説明

四置換ピロリジン誘導体の製法

【課題】優れた抗菌剤として期待されるキノロン誘導体の製造に有用な中間体化合物、およびそれらの製法の提供。
【解決手段】


(式中、R1:アルキル基、アラルキル基を表し;R:アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基;。)


で示される化合物から、数工程を経て、次の化合物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた抗菌剤として期待されるキノロン誘導体の製造に有用な中間体化合物、およびそれらの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器感染症における最大のターゲットは多薬剤耐性肺炎球菌であるが、この菌に効果があるとされるテリスロマイシンは一方で意識障害の発現という重篤な副作用をあわせもっている。したがって、高い抗菌力とともに安全性の高い抗菌剤の開発が望まれていた。
【0003】
次式(I):
【0004】
【化1】

(式中、nは、2から5までの整数を示し、R1は、置換基を有していてもよい炭素数1から4のアルキル基または置換基を有していてもよいアラルキル基を示し、Rは、水素原子またはフッ素原子を示し、Rは、置換基を有していてもよいアミノ基、炭素数1から4のアルコキシ基、水素原子、または水酸基を示す。)
で示されるキノロン化合物は、多薬剤耐性肺炎球菌に優れた殺菌力を示し、さらには優れた安全性と優れた体内動態を示す等、呼吸器感染症治療の問題を解決できる化合物である。この化合物は、不斉四置換のスピロアミノピロリジン化合物である式(II):
【0005】
【化2】

で示される化合物(あるいは、その環上のアミノ基が保護基で保護された化合物)と、例えば式(III):
【0006】
【化3】

で示される化合物との反応によって製造できる。
【0007】
式(II)で示される化合物のうち、例えばR1がメチル基で、nが2である化合物の製造法が特許文献1に記載されている。アセト酢酸エチルを出発原料としてアンモニアでのストレッカー反応で得たシアノ−アミノ体のアミノ基を電子吸引性基で保護することで逆反応を抑制しつつ、還元反応で一挙にピロリドン骨格を合成し、環状のアミド部分を還元した後の化合物であれば、光学活性な酸と塩を形成させることで光学分割が可能であることを見出し、光学活性な不斉四置換炭素含有スピロアミノピロリジン化合物を合成する方法を完成させた(特許文献1)。
【0008】
【特許文献1】特願2005−148121号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述の製法は工程が長いことから収率や操作性の点で、さらには青酸を使用していたことから環境、安全性面の点で、工業的製法としては改良の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意研究の結果、シクロプロピリデン化合物へのマイケル型付加反応を鍵反応として、これによって得られるC2対称化合物のジエステル化合物への選択的な加水分解を経て得た化合物に還元環化反応を行うことによって、短工程で目的とするスピロアミノピロリジンが得られることを見出した。さらに本発明の方法では青酸の代わりにニトロメタンを反応させて得た化合物を、引き続く還元反応に付すことで青酸との反応で得られたと同様の化合物が得られることも見出した。本発明はこれらの知見によって完成したものである。
【0011】
すなわち本発明は、式(1)
【0012】
【化4】

(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数1から4のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数7から10のアラルキル基を示し、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1から6のアルキルスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数6から10のアリールスルホニル基、または置換基を有していてもよい炭素数2から11のアシル基を示す。)
で示される化合物に、ニトリル化剤を反応させるかまたは塩基存在下でニトロメタンを反応させて式(3)
【0013】
【化5】

(式中、Rは、ニトリル基またはニトロメチル基を示し、R1は、先の定義に等しい。)
で示される化合物を得、この化合物に塩基存在下で式R−X(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1から6のアルキル基または置換基を有していてもいよい炭素数6から10のアリール基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。)で示される化合物を反応させて式(4)
【0014】
【化6】

(式中、R、R1、およびRは、先の定義に等しい。)
で示される化合物を得、この化合物を還元反応に附して式(5)
【0015】
【化7】

(式中、RおよびR1は、先の定義に等しい。)
で示される化合物を得、この化合物に塩基存在下で式R−X(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1から6のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数7から10のアラルキル基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。)で示される化合物を反応させて式(6)
【0016】
【化8】

(式中、R、R1、およびRは先の定義に等しい。)
で示される化合物を得、この化合物を加水分解反応に附して式(7)
【0017】
【化9】

(式中、RおよびRは先の定義に等しい。)
で示される化合物を得、この化合物を、
A法:アジド化合物と反応させた後、アルコールで処理して式(8)
【0018】
【化10】

(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数2から7のアルキルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数8から10のアラルキルオキシカルボニル基、または置換基を有していてもよい炭素数7から12のアリールオキシカルボニル基を示し、RおよびRは、先の定義に等しい。)
で示される化合物を得、この化合物から置換基Rを除去することによって;または、
B法:アジド化合物と反応させた後、水で処理することによって式(9)
【0019】
【化11】

(式中、RおよびRは、先の定義に等しい。)
で示される化合物を得、この化合物を還元処理することを特徴とする式(10)
【0020】
【化12】

(式中、RおよびRは、先の定義に等しい。)
で示される化合物の製法に関するものであり、さらには各工程で得られる各中間体化合物に関するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の製法によって四置換ピロリジン化合物を単工程で簡便に、そして青酸を使用することなく製造することができるようになり、したがって環境、安全性面の点を含め工業的製法として優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の製法は下記のとおりであり、以下に詳細に説明する。
【0023】
【化13】

