説明

回路モジュールの製造方法

【課題】回路モジュールの絶縁樹脂の表面を金属層で被覆したものにおいて、金属層に開口部を形成する工程を簡略化すること。
【解決手段】基板に実装された回路部品を絶縁樹脂で覆った回路モジュール素体を用意する(ステップST101)。回路モジュール素体を構成する絶縁樹脂の表面の少なくとも一部に第1金属層を形成する(ステップST102)。絶縁樹脂の表面に開口部を形成したい部分と、絶縁樹脂の表面に前記第1金属層を残したい部分との間に存在する第1金属層を除去する(ステップST103)。残したい部分の第1金属層に電流を流して、この部分に第2金属層を形成しつつ、開口部を形成する部分の第1金属層を取り除く(ステップST104)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路部品を覆った絶縁樹脂の表面に、開口部を有する金属層を形成することに関する。
【背景技術】
【0002】
回路モジュールは、複数の回路部品、例えば、受動素子や能動素子等を基板に実装して、ひとまとまりの機能を持った回路部品としたものである。例えば、特許文献1には、回路が受光、発光の光電素子を含む場合の光の通路として、回路を覆う樹脂の上面に設けられた金属層に、光を透過させるための窓を設けたものが開示されている。また、特許文献2には、回路部品間を仕切り、絶縁樹脂層の一部にシールド層を設けた回路モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−26651号公報(0009、0013、図2)
【特許文献2】特開2007−157891号公報(0037、図16)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、上述した光を透過させるための窓をフォトエッチングによって形成する旨が開示されている。しかし、フォトエッチングによって窓を形成する場合、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、レジスト除去等の工程が必要になり、手間を要する。また、特許文献2には、絶縁樹脂層の一部にシールド層を設ける方法は言及されておらず、絶縁樹脂の表面を被覆する金属層に開口部を形成する工程を簡略化することについては改善の余地がある。本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、回路モジュールの絶縁樹脂の表面を金属層で被覆したものにおいて、金属層に開口部を形成する工程を簡略化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る回路モジュールの製造方法は、基板に実装された回路部品を絶縁樹脂で覆った回路モジュール素体を用意する工程と、当該回路モジュール素体を構成する前記絶縁樹脂の表面の少なくとも一部に第1金属層を形成する工程と、前記絶縁樹脂の表面から前記第1金属層を除去したい部分と、前記絶縁樹脂の表面に前記第1金属層を残したい部分との間に存在する前記第1金属層を除去する工程と、前記残したい部分の前記第1金属層に電流を流して、当該残したい部分に第2金属層を形成しつつ、前記除去したい部分の前記第1金属層を取り除く工程と、を含むことを特徴とする。
【0006】
この回路モジュールの製造方法は、絶縁樹脂の表面から第1金属層を除去したい部分と、絶縁樹脂の表面に第1金属層を残したい部分との間に存在する第1金属層を除去して、両方の部分を電気的に絶縁する。その後、残したい部分の第1金属層に電流を流して電解めっきすることにより、残したい部分の第1金属層に第2金属層を形成しつつ、除去したい部分の第1金属層を取り除く。これによって、回路モジュールを構成する絶縁層の表面に、開口部を有する金属層を形成する工程を簡略化できる。
【0007】
本発明の望ましい態様としては、前記第1金属層はレーザーで除去されることが好ましい。このように、レーザーを用いることで設備を簡略化できるとともに、レーザーによる描画を制御することで、開口部の寸法や形状が変更された場合でも、容易に対応できる。
【0008】
本発明の望ましい態様としては、前記第2金属層の表面に、さらに第3金属層を形成することが好ましい。これによって、例えば、第2金属層に耐食性の低い材料を用いた場合、耐食性の高い材料の第3金属層で第2金属層を被覆して、第2金属層を保護することができる。
【0009】
本発明の望ましい態様としては、前記第1金属層及び前記第2金属層はCuであり、前記第3金属層はNiであることが好ましい。回路モジュールを構成する絶縁樹脂を金属層で被覆して電磁気シールドとしての機能を発揮させる場合、電気抵抗率の低いCuを用いることが好ましい。しかし、Cuは耐食性が低いため、第1金属層及び第2金属層を耐食性の低いCuで形成し、第3金属層を耐食性の高いNiで形成する。これによって、耐食性の低いCuを耐食性の高いNiで保護することができる。
