説明

回路付サスペンション基板の製造方法

【課題】 工数および手間の軽減を図りつつ、グランド端子を形成して、製造コストを低減できる、回路付サスペンション基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】 金属基板2の上に、グランド端子13の形成位置にベース開口部3を有するベース絶縁層4を形成し、ベース開口部3内の金属基板2およびベース絶縁層4の上に、金属薄膜5を形成し、その金属薄膜5の上に、導体パターン7を形成する。ベース絶縁層4の上に、導体パターン7を被覆しかつベース開口部3に対向するカバー開口部8を有するカバー絶縁層9を形成する。金属基板2に、ベース開口部3およびその周囲のベース絶縁層4が露出する基板開口部11を形成し、導体パターン7から給電して、カバー開口部8内の導体パターン7の両面に、電解めっき層12を形成し、電解めっき層12と金属基板2とが導通するように、基板開口部11内に金属充填層14を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路付サスペンション基板の製造方法、詳しくは、グランド端子を有する回路付サスペンション基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータおよびその周辺機器などの記憶装置は、伝達速度と精度の向上が、ますます要求されており、そのため、電気信号には、高周波数が用いられる傾向にある。しかし、周波数が高くなると、送信される電気信号にノイズが増加する。
ハードディスクに搭載される回路付サスペンション基板は、金属基板としての金属箔基材の上に、絶縁層が形成され、その絶縁層の上に、導体パターンとしての導体層が形成されている(例えば、特許文献1参照。)ことから、このような回路付サスペンション基板においては、金属基板と導体パターンとの間の電位差が、ノイズの発生原因となる。
【0003】
そのため、回路付サスペンション基板では、そのようなノイズを低減すべく、導体パターンに、金属基板と導通させるためのグランド端子を形成して、そのグランド端子を磁気ヘッドなどの電子部品のグランド端子と接続して、グランド接続できるようにしている。
また、グランド端子には、腐食を防止するために、電解金めっきにより、金めっき層を形成するようにしている。
【0004】
グランド端子に金めっき層を形成するには、図5(a)に示すように、外形加工前の回路付サスペンション基板1を、導体パターン7におけるグランド端子13の形成位置のみが露出されるように、めっきレジスト17で被覆して、その後、図5(b)に示すように、金属基板2から給電して電解金めっきすることにより、導体パターン7におけるグランド端子13の形成位置に金めっき層12を形成した後、図5(c)に示すように、めっきレジスト17を除去するようにしている。なお、図5において、図1に示す部材と同一の部材には、同一の参照符号を付して示している。
【特許文献1】特開平10−265572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の方法では、金属基板2から給電するので、金属基板2に金めっき層12が形成されることを防止するために、回路付サスペンション基板1を、導体パターン7におけるグランド端子13の形成位置を除いて、めっきレジスト17によって、すべて被覆する必要がある。一方、めっきレジスト17を形成し、その後除去するには、めっきレジスト17の貼付、露光、現像および剥離という煩雑な工程を要し、非常に手間がかかり、製造コストの上昇を生じる。
【0006】
本発明の目的は、工数および手間の軽減を図りつつ、グランド端子を形成して、製造コストを低減することのできる、回路付サスペンション基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の回路付サスペンション基板の製造方法は、金属基板を用意する工程、前記金属基板の上に、グランド端子の形成位置に前記金属基板が露出するベース開口部を有するベース絶縁層を形成する工程、前記ベース開口部内の金属基板および前記ベース絶縁層の上に、金属薄膜を形成する工程、前記ベース開口部内の金属薄膜の上を含むように、前記金属薄膜の上に、導体パターンを形成する工程、前記ベース絶縁層の上に、前記導体パターンを被覆し、かつ、前記ベース開口部に対向して前記