説明

回収用フィーチャを有する固体インクスティック

【課題】インクスティックが印刷機の給送チャネルの挿入口を介して誤って装填されているとき、このインクスティックを挿入開口を介して人手だけで、すなわち追加の工具を必要とすることなく取り除けるインクスティックを提供する。
【解決手段】回収用フィーチャはユーザの2本の指等でインクスティック100を把持して挿入口からインクスティック100を取り除けるような垂直寸法を有する。回収用フィーチャは通常、少なくとも上面134に相互接続された2つの下面138を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作像装置のインク給送チャネルからインクスティックを除去する簡便さを増大させる固体インクスティックの上面等の表面上の1以上のフィーチャに関する。
【背景技術】
【0002】
固体インクや相変化インク印刷機等の幾つかの作像装置は、従来から固形、すなわちペレットやインクスティックのいずれかでインクを受け取っている。固体インクのペレットやインクスティックは通常、印刷機用のインク装填器の挿入開口を介して挿入され、インクスティックは給送機構および/または重力により加熱器組立体内の加熱プレートに向け給送チャネルに沿って押し込むか摺動させる。加熱プレートが、プレート上に衝突する固体インクを、印刷ヘッドに給送して記録媒体上へ噴射する液体に融解する。
【0003】
インクスティックの正確な装填と給送は、通常、インクスティックの外面に鍵用、ガイド用、整列配置用、配向用のフィーチャを組み込むことで達成される。これらの鍵用フィーチャは、インクスティック上の異なる位置に配置される隆起や陥凹である。挿入開口周縁の対応する鍵あるいはガイド要素は、適切な周縁鍵要素を持たないインクスティックを排除し、インクスティックが給送チャネル内に適切に整列配置されて配向されていることもまた保証する。これらの鍵用フィーチャは、一般に異なる4色のインク(シアン、イエロー、マゼンタ、ブラック)を用いるカラー印刷機にとって特に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクスティックの物理的構造は通常、インクスティックが適切な給送チャネル内にあるかどうかを特定するためのあらゆる唯一無二性を提供するものである。しかしながら、このシステムは絶対確実なものではなく、それは大きくは大量損失を回避し破損に対するインクスティックの脆弱性を低減する上で鍵用フィーチャがその深みにおいて極限に達していないからである。鍵用フィーチャは平凡なものであり、複数の製造ライン間で酷似することがあるため、誤挿入が発生することがある。例えば、シアンとマゼンタとブラックのインクスティックはある程度色が類似するため、それらは誤った給送チャネル内に簡単に装填されることがある。たとえインクスティックが正しい給送チャネル内に配置されていても、インクスティックが正しい向きになっていないことがある。誤配向されたインクスティックは、給送チャネルに沿って適切に給送できず、かつ/またはインク融解器に適切に係合させることができない。加えて、誤配向されたインクスティック上のエンコード用フィーチャは給送チャネル内に最適配置してセンサに相互作用させることはできず、センサの誤起動あるいは全く起動しない結果を招く。これによって、挿入開口を介して給送チャネルからインクスティックを除去する必要性が生ずる。
【0005】
挿入開口は通常、非常に小さい遊隙を提供し、インクスティックは通常は回収を改善する形状にはなっていない。挿入開口自体は、ガイド要素を提供し、かつ毛抜き様脱着具を挿入してインクスティックを把持し、挿入開口を介してインクスティックを引き抜くことのできる遊隙空間を提供する形状としてある。
【0006】
インクスティックには、このインクスティックを挿入開口を介して人手だけで、すなわち追加の工具を必要とすることなく取り除けるよう、一体化した回収用フィーチャを配設することが望ましい筈である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
様々な実施形態に開示したのは、相変化インクジェット印刷機での使用に適した固体インクスティックである。インクスティックは、人間の手だけで印刷機の挿入開口を介してインクスティックが除去できるようにする回収用フィーチャを含む本体を有する。
【0008】
実施形態に開示したのは、関連する作像装置の給送チャネルから除去可能に構成したインクスティックである。インクスティックは、上面と底面と前面と背面と2つの側面を有するインクスティック本体で構成される。回収用フィーチャは、上面に沿って配置され、回収用フィーチャはこの回収用フィーチャを2本の指の間に把持できるようにする十分な垂直寸法を有する。
