説明

回路基板用接着フィルム、カバーレイ及びそれを用いた回路基板

【課題】本発明は、多層回路基板において、プレス後の表面平滑性に優れ、且つ配線パターンの端子部等の開口部に接着材料が流れ出すのを極力抑えた、極力薄い接着剤層を有する接着フィルム、カバーレイフィルムを提供する。
【解決手段】本発明は、接着フィルム105、カバーレイフィルム100の接着剤層104としてフロー性の異なる接着剤層(102、103、・・)を少なくとも2層以上積層し、前記接着剤層104のフロー性の小さい面(103側)を配線パターン上に設けることで、プレス後の表面平滑性に優れ、且つ配線パターン端子部等の開口部分に接着材料が流れ出すのを極力抑え、前記接着剤層104を極力薄くすることが可能な接着フィルム105、カバーレイフィルム100を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に用いられる接着フィルム、カバーレイフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル回路基板は、可とう性絶縁ベース材の表面に銅箔が設けられた銅張り積層板に回路配線パターンを形成し、この回路配線パターン上に、回路部品や外部基板等の電子部品あるいは回路との接続の為の端子を形成する部位に開口を有する表面保護層を形成し、金型等により打抜き等を施して外形加工して製造される。また、各回路基板を接着フィルムを用いて積層することで多層回路基板が製造される。
【0003】
ここで、上記表面保護層は、一方の面に接着剤層を有する可とう性絶縁フィルムでカバーレイフィルムと呼ばれる。これを金型等による打抜き加工にて開口を形成し、このカバーレイフィルムを回路配線パターン上に接着して表面保護層を形成するものである。
【0004】
多層回路基板の製造においては、真空プレス等の方法を用いて多層回路基板に接着フィルム、カバーレイフィルムを貼り付けている。多層回路基板表面にはICチップが実装されるが、チップの大型化やBGA型への変更により、接着フィルム、カバーレイフィルムの接着剤層には、回路埋め込み性やプレス後の表面平滑性が要求される。
【0005】
多層回路基板の内層にカバーレイフィルムが使用されるが、プレス後にカバーレイフィルム表面に凹凸があれば多層基板表面にも影響するためカバーレイフィルムにおいても表面平滑性は重要である。
【0006】
回路配線パターンの微細化に伴い、接着剤層が配線間を十分埋め込むことが難しくなっている。また、埋め込まれたとしても少なからず接着剤層の表面に凸凹段差が残り、積層を繰り返した場合、位置精度の悪化、基板の反り、各層のばらつき等の原因となる。この凸凹段差を平坦化するには、研磨等の工程が必要となり、製造方法にも制限が発生する。
【0007】
このような製造工程で製造される多層回路基板は、その表面平滑性を得るため接着フィルム、カバーレイフィルムの接着剤層には、フロー性の大きい接着剤を用いることが好ましい。
【0008】
しかしフロー性の大きい接着剤を用いると、多層回路基板の表面平滑性は改善されるものの、配線パターン端子部等の開口部分に接着フィルム、カバーレイフィルムの接着剤が流れ出し、後処理となるハンダ付けやメッキ等の作業がし難くなったり、不可能となる等の問題があった。
【0009】
逆に、フロー性の小さい接着剤を用いると、接着フィルム、カバーレイフィルムの接着剤が配線パターン端子部等の開口部分に流れ出すことはなくなるが、多層回路基板の表面平滑性が得られないばかりか、配線と配線の間に十分に入り込めず、部分的に空隙、ボイドが生じる等して、所定の接着強度が得られない等の問題があった。
【0010】
プレス後の表面平滑性に優れ、且つ配線パターン端子部等の開口部分に接着材料が流れ出すのを極力抑えるには、例えば、接着フィルム、カバーレイフィルムの接着剤層としてフロー性の異なる接着剤層を2層以上積層する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0011】