導体パターンが露出するカバー開口部を有する、カバー絶縁層を形成する工程、前記金属基板に、前記ベース開口部およびその周囲のベース絶縁層が露出する基板開口部を形成する工程、前記導体パターンから給電して、前記カバー開口部内の導体パターンの上に、電解めっき層を形成する工程、前記電解めっき層と前記金属基板とが導通するように、前記基板開口部内に金属充填層を形成する工程を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の回路付サスペンション基板の製造方法では、金属基板に、ベース開口部およびその周囲のベース絶縁層が露出する基板開口部を形成する、つまり、ベース開口部よりも大きな基板開口部を形成するので、金属基板と導体パターンとの導通が遮断される。そして、導体パターンから給電して、カバー開口部内の導体パターンの上に電解めっき層を形成する。そのため、めっきレジストで被覆しなくても、グランド端子の形成位置の導体パターンの上に、電解めっき層を形成することができ、その後、金属充填層を形成することにより、グランド端子を形成することができる。その結果、工数および手間の軽減を図りつつ、グランド端子を形成して、製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の回路付サスペンション基板の製造方法の一実施形態を示す製造工程図である。
図1において、この方法では、まず、図1(a)に示すように、金属基板2を用意する。金属基板2としては、特に制限されず、例えば、金属箔または金属薄板が用いられる。また、金属基板2を形成するための金属としては、例えば、ステンレス、42アロイ、アルミニウム、銅−ベリリウム、りん青銅などが用いられ、好ましくは、ステンレスが用いられる。また、その厚さが、10〜60μm、好ましくは、15〜30μmである。
【0010】
次いで、この方法では、図1(b)に示すように、金属基板2の上に、ベース絶縁層4を、後述するグランド端子13の形成位置において金属基板2の表面を露出させるベース開口部3が形成されるような、所定パターンで形成する。
ベース絶縁層4を形成するための絶縁体としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などの合成樹脂が用いられる。これらのうち、感光性の合成樹脂が好ましく用いられ、感光性ポリイミド樹脂がさらに好ましく用いられる。
【0011】
例えば、感光性ポリイミド樹脂を用いて、金属基板2の上に、ベース絶縁層4をベース開口部3を含む所定パターンで形成する場合には、まず、図3(a)に示すように、感光性ポリイミド樹脂の前駆体(ポリアミック酸樹脂)の溶液を、予め用意された金属基板2の全面に塗工した後、例えば、60〜150℃、好ましくは、80〜120℃で加熱することにより、感光性ポリイミド樹脂の前駆体の皮膜15を形成する。
【0012】
次に、図3(b)に示すように、その皮膜15を、フォトマスク16を介して露光させ、必要により露光部分を所定温度に加熱した後、現像することにより、図3(c)に示すように、皮膜15をベース開口部3を含む所定パターンに形成する。なお、フォトマスク16を介して照射する照射線は、その露光波長が、例えば、300〜450nm、好ましくは、350〜420nmであり、その露光積算光量が、例えば、100〜1200mJ/cm2、好ましくは、200〜1200mJ/cm2である。
【0013】
また、照射された皮膜15の露光部分は、例えば、130℃以上150℃未満で加熱することにより、次の現像処理において可溶化(ポジ型)し、また、例えば、150℃以上180℃以下で加熱することにより、次の現像処理において不溶化(ネガ型)する。また、現像は、例えば、アルカリ現像液などの公知の現像液を用いて、浸漬法やスプレー法などの公知の方法によって処理する。なお、この方法においては、ネガ型でパターンを得ることが好ましく、図3においては、ネガ型でパターンニングする態様として示されている。
【0014】
そして、図3(d)に示すように、このようにしてパターン化された感光性ポリイミド樹脂の前駆体の皮膜15を、例えば、最終的に250℃以上に加熱することによって、硬化(イミド化)させ、これによって、ポリイミド樹脂からなるベース絶縁層4を、ベース開口部3を含む所定パターンで形成する。
