説明

四重極型質量分析計

【課題】小型化が可能な四重極型質量分析計を提供する。
【解決手段】本発明の四重極型質量分析計1は、絶縁性で環状の電極ホルダ12の内周面に固定して配された、4本の電極柱13からなる四重極14を備え、前記四重極に直流電圧と交流電圧を印加し、イオン化装置11によって気体のイオンを生成し、前記イオンを前記四重極の間を通過させ、コレクタ15、16で収集して質量分析を行う四重極型質量分析計であって、前記電極ホルダに設けられた貫通孔を有し、前記コレクタ15、16の配線が、該貫通孔を通して配されていること、を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四重極型質量分析計に関する。
【背景技術】
【0002】
真空中に発生、導入、または残留する気体を高い精度で分析する場合に四重極型質量分析計100が使用される。図14は四重極型質量分析計100の概略図であり、イオン源部(イオン化装置)110と、四重極電極部120と、検出部160とからなっている。
【0003】
分析されるべき気体Gがイオン源部110においてイオン化され、加速電極によって加速され、引出し電極によって四重極電極部120の方へ引き出される。四重極電極部120は互いに平行に配置された4本の円柱状電極(以降、電極柱と略す)130が絶縁性の一対の電極ホルダ140に固定されており、対向する電極柱130を結線して一方には+[U+Vcos(ωt)]、他方には−[U+Vcos(ωt)]で示される直流電圧Uと高周波電圧Vcos(ωt)とを重畳させたものが印加される。この電圧印加により四重極電極部120の内部空間に電場が形成されるが、イオン源部110で生成したイオンは、このイオン源部110が内蔵する引出し電極の電圧で四重極電極部120の中心軸(z軸とする)に沿って入射されz軸方向へ進む間に、四重極電極部120内の電場によってx軸方向およびy軸方向への力を受ける。
【0004】
直流電圧U、高周波電圧Vcos(ωt)、四重電極間距離2r(rは四重極電極部120の中心軸から電極柱130までの距離)の条件のもとで、ある特定のm/e(質量電荷比)を有するイオンのみがx軸方向、y軸方向ともに限定された振幅の軌道150を辿って四重極電極部120を通過できる。それ以外のm/eを有するイオンは振幅が増大して電極柱130に捕らえられるか、電極柱130の間を通り抜けて脱出するかの何れかとなり、検出部160には到達できない。四重極電極部120を通過したイオンは検出部160における二次電子増倍管などで検出され、そのイオン電流に比例した信号に変換されて、例えば、データロギング用のソフトウェアにて、そのデータが取得され、質量スペクトルが得られる。
【0005】
このような四重極型質量分析計100において、分圧の測定上限を上げるためには、電極柱130の長さを平均自由工程よりも短くする必要がある(例えば、特許文献1参照)。分解能と周波数と電極柱130の長さと加速電圧には、
m/Δm=0.05×f×L×m/e/(2×Ei)
の関係がある。ここで、fは電極柱130に印加する高周波電圧の周波数、Lは電極柱130の長さ、Eiはイオンの加速電圧である。したがって、電極柱130が短い場合でも、分解能を得るためには、周波数を大きくする必要がある。
【0006】
また、電極柱130に印加する高周波電圧は、
V=7.219×m×r×f
のように表され、周波数が大きくなると、高周波電圧も大きくなる。ここで、2×rは、電極柱130間の距離である。
【0007】
他方、全圧の測定下限を下げようとする技術は良く知られている(例えば、特許文献2参照)。全圧を測定するためには、イオン源に全圧コレクタを設置する必要がある。
全圧コレクタの配線は、電極柱130に印加するための直流電圧+高周波電圧の配線と並行に配線されることになる(例えば、特許文献3、図6参照)。
【0008】
分圧の測定上限を上げるためには、上述のように、電極柱の長さを短くする必要があり、必然的に四重極型質量分析計自体を小型化する必要がある。このような場合、rを小さくしすぎると、感度が下がるので、周波数を上げるため、高周波電圧は大きくなる。また、全圧コレクタの配線は、電極柱に印加するための直流電圧+高周波電圧の配線間の距離が短くなり、微小な電流を測定している全圧は、高周波電圧のノイズを受けやすくなる。そのために、全圧の測定下限が下がらない。
【0009】