【0024】
本発明の工程に含まれる各化合物の置換基について説明する。
置換基Rは、置換基を有していてもよい炭素数1から6のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、または置換基を有していてもよいアラルキル基を示すが、カルボン酸エステルを形成する基であればよい。Rとしては置換基を有していてもよい炭素数1から6のアルキル基、または置換基を有していてもよいアラルキル基が好ましい。さらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、またはベンジル基である。この中ではメチル基またはエチル基が好ましい。
【0025】
は、置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基、または置換基を有していてもよいアリールスルホニル基を意味するが、酸素原子とともに脱離基として機能する基であればよい。置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基としてはメタンンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基を挙げることができ、置換基を有していてもよいアリールスルホニル基としてはベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基を挙げることができる。
【0026】
は、ニトリル基またはニトロメチル基を示す。
【0027】
置換基Rは、水素原子またはアミノ基の保護基を示す。アミノ基の保護基としてはこの分野で通常使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、第三級ブトキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基類;ベンジルオキシカルボニル基、パラメトキシベンジルオキシカルボニル基、パラニトロベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基類;アセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、クロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、ベンゾイル基等のアシル基類;第三級ブチル基、ベンジル基、パラニトロベンジル基、パラメトキシベンジル基、トリフェニルメチル基、α−メチルベンジル基等のアルキル基類、またはアラルキル基類;メトキシメチル基、第三級ブトキシメチル基、テトヒドロピラニル基、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基等のエーテル類;トリメチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、第三級ブチルジメチルシリル基、トリベンジルシリル基、第三級ブチルジフェニルシリル基等の(アルキルおよび/またはアラルキル)置換シリル基を挙げることができる。
【0028】
これらのうちで好ましくはアラルキル基類である。アラルキル基のうちでも好ましくはベンジル基構造を有するものである。この様なベンジル基類はフェニル基部分およびメチレン基部分に置換基を有していてもよい。フェニル基部分の置換基としては、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、ハロゲン原子およびニトロ基からなる群の基から選ばれる1から3の基であればよく、複数の基が存在する場合は同一でも異なっていてもいずれでもよい。メチレン基部分の置換基としては炭素数1から6のアルキル基が好ましい。このうち好ましくはメチル基またはエチル基である。
【0029】
ベンジル基類としては、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α−エチルベンジル基が好ましく、さらにこれらのフェニル基部分に、メチル基、メトキシ基、ハロゲン原子、またはニトロ基が1個、あるいは同一または異なって2または3個置換していてもよい。
【0030】
置換基Rは、置換基を有していてもよい炭素数2から7のアルキルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数8から10のアラルキルオキシカルボニル基、または置換基を有していてもよい炭素数7から11のアリールオキシカルボニル基を示す。これらはアミノ基の保護基として知られているものであればよいが、置換基を有していてもよい炭素数2から7のアルキルオキシカルボニル基としては、第三級ブトキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基等;置換基を有していてもよい炭素数8から10のアラルキルオキシカルボニル基としてはベンジルオキシカルボニル基、パラメトキシベンジルオキシカルボニル基、パラニトロベンジルオキシカルボニル基等;置換基を有していてもよい炭素数7から12のアリールオキシカルボニル基としてはフェニルオキシカルボニル基、パラニトロフェニルオキシカルボニル基等を挙げることができる。置換基Rとしては置換基を有していてもよい炭素数2から7のアルキルオキシカルボニル基または置換基を有していてもよい炭素数8から10のアラルキルオキシカルボニル基がよく、さらには第三級ブトキシカルボニル基またはベンジルオキシカルボニル基がよい。
【0031】
なお、RとRはいずれもいわゆる保護基であるが、これらは異なる条件で切断されるものを選択するのが好ましい。
【0032】
置換基Rは、置換基を有していてもよい炭素数1から6のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6から10のアリール基を示す。
【0033】
Rがアルキル基であるとき、直鎖状または分枝状のいずれでもよいが、メチル基、エチル基、プロピル基、またはイソプロピル基であることが好ましく、これらのうちではメチル基またはエチル基が好ましく、さらにメチル基が好ましい。
【0034】
アルキル基の置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキルチオ基、および炭素数1から6のアルコキシ基からなる群の置換基から選ばれる基であればよい。
【0035】
Rがアルキル基であって水酸基を置換基として有する場合、アルキル基は、炭素数1から6の直鎖状または分枝状のいずれでもよく、またこれらの置換基はアルキル基の末端の炭素原子上に置換するのがより好ましい。水酸基を有するアルキル基としては炭素数3までのものがよく、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基等が好ましい。
【0036】
Rがハロゲン原子を置換基として有する場合、アルキル基は、炭素数1から6の直鎖状または分枝状のいずれでもよく、ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。またフッ素原子の数は、モノ置換からパーフルオロ置換までのいずれでもよい。モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基等を例示することができる。
【0037】
Rがアルキル基であってアルキルチオ基またはアルコキシ基を置換基として有する場合、アルキル基は直鎖状または分枝状のいずれでもよく、アルキルチオ基またはアルコキシ基もアルキル基部分は直鎖状または分枝状のいずれでもよい。アルキルチオ基を有するアルキル基としてはアルキルチオメチル基、アルキルチオエチル基、アルキルチオプロピル基が好ましく、さらにはアルキルチオ基も炭素数1から3までのものが好ましい。さらに好ましいものとして、メチルチオメチル基、エチルチオメチル基、メチルチオエチル基を挙げることができる。また、アルコキシ基を有するアルキル基としてはアルコキシメチル基、アルコキシエチル基、アルコキシプロピル基が好ましく、さらにはアルコキシ基も炭素数1から3までのものが好ましい。さらに好ましいものとして、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基を挙げることができる。
【0038】
Rが、置換基を有していてもよい炭素数6から10のアリール基のとき、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましい。アリール基上の置換基としては、メチル基、メトキシ基、またはハロゲン原子が1個、あるいは同一または異なって2または3個置換していてもよい。
【0039】
Rとしては、置換基を有していてもよい炭素数1から6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メチルチオメチル基、エチルチオメチル基、メチルチオエチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基が好ましい。これらのうちでさらに好ましくは、メチル基、フルオロメチル基である。
【0040】
次に各工程について説明する。
【0041】
式(1)の化合物は、文献(Eur. J. Org. Chem. 2004, 3992.)に記載の方法に従って得ることができる次式
【0042】
【化14】

