説明

回折構造転写箔及びそれを用いた偽造防止媒体

【課題】通常の順光状態では、回折構造による視覚効果を発生せず裏面がそのまま観察でき、一方、逆光となる状態時には、発生する回折光が表面から観察出来るというユニークな回折格子パターンを有する回折構造転写箔及びそれを用いた偽造防止媒体の提供。
【解決手段】支持体上の転写層10が被転写基材である紙基材6に転写されてなる転写箔で、前記転写層10は、支持体側から剥離保護層2、回折構造形成層4、接着層5の順に積層してなり、該回折構造形成層4は、一定の範囲の角度にて色彩や画像パターンの観察を可能にする、又は角度の変化に応じて複数の異なる色彩や画像パターンの観察を可能にする回折格子が形成されている回折構造転写箔の転写層10を透過性を有する紙基材6に転写した偽造防止媒体30とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造もしくは改竄を困難とするための偽造防止機能を有する回折構造転写箔及びそれを用いた偽造防止媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、偽造を防止する手段は、物品そのものを模倣する事が困難な物とするか、或いは、模倣する事が困難な物を本物の証明として物品に取り付ける事によって、真贋を判定出来るようにしているものがある。例えば前者は紙幣や株券などの有価証券のようにそのもの自体に微細な印刷加工や透かし加工を施したり色再現が困難な色調の彩色を使用したり、素材自体にも特殊なものとする事により、印刷技術による偽造や、複写機やスキャナーによる偽造を困難なものとしていた。
【0003】
ところが、デジタル技術の進歩により、上記のように従来偽造が困難であった微細な印刷加工や色彩までもが容易にカラーコピーやスキャナー等で再現出来るようになった。その結果、偽造防止策としての印刷加工も更に高微細化し、より複製や偽造を困難なものとしているが、このように高微細化が進んでくると一目で真偽判定を行う事ができず、それらの真贋の判定が容易ではないものとなる。
【0004】
そこで、物品(偽造防止対象物)に取り付ける事により一目で容易に真贋を判定する事が可能で、取り扱いも容易である事から回折格子パターンが形成された回折構造物が偽造防止手段として広く使われるようになった。このような偽造防止手段として採用される回折構造物としては、例えば、基材上に剥離性を持つ剥離層、回折格子が形成された回折構造形成層、金属光沢を有する反射層、接着層が順次積層された回折構造物を転写箔化したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、基材上に直接回折構造形成層を設け、反射層、粘着加工層が順次積層されてステッカー化したものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
上記回折構造物の回折格子パターンを形成するための製造方法は多数あり、ここではこの製造方法について限定するものではないが、その一例としてレリーフ型回折構造物の製造方法について述べることにし、このレリーフ型回折構造物とは、任意の画像情報を干渉縞として記録されている回折格子パターンが凹凸状に回折構造形成層に形成されたもので、回折構造形成層に光を当てると入射光がこの凹凸によって干渉を起こし、入射光に対してある一定の角度もしくはある一定の範囲内の角度に任意の画像情報を再生するものである。このレリーフ型回折構造物は、画像情報を凹凸で記録した原版を作製し、これをエンボス加工する事によって大量に生産する事が可能であるため、現在多くの回折構造物に採用されている。
【0007】
また、透明な回折格子として、反射層に透明金属蒸着薄膜や無機化合物の薄膜を形成する事により、反射層より下層に位置するものも、回折格子を通して目視にて観察出来るようにしたものもある(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
これら従来用いられている回折構造物は、いずれも観察する面から回折構造形成層に光が入射する事によって回折光を生じさせ、反射層にて回折光を反射して層を透過する事によって、光が入射した側からその回折光を観察するものであり、反射層に透明な反射性膜を用いた場合には反射層の下層に位置するものも観察する事が出来るが、いずれの回折光も、観察者側から光が入射した時にしか回折光を観察する事ができない。
【0009】
以下に、上記先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開昭61−190369号公報