【0009】
回収用フィーチャは、上面の中心部に沿って配置することができる。
【0010】
一部実施形態では、回収用フィーチャは垂直寸法に合わせ上面より上に延在するステムにより形成される。
【0011】
他の実施形態では、回収用フィーチャは上面内の第1の凹所と上面内の第2の凹所により形成され、第1の凹所と第2の凹所は対向する把持面を有し上面内に垂直寸法に亙って延在する。より具体的な実施形態では、第1の凹所と第2の凹所はそれぞれ上面中心部分の垂直寸法から上面にかけて長手方向に次第に浅くしてある。
【0012】
垂直寸法は、少なくとも6mmの距離とすることができる。
【0013】
追加の実施形態では、回収用フィーチャは第1の下面と第2の下面と、第1と第2の下面間に位置する上面とで構成される。
【0014】
回収用フィーチャは、代替的には4個の連接する垂直面で構成することができる。
【0015】
時として、回収用フィーチャは前面や背面や2つの側面から少なくとも5mm離間させる。
【0016】
側面の少なくとも一方には、関連する印刷機と相互作用してインクスティックが印刷機の特定の給送チャネル内に挿入されている筈であるかどうかを指示する鍵要素を含めることができる。前面と背面には、相補的な相互ロック形状もまた持たせうる。
【0017】
幾つかの実施形態では、回収用フィーチャは上面内の第1の凹所と上面内の第2の凹所として形成し、第1の凹所と第2の凹所は上面中心部分内にそれぞれ垂直寸法に亙って延在させ、上面に向け長手方向に次第に浅くし、垂直寸法は少なくとも6mmとする。
【0018】
また、他の実施形態において開示するのは、関連するインク印刷機の給送チャネルから手動で除去するよう構成したインクスティックである。インクスティックは、上面を有するインクスティック本体で構成される。回収用フィーチャは上面に沿って配置され、この回収用フィーチャは2本の指の間で回収用フィーチャを把持できるようにする十分な垂直寸法を有する2つの対向面を備える。
【0019】
2つの対向面は、上面からインクスティック本体内に延在させることができる。別の選択肢として、2つの対向する表面をインクスティック本体から離間させて上面から延在させることができる。
【0020】
回収用フィーチャはさらに、2つの対向面を接合する上面で構成することができる。別の選択肢として、2つの対向面は垂直軸に対し少なくとも5°の角度を持たせる。
【0021】
同様に開示されるのが、関連するインク印刷機の給送チャネルからインクスティックを手動で取り除く方法である。インクスティックは、挿入開口を介して給送チャネル内へ挿入される。挿入開口を介して2本の指を差し込み、インクスティックの上面に沿って回収用フィーチャを把持するが、回収用フィーチャは2本の指の間でこの回収用フィーチャを把持できるようにする十分な垂直寸法を有する。最後に、インクスティックを挿入開口を介して引っ張り、給送チャネルから給送スティックを取り除く。
【0022】
本開示のこれらおよび他の非限定的特徴を、下記により具体的に開示する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】相変化インク印刷機のブロック線図である。
【図2】給送チャネル内に固体インクスティックを装填することのできる箇所の開放位置にインクアクセスカバーを有する相変化インク印刷機の部分的な上部斜視図である。
【図3】相変化インク印刷機の固体インクスティック給送システムの給送チャネルの斜視図である。
【図4】回収用フィーチャを有する固体インクスティックの例示実施形態の上部斜視図である。
【図5】図4に示した例示インクスティックの側面図である。
【図6】回収用フィーチャを有する固体インクスティックの別の例示実施形態の上部斜視図である。
【図7】図6に示した例示インクスティックの上面図である。
【図8】図6に示した例示インクスティックの前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願明細書に開示する構成要素や工程や装置のより完全な理解は、添付図面を参照することで得ることができる。これらの図は、本開示を例証する簡便さに基づく単なる概略表現に過ぎず、それ故にその装置や構成要素の相対的な大きさや寸法を示しかつ/または例示実施形態の範囲を規定もしくは制限する意図はないものである。
【0025】