【0043】
で示される化合物から得ることができる。すなわち該アルコール化合物は、メタントリカルボン酸トリエステル(トリエステルと称する。)、チタニウム試薬(IV)とエチルグリニャール試薬を反応させて得ることができる。
【0044】
チタニウム試薬としては、チタニウムテトライソプロポキシド(IV)やメチルチタニウムトリイソプロポキシド(IV)やクロルチタニウムトリイソプロポキシド(IV)等が使用できるが、特にチタニウムテトライソプロポキシド(IV)、クロルチタニウムトリイソプロポキシド(IV)が好ましい。
【0045】
エチルグリニャール試薬はエチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミドが使用でき、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等の溶液状態での使用も可能である。
【0046】
この反応は溶媒中で実施すればよい。使用する溶媒は反応を阻害することがなければ制限はなく、例えばテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物;塩化メチレン、クロロホルム等の塩素系化合物;を挙げることができる。これらのうちでは、特にエーテル系溶媒が好ましい。
【0047】
反応温度は−90℃〜170℃の範囲で実施すればよいが、好ましくは−78℃〜50℃の範囲である。反応時間は30分〜10時間程度でよい。
【0048】
反応は窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うのがよい。トリエステル、チタニウム試薬(IV)とエチルグリニャール試薬とを全てを一度に混和して反応させてもよいし、チタニウム試薬(IV)とエチルグリニャール試薬を混和した後にトリエステルを添加してもよい。また、チタニウム試薬(IV)の当量は1〜5当量が好ましく、エチルグリニャール試薬の当量は2〜30当量が好ましい。
【0049】
式(1)の化合物は上記のアルコール化合物に対して置換基を有していてもよいアルキルスルホニルクロリドまたは置換基を有していてもよいアリールスルホニルクロリドを塩基存在下に反応させるか、酸無水物や酸ハロゲン化物を反応させることで得ることができる。アルキルスルホニル化合物としては、メタンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルクロリド等;アリールスルホニルクロリドとしては、ベンゼンスルホニルクロリド、トルエンスルホニルクロリド等;を挙げることができる。塩基としては無機塩基、有機塩基のいずれでもよい。無機塩基としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩等を使用すればよい。有機塩基としては、トリアルキルアミン類、芳香族アミン類、飽和、部分飽和、芳香族の含窒素複素環化合物等を挙げることができる。例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルイソプロピルアミン;ジメチルアミノアニリン、ジエチルアミノアニリン;N−メチルモルホリン、DBU、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等である。
【0050】
式(3)の化合物は、式(1)の化合物をシアノ化剤と反応させるか、または塩基存在下でニトロメタンと反応させることによって製造できる。シアノ化剤としては青酸ナトリウム、青酸カリウム、テトラブチルアンモニウムシアニド等を挙げることができる。シアノ化剤は過剰に用いてもよい。反応溶媒は反応を阻害することがなければ特に制限はないが、好ましくはジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドのアミド系溶媒である。反応温度は−78℃〜170℃の範囲で実施すればよいが、好ましくは0℃〜50℃の範囲である。反応時間は30分〜10時間程度でよい。
【0051】
ニトロメタンを反応させる場合、塩基として炭酸カリウムや水酸化ナトリウム等の無機塩基やトリエチルアミンやピリジン等のアミン塩基を使用するのがよい。塩基の使用量は過剰量を使用してもよい。溶媒としてはニトロメタンそのものが溶媒となり得るが、他の溶媒と混和して用いてもよい。反応温度は0℃〜170℃の範囲で行えばよい。
【0052】
この反応では、式(1)の化合物は、一旦、式(2)
【0053】
【化15】

