説明

回動可能な連結部を有する使用者界面体

使用者の顔面に係合する緩衝体(32)と、延長部(44)を有する殻(34)と、延長部(44)に接続される額支持体(94)とを備える患者界面体(30)。ヒンジ連結部(124)を有する額支持体(94)は、変形して、使用者の額に適合できる。また、患者界面体(30)は、本体(76)に形成される回動可能な連結部(36)と、本体(76)から放射状に延伸しかつ連結部(36)と同一平面上に形成される導管(78)とを有する。連結部(36)は、緩衝体(32)に形成される空洞部(58)内に接続可能な接続口(86)も有し、接続口(86)及び連結部(36)は、一体に回転する。

【発明の詳細な説明】
【優先権主張】
【0001】
本願は、米国特許法第119条(e)の規定により、2004年10月8日に出願された米国仮出願第60/617,265号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、使用者界面体、特に、取付口に回転連結される連結部を有し、連結部と取付口とが一体に回転する自動適合型で小型の使用者界面体に関する。
【背景技術】
【0003】
患者(被験者)が呼吸により消費する気体を陽圧で供給する種々の供給装置が公知である。供給装置の用途と応用は、様々である。睡眠時無呼吸症及び他の睡眠関連障害の治療に開発された供給装置もある。
【0004】
睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に上気道が一時的に閉塞する。その結果、患者の睡眠が反復して中断される。この障害の治療に、気道陽圧(PAP)装置が開発された。通常の気道陽圧(PAP)装置は、供給導管を通じてマスク等の使用者界面体に気体を供給する送風装置(ブロワ)等の流量発生器を備える。持続気道陽圧(CPAP)等の気道陽圧(PAP)、患者の呼吸周期と共に変化する2段階(バイレベル)圧力(Bi-PAP)等の可変気道圧又は患者の監視状態と共に変化する自動滴定圧力を供給することも公知である。チェーンストークス呼吸症、鬱血性心不全及び脳卒中等他の医療疾患及び呼吸障害の治療にも圧力支援療法が処方される。
【0005】
使用者界面体の周辺で多くの開発が進展してきた。有効な使用者界面体は、快適性と十分な密封性の両特性を兼備しなければならない。快適でない使用者界面体は、患者順応性が低い。更に、適切な密封性のない使用者界面体は、使用者に適切に気体を供給できない。睡眠中に患者が前記装置を使用する場合は、多い。使用者が不安となり、手足を動かし又は寝返りを打つことは、珍しくない。本発明は、密封性を維持しつつ、密封性に矛盾する快適性とを兼備する使用者界面体を提供することを目的とする。
【0006】
下記特許文献1は、最先端技術の一装置を例示する。特許文献1に開示される使用者界面体は、緩衝体(クッション)を支持する剛性のある殻と、連結導管に連結される固定連結体とを備える。使用者の鼻梁に沿い額に向かって殻からほぼ上方に延伸する連結導管は、一定の可動範囲を連結導管に与える球関節型継手を備える。使用者が頭部を動かすとき、球関節型継手が球面運動を行い、使用者の顔面に対する使用者界面体の密封が適切に保持される。連結導管は、気体供給導管に取り付けられ、気体供給導管は、呼吸気体陽圧を連結導管に供給する人工呼吸器に更に接続される。患者界面体の殻は、保持クリップにより緩衝体に接続される。保持クリップは、殻に形成される溝内に嵌合される。緩衝体に対応する保持用縁部を緩衝体の周縁部に延伸して設けて、緩衝体の周縁部に溝を形成することができる。保持クリップは、緩衝体の周囲の溝に係合される。換言すれば、保持クリップと緩衝体上の保持用縁部とは、C形断面形状に連結される。保持クリップ上に一体に形成される複数の爪は、殻の挿入口に嵌合され、保持クリップを所定の位置に保持する。使用者の額に向けて使用者界面体(マスク)から上方に延伸する延長部を殻に設けて、使用者界面体を使用者に適切に固定することができる。使用者の頭部の正面ではなく、顔面両側部と後頭部とに接触する可撓性の水平紐(ストラップ)に殻の延長部を接続して、可撓性の水平紐を使用者の額から離間させて、額領域での水平紐による押圧力を減少することができる。
【0007】
