説明

回動体付き装置

【課題】回動体が開方向への過負荷を受けると本体から外れるようにして、損傷を防止する。
【解決手段】蓋体40は、第1軸部44が機器本体20の軸受け穴に挿入されることで回動自在となり、機器本体20に対して倒設状態と立設状態とに変化する。第1軸部44の先端の縁部の半径方向一側に面取り部47が形成される。蓋体40が立設状態においてさらに開方向への大きな力を受けると、蓋体40の当接部P2が機器本体20の被当接部P1に当接し、被当接部P1を支点としたF1方向の付勢力が第1軸部44に作用し、その状態で蓋体40がさらに開方向への過負荷の力を受けると、上記付勢力に起因して蓋体40が弾性変形し、F1方向に沿った軸受け穴に対する第1軸部44の離脱が縁部のうち面取り部47から始まり、やがて第1軸部44が軸受け穴からF1方向に離脱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体の底面に回動体が回動自在に取り付けられる回動体付き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装置本体の底面に回動体が回動自在に取り付けられる回動体付き装置が知られている。例えば、下記特許文献1では、装置本体の底面に、スタンド部材(回動体)が回動自在に設けられ、横設状態と立設状態とに状態を変化させることができる。装置本体の底面に設けた凹状の収容スペースから延出する接続コードが当該収容スペース内に収容され、横設状態にしたスタンド部材がその蓋体として機能する。また、スタンド部材を立設状態にすると、装置本体が使用(鍵盤演奏)に適した角度に保持される。
【0003】
この種の、回動体を開方向に変位させた状態で装置本体を支持するものにおいては、通常、ストッパ等の何らかの規制部材により回動体の開方向の位置が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3896934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、回動体が開方向の限界位置に規制された状態で、さらに開方向に非常に強い力を受けると、回動体が損傷したり、回動体を回動自在に支持する回動機構が故障したりするおそれがある。例えば、上記特許文献1は楽器に適用されるが、立設状態で楽器が強く押さえ込まれたりするとスタンド部材やその回動機構に損傷が生じることが考えられる。
【0006】
このような、過負荷による回動体周りの故障のおそれは、電子機器に限られず、あらゆる回動体付き装置において考え得る。また、回動体も蓋体やスタンドに限られものではない。例えば、譜面台装置においても、回動自在な譜面台を立設した状態で開方向に過負荷を受ければ、やはり損傷のおそれがある。
【0007】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、回動体が開方向への過負荷を受けると本体から外れるようにして、損傷を防止することができる回動体付き装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の回動体付き装置は、装置本体(20)と、該装置本体に対して回動自在に取り付けられる回動体(40)とを有し、前記回動体を、前記装置本体に対して畳まれる倒設状態から開方向に回動させて前記装置本体に対して起立する立設状態に状態を変化させることが可能な回動体付き装置(12)であって、前記回動体(40)に係合部(44)が設けられると共に前記装置本体に被係合部(29)が設けられ、前記係合部及び前記被係合部のいずれか一方が軸部(44)で他方が軸受け穴(29)であり、前記軸部が前記軸受け穴に挿入されることで前記装置本体と前記回動体とが相対的に回動自在となり、前記回動体が前記立設状態においてさらに開方向への力を受けたときに、前記回動体のうち自由端部と回動中心(C0)との間の当接部(P2)が前記装置本体の被当接部(P1)に当接し、前記被当接部を支点とした付勢力が前記係合部に作用するように構成され、前記軸部の先端の縁部(44a)には、該軸部の半径方向一側に面取り部(47)が形成されており、前記当