説明

回線リソース管理サーバ、通信制御システムおよび通信制御方法

【課題】規制地域に向けて発信される呼のために、回線リソースを確保し、また、回線リソースを確保したことを発信側ユーザに通知できる通信制御システム、回線リソース管理サーバおよび通信制御方法の提供を目的とする。
【解決手段】回線リソース予約指示を受信する予約指示受信手段と、予約指示受信手段が回線リソース予約指示を受信した場合に回線リソースを予約する回線リソース予約手段と、予約された回線リソースを記憶する回線リソース記憶手段と、回線リソースの予約がされたことを発信側携帯端末に通知する回線リソース予約通知手段と、記憶された回線リソースを用いて、発信側携帯端末と着信側端末との間の回線確立を行うことを指示する回線確立指示手段と、をリソース管理サーバに設けることにより設けることにより、回線リソースを確保し、また、回線リソースを確保したことを発信側ユーザに通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、輻輳発生時に規制地域に向けて発信される呼のために回線リソースを管理する回線リソース管理サーバ、通信制御システム、および通信制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電話網においては、制御信号により相手への回線を捕捉し、通話回線を設定する方式が採用されている。このような方式を採用する電話網において、例えば災害時やイベント時などの非常時に通信の集中がある場合には、通信規制が実施され、ネットワークの負荷がコントロールされる。より具体的には、設備性能を超える呼が集中し、輻輳が検出された場合に、輻輳を検出したノードで規制が行われる。
【0003】
上記の輻輳を緩和するための技術として、特許文献1には、第1の加入者端末から通信規制地域内の第2の加入者端末に対し発呼したとき、接続できないことを第1の加入者端末に提示し、第1の加入者端末で災害システムへの接続とメール機能への切り替えを提示し、いずれかを選択させる技術が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、災害地域への通信信号を判別し、災害地域への通信信号を信号圧縮手段へ経路選択し、災害地域への通信信号を圧縮することによって抑制する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−318642号公報
【特許文献2】国際公開第2006/103726号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術によると、以下の問題点がある。すなわち、災害時やイベント時においては、特定方向への呼が集中することにより、輻輳を検出した単体ノードで能動的に規制が行われる。このため、結果的には多重規制となり、過剰な規制がなされ、規制とは関係のない正常呼まで規制されることとなるなど、電話が非常につながりにくい状況に陥るという問題がある。さらに、そのような電話のつながりにくい状況下では、ユーザが再帰的、継続的に発呼を繰り返すため、輻輳状態が一層助長されることとなるという問題がある。
【0007】
例えば、特許文献1に記載の技術によれば、通信規制地域内への発呼に対し、災害システムへの接続とメール機能への切り替えのいずれかを選択させ、回線の接続を行わない。したがって、災害システムへの接続やメール機能への切り替えを希望せず、回線の接続を希望するユーザが再帰的、継続的に発呼を繰り返す問題は解決されない。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術は、災害地域への通信信号を圧縮することによって輻輳を抑制するものであるが、大量の通信が災害地域に集中した場合に回線の輻輳を確実に防止できるものではない。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するために、規制がなされている地域に向けて発信される呼のために、回線リソースを確保し、また、回線リソースを確保したことを発信側ユーザに通知することができる通信制御システム、回線リソース管理サーバおよび通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本発明の回線リソース管理サーバは、回線リソースを予約することを指示する回線リソース予約指示を受信する予約指示受信手段と、予約指示受信手段が回線リソース予約指示を受信した場合に回線リソースを予約する回線リソース予約手段と、回線リソース予約手段によって予約された回線リソースを記憶する回線リソース記憶手段と、回線リソース予約手段によって回線リソースの予約がされたことを発信側携帯端末に通知する回線リソース予約通知手段と、回線リソース記憶手段に記憶された回線リソースを用いて、発信側携帯端末と着信側端末との間の回線確立を行うことを指示する回線確立指示手段と、を備える。