特許文献1に開示される装置は、所期の目的に適するが、いくつかの欠点もある。球関節型継手は、ある可動範囲で運動しても、上方の使用者の額に向かって連結導管を配置すべき制限がある。特許文献1の装置は、他の全ての方向に連結導管を再偏向するのに有効ではない。使用者界面体と使用者との間の密封状態に影響がなく、使用者が自身の頭部を自由に動かし又はベッド上で寝返りを打てるように、使用者が睡眠中に頻繁に使用する前記使用者界面体には、最大の自由度を付与することが望ましい。
【0008】
使用者の額でなく、使用者の頭部の両側部に接触する可撓性の水平紐により患者界面体を固定しなければならない点に特許文献1の装置の別の欠点がある。治療効果を得るとはいえ、患者は、睡眠中に前記使用者界面体を頻繁に着用しなければならない。多くの使用者は、少なくとも夜間に横向きに眠る時間がある。使用者の頭部の側部に枕又はベッドの圧力が加えられるとき、額支持体が無く組み合わされた構造の可撓性のため、使用者界面体は、顔面上でずれて、不快となるか使用者界面体と使用者との密封性が保持されず、快適性と密封性とが犠牲になる。
【0009】
特許文献1の装置は、更に別の欠点を有する。C字形断面の連結構造で殻の保持用縁部に係合する保持クリップで、マスクに緩衝体が固定される。しかしながら、殻と緩衝体との間に互いに離間する方向の引張力が加えられるとき、保持クリップから緩衝体が外れれば、再装着する必要がある。使用者界面体は、使用時に極めて粗雑に扱われるので、殻から引張して簡単に外れる緩衝体は、好ましくない。更に、特許文献1の装置は、患者界面体内の内圧を監視する圧力取出口を開示しない。
【0010】
技術の進歩により他の患者界面体が提案されてきた。例えば、下記特許文献2に記載される装置は、可撓性の緩衝体と連結導管との間に取り付けられた殻を有する患者界面体を開示する。殻は、殻本体と、額パッドを支持する剛性のある支持体とを備える。緩衝体と剛性のある支持体は、一体に使用者の顔面上に使用者界面体を保持する。剛性のある支持体と殻本体との間の距離を調整して、異なる使用者固有の顔の特徴に界面体を適応させることができる。この装置の注目すべき他の特徴は、連結導管が360度の角度で回転できるエルボにあり、これにより、何れか一方向に限定されずに、患者界面体から多くの方向に気体供給導管を方向付けすることができる。特許文献1に開示される装置とは更に異なり、特許文献2の使用者界面体の殻は、使用者界面体の内部への圧力孔等の接続が必要なときに種々の部材を取り付ける取付口が設けられる。
【特許文献1】米国公開特許第US−2003−0075180号公報
【特許文献2】米国特許第6,467,483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2に記載される装置は、技術的に進歩したが、更に改善の余地がある。連結導管を360度回転できるので、殻上の固定位置から延伸する取付口に連結導管が縺れる可能性がある。使用者が反復して連結導管を回転すると、何を取付口に接続しても、回転毎に連結導管に更に縺れる可能性がある。また、額パッドは、剛性のある支持体により支持される。剛性のある支持体と殻本体との間の距離を調整しても、剛性のある支持体が快適でない使用者も存在する。剛性のある支持体の延長部の輪郭に正確に適合しない顔面特徴を有する使用者も存在する。この場合に、患者界面体を適切に取り付けられず又は取り付けても使用者が不快感を感じるに過ぎない。
【0012】
特許文献2に開示される装置の他の欠点は、連結導管が殻本体からかなりの距離離間して延伸するエルボ型接続管を使用する点である。この連結導管は、使用者の周囲にある他の物品に縺れる可能性が高い。更に、患者界面装置の多くの使用者は、患者界面材装置の着用を意識し、小型で嵩張らない使用者界面体を好む。連結導管が相当な距離殻本体から離間して延伸するので、多くの使用者が嫌がる可能性がある。
【0013】
従って、圧力取出口に接続される導管に気体供給導管が使用時に縺れる可能性の低い患者界面体が好ましい。また、確実かつ安全に異なる多数の使用者に取り付けられる患者界面体が好ましい。更に、緩衝体と殻とを容易に組み立てて、使用時に緩衝体が殻から外れる可能性の低い患者界面体が好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、使用者に気体を供給する患者界面体を広義に開示する。患者界面体は、互いに接続される緩衝体、殻及び連結部を備える。空洞部を有する緩衝体と、連結部に接続される開口部を有する殻とが順番に気体供給導管に接続され、呼吸用気体は、空洞部及び開口部を通じて使用者に搬送される。本発明の一実施の形態では、連結部は、回動可能でありかつ取付口を有し、取付口と連結部とが一体に回転する。本発明の別の実施の形態では、使用者界面体は、緩衝体の挿入口に挿通される係止手段を有しかつ緩衝体が殻からの抜き取りを防止する保持リングを備える。本発明の更に別の実施の形態では、使用者界面体は、ヒンジを有しかつ個々の使用者の額に適合するように屈曲する額支持体を備える。