で示される構造の化合物に変換された後、その二重結合にシアノまたはニトロメチルが付加して式(3)の化合物が生成すると考えられる。この式(2)の化合物は極めて反応性が高く、反応系内で生成させ、単離することなく直ちに次工程の反応に進めることができる。
【0054】
式(4)の化合物は式(3)の化合物に対して塩基存在下、式R−Xで示される化合物であるアルキルハライドまたはアラルキルハライドを作用させることによって得ることができる。塩基としては水素化ナトリウム、t−ブトキシカリウム等の金属アルコキシド、炭酸カリウムや水酸化ナトリウム等の無機塩基を挙げることができる。アルキルハライドまたはアラルキルハライドは、所望する置換基のクルリドやブロミド、またはヨージドであればよく、例えばベンジルクロリド、ベンジルブロミド等である。塩基、アルキルハライドまたはアラルキルハライドの使用量はいずれも1〜10当量が好ましい。溶媒は反応を阻害しないものであれば制限はない。反応温度は−30℃〜170℃の範囲であればよく、好ましくは0℃〜50℃である。反応時間は30分〜10時間程度でよい。
【0055】
式(5)の化合物は式(4)の化合物を還元反応条件下で処理して得ることができる。この様な還元反応としては、金属触媒存在下、水素ガスまたは蟻酸もしくはその塩を水素源として使用する接触還元反応を使用するのが好ましい。なお、この還元条件はシアノ基またはニトロメチル基をアミノメチル基には変換するが、エステル部分は還元されない還元条件であれば接触還元には限定されない。このような還元に使用する金属触媒としては、ラネーニッケル、ラネーコバルト、パラジウム炭素、白金炭素、ロジウム炭素等を挙げることができる。水素ガスを使用するときの反応圧力は1〜50気圧の範囲が好ましい。ギ酸またはその塩を水素源として使用する際には常圧でよい。溶媒としては反応に不活性であれば制限はなくいずれの溶媒を用いてもよいが、好ましくはメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒である。反応温度は0℃〜50℃の範囲でよい。反応時間は30分〜10時間程度でよい。
【0056】
また、通常はアミノメチル基が生成すると直ちに閉環が進行するが、条件によっては閉環が進行しないこともある。この様なときは触媒を濾過する等した後、さらに必要であればアミノメチル化合物を単離した後、加熱して閉環させることができる。
【0057】
式(6)の化合物は環状アミド基の窒素原子(ピロリドンの1位の窒素原子)を保護基を導入することで得られる。保護基を導入するための試剤としては採用する保護基に対応したものであればよいが式R−Xで示される化合物、例えばアラルキルハライドとしてベンジルクロリド、ベンジルブロミドを挙げることができ、この他ジフェニルメチルブロミド、トリチルクロリドを挙げることができる。この他に使用できる試剤としては、二炭酸ジ−t−ブチル、無水酢酸、そしてアシルハライドとしてベンゾイルクロリド、アセチルクロリド等を挙げることができる。溶媒は反応を阻害するものでなければ制限はなく、いずれの溶媒を用いてもよい。反応温度は−30℃〜170℃の範囲でよく、好ましくは0℃〜50℃の範囲である。反応時間は30分〜10時間程度でよい。
【0058】
また式(6)の化合物は加水分解によってカルボン酸化合物(7)に変換することができる。この加水分解は塩基性条件下または酸性条件下のいずれかで実施すればよく、この加水分解は通常この分野で実施される反応条件を採用すればよい。例えば、塩酸酸性とした含水アルコール類中での加熱反応や水酸化ナトリウム含有含水アルコール中での加熱反応等である。
【0059】
式(8)の化合物は式(7)のカルボン酸化合物にクロロギ酸エチルや無水酢酸等を作用させて混合酸無水物とするか、または塩化チオニル等で酸クロリドにした後、単離することなくアジ化ナトリウムやテトラアルキルアンモニウムアジド等のアジド化剤を作用させることによって酸アジドとした後、加熱してイソシアナートへ転位させ、最後にアルコールで処理することによって得ることができる。また、酸アジドは三級アミン化合物等の塩基存在下、式(7)の化合物にジフェニルリン酸アジドを作用させることで一挙に酸アジドを生成させた後に得ることもできる。酸アジド化の反応温度は0℃〜50℃であればよく、アジド化剤は1〜10当量の範囲で用いればよい。反応溶媒は反応に不活性ならばいずれの溶媒を用いてもよい。酸アジドの加熱反応は30℃〜170℃の範囲で行えばよく、加えるアルコールは1当量〜200当量の範囲で加えればよい。反応時間は30分〜24時間程度でよい。
【0060】
このアルコール処理に使用されるアルコールとしては、第三級ブチルアルコールまたはベンジルアルコールがよい。なお、これ以外の炭素数1から6の置換基を有していてもよい脂肪族アルコール類、炭素数2から9のアラルキルアルコール類、炭素数6から10の置換基を有していてもよいフェノール類を使用してもよい。これらの化合物における置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルコキシ基、ニトロ基等を挙げることができ、これらは1種または複数種が、1または2以上存在していてもよい。
【0061】
一方、アルコールの代わりに水によって処理することで化合物(8)のRが除去された構造の化合物(9)を得ることができる。この水処理の条件はアルコール処理と同様の条件を適用すればよい。
【0062】
さらにこの化合物(9)は、化合物(8)の置換基Rを除去することで得ることができる。このRはアミノ基の保護基として機能しておりその除去は使用されたRに応じた、この分野で通常使用される条件で切断すればよい。例えば、酸処理、酸またはアルカリ加水分解、さらには接触か水素分解反応等である。
【0063】
式(10)の化合物は式(9)の化合物のアミドカルボニル基を還元して得ることができる。この様な還元剤としては、水素化アルミニウムリチウムやナトリウムビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムヒドリド等の水素化アルミニウム剤;水素化ホウ素ナトリウム、ジボラン、ボランテトラヒドロフラン錯体等の水素化ホウ素剤;を挙げることができる。
【0064】
反応は溶媒中で実施すればよく、反応溶媒は反応を阻害するものでなければいずれの溶媒を用いてもよい。例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物;が好ましい。反応温度は−30〜170℃の範囲でよいが、好ましくは0〜110℃の範囲である。反応時間は30分〜10時間程度でよい。
【0065】
化合物(10)は、不斉炭素を含有し光学異性体が存在する。この光学異性体は、光学活性な酸類を使用した光学分割によって分離することができる。さらには、置換基Rが光学活性な置換基であるときには化合物(10)はジアステレオマーが存在することとなりクロマトグラフィーにて分離することができる。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
<実施例1>
ジエチル 2−(1−ハイドロキシサイクロプロピル)マロネート
【0068】
【化16】

【0069】
アルゴン雰囲気下、トリエチル メタントリカルボキシレート(5.0ml、23.2mmol)をテトラヒドロフラン(50ml)に室温で溶解後、−40℃に冷却した。この溶液に、チタニウムテトライソプロポキシド(14.3ml、46.4mmol)を添加し、5分間攪拌を行なった。次にエチルマグネシウムブロミドの1Mテトラヒドロフラン溶液(278ml、278mmol)を、反応液の温度が−40℃〜−30℃を保つように滴下した。滴下終了後同温度でさらに、1.5時間撹拌を行なった。反応終了後、反応液に10%硫酸水溶液(350ml)を添加し、酢酸エチルで抽出操作を行った。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20ml)、飽和食塩水(20ml)の順で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。固体をろ去し、減圧濃縮により褐色油状物5.8gを得た。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/1)で精製し、標題化合物(2.5g、11.5mmol、収率49.4%)を無色油状物として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:0.67−0.70(m,2H),0.93−0.97(m,2H),1.31(t,6H,J=7.2Hz),3.02(s,1H),4.24−4.31(m,4H)
【0070】
<実施例2>
ジエチル 2−(1−アセトキシサイクロプロピル)マロネート
【0071】
【化17】

【0072】
ジエチル 2−(1−ハイドロキシサイクロプロピル)マロネート(0.7g、3.2mmol)を酢酸エチル(4.9ml)に室温で溶解した。この溶液に、無水酢酸(0.35ml、3.7mmol)、ピリジン(0.31ml、3.8mmol)およびジメチルアミノピリジン(20mg、0.2mmol)を添加後40℃に加熱した。15分撹拌後、反応液を室温に冷却してさらに14時間攪拌を行なった。反応終了を確認後、反応液を炭酸水素ナトリウム水溶液を用いてpH9〜10に調整し、酢酸エチルで抽出操作を行った。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。固体をろ去し、減圧濃縮により褐色油状物0.82gを得た。得られた残留物のH‐NMR解析により、標題化合物の生成を確認した。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:0.96−1.00(m,2H),1.13−1.17(m,2H),1.27(t,6H,J=7.1Hz),1.99(s,3H),4.01(s,1H),4.20(q,4H,J=7.2Hz)
【0073】
<実施例3>
ジエチル 2−(1−シアノサイクロプロピル)マロネート
【0074】
【化18】