また、電極柱は、セラミック等で出来た電極ホルダで固定する必要がある(例えば、特許文献4参照)。この電極ホルダの外側にイオン源の配線を通すと、質量分析計自体が大きくなる。さらに、それぞれの配線は、セラミックパイプ等で絶縁する必要があり、組立時間及び、イオン源の交換時に時間を要する。
【0010】
このように従来の四重極型質量分析計を小型化した場合、全圧コレクタの配線と電極柱の距離が必然的に短くなるため、ノイズの影響をより受けやすく、全圧の測定下限を下げることが困難となる。また、四重極型質量分析計の小型化の妨げとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2888984号公報
【特許文献2】特開2007−335188号公報
【特許文献3】特許第2522641号公報
【特許文献4】特許第3457103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、小型化が可能な四重極型質量分析計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1に記載の四重極型質量分析計は、絶縁性で環状の電極ホルダの内周面に固定して配された、4本の電極柱からなる四重極を備え、前記四重極に直流電圧と交流電圧を印加し、イオン化装置によって気体のイオンを生成し、前記イオンを前記四重極の間を通過させ、コレクタで収集して質量分析を行う四重極型質量分析計であって、前記電極ホルダに設けられた貫通孔を有し、前記コレクタの配線が、該貫通孔を通して配されていること、を特徴とする。
本発明の請求項2に記載の四重極型質量分析計は、請求項1において、前記配線が、前記貫通孔内においてセラミックパイプ及びシ−ルドパイプによって順に被覆されており、さらに、前記シ−ルドパイプがグランドと接続されていること、を特徴とする。
本発明の請求項3に記載の四重極型質量分析計は、請求項1又は2において、前記電極ホルダが、前記電極柱の長さ方向において両端部にそれぞれ配され、電極柱の長さ方向の中央部分は露出されてなることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の四重極型質量分析計は、請求項1又は2において、前記電極ホルダが、前記電極柱の長さ方向において略全体を覆うように配されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、コレクタの配線を、電極ホルダに設けられた貫通孔を通して配することで、小型化が可能な四重極型質量分析計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の四重極型質量分析計の一構成例(第一実施形態)を模式的に示す図。
【図2】図1に示す四重極型質量分析計において、質量検出部の一例を示す図。
【図3】図1に示す四重極型質量分析計において、質量検出部の他の一例を示す図。
【図4】本発明の四重極型質量分析計の一構成例(第二実施形態)を模式的に示す図。
【図5】図4に示す四重極型質量分析計において、質量検出部の一例を示す図。
【図6】図4に示す四重極型質量分析計において、質量検出部の他の一例を示す図。
【図7】実験例3で用いた四重極型質量分析計において、質量検出部の一例を示す図。
【図8】実験例4で用いた四重極型質量分析計において、質量検出部の一例を示す図。
【図9】四重極型質量分析計により測定した全圧指示値と、そのときの真空槽内の圧力(全圧)との関係を示す図。
【図10】四重極型質量分析計により測定した全圧指示値と、そのときの真空槽内の圧力(全圧)との関係を示す図。
【図11】四重極型質量分析計により測定した全圧指示値と、そのときの真空槽内の圧力(全圧)との関係を示す図。
【図12】四重極型質量分析計により測定した全圧指示値と、そのときの真空槽内の圧力(全圧)との関係を示す図。
【図13】四重極型質量分析計により測定した全圧指示値と、そのときの真空槽内の圧力(全圧)との関係を示す図。
【図14】従来の四重極型質量分析計の一構成例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の四重極型質量分析計の好適な実施の形態について説明する。
【0017】
<第一実施形態>
図1は、本発明の四重極型質量分析計の一構成例(第一実施形態)を模式的に示す図である。また、図2は、図1に示す四重極型質量分析計1A(1)において質量検出部10A(10)の一構成例を模式的に示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