明確さに配慮し、下記の説明では具体的な用語を使用するが、これらの用語は、図面中の例示用に選択された実施形態の特定の構造にのみ言及することを意図したものであり、本開示の範囲を規定もしくは限定する意図はないものである。図面と下記の説明において、同様の参照符号が同様の機能の構成要素を指すものと理解されたい。
【0026】
量に関連して用いられる修飾語「約」は明示する値を含むものであり、文脈により指示される意味を有する(例えば、それは特定の量の計測値に関連する少なくともある程度の誤差を含む)。範囲の文脈で使用するときに、修飾語「約」は2つの端点の絶対値が規定する範囲を開示するものとしても考えるべきである。例えば、「約2から約10まで」の範囲は「2から10まで」の範囲もまた開示するものである。
【0027】
用語「印刷機」は、印刷機やファクシミリ装置や複写機や関連する多機能印刷機等の画像再生が可能な装置を指す。
【0028】
ここで、図1を参照するに、従来のオフセット型相変化インク作像装置10の一実施形態のブロック線図が示してある。作像装置10は、固体のインクスティックを受容するインク供給源14を有する。インク融解ユニット18は、インクスティックをその融点を上回って加熱し、液化インクを生成する。融解インクは、重力やポンプ作用あるいはその両方により印字ヘッド組立体20に供給される。作像装置10は、直接印刷装置あるいはオフセット印刷装置とすることができる。直接印刷装置では、インクは印刷ヘッド20により記録媒体の表面に直接放出することができる。
【0029】
図1に示した実施形態は、オフセット印刷装置からなるものである。オフセット印刷機では、インクはドラムの形で示しているものの被支持無端ベルトの形としうる移送表面28上へ放出される。画像転写工程を容易にするため、加圧ローラ30がドラム28上のインクに対し媒体34を押圧し、インクをドラム28から媒体34へ転写する。
【0030】
機械や印刷機10の様々なサブシステムと構成要素と機能の動作と制御はコントローラ38の助けを借りて実行される。コントローラ38は、例えば、中央処理装置(CPU)や電子記憶装置やディスプレイあるいはユーザインタフェース(UI)を有するマイクロコントローラとすることができる。コントローラは、スキャナやコンピュータ等の画像源40と印刷ヘッド組立体20等の作像システムとの間で画像データ流を読み取り、捕捉し、調製し、管理する。コントローラ38は、機械の印刷動作を含む他の機械サブシステムおよび機能の多くあるいは全てを処理し制御する主マルチタスクプロセッサであり、したがってこれらの様々なシステムを制御するのに必要なハードウェアやソフトウェア等を含む。
【0031】
図2は、印刷機10の装填ステーション50の上面図を提示するものである。鍵プレート56は、各色ごとの4個の鍵付き開口60A,60B,60C,60Dを有する。各鍵付き開口は、固体インク給送システム(ここには図示せず)の給送チャネル58へのアクセスをもたらす。各鍵付き開口は、相補的な鍵要素を有するそれらのインクスティックだけが特定の鍵付き開口内に挿入されるようインクスティック70と相互作用する鍵構造62A,62B,62C,62Dを有する。
【0032】
ここで図3を参照するに、装置10はオペレーティングシステムと構成要素が直接または間接に取り付けられるフレーム44を含んでいる。固体インク給送システム48は、装填ステーション50から融解ステーション54へインクスティックを前進させる。装填ステーションは、鍵付き開口60を含んでいる。各鍵付き開口60は、インク給送システムの個々の給送チャネル58のうちの1つへアクセスを制限する。鍵付き開口60は、開口60の鍵構造に相応しい鍵要素を有するそれらのインクスティックだけ受容するよう構成してある。したがって、鍵付き開口60はチャネル内に挿入されるインクスティックを色やインク配合等の特定の構成に限定するのに役立つ。インク給送システム48は、インクスティックを装填ステーション60から融解ステーション54へ移送する複数のチャネルすなわちシュート58を含んでいる。個別チャネル58は、4色のそれぞれについて用いられ、すなわちシアンとマゼンタとブラックとイエローとに用いられる。融解ステーション54は、固体インクスティックを融解し、液体インクを印刷ヘッドシステム(図示せず)に供給する構成としてある。
【0033】
図3に示す如く、装填ステーション50は鍵付き開口60を介して挿入方向Lに挿入されたインクスティックを受容する。給送チャネルは、装填ステーションから融解ステーションへ給送方向Fにインクスティックを移送する構成としてある。ここで、挿入方向Lと給送方向Fは異なる。例えば、インクスティックは挿入方向Lに挿入し、続いて給送チャネルに沿って給送方向Fに動かすことができる。代替実施形態では、給送チャネルと鍵付き開口は挿入方向Lと給送方向Fが実質平行となるよう配向することができる。