なお、感光性の合成樹脂を用いない場合には、例えば、金属基板2の上に、合成樹脂を、所定パターンで塗工またはドライフィルムとして貼着する。この場合において、ベース開口部3は、塗工または貼着後に、あるいは、ドライフィルムの場合には貼着前に、例えば、打ち抜き、ドリル穿孔、レーザ穿孔、エッチングなどの公知の方法により形成する。
【0015】
また、このようにして形成されるベース絶縁層4の厚みは、例えば、2〜30μm、好ましくは、5〜20μmである。また、ベース開口部3の形状は特に制限されず、円形、矩形など適宜選択することができ、円形の場合には、その直径が、例えば、30〜2000μm、好ましくは、60〜1000μmであり、矩形の場合には、その一辺の長さが、例えば、30〜2000μm、好ましくは、60〜1000μmである。
【0016】
次いで、この方法では、図1(c)に示すように、ベース絶縁層4の全面と、ベース絶縁層4のベース開口部3から露出する金属基板2の表面とに、アディティブ法の種膜となる金属薄膜5を形成する。
金属薄膜5の形成は、真空蒸着法、とりわけ、スパッタ蒸着法が好ましく用いられる。また、金属薄膜5となる金属は、クロムや銅などが好ましく用いられる。より具体的には、例えば、ベース絶縁層4の全面と、ベース絶縁層4のベース開口部3から露出する金属基板2の表面とに、クロム薄膜と銅薄膜とをスパッタ蒸着法によって、順次形成する。なお、クロム薄膜の厚みが、好ましくは、100〜600Å、銅薄膜の厚みが、好ましくは、500〜2000Åである。
【0017】
次いで、図1(d)〜(g)に示すように、金属薄膜5の上に導体パターン7を形成する。この導体パターン7は、磁気ヘッド(図示せず。)に対して出入力される電気信号を伝達するための信号配線パターンと、磁気ヘッドのグランド端子(図示せず。)と、後述するグランド端子13とに接続されるグランド配線パターンとが含まれる。グランド配線パターンは、グランド端子13の形成位置を含み、グランド端子13の形成位置において、ベース開口部3内に導体が充填される。
【0018】
導体パターン7を形成するための導体としては、例えば、銅、ニッケル、金、はんだ、またはこれらの合金などが用いられ、好ましくは、銅が用いられる。
導体パターン7を、上記した配線パターンとして形成するには、アディティブ法が用いられ、例えば、まず、図1(d)に示すように、金属薄膜5の上に、配線パターンと反転するパターンのめっきレジスト6を形成する。めっきレジスト6は、例えば、ドライフィルムレジストなどを用いて露光および現像する公知の方法により、レジストパターンとして形成する。次いで、図1(e)に示すように、めっきレジスト6から露出する金属薄膜5の上に、電解めっき、好ましくは、電解銅めっきにより、上記した配線パターンで導体パターン7を形成する。
【0019】
導体パターン7の厚みは、例えば、2〜15μm、好ましくは、5〜10μmである。
そして、図1(f)に示すように、めっきレジスト6を、例えば、化学エッチング(ウェットエッチング)などの公知のエッチング法または剥離によって除去する。
その後、図1(g)に示すように、導体パターン7から露出する金属薄膜5(つまり、めっきレジスト6が形成されていた部分の金属薄膜5)を、同じく、化学エッチング(ウェットエッチング)など公知のエッチング法により除去する。
【0020】
次いで、この方法では、図1(h)に示すように、導体パターン7を被覆するためのカバー絶縁層9を、ベース開口部3に対向する導体パターン7を露出させるカバー開口部8が形成されるような、所定パターンで形成する。カバー絶縁層9を形成するための絶縁体としては、例えば、ベース絶縁層4と同様の絶縁体が用いられ、好ましくは、感光性ポリイミド樹脂が用いられる。
【0021】
そして、例えば、感光性ポリイミド樹脂を用いて、カバー絶縁層9を形成する場合には、図4(a)に示すように、導体パターン7を被覆するようにベース絶縁層4の上に、感光性ポリイミド樹脂の前駆体(ポリアミック酸樹脂)の溶液を塗工した後、例えば、60〜150℃、好ましくは、80〜120℃で加熱することにより、感光性ポリイミド樹脂の前駆体の皮膜18を形成する。次に、図4(b)に示すように、その皮膜18を、フォトマスク19を介して露光させ、必要により露光部分を所定の温度に加熱した後、現像することにより、図4(c)に示すように、皮膜18を、導体パターン7を被覆し、かつカバー開口部8を含む所定パターンに形成する。なお、この露光および現像の条件は、ベース絶縁層4を露光および現像する条件と同様の条件でよい。また、ネガ型でパターンを得ることが好ましく、図4においては、ネガ型でパターンニングする態様として示されている。