【特許文献2】特公平1−54709号公報
【特許文献3】特開平11−91297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記のような偽造防止策としての回折構造物であっても、回折構造物の製造方法の簡易化や低コスト化が進んだ事により、一目では簡単に真偽判定する事が出来ない回折構造物の偽造が増加しつつあり、最近ではその偽造防止効果が薄れつつあるという問題点がある。
【0011】
また、有価証券や紙幣に偽造防止策として用いられている透かしを観察する時は、観察者と光源の間に偽造防止媒体の透かし部分を置くようにし、このような逆光状態の時に基材に施された透かし模様を観察する事ができるが、この時、従来の回折構造物では全くその効果を確認する事ができないという問題点もある。
【0012】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題は、偽造防止効果の更なる向上と従来の回折構造物にはない新しい視覚効果を得るために、通常の順光状態(表面から光が入射する状態)では、回折構造による視覚効果を発生せずに回折構造物の裏面がそのまま観察でき、一方、回折構造物の裏面から光が入射するような観察時に逆光となる状態になった時には、回折構造によって回折光が発生し、その回折光が回折構造物の表面から観察出来るというユニークな回折格子パターンを有する回折構造転写箔及びそれを用いた偽造防止媒体を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、支持体の片面に転写層を有し、該転写層が被転写基材に転写されてなる転写箔であって、前記転写層は、支持体側から少なくとも剥離保護層、回折構造形成層、接着層の順に積層してなり、前記回折構造形成層は、ある一定の範囲の角度にて色彩や画像パターンの観察を可能にする、もしくは角度の変化に応じて複数の異なる色彩や画像パターンの観察を可能にする回折構造が形成されていることを特徴とする回折構造転写箔としたものである。
【0014】
また、請求項2の発明では、前記剥離保護層と回折構造形成層との間に反射防止層が施されていることを特徴とする請求項1記載の回折構造転写箔としたものである。
【0015】
また、請求項3の発明では、前記回折構造形成層は、任意の特定波長のみを回折する回折構造であることを特徴とする請求項1または2記載の回折構造転写箔としたものである。
【0016】
さらにまた、請求項4の発明では、請求項1乃至3のいずれかに記載の回折構造転写箔を用い、該回折構造転写箔の転写層が被転写基材に転写されてなる偽造防止媒体において、少なくとも前記転写層が転写されている部分の被転写基材が光透過性を有していることを特徴とする偽造防止媒体としたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
【0018】
即ち、上記請求項1に係る発明によれば、支持体の片面に転写層を有し、該転写層が被転写基材に転写転写されてなる転写箔であって、前記転写層は、支持体側から少なくとも剥離保護層、回折構造形成層、接着層の順に積層してなり、前記回折構造形成層は、ある一定の範囲の角度にて色彩や画像パターンの観察を可能にする、もしくは角度の変化に応じて複数の異なる色彩や画像パターンの観察を可能にする回折構造が形成されていることによって、光が回折構造形成層の裏面から入射した時に観察者が回折光を観察できるように記録された回折格子パターンとなっているので、観察者からみて回折構造物が逆光状態になった時にだけ観察する角度に応じて異なる色彩や画像パターンが再生されるといった従来にはない視覚効果が得られる回折構造転写箔とすることができる。
【0019】
また、上記請求項2に係る発明によれば、前記剥離保護層と回折構造形成層との間に反射防止層が形成されていることによって、この反射防止層が観察者側から反射防止層に入射する光は拡散して反対面側から入射する光は拡散せずにそのまま透過させる機能を持つ事から、観察者から見て順光時には回折構造転写箔はほとんど反射光のない状態となって回折構造転写箔の下地を見る事ができるため、反射光を抑えて下地をより見易くする事が可能となり、また、逆光時には、反射光がほとんど無い状態で裏面からの入射光によって回折光が発生し、その回折光をより見易くする効果がある。
【0020】