【0075】
窒素雰囲気下、ジエチル 2−(1−アセトキシサイクロプロピル)マロネート(0.8g、93%、3.0mmol)をジメチルホルムアミド(7ml)に室温で溶解した。この溶液に、青酸カリウム(417mg、6.4mmol)を添加後19時間撹拌を行なった。反応終了を確認後、固体をろ去し、減圧濃縮により褐色油状物0.82gを得た。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製し、標題化合物(0.3g、1.4mmol、収率46.6%)を淡黄色油状物として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.07−1.10(m,2H),1.32(t,6H,J=7.2Hz),1.44−1.473(m,2H),2.88(s,1H),4.26−4.34(m,4H)
【0076】
<実施例4>
ジエチル 2−(1−シアノサイクロプロピル)−2−メチル−マロネート
【0077】
【化19】

【0078】
窒素雰囲気下、ジエチル 2−(1−シアノサイクロプロピル)マロネート(0.2g、0.89mmol)をテトラヒドロフラン(4ml)に室温で溶解した。この溶液を0℃に冷却し、ヨウ化メチル(166μl、2.67mmol)および水素化ナトリウム(37mg、0.93mmol)を添加して攪拌を行った。30分後、反応液を40℃に加熱し、さらに2時間攪拌を行なった。反応終了を確認後、反応液を塩化アンモニウム水溶液で希釈し、酢酸エチルで抽出操作を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、固体をろ去し、減圧濃縮により褐色油状物0.23gを得た。得られた残留物のH‐NMR解析により、標題化合物の生成を確認した。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.15−1.19(m,2H),1.29(t,6H,J=7.2Hz),1.30−1.33(m,2H),1.54(s,3H),4.25(ddd,4H,J=14.3,7.1,1.3Hz)
【0079】
<実施例5>
7−エトキシカルボニル−7−メチル−6−オキソ−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン
【0080】
【化20】

【0081】
ジエチル 2−(1−シアノサイクロプロピル)−2−メチル−マロネート(1.3g、92%、5.0mmol)のエタノール(2.1ml)溶液に、ラネーニッケル(6.5g)を添加した。水素雰囲気(30気圧)下、50℃にて20時間攪拌を行なった。反応終了を確認後、固体をろ去し、ろ液を減圧濃縮して褐色油状物1.1gを得た。得られた残留物のH‐NMR解析により、標題化合物の生成を確認した。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:0.51−0.57(m,1H),0.59−0.67(m,2H),0.88−0.95(m,1H),1.17(s,3H),1.27(t,3H,J=7.1Hz),3.05(d,1H,J=8.9Hz),3.64(d,1H,J=8.9Hz),4.12−4.18(m,4H),6.40(br,1H)
【0082】
<実施例6>
5−ベンジル−7−エトキシカルボニル−7−メチル−6−オキソ−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン
【0083】
【化21】

【0084】
窒素雰囲気下、7−エトキシカルボニル−7−メチル−6−オキソ−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン(1.0g、93%、4.7mmol)をジメチルホルムアミド(10ml)に室温で溶解後、0℃に冷却した。この溶液に、水素化ナトリウム(0.2g、4.8mmol)およびベンジルブロミド(620μl、4.0mmol)を添加し、室温に昇温して1時間攪拌を行なった。反応終了を確認後、反応液を塩化アンモニウム水溶液で希釈し、酢酸エチルで抽出操作を行った。有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。固体をろ去し、減圧濃縮により褐色油状物2.5gを得た。得られた残留物のH−NMR解析により、標題化合物の生成を確認した。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:0.53−0.65(m,2H),0.85−0.97(m,2H),1.19−1.28(m,6H),2.86(d,1H,J=9.0Hz),3.49(d,1H,J=9.0Hz),4.09−4.16(m,2H),3.49(d,1H,J=14.8Hz),4.79(d,1H,J=14.8Hz),7.28−7.41(m,5H)
【0085】
<実施例7>
5−ベンジル−7−カルボキシ−7−メチル−6−オキソ−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン
【0086】
【化22】

【0087】
5−ベンジル−7−エトキシカルボニル−7−メチル−6−オキソ−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン(0.39mmol)の混合物をエタノール(240μl)に室温で溶解した。この溶液に5規定水酸化ナトリウム水溶液(800μl、4.0mmol)を添加後40℃に加熱し、3時間攪拌を行なった。反応終了を確認後、反応液を水(5ml)で希釈し、酢酸エチル(5ml)で2度洗浄した。水層を2規定塩酸を用いてpH3〜4に調整し、酢酸エチル(5ml)で2度抽出操作を行った。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。固体をろ去し、減圧濃縮により溶媒を溜去した。析出した固体を酢酸エチルで洗浄し、標題化合物(51.1mg、0.2mmol、収率50.5%)を白色結晶として得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:0.44−0.52(m,2H),0.62−0.68(m,1H),0.76−0.82(m,1H),1.00(s,3H),2.95(d,1H,J=9.0Hz),3.44(d,1H,J=9.0Hz),4.38(d,1H,J=15.1Hz),4.57(d,1H,J=15.1Hz),7.25−7.36(m,5H),12.7(br,1H)
【0088】
<実施例8>
5−ベンジル−7−ベンジルオキシカルボニル−7−メチル−6−オキソ−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン
【0089】
【化23】

