説明

回路基板構造

【課題】回路基板に半導体部品をフリップチップ実装し、半導体部品と回路基板の間にアンダーフィル樹脂の注入する発振器構造において、アンダーフィル樹脂の流れ込みを疎外することのない回路基板構造を提供する。
【解決手段】回路基板30の一方主面に半導体部品3が配置されたキャビティー部を有する容器体の、他方主面に水晶振動子を配置し、水晶振動子を気密封止して成る水晶発振器を用い、回路基板30に半導体部品3をフリップチップ実装し、半導体部品3と回路基板30の間にアンダーフィル樹脂を注入する回路基板構造において、回路基板30の一方主面の半導体部品3を搭載する面に形成する半導体部品3との導通パッド32と水晶振動子2のモニター電極パッド31のパッド形状を、回路基板30の端面方向に向かって頂点を持つ略菱形形状にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用通信機器等の電子機器に用いられる水晶発振器等の回路基板に半導体部品をフリップチップ実装し、半導体部品と回路基板との間にアンダーフィル樹脂を注入する回路基板構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯用通信機器等の電子機器に水晶発振器が用いられている。
【0003】
かかる従来の水晶発振器としては、例えば図1、図5に示す如く、回路基板30の上下面にキャビティー部10、20を有する容器体1の上面に、水晶振動子2を実装して気密封止し、且つ前記キャビティー部10内に、水晶振動子2の温度補償を行なうため半導体部品3を収容してなる温度補償型の水晶発振器であって、キャビティー部10の内表面に、水晶振動子2に接続する正方形状のモニター電極パッド51を形成した温度補償型水晶発振器が開示してある。図1はその断面図、図5はキャビティー部10の底面の配線パターン概略図である。
【0004】
上述の構造により、容器体1の表面に水晶振動子2を実装し、底面側に半導体部品3を実装しているため、表面面積の小さい小型な温度補償型水晶発振器ができる。また、水晶振動子2と半導体部品3とを全く異なる領域に収容することができるため、水晶振動子2の発振動作を長期にわたり安定させることができる。また、水晶振動子2の発振特性を測定するモニター電極パッド51がキャビティー部10の底面に形成され、容器体1の外表面に露出していない。このため、水晶振動子2が外部と遮断されることからも、外部要因による動作不良は発生しない。また、モニター電極パッド51を用いることにより、水晶振動子2の単独の発振特性を、半導体部品3の実装前に単独で測定することができる。水晶振動子2の周波数調整や温度補償データの選択が非常に簡単になる。水晶振動子2の発振特性の不良を製造工程中に簡単に検出できるため、半導体部品3の無駄な消費、無駄な製造工程の未実施により、安価な温度補償型水晶発振器となる。また、容器体1の表面に水晶振動子2を実装した後に、半導体部品3を実装しているので、水晶振動子2の周波数安定化のために行なう熱処理が、半導体部品3に印加されず、半導体部品3の動作信頼性や接続信頼性を高めることができる。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開2000−77941号公報 なお、出願人は前記した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を、本件出願時までに発見するに至らなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の水晶発振器のモニター電極パッド51を容器体1の底面側に形成する場合、回路基板30に半導体部品3をフリップチップ実装し、半導体部品3と回路基板30の間にアンダーフィル樹脂5を注入する工程において、モニター電極パッド51部分にアンダーフィル樹脂5の流れ込みが悪く、モニター電極パッド51からアンダーフィル樹脂5の剥離が起こるという虞があった。即ち従来のモニター電極パッド51の構造では、樹脂の注入する方向に対してモニター電極パッド51が垂直の角度となるように配置されているため、アンダーフィル樹脂5がモニター電極パッド51の段差部分が障壁となり、モニター電極パッド51にアンダーフィル樹脂5が進入しにくい構造となっていた。
【0006】
本発明は上記欠点に鑑み考え出されたものであり、従ってその目的は、回路基板30に半導体部品3をフリップチップ実装し、半導体部品3と回路基板30の間にアンダーフィル樹脂5の注入する発振器構造において、アンダーフィル樹脂5の流れ込みを疎外することのない回路基板構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の回路基板構造において、回路基板の一方主面に半導体部品が配置されたキャビティー部を有する容器体の、他方主面に水晶振動子を配置し、該水晶振動子を気密封止して成る水晶発振器を用い、前記回路基板に半導体部品をフリップチップ実装し、該半導体部品と前記回路基板の間にアンダーフィル樹脂を注入する回路基板構造において、