図1に示すように、四重極型質量分析計1A(1)は有底の金属製の容器2を有している。この容器2は一方が開口2aされた円筒形状からなり、内部に質量検出部10が配置され、前記開口2a側が真空槽(図示略)に取り付けられるようになっている。
【0018】
前記質量検出部10A(10)は、イオン化装置11と、絶縁性で環状の電極ホルダ12と、電極ホルダ12の内周面に固定して配された、4本の電極柱13からなる四重極14と、分圧測定用のコレクタ電極(以下、分圧コレクタ電極と略す。「コレクタ」とも略称する)15と、全圧測定用のコレクタ電極(以下、全圧コレクタ電極と略す。「コレクタ」とも略称する)16とを有している。
この四重極型質量分析計1A(1)は、前記四重極14に直流電圧と交流電圧を印加し、イオン化装置11によって気体のイオンを生成し、該イオンを前記四重極14の間を通過させ、分圧コレクタ電極15で収集して質量分析を行う。
【0019】

電極ホルダ12は、絶縁物が円筒形状に成形されて構成されており、その円筒の両端(図1では上下端)にはスリット18、19がそれぞれ配され、各スリットの中央付近には小孔18a、19aがそれぞれ設けられている。すなわち、スリット18の小孔18aは容器2の開口2a側に向けられ、スリット19の小孔19aは分圧コレクタ電極15に向けられている。
四重極14は、金属製円柱からなる4本の電極柱13で構成されており、電極ホルダ11の内部に配置されている。また、四重極14を構成する4本の電極柱13は、それぞれ電極ホルダ11の中心軸線に沿った方向に向けられており、互いに所定間隔を開けて電極ホルダ11内部の壁面にネジ止め固定されている。
【0020】
この四重極型質量分析計1A(1)は、図2に示すように、質量検出部10A(10)において、前記電極ホルダ12に設けられた貫通孔20を有し、前記全圧コレクタ電極16の配線21が、該貫通孔20を通して配されていることを特徴とする。
本発明の四重極型質量分析計1A(1)では、全圧コレクタ電極16の配線21を、電極ホルダ12に設けられた貫通孔20を通して配することで、小型化が可能である。
【0021】
なお、図1及び図2に示すように、本実施形態の四重極型質量分析計1A(1)では、前記電極ホルダ12が、前記電極柱13の長さ方向において両端部にそれぞれ配され、電極柱13の長さ方向の中央部分は露出されてなる。
このような四重極型質量分析計1A(1)は、例えば残留ガス分析計として用いられる。
【0022】
イオン化装置11は、熱フィラメントであり、電極ホルダ12のスリット18の小孔18a付近であって、その小孔18aと、容器2の開口2aとの間の位置に配置されている。イオン化装置11には、全圧コレクタ電極16が配されている。
【0023】
真空槽の内部に存する気体は、容器2の開口2aを通って容器2の内部に進入するため、容器2内部の雰囲気は、真空槽の内部の雰囲気と同じになっている。従って、イオン化装置12周囲の雰囲気は、真空槽の内部の雰囲気と同じ組成、及び同じ圧力になっている。
【0024】
そして、イオン化装置11に通電し、イオン化装置11から熱電子を放出させると、その熱電子がイオン化装置11周囲に存する気体分子に衝突し、イオンが生成される。
【0025】
スリット18は、小孔18aを有しており、その小孔は、四重極14を構成する4本の電極柱13の間に位置している。
イオン化装置12によって生成されたイオンは、スリット18の小孔18aを通過して四重極14の内部に進入する。
【0026】
四重極14を構成する各電極柱13には、直流バイアス電圧に所定周波数の交流電圧が重畳された電圧が印加されており、四重極14の内部に進入したイオンは、直流バイアス電圧の大きさと、交流電圧の大きさと、その周波数に応じた質量電荷比を有するものだけが、四重極14の間を通過するようになっている。従って、それらの大きさを変化させると、所望の質量電荷比のイオンだけを通過させることができる。
【0027】
電極ホルダ11と分圧コレクタ電極15との間にはスリット19が配置されている。したがって、四重極14の内部を通過したイオンはスリット19の小孔19aに向かって飛行し、小孔19aを通過して分圧コレクタ電極15に入射する。
【0028】