【0015】
参照符号により各図の対応する部分を示す添付図面に関する以下の説明、特許請求の範囲及び本明細書の全構成部分により、本発明の前記目的及び他の目的、特徴及び特性、構造の関連要素の操作法及び機能、部品の組み合わせ並びに製造経済性は、明らかとなろう。しかしながら、図面は、図示及び説明の目的に過ぎず、発明の範囲を制限しないものであることは、明確に理解できよう。別途明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用する用語「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その(the)」の単数形は、複数の対象を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の原理による使用者界面体30の実施の形態を例示する。通常、使用者界面体30は、殻(シェル)34に接続された緩衝体32を有し、殻34は、連結部(継手)36に順次接続される。使用者界面体30は、使用者に呼吸用気体を供給する図示しない気体供給導管に通常接続される。勿論、正圧力及び負圧力装置を備える他の構造に本発明を適用してもよい。図2では、殻34は、外面38及び内面40を有する。内面40の周囲に延伸しかつ緩衝体32の外延部に沿って延伸する裾部42は、殻34に環状の機械的強度を与える。後述のように、殻34は、複数の開口により形成される係止部46を有する延長部44も備える。延長部44は、使用者固有の種々の顔面特性に自動的に調節(自己調節)される可撓性材料により形成される。
【0017】
使用者界面体30は、緩衝体32を殻34に接続する保持リング48を備える。接着剤で殻34と緩衝体32とを接続するより工業的製造環境で十分な信頼性をもって殻34と緩衝体32とを機械的に接続することができる。図3Aに最良に示すように、殻34は、開口部52の周囲に形成される挿入口(スロット)50を有する。殻34に取り付けられる緩衝体32は、使用者に対し可撓性の密封構造を形成する。図3Aに示すように、緩衝体32は、ほぼ三角形状を有する。しかしながら、本発明の精神及び範囲から逸脱しなければ、他の種々の形状を使用してもよい。
【0018】
緩衝体32は、外壁54と、内壁56とを有する。使用者界面体30を装着するとき、内壁56は、使用者が鼻を配置する空洞部58を形成する。緩衝体32は、挿入口62が形成される縁部(リップ)60を有する。縁部60から延伸するフランジ64は、開口部65を形成する。保持リング48は、リング本体68から延伸する係止手段(移動留め、デテント)66を有する。各係止手段66は、突起部70及び鉤爪部72により形成される。係止手段66は、挿入口62に挿通される形状を有する。図3Bに示すように、係止手段66は、殻34の外面38の一部と係合して、殻34と保持リング48との間に緩衝体32を保持し、緩衝体32が所定の位置に固定される。
【0019】
図4に示すように、緩衝体32は、縁部60に隣接しかつ緩衝体32の内壁56の周囲に延伸する棚部(リッジ)74を有する。リング本体68は、縁部60と棚部74との間に保持される。本発明特有の一特徴は、緩衝体32と殻34とを相互接続する点にある。緩衝体32と殻34との間に引張力を加えることにより緩衝体32を殻34から分離できる従来技術の患者界面装置とは異なり、本発明では、使用時に緩衝体32が殻34から分離される可能性を低減することができる。緩衝体32の挿入口62と殻34の挿入口50に係止手段66を挿入して、所定の位置に緩衝体32を固定することによりこの効果を達成できる。緩衝体32を取り外すには、使用者が係止手段66を分離する必要があるので、緩衝体32が不意に脱落する可能性を阻止することができる。
【0020】