接部が前記被当接部に当接した状態で前記回動体がさらに開方向への力を受けると、前記付勢力に起因して前記回動体が弾性変形し、前記付勢力の方向(F1)に沿った前記軸受け穴に対する前記軸部の相対的な離脱が前記軸部の先端の縁部のうち前記面取り部から始まり、やがて前記軸部が前記軸受け穴に対して離脱し得るように構成されることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記面取り部は、前記当接部が前記被当接部に当接した状態で前記当接部(P2)と前記回動中心とを結ぶ直線(L1)と前記軸部の軸線とに垂直で且つ前記回動中心を通る仮想直線(L2)上に位置する。
【0010】
好ましくは、前記装置本体または前記回動体のうち前記軸受け穴を有する方には、前記軸受け穴に隣接して、前記軸部の挿抜方向における抜き側に第1の肉部(26)が突設され、前記装置本体または前記回動体のうち前記軸部を有する方には、前記軸部と一体に、前記軸部の挿抜方向における挿入側に突起部(49)が突設され、前記回動体が前記立設状態においてさらに開方向へ回動する行程において、前記付勢力の方向に沿う前記軸受け穴からの前記軸部の前記面取り部の離脱が始まる前の段階で、前記突起部が前記第1の肉部に対して前記抜き側に乗り上げることで前記回動体が弾性変形する。
【0011】
好ましくは、前記装置本体または前記回動体のうち前記軸受け穴を有する方にはさらに、前記軸受け穴に隣接して、前記第1の肉部とは間隔をおいて第2の肉部(27)が前記抜き側に突設され、前記回動体が前記倒設状態から開方向に回動する行程において、前記突起部が前記第2の肉部の前記抜き側を乗り越えて前記第1の肉部と前記第2の肉部との間に位置したときに前記回動体が前記立設状態となる。
【0012】
好ましくは、前記突起部のうち前記第1の肉部に乗り上げるときに前記第1の肉部に係合する側の稜線部(49a)には、面取りまたはR形状が施されている。
【0013】
好ましくは、前記装置本体における前記回動体が配設される面には凹部(21)が形成され、前記係合部及び前記被係合部は、前記凹部内において係合する。
【0014】
なお、上記括弧内の符号は例示である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1によれば、回動体が開方向への過負荷を受けると本体から外れるようにして、損傷を防止することができる。
【0016】
請求項3によれば、回動体が開方向へ過剰に回動したときには面取り部の離脱が始まる前の段階で回動体に予備的な弾性変形を与えて、過負荷時に本体から外れやすくすることができる。
【0017】
請求項4によれば、立設状態への安定した位置決めを行える。
【0018】
請求項5によれば、回動体に予備的な弾性変形を円滑に与えることができる。
【0019】
請求項6によれば、軸部と軸受け穴がむき出しにならず、回動機構部の耐久性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電子機器を含む音楽制作システムの全体図、電子機器の底面図、斜視図である。
【図2】蓋体が開状態にされた電子機器の前半部の斜視図である。
【図3】蓋体の斜視図、右部の外面、側面、内面を示す図である。
【図4】蓋体の閉状態における右側の回動機構部付近の拡大底面図、図1(b)のA−A線に沿う断面図である。
【図5】右側の受け側機構部、軸側機構部の斜視図である。
【図6】右側の回動機構部を内側左方から見た模式的な図である。
【図7】変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0022】
図1(a)は、本発明の一実施の形態に係る電子機器を含む音楽制作システムの全体図である。この音楽制作システムには、パーソナルコンピュータ11とそれに接続可能な複数の電子機器12とからなる。電子機器12は各々、例えばUSB(Universal Serial Bus)規格の接続コード30によってパーソナルコンピュータ11に接続される。
【0023】