【0011】
また、本発明に係る通信制御方法は、回線リソースを予約することを指示する回線リソース予約指示を受信する予約指示受信ステップと、予約指示受信ステップにおいて回線リソース予約指示を受信した場合に回線リソースを予約する回線リソース予約ステップと、回線リソース予約ステップによって予約された回線リソースを記憶する回線リソース記憶ステップと、回線リソース予約ステップによって回線リソースの予約がされたことを発信側携帯端末に通知する回線リソース予約通知ステップと、回線リソース記憶ステップにおいて記憶された回線リソースを用いて、発信側携帯端末と着信側端末との間の回線確立を行う回線確立ステップと、を備える。
【0012】
これらの回線リソース管理サーバおよび通信制御方法によれば、回線リソース予約指示を受信した場合に回線リソースが予約され、予約された回線リソースは回線リソース記憶手段に記憶され、回線リソースの予約が成功したことが発信側携帯端末に通知されるとともに、回線リソース記憶手段に記憶された回線リソースを用いて発信側携帯端末と着信側端末との間の回線設定が行われる。よって、発信側携帯端末のユーザは、回線リソースの予約が成功したことを知ることができ、ユーザが再帰的・継続的に発呼を繰り返して回線の輻輳を助長することを防止することができる。
【0013】
また、本発明の回線リソース管理サーバは、回線リソース予約手段によって回線リソースが予約された場合に、予約された回線リソースを用いて発信側携帯端末から着信側端末へ着信が行われることを予告する着信予告を着信側端末に送信する着信予告送信手段をさらに備えていてもよい。
【0014】
この回線リソース管理サーバによれば、予約された回線リソースを用いて発信側携帯端末から着信側端末へ着信が行われることが着信側端末に予告されるため、着信側端末が、予約された回線リソースに対応する時間帯に話中になるなどして、予約された回線リソースに対応する時間帯に回線設定ができなくなることを防ぐことができる。
【0015】
また、本発明の回線リソース管理サーバにおいて、回線リソース記憶手段は、発信側携帯端末を示す発信元情報、着信側端末を示す着信先情報、および発信側携帯端末と着信側端末との間の回線確立が行われる時間帯を示す予約時間帯情報を記憶するリソース管理テーブルを有していてもよい。
【0016】
この回線リソース管理サーバによれば、発信元情報、着信先情報、予約時間帯情報がリソース管理テーブルに記憶されるため、回線リソースの予約管理が容易となる。
【0017】
また、本発明の回線リソース管理サーバにおいて、回線リソース予約手段は、回線確立を行う時刻を回線ごとに分散させて回線リソースを予約してもよい。
【0018】
この回線リソース管理サーバによれば、回線確立を行う時刻を回線ごとに分散させて回線リソースが予約されるため、多くの回線において回線確立が行われる時刻が集中することが防止され、ネットワークの負荷の集中度が分散されて、平準化されたものとなる。
【0019】
また、本発明の回線リソース管理サーバは、回線確立が行われた後、回線リソースの予約された時間帯の終了時刻に達したことを検知する計時手段と、計時手段が終了時刻に達したことを検知した時に回線切断を行う回線切断指示手段と、をさらに備えていてもよい。
【0020】
この回線リソース管理サーバによれば、計時手段が終了時刻に達したことを検知した時に回線切断が行われるため、予約された時間帯を超えて発信側携帯端末と着信側端末との間での回線接続状態が維持されることを防止でき、回線の混雑を緩和することができる。
【0021】
さらに、本発明の通信制御システムは、上記の回線リソース管理サーバと、発信側携帯端末から着信側端末に向けて呼が発生した場合に、着信側端末が回線接続の規制される規制地域に在圏するか否かを判定する着信先判定手段と、着信先判定手段によって着信側端末が規制地域に在圏すると判定された場合に、回線リソース管理サーバに回線リソース予約指示を送信する予約指示送信手段と、を備える。
【0022】
この通信制御システムによれば、着信先判定手段によって着信側端末が規制地域に在圏すると判定された場合に、回線リソース管理サーバに回線リソース予約指示が送信され、回線リソース管理サーバにおいて回線リソース予約指示が受信されて回線リソースが予約され、予約された回線リソースは回線リソース記憶手段に記憶され、回線リソースの予約が成功したことが発信側携帯端末に通知されるとともに、回線リソース記憶手段に記憶された回線リソースを用いて発信側携帯端末と着信側端末との間の回線設定が行われる。よって、発信側携帯端末のユーザは回線リソースの予約が成功したことを知ることができ、ユーザが再帰的・継続的に発呼を繰り返して回線の輻輳を助長することを防止することができる。
