[2−[2−(4−ジイソブチルフェノキシ)エトキシ]エチル]である、請求項2の組成物。
【請求項4】
前記四級アンモニウム殺生物剤がベンゼトニウムの塩である、請求項1の組成物。
【請求項5】
前記四級アンモニウム殺生物剤が塩化ベンゼトニウムである、請求項4の組成物。
【請求項6】
4がベンジルである、請求項1の組成物。
【請求項7】
前記四級アンモニウム殺生物剤がベンザルコニウムの塩である、請求項1の組成物。
【請求項8】
前記四級アンモニウム殺生物剤が塩化ベンザルコニウムである、請求項7の組成物。
【請求項9】
前記四級アンモニウム殺生物剤が(C12〜C18)アルキルベンジルジメチルアンモニウムの塩である、請求項7の組成物。
【請求項10】
前記四級アンモニウム殺生物剤が塩化(C12〜C18)アルキルベンジルジメチルアンモニウムである、請求項9の組成物。
【請求項11】
-がクロライド又はカーボネートである、請求項1の組成物。
【請求項12】
-がクロライドである、請求項11の組成物。
【請求項13】
-がカーボネートである、請求項11の組成物
【請求項14】
前記ケトン酸が環状ケトン酸又はその塩である、請求項1の組成物。
【請求項15】
前記環状ケトン酸が、式、
【化1】


(式中、R7,R8及びR9は独立にC1〜C10アルキル、C1〜C10アルケニル、C1〜C10アルケニル、アリール、ハロゲン置換アリール又は(C1〜C10)アルキル)アリールである)
を有する、請求項14の組成物。
【請求項16】
7,R8及びR9は独立にC1〜C4アルキルであるか;又はR7及びR8は5〜12員環を形成している、請求項15の組成物。
【請求項17】
前記環状ケトン酸が、式、
【化2】


を有する、請求項15の組成物。
【請求項18】
前記ケトン酸がデヒドロ酢酸又はその塩である、請求項14の組成物。
【請求項19】
前記ケトン酸がデヒドロ酢酸ナトリウムである、請求項1の組成物。
【請求項20】
前記ケトン酸がカプセル化されている、請求項1の組成物。
【請求項21】
前記デヒドロ酢酸又はその塩がシクロデキストリン中にカプセル化されている、請求項18の組成物。
【請求項22】
前記四級アンモニウム殺生物剤が塩化ベンゼトニウムであり、前記ケトン酸がデヒドロ酢酸又はその塩である、請求項1の組成物。
【請求項23】
前記四級アンモニウム殺生物剤が塩化ベンザルコニウムであり、前記ケトン酸がデヒドロ酢酸又はその塩である、請求項1の組成物。
【請求項24】
前記芳香族カルボン酸が安息香酸、その誘導体又はその塩である、請求項1の組成物。
【請求項25】
前記芳香族カルボン酸が、式、
【化3】