本発明の別の実施の形態は、連結部36に関する。図5Aに示すように、連結部36は、連結部本体76と、図示しない気体供給導管に連結部本体76を相互接続する連結導管78とを有する。本発明は、現行のエルボ接続管を使用せずに、使用者から最小距離離間して延伸する連結部を提供する。使用者の顔面から連結部36が延伸する全長を短縮するため、連結部本体76と連結導管78は、同一平面上に形成される。連結部本体76から径方向外側に延伸する連結導管78と一体に連結部本体76を円柱状に形成する構造が好ましい。勿論、本発明から逸脱しない他の種々の形状を連結部36に設けてもよい。
【0021】
開口部84の周囲に延伸する爪部(ビード)80及び肩部82が連結部本体76に設けられる。図4に最良に図示するが、爪部80を殻34の開口部52に挿通し、挿入口50に係止して、爪部80と肩部82との間に殻34を保持することができる。この構造では、殻34に係合する状態で連結部本体76を回転することができる。連結部36は、排気口88も有する。排気口88は、フラッパ弁又はダックビル弁等の図示しない逆止弁(一方向弁)を備える。
【0022】
図5Aに示すように、連結部36は、接続口86も有する。緩衝体32の空洞部58内への何らかの好適な接続機能に接続口86を使用することができる。接続口86は、図示しない管を通じて図示しない圧力センサの接続位置としての使用例がある。勿論、本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、種々の特徴を監視するのに使用される電線又は管等の他の種々の装置を連結部本体76の接続口86に取り付けることができる。呼吸用気体以外の使用者に供給する物質を接続する接続位置として接続口86を使用してもよい。接続口86と連結導管78とを共に連結部36に設けるので、接続口86と連結導管78とを一体に回転して、接続口86と連結導管78との縺れ又は絡みを防止できる。本発明の他の有意な特徴は、360度の全角度で連結部本体76を回転できることであり、使用者は、最小の障害でかつ全角度で連結部36を回転又は回動することができる。患者界面体は、頻繁に睡眠中に使用される。本発明による使用者界面体の使用者は、睡眠中に都合の良い位置に連結部36を単に回転して、使用者の顔面と緩衝体32との間の密封性を損なわずに、自由に身体の向きを変え又は頭部を動かすことができる。使用者は、使用しない接続口86に蓋体(キャップ)90を取り付けて接続口86を封止することができる。
【0023】
図5Bに示すように、連結部本体76の周囲に断続的に爪部80を形成してもよい。例えば、溝92を形成して爪部80を中断してもよい。溝92を形成することにより、爪部80周りの連結部36の環状機械的強度を減少できるので、爪部80の弾力性に抗して、開口部52内に爪部80を押圧して、内側へ弾力的に屈曲させた後に、開口部52に係止する機能が爪部80に与えられる。殻34の外面38に連結部本体76を押圧することにより、連結部36と殻34とをスナップ作用による相互接続が完了する。連結部本体76と殻34とを互いに接近する方向に押圧すると、爪部80が内側へ屈曲して、開口部52を通過し次第、爪部80の弾力性により初期位置に復帰するので、スナップ作用により爪部80を肩部82に係止して、殻34の内面40の開口部52の周囲領域が支持面となる。
【0024】
図1及び図6に示すように、本発明の患者使用者界面体30も額支持体94を備える。額支持体94は、使用者と緩衝体32との接合部に集中する緊締力を分散する機能を有する。また、額支持体94は、使用者界面体30を追加して支持し、所定の位置からの使用者界面体30の不意の移動を防止しかつ緩衝体32と使用者との間の密封性が劣化する危険性を排除することができる。
【0025】
使用者界面体30は、長さを調節できる取付台96及び受板100により支持されるパッド98を有する。長さを調節できる取付台96は、着脱可能な額連結部(ラッチ)102を有する。同様に、殻34は、着脱可能な殻係止部104も備える。長さを調節できる取付台96は、中央係合部(ファスナ)108により相互に接続される一対の翼106を有する。
【0026】
中央係合部108は、通路114を形成する一連の第1のリブ110と一連の第2のリブ112とを有する。中央係合部108は、爪116も備える。爪116は、細長い爪本体120及び歯122に接続される捩りばね118により形成にされる。歯122は、延長部44の係止部46に係合する大きさに形成され、額支持体94と殻34との間隔は、各使用者に適するように調整される。使用者が額支持体94の長さを調整するときに、使用者は、細長い爪本体120を押圧して、各係止部46から歯122が離間するまで、捩りばね118を回転させる。その後、使用者は、殻34から適切な距離に額支持体94を摺動させて、細長い爪本体120を解放し、異なる係止部46に歯122を再係止させる。