【0010】
第1金属層、及び第2金属層、及び第3金属を構成する元素はCu及びNiに限定されるものではなく、Au、Ag、Pd、Snを用いてもよい。耐食性をさらに向上させるため、第1金属層〜第3金属層の少なくとも一つを複数の層で構成したり、第3金属層の表面に、耐食性の高い金属層をさらに形成したりしてもよい。また、第1金属層は、無電解Niめっきで形成してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、回路モジュールの絶縁樹脂の表面を金属層で被覆したものにおいて、金属層に開口部を形成する工程を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本実施形態に係る回路モジュールの製造方法によって製造される回路モジュールの一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る回路モジュールの製造方法の工程を示すフローチャートである。
【図3−1】図3−1は、本実施形態に係る回路モジュールの製造方法の説明図である。
【図3−2】図3−2は、本実施形態に係る回路モジュールの製造方法の説明図である。
【図3−3】図3−3は、本実施形態に係る回路モジュールの製造方法の説明図である。
【図3−4】図3−4は、本実施形態に係る回路モジュールの製造方法の説明図である。
【図3−5】図3−5は、本実施形態に係る回路モジュールの製造方法の説明図である。
【図3−6】図3−6は、本実施形態に係る回路モジュールの製造方法の説明図である。
【図3−7】図3−7は、本実施形態に係る回路モジュールの製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態は、本発明を限定するものではない。また、下記の実施形態で開示された構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0014】
図1は、本実施形態に係る回路モジュールの製造方法によって製造される回路モジュールの一例を示す斜視図である。図1に示すように、回路モジュール1は、複数の回路部品2A、2B、2Cを基板3に実装して、ひとまとまりの機能を持つ電子部品としたものである。本実施形態において、回路モジュール1を構成する回路部品2A、2B、2Cとしては、例えば、キャパシタやコイル等の受動素子があるが、ダイオードやトランジスタ等の能動素子も回路部品2A、2B、2Cとして基板3上や基板3内に実装されることがある。また、回路部品2A、2B、2Cは、これらに限定されるものではない。
【0015】
図1に示すように、回路モジュール1は、回路部品2A、2B、2Cと、回路部品2A、2B、2Cが実装される基板3と、回路部品2A、2B、2Cを覆う絶縁樹脂4と、絶縁樹脂4の表面の少なくとも一部を被覆する金属層5とを含んで構成される。図1に示すように、回路モジュール1は、基板3に実装された回路部品2A、2B、2Cが絶縁樹脂4で覆われる。なお、回路モジュール1は、回路部品2A、2B、2Cが搭載される側の基板3の表面(部品実装面という)も同時に絶縁樹脂4で覆われる。このように、回路モジュール1は、絶縁樹脂4で複数の回路部品2A、2B、2C及び部品実装面を覆うことで、基板3及び複数の回路部品2A、2B、2Cを一体化するとともに、強度を確保する。
【0016】
複数の回路部品2A、2B、2Cを覆った絶縁樹脂4の表面には、金属層5が形成される。本実施形態において、金属層5は複数の金属の層で構成される。金属層5は、絶縁樹脂4の表面を被覆することにより、絶縁樹脂4の内部に封入された回路部品2A、2B、2Cを回路モジュール1の外部からの高周波ノイズや電磁波等から遮蔽したり、回路部品2A、2B、2Cから放射される高周波ノイズ等を遮蔽したりする。このように、本実施形態において、金属層5は、電磁気シールドとして機能する。
【0017】
図1に示すように、回路モジュール1は、金属層5に開口部6を有している。開口部6は、回路部品2Bと対向する部分に形成されている。開口部6に金属層5は存在せず、開口部6からは絶縁樹脂4が露出している。回路部品の中には、導電性を有する金属層5が近傍に設けられると電気的な特性が変化するものがある(例えば、コイル)。このため、このような回路部品と対向する部分に開口部6を設け、回路部品の電気的な特性の変化を抑制する。また、例えば、フォトダイオードのような受光素子やLEDのような発光素子を基板3に実装した場合、少なくとも金属層5に光を透過させる部分を設ける必要がある。このような場合には、光を透過させる部分が開口部6となる。
【0018】