【0090】
窒素雰囲気下、5−ベンジル−7−カルボキシ−7−メチル−6−オキソ−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン(0.1g、0.39mmol)をトルエン(1ml)で室温下溶解した。この溶液に、トリエチルアミン(118μl、0.85mmol)およびジフェニルホスホリルアジド(91μl、0.42mmol)を添加後100℃に加熱し、1時間撹拌を行なった。系中で対応する酸アジドおよびイソシアネートが順次発生したことを薄層クロマトグラフィーにて確認後、ベンジルアルコール(53μl、0.51mmol)を添加して100℃にて更に19時間攪拌を行なった。反応終了を確認後、反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。固体をろ去し、減圧濃縮により褐色油状物0.19gを得た。得られた残留物のH−NMR解析により、標題化合物の生成を確認した。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:0.40−0.60(m,2H),0.70−0.90(m,2H),1.32(s,3H),3.06(d,1H,J=8.1Hz),3.21(d,1H,J=7.3Hz),4.47(d,1H,J=14.3Hz),4.66(d,1H,J=14.3Hz),4.97−5.13(m,2H),7.26−7.35(m,10H)
【0091】
<実施例9>
5−ベンジル−7−ベンジルオキシカルボニル−7−メチル−6−オキソ−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン
【0092】
【化24】

【0093】
窒素雰囲気下、5−ベンジル−7−カルボキシ−7−メチル−6−オキソ−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン(150mg、0.51mmol)をアセトン(6.6ml)に室温で溶解した。この溶液にトリエチルアミン(169μl、1.22mmol)を加えて0℃に冷却し、クロロ蟻酸エチル(58μl、0.61mmol)のアセトン(0.9ml)溶液を添加した。反応液を室温に昇温し、攪拌を続けた。系中で混合酸無水物の生成を確認後、テトラブチルアンモニウムアジド(159mg、0.56mmol)を添加してさらに攪拌を続けた。系中で混合酸無水物が酸アジドに変化したことを確認後、反応液を減圧濃縮した。窒素雰囲気下、残留物をトルエン(1.5ml)で希釈し、加熱還流を行なった。系中でイソシアネートの生成を確認後、ベンジルアルコール(79μl、0.76mmol)を添加して加熱還流にて更に17時間攪拌を行なった。反応終了を確認後、反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。固体をろ去し、減圧濃縮により褐色油状物0.28gを得た。得られた残留物のH−NMR解析により、標題化合物の生成を確認した。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:0.40−0.60(m,2H),0.70−0.90(m,2H),1.32(s,3H),3.06(d,1H,J=8.1Hz),3.21(d,1H,J=7.3Hz),4.47(d,1H,J=14.3Hz),4.66(d,1H,J=14.3Hz),4.97−5.13(m,2H),7.26−7.35(m,10H)
【0094】
<実施例10>
7−アミノ−5−ベンジル−7−メチル−6−オキソ−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン
【0095】
【化25】

【0096】
5−ベンジル−7−ベンジルオキシカルボニル−7−メチル−6−オキソ−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン(45mg、0.12mmol)をエタノール(1ml)に室温で溶解した。この溶液に5%パラジウム‐炭素粉末(22mg)を添加した。水素雰囲気下、40℃にて15時間攪拌を行なった。反応終了を確認後、固体をろ去し、減圧濃縮により褐色油状物32.3mgを得た。得られた残留物のH−NMR解析により、標題化合物の生成を確認した。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:0.31−0.36(m,1H),0.44−0.51(m,1H),0.66−0.71(m,1H),0.90−0.95(m,1H),1.15(s,3H),1.73(br,2H),2.83(d,1H,J=9.5Hz),3.26(d,1H,J=9.5Hz),4.43(d,1H,J=14.8Hz),4.56(d,1H,J=14.8Hz),7.13−7.37(m,5H)
【0097】
<実施例11>
7−アミノ−5−ベンジル−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン
【0098】
【化26】

【0099】
窒素雰囲気下、7−アミノ−5−ベンジル−7−メチル−6−オキソ−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン(32mg、77%、0.11mmol)をトルエン(0.3ml)に室温で溶解した。この溶液にナトリウム水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウム(116mg、65%、0.39mmol)を添加し、室温にて10分間攪拌を行なった。反応液を60℃に加熱後さらに30分間撹拌を行なった。反応終了を確認後、反応液に5規定水酸化ナトリウム水溶液(5ml)を添加し、トルエン(10ml)で2度抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、固体をろ去し、減圧濃縮により褐色油状物26.4mgを得た。得られた残留物のH−NMR解析により、標題化合物の生成を確認した。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:0.36−0.44(m,2H),0.55−0.65(m,2H),0.95(s,3H),1.58(br,2H),2.47(d,1H,J=8.9Hz),2.54(d,1H,J=8.9Hz),2.74(dd,2H,J=8.9,1.6Hz),3.59(d,2H,J=2.0Hz),7.13−7.35(m,5H)
【0100】
<実施例12>
2−(1−シアノサイクロプロピル)−2−メチル−マロン酸モノエチルエステル
【0101】
【化27】

【0102】
ジエチル 2−(1−シアノサイクロプロピル)−2−メチル−マロネート(0.3g、1.25mmol)をエタノール(0.3ml)に室温で溶解した。この溶液を0℃に冷却し、10規定水酸化カリウム水溶液(0.125ml、1.25mmol)を添加して14時間撹拌を続けた。反応終了を確認後、減圧濃縮により溶媒を溜去した。得られた残留物のH−NMR解析により標題化合物の生成を確認した。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.10−1.21(m,4H),1.23−1.33(m,6H),2.35(br,1H),4.16−4.28(m,2H)
【0103】
<実施例13>
2−(1−シアノサイクロプロピル)−2−メチル−マロン酸モノエチルエステル
【0104】
【化28】

【0105】
2−(1−シアノサイクロプロピル)−2−メチル−マロン酸ジエチルエステル(48mg、0.20mmol)にブタ肝臓由来エステラーゼ(240ユニット)およびpH7.0の50mMリン酸緩衝液(10ml)を室温で添加した。この懸濁液を30℃にて3時間撹拌を続けた。反応液の高速液体クロマトグラフィー解析により、標題化合物の一方の異性体が7.7対1の比率で優先的に生成したことを確認した。
【0106】
<実施例14>
2−(1−シアノサイクロプロピル)−2−メチル−マロン酸モノエチルエステル
【0107】
【化29】