【0034】
インクスティックは、多くの形状をとることができる。インク給送システムに使用する一つの例示固体インクスティック100が、図4と図5に示してある。インクスティック本体102は、底面138と上面134とを有する。図示した特定の底面138と上面134は互いに実質平行であるが、それらに他の輪郭や相対的な関係をとらせることもできる。さらに、インクスティック本体の表面は必ずしも平坦とする必要はなく、またそれらを必ずしも互いに平行あるいは垂直とする必要もない。インクスティック本体はまた、側面140,144と前面148と背面150とを有する。側面140,144は互いに実質平行であり、上面134と底面138に対し実質垂直である。前面148と背面150はまた基本的に互いに実質平行であり、上面と底面と側面に実質垂直である。前面148は主要な先端面と考えることができ、背面150は尾端面と考えることができる。インクスティック本体は、注入成形、射出成形、圧縮成形あるいは他の周知技術により形成することができる。一般に、インクスティック本体は概ね全体に均一で、印刷インクで構成される組成物から形成される。
【0035】
インクスティック100に前面148と背面150上の相互ロックフィーチャを組み込み、給送チャネルに沿ったインクスティックの確実な移動を保証することができる。別の仕方では、前面148と背面150に相補的な相互ロック形状を持たせることができる。図4に示す如く、前面148は、垂直方向に延在する凹所164Aに隣接配置されて実質S形状輪郭を形成する隆起あるいは突起160Aを有する。同様に、背面150は垂直方向に延在する凹所164Bに隣接配置されて実質S形状輪郭を形成する隆起あるいは突起160Bを有する。前面と背面は必ずしも平坦とは限らず、本実施形態では平坦でないことに留意されたい。インクスティックの一端の相互ロックフィーチャの隆起160の位置は、インクスティックの反対端の凹所164の位置を反映するものであり、その逆もありうる。この構成は、隣接するインクスティックを給送チャネル内で当接させたり、あるいは入れ子にしたりすることができる。給送チャネル内の相互ロックインクスティックは、相対的なインクスティックどうしの側方の動きを制限する利点をもたらす。インクスティックの相対的な互いの動きを制限することで、インクスティックが給送経路に沿って移動する際に、お互いに対し、すなわち給送チャネルに対し移動スティックが斜めになる傾向が緩和されあるいは除去される。
【0036】
加えて、インクスティック端部のこれらの相補的相互ロックフィーチャにより可逆的なインクスティック、換言するならば、インクスティックのどちらの端部を前にするかを気にせずに相補的な形状の鍵付き開口を介して挿入することのできるインクスティックの形成が可能となる。可逆的な挿入を容易にするために、インクスティックにはインクスティックの側面140,144に沿って可逆的な鍵要素を含めることができる。例えば、鍵要素154は、前面148から側面144に沿って配置された鍵付き要素154までの距離と実質同じ距離だけ背面150から側面140に沿って配置しうる。換言するならば、インクスティックはそれが180°の回転対称性を呈するよう構成される。したがって、可逆的なインクスティックはインク装填器の相補的形状を有する鍵付き開口内に少なくとも2つの方位に挿入することができ、すなわち前面148あるいは背面150のいずれかを給送方向Fすなわち図3の融解ステーション54に向け配向することができる。
【0037】
インクスティックには、使用時にインクスティックの正しい装填と誘導と検出と支持を手助けする幾つかのフィーチャを含めることができる。これらフィーチャは、インクスティックの異なる位置に配置されて印刷機内の相補的位置に配置された鍵要素やガイド、支持、センサ等と相互作用する突起や陥凹とすることができる。例えば、図4に示す如く、インクスティックには1以上の鍵要素154を含めることができる。鍵要素は装填ステーション50の鍵付き開口60と相互作用し、固体インク給送システムの挿入開口60を介するインクスティックの挿入を許容しあるいは阻止する。図4のインクスティックに示した鍵要素154は、インクスティック本体の側面140,144内に形成した垂直な準筒状凹所あるいは切り込みである。鍵付き開口60の周縁の対応する鍵(図示せず)は、鍵付き要素154内への相補的突起としてある。任意の数および形状の鍵要素を、インクスティック上の適当な位置に採用することができる。