分圧コレクタ電極15にイオンが入射するとイオン電流が生成され、イオン電流が演算部3で検出されると、表示装置4に、そのときの質量電荷比とそれに応じたイオン電流の大きさが表示される。イオン電流の値は、入射イオンの量に比例するため、イオン電流の大きさからその質量電荷比を有するイオンの量が分かり、その結果、真空槽内の各気体の分圧等が認識可能となる。なお、上記演算部3は、イオン電流値を補正する補正関数を備えることにより、現実の分圧を測定可能となっている。
【0029】
そして上述したように、本発明の四重極型質量分析計1A(1)では、前記電極ホルダ12に設けられた貫通孔20を有し、全圧コレクタ電極16の配線21が、該貫通孔20を通して配されている(図2参照)。このように、全圧コレクタ電極16の配線21を電極ホルダ12に設けられた貫通孔20を通して配することで、小型化が可能となる。
【0030】
さらに本発明では、図3に示すように、質量検出部10B(10)において、全圧コレクタ電極16の配線21が、貫通孔20内においてセラミックパイプ22及びシ−ルドパイプ23によって順に被覆されており、さらに、前記シ−ルドパイプ23が、グランド30と金属ワイヤ(又は箔)32により接続されていることが好ましい。このグランド30は、例えば四重極型質量分析計のベ−スフランジ31に設けられており、シ−ルドパイプ23とグランド30とは、例えば金属ワイヤ(又は箔板)32により接続されている。
全圧コレクタ電極16の配線21をセラミックパイプ22及びシ−ルドパイプ23で被覆し、さらにシ−ルドパイプ23をグランド30と接続することで、配線21が電極柱13に接近した場合でも、高周波電圧のノイズ成分をカットすることが可能である。これにより、四重極型質量分析計1を小型化した場合であっても、高周波電圧の影響を抑制し、全圧の測定下限を下げることが可能である。
【0031】
<第二実施形態>
次に、本発明の四重極型質量分析計の第二実施形態について説明する。
なお、以下の説明では、上述した第一実施形態と異なる部分について主に説明し、第一実施形態と同様の部分については、その説明を省略する。
【0032】
図4は、本実施形態の四重極型質量分析計1B(1)の一構成例を模式的に示す図である。また、図5は、図4に示す四重極型質量分析計1B(1)において質量検出部10C(10)の一構成例を模式的に示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
前述した第一実施形態では、電極ホルダ12が、前記電極柱13の長さ方向において両端部にそれぞれ配され、電極柱13の長さ方向の中央部分は露出されていたが、本実施形態の四重極型質量分析計1B(1)では、質量検出部10C(10)において、電極ホルダ12が、前記電極柱13の長さ方向において略全体を覆うように配されてなる。
このような四重極型質量分析計1B(1)は、例えばプロセスモニタとして用いられる。
【0033】
この四重極型質量分析計1B(1)においても、前記電極ホルダ12に設けられた貫通孔20を有し、前記全圧コレクタ電極16の配線21が、該貫通孔20を通して配されている。全圧コレクタ電極16の配線21を、電極ホルダ12に設けられた貫通孔20を通して配することで、小型化が可能である。
【0034】
さらに、図6に示すように、質量検出部10D(10)において、全圧コレクタ電極16の配線21が、前記貫通孔20内においてセラミックパイプ22及びシ−ルドパイプ23によって順に被覆されており、さらに、前記シ−ルドパイプ23がグランドと接続されていることが好ましい。
全圧コレクタ電極16の配線21をセラミックパイプ22及びシ−ルドパイプ23で被覆し、さらにシ−ルドパイプ23をグランド30と接続することで、配線21が電極柱13に接近した場合でも、高周波電圧のノイズ成分をカットすることが可能である。これにより、質量分析計を小型化した場合であっても、高周波電圧の影響を抑制し、全圧の測定下限を下げることが可能である。
【実施例】
【0035】
上述したような構成の四重極型質量分析計を真空槽に取り付け、真空槽を排気して到達圧力時(10−7Pa台)から1PaまでArガスを導入した際に、四重極型質量分析計により測定した全圧指示値と、そのときの真空槽内の圧力(全圧)との関係を評価した。その結果を図9〜図12に示す。
【0036】
図9は、図5に示したように、全圧コレクタ電極の配線を、電極ホルダの貫通孔に通して配した構成の四重極型質量分析計による測定結果である。これを、実験例1とした。
【0037】