【0108】
2−(1−シアノサイクロプロピル)−2−メチル−マロン酸ジエチルエステル(48mg、0.20mmol)にウサギ肝臓由来エステラーゼ(240ユニット)およびpH7.0の50mMリン酸緩衝液(10ml)を室温で添加した。この懸濁液を30℃にて3時間撹拌を続けた。反応液の高速液体クロマトグラフィー解析により、実施例13で得られた化合物とは逆の立体を有する標題化合物の一方の異性体が1対2.3の比率で優先的に生成したことを確認した。
【0109】
<実施例15>
エチル 2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(1−シアノサイクロプロピル)−プロピオネート
【0110】
【化30】

【0111】
2−(1−シアノサイクロプロピル)−2−メチル−マロン酸モノエチルエステル(1.25mmol)を窒素雰囲気下、アセトニトリル(6ml)で室温下に溶解した。この溶液に、モレキュラーシースブス(4A、適当量)、トリエチルアミン(0.2ml、1.44mmol)およびジフェニルホスホリルアジド(0.3ml、1.39mmol)を添加後、40℃にて40分間撹拌を行なった。析出した固体をろ去後、40℃にて4時間撹拌を行なった。系中で対応する酸アジドが発生したことを薄層クロマトグラフィーにて確認後、80℃に昇温して更に撹拌を続けた。酸アジドの消失およびイソシアネートの発生を確認後、ベンジルアルコール(0.16ml、1.54mmol)を添加して80℃にて更に16時間攪拌を行なった。反応終了を確認後、反応液を酢酸エチルで希釈した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。固体をろ去し、減圧濃縮により褐色油状物を得た。得られた残留物を薄層シリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=10/1及びヘキサン/酢酸エチル=2/1)で精製し、標題化合物(0.24g、0.16mmol、61.3%)を淡黄色油状物として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.20−1.32(m,7H),1.67(s,3H),4.21−4.35(m,2H),5.73(br,1H),7.30−7.39(m,5H)
【0112】
<実施例16>
5−ベンジル−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−7−メチル−6−オキソ−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン
【0113】
【化31】

【0114】
エチル 2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(1−シアノサイクロプロピル)−プロピオネート(40mg、0.13mmol)のエタノール(1.6ml)溶液に、ラネーコバルト(120mg)を添加した。水素雰囲気(1気圧)下、50℃にて90分攪拌を行なった。反応終了を確認後、固体をろ去し、ろ液を減圧濃縮して褐色油状物66mgを得た。得られた残留物を窒素雰囲気下、ジメチルホルムアミド(0.4ml)に室温で溶解後0℃に冷却した。この溶液に、水素化ナトリウム(3.1mg、77.5μmol)およびベンジルクロリド(10μl、86.9μmol)を添加し、室温に昇温して14時間攪拌を行なった。反応終了を確認後、反応液を塩化アンモニウム水溶液で希釈し、酢酸エチルで抽出操作を行った。有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。固体をろ去し、減圧濃縮により褐色油状物17.0mgを得た。得られた残留物を薄層シリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=10/1)で精製し、標題化合物(13.9mg、38.1μmol、49.7%)を淡黄色油状物として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:0.45−0.54(m,2H),0.79−0.88(m,2H),1.34(s,3H),3.07(d,1H,J=9.0Hz),3.22(d,1H,J=8.5Hz),4.47(d,1H,J=14.7Hz),4.66(d,1H,J=14.2Hz),4.97−5.13(m,2H),7.26−7.39(m,10H)
【0115】
<実施例17>
2−(1−ニトロメチルシクロプロピル)マロン酸ジエチルエステル
【0116】
【化32】

【0117】
アルゴン雰囲気下、2−(1−アセトキシシクロプロピル)マロン酸ジエチルエステル(537mg)をニトロメタン(5.4ml)に溶解させた。室温で炭酸カリウム(862mg)を添加した。2時間攪拌後、不溶物を濾別し、減圧下、溶媒を除去することで褐色油状物を得た。H−NMRで定量したところ目的物の収率は96%であった。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:4.57(s,2H),4.20(q,J=7.2Hz,4H),3.23(s,1H),1.27(t,J=7.2Hz,6H),0.96−0.91(m,4H).
【0118】
<実施例18>
2−メチル−2−(1−ニトロメチルシクロプロピル)マロン酸ジエチルエステル
【0119】
【化33】

【0120】
アルゴン雰囲気下、2−(1−ニトロメチルシクロプロピル)マロン酸ジエチルエステル(464mg)をテトラヒドロフラン(4.6ml)に溶解させた。室温でヨウ化メチル(346μl)を添加後、0℃に冷却し、60%水素化ナトリウム(79mg)を添加した。2時間攪拌後、水を添加し、酢酸エチルで3回抽出した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下、溶媒を除去することで油状物を得た。シリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物を油状物質(257mg、収率53%)として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:4.57(s,2H),4.24−4.10(m,4H),1.34(s,3H),1.25(t,J=7.2Hz,6H),1.07−1.02(m,2H),0.87−0.83(m,2H).
【0121】
<実施例19>
7−エトキシカルボニル−7−メチル−6−オキソ−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン
【0122】
【化34】

【0123】
2−メチル−2−(1−ニトロメチルシクロプロピル)マロン酸ジエチルエステル(257mg)をエタノール(2.6ml)に溶解させた。室温でラネーニッケル(771mg)と混合した後、水素置換を行い、反応容器内の水素圧を35kgf/cm2とした。50℃で15時間攪拌後、セライト濾過を行い、減圧下、溶媒を除去することで油状物を得た。H−NMRで定量したところ目的物の収率は80%であった。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:7.03(brs,1H),4.30−4.20(m,1H),4.19−4.10(m,1H),3.63(d,J=9.0Hz,1H),3.06(d,J=9.0Hz,1H),1.27(t,J=7.0Hz,3H),1.16(s,3H),0.95−0.87(m,1H),0.68−0.58(m,2H),0.57−0.49(m,1H).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数1から4のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数7から10のアラルキル基を示し、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1から6のアルキルスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数6から10のアリールスルホニル基、または置換基を有していてもよい炭素数2から11のアシル基を示す。)
で示される化合物に、ニトリル化剤を反応させるかまたは塩基存在下でニトロメタンを反応させて式(3)
【化2】