又、多層回路基板において、層間接着剤層として流れ出し性の異なる接着剤層を少なくとも2層以上積層し、前記接着剤層の流れ出し性の小さい接着剤層を配線パターン上に設ける手法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。詳しくは、特許文献2に記載の発明では、回路パターンが形成された面を有する層と他の層とを接着剤層により接着することにより積層される多層回路基板において、前記回路パターンが形成された面に流れ出し性の小さな接着剤を熱ラミネートして第1の接着剤層を有するラミネート体を形成し、前記他の層に接する面に流れ出し性の大きな接着剤を熱ラミネートして第2の接着剤層を有するラミネート体を形成し、その後これらのラミネート体を更に熱ラミネートにより貼り合せて層間接着剤層とし、多層回路基板を得るというものである。
【特許文献1】特開2003−198107号公報
【特許文献2】特開2006−073934号公報(段落0016〜0021、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献1に記載の手法では、相対的にフロー性の大きい接着剤層を配線パターン上に設けると、十分な多層回路基板の表面平滑性が得られないという問題があった。
【0013】
又、上記特許文献2に記載の手法では、第2の接着剤層の形成時におけるプレス(熱ラミネート)後の表面平滑性に優れ、且つ第1の接着剤層を形成時に配線パターン端子部等の開口部分に接着材料が流れ出すのを極力抑える効果を得ることが出来るが、パターン上に設ける第1の接着剤層をパターン厚み以上にする必要から、極力薄い接着剤層(層間接着剤層)にすることが出来ない問題があった。
【0014】
そこで、本発明の目的は、上記問題点に鑑み、表面平滑性に優れ、且つ配線パターン端子部等の開口部分に接着材料が流れ出すのを極力抑えることができ、さらにより薄い接着剤層を有する回路基板用接着フィルム、カバーレイ及びそれを用いた回路基板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる目的を達成すべく、表面平滑性に優れ、且つ配線パターン端子部等の開口部分に接着材料が流れ出すのを極力抑えることができ、更により薄い接着剤層の要求に対し鋭意検討した結果、多層回路基板において、2層以上の接着層を有し、且つフロー性の小さい面を配線パターンに設ける接着フィルム、カバーレイフィルムを発明するに至った。
【0016】
すなわち本発明は、フロー性の異なる接着剤層を少なくとも2層以上積層した、傾斜配置によって成ることを特徴とする接着フィルムにある。
【0017】
更に本発明は、フィルム基材の片面に、フロー性の異なる接着剤層を少なくとも2層以上積層して成る接着フィルム層を設けてなるものであって、前記接着フィルム層におけるフロー性が前記フィルム基材側から外側(前記接着フィルム層表面側)にかけて小さくなるよう(接着フィルムの厚さ方向に)傾斜配置して成ることを特徴とするカバーレイフィルムにある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、接着フィルム、カバーレイフィルムの接着剤層としてフロー性の異なる接着剤層を少なくとも2層以上積層し、前記接着剤層のフロー性の小さい面を配線パターン上に設けることで、プレス後の表面平滑性に優れ、且つ配線パターン端子部等の開口部分に接着材料が流れ出すのを極力抑えることが可能な接着フィルム、カバーレイフィルムを提供することができる。
【0019】
さらに、本発明では、フロー性がフィルム基材側から外側(フィルム表面)にかけて小さくなるようフィルムの厚さ方向に傾斜配置して成る接着剤層とすることにより、フロー性の小さい接着剤層がパターン厚み以下であっても、プレス後の表面平滑性に優れ、且つ配線パターン端子部等の開口部分に接着材料が流れ出すのを極力抑え、より薄い接着剤層(2層以上積層された接着剤層)を有する回路基板用接着フィルム、カバーレイフィルム及びそれを用いた回路基板を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の回路基板用接着フィルムは、フロー性の異なる接着剤層を少なくとも2層以上積層した、傾斜配置によって成ることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の回路基板用カバーレイフィルムは、フィルム基材の片面に、上記フロー性の異なる接着剤層を少なくとも2層以上積層して成る本発明の回路基板用接着フィルム層を設けてなるものであって、前記接着フィルム層におけるフロー性が前記フィルム基材側から外側にかけて小さくなるよう傾斜配置して成ることを特徴とするものである。