【0023】
また、本発明の通信制御システムは、音声自動応答装置をさらに備え、回線リソース管理サーバは、回線リソース予約手段によって回線リソースの予約がされたことを音声自動応答装置に通知し、音声自動応答装置は、通知を受信した場合に、回線リソース管理サーバによって回線リソースの予約が行われたことを、音声を用いて発信側携帯端末に通知してもよい。
【0024】
この通信制御システムによれば、回線リソースの予約が行われたことが、音声自動応答装置から発信側携帯端末に音声を用いて通知されるため、文字表示等の機能を有しない発信側携帯端末においても、ユーザは回線リソースの予約が行われたことを知ることができる。
【0025】
また、本発明の通信制御システムは、電文送信ノードをさらに備え、回線リソース管理サーバは、回線リソース予約手段によって回線リソースの予約がされたことを電文送信ノードに通知し、電文送信ノードは、回線リソース管理サーバによって回線リソースの予約が行われたことを、電文を用いて着信側端末に通知してもよい。
【0026】
この通信制御システムによれば、回線リソースの予約がされたことが電文送信ノードに通知され、回線リソースの予約が行われたことが電文送信ノードにより電文を用いて着信側端末に通知されるため、着信側端末が、予約された回線リソースに対応する時間帯に話中になるなどして、予約された回線リソースに対応する時間帯に回線設定ができなくなることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、規制がなされている地域に向けて発信される呼のために回線リソースを確保し、また、回線リソースを確保したことを発信側ユーザに通知することができるため、ユーザが再帰的・継続的に発呼を繰り返して回線の輻輳を助長することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係る通信制御システム1を示す図である。
【図2】回線リソース管理サーバ10を示す機能ブロック図である。
【図3】回線リソース管理サーバ10を示すハードウェア構成図である。
【図4】リソース管理テーブル11aを示す模式図である。
【図5】リソース管理テーブル11aにおける予約方法を示す図である。
【図6】リソース管理テーブル11aにおける予約方法と負荷の時間変動を示す図である。
【図7】通信制御システム1における回線リソース確保処理を示すシーケンス図である。
【図8】通信制御システム1における回線接続処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
添付図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0030】
図1は、本実施形態に係る通信制御システム1を示す図である。この通信制御システム1は、回線リソース管理サーバ10、発信側MSC(Mobile Switching Center)20、HLR(Home LocationRegister)30、VM(Virtual Machine、仮想サーバ)40、SCP(Service Control Point)50、SMSC(Short MessageService Center)60、着信側MSC70および複数の中継交換機80から構成される。回線リソース管理サーバ10については、図2〜図4を用いて後で詳細に説明する。
【0031】
発信側MSC20は、交換機であり、発信側携帯端末MSからの発信を受けてHLR30に着信在圏確認をし、また、発信側携帯端末MSと他の端末との間の回線交換を行うための装置である。そして、発信側MSC20は、発信側携帯端末MSから着信側端末MRに向けて呼が発生した場合に、着信側端末MRが回線接続の規制される規制地域に在圏するか否かを判定する着信先判定部21(着信先判定手段)と、着信先判定手段によって着信側端末MRが規制地域に在圏すると判定された場合に、回線リソース管理サーバ10に回線リソース予約指示を送信する予約指示送信部22(予約指示送信手段)と、を備える。
【0032】
HLR30は、加入者情報を記憶する管理サーバであって、発信側携帯端末MSや着信側端末MRがどの地域に在圏しているかを示す在圏情報を記憶する管理サーバである。また、HLR30は、発信側MSC20や着信側MSC70などのMSCから、どの端末がどのエリアに在圏しているかの問い合わせを受信し、記憶している在圏情報に基づいて、発信側MSC20や着信側MSC70などのMSCに返信を行う。