また、上記請求項3に係る発明によれば、異なる色彩や画像を回折格子パターンとして記録する時の記録光の波長領域を限定する事により、回折格子パターンに光を入射して画像を再生する時の再生光である回折光の波長が限定され、回折構造転写箔における回折構造形成層が任意の特定波長のみを回折する事が可能となるので、得られる色彩や画像パターンがよりシャープなものとして観察される回折構造転写箔とすることができる。
【0021】
さらにまた、上記請求項4に係る発明によれば、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の回折構造転写箔を用い、その転写層を光透過性を有する被転写基材に転写する事によって、被転写基材越しに回折構造転写箔の転写層の接着層側から光が入射する事を可能とし、逆光状態の光によって回折光が発生し、その回折光を剥離保護層側から観察する事が可能となる偽造防止媒体とすることができる。尚、本発明に用いられる被転写基材は、転写される部分に光透過性があればその機能を果たす事ができるため、被転写基材の全体、もしくは転写される被転写基材の一部分に光透過性があれば良い。
【0022】
このように本発明は、前記回折構造転写箔の転写層を、透かし模様のように光透過性を持つ被転写基材に転写する事により、順光状態では透かし模様は観察できないが被転写基材に施された印刷パターンなどを観察する事ができ、逆光状態では被転写基材に施された透かし模様と共に回折構造物による回折光が同時に観察されるため、従来にはない偽造防止効果を得る事が可能となるものである。
【0023】
従って、本発明の回折構造転写箔を用い、その転写層を紙やプラスチックからなるチケットやカード、証明書、公文書等に転写する事により、従来にない偽造防止媒体を製造する事ができ、例えば、クレジットカードや有価証券、保証書、証明書等に利用する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の回折構造転写箔は、支持体と転写層から構成され、この転写層は回折構造形成層を含み、カード等被転写基材に転写されて偽造防止媒体とするものである。
【0025】
上記転写層は、剥離保護層の他に少なくとも回折構造形成層と接着層を有している。こ
の回折構造形成層は、回折構造である光の干渉縞が凹凸のレリーフによって記録されており、本発明では接着層側の面から光が入射した時に回折光が生じるように記録がされているものである。
【0026】
また、反射防止層が剥離保護層と回折構造形成層との間に形成されており、この反射防止層は、観察者側から反射防止層に入射する光は拡散し、反対面側から入射する光は拡散せずにそのまま透過させる機能を有しているものである。
【0027】
また、接着層は、転写層を被転写基材に接着させるための層であり、転写層が被転写基材に密着するのであればその材料は特に限定されるものではなく、従来から転写箔に使用されている接着層で良い。
【0028】
本発明の回折構造転写箔は、その転写層中に剥離保護層や回折構造形成層、接着層の他に、別の層を有していても良い。例えば、各層の層間密着力を向上させるためのアンカー層、被転写基材の印刷や透かし模様、回折光による画像などを着色するための着色層等が挙げられる。
【0029】
以下本発明の回折構造転写箔の構造等について、その最良の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明の回折構造転写箔の第1の事例を示す断面図であり、この回折構造転写箔20は、支持体1と、この支持体1の片面に積層された転写層10とで構成されており、本発明の基本的な層構成である。
【0031】
上記転写層10は、被転写基材への転写後、支持体1の剥離を容易にすると共に、転写後に回折構造形成層4を摩耗などから保護するための剥離保護層2を有している。
【0032】
また、上記転写層10は、その層構成中に回折構造形成層4を有しており、この回折構造形成層3の片面には凹凸レリーフ7がエンボス加工により形成されており、更にその凹凸レリーフ7に接するように接着層5が形成されていて、これら各層の積層順序は、支持体1側から、剥離保護層2、回折構造形成層4、接着層5の順である。
【0033】
また、図2は本発明の第2の事例を示した断面図である。これは、図1で説明した本発明の第1の事例の回折構造転写箔の転写層10の層構成中に高屈折率層3aと低 屈折率層3bとでなる反射防止層3を形成したもので、支持体1側から、剥離保護層2、反射防止層3、回折構造形成層4、接着層5の順で形成されている。
【0034】