【0022】
更に、本発明の多層回路基板は、上記フロー性の異なる接着剤層を少なくとも2層以上積層して成り、フロー性が小さい方が回路パターン側にくるように配置されていることを特徴とするものである。
【0023】
さらにまた、本発明のフレキシブル回路基板は、上記回路基板用カバーレイフィルムを用いてなることを特徴とするものである。
【0024】
ここで、本発明の回路基板用接着フィルム、回路基板用カバーレイフィルム、多層回路基板及びフレキシブル回路基板に用いられてなるフロー性の異なる接着剤層は、それぞれフロー性の異なる複数の接着剤層を積層する、傾斜配置によって得ることができる。
【0025】
以下、本発明の各実施形態につき、図面を用いて説明する。図1は、本発明の回路基板用接着フィルムを模式的に表した断面概略図である。図2は、本発明の回路基板用カバーレイフィルムと、該回路基板用カバーレイフィルムを適用する相手側の回路パターンが形成されている多層回路基板の構成とを模式的に表した断面概略図である。
【0026】
図1及び図2に示すように、フロー性の異なる複数の層からなる接着剤層104の構成において、フロー性の大きい接着剤層102の厚さは、25μm以下、好ましくは15〜25μmである。フロー性の大きい接着剤層102の厚さが25μmを超える場合には流れ出し性の制御が困難である。一方、フロー性の大きい接着剤層102の厚さの下限値に関しては、特に制限されるものではないが、回路パターンに依存せず、回路基板の表面平滑性を得ることが目的であることから、15μm以上とするのが望ましい。
【0027】
又、フロー性の小さい接着剤層103は、フロー性の大きい接着剤層102と合わせてパターン埋め込み性を考慮し、導体(図2では、導通(ないし回路)パターン201)の厚み以上であればよく、導通(ないし回路)パターン201厚みにより適宜採用すればよい。例えば、銅箔(厚さ35μm;1オンス)で形成された導通(ないし回路)パターン201に関しては、フロー性の小さい接着剤層103とフロー性の大きい接着剤層102を合わせた接着剤層104の全体の厚さが35μm以上、該銅箔に銅メッキが厚さ15μm形成されれば、50μm以上というようにである。これにより、フロー性の小さい接着剤層103がパターン201厚み以下であっても、プレス後の表面平滑性に優れ、且つ配線パターン端子部等の開口部分に接着材料が流れ出すのを極力抑え、より薄い接着剤層(2層以上積層された接着剤層104)を有する回路基板用接着フィルム105、カバーレイフィルム100及びそれを用いた多層回路基板ないしフレキシブル回路基板300を提供することができる。接着剤層104の厚さは、上記したように導通(ないし回路)パターン201の厚さ以上であればよいが、好ましくは導通(ないし回路)パターン201の厚さ+2〜20μmの範囲とするのが望ましい。導通(ないし回路)パターン201の厚さ+2μm未満の場合には回路周辺のエアー残りの懸念がある。一方、導通(ないし回路)パターン201の厚さ+20μmを超える場合には、本発明の作用効果(目的)の一つである、より薄い接着剤層104を有する回路基板用接着フィルム、カバーレイ及びそれを用いた回路基板の提供が困難となるおそれがある。
【0028】
本発明のフロー性の異なる(複数の層からなる)接着剤層104は、図1、2に示すように、それぞれフロー性の異なる2つの接着剤層102、103、さらにはそれ以上の複数の接着剤層を積層する、傾斜配置によって得ることができる。以下に、二層目以降となる接着剤層103(3層目以降は図示せず)のフロー性を、一層目となる接着剤層102のそれに対して小さくする具体的な方法を次に述べる。
【0029】
回路基板用接着フィルム105は、まず離型処理された紙やポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう)フィルムベースのセパレーター等を用い、その片面に熱硬化型の接着剤を塗布し、乾燥することで一層目の接着剤層102を設ける。
【0030】