【0033】
VM40は、IVR(Interactive Voice Response、音声自動応答装置)であり、発信側携帯端末MSからの問い合わせに対し、トーキ、すなわち自動音声ガイダンスによって応答を行う装置である。
【0034】
SCP50は信号処理ノードであり、回線リソース管理サーバ10からの回線設定指示を受信して、発信側MSC20および着信側MSC70に回線設定指示を送信する装置である。
【0035】
SMSC60は、電文送信ノードであり、回線リソース管理サーバ10からの電文送信指示を受けて、着信側端末MRに対して電文を送信するための装置である。
【0036】
着信側MSC70は交換機であり、着信側端末MRと他の端末との間の回線交換を行うための装置である。
【0037】
中継交換機80は、発信側MSC20と着信側MSC70の間で回線が確立されたときに発信側MSC20と着信側MSC70との間に複数介在する中継交換機である。なお、中継交換機80は、1つの交換網の中において交換機間を交換する中継交換機に限られるものではなく、複数の交換網を接続する関門交換機であってもよい。
【0038】
このような通信制御システム1において、以下の処理が行われる。まず、発信側MSC20は、発信側携帯端末MSからの発呼を受信すると、HLR30に在圏問い合わせを行い、着信側端末MRの在圏確認を行う。次に着信側端末MRが規制の対象地域に在圏することが判明すると、リダイレクトが行われ、発信側MSC20は接続先をVM40へ切り替えられる。次に、VM40は回線リソース管理サーバ10に接続し、回線リソースを確保する。回線リソースが確保されると、VM40は発信側MSC20を介して発信側携帯端末MSに回線リソースが確保されたという情報を通知する。一方、回線リソース管理サーバ10は、着信予告電文の設定をSMSC60に対して行う。SMSC60は着信予告電文を中継交換機80、着信側MSC70を介して着信側端末MRに送信することにより、着信予告を通知する。また、回線リソースが確保された開始時間に達すると、回線リソース管理サーバ10はSCP50に対して回線設定指示を行う。SCP50は、回線設定指示を受けると、発信側MSC20および着信側MSC70に対して回線設定処理を行う。回線設定処理が終了すると、発信側携帯端末MSと着信側端末MRとの間で、発信側MSC20、中継交換機80および着信側MSC70を介して回線が確立する。
【0039】
回線リソース管理サーバ10について、さらに詳細に図2および図3を用いて説明する。図2は回線リソース管理サーバ10を示す機能ブロック図である。回線リソース管理サーバ10は、図2に示すように、記憶部11(回線リソース記憶手段)、通信部12(回線リソース予約通知手段、着信予告送信手段)、リソース予約管理部13(回線リソース予約手段)、電文送信指示部14、回線設定指示部15(回線確立指示手段、回線切断指示手段)およびタイマ16(計時手段)を含んで構成されている。
【0040】
また、図3は、回線リソース管理サーバ10のハードウェア構成図である。回線リソース管理サーバ10は、物理的には、図3に示すように、CPU101、主記憶装置であるRAM102及びROM103、入力デバイスであるキーボード及びマウス等の入力装置104、ハードディスク、フラッシュメモリ等の補助記憶装置105、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスである通信モジュール106、ディスプレイ等の出力装置107などを含むコンピュータシステムとして構成されている。図2に示した各機能は、図3に示すCPU101、RAM102等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで入力装置104、通信モジュール106、出力装置107を動作させるとともに、RAM102や補助記憶装置105におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0041】
記憶部11は、回線リソースの予約状況を記憶する回線リソース記憶手段であって、回線リソースの予約状況を記述したリソース管理テーブル11aを記憶する。
【0042】
ここで、回線リソースの種別について説明する。末端の交換機やアクセス装置においては、限りある回線リソース、すなわち帯域を目的別に予め確保しておく必要がある。一般的には、呼は、用途に応じて次の3つの種別に分類される。第1の種別は一般呼である。第2の種別は1XX系緊急呼およびVIP呼である。第3の種別は予約呼である。帯域全体は、上記の3つの種別に従って分類される。分類された3つの帯域のうち、予約呼用の帯域は、輻輳時のみ有効になる保留帯域である。本実施形態においては、予約呼用の帯域を、リソース管理テーブル11aを用いて管理することにより、回線リソースの予約を可能にする。