図10は、図6に示したように、全圧コレクタ電極の配線をセラミックパイプ及びシ−ルドパイプによって順に被覆し、さらにシ−ルドパイプをグランドと接続するとともに、該配線を電極ホルダの貫通孔に通して配した構成の四重極型質量分析計による測定結果である。これを、実験例2とした。
【0038】
図11は、図7に示すように、全圧コレクタ電極の配線をセラミックパイプによって被覆し、該配線を電極ホルダの外部に配した構成の四重極型質量分析計による測定結果である。これを、実験例3とした。
【0039】
図12は、図8に示すように、全圧コレクタ電極の配線をセラミックパイプ及びシ−ルドパイプによって順に被覆し、さらにシ−ルドパイプをグランドと接続するとともに、該配線を電極ホルダの外部に配した構成の四重極型質量分析計による測定結果である。これを、実験例4とした。
【0040】
なお、この評価においては、全圧コレクタ電極の配線を被覆するセラミックパイプとして、セラミックからなる厚み0.2mmのパイプを用いた。また、シ−ルドパイプとしては、SUS304からなる厚み0.16mmのパイプを用いた。さらに、シ−ルドパイプ−グランド部の接続には、SUS304からなる厚み0.05mmの金属箔を用いた。
【0041】
また、実験例1〜実験例4の結果(図9〜図12)を重ね合わせて示したものが図13である。
図9〜図13からわかるように、全圧コレクタ電極の配線を、電極ホルダの貫通孔に通して小型化した場合(実験例1)、配線が電極柱に接近することにより高周波電圧のノイズ成分の影響がやや増えるものの、全圧コレクタ電極の配線をシ−ルドすることで(実験例2)、配線が電極柱に接近した場合でも、高周波電圧のノイズ成分をカットすることが可能であることがわかる。
【0042】
具体的には、全圧の測定下限が、10−5Pa台(実験例3)から10−6Pa台(実験例4)と1桁もの低減が可能である。
これらの結果より、本発明では、質量分析計を小型化した場合であっても、高周波電圧の影響を抑制し、全圧の測定下限を下げることが可能であることがわかった。
【0043】
以上、本発明の四重極型質量分析計について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、四重極型質量分析計に広く適用可能である。特に、半導体製造装置(スパッタ装置)のような、到達圧力の良い(10−6Pa台)装置の残留ガスの分析に用いられる場合、全圧測定ができるため好適である。
【符号の説明】
【0045】
1 四重極型質量分析計、10 質量検出部、11 イオン化装置、12 電極ホルダ、13 電極柱、14 四重極、15 分圧コレクタ電極(コレクタ)、16 全圧コレクタ電極(コレクタ)、20 貫通孔、21 配線、22 セラミックパイプ、23 シ−ルドパイプ、30 グランド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性で環状の電極ホルダの内周面に固定して配された、4本の電極柱からなる四重極を備え、
前記四重極に直流電圧と交流電圧を印加し、イオン化装置によって気体のイオンを生成し、前記イオンを前記四重極の間を通過させ、コレクタで収集して質量分析を行う四重極型質量分析計であって、
前記電極ホルダに設けられた貫通孔を有し、前記コレクタの配線が、該貫通孔を通して配されていること、を特徴とする四重極型質量分析計。
【請求項2】
前記配線が、前記貫通孔内においてセラミックパイプ及びシ−ルドパイプによって順に被覆されており、
さらに、前記シ−ルドパイプがグランドと接続されていること、を特徴とする請求項1に記載の四重極型質量分析計。
【請求項3】
前記電極ホルダが、前記電極柱の長さ方向において両端部にそれぞれ配され、電極柱の長さ方向の中央部分は露出されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の四重極型質量分析計。
【請求項4】
前記電極ホルダが、前記電極柱の長さ方向において略全体を覆うように配されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の四重極型質量分析計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−18470(P2011−18470A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160882(P2009−160882)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】