絶縁樹脂4の表面を被覆する金属層5に開口部6を設ける場合、開口部6となる部分以外をマスクして、開口部6となる部分の金属層5をエッチングやブラスト処理によって除去する手法が考えられる。しかし、この方法は工程が多くなるため、回路モジュール1の生産性を低下させる。本実施形態に係る回路モジュールの製造方法は、金属層5に開口部6を設ける際の工程を簡略化することにより、回路モジュール1の生産性を向上させるものである。次に、本実施形態に係る回路モジュールの製造方法を説明する。
【0019】
図2は、本実施形態に係る回路モジュールの製造方法の工程を示すフローチャートである。図3−1〜図3−7は、本実施形態に係る回路モジュールの製造方法の説明図である。本実施形態に係る回路モジュールの製造方法により、例えば、図1に示す回路モジュール1を製造するにあたり、ステップST101において、まず、金属層5で絶縁樹脂4を被覆していない回路モジュール素体を用意する。
【0020】
回路モジュール素体を用意するにあたっては、まず、図3−1に示すように、基板3に回路部品2A、2B、2Cを実装する。これは、例えば、回路部品実装装置が回路部品2A、2B、2Cを基板3上に載置し、その後、回路部品2A、2B、2Cが載置された基板3を炉内で加熱する。これによって、回路部品2A、2B、2Cの端子と基板3の端子との間のハンダペーストを溶解させて、両者を接合する。回路部品2A、2B、2Cが基板3に実装されたら、例えば、樹脂充填装置を用いて、図3−2に示すように、絶縁樹脂4で基板3に実装された回路部品2A、2B、2Cを覆う。このような工程によって、図3−2に示すような回路モジュール素体1pが完成する。
【0021】
回路モジュール素体1pが完成したら、ステップST102へ進む。ステップST102において、回路モジュール素体1pを構成する絶縁樹脂4の表面の少なくとも一部に、第1金属層5Aを形成する。本実施形態では、第1金属層5AをCuで構成する。第1金属層5Aを形成するにあたっては、図3−3に示すように、まず、絶縁樹脂4の表面の第1金属層5Aを形成する部分に前処理を施す。
【0022】
本実施形態に係る回路モジュールの製造方法では、第1金属層5Aを無電解めっきで形成するが、第1金属層5Aと絶縁樹脂4との密着性を向上させるために、絶縁樹脂4の表面を粗くする、又はめっきのぬれ性を向上させる等の前処理を施す。この前処理は、例えば、ドライプロセスではUVやプラズマ等、ウエットプロセスでは過マンガン酸やクロム酸、濃硫酸等を用いたエッチングによって、絶縁樹脂4の表面に行われる。ドライプロセスは、絶縁樹脂4の表面におけるめっきのぬれ性を向上させる効果があり、ウエットプロセスは、絶縁樹脂4の表面を粗くする効果がある。前処理が終了すると、図3−3に示すように、絶縁樹脂4の表面4Sが粗くなる、又はめっきのぬれ性が向上する。次に、無電解めっきによって、図3−4に示すように絶縁樹脂4の表面に第1金属層5Aを形成する。第1金属層5Aが形成されたらステップST103に進む。
【0023】
ステップST103においては、絶縁樹脂4の表面から第1金属層5Aを除去したい部分、すなわち、図1に示す開口部6が形成される部分と、絶縁樹脂4の表面に第1金属層5Aを残したい部分との間(境界部分)に存在する第1金属層5Aを除去する。これによって、前記境界部分を顕在化させる。本実施形態では、レーザーを用いて境界部分の第1金属層5Aを除去する。
【0024】
本実施形態において、第1金属層5Aを除去するレーザーにはYAGレーザーを用いる。この他にも、YVOレーザー、FAYbレーザー、COレーザー、グリーンレーザー等を用いることができる。YAGレーザー、YVOレーザー、FAYbレーザー、COレーザーは赤外光であり、グリーンレーザーは可視光である。このうち、YAGレーザーは、コンパクトで低コストであるという利点がある。
【0025】
ステップST103において第1金属層5Aを除去する場合、第1金属層5Aの前記境界部分にレーザー光を照射して図1に示す開口部6の輪郭を描画する。これによって、図3−5に示すように、絶縁樹脂4の表面からは開口部6の輪郭の形に第1金属層5Aが取り除かれて、前記境界部分が顕在化される。顕在化された前記境界部分を境界溝7という。境界溝7は、始点と終点とがつながった無端の連続した溝であり、開口部6の輪郭に沿って形成される。図3−5に示すように、境界溝7は絶縁樹脂4まで到達しており、境界溝7からは絶縁樹脂4が露出している。これによって、境界溝7は、自身で囲む部分の内側と外側とを分離する。この場合、境界溝7の外側における第1金属層5Aの縁部が、図1に示す開口部6の輪郭線となる。
【0026】
ステップST103が終了したら、ステップST104へ進む。ステップST104においては、残したい第1金属層5Aの部分の表面に第2金属層を形成しつつ、除去したい部分、すなわち図1に示す開口部6が形成される部分の第1金属層5Aを取り除く。この場合、本実施形態では、電解めっきによって第2金属層を形成しつつ、不要な第1金属層5Aを取り除く。次に、この方法を説明する。なお、本実施形態においては、第2金属層も第1金属層5Aと同じ材料のCuで構成する。