【0043】
リソース管理テーブル11aについて、図4を用いて詳しく説明する。図4は、リソース管理テーブル11aを示す模式図である。リソース管理テーブル11aにおいては、回線ごとに、どの時間帯に回線が使用可能で、どの時間帯に回線使用の予約がされているかが記憶されている。より具体的には、リソース管理テーブル11aには、発信側携帯端末MSと着信側端末MRとの間の回線確立が行われる予約時間(開始時刻、終了時刻)を示す予約時間帯情報、発信側携帯端末MSの収容されるMSCや発信側携帯端末MSの電話番号を示す発信元(発信元情報)、着信側端末MRの収容されるMSCや着信側端末MRの電話番号を示す着信先(着信先情報)が記憶されている。
【0044】
また、リソース管理テーブル11aにおける予約管理の方式について、図5を用いて説明する。図5は、リソース管理テーブル11aにおける予約方法を示す図である。この予約管理の方式は2通りある。
【0045】
第1の方式は、図5(a)に示す、負荷分散優先方式である。この負荷分散優先方式は、一定時間内、たとえば15分程度の時間帯の中でランダムに分散して予約を行う方式である。この方式には、ネットワーク負荷を軽減でき、他の呼への回線余裕を維持しやすいという利点がある。
【0046】
一方、第2の方式は、図5(b)に示す、先入先出方式である。この先入先出方式は、空きのある時間帯のうち、最も早い時間帯の回線リソースを、許容回線数の限界まで優先的に予約する方式である。この方式には、早期に回線を提供することができるという利点がある。
【0047】
なお、本実施形態において同時に数千回線のセットアップを行うことを想定した場合には、回線リソース管理サーバ10、SCP50および通信回線等のネットワーク負荷が集中するおそれがある。具体的には、図6(a)のように、回線確立を行う時刻と回線切断を行う時刻とが全ての通信回線において同じ時刻である場合には、ネットワークの負荷は、図6(b)のように集中する場合がある。例えば、集中した時間とその前後とでは、負荷の度合いの差が大きくなる。これに対して、この差を緩和するための対策として、図6(c)のように、回線リソース管理サーバ10において、リソース予約管理部13が、回線確立を行う時刻を回線ごとに少しずつずらすことにより分散させて回線リソースを予約するという手法が考えられる。このようにすれば、図6(d)のように、ネットワークの負荷の集中度が分散されて、平準化されたものとなる。
【0048】
通信部12は、VM40、SCP50およびSMSC60との通信をするための部分である。この通信部12は、回線リソースを予約することを指示する回線リソース予約指示を受信する予約指示受信手段として機能する。
【0049】
リソース予約管理部13は、通信部12によって回線リソースを予約することを指示する回線リソース予約指示が受信された場合に回線リソースの予約をし、予約された回線リソースを記憶部11に記憶させるための部分である。
【0050】
電文送信指示部14は、リソース予約管理部によって回線リソースが予約されたことを通知する電文を送信することをSMSC60に指示する電文送信指示を通信部12に送信させるための部分である。
【0051】
回線設定指示部15は、記憶部11に記憶されたリソース管理テーブル11aにより指定された予約時間における開始時刻に達した時に、SCP50に対して回線設定を行うことを指示する回線設定指示を通信部12に送信させ、また、予約時間における終了時刻に達した時に、SCP50に対して回線切断を行うことを指示する回線切断指示を通信部12に送信させるための部分である。
【0052】
タイマ16は、現在時刻をリソース管理テーブル11aの予約時間と比較し、開始時刻および終了時刻に達したことを検知する部分である。回線設定指示部15は、開始時刻に達したことをタイマ16が検知した時に回線設定指示を通信部12に送信させ、また、終了時刻に達したことをタイマ16が検知した時に回線切断指示を通信部12に送信させる。
【0053】
次に、図7を参照しながら、通信制御システム1における回線リソース確保処理を、説明する。まず、発信側携帯端末MSが発信側MSC20に向けて発信を行う(ステップS1)。次に、発信側MSC20は、着信側端末MRがどのエリアに在圏するのかを確認する着信在圏確認を、HLR30に対して行う(ステップS2)。HLR30は、着信在圏確認に対する応答として、着信在圏応答を発信側MSC20に返す(ステップS3)。
【0054】
