説明

回収現金に対する融資管理システムと方法

【課題】 未回収の現金を担保として融資ができるようにする。
【解決手段】 ネットワークシステムに接続されており、現金の入金管理を行い、現金入金データを送信することができる店舗端末20と、店舗端末20からネットワークを介して送信された現金入金データを受け付けるデータ受付手段41と、入金データ受付手段41により受け付けた入金データを所定の口座についての情報と照合して、収受が記録されているが所定の口座に未入金である現金の額を算出する現金管理手段43と、算出された現金の額と所定の融資条件とに基づいて回収対象の現金を担保とする融資限度額を算出する融資限度額設定手段45とを備えた回収現金に対する融資管理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事業者が保有する現金を回収する際に、回収対象の現金に対して融資限度を設定する融資管理システム及び融資管理の方法に関し、より具体的には、事業者が保有する現金の管理を行うコンピュータシステムと通信ネットワークを通じて接続されて融資管理を行う融資管理システム及び融資管理の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
店舗等の事業者は、売り上げに応じた現金を保有している。その現金はいずれ回収されて、銀行の現金処理センターなどを経由して、その事業者の銀行口座に入金されることになる。事業者自身が銀行に現金を持ち込む場合もあるが、ある一定の周期で、現金を輸送会社が回収して、銀行の現金処理センターなどに届けるサービスも広く行われるようになっている。このとき、売り上げが立って現金を収受した後、銀行口座に入金されるまでに、早くて数日、場合によっては10日ほどの期間を要する。この期間の間、現金収入がありながら、この事業者は現金を支払等に利用することができないため、資金の効率的な運用ができない。一方、現金の回収は労働集約的であり、そのコストを削減するために、現金回収の頻度を少なくすることが望まれるが、回収までの期間が長くなれば、それだけ資金運用の効率が低下してしまう。
【0003】
他方、販売の管理については、近時コンピュータネットワークを用いてリアルタイムの物流管理を行うSCM(サプライチェーン・マネージメント)と呼ばれる手法が普及しており、売り上げや在庫に関するデータをリアルタイムで把握することが可能になっている。SCMを利用した流通在庫の担保管理システムとしては、特許文献1に記載のものが知られている。このようなSCMシステムによって、現金による売り上げの金額をリアルタイムで補足することも可能である。また、大規模な店舗においては顧客店舗内に入金機を設置することも行われる。このような入金機もオンラインでデータを送信可能であり、現金の入金のリアルタイムの管理が可能になっている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−171594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような問題点から、事業者の資金管理のための銀行口座に入金するまでの回収過程の現金を担保として、融資を行う必要性がある。
【0006】
これに対して、SCMシステムや入金機では常時売り上げ、特に現金による売り上げに関するデータを把握しているため、SCMシステムや入金機からデータと、金融機関が有する融資管理のために必要なデータを有効に連携させることができれば、事業者の店舗や、現金回収者、銀行の現金処理センターにあって、事業者の資金管理のための銀行口座に入金される前の段階の現金を担保として融資を行うことが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ネットワークに接続されており、現金の入金管理を行い、現金の入金に関する現金入金データを送信することができる店舗端末と、店舗端末からネットワークを介して送信された現金入金データを受け付けるデータ受付手段と、データ受付手段により受け付けた現金入金データを所定の口座についての情報と照合して、収受が記録されているが所定の口座に未入金である現金の額を算出する現金管理手段と、算出された現金の額と所定の融資条件とに少なくとも基づいて回収対象の現金を担保とする融資限度額を算出する融資限度額設定手段とを備えた回収現金に対する融資管理システムを提供する。
【0008】
また、本発明は、店舗における現金の収受に関するデータを店舗端末が記録するステップと、該データを融資管理中央処理装置に送信するステップと、融資管理中央処理装置が、該データと、既に記憶されている融資条件データと、所定の口座についての情報とに基づいて、融資限度額を設定するステップと、融資管理中央処理装置が融資先からの指示に応じて該融資限度額内で融資を実行するステップと、現金処理センターからの入金状況に関するデータに基づいて算出される金額について融資管理中央処理装置が融資を返済するステップとを含む回収現金に対する融資管理方法を提供する。
【0009】
なお、本発明は、本発明にかかる融資管理システムに対応して、それぞれのシステムを用いた融資管理の方法あるいはそれを実施するためのコンピュータプログラムとして構成することもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシステムまたは方法によれば、店舗において収受しているが、回収の途中にあって、未だ口座に入金されていない現金を担保として融資を行うことができるようになる。したがって、資金のより効率的な運用が可能になると共に、現金回収の頻度を減らすことができ、現金管理のコストを減少させることができ、現金回収に伴う危険も減少させるとができる。本発明のシステム及び方法は、中規模から大規模なチェーンストアや飲食店チェーンなどの売上現金の比率の高い業種に適しており、資金のより効率的な運用に資するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかるシステムの全体を模式的に示すブロック図である。各店舗10には、POS端末、入金機などの現金の収受を記録できる店舗端末20が置かれている。この店舗端末20は、現金を収受すると、その収受の金額、時刻、その他の関連する情報を含むデータを生成して、自己の記憶手段(図示せず)に蓄積する。店舗端末は、図示しないが、基本的に演算手段と記憶手段、通信手段のほか、表示装置、キーボードやプリンタなどの入出力装置、必要に応じて現金受け入れ手段を備えているものである。店舗端末20は、その通信手段により、融資管理中央処理装置40にあるデータ受付手段41に接続されており、収受した現金のデータを入金データ受付手段41に向けて送信することができる。この送信は、リアルタイムで、あるいはその日の経理を閉めた後などの特定の時間に行うことができる。