次に、二層目となる接着剤層103として別のセパレーターに、やはり熱硬化型の接着剤を同様に塗布し、乾燥する。この二層目となる接着剤層103は、例えば一層目の接着剤層102の乾燥条件より高温または長時間で乾燥する方法、または一層目の接着剤層102と同じ条件で乾燥させた後、更に追加で加熱処理を施す方法、接着剤組成中の樹脂、無機充填材、硬化剤の比率を変える方法のうちどれか一つ以上を用いることで、一層目より小さめのフロー性の接着剤層103とする。一層目の接着剤層102上に、二層目となる接着剤層103をラミネータ等を用いて積層する傾斜配置によって、フロー性の異なる複数の層からなる接着剤層104を有する回路基板用接着フィルム105を得ることができる(図1では、離型処理された紙やフィルムベースのセパレーター等は図示していない。)。
【0031】
以下に示すような、好適な接着フィルム流出量(単位g/10分)を得るのに、例えば、実施例に示すような乾燥条件を変えて、接着剤層102、103のフロー性を調整する場合の乾燥条件としては、接着剤の種類などにより異なることから一義的に規定するのは困難であるが、次のような条件が望ましいものといえる。
【0032】
即ち、一層目の大きなフロー性の接着剤層を形成する場合には、セパレーターないしフィルム基材上に熱硬化型の接着剤を塗布した後、熱風乾燥機などを用いて、70〜130℃、好ましくは90〜110℃で、2〜7分間、好ましくは3〜6分間乾燥を行えばよい。70℃未満の場合には接着剤を十分乾燥することができず、130℃を超える場合には所望のフロー性の下限を下回るおそれがある。2分未満の場合も接着剤を十分乾燥することができず、7分を超える場合には所望のフロー性の下限を下回るおそれがある。
【0033】
二層目の小さなフロー性の接着剤層を形成する場合には、セパレーターないしフィルム基材上に熱硬化型の接着剤を塗布した後、熱風乾燥機などを用いて、70〜130℃、好ましくは90〜110℃で、2〜7分間、好ましくは3〜6分間乾燥を行う。70℃未満の場合には接着剤を十分乾燥することができず、130℃超える場合には所望のフロー性の下限を下回るおそれがある。2分未満の場合も接着剤を十分乾燥することができず、7分を超える場合には所望のフロー性の下限を下回るおそれがある。上記乾燥条件が一層目の大きなフロー性の接着剤層を形成する際の乾燥条件と同じか、あるいは低温または短時間である場合には、さらに追加で70〜130℃、好ましくは90〜110℃で、2〜15分間、好ましくは3〜12分間加熱処理を行うことで、二層目の小さなフロー性の接着剤層を形成する際の全体の乾燥条件が、一層目の大きなフロー性の接着剤層を形成する際の乾燥条件よりも高温または長持間となるように調整すればよい。70℃未満の場合には接着剤を十分乾燥することができず、130℃を超える場合には所望のフロー性の下限を下回るおそれがある。2分未満の場合には接着剤を十分乾燥することができず、15分を超える場合には所望のフロー性の下限を下回るおそれがある。但し、本発明では、これらの乾燥条件に何ら制限されるものではなく、熱硬化型の接着剤の種類などによっては、かかる範囲を外れても以下の好適な接着フィルム流出量を満足することができる場合もある。そのため、事前に予備実験などを行って下記の好適な接着フィルム流出量を満足する条件を求めるのが望ましいと言える。また、乾燥条件以外の他の手法により接着剤層102、103のフロー性を調整する場合においても、事前に予備実験などを行って下記の好適な接着フィルム流出量を満足する条件を求めるのが望ましいと言える。
【0034】
得られた回路基板用接着フィルム105を、温度170℃、圧力9.8MPa、時間1分間加熱圧着して、メチルエチルケトン(以下、MEKともいう)脱脂した直径φ1.0mm、長さ1.0mm、材質ステンレスのダイからの接着フィルム流出量(単位g/10分)をフロー性の指標として算出すると、一層目の接着剤層102のフロー性は70〜120g/10分、好ましくは80〜110g/10分の範囲であり、二層目の接着剤層103のフロー性は10〜50g/10分、好ましくは20〜40g/10分の範囲であることが好ましく、二層目の接着剤層103は一層目の接着剤層102に比べフロー性が小さい範囲で適宜選択することができる。本発明のフロー性の異なる接着剤層が三層以上の場合は、三層目以上の接着剤層のフロー性は、二層目の接着剤層のフロー性より小さければ良い。ここで、一層目の接着剤層102のフロー性が70g/10分未満の場合には回路基板の表面平滑性が得られず、120g/10分を超える場合には開口部分に接着剤が流れ出す量が多くなる。一方、二層目の接着剤層103のフロー性が10g/10分未満の場合には、接着剤として充分な接着性が得られず、50g/10分を超える場合には開口部分に接着剤が流れ出す量が多くなる。