【0022】
そして、図4(d)に示すように、このようにしてパターン化された感光性ポリイミド樹脂の前駆体の皮膜18を、例えば、最終的に250℃以上に加熱することによって、硬化(イミド化)させ、これによって、ポリイミド樹脂からなるカバー絶縁層9を、導体パターン7を被覆するようにベース絶縁層4の上に形成する。
なお、感光性の合成樹脂を用いない場合には、例えば、ベース絶縁層4の上に、合成樹脂を、所定パターンで塗工またはドライフィルムとして貼着する。この場合において、カバー開口部8は、塗工または貼着後に、あるいは、ドライフィルムの場合には貼着前に、例えば、打ち抜き、ドリル穿孔、レーザ穿孔、エッチングなどの公知の方法により形成する。カバー絶縁層9の厚みは、例えば、1〜30μm、好ましくは、2〜5μmである。また、カバー開口部8の形状は特に制限されず、例えば、ベース開口部3と同一の形状および大きさで形成すればよい。
【0023】
そして、この方法では、グランド端子13を形成するために、図2(i)に示すように、まず、ベース開口部3およびその周囲のベース絶縁層4と対向する金属基板2の部分を除いて、金属基板2をエッチングレジスト10により被覆する。エッチングレジスト10は、例えば、ドライフィルムレジストなどを用いて、露光および現像する公知の方法によりレジストパターンとして形成する。
【0024】
次いで、この方法では、図2(j)に示すように、エッチングレジスト10から露出した金属基板2の部分を除去して、基板開口部11を形成する。エッチングレジスト10から露出した金属基板2の部分の除去は、例えば、化学エッチング(ウェットエッチング)などの公知のエッチング法が用いられる。
この基板開口部11は、ベース開口部3およびその周囲のベース絶縁層4が露出するように、つまり、基板開口部11の周端縁が、ベース開口部3から露出する金属薄膜5の周端縁と接触しないように、ベース開口部3よりも大きく開口される。これによって、次に電解めっき層12を形成するときに、金属基板2の表面に電解めっき層12が形成されることを、防止することができる。
【0025】
また、基板開口部11の形状は特に制限されず、円形、矩形など適宜選択することができ、好ましくは、ベース開口部3の相似形状(例えばベース開口部3を100%とした場合に、120〜1000%の相似形状)に形成する。
次いで、この方法では、図2(k)に示すように、エッチングレジスト10を、化学エッチング(ウェットエッチング)などの公知のエッチング法または剥離によって除去する。
【0026】
そして、この方法では、図2(l)に示すように、導体パターン7を電解めっきのリード部として利用して、カバー開口部8から露出した導体パターン7の表面に、電解めっきにより電解めっき層12を形成する。なお、電解めっき層12は、基板開口部11から露出した金属薄膜5の表面にも形成される。電解めっきに用いられる金属としては、例えば、銅、ニッケル、クロム、金などが用いられ、好ましくは、ニッケル、金などが用いられる。そして、導体パターン7から給電して、電解めっき、好ましくは、電解ニッケルめっきおよび/または電解金めっきすることにより、好ましくは、ニッケルおよび/または金からなる電解めっき層12を形成する。
【0027】
なお、この電解めっきにおいては、上記したように、導体パターン7(金属薄膜5)と金属基板2とが接触していないので、導体パターン7から給電しても金属基板2の表面には電解めっき層12が形成されず、そのため、金属基板2の表面をめっきレジスト17(図5参照)で被覆する手間を省略することができる。なお、電解めっき層12の厚みは、例えば、0.2〜6μm、好ましくは、0.5〜4μmである。
【0028】
次いで、この方法では、図2(m)に示すように、基板開口部11から露出した金属薄膜5の表面に形成された電解めっき層12と金属基板2とが電気的に導通するように、基板開口部11内に金属充填層14を形成することにより、グランド端子13を形成し、これによって、回路付サスペンション基板1を得る。金属充填層14は、例えば、はんだペーストを、スクリーン印刷により基板開口部11内に充填した後、加熱して、はんだを溶融することによって形成する。金属充填層14は、基板開口部11内における電解めっき層12と金属基板2との隙間に充填され、それらを電気的に導通させることができれば、その厚みは特に制限されないが、好ましくは、金属基板2と同一の厚みに形成される。