また、図3は本発明の回折構造転写箔を用いた偽造防止媒体の1事例を示す断面図で、上記図1に示す本発明の第1の事例の回折構造転写箔を、透かし模様62を有する紙基材6に転写して支持体1を剥離する事により、回折構造物を有する偽造防止媒体30としたものである。尚、図示しないが、この透かし部分に別途印刷層を設けても良く、また、紙基材6上の回折構造転写箔を転写する部分に光透過性があれば、透かし模様62が無くても良い。前者の場合には、ある角度で回折光による色彩や画像を観察する事でき、また別の角度では透かし模様と印刷パターンが同時に観察する事も可能である。また、後者の場合には、透かし模様や印刷パターンは観察されず、ある角度において回折光による色彩や画像が観察出来る偽造防止媒体となる。
【0035】
また、図4は本発明の回折構造転写箔を用いた偽造防止媒体の他の1事例を示す断面図で、上記図2に示す本発明の第1の事例の回折構造転写箔を、透かし模様62を有する紙基材6に転写して支持体1を剥離する事により、回折構造物を有する偽造防止媒体30と
したものである。
【0036】
以下に、本発明の回折構造転写箔及びそれを用いた偽造防止媒体を構成する各層の材質と形成方法などについて説明する。
【0037】
(支持体)
まず、支持体1としては樹脂フィルムが使用できる。その樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリエチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム、耐熱塩化ビニルフィルム等が使用できる。これらの樹脂の中で、耐熱性が高く厚みが安定している事から、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムが好適に使用できる。
【0038】
また、これら樹脂フィルムに剥離層を設けたり、易接着処理を行ったりして剥離保護層2の剥離強度を調整したフィルムを支持体1として利用する事もできる。また、帯電防止処理、マット加工、エンボス処理等の加工を施したフィルムも使用する事ができる。
【0039】
(剥離保護層)
また、剥離保護層2としては、樹脂に滑剤を添加したものが使用できる。その樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等が使用できる。例えば、アクリル樹脂やポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂である。また、滑剤としてはポリエチレンパウダーや、カルナバロウ等のワックスを使用する事ができ、20重量部まで添加する事が可能である。これらは剥離保護層2として、支持体1上にグラビア印刷法やマイクログラビア法等、公知の塗布方法によって形成される。
【0040】
(反射防止層)
また、反射防止層3としては、高屈折率層3aと低屈折率層3bとする材料を交互に積層して屈折率と形状膜厚の積における屈折率を均一に積層して構成されるものや、無機や有機フッ素化合物などの低屈折率層を形成するもの等が反射防止層3として一般的に知られており、これらを含む公知の方法によって形成される。
【0041】
(回折構造形成層)
また、回折構造形成層4は、レリーフ型回折格子や体積型回折格子等の回折構造体が利用でき、前者のレリーフ型回折格子は、その表面に微細な凹凸パターンの形態で回折格子を記録したものであり、このような凹凸パターンは、例えば、二光束干渉法を使用して感光性樹脂の表面に互いに可干渉の2本の光線を照射してこの感光性樹脂表面に干渉縞を生成させ、この干渉縞を凹凸の形態で感光性樹脂に記録する事で形成できる。尚、この二光束性干渉法によって形成された干渉縞も回折格子であり、前記2本の光線の選択によって任意の立体画像を回折格子パターンとして記録する事が可能である。また、観察する角度に応じて異なる画像(以下チェンジング画像と言う)が見られるように記録する事も可能である。
【0042】
本発明に用いられる折格子構造物となる画像パターンを記録する方法については、前記二光束干渉法の他にもイメージホログラムやリップマンホログラム、レインボーホログラム、インテグラルホログラムなど、従来から知られているホログラムの製造方法により作製が可能であるが、従来のホログラムが表面から入射した光だけを再生光として利用するのに対し、本発明では表面から入射した光と裏面から入射して透過した光のどちらの光によってもホログラムや回折格子などの回折構造物による回折光が再生するよう画像を多重記録している。
【0043】