【0035】
一層目の接着剤層102を作製する際、セパレーターの替わりに、図2に示すように、カバーレイフィルム基材となるフィルム(カバーレイ構成ベースフィルム)101を使用することで、フロー性が前記フィルム基材101側から外側(前記接着フィルム層表面側=接着剤層103側)にかけて小さくなる接着剤層102、103を有する回路基板用カバーレイフィルム100を得ることができる。
【0036】
上記接着剤層102ないし103に用いられる熱硬化型の接着剤としては、特に限定はされないが、例えば、(i)可とう性を有するゴムをベースとし、(ii)熱硬化性樹脂、(iii)硬化剤、(iv)無機充填剤、(v)さらに必要に応じて用いられる他の添加剤、を配合した接着剤が挙げられる。
【0037】
なお、実施例で用いてなる接着剤組成物の溶液とは、上記接着剤の各配合成分を(vi)適当な溶媒に溶解(ないし分散)させた溶液をいうものとする。
【0038】
(i)可とう性を有するゴム(ベース成分)について
上記熱硬化型の接着剤に用いられるベース成分の可とう性を有するゴムとしては、一般的にアクリルゴム、ニトリルゴム(以下、アクリロニトリルブタジエンゴム、またはNBRともいう)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(以下、SISともいう)等があり、好ましくはカルボン酸を官能基として含有するアクリルゴムが挙げられる。
【0039】
上記カルボン酸を官能基として含有するアクリルゴムとは、アクリル酸アルキルエステル(メタアクリル酸エステルも含む、以下同様)を主成分とし、カルボン酸を官能基として含有するビニル単量体と必要に応じてアクリロニトリル、スチレン等を含む共重合体である。
【0040】
上記アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸エチル(メタクリル酸エチルも含む、以下同様)、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ラウリル、等の単量体および、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2ヒドロキシルプロピル、アリルアルコール等の水酸基を有する単量体、グリシジルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート等のエピクロルヒドリン変成物のエポキシ基を有する単量体等が挙げられる。これらの中から、1種類または2種類以上を選択して使用できる。
【0041】
上記カルボン酸を官能基として含有するビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中から、1種類または2種類以上を選択して使用できる。
【0042】
アクリルゴムの重合方法としては、特に限定はされないが、一般的な懸濁重合法等を用いることができ、例えば、ポリビニルアルコール(以下、PVAともいう)等の分散剤、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ラウリルパーオキサイド(LPO)等の重合開始剤を水媒体中に分散させた液体に、上記アクリルモノマーの2種類以上の混合物を滴下し、重合させる。重合物は、精製水で水洗して、不純物の除去を行い、水洗後加熱乾燥し、残留モノマー、水分の除去を行う。重合物の数平均分子量としては50000〜500000程度が好ましく、より好ましくは40000〜400000の範囲である。なお、上記懸濁重合法以外にも、例えば、乳化重合、溶液重合、塊状重合などの従来公知の重合方法を用いることができる。
【0043】