図1(b)、(c)はそれぞれ、電子機器12の底面図、斜視図である。電子機器12は、例えば、音楽制作において各種のパラメータを入力したり楽音に関する操作を指示したりするのに用いられる端末装置である。電子機器12は、後述するように、外装構造において回動体である蓋体40が底面に取り付けられる回動体付き装置でもある。複数の電子機器12は、全く同一の構成でなくてもよく、入力する内容や機能が異なっていてもよい。ただし、外装構造や蓋体40に関わる構造は共通とする。
【0024】
図1(b)、(c)に示すように、電子機器12は、前部20a、後部20b、左部20c、右部20dを有し、平面視で前後方向を長手方向とする長方形に構成される。電子機器12は、主として機器本体20と蓋体40とから構成され、機器本体20の前部20aにおいて底面20eに蓋体40が開閉自在に取り付けられる。機器本体20のパネル20fに、押下式や回転式等の各種の操作子が配設される。
【0025】
図2は、蓋体40が開状態にされた電子機器12の前半部の斜視図である。図3(a)は、蓋体40の斜視図である。図3(b)、(c)、(d)はそれぞれ、蓋体40の右部40cの外面、側面、内面を示す図である。以降、蓋体40の前後の方向については蓋体40の閉状態を基準に呼称する。また、閉状態で外側、内側となる面をそれぞれ外面、内面と呼称する。
【0026】
まず、図2に示すように、機器本体20の底面20eのうち前部20aの右半部には、上方に窪んだ収容凹部21が形成される。収容凹部21の左端を構成する垂直な中央壁である壁部24に、USBの雌端子である接続部25が設けられる(図1(b)も参照)。接続部25に、接続コード30の雄端子部31が接続可能になっている。図2に示す接続状態では、接続コード30のコード部32の先端にある不図示の端子をパーソナルコンピュータ11の端子に接続することで、電子機器12とパーソナルコンピュータ11との間で信号のやりとりが可能になる。
【0027】
蓋体40は、開閉操作により回動し、機器本体20に対して畳まれて収容凹部21を覆う倒設状態と機器本体20に対して起立し起立スタンドとして機能する立設状態とに状態を変化させることが可能である。倒設状態が閉状態、立設状態が開状態に相当する。立設状態では、図2に示す回動位置に位置して、載置面(不図示)に蓋体40の自由端部40aの左右端部に設けられた弾性樹脂でなる脚部bt1、bt2が当接し、機器本体20が支持される。脚部bt1、bt2は、立設状態時において機器本体20の滑り防止機能も果たす。
【0028】
収容凹部21のうち、最も深い部分21aの右側に繋がって第1のコード取出口22が第1の窪みとして形成されている(図4(b)も参照)。第1のコード取出口22は、最も深い部分21aより浅い窪みとして形成され、機器本体20の右部20dに開口し、蓋体40が倒設状態にあるときに接続コード30のコード部32を右方に導出するのに用いられる。
【0029】
また、第1のコード取出口22の前部には、第1のコード取出口22と繋がる第2の窪みとして第2のコード取出口23が形成されている。第2のコード取出口23は、機器本体20の前部20aに開口し、コード部32を前方に導出するのに用いられる。
【0030】
最も深い部分21aの右部後部に繋がって、部分21aより浅い位置に段差部21bが形成されている。蓋体40を機器本体20に対して回動自在にする回動機構部Mが、凹部21の段差部21b内において底面20eより高い位置に配設される。回動機構部Mは、機器本体20の側に構成される受け側機構部MU(図5(a))と、蓋体40の側に構成される軸側機構部MJ(図3、図5(b))とからなる。
【0031】
図3(a)に示すように、蓋体40は、左右方向を長手方向とし、樹脂等で一体に形成される。蓋体40の左部40b及び右部40cの各後部に軸側機構部MJが設けられる。左部40bと右部40cとの間の板部41の前部が、蓋体40が回動するときの自由端部40aとなる。板部41の自由端部40aのやや左寄りの位置には、挿通部42が切り欠きにより形成されている(図1(b)も参照)。挿通部42は、蓋体40が立設状態にあるときに接続コード30のコード部32を主として後方に導出するのに用いられる。例えば、挿通部42を通した後、後方または左右いずれかの方向に導出可能である。
【0032】