発信側MSC20は、着信在圏応答を受信して、着信側端末MRが規制地域に在圏することを認識する(ステップS4)。次に、発信側MSC20は、リダイレクトされて接続先をVM40に切り換えて、VM40に対してIVR接続を行う(ステップS5)。これに対し、VM40は発信側MSC20にIVR接続応答を返す(ステップS6)。ここまでのステップで、発信側携帯端末MSとVM40との間で回線が確立する(ステップS7)。
【0055】
発信側携帯端末MSとVM40との間で回線が確立すると、VM40は、「着信先は規制中です。通話を予約しますか?」などのトーキを発信側携帯端末MSへ向けて送信する(ステップS8)。発信側携帯端末MSのユーザは、トーキを聞いて、発信側携帯端末MSに対し、例えば数字キーを押すなどの操作を行うことにより、通話を予約することの指示を行う。発信側携帯端末MSは、上記のユーザの操作に対応したDTMF信号をVM40へ送出する(ステップS9)。VM40は、DTMF信号を受けるとリソース予約指示を送信し、回線リソース管理サーバ10はリソース予約指示を受信する(ステップS10:予約指示受信ステップ)。回線リソース管理サーバ10は、VM40からリソース予約指示を受けると、リソース予約を行い、回線リソースを確保する(ステップS11:回線リソース予約ステップ、回線リソース記憶ステップ)。より具体的には、通信部12がリソース予約指示を受信し、その予約指示に基づいて、リソース予約管理部13がリソース予約を行い、図4に示すようにリソース管理テーブル11aに回線リソース情報が記憶される。回線リソースが確保されると、回線リソース管理サーバ10はVM40にリソース予約完了応答を返す(ステップS12:回線リソース予約通知ステップ)。なお、所定の時間以内において回線リソースの確保ができなかった場合は、回線リソース管理サーバ10はVM40にエラー応答を返す。また、VM40は、必要に応じて、その旨をトーキで発信側携帯端末MSに通知してもよい。
【0056】
VM40は、リソース予約完了応答を受けると、発信側携帯端末MSに対し、例えば「通話時間はX:XXからX分間です」などの、予約された通話時間帯を通知するトーキを送信する(ステップS13)。なお、VM40は、エラー応答を受けた場合には、例えば「回線の予約ができませんでした」などの、予約が成功しなかったことを通知するトーキを送信する。その後、VM40は発信側携帯端末MSに切断指示を行う(ステップS14)。発信側携帯端末MSは、切断指示を受けて、切断応答を行う(ステップS15)。切断応答が行われることにより、発信側携帯端末MSとVM40との間の回線は切断される。
【0057】
一方、回線リソース管理サーバ10がステップS11において回線リソースを確保すると、回線リソース管理サーバ10は、SMSC60に電文送信指示を行う(ステップS16)。SMSC60は、電文送信指示を受けて、例えば「通話が予約されました。時間はX:XXからX分間です」などの電文を、着信側端末MRに対し送信する(ステップS17)。着信側端末MRは、電文を受信すると、SMSC60に対して暫定応答を返す(ステップS18)。SMSC60は、暫定応答の有無により、電文送信成否を判定し、電文送信成否応答を回線リソース管理サーバ10に対して返す(ステップS19)。
【0058】
次に、図8を参照しながら、通信制御システム1における回線接続処理を説明する。S11において回線リソースが予約された後、回線リソースの予約時間における開始時刻に達すると(ステップS20)、タイマ16は、開始時刻に達したことを検知し、回線リソース管理サーバ10はSCP50に対して回線設定指示を送信する(ステップS21:回線確立指示ステップ)。
【0059】
SCP50は、回線リソース管理サーバ10から回線設定指示を受けると、発信側MSC20に回線設定指示を送信する。(ステップS22)。発信側MSC20は、回線設定指示を受信すると、発信側携帯端末MSを呼び出し、発信側携帯端末MSは発信側MSC20からの呼び出しを着信する(ステップS23)。また、発信側MSC20は回線設定指示を受信すると、SCP50に対して暫定応答を返す(ステップS24)。
【0060】
一方、SCP50は、ステップS21において回線リソース管理サーバ10から回線設定指示を受けると、着信側MSC70に対しても回線設定指示を送信する(ステップS25)。着信側MSC70は、着信側端末MRの在圏が移動している場合にのみ、再度HLR30に対して着信側端末MRの在圏問い合わせを行う(ステップS26)。着信側MSC70は、回線設定指示を受信すると、着信側端末MRを呼び出し、着信側端末MRは着信側MSC70からの呼び出しを着信する(ステップS27)。また、着信側MSC70は回線設定指示を受信すると、SCP50に対して暫定応答を返す(ステップS28)。