【0027】
本発明特有の他の実施の形態では、長さを調節できる取付台96は、ヒンジ連結部124も備える。図7に示すように、ヒンジ連結部124で額支持体94を屈曲させて、各使用者の頭部に良好に適合させることができる。可撓性を有する延長部44と可撓性を有する額支持部94とを組み合わせて、使用者の額を覆う面と、鼻梁に沿う縦方向面との2つの可撓面が形成される。長さを調節できる取付台96にヒンジ連結部124と爪116とを一体に形成するのが好ましい。しかしながら、本発明の範囲から逸脱しない限り、分離する個別部品でヒンジ連結部124及び爪116を形成してもよい。パッド98は、接着剤により受板100に取り付けられる。受板100は、開口128に脚126を係合した後、長さを調節する取付台96に接続される。勿論、長さを調節する取付台96にパッド98を取り付けるあらゆる他の既存法も使用することができる。
【0028】
本発明の使用者界面体は、製造環境で容易に組み立てることができる。共通の構造に組み込まれる多数の一体部品を使用して使用者界面体の組立を完成するのが好ましい。使用者界面体30を組み立てる際に、保持リング48を緩衝体32内に配置して、係止手段66を挿入口62内に挿入して、挿入口62の外部に延伸させる。次に、保持リング48に向かって殻34を押圧することにより、殻34に形成される挿入口50に係止手段66を通過させて、係止手段66の弾力をもって殻34の外面38に係止手段を係合させる。連結部36を押圧して、スナップ作用により殻34の開口部52に連結部36を係止することができる。受板100に固着されたパッド98により額支持体94を組み立てることができる。開口128に脚126を係合させて、長さを調節する取付台96に受板100が連結される。適切な係止部46に爪116が係合するまで、上部リブ110と下部リブ112との間に延長部44が挿入される。
【0029】
本発明を実施する際に、図7に示すように、係止部102,104にヘッドギア組立体130が接続される。特に、ヘッドギア組立体130は、額連結部102に接続される額紐(ストラップ)132と、殻係止部104に接続される殻紐(ストラップ)134とを備える。額紐部132及び殻紐部134をウェブ136により相互連結して、追加的に補強される。勿論、あらゆる従来のヘッドギア組立体130を本発明に使用してもよい。
【0030】
連結部102,104は、ヘッドギア130と殻34とを相互接続する独特の連結構造を形成する。図1及び図2に示すように、連結部102は、片持アーム140を有する留め具(バックル)138を備える。片持アーム140は、翼106に形成されるソケット142に嵌合される。各留め具138の一対の片持アーム140を同時に把持しかつ内側に摘んで、ソケット142から片持アーム140を分離し、使用者は、額連結部102を容易に取り外し又は調整できる。同様の殻連結部104は、着脱自在に軸部146に取り付けられる留め具144を備える二部品構造を有する。留め具144は、軸部146を挿入する開口部154を有する。軸部146に対して殻34を回転できるが、留め具144は、軸部146に形成された縮径部(アンダーカット部)150に係止して軸部146を把持するのに適する一対の爪148を一体的に有する。軸部146は、留め具144に軸部146の過剰挿入を防止する停止面152を備える。この構造は、長さの調整のみならず、殻34に対して留め具144を回転させて、使用者の各顔面特性に対応して受動的に位置を調整することができる。
【0031】
要するに、本発明特有の特徴により、使用者の顔の特徴に自動調節される小型の使用者界面体30が得られる。図7に示すように、連結導管78は、エルボ連結部を使用する従来の装置より遥かに小型である。連結部36に接続口86を設けるので、気体供給導管が接続口86に接続される部品に縺れる危険性が減少する。最後に、延長部44を可撓性材料により形成しかつ額支持体94にヒンジ連結部124設けるので、額支持体94を撓ませ又は屈曲させることができる。同時に、2つの前記特徴により、使用者の額を覆う面と、鼻梁に沿う縦方向面との2つの個別可撓面で使用者界面体30の屈曲が可能となる。使用者界面体30の前記可撓性により、使用者界面体30の快適性を向上し、異なる顔面特性を有する多数の使用者への着用が可能となる。