板部41の自由端部40aには、爪部43aを有する突起部43が2箇所に設けられる。突起部43に脚部bt1、bt2が被覆圧着される。蓋体40の右部40cの内面側には、下方に窪んだ凹部48が形成されている(図3(c)、(d))。蓋体40は挿通部42以外では左右対称である。
【0033】
図4(a)は、蓋体40の閉状態における右側の回動機構部M付近の拡大底面図である。図4(b)は、図1(b)のA−A線に沿う断面図である。
【0034】
図4(b)に示すように、蓋体40が倒設状態にあるとき、機器本体20の右部20dの前部と蓋体40の右部40cとの間には、機器本体20の第1のコード取出口22と蓋体40の凹部48との間に上下方向の隙間S1が形成される。蓋体40が倒設状態にあるときには、接続コード30のコード部32を2つのうち所望の方向に導出することが可能である。まず、コード部32を、隙間S1から第1のコード取出口22を介して右方に導出することができる。あるいは、隙間S1から第1のコード取出口22と第2のコード取出口23(図2)とを介して前方に導出することができる。これらいずれかの導出の態様を選択可能である。
【0035】
ここで、図1(b)に示すように、接続部25と隙間S1とを結ぶ直線L3は、左右方向に平行であり、第1のコード取出口22は直線L3の延長上に開口している。一方、第2のコード取出口23は、直線L3に略直交する方向に開口している。第1のコード取出口22と第2のコード取出口23との開口方向が明確に(90°)異なっているので、ユーザは使用態様によって導出方向を選択でき、コード部32の引き回しや取り扱いにおいて高い自由度が得られる。
【0036】
一方、蓋体40が立設状態にあるときには、コード部32を挿通部42(図2)に挿通すれば、蓋体40の左方または右方を通すことなくコード部32を後方に導くこともできる。コード部32は、挿通部42を通してから、脚部bt1、bt3(図1b)の間、または脚部bt2、bt4(図1b)の間から、右または左の方向に導くことも可能である。このように、導出経路や方向の多様な選択肢が得られることで、導出方向の自由度を高め、ユーザの利便性を高めることができる。また、コード部32は、立設状態とした蓋体40に巻き付けておくこともできる。
【0037】
図5(a)、(b)は、それぞれ右側の受け側機構部MU、軸側機構部MJの斜視図である。左右の回動機構部M(受け側機構部MU及び軸側機構部MJ)は左右対称であるので、主として右側のものについて説明する。
【0038】
図3(b)〜(d)、図4(a)、図5(b)に示すように、軸側機構部MJにおいて、いずれも同心の第1軸部44及び第2軸部45が一体に形成されている。第2軸部45は右部40cの後部から右方に突設され、第2軸部45より小径の第1軸部44は第2軸部45から右方に突設される。右部40cの後部の端面40b1において第2軸部45の外周の後部には突起部49が一体に形成される。突起部49のうち蓋体40の内面側の稜線部49aには、面取りまたはR形状が施されている(図5(b))。
【0039】
第1軸部44の先端の縁部44aには、第1軸部44の半径方向における一側(蓋体40の内面側)に面取り部47が形成されている(図5(b))。蓋体40の閉状態において、面取り部47は右方且つ上方を向き、第1軸部44の先端面と面取り部47とで形成される稜線は前後方向にほぼ平行となる(図3(c))。
【0040】
図4(a)、図5(a)に示すように、受け側機構部MUは、互いに前後方向に間隔をおいて段差部21bに一体に形成される第1の肉部26と第2の肉部27とを有する。また、段差部21bの右側に斜め鉛直方向に沿うテーパ面28が形成され、テーパ面28には、第1軸部44が挿入される円形の軸受け穴29が形成される。軸受け穴29の中心線は左右方向に沿っている。右側の受け側機構部MUの軸受け穴29においては、右方(図4(a)の左方)が第1軸部44の挿抜方向における挿入側で、左方(図4(a)の右方)が抜き側となる。第1の肉部26及び第2の肉部27はいずれも、テーパ面28から抜き側に突設され、軸受け穴29に隣接している。
【0041】