【0061】
SCP50は、発信側MSC20と着信側MSC70の双方からの暫定応答を受信すると、回線設定が完了したことの報告を回線リソース管理サーバ10に返す(ステップS29)。そして、発信側携帯端末MSと着信側端末MRとの間で回線確立が行われ(ステップS30)、通話が行われる(ステップS31)。
【0062】
予約時間の終了時刻に達すると(ステップS32)、タイマ16は、終了時刻に達したことを検知し、回線リソース管理サーバ10からSCP50へ回線切断指示が送信される(ステップS33)。SCP50は、回線リソース管理サーバ10からの回線切断指示を受信すると、発信側MSC20へ回線切断指示を送信する(ステップS34)。発信側MSC20は、回線切断指示を受信すると、発信側携帯端末MSに対して切断通知を送信し(ステップS35)、SCP50に暫定応答を返す(ステップS36)。また、SCP50は、ステップS33において回線リソース管理サーバ10から回線切断指示を受信すると、着信側MSC70に対しても回線切断指示を送信する(ステップS37)。着信側MSC70は、回線切断指示を受信すると、着信側端末MRに対して切断通知を送信し(ステップS38)、SCP50に暫定応答を返す(ステップS39)。SCP50は、ステップS36における発信側MSC20からの暫定応答と、ステップS39における着信側MSC70からの暫定応答とを受信すると、回線切断が完了したことの報告を回線リソース管理サーバ10に返す(ステップS40)。
【0063】
以上述べたように、本実施形態の回線リソース管理サーバ10によれば、回線リソース管理サーバ10が回線リソース予約指示を受信した場合に回線リソースが予約され、予約された回線リソースは記憶部11に記憶され、回線リソースの予約が成功したことが発信側携帯端末MSに通知されるとともに、記憶部11に記憶された回線リソースを用いて発信側携帯端末MSと着信側端末MRとの間の回線設定が行われるため、発信側携帯端末MSのユーザは回線リソースの予約が成功したことを知ることができ、ユーザが再帰的・継続的に発呼を繰り返して回線の輻輳を助長することを防止することができる。
【0064】
また、回線リソース管理サーバ10によれば、予約された回線リソースを用いて発信側携帯端末MSから着信側端末MRへ着信が行われることが着信側端末MRに予告されるため、着信側端末MRが、予約された回線リソースに対応する時間帯に話中になるなどして、予約された回線リソースに対応する時間帯に回線設定ができなくなることを防ぐことができる。
【0065】
また、回線リソース管理サーバ10によれば、発信元情報、着信先情報、予約時間帯情報がリソース管理テーブル11aに記憶されるため、回線リソースの予約管理が容易となる。
【0066】
また、回線リソース管理サーバ10によれば、回線確立を行う時刻を回線ごとに分散させて回線リソースが予約されるため、多くの回線において回線確立が行われる時刻が集中することが防止され、ネットワークの負荷の集中度が分散されて、平準化されたものとなる。
【0067】
また、回線リソース管理サーバ10によれば、タイマ16が終了時刻に達したことを検知した時に回線切断が行われるため、予約された時間帯を超えて発信側携帯端末MSと着信側端末MRとの間での回線接続状態が維持されることを防止でき、回線の混雑を緩和することができる。
【0068】
以上、本発明に係る回線リソース管理サーバ、通信制御システムおよび通信制御方法について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
【0069】
例えば、本発明は、LTE(Long Term Evolution)や4G(4th Generation、第4世代移動通信システム)においても適用可能である。この場合、上記の実施形態におけるMSCをP−CSCF(Proxy Call Session Control Function)、IVRをMRF(Media Resource Function)、HLRをHSS(HomeSubscriber Server)、SCPをS−CSCF(Serving Call SessionControl Function)、回線リソース管理サーバを回線リソース管理AS(ApplicationServer)にそれぞれ読み替えることにより、本発明をLTEや4Gにおいても適用できる。
【符号の説明】
【0070】