また、上記熱硬化型の接着剤のベース成分である可とう性を有するゴム(アクリルゴム以外)に関しても、その重合方法としては、特に限定はされるものではなく、一般的な懸濁重合法等を用いることができる。また、得られた重合物(可とう性を有するゴム)の数平均分子量としては50000〜500000程度が好ましく、より好ましくは40000〜400000の範囲である。なお、上記懸濁重合法以外にも、例えば、乳化重合、塊状重合などの従来公知の重合方法を用いることができる。
【0044】
上記熱硬化型の接着剤のベース成分である可とう性を有するゴムの配合量は、熱硬化型の接着剤から、後述する(ii)熱硬化性樹脂、(iii)硬化剤、(iv)無機充填剤(更には、必要に応じて配合される他の添加剤(v))で規定する配合量の合計量を差し引いた残分である。即ち、可とう性を有するゴムの配合量としては、上記接着剤の各配合成分の合計量100重量部に対して30〜80重量部、好ましくは40〜60重量部の範囲である。可とう性を有するゴムの配合量が30重量部未満の場合には充分な接着性が得られず、80重量部を超える場合には耐熱性が低下する。
【0045】
(ii)熱硬化性樹脂について
上記熱硬化型の接着剤に用いられる熱硬化性樹脂としては、好ましくはエポキシ樹脂、フェノール樹脂が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、エポキシ樹脂とフェノール樹脂を併用しても良い。
【0046】
ここで、上記エポキシ樹脂とは、分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらの水素添加物等が使用できる。これらの化合物は、単独もしくは2種類以上併用して使用することができる。上記エポキシ樹脂の配合量は、カルボン酸を官能基として含有するアクリルゴム等の可とう性を有するゴム(熱硬化型の接着剤のベース成分)100重量部に対し、10〜100重量部、好ましくは30〜80重量部が好ましい。10重量部より少ないと、十分な耐熱性が得られず、100重量部より多いと、はく離接着強さが低下し好ましくない。
【0047】
上記フェノール樹脂とは、レゾール型のものであれば良く、フェノール樹脂の分子量、軟化点、水酸基当量等は特に制限されるものではない。レゾール型のフェノール樹脂は、フェノールに対してホルムアルデヒドを過剰に加えアルカリ触媒で反応させたものである。該レゾール型のフェノール樹脂は、加熱するか、または酸を加えると常温でも反応が進行し自己縮合する。また、本発明においてフェノール樹脂の自己縮合だけでなく、カルボン酸を官能基として含有するアクリルゴム等の可とう性を有するゴム(熱硬化型の接着剤のベース成分)に対しても反応性を持つことから、リフローはんだ耐熱性や体積抵抗が向上する。上記フェノール樹脂の配合量は、アクリルゴム等の可とう性を有するゴム(熱硬化型の接着剤のベース)100重量部に対し、5〜50重量部、好ましくは10〜30重量部が好ましい。5重量部より少ないと、架橋密度が低下し、十分なリフローはんだ耐熱性が得られず、50重量部より多いと、Bステージ状態での貯蔵安定性が損なわれ、はく離接着強さが低下するなどの問題を生じる。
【0048】
上記熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂とフェノール樹脂を併用する場合、これらの配合比率としては特に制限されるものではいないが、エポキシ樹脂:フェノール樹脂(質量比)=30〜300:100、好ましくは50〜250:100の範囲である。フェノール樹脂100重量部に対し、エポキシ樹脂が30重量部未満の場合には充分な耐熱性が得られない。300重量部を超える場合には剥離強さが低下し好ましくない。
【0049】
(iii)硬化剤について
上記熱硬化型の接着剤に用いられる硬化剤とは、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の硬化剤または硬化触媒である。例えば、芳香族ポリアミン、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯体等の三フッ化ホウ素のアミン錯体、2−アルキル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−アルキルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、無水フタル酸、無水トリメリット酸等の有機酸、ジシアンジアミド、トリフェニルホスフィン、ジアザビシクロウンデセン、ヒドラジン等公知のものが使用できる。なお、これら硬化剤、硬化触媒は単独で用いても良いし、必要に応じて2種類以上を併用しても良い。硬化剤、硬化触媒は、Bステージでの貯蔵安定性を向上させるため、常温域では殆ど反応が進行しないものが好ましい。