【0032】
本発明は、鼻領域を封止する緩衝体32を有する使用者界面体を説明したが、連結部(支持部本体)36と共に、他型式の使用者界面体30の使用を本発明が企図することも理解されよう。例えば、鼻及び口を封止するより大きな緩衝体32を支持体本体36に取り付けてもよい。逆に、鼻孔又は鼻孔付近を密封するより小さい緩衝体32又は鼻突起体を支持部本体36により支持してもよい。要するに、本発明のマスク組立体には、使用者の鼻孔又は鼻孔付近を封止するのに適するあらゆる界面体を使用できる。
【0033】
本発明が緩衝体32又はパッド98の材質を特定の材料に限定することを意図しないことも理解すべきである。例えば、前記構成要素は、使用者の皮膚に対して十分に快適な界面体となるシリコーン、プラスチック、ゴム、発泡体、ゲル若しくは他の何らかの材料又はこれらの組み合わせ材料により形成することができる。更に、十分な剛性を有して患者界面体30に必要な安定性を与えると共に、十分な弾力性を有するポリプロピレン、ポリエチレン又は他の何らかの材料により殻34、連結部36、保持リング48及び長さを調節できる取付台96を形成し、係止手段66及び爪部80を所定の位置に復帰させることができる。
【0034】
現在最も実用的で及び好適と思われる実施の形態を図示して詳述したが、前記記載は単に説明の便宜に過ぎず、本発明を開示した実施の形態に限定されず、本発明は、特許請求の範囲内に該当すると共に、特許請求の範囲と同趣旨の変更態様並びに同等の装置を包含すること企図する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の原理による使用者界面体の正面斜視図
【図2】使用者界面体の分解背面斜視図
【図3A】使用者界面体の殻、保持リング及び緩衝体の分解正面前方斜視図
【図3B】組み立てた図3Aの殻、保持リング及び緩衝体の正面斜視図
【図4】図1の組み立てた殻の4−4線に沿う断面図
【図5A】連結部の正面斜視図
【図5B】連結部の背面斜視図
【図6】使用者界面体の額支持体の分解斜視図
【図7】使用者の顔面上に取り付けた使用者界面体の側面図
【符号の説明】
【0036】
(30)・・患者界面装置、 (32)・・緩衝体(緩衝手段)、 (34)・・殻(支持手段)、 (36)・・連結部(連結手段)、 (38)・・外面、 (40)・・内面、 (42)・・裾部、 (44)・・延長部、 (48)・・保持リング、 (50)・・挿入口、 (52)・・開口部、 (54)・・外壁、 (58)・・空洞部、 (60)・・縁部、 (62)・・挿入口、 (64)・・内側フランジ、 (66)・・係止手段、 (72)・・鉤爪部、 (74)・・棚部、 (76)・・連結部本体、 (78)・・連結導管、 (80,82)・・回動手段、 (86)・・接続口、 (94)・・額支持体、 (98)・・パッド、 (102)・・額連結部、 (104)・・殻連結部、 (124)・・ヒンジ連結部、 (130)・・ヘッドギア組立体、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞部(58)を有する緩衝体(32)と、
緩衝体(32)を支持しかつ空洞部(58)に連絡する開口部(52)を有する殻(34)と、
開口部(52)に連絡しかつ接続口(86)を有する連結部(36)とを備えることを特徴とする患者界面装置(30)。
【請求項2】
接続口(86)は、圧力取出口である請求項1に記載の患者界面装置(30)。
【請求項3】
連結部(36)は、
連結部本体(76)と、
連結部本体(76)から延伸する連結導管(78)とを備える請求項2に記載の患者界面装置(30)。
【請求項4】
連結部(36)は、殻(34)に回動可能に接続される請求項3に記載の患者界面装置(30)。
【請求項5】
360度の角度で連結部(36)を回転できる請求項4に記載の患者界面装置(30)。
【請求項6】
空洞部(58)を有する緩衝体(32)と、
緩衝体(32)を支持しかつ空洞部(58)と連絡される開口部(52)を有する殻(34)と、
開口部(52)に連絡しかつ回動可能な連結部(36)とを備え、