また、レリーフ型回折格子の凹凸パターンは、電子線硬化型樹脂の表面に電子線を照射して、回折格子となる縞状パターンに露光する事によって回折構造物を形成する事も可能である。この場合には、その干渉縞を1本ごとに制御する事ができるため、ホログラムと同様に任意の立体画像やチェンジング画像を記録する事ができる。また、画像をドット状の画素領域に分割し、この画素領域ごとに異なる回折格子を記録し、これら画素の集合で全体の画像を表現することも可能である。これら画素は円形のドットの他、星形のドットでも良い。
【0044】
また、誘起表面レリーフ形成法によって、前記凹凸パターンを形成する事も可能である。すなわち、アゾベンゼンを鎖側に持つポリマーのアモルファス薄膜に対して、青色〜緑色に渡る範囲の或る波長を有した数十mW/cm2 程度の比較的弱い光を照射する事によって、数μmスケールでポリマー分子の移動を起こし、結果、薄膜表面に凹凸によるレリーフを形成する事ができる。
【0045】
そして、このように形成された凹凸パターンを有するレリーフ型のマスター版の表面に電気メッキ法で金属膜を形成する事によって、レリーフ型マスター版の凹凸パターンを複製し、これをプレス版とする。そして、前記剥離保護層2上に塗布された樹脂層にこのプレス版を熱圧着し、この樹脂層の表面に微細な凹凸パターンを転写することにより、回折構造形成層4とすることができる。
【0046】
前記レリーフ型回折格子による回折構造形成層4に適用される樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂等が使用できる。例えば、熱可塑性樹脂では、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂等が挙げられる。また、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加して架橋させたウレタン樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等が使用できる。また、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂としては、エポキシ(メタ)アクリル、ウレタン(メタ)アクリレート等が使用できる。
【0047】
(接着層5)
また、接着層5としては、熱及び圧力によって被転写基材に接着するものであれば良く、公知の感熱性接着材料を使用する事ができる。
【0048】
(偽造防止媒体)
本発明の回折構造転写箔20を、被転写基材、例えば紙基材6上の光透過性がある部分に重ねて熱圧着により接着した後、支持体1を剥離除去して転写層10を転写する事により、偽造防止媒体30を製造する事ができる。この被転写基材としては任意のものが利用できるが、例えば、紙基材6や合成紙、あるいはポリ塩化ビニル樹脂やポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂を材質とするプラスチックカード基材などが挙げられる。
【0049】
このようにして製造された偽造防止媒体30は、観察する角度に応じて異なる色彩や画像を見る事ができる回折構造物を有しており、この回折構造物は光源が回折構造物の背後に来るような逆光の場合に、ある一定の範囲の角度においては被転写基材6と回折構造形成層4を透過した光によって回折光が再生される。また、例えば、図6に示すように、被転写基材6に透かし模様62が施されている場合には、観察する角度によって透かし模様と回折光による色彩や画像を同時に見る事ができ、回折光が観察されない角度では透かし模様だけが観察される。
【0050】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【実施例1】
【0051】
まず、支持体1として、厚さ25μmの透明なポリエチレンテレフタレート(通称PET)フィルムを使用した。この支持体1の片面に、下記組成物からなる剥離保護層インキを塗布・乾燥し、膜厚2μmの剥離保護層2を形成した。
【0052】
次に反射防止層3として、高屈折率層3aとして酸化チタンを、低屈折率層3bとして酸化珪素を、それぞれ蒸着法を用いて積層し、各々の屈折率が一定となるよう成膜条件を変えずに形成した。
【0053】
次に、下記組成物からなる回折格子形成層インキを塗布・乾燥して膜厚1μmの層を形成した後、ロールエンボス法により回折格子形成用のプレス版を熱圧してその表面に回折格子を発生させるための凹凸を形成し、回折構造形成層4とした。
【0054】
次に、下記記組成物からなる接着層インキを塗布・乾燥させて厚さ3μmの接着層5を形成し、所望の回折構造転写箔を製造した。
【0055】
「剥離保護層インキ組成物」