【0012】
この融資管理中央処理装置40は、図示しない通信手段と上記のデータ受付手段41に加えて、処理手段42と記憶手段44があり、その他にも必要に応じて、表示装置やキーボードやプリンタなどの入出力装置を備えている。記憶手段44には、各口座の残高や入出金情報などを含む口座情報と、既に店舗において収受されて、その口座に入金されるべきであるが未収状態になっている現金に関する未収現金情報と、各融資先についての融資条件に関する情報とが記憶されている。これらの情報に基づいて、処理手段42は、各口座についての現金管理を行い、現時点で、いくらの現金が口座に入っているのかを監視する。同時に、処理手段42の融資限度額設定手段45は、口座の残高と、その口座に関する融資条件と、その口座に入金することが分かっているが、未だ入金していない現金の金額とに基づいて、融資限度額を設定する。この融資限度額は、回収対象の現金を担保とするものである。
【0013】
融資限度額と口座情報は、やはり何らかの通信手段を通じて融資先端末50に送られる。この融資限度額を見た融資先担当者は、必要に応じて、設定された融資限度額以内の金額をその口座に既にある現金と同様に使うことができる。融資先は、通常、店舗10を運営する会社である。
【0014】
上では、融資の実行に、融資先の銀行口座の情報をも利用することとしたが、単に回収されるべき現金の金額と、予め定めた融資条件のみに基づいて、融資を行うことも可能である。このような場合、銀行口座の情報を必ずしも持っていない現金の回収と現金処理センターを担当する警備会社が融資元となることも可能である。
【0015】
図2には、3つの店舗と、その店舗にある端末と、ネットワーク構成、現金処理センター、融資先端末、警備会社の車両が示されている。通常、週に1回などの一定の周期で、あるいは不定期に、警備会社の車両が店舗を回って現金を回収する。回収された現金は、警備会社または金融機関が運営する現金処理センターや、金融機関の支店に持ち込まれる。その後、回収された金額がチェックされて、それまでに集められた売り上げデータとの照合が行われる。照合の結果売り上げデータが修正されることもあり得よう。この現金は、警備会社により銀行に搬送され、銀行の所定の口座に入金される。銀行への入金が確認されると、現金収受の情報は、銀行あるいは現金処理センターから、上述の融資管理中央処理装置40に送られる。入金金額は、必要に応じて、既に融資されている融資残高の返済に振り向けられる。
【0016】
図3に、本発明方法の一実施形態のフローを示す。まず、店舗10において売り上げがあり、現金を収受した場合には、現金売り上げデータが作成される(S100)。この現金売り上げデータは、店舗端末20の記憶手段(図示せず)に保存される。その後、この現金売り上げデータは、融資管理中央処理装置40のデータ受付手段14に向けて送信される(S102)。現金売り上げデータは、別途、現金処理センター60から送られてくる現金の収受に関するデータと併せて、未収現金情報として、融資管理中央処理装置40の現金管理手段43により管理され、融資管理中央処理装置40の記憶手段44に保存される。この未収現金情報と融資先の口座情報と融資条件とに基づいて、融資管理中央処理装置40の処理手段42が融資限度額設定手段45により、融資限度額を設定する(S104)。この融資限度額は、融資先端末50から、その他の口座の情報として閲覧することができる。そして、融資先は融資限度額内の金額について、簡便に融資を受けて、現金として利用ができる(S106)。
【0017】
他方、店舗10において集められた現金は、警備会社等が運行する現金輸送車により回収される。この回収は、定期的でも不定期であっても良いが、本発明によれば、現金の資金効率の改善が未回収の現金を担保として実行されるので、回収の間隔はより長いものとして、回収の頻度を減らすことができる。現金は、銀行が運営する現金処理センター60に運び込まれ、その金額が改められ、現金売り上げデータとの照合がなされる。その後、収受現金データが作成される(S108)。この収受現金データは、現金処理センター60にある端末から融資管理中央処理装置40に送信される(S110)。データ受付手段41により受け取られた収受現金データは、処理手段42の現金管理手段43により、未収現金情報に加えられる。収受現金データに含まれている入金された現金の額は、融資の少なくとも一部の解消に当てられる(S112)。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のシステムの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明が適用される現金回収の様子とシステムの全貌を示す説明図である。
【図3】本発明の方法の一実施形態を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続されており、現金の入金管理を行い、現金の入金に関する現金入金データを送信することができる店舗端末と、店舗端末からネットワークを介して送信された現金入金データを受け付けるデータ受付手段と、データ受付手段により受け付けた現金入金データを所定の口座についての情報と照合して、収受が記録されているが所定の口座に未入金である現金の額を算出する現金管理手段と、算出された現金の額と所定の融資条件とに少なくとも基づいて回収対象の現金を担保とする融資限度額を算出する融資限度額設定手段とを備えた回収現金に対する融資管理システム。
【請求項2】
店舗における現金の収受に関するデータを店舗端末が記録するステップと、該データを融資管理中央処理装置に送信するステップと、融資管理中央処理装置が、該データと、既に記憶されている融資条件データと、所定の口座についての情報とに基づいて、融資限度額を設定するステップと、融資管理中央処理装置が融資先からの指示に応じて該融資限度額内で融資を実行するステップと、現金処理センターからの入金状況に関するデータに基づいて算出される金額について融資管理中央処理装置が融資を返済するステップとを含む回収現金に対する融資管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−293767(P2007−293767A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123398(P2006−123398)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(504132825)株式会社新銀行東京 (4)