【0027】
図3−5に示すように、境界溝7が形成された回路モジュール素体1pは、第1金属層5Aを残したい部分、すなわち第2金属層を形成する部分に、直流電源9を介して第2金属材料8が電気的に接続される。この状態で第1金属層5Aと第2金属材料8とをめっき液に浸して第1金属層5Aを残したい部分に電流を流す、すなわち、電解めっきを施すと、第1金属層5Aの表面に第2金属材料8が堆積する。
【0028】
回路モジュール素体1pは、境界溝7によって第1金属層5Aを除去したい部分と残したい部分とが分離されているので、両者は電気的に絶縁されている。このため、第1金属層5Aを除去したい部分に電流は流れないので、この部分に第2金属材料8は堆積しない。めっき液は硫酸銅水溶液、ピロリン酸銅水溶液、シアン化銅水溶液といった第1金属層5Aを構成するCuを溶解させる溶液である。したがって、電解めっき中に電流が流れない部分、すなわち、第1金属層5Aを除去したい部分の第1金属層5Aはめっき液に溶解する。このように、本実施形態では、電解めっきに用いるめっき液を利用したエッチングによって、除去したい部分の第1金属層5Aを除去する。なお、電解めっきを利用したエッチングに加え、他のエッチングを実行することにより、第1金属層5Aを確実に除去できるので好ましい。
【0029】
このように、本実施形態では、第1金属層5Aを残したい部分に電流を流して電解めっきをすることにより、前記残したい部分に第2金属層を形成しつつ、除去したい部分の第1金属層5Aをめっき液に溶解させて取り除く。これによって、図3−6に示すように、第1金属層5Aの残したい部分の表面に第2金属層5Bが形成され、第1金属層5Aを除去したい部分には開口部6が形成される。なお、開口部6からは絶縁樹脂4が露出している。
【0030】
ステップST103において、境界溝7によって第1金属層5Aを除去したい部分と残したい部分とに分離する場合、図3−5に示す境界溝7の幅Wは、電解めっき中において、両者の電気的な絶縁を確保できる程度の大きさとする。この大きさは、50μm以上あればよいが、あまり大きくすると境界溝7の形成に余分なエネルギーと時間とを要するので、大きくとも100μm程度とすることが好ましい。
【0031】
第1金属層5Aは、無電解Niめっきで形成してもよい。この場合、ステップST104の電解めっきにおける、除去したい部分(図1に示す開口部6が形成される部分)の第1金属層5Aを取り除く過程において、Niはめっき液に溶解しにくいため、除去されにくい。したがって、必要な厚さの第2金属層5Bが得られた場合に、Niの第1金属層5Aが回路モジュール素体1pの表面に残っていることがある。この場合、除去したい部分を除いてレジストで覆った後、除去したい部分に残っているNiをエッチングにより除去する。これによって、第1金属層5AをNiの無電解めっきで形成した場合でも、確実に除去したい部分を回路モジュール素体1pから除去できる。
【0032】
図1に示す回路モジュール1に必要な金属層5が第1金属層5A及び第2金属層5Bで構成される場合、ステップST101〜ステップST104までの工程により、絶縁樹脂4の表面を金属層5で被覆するとともに、金属層5の一部に開口部6を形成することができる。第2金属層5Bの表面に、さらに第3金属層を形成する場合は、ステップST105へ進む。そして、図3−7に示すように、第3金属層5Cを形成する。第3金属層5Cは、第2金属層5Bと同様に、電解めっきによって形成される。
【0033】
例えば、本実施形態において、第1金属層5A及び第2金属層5BはCuであり、耐食性が低いので、これらを保護するため、耐食性の高い金属で第2金属層5Bの表面を被覆することがある。この場合、例えば、耐食性の高い金属としてNiを用い、これで第3金属層5Cを形成して第2金属層5Bの表面を被覆する。この場合、第1金属層5Aと第2金属層5Bと第3金属層5Cとで、図1に示す金属層5が構成される。なお、第1金属層5A及び第2金属層5BをCu、第3金属層5CをNiとし、これらで構成される金属層5を電磁気シールドとして用いる場合、例えば、第1金属層5Aの厚さは0.5μm〜1μm、第2金属層5Bの厚さは10μm程度、第3金属層5Cの厚さは2μm〜3μmとなる。
【0034】
上述した工程により、本実施形態に係る回路モジュールの製造方法によって、一部に開口部6を有する金属層5を絶縁樹脂4の表面に形成することができる。また、本実施形態に係る回路モジュールの製造方法によって形成される第1金属層5A及び第2金属層5B及び第3金属層5Cは、いずれも無電解めっき又は電解めっきによって形成される金属膜である。
【0035】
開口部6となる部分以外をレジスト等でマスクし、開口部6となる部分の第1金属層5Aをエッチングによって除去する場合、無電解めっきにより第1金属層5Aを形成した後、次の7工程が必要になる。