【0029】
そして、このような回路付サスペンション基板1の製造方法によれば、図2(l)に示すように、基板開口部11をベース開口部3よりも大きく開口するので、カバー開口部8から露出した導体パターン7の表面に、導体パターン7から給電して電解めっき層12を形成するときに、回路付サスペンション基板1の全体をめっきレジスト17で被覆する必要がなく、工数および手間の軽減を図りつつ、グランド端子13を形成することができ、製造コストを低減することができる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例に限定されることはない。
回路付サスペンション基板の作製
厚さ20μmのステンレス箔(図1(a)参照)の上に、ポリアミック酸樹脂の溶液を塗工した後、100℃で加熱することにより、ポリアミック酸樹脂の皮膜を形成し(図3(a)参照)、次いで、その皮膜を、フォトマスクを介して露光(405nm、650mJ/cm2)させ(図3(b)参照)、露光部分を180℃に加熱した後、アルカリ現像液を用いて現像することにより、その皮膜をネガ型の画像で、ベース開口部を含むパターンに形成した(図3(c)参照)。
【0031】
次いで、パターン化されたポリアミック酸樹脂の皮膜を、360℃で加熱して、硬化(イミド化)させ(図3(d)参照)、これによって、厚さ10μmのポリイミド樹脂からなるベース絶縁層を、ベース開口部を含む所定パターンで形成した(図1(b)参照)。なお、ベース開口部は、円状で、その大きさは、直径200μmであった。
次いで、ベース絶縁層の全面と、ベース絶縁層のベース開口部から露出する金属基板の表面とに、厚さ300Åのクロム薄膜と厚さ600Åの銅薄膜とをスパッタ蒸着法によって順次形成した後(図1(c)参照)、その上に、導体パターンと反転するパターンのめっきレジストを、ドライフィルムレジストを用いて形成し(図1(d)参照)、次いで、めっきレジストから露出する金属基板の上に、電解銅めっきにより、導体パターンを形成した(図1(e)参照)。その後、めっきレジストを、化学エッチングによって除去した後(図1(f)参照)、めっきレジストが形成されていた部分のクロム薄膜および銅薄膜を、化学エッチングにより除去した(図1(g)参照)。なお、この導体パターンは、厚さ10μmの、信号配線パターンとグランド配線パターンとが含まれる配線パターンとして形成した。
【0032】
次いで、導体パターンを含むベース絶縁層の表面に、ポリアミック酸樹脂の溶液を塗工した後、100℃で加熱することにより、ポリアミック酸樹脂の皮膜を形成し(図4(a)参照)、次いで、皮膜をフォトマスクを介して露光(405nm、1200mJ/cm2)させ(図4(b)参照)、露光部分を180℃に加熱した後、アルカリ現像液を用いて現像することにより、この皮膜を、導体パターンを被覆し、かつカバー開口部を含む所定パターンに形成した(図4(c)参照)。次いで、パターン化されたポリアミック酸樹脂の皮膜を、360℃で加熱して、硬化(イミド化)させ(図4(d)参照)、これによって、厚さ4μmのポリイミド樹脂からなるカバー絶縁層を、カバー開口部を含む所定パターンで、ベース絶縁層の上に形成した。
【0033】
その後、ステンレス箔の表面に、ドライフィルムレジストからなるエッチングレジストをラミネートし、露光および現像して、ベース開口部およびその周囲のベース絶縁層と対向するステンレス箔の部分を除く、レジストパターンとして形成した(図2(i)参照)。エッチングレジストから露出するステンレス箔を化学エッチングし(図2(j)参照)、その後、化学エッチングによりエッチングレジストを除去することにより、円状の直径500μmの大きさの基板開口部を形成した(図2(k)参照)。次いで、導体パターンを電解めっきのリード部として利用して、カバー開口部から露出した導体パターンの表面および基板開口部から露出した金属薄膜の表面に、厚さ2μmの金めっき層を形成した(図2(l)参照)。
【0034】