1…通信制御システム、10…回線リソース管理サーバ、11…記憶部、11a…リソース管理テーブル、12…通信部、13…リソース予約管理部、14…電文送信指示部、15…回線設定指示部、20…発信側MSC、30…HLR、40…VM、50…SCP、60…SMSC、70…着信側MSC、80…中継交換機、MS…発信側携帯端末、MR…着信側端末。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回線リソースを予約することを指示する回線リソース予約指示を受信する予約指示受信手段と、
前記予約指示受信手段が前記回線リソース予約指示を受信した場合に回線リソースを予約する回線リソース予約手段と、
前記回線リソース予約手段によって予約された回線リソースを記憶する回線リソース記憶手段と、
前記回線リソース予約手段によって回線リソースの予約がされたことを発信側携帯端末に通知する回線リソース予約通知手段と、
前記回線リソース記憶手段に記憶された回線リソースを用いて、前記発信側携帯端末と着信側端末との間の回線確立を行うことを指示する回線確立指示手段と、
を備える回線リソース管理サーバ。
【請求項2】
前記回線リソース予約手段によって回線リソースが予約された場合に、予約された回線リソースを用いて前記発信側携帯端末から前記着信側端末へ着信が行われることを予告する着信予告を前記着信側端末に送信する着信予告送信手段をさらに備える請求項1に記載の回線リソース管理サーバ。
【請求項3】
前記回線リソース記憶手段は、前記発信側携帯端末を示す発信元情報、前記着信側端末を示す着信先情報、および前記発信側携帯端末と前記着信側端末との間の回線確立が行われる時間帯を示す予約時間帯情報を記憶するリソース管理テーブルを有する請求項1または2に記載の回線リソース管理サーバ。
【請求項4】
前記回線リソース予約手段は、回線確立を行う時刻を回線ごとに分散させて回線リソースを予約する請求項1〜3のいずれか1項に記載の回線リソース管理サーバ。
【請求項5】
回線確立が行われた後、回線リソースの予約された時間の終了時刻に達したことを検知する計時手段と、
前記計時手段が前記終了時刻に達したことを検知した時に回線切断を行うことを指示する回線切断指示手段と、をさらに備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の回線リソース管理サーバ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の回線リソース管理サーバと、
発信側携帯端末から着信側端末に向けて呼が発生した場合に、前記着信側端末が回線接続の規制される規制地域に在圏するか否かを判定する着信先判定手段と、
前記着信先判定手段によって着信側端末が前記規制地域に在圏すると判定された場合に、前記回線リソース管理サーバに前記回線リソース予約指示を送信する予約指示送信手段と、
を備える通信制御システム。
【請求項7】
音声自動応答装置をさらに備え、
前記回線リソース管理サーバは、前記回線リソース予約手段によって回線リソースの予約がされたことを前記音声自動応答装置に通知し、
前記音声自動応答装置は、前記通知を受信した場合に、前記回線リソース管理サーバによって回線リソースの予約が行われたことを、音声を用いて前記発信側携帯端末に通知する請求項6に記載の通信制御システム。
【請求項8】
電文送信ノードをさらに備え、
前記回線リソース管理サーバは、前記回線リソース予約手段によって回線リソースの予約がされたことを前記電文送信ノードに通知し、
前記電文送信ノードは、前記回線リソース管理サーバによって回線リソースの予約が行われたことを、電文を用いて前記着信側端末に通知する請求項6または7に記載の通信制御システム。
【請求項9】
回線リソースを予約することを指示する回線リソース予約指示を受信する予約指示受信ステップと、
前記予約指示受信ステップにおいて前記回線リソース予約指示を受信した場合に回線リソースを予約する回線リソース予約ステップと、
前記回線リソース予約ステップによって予約された回線リソースを記憶する回線リソース記憶ステップと、
前記回線リソース予約ステップによって回線リソースの予約がされたことを発信側携帯端末に通知する回線リソース予約通知ステップと、
前記回線リソース記憶ステップにおいて記憶された回線リソースを用いて、前記発信側携帯端末と着信側端末との間の回線確立を行うことを指示する回線確立指示ステップと、
を備える通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−93773(P2013−93773A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235290(P2011−235290)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】