【0038】
1つの印刷機に関する各色にインクスティックの外周辺部の1以上の鍵要素の唯一無二の構成を持たせ、その特定の有色インクスティックごとに唯一無二の断面形状を形成することができる。印刷機の鍵プレート内の鍵付き開口とインクスティックの鍵要素との組み合わせは通常、適当な色のインクスティックだけを適当な給送チャネル内に挿入し、あるいはそうすべきであることを、保証し指示する。一群のインクスティックを、各色のインクスティック用ごとに唯一無二の鍵要素の構成をもって各色のインクスティックで形成する。
【0039】
鍵式挿入は、型番の異なる印刷機用に意図されたインクスティックを区別するのにも用いることができる。一つの種の挿入鍵は、特定型番の印刷機の給送チャネルの全ての鍵付き開口内に配置することができる。そのモデル印刷機用に意図したインクスティックは、対応する挿入鍵要素を含む。大きさや形状や位置が異なる挿入鍵を、型の異なる印刷機の給送チャネルの鍵付き開口内に配置することができる。
【0040】
上記した挿入鍵用フィーチャは、インクスティックが適切な挿入方向をもって挿入されることを保証する手助けとすることができる。しかしながら、これらのフィーチャは、誤配向時に挿入鍵用フィーチャがインクスティックの挿入を排除するよう機能する点で、本来排斥的である。自らがインクスティックを正しく配向したと信ずる顧客が、これら挿入鍵用フィーチャが生ずる抵抗を押し切り、挿入開口を介して給送チャネル内へ誤配向インクスティックをうっかり圧入する可能性が依然としてある。
【0041】
本開示のインクスティックは、上面134に配置される回収用フィーチャで構成される。回収用フィーチャは挿入開口を介してユーザに露出しており、ユーザが2本の指の間に回収用フィーチャを把持できるようにする垂直寸法を有する。ユーザはそこで、追加のツールを必要とすることなく、また指用に十分な遊隙をもって、印刷機の挿入開口を介してインクスティックを抽出すなわち回収することができる。特に、印刷機の挿入開口は回収ツール用の遊隙領域を提供するよう設計する必要はない。
【0042】
図4に示す如く、回収用フィーチャ200は第1の凹所210と第2の凹所220から形成され、両方とも上面134に位置する。第1と第2の凹所は、壁225を形成する対向する把持面212,222を有する。各凹所は、垂直寸法すなわち深さDに亙って上面からインクスティック内に延在している。深さDは、概ね上面134の中心部分230内にある。ここに示す如く、各凹所は中心部分230から上面にかけて長手方向に次第に浅くなっている(図5参照)。使用時に、一方の指を把持面212上に配置し、対向する指を把持面222上に配置し、2本の指を壁225に対し互いに挟み付け、印刷機上の鍵プレートの整形された開口に邪魔されることなく、インクスティック100を垂直方向に持ち上げられるようにする。壁225が第1の凹所210と第2の凹所220を仕切っていることに、留意されたい。ここに図示するように、回収用フィーチャ200は上面134の中心部分230に沿って配置してある。上面134が識別記号や名称やコード化マーク等を配設する空間を壁225上に依然有することに、留意されたい。
【0043】
図5から見てとれるように、回収用フィーチャ200は第1の下面250と第2の下面260から形成されると表されることもできる。第1の下面250は第1の下側エッジ252を有しており、第2の下面260は第2の下側エッジ262を有する。上面270は、第1の下面250と第2の下面260との間に位置する。上面270は上面134の一部とするか、あるいは上面134の下側あるいは上側とすることができる。回収用フィーチャは、第1の起立面272と第2の起立面274によって形成されると表すこともできる。第1の起立面272は第1の下側エッジ252から上面134まで延在し、第2の起立面274は第2の下側エッジ262から上面134まで延在する。第1と第2の起立面は角度を持たせることができ、あるいは換言すれば、上面270は第1の下側エッジ252と第2の下側エッジ262との間の距離278に満たない長さ276を持たせることができる。角度θは、垂直軸、換言すれば長さ276と長さ278との差分に基づき特定することができる。長さ276と長さ278とが等しいときは、角度θはゼロであり、垂直な軸となる。実施形態では、角度θはせいぜい5°、あるいはせいぜい10°である。この角度付き先細形状が、製造工程期間中にその型からのインクスティックの除去を容易にする。
【0044】