その後、基板開口部から露出した金属薄膜の表面に形成された金めっき層と、ステンレス箔とが電気的に導通するように、基板開口部内に、はんだペーストを充填してリフローし、金属充填層を形成することにより、グランド端子を有する回路付サスペンション基板を得た(図2(m)参照)。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の回路付サスペンション基板の製造工程の一実施形態を示す工程図であって、(a)は、金属基板を用意する工程、(b)は、金属基板の上に、ベース開口部が形成されるベース絶縁層を所定パターンで形成する工程、(c)は、ベース絶縁層の全面と、ベース開口部から露出する金属基板の表面とに、金属薄膜を形成する工程、(d)は、金属薄膜の上に、導体パターンと反転するパターンのめっきレジストを形成する工程、(e)は、導体パターンを形成する工程、(f)は、めっきレジストを除去する工程、(g)は、導体パターンから露出する金属薄膜を、エッチングにより除去する工程、(h)は、カバー絶縁層をカバー開口部が形成される所定パターンで形成する工程を示す。
【図2】図1に続いて、回路付サスペンション基板の製造方法の一実施形態を示す工程図であって、(i)は、金属基板に、ベース開口部およびその周囲のベース絶縁層と対向する金属基板の部分を除いて、エッチングレジストを形成する工程、(j)は、エッチングレジストから露出した金属基板の部分を、エッチングにより除去する工程、(k)は、エッチングレジストを除去する工程、(l)は、カバー開口部から露出した導体パターンの表面に、電解めっき層を電解めっきにより形成する工程、(m)は、基板開口部内に金属充填層を形成する工程を示す。
【図3】図1(b)におけるベース絶縁層を所定パターンで形成する工程の詳細を説明する工程図であって、(a)は、金属基板の上に皮膜を形成する工程、(b)は、皮膜を露光する工程、(c)は、皮膜を現像する工程、(d)は、皮膜を硬化させる工程を示す。
【図4】図1(h)におけるカバー絶縁層を所定パターンで形成する工程の詳細を説明する工程図であって、(a)は、導体パターンを被覆するようにベース絶縁層の上に皮膜を形成する工程、(b)は、皮膜を露光する工程、(c)は、皮膜を現像する工程、(d)は、皮膜を硬化させる工程を示す。
【図5】従来の回路付サスペンション基板の製造方法の一実施形態を示す工程図であって、(a)は、外形加工前の回路付サスペンション基板を、導体パターンにおけるグランド端子の形成位置のみが露出されるように、めっきレジストで被覆する工程、(b)は、金属基板から給電して電解めっきすることにより、導体パターンにおけるグランド端子の形成位置にめっき層を形成する工程、(c)は、めっきレジストを除去する工程を示す。
【符号の説明】
【0036】
1 回路付サスペンション基板
2 金属基板
3 ベース開口部
4 ベース絶縁層
5 金属薄膜
7 導体パターン
8 カバー開口部
9 カバー絶縁層
11 基板開口部
12 電解めっき層
13 グランド端子
14 金属充填層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板を用意する工程、
前記金属基板の上に、グランド端子の形成位置に、前記金属基板が露出するベース開口部を有するベース絶縁層を形成する工程、
前記ベース開口部内の金属基板および前記ベース絶縁層の上に、金属薄膜を形成する工程、
前記ベース開口部内の金属薄膜の上を含むように、前記金属薄膜の上に、導体パターンを形成する工程、
前記ベース絶縁層の上に、前記導体パターンを被覆し、かつ、前記ベース開口部に対向して前記導体パターンが露出するカバー開口部を有する、カバー絶縁層を形成する工程、
前記金属基板に、前記ベース開口部およびその周囲のベース絶縁層が露出する基板開口部を形成する工程、
前記導体パターンから給電して、前記カバー開口部内の導体パターンの上に、電解めっき層を形成する工程、
前記電解めっき層と前記金属基板とが導通するように、前記基板開口部内に金属充填層を形成する工程
を備えていることを特徴とする、回路付サスペンション基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−12205(P2006−12205A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183435(P2004−183435)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】