(1)電解めっきにより第1金属層5Aの表面に第2金属層5Bを形成する工程。
(2)第2金属層5Bの表面を粗くする前処理の工程。
(3)第2金属層5Bの表面にレジスト(ポジ型)を設ける工程。
(4)第1金属層5A及び第2金属層5Bを残したい部分、すなわち開口部6以外の部分をマスクして、第1金属層5A及び第2金属層5Bを除去する部分、すなわち開口部6となる部分のレジストに露光する工程。
(5)露光された部分のレジストを現像液で除去する現像工程。
(6)レジストから露出した部分、すなわち、開口部6となる部分の第1金属層5A及び第2金属層5Bをエッチングにより除去する工程。
(7)残ったレジストを除去する工程。
【0036】
これに対して、本実施形態に係る回路モジュールの製造方法では、無電解めっきにより第1金属層5Aを形成した後は、第1金属層5Aに境界溝7を形成する工程(ステップST103)と、電解めっきにより第2金属層5Bを形成しつつ開口部6を形成する工程(ステップST104)との2工程で済む。このように、本実施形態に係る回路モジュールの製造方法は、上述したマスク及びエッチングによる方法と比較して、大幅に少ない工程で開口部6を有する金属層5を形成できるので、回路モジュール1の生産性が向上する。
【0037】
また、上述したマスク及びエッチングによる方法は、大掛かりな露光装置やレジスト除去設備、エッチング設備が必要になるが、本実施形態に係る回路モジュールの製造方法は、レーザー描画装置とめっき装置があればよい。これによって、回路モジュール1を製造する際の設備投資を抑えることができる。さらに本実施形態に係る回路モジュールの製造方法は、レーザー描画装置を制御することにより開口部6の寸法や形状を簡単に変更できる。これにより、開口部6の寸法、形状が変更になった場合でも、新たなマスクを用意する必要はないので、設計変更があった場合でも容易に対応できる。なお、本実施形態に係る回路モジュールの製造方法においては、金属層5を構成する金属の種類は上述したものに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明に係る回路モジュールの製造方法は、回路モジュールを構成する絶縁層の表面に、開口部を有する金属層を形成することに有用である。
【符号の説明】
【0039】
1 回路モジュール
1p 回路モジュール素体
2A、2B、2C 回路部品
3 基板
4 絶縁樹脂
4S 表面
5 金属層
5A 第1金属層
5B 第2金属層
5C 第3金属層
6 開口部
7 境界溝
8 第2金属材料
9 直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装された回路部品を絶縁樹脂で覆った回路モジュール素体を用意する工程と、
当該回路モジュール素体を構成する前記絶縁樹脂の表面の少なくとも一部に第1金属層を形成する工程と、
前記絶縁樹脂の表面から前記第1金属層を除去したい部分と、前記絶縁樹脂の表面に前記第1金属層を残したい部分との間に存在する前記第1金属層を除去する工程と、
前記残したい部分の前記第1金属層に電流を流して、当該残したい部分に第2金属層を形成しつつ、前記除去したい部分の前記第1金属層を取り除く工程と、
を含むことを特徴とする回路モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記第1金属層はレーザーで除去される請求項1に記載の回路モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記第2金属層の表面に、さらに第3金属層を形成する請求項1又は2に記載の回路モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記第1金属層及び前記第2金属層はCuであり、前記第3金属層はNiである請求項1から3のいずれか1項に記載の回路モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図3−5】
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【図3−6】
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【図3−7】
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【公開番号】特開2011−155213(P2011−155213A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17151(P2010−17151)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【出願人】(591005394)株式会社太洋工作所 (7)
【Fターム(参考)】