図6は、右側の回動機構部Mを内側左方(図4(a)のD1方向)から見た模式的な図である。図6(a)、(b)は、それぞれ、蓋体40の閉状態(倒設状態)、開状態(立設状態)を示す。図6(c)は、蓋体40が開状態からさらに開方向への力を受けて回動した状態(過負荷状態)を示している。後述するように、蓋体40が立設状態からさらに開方向に過負荷を受けたとき、第1軸部44が軸受け穴29から離脱する(抜ける)ことで、機器本体20や蓋体40の損傷が回避されるようになっている。
【0042】
左右の回動機構部Mにおいて、軸受け穴29に第1軸部44がそれぞれ挿入係合されて、蓋体40が機器本体20に組み付けられる。図4(a)に示すように、蓋体40の倒設状態において、第2軸部45は、第1軸部44の軸線方向において第1の肉部26及び第2の肉部27とオーバーラップしている。そして、第2軸部45の外周面と第1の肉部26の凹曲面26a及び第2の肉部27の凹曲面27aとが対向摺接している。(図5(a)、図6(a))。
【0043】
図6で、蓋体40の回動行程における遷移を説明する。図6において、時計方向、反時計方向がそれぞれ蓋体40の閉方向、開方向である。まず、倒設状態(図6(a))では、突起部49が後方を向いた状態で、第2の肉部27の下面27bに突起部49の稜線部49a及びこれに連接するテーパ面49b(図5(b))が乗り上げている。この状態では、図4(a)に示すように、肉部26、27の各端面26c、27c(図5(a))と蓋体40の後部の右部40cの端面40b1との間に微小な間隙部CLが生じ得るようになっており、蓋体40は左右方向において拘束されず若干の変位が可能になっている。
【0044】
ところで、開状態から閉状態(倒設状態)になる際、第2の肉部27に突起部49がの乗り上げたときにクリック感が得られ、同時に、スナップフィットによって蓋体40が機器本体20に対して閉状態に簡単にロックされることになる。なお、間隙部CLが生じることは必須ではなく、端面40b1と端面26c、27cとが摺接してもよい。
【0045】
この倒設状態から蓋体40が開方向へ一定以上の力を受けると開方向に回動し始める。その回動行程において、突起部49が第2の肉部27を抜き側に乗り越え、突起部49の先端面49cと端面27cとが弾性的に摺接してさらに変位し、第2の肉部27と第1の肉部26との間に位置したとき、蓋体40が立設状態となる(図6(b))。
【0046】
左側の回動機構部Mにおいても同じような動作が同時に起こる。突起部49が第2の肉部27を乗り上げた状態では、蓋体40は、左右の軸側機構部MJ(図3(a))が互いに近づく方向に弾性変形する。この弾性変形には、板部41の変形(主に上下方向の変形)だけでなく、左部40b及び右部40cの後方に片持ち状態に延びる部分の左右方向内側(抜き側)への変形も含まれる。
【0047】
また、突起部49が第2の肉部27を乗り越えるとき、第2の肉部27に最初に係合する突起部49の稜線部49aが上記のように面取りまたはR形状となっているので、乗り上げ動作が円滑である。突起部49が第2の肉部27と第1の肉部26との間に位置した状態では、蓋体40の弾性変形は解消され、立設状態が安定する。このとき、弾性変形が完全に解消されることは必須でない。
【0048】
蓋体40が立設状態においてさらに開方向への大きな力を受け、過負荷状態になると、図6(c)に示すように、蓋体40の当接部P2が機器本体20の被当接部P1に強く当接する。機器本体20の自重によって当接部P2、P1が事前に軽く当接状態になっていてもよい。当接部P2は、第1軸部44の軸線を通る回動中心C0と自由端部40aとの間の部位である。この状態では、被当接部P1を支点とした付勢力が第1軸部44に対して作用する。この付勢力の方向はF1方向であり、テコの原理により大きくなり得る。
【0049】
ここで、図6(c)に示すように、当接部P2が被当接部P1に当接した状態で当接部P2と回動中心C0とを結ぶ直線をL1とし、回動中心C0を通り直線L1と第1軸部44の軸線とに垂直な仮想直線をL2とする。当接部P2が被当接部P1に当接した状態で、面取り部47は、仮想直線L2上に位置するよう形成されている。本実施の形態では第1軸部44が軸受け穴29から離脱した直後に面取り形成方向F2とF1方向とがほぼ同方向となるようになっており、離脱が円滑である。ただし、面取り形成方向F2はF1方向と一致させてもよい。