連結部(36)は、ほぼ円柱状の連結部本体(76)と、連結部本体(76)から径方向外側に延伸する連結導管(78)とを有し、
連結部本体(76)及び連結導管(78)は、ほぼ同一平面上に形成されることを特徴とする患者界面装置(30)。
【請求項7】
360度の角度で連結部(36)を回転できる請求項6に記載の患者界面装置(30)。
【請求項8】
連結部(36)は、接続口を更に備える請求項7に記載の患者界面装置(30)。
【請求項9】
空洞部(58)を有する緩衝体(32)と、
空洞部(58)に連絡する開口部(52)と殻(34)から延伸する延長部(44)とを有する殻(34)と、
延長部(44)に接続される額支持体(94)とを備え、
少なくとも1つのヒンジ連結部(124)により額支持体(94)を変形できることを特徴とする患者界面装置(30)。
【請求項10】
額支持体(94)は、複数のパッド(98)を備える請求項9に記載の患者界面装置(30)。
【請求項11】
少なくとも1つのヒンジ連結部(124)は、複数のヒンジ連結を有する請求項9に記載の患者界面装置(30)。
【請求項12】
少なくとも1つのヒンジ連結部(124)は、一体型ヒンジである請求項9に記載の患者界面装置(30)。
【請求項13】
可撓性材料により延長部(44)を形成した請求項9に記載の患者界面装置(30)。
【請求項14】
複数の挿入口(62)を備えた縁部(60)を有する緩衝体(32)と、
複数の挿入口(50)と内面(40)及び外面(38)とを有する殻(34)と、
複数の係止手段(66)を有する保持リング(48)とを備え、
緩衝体(32)の対応する挿入口(62)及び殻(34)の対応する挿入口(50)に各係止手段(66)を挿入し、殻(34)の外面(38)に係合する鉤爪部(72)を係止手段(66)に設けたことを特徴とする患者界面装置(30)。
【請求項15】
緩衝体(32)は、
縁部(60)から延伸する外壁(54)と、
縁部(60)から延伸する内側フランジ(64)とを更に備える請求項14に記載の緩衝体(32)。
【請求項16】
外壁(54)、縁部(60)及び内側フランジ(64)は、溝を形成する請求項15に記載の緩衝体(32)。
【請求項17】
殻(34)は、外壁(54)の少なくとも一部の周辺で延伸する裾部(42)を有する請求項16に記載の緩衝体(32)。
【請求項18】
緩衝体(32)は、緩衝体(32)の周囲でかつ縁部(60)に隣接する棚部(74)を更に備え、
保持リング(48)は、縁部(60)と棚部(74)との間に保持される請求項17に記載の緩衝体(32)。
【請求項19】
殻(34)と、
殻(34)に接続される額支持体(94)と、
ヘッドギア組立体(130)と、
ヘッドギア組立体(130)と額支持体(94)との間で相互連結される少なくとも1つの額連結部(102)と、
額支持体(94)に着脱自在に連結される額連結部(102)と、
ヘッドギア組立体(130)と殻(34)との間を相互連結する少なくとも1つの殻連結部(104)とを備え、
殻(34)に殻連結部(104)を着脱自在に連結することを特徴とする患者界面装置(30)。
【請求項20】
殻(34)に回動可能に殻連結部(104)を取り付ける請求項19に記載の患者界面装置(30)。
【請求項21】
空洞部(58)を形成しかつ患者界面体(30)からの衝撃を緩和する緩衝手段(32)と、
緩衝手段(32)を支持する支持手段(34)と、
気体供給導管に患者界面体(30)を連結する連結手段(36)とを備え、
連結手段(36)は、連結手段(36)を回転させる回動手段(80,82)と、緩衝手段(34)に形成される空洞部(58)に接続する接続手段とを有することを特徴とする気体供給導管用の患者界面体(30)。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−521451(P2008−521451A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535780(P2007−535780)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/035856
【国際公開番号】WO2006/041936
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(505338497)アールアイシー・インベストメンツ・エルエルシー (81)