回収用フィーチャを有するインクスティックの他の実施形態が、図6から図8に示してある。インクスティック300は、インクスティック本体302を有する。ここでも、インクスティック本体302は底面338と上面334と側面340,344と前面348と背面350とを有する。側面340,344は互いに実質平行であり、上面334と底面338に対し実質垂直である。前面348と背面350もまた基本的に互いに実質平行であり、上面と底面と側面に対し実質垂直である。前面348は中間面349と中央配置された隆起360を形成するよう整形してあり、隆起360の前部は前面348と考えられる。背面350は、隣接するインクスティックが相互ロックできるよう中央配置した凹所364を有する。ここでも、本実施形態では前面と背面は平坦ではない。各側面340,344は、インクジェット印刷機の鍵付き開口と相互作用する鍵要素354を有する。ここで見てとれるように、底面338は整形されており、例えば下側ガイド要素356と下側チャネル358とを収容している。
【0045】
ここでは、回収用フィーチャは上面334上方に高さすなわち垂直寸法Hに亙り延出するステム400である。ステム400は、垂直寸法Hに亙り上面上方へ延出する4個の連接する垂直面410,420,430,440で構成されると考えることもできる。4個の連接する垂直面は、上面334の中心に向かって前面348と背面350と2つの側面340,344から離間している。
【0046】
特定の実施形態では、垂直寸法D,Hは少なくとも6ミリメートル(mm)であり、それは少なくとも10mmやあるいは約6mmから約30mmを含むものである。この垂直距離は、把持可能な回収用フィーチャを配設するのに十分である。特定の実施形態では、垂直寸法は約7mmである。追加の実施形態では、回収用フィーチャはインクスティックの前面348と背面350と2つの側面340,344から少なくとも5mm離間させる。これら4個の面からの距離は、参照符号412,422,432,442にて記述してある。この遊隙距離は、印刷機10の装填ステーションの開口60に2本の指を通し、それらの指を用いて回収用フィーチャを把持ができるようにするに概ね十分ある。参照符号414は、中間面349と回収用フィーチャとの間の距離を指し、約2mmとすることができる。
【0047】
一般に、回収用フィーチャは2本の指の間に回収用フィーチャが把持できるようにするに十分な垂直寸法を有する2つの対向面からなるものと考えることができる。図4の実施形態では、2つの対向面は対向面212,222や、あるいは図5中の第1の起立面272と第2の起立面274として標識付けしてある。図6の実施形態では、2つの対向面を垂直面410と430または垂直面420と440としうる。ここでも、2つの対向面は上面から延在させたり、あるいは上面からインクスティック本体内に延在させたりすることができる。
【0048】
インクスティックは、多くの異なる大きさと形状にて形成することができる。特に、多くの種類のインクスティックが細長く、すなわちインクスティックの前面と背面との間の距離(すなわち長さ)は、2つの側面の間の距離(すなわち幅)とは異なる。回収用フィーチャの寸法もまた異なるようにできることは、熟慮してある。例えば、図4の回収用フィーチャ200は長さ290と幅280とを有し、それらの寸法は異なる。所望に応じ、その長さは幅を上回るようにでき、その逆も可能である。
【0049】
図4のインクスティックを再度参照するに、インクスティックの全長は約125mmとすることができ、一方で回収用フィーチャは約100mmの長さ290を有する。同様に、インクスティックの全幅は約34mmとすることができ、一方で回収用フィーチャは約20mmの幅280を有する。上面270の長さ276は、約40mmとすることができる。
【0050】
ここで図6のインクスティックを参照するに、インクスティックは約44mmの全幅と約40mmの全長を有する。幅は2つの側面340と344の間で計測するが、長さは前面348と背面350との間で計測する。
【0051】
本開示のインクスティックは、それらの回収用フィーチャと共に、公知技術の方法を用いた射出成形工程や圧縮成形工程を用いて製造することができる。これらの工程により、全ての面にフィーチャを有するほぼ無制限の形状からなるインクスティックの形成が可能となる。
【0052】
前記した如く、インクスティック本体は印刷インクを含む組成物から形成される。印刷インクは通常、相変化インクであり、すなわち周囲温度では固相にて存在するが、昇温動作温度では液相にて存在するインクである。この種の相変化インクは通常、インク展色剤や着色剤を含む。