【0050】
蓋体40の開方向への回動行程において、上記の付勢力が作用する前から作用中にかけて、突起部49が第1の肉部26に対して抜き側に乗り上げることで蓋体40が弾性変形する。この際も、突起部49の稜線部49aが面取りまたはR形状となっているので、乗り上げ動作が円滑である。このときの弾性変形は、第1軸部44が軸受け穴29から抜けるのに必要な弾性変形に対する予備的な弾性変形といえる。なお、ここでいう弾性変形は、第2の肉部27を乗り上げるときと同様に、板部41の変形だけでなく、左部40b及び右部40cの後方に片持ち状態に延びる部分の左右方向内側(抜き側)への変形も含まれる。
【0051】
この予備的な弾性変形をした状態で、さらに上記の付勢力が大きくなると、蓋体40の弾性変形が一層増大し、ついには第1軸部44が軸受け穴29から抜けることになる。すなわちまず、倒設状態から立設状態までの間は、面取り部47は、軸受け穴29内に完全に嵌入されている(図4(a)参照)。しかし過負荷となり突起部49が第1の肉部26に乗り上げると、蓋体40の予備的な弾性変形によって、第1軸部44が軸受け穴29から少し抜けるようになる。
【0052】
第1軸部44が軸受け穴29から露出し、さらにF1方向の付勢力を受けることで、付勢力に起因して蓋体40がさらに弾性変形する。面取り部47の向き(回動方向における位置)に着目すると、過負荷状態(図6(c))では、F1方向に面取り部47が位置している。従って、F1方向に沿った軸受け穴29に対する第1軸部44の離脱が第1軸部44の先端の縁部44aのうち面取り部47から始まる。そして、やがて第1軸部44が軸受け穴29に対してF1方向に離脱する。
【0053】
第1軸部44の軸受け穴29からの離脱は、左右の回動機構部Mにおいてほぼ同時に起こり、これにより、蓋体40が機器本体20から無理なく完全に外れて分離する。
【0054】
本実施の形態によれば、蓋体40が立設状態からさらに開方向へ過負荷となるような力を受けると、軸受け穴29からの第1軸部44の離脱が面取り部47から始まり、蓋体40が機器本体20から外れるので、電子機器12の損傷を防止することができる。
【0055】
特に、被当接部P1を支点とした付勢力の作用方向(F1方向:仮想直線L2上)に面取り部47が位置するので、過負荷時には面取り部47が軸受け穴29から最も外れやすい位置関係となり、無理なく離脱することができる。
【0056】
ここで、蓋体40は、立設状態では倒設状態に対して90°以上の鈍角の角度を回動した位置となっている。立設状態で機器本体20が上方から押圧力を受けることが最も多く想定されるが、そのような場合、蓋体40は立設状態からさらに開方向に負荷を受けることになる。従って、本発明は、最も損傷が生じそうな状況に対する効果的な対策となっている。ただし、倒設状態に対して立設状態で鋭角となる回動体を備える装置について本発明の適用を排除するものではない。
【0057】
さらに、蓋体40が立設状態においてさらに開方向へ回動する行程において、面取り部47の離脱が始まる前の段階で、突起部49が第1の肉部26に対して抜き側に乗り上げることで蓋体40が予備的に弾性変形する。これにより、離脱のための弾性変形への動作に円滑に繋がり、過負荷時に蓋体40が機器本体20から外れやすくなる。また、突起部49の稜線部49aには面取りまたはR形状が施されているので、第1の肉部26に乗り上げて蓋体40に予備的な弾性変形を与える動作が円滑になる。
【0058】
また、蓋体40が開方向へ回動する行程において、突起部49が第2の肉部27と第1の肉部26との間に位置した状態で立設状態となるので、立設状態への安定した位置決めを行える。しかも、第1の肉部26は、蓋体40に離脱のための予備変形を生じさせる役割に加えて、立設状態における蓋体40の開方向への位置の規制の役割(それ以上開方向へ変位させないというストッパ機能)も兼ねている。
【0059】