ポリアミドイミド樹脂 19.2重量部
ポリエチレンパウダー 0.8重量部
ジメチルアセトアミド 45.0重量部
トルエン 35.0重量部
「回折構造形成層インキ組成物」
ウレタン樹脂 20.0重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
酢酸エチル 30.0重量部
「接着層インキ組成物」
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂 15.0重量部
アクリル樹脂 10.0重量部
シリカ 1.0重量部
メチルエチルケトン 44.0重量部
トルエン 30.0重量部
次に、上記で得られた回折構造転写箔を、被転写基材である紙に施された透かし部分に重ねて置き、版面温度120℃の熱ロール転写機で転写してから支持体1を剥離除去し、偽造防止媒体を製造した。
【0056】
得られた偽造防止媒体は、光源となる光が観察者の上側や後ろ側に位置している順光状態では、裏面から光が入射しないために回折構造形成による回折光は発生せず、また、反射防止層によって表面からの光もほとんど反射しない事から、観察者には回折構造物の画像や文字は全く見えなかった。
【0057】
また、偽造防止媒体の紙基材に施されている透かし模様を観察するために、光源を観察者の前方に配置し、光源と観察者との間に偽造防止媒体を置く逆光状態にすると、偽造防止媒体の表面が暗くなり、透かし模様が観察されると同時に観察する角度によって画像パターンが変化する回折光による画像も同時に観察する事ができ、更には反射防止層の効果によって一層透かし模様や回折光を観察する事が容易になり、従来では不可能だった逆光状態での回折光の観察と紙基材に施された透かし模様とを同時に観察する事ができた。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の回折構造転写箔の第1の事例を説明する側断面図である。
【図2】本発明の回折構造転写箔の第2の事例を説明する側断面図である。
【図3】本発明の回折構造転写箔の第1の事例を用いて製造した寄贈防止媒体を説明する側断面図である。
【図4】本発明の回折構造転写箔の第2の事例を用いて製造した偽造防止媒体を説明する側断面図である。
【図5】従来の回折構造物に用いられている反射型回折格子の1事例を示す概念図である。
【図6】本発明の回折構造転写箔を用いた偽造防止媒体に用いられている透過型回折格子の1事例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0059】
1‥‥回折構造転写箔の支持体
2‥‥剥離保護層
3‥‥反射防止層
3a‥‥高屈折率層(反射防止層)
3b‥‥低屈折率層(反射防止層)
4‥‥回折構造形成層
5‥‥接着層
6‥‥紙基材
7‥‥凹凸レリーフ
10‥‥転写層
20‥‥回折構造転写箔
30‥‥偽造防止媒体
62‥‥透かし模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の片面に転写層を有し、該転写層が被転写基材に転写されてなる転写箔であって、前記転写層は、支持体側から少なくとも剥離保護層、回折構造形成層、接着層の順に積層してなり、前記回折構造形成層は、ある一定の範囲の角度にて色彩や画像パターンの観察を可能にする、もしくは角度の変化に応じて複数の異なる色彩や画像パターンの観察を可能にする回折構造が形成されていることを特徴とする回折構造転写箔。
【請求項2】
前記剥離保護層と回折構造形成層との間に反射防止層が施されていることを特徴とする請求項1記載の回折構造転写箔。
【請求項3】
前記回折構造形成層は、任意の特定波長のみを回折する回折構造であることを特徴とする請求項1または2記載の回折構造転写箔。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の回折構造転写箔を用い、該回折構造転写箔の転写層が被転写基材に転写されてなる偽造防止媒体において、少なくとも前記転写層が転写されている部分の被転写基材が光透過性を有していることを特徴とする偽造防止媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−89648(P2008−89648A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267202(P2006−267202)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】