前記回路基板の一方主面の半導体部品を搭載する面に形成する半導体部品との導通パッドと水晶振動子のモニター電極パッドのパッド形状を、容器体端面方向に向かって頂点を持つ略菱形形状にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の回路基板構造によれば、回路基板の一方主面に半導体部品が配置されたキャビティー部を有する容器体の、他方主面に水晶振動子を配置し、該水晶振動子を気密封止して成る水晶発振器を用い、前記回路基板に半導体部品をフリップチップ実装し、該半導体部品と前記回路基板の間にアンダーフィル樹脂を注入する回路基板構造において、前記回路基板の一方主面の半導体部品を搭載する面に形成する半導体部品との導通パッドと水晶振動子のモニター電極パッドのパッド形状を、容器体端面方向に向かって頂点を持つ略菱形形状にしたことから、アンダーフィル樹脂のモニター電極パッドへの流れ込みがスムーズにすることが可能となる。即ち、樹脂の注入する方向に対してモニター電極パッドの角部が配置されており、角部が鋭角であるため、モニター電極パッドが障壁とならずアンダーフィル樹脂が入りやすい構造となっている。また、モニター電極パッドに測定用ピンを当てて測定する際、モニター電極パッドの中心付近の面積が広く、モニター電極パッドから、容器体端面方向に向かうにしたがってモニター電極パッドの面積も狭くなるような構造であるため、モニター電極パッドの中心に測定用ピンを当てやすい構造となっている。
また、上述のような菱形形状とすることで、モニター電極パッドの総面積を小さくできるため、回路基板とアンダーフィル樹脂の接着強度が強固となり、接続信頼性の向上が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図においての同一の符号は同じ対象を示すものとする。
【0010】
図1は本発明の回路基板30を水晶発振器に適用した場合に得られる本発明の実施形態にかかる水晶発振器の断面図である。
図1において、温度補償型水晶発振器は、上面(以下、表面という)及び下面(以下、底面という)側に凹部状キャビティー部10、20が形成された概略直方体状の容器体1、矩形状の水晶振動子2、制御回路を構成する半導体部品3、金属製蓋体4及びアンダーフィル樹脂5とから主に構成されている。
【0011】
容器体1は、複数の略矩形状のセラミック絶縁層1b、1c、略矩形状の開口を有する概略枠状セラミック絶縁層1a、1dが一体的に積層されて構成されている。そして、セラミック絶縁層1b、1cは、水晶振動子2が収容される領域と半導体部品3が収容される領域を仕切る仕切部となり、また、セラミック絶縁層1aは水晶振動子2を搭載する面の側壁となり、これにより、仕切部の表面と、該表面と側壁とに囲まれた凹部状のキャビティー部20が構成され、また1dは枠状となる脚部となり、これにより、仕切部の底面と、該底面と枠状脚部とに囲まれた凹部状のキャビティー部10が構成される。
そして、容器体1の底面の4つの隅部には、各々外部端子電極11〜14が形成されている。また、容器体1の側面には、必要に応じて、半導体部品3の動作制御を行うための端子電極15〜18が形成されている。
【0012】
また、容器体1の表面の水晶振動子2の収容領域内には、水晶振動子用電極パッド21が形成されており、容器体1のキャビティー部10の内部には、IC接続用導通パッド32、さらに、導通パッド32と接続する配線パターンが形成されている。
また、容器体1を構成するセラミック層1a〜1dの層間又はセラミック層1a〜1dの厚み方向には、上述の導通パッド32と外部端子電極11〜14、端子電極15〜18とを接続する配線パターンが形成されている。上述の容器体1は、セラミック絶縁層1a〜1dとなるセラミックグリーンシートを用いて形成する。具体的には、絶縁層1a〜1dとなるセラミックグリーンシートを所定形状に成型し、また、配線パターンに応じて貫通孔を形成し、モリブデンやタングステンなどの高融点金属ペーストで貫通孔を充填すると同時に、表面に各種電極パッドや端子電極、配線パターンとなる導体膜を高融点金属ペーストの印刷により形成する。次に、このようなグリーンシートを積層・圧着した後、焼成処理を行う。
次に、容器体1に表面に露出する各外部端子電極11〜14、各端子電極15〜18、電極パッド21、導通パッド32、及び各種配線パターンにNiメッキ、フラッシュ金メッキなどを施して容器体1が完成する。即ち、容器体1の表面に露出する各種電極パッド、配線パターン、端子電極は、Auメッキ皮膜されていることになる。
【0013】
上述のような容器体1の表面には、水晶振動子2が導電性接着材を介して配置されている。水晶振動子2は、所定カット、例えばATカットされた矩形状の水晶板の両主面に形成された振動電極、該振動電極から一方他端部に延出された島状の引出電極部とから構成されている。そして、水晶振動子2は、水晶振動子用電極パッド21、とバンプ部材22を介して導電性接着材を介して接続される。