また、面取り部47は、離脱直前まで軸受け穴29から露出することがない。すなわち、蓋体40が倒設状態から立設状態までに行程においては軸受け穴29内に完全に嵌入される。これにより、蓋体40の回動動作を安定的に維持することができる。
【0060】
また、回動機構部Mは、収容凹部21の段差部21bに配設され、軸側機構部MJの第1軸部44と受け側機構部MUの軸受け穴29とは段差部21b内において係合するので、第1軸部44と軸受け穴29とがむき出しにならず、回動機構部Mが保護され耐久性が高まる。しかも、回動機構部Mは、底面20eより高い位置に配設されるので、蓋体40の倒設状態において機器本体20の高さを低く抑えることができる。
【0061】
本実施の形態によればまた、蓋体40が倒設状態にあるときには、接続コード30のコード部32を、隙間S1を介して第1のコード取出口22から導出するか、または、隙間S1から第1のコード取出口22と第2のコード取出口23とを介して導出するかを選択可能である。一方、蓋体40が立設状態にあるときには、コード部32を挿通部42に挿通して導出することができ、挿通部42以外の部分を通すことも可能である。よって、蓋体40の倒設時と立設時のいずれにおいても接続コード30の導出方向の自由度を高めることができる。
【0062】
なお、蓋体40が開方向への過負荷を受けたときに外れやすくするという観点からは、面取り部47は必須であるが、第1の肉部26及び第2の肉部27は必須でない。
【0063】
なお、蓋体40の自由端部40aの挿通部42は切欠部として形成されたが、蓋体40が立設状態にあるときに接続コード30のコード部32を主として後方に導出するための挿通部としては、穴であってもよい。ただし、穴よりも切欠部の方が、接続コード30の扱いは容易である。また、このような挿通部は2箇所以上に設けてもよい。
【0064】
隙間S1から導出されるコード部32を外部に導出するための第1のコード取出口22に相当するコード取出口は2つ以上設けてもよい。また、第1のコード取出口22と繋がり第1のコード取出口22とは開口方向が異なる第2のコード取出口23に相当するコード取出口も2箇所以上設けてもよい。また、複数設けた各コード取出口の開口方向もそれぞれ互いに異ならせてもよい。
【0065】
なお、本実施の形態では、接続コード30は、接続部25に対して接続/非接続が可能な構成としたが、常時接続される接続コードであってもよい。その場合、収容凹部21に接続コード30を収容するための空間を確保してもよい。また、接続コード30の端子規格はUSBに限定されるものではない。
【0066】
なお、突起部49の稜線部49aと反対側の稜線部にも、面取りまたはR形状を施してもよい。
【0067】
図7で、変形例を説明する。
【0068】
本実施の形態では、機器本体20と蓋体40とが相対的に回動する構成であった。しかし、回動体が開方向への過負荷を受けたときに外れやすくするという観点からは、相対的に回動自在な装置本体と回動体で構成される各種の回動体付き装置に本発明を適用可能である。例えば、図7(a)に例示するように楽器や譜面台装置に適用し、天板51に対して譜面板52を回動自在に取り付けてもよい。
【0069】
また、蓋体40に相当する回動体も、収納蓋や電池蓋等の蓋体に限られず、譜面台装置、電話機、通信端末装置を起立させるスタンドとして構成されてもよい。
【0070】
また、受け側機構部MUと軸側機構部MJとは、必ずしも機器本体の内部に配設される必要はない。例えば、図7(b)に譜面台装置を例示するように、天板51の上に露出して設けた受け側機構部MUに対して、譜面板52の軸側機構部MJを連結してもよい。
【0071】
また、本実施の形態では、受け側機構部MUは機器本体20、軸側機構部MJは蓋体40に設けたが、図7(c)、(d)に変形例を示すように、この関係を逆にしてもよい。すなわち、蓋体40の軸体57に受け側機構部MUを構成し、機器本体20のいずれかの外面55に突設した突設部56に軸側機構部MJを構成する。
【0072】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態乃至変形例の一部を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0073】