(式中、Rは、ニトリル基またはニトロメチル基を示し、R1は、先の定義に等しい。)
で示される化合物を得、この化合物に塩基存在下で式R−X(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1から6のアルキル基または置換基を有していてもいよい炭素数6から10のアリール基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。)で示される化合物を反応させて式(4)
【化3】

(式中、R、R1、およびRは、先の定義に等しい。)
で示される化合物を得、この化合物を還元反応に附して式(5)
【化4】

(式中、RおよびR1は、先の定義に等しい。)
で示される化合物を得、この化合物に塩基存在下で式R−X(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1から6のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数7から10のアラルキル基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。)で示される化合物を反応させて式(6)
【化5】

(式中、R、R1、およびRは先の定義に等しい。)
で示される化合物を得、この化合物を加水分解反応に附して式(7)
【化6】

(式中、RおよびRは先の定義に等しい。)
で示される化合物を得、この化合物を、
A法:アジド化合物と反応させた後、アルコールで処理して式(8)
【化7】

(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数2から7のアルキルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数8から10のアラルキルオキシカルボニル基、または置換基を有していてもよい炭素数7から12のアリールオキシカルボニル基を示し、RおよびRは、先の定義に等しい。)
で示される化合物を得、この化合物から置換基Rを除去することによって;または、
B法:アジド化合物と反応させた後、水で処理することによって式(9)
【化8】

(式中、RおよびRは、先の定義に等しい。)
で示される化合物を得、この化合物を還元処理することを特徴とする式(10)
【化9】

(式中、RおよびRは、先の定義に等しい。)
で示される化合物の製法。
【請求項2】
Rが、置換基を有していてもよい炭素数1から6のアルキル基である請求項1に記載の製法。
【請求項3】
Rが、メチル基である請求項1または2に記載の製法
【請求項4】
が、置換基を有していてもよいアラルキル基である請求項1から3のいずれか一項に記載の製法。
【請求項5】
置換基を有していてもよいアラルキル基が、メチル基、メトキシ基、ハロゲン原子、およびニトロ基からなる群の基から選ばれる基1または2以上をフェニル基部分に有する、ベンジル基、α−メチルベンジル基、またはα−エチルベンジル基である請求項4に記載の製法。
【請求項6】
が、ベンジル基またはα−メチルベンジル基である請求項1から3のいずれか一項に記載の製法。
【請求項7】
が、置換基を有していてもよい炭素数2から7のアルキルオキシカルボニル基または置換基を有していてもよい炭素数8から10のアラルキルオキシカルボニル基である請求項1から6のいずれか一項に記載の製法。
【請求項8】
が、第三級ブトキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、パラメトキシベンジルオキシカルボニル基、またはパラニトロベンジルオキシカルボニル基である請求項1、3、または6に記載の製法。
【請求項9】
が、置換基を有していてもよい炭素数2から7のアルキルオキシカルボニル基である請求項1から6のいずれか一項に記載の製法。
【請求項10】
が、第三級ブトキシカルボニル基である請求項1、3、または6のいずれか一項に記載の製法。
【請求項11】
が、置換基を有していてもよい炭素数1から4のアルキル基である請求項1から10のいずれか一項に記載の製法。
【請求項12】
が、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、またはベンジル基である請求項1、3、6、または9のいずれか一項に記載の製法。
【請求項13】
が、メチル基またはエチル基である請求項1、3、6、または9のいずれか一項に記載の製法。
【請求項14】
式(5)の化合物を得る工程の還元反応が、金属触媒存在下の接触還元反応である請求項1から13のいずれか一項に記載の製法。
【請求項15】
式(10)の化合物を得る工程の還元反応が、水素化アルミニウム剤または水素化ホウ素剤である請求項1から14のいずれか一項に記載の製法。
【請求項16】
が、ニトロメチル基である請求項1から15のいずれか一項に記載の製法。
【請求項17】
式(1)
【化10】

(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数1から4のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数7から10のアラルキル基を示し、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1から6のアルキルスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数6から10のアリールスルホニル基、または置換基を有していてもよい炭素数2から11のアシル基を示す。)
で示される化合物に、ニトリル化剤を反応させるかまたは塩基存在下でニトロメタンを反応させて式(3)
【化11】

(式中、Rは、ニトリル基またはニトロメチル基を示し、R1は、先の定義に等しい。)
で示される化合物を得、この化合物に塩基存在下で式R−X(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1から6のアルキル基または置換基を有していてもいよい炭素数6から10のアリール基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。)で示される化合物を反応させて式(4)
【化12】

(式中、R、R1、およびRは、先の定義に等しい。)
で示される化合物の製法。
【請求項18】
が、ニトロメチル基である請求項17に記載の製法。
【請求項19】
Rが、メチル基である請求項17または18に記載の製法。
【請求項20】
が、置換基を有していてもよい炭素数1から4のアルキル基である請求項17から19のいずれか一項に記載の製法。
【請求項21】
が、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、またはベンジル基である請求項17から20のいずれか一項に記載の製法。
【請求項22】
が、メチル基またはエチル基である請求項17から20のいずれか一項に記載の製法。
【請求項23】
式(4)
【化13】

(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数1から4のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数7から10のアラルキル基を示し、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1から6のアルキルスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数6から10のアリールスルホニル基、または置換基を有していてもよい炭素数2から11のアシル基を示し、Rは、ニトリル基またはニトロメチル基を示し、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1から6のアルキル基または置換基を有していてもいよい炭素数6から10のアリール基を示す。)
で示される化合物。
【請求項24】
が、ニトロメチル基である請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
Rが、メチル基である請求項23または24に記載の化合物。
【請求項26】
が、置換基を有していてもよい炭素数1から4のアルキル基である請求項23から25のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
が、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、またはベンジル基である請求項23から25のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項28】
が、メチル基またはエチル基である請求項23から25のいずれか一項に記載の化合物。

【公開番号】特開2008−133211(P2008−133211A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319987(P2006−319987)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000002831)第一製薬株式会社 (129)
【Fターム(参考)】