【0050】
これら硬化剤または硬化触媒の配合量(添加量)は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部が好ましい。0.01重量部より少ないと、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の十分な硬化が得られず、はんだ耐熱性等が低下し、10重量部より多いと、はく離接着強さが低下し、貯蔵安定性が低下する等の問題を生じる。
【0051】
(iv)無機充填剤について
上記熱硬化型の接着剤に用いられる無機充填剤としては、本質的に電気絶縁性のものであれば使用することができ、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、酸化アルミニウム、酸化カルシウム等の金属酸化物、その他、シリカ、マイカ、タルク、クレー等が挙げられる。これらは、単独あるいは必要に応じて2種以上併用して用いることができる。
【0052】
上記無機充填剤の配合量は、カルボン酸を官能基として含有するアクリルゴム(ベース成分の可とう性を有するゴム)+エポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)+フェノール樹脂(熱硬化性樹脂)の有効成分の合計100重量部に対し、10〜100重量部、好ましくは20〜80重量部が好ましい。10重量部より少ないと、十分な耐燃性が得られず、また、100重量部より多いと、はく離接着強さが低下する等の問題を生じる。
【0053】
上記無機充填剤は、ボールミル等を用いて、粒径を10μm以下に調整する(ここでいう粒径は、最大粒径をいうものとする。)。上記無機充填剤の粒径が10μmより大きいと、接着フィルム、カバーレイフィルムとした時、フィルム表面に凹凸が発生し、はく離接着強さ、はんだ耐熱性の低下および外観性を損ねる。
【0054】
(v)必要に応じて用いてもよい他の添加剤について
上記熱硬化型の接着剤では、更には、必要に応じて用いてもよい他の添加剤を本発明の作用効果を損なわない範囲内において配合したものであってもよい。具体的には、例えば、各種シランカップリング剤などを適宜、適量配合して用いることができる。
【0055】
(vi)適当な溶媒について
また、上記接着剤の各配合成分を溶解(ないし分散)させるのに用いられる(vi)適当な溶媒としては、特に制限されるものではないが、メチルエチルケトン、トルエン、DMF(N,N’−ジメチルホルムアミド)、酢酸エチル、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなどが好適に利用することができる。なお、上記溶媒は、接着剤の各配合成分だけでも好適に塗布可能な溶液形態である場合には、特に用いなくてもよく、この場合には、接着剤=接着剤組成物の溶液として取り扱うことができる。
【0056】
該溶媒の配合量としては、上記接着剤の各配合成分の合計量100重量部に対して100〜1000重量部、好ましくは200〜600重量部の範囲である。溶媒の配合量が100重量部の場合には接着剤溶液の粘度が高すぎて塗工できず、1000重量部を超える場合には所望の厚みの接着剤層が得られない。
【0057】
上記離型処理された紙ベースのセパレーターとしては、特に限定されるものではないが、例えば、上質紙、クラフト紙、ロール紙、グラシン紙等の紙の両面に、クレー、ポリエチレン、ポリプロピレン等の目止剤の塗布層を設け、さらにその各塗布層の上にシリコーン系、フッ素系、アルキド系の離型剤が塗布されたもの、および、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等の各種オレフィンフィルム単独、およびポリエチレンテレフタレート等のフィルム上に上記離型剤を塗布したものが挙げられるが、接着剤層との離型力、シリコーンが電気特性に悪影響を与える等の理由から、上質紙の両面にポリプロピレン目止処理しその上にアルキド系離型剤を用いたものが好ましい。