【0053】
適当なインク展色剤には、パラフィン、微結晶性ワックス、ポリエチレンワックス、エステルワックス、脂肪酸およびその他のワックス状材料、脂肪アミド含有材料、スルホンアミド材料、異なる天然資源から作成された樹脂性材料(例えば、タル油ロジンやロジンエステル)を含めることができる。多くの合成樹脂、低重合体、重合体および共重合体とそれらの混合物もまた用いることができ、それらには、エチレン/プロピレン共重合体;炭化水素系ワックス;酸化合成ワックスまたは石油ワックスのウレタン、尿素、アミド、およびイミド誘導体;イソシアネート誘導樹脂およびワックス;n−パラフィン炭化水素、分岐パラフィン炭化水素および/または芳香族炭化水素;高分子量直鎖アルコール;エポキシ樹脂;Fischer−Tropschワックス;ポリビニルアルコール系樹脂;多価アルコール;セルロースエステル;セルロースエーテル;ポリビニルピリジン樹脂;ポリスルホンアミド;安息香酸エステル;フタル酸エステル系可塑剤;クエン酸エステル系可塑剤;マレイン酸エステル系可塑剤;ポリビニルピロリジノン共重合体;ポリビニルピロリドン/ポリ酢酸ビニル共重合体;ノボラック樹脂;蜜蝋、モンタン蝋、カンデリラ蝋、GILSONITE(アメリカン・ギルソナイト社)等の天然蝋製品;約4個から約16個の炭素原子を有する直鎖状長鎖スルホンが含まれる。
【0054】
相変化インクは、少なくとも1つの着色剤もまた含むものである。本願明細書に使用する用語「着色剤」は、顔料、染料、染料混合物、顔料混合物、染料と顔料の混合物等を含む。インク展色剤内に分散あるいは溶解させることができ、他のインク成分との相溶性がある限り、いかなる染料も顔料も選択することができる。着色剤は、任意の所望量、通常はインク展色剤の約0.5から約20重量パーセントでインク内に存在する。様々な顔料と染料が、当分野で知られている。
【0055】
所望に応じ、他の添加剤が相変化インク内に検出されよう。この種の添加剤には、分散剤や界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を含めることができる。
【0056】
回収用フィーチャは、インクスティックの上面に沿って配置し、上面の残りの空間に追加の情報を含めることができるような大きさとすることができる。例えば、他の配向フィーチャを配設し、ユーザがインクスティックを視覚的に識別しかつ/またはインクスティックを挿入用に正しく配向するのを手助けすることができる。また、銘柄名やロゴやバーコードや在庫維持単位(SKU)等の他のマークを上面に配置することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関連する作像装置の給送チャネルから除去可能に構成したインクスティックであって、
上面と底面と前面と背面と2つの側面とを有するインクスティック本体と、
上面に沿った回収用フィーチャで、2本の指の間に把持できるようにする十分な垂直寸法を有する回収用フィーチャとを備える、インクスティック。
【請求項2】
回収用フィーチャは、前面と背面と2つの側面とから少なくとも5mm離間する、請求項1に記載のインクスティック。
【請求項3】
関連するインク印刷機の給送チャネルから手動で除去する構成としたインクスティックであって、
上面を有するインクスティック本体と、
上面に沿う回収用フィーチャで、この回収用フィーチャを2本の指の間に把持できるようにする十分な垂直寸法を有する2つの対向面を備える回収用フィーチャとを備える、インクスティック。
【請求項4】
関連するインク印刷機の給送チャネルからインクスティックを手動で取り除く方法であって、
挿入開口を介してインクスティックを給送チャネル内に挿入する工程と、
挿入開口内に2本の指を差し込み、インクスティックの上面に沿って回収用フィーチャを把持する工程で、回収用フィーチャがこの回収用フィーチャを2本の指の間に把持できるようにする十分な垂直寸法を有する工程と、
挿入開口を介してインクスティックを引っ張り、給送チャネルから給送スティックを取り除く工程とを含む、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−251530(P2011−251530A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112869(P2011−112869)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】