(式中、R10及びR11は独立にH、−OH又は−OC(O)CH3であり;R12はH、Na、K、Ca又はMgである)
を有する、請求項1の組成物。
【請求項26】
前記芳香族カルボン酸がヒドロキシ安息香酸、その誘導体又はその塩である、請求項1の組成物。
【請求項27】
前記ヒドロキシ安息香酸がサリチル酸又はその塩である、請求項26の組成物。
【請求項28】
前記サリチル酸の塩がサリチル酸ナトリウムである、請求項27の組成物。
【請求項29】
前記四級アンモニウム殺生物剤が塩化ベンゼトニウムであり、前記芳香族カルボン酸がサリチル酸ナトリウムである、請求項1の組成物。
【請求項30】
前記四級アンモニウム殺生物剤が塩化ベンザルコニウムであり、前記芳香族カルボン酸がサリチル酸ナトリウムである、請求項1の組成物。
【請求項31】
溶媒を更に含む、請求項1の組成物。
【請求項32】
前記溶媒が水、アルコール、グリコール、エステル、エーテル、ポリエーテル又は前記のいずれかの任意の組合せである、請求項31の組成物。
【請求項33】
前記四級アンモニウム殺生物剤の殺生物有効量を含む、請求項1の組成物。
【請求項34】
前記四級アンモニウム殺生物剤の殺真菌有効量を含む、請求項1の組成物。
【請求項35】
前記ケトン酸対前記四級アンモニウム殺生物剤の重量比が約0.00056:1から1990:1の範囲である、請求項1の組成物。
【請求項36】
前記ケトン酸対前記四級アンモニウム殺生物剤の重量比が約0.0056:1から約1400:1の範囲である、請求項35の組成物。
【請求項37】
全組成物の100%重量を基準としてケトン酸を約0.00005から約0.5重量%及び四級アンモニウム殺生物剤を約0.00005から約0.45重量%を含む、請求項1の組成物。
【請求項38】
全組成物の100%重量を基準としてケトン酸を約0.0005から約0.35重量%及び四級アンモニウム殺生物剤を約0.0005から約0.2重量%含む、請求項37の組成物。
【請求項39】
前記芳香族カルボン酸対前記四級アンモニウム殺生物剤の重量比が約0.00056:1から約1990:1の範囲である、請求項1の組成物。
【請求項40】
前記芳香族カルボン酸対前記四級アンモニウム殺生物剤の重量比が約0.0056:1から約1400:1の範囲である、請求項39の組成物。
【請求項41】
全組成物の100%重量を基準として芳香族カルボン酸を約0.00005から約0.5重量%及び四級アンモニウム殺生物剤を約0.00005から約0.45重量%含む、請求項1の組成物。
【請求項42】
全組成物の100%重量を基準として芳香族カルボン酸を約0.0005から約0.35重量%及び四級アンモニウム殺生物剤を約0.0005から約0.2重量%含む、請求項41の組成物。
【請求項43】
(a)デヒドロ酢酸又はその塩;及び
(b)塩化ベンゼトニウム
の相乗効果性混合物を含む、抗菌性組成物。
【請求項44】
(a)サリチル酸又はその塩;及び
(b)塩化ベンゼトニウム
の相乗効果性混合物を含む、抗菌性組成物。
【請求項45】
請求項1の組成物の有効量を適用することを含む、微生物の生育を阻害するための方法。
【請求項46】
(a)デヒドロ酢酸又はその塩;
(b)ベンゼトニウム塩;及び
(c)サリチル酸又はその塩
の相乗効果性混合物を含む、防腐剤製剤。
【請求項47】
(d)安息香酸又はその塩;
(e)フェノキシエタノール;及び
(f)ベンジルアルコール
を更に含む、請求項46の防腐剤製剤。
【請求項48】
防腐剤製剤の全重量100%を基準として
(a)デヒドロ酢酸を約5から約40重量%;
(b)塩化ベンゼトニウムを約1から約20重量%;
(c)サリチル酸を約2.5から約20重量%;
(d)安息香酸を約2.5から約20重量%;
(e)フェノキシエタノールを約20から約50重量%;及び
(f)ベンジルアルコールを約5から約50重量%
を含む、請求項47の防腐剤製剤。
【請求項49】
防腐剤製剤の全重量100%を基準として
(a)デヒドロ酢酸を約10重量%;
(b)塩化ベンゼトニウムを約5重量%;
(c)サリチル酸を約10重量%;
(d)安息香酸を約10重量%;
(e)フェノキシエタノールを約35重量%;及び
(f)ベンジルアルコールを約30重量%
含む、請求項48の防腐剤製剤。
【請求項50】
請求項48の防腐性組成物を約0.01から約2重量%含む、組成物。

【公開番号】特開2009−263374(P2009−263374A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141934(P2009−141934)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【分割の表示】特願2002−568904(P2002−568904)の分割
【原出願日】平成14年2月28日(2002.2.28)
【出願人】(592233462)ロンザ インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】