【0014】
容器体1の表面側に実装された水晶振動子2は金属製蓋体4によって気密的に封止されている。金属製蓋体4は、コバールや42アロイなどの金属材料からなり、例えば0.1mmの厚みである。
半導体部品3は、例えば発振器の制御を行うものであり、例えば、増幅手段、温度補償手段、感応手段を具備している。増幅手段として増幅用インバータなどが例示でき、温度補償手段は、演算手段、温度補償データの記憶手段、バリキャップダイオード、負荷容量、抵抗手段などを具備している。このような半導体部品3は、例えば半導体部品3の表面または底面の電極にバンプ部材を形成し、このバンプ部材とIC接続用導通パッド32との間に、超音波ボンディングや導電性接着剤を介したフェースボンディングによって接合される。また、半導体部品3をダイ接続して、ワイヤでボンディングしても構わない。そして、半導体部品3は、容器体1の矩形状の底面に設けられたキャビティー部10に収容されており、このキャビティー部10によって区画された容器体下面の4隅部に4個の外部端子電極11〜14を配置させている
【0015】
図2は1個の回路基板30に形成されたキャビティー部10を底面側から見た場合の上面図である。また、図3はその回路基板30に半導体部品3を搭載した場合の上面図である。
図2、図3において、11〜14は外部端子電極、15〜18は容器体1の側面に形成された端子電極を示している。また、31が本発明の特徴部分であるモニター電極パッド、32が半導体部品3との接続用の導通パッドである。
【0016】
図2、図3に図示するように本発明の特徴部分は、モニター電極パッド31と導通パッド32のパッド形状を、容器体1端面方向に向かって頂点を持つ菱形形状にしたことである。これによりアンダーフィル樹脂5のモニター電極パッド31への流れ込みをスムーズにすることが可能となる。また、モニター電極パッド31に測定用ピンを当てて測定する際、モニター電極パッド31の中心付近の面積が広く、モニター電極パッド31から、容器体1の端面方向に向かうにしたがってモニター電極パッド31の面積も狭くなるような構造のためモニター電極パッド31の中心に測定用ピンを当てやすい構造となっている。これにより、水晶振動子2の単独の発振特性を確実にモニターすることが可能となる。
【0017】
また、上述のような菱形形状とすることで、モニター電極パッドの総面積を小さくできるため、回路基板とアンダーフィル樹脂の接着強度が強固となり、接続信頼性の向上が可能となる。
【0018】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0019】
例えば、図4に示すように、モニター電極バッド31のみを菱形形状に形成しても構わない。この場合も本発明の技術的範囲に含まれることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態にかかる水晶発振器の概略の断面図である。
【図2】本発明の回路基板構造を底面側の半導体部品搭載面から見た場合の上面図である。
【図3】本発明の回路基板構造を底面側の半導体部品搭載面に半導体部品を搭載した場合の上面図である。
【図4】本発明の回路基板構造を底面側の半導体部品搭載面から見た場合の上面図の変形例である
【図5】従来の回路基板構造を底面側の半導体部品搭載面から見た場合の上面図である。
【符号の説明】
【0021】
1・・・容器体
1a〜1d・・・セラミック層
2・・・水晶振動子
3・・・半導体部品
4・・・金属製蓋体
5・・・アンダーフィル樹脂
10・・・キャビティー部
11〜14・・・外部端子電極
15〜18・・・端子電極
20・・・キャビティー部
21・・・水晶振動子用電極パッド
22・・・バンプ部材
30・・・回路基板
31・・・モニター電極パッド
32・・・導通パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の一方主面に半導体部品が配置されたキャビティー部を有する容器体の、他方主面に水晶振動子を配置し、該水晶振動子を気密封止して成る水晶発振器を用い、前記回路基板に半導体部品をフリップチップ実装し、該半導体部品と前記回路基板の間にアンダーフィル樹脂を注入する回路基板構造において、
前記回路基板の一方主面の半導体部品を搭載する面に形成する半導体部品との導通パッドと水晶振動子のモニター電極パッドのパッド形状を、容器体端面方向に向かって頂点を持つ略菱形形状にしたことを特徴とする回路基板構造。


































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−156734(P2006−156734A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345519(P2004−345519)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】