12 電子機器(回動体付き装置)、 20 機器本体(装置本体)、 21 収容凹部、 26 第1の肉部、 27 第2の肉部、 29 軸受け穴(被係合部)、 40 蓋体(回動体)、 44 第1軸部(係合部)、 44a 縁部、 47 面取り部、 49 突起部、 49a 稜線部、 P2 当接部、 P1 被当接部、 C0 回動中心、 F1 方向、 L1 直線、 L2 仮想直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、該装置本体に対して回動自在に取り付けられる回動体とを有し、前記回動体を、前記装置本体に対して畳まれる倒設状態から開方向に回動させて前記装置本体に対して起立する立設状態に状態を変化させることが可能な回動体付き装置であって、
前記回動体に係合部が設けられると共に前記装置本体に被係合部が設けられ、前記係合部及び前記被係合部のいずれか一方が軸部で他方が軸受け穴であり、前記軸部が前記軸受け穴に挿入されることで前記装置本体と前記回動体とが相対的に回動自在となり、
前記回動体が前記立設状態においてさらに開方向への力を受けたときに、前記回動体のうち自由端部と回動中心との間の当接部が前記装置本体の被当接部に当接し、前記被当接部を支点とした付勢力が前記係合部に作用するように構成され、
前記軸部の先端の縁部には、該軸部の半径方向一側に面取り部が形成されており、
前記当接部が前記被当接部に当接した状態で前記回動体がさらに開方向への力を受けると、前記付勢力に起因して前記回動体が弾性変形し、前記付勢力の方向に沿った前記軸受け穴に対する前記軸部の相対的な離脱が前記軸部の先端の縁部のうち前記面取り部から始まり、やがて前記軸部が前記軸受け穴に対して離脱し得るように構成されることを特徴とする回動体付き装置。
【請求項2】
前記面取り部は、前記当接部が前記被当接部に当接した状態で前記当接部と前記回動中心とを結ぶ直線と前記軸部の軸線とに垂直で且つ前記回動中心を通る仮想直線上に位置することを特徴とする請求項1記載の回動体付き装置。
【請求項3】
前記装置本体または前記回動体のうち前記軸受け穴を有する方には、前記軸受け穴に隣接して、前記軸部の挿抜方向における抜き側に第1の肉部が突設され、前記装置本体または前記回動体のうち前記軸部を有する方には、前記軸部と一体に、前記軸部の挿抜方向における挿入側に突起部が突設され、前記回動体が前記立設状態においてさらに開方向へ回動する行程において、前記付勢力の方向に沿う前記軸受け穴からの前記軸部の前記面取り部の離脱が始まる前の段階で、前記突起部が前記第1の肉部に対して前記抜き側に乗り上げることで前記回動体が弾性変形することを特徴とする請求項1または2記載の回動体付き装置。
【請求項4】
前記装置本体または前記回動体のうち前記軸受け穴を有する方にはさらに、前記軸受け穴に隣接して、前記第1の肉部とは間隔をおいて第2の肉部が前記抜き側に突設され、前記回動体が前記倒設状態から開方向に回動する行程において、前記突起部が前記第2の肉部の前記抜き側を乗り越えて前記第1の肉部と前記第2の肉部との間に位置したときに前記回動体が前記立設状態となることを特徴とする請求項3記載の回動体付き装置。
【請求項5】
前記突起部のうち前記第1の肉部に乗り上げるときに前記第1の肉部に係合する側の稜線部には、面取りまたはR形状が施されていることを特徴とする請求項3または4記載の回動体付き装置。
【請求項6】
前記装置本体における前記回動体が配設される面には凹部が形成され、前記係合部及び前記被係合部は、前記凹部内において係合することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の回動体付き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−26450(P2013−26450A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160056(P2011−160056)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】