【0058】
上記離型処理された紙ベースのセパレーターの厚さは、特に制限されるものではないが、50〜150μm、好ましくは80〜120μmの範囲である。離型処理された紙ベースのセパレーターの厚さが50μm未満の場合には、セパレーターとしての強度が不充分であり、150μmを超える場合には、ロールで巻き取る際にカールが大きくなるおそれがある。
【0059】
上記離型処理されたPETフィルムベースのセパレーターとしては、特に限定されるものではないが、ポリエステルフィルム上にアルキド系離型剤を用いたもの挙げられる。ポリエステルフィルムに用いられる好ましいポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、エチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートとの共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体を挙げることができる。これらのポリエステルフィルムは、発塵が少なく、加熱時のガスの発生が少ないという利点を有している。
【0060】
上記離型処理されたPETフィルムベースのセパレーターの厚さは、特に制限されるものではないが、25〜100μm、好ましくは38〜75μmの範囲である。離型処理されたPETフィルムベースのセパレーターの厚さが25μm未満の場合には、セパレーターを剥がす際に剥がしにくく、作業性が低下し、100μmを超える場合には、ロールで巻き取る際にカールが大きくなるおそれがある。
【0061】
上記カバーレイフィルム基材となる可とう性絶縁フィルム(カバーレイ構成ベースフィルム)101としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等が挙げられる。
【0062】
上記カバーレイフィルム基材となる可とう性絶縁フィルム(カバーレイ構成ベースフィルム)101の厚さは、特に制限されるものではないが、4〜50μm、好ましくは12〜25μmの範囲である。可とう性絶縁フィルム(カバーレイ構成ベースフィルム)101の厚さが4μm未満の場合には、塗工時の歩留まりが著しく低下し、50μmを超える場合には、回路基板の厚みがますため好ましくない。
【0063】
また、本発明では、フロー性の異なる複数の層(102、103、・・)からなる接着剤層104を形成するのに、フロー性の異なる複数の接着剤を用いることができる。例えば、一層目の接着剤層102にフロー性の大きい接着剤を使用し、二層目となる接着剤層103にフロー性の小さい接着剤を使用し、一層目と二層目の接着剤層102、103を積層する傾斜配置によって、フロー性の異なる接着剤層104を有する接着フィルム105を得ることができる。なお、ここで複数の接着剤としては、接着材料のゴム/樹脂比が異なるもの、或いはゴム/樹脂比は同一であっても、添加剤や充填材の添加によりフロー性が異なるもの等が挙げられる。
【0064】
このようにして得られた接着フィルム105のフロー性の小さい面(接着剤層103側)、あるいはカバーレイフィルム100の接着剤面(接着剤層103側)を絶縁基板(下層基板203)上の(回路基板200構成ベースフィルム202の)金属層部分に形成された所要の配線パターン(導通ないし回路パターン)201上に貼り付けることによって、表面平滑性に優れ、且つ配線パターン端子部等の開口部分に接着材料が流れ出すのを極力抑え、さらにより薄い接着剤層104を有する多層回路基板300が得られる。
【0065】
即ち、本発明の多層回路基板300は、上記接着剤層104として、フロー性の大きい接着剤層102、フロー性の小さい接着剤層103のように、フロー性の異なる接着剤層を少なくとも2層以上積層して成り、フロー性が小さい方(接着剤層103)がパターン(201)側にくるように配置されていることを特徴とするものである。また、本発明のフレキシブル回路基板300は、本発明の回路基板用カバーレイフィルム100を用いてなることを特徴とするものである。即ち、本発明のフレキシブル回路基板300でも、上記接着剤層104として、フロー性の大きい接着剤層102、フロー性の小さい接着剤層103のように、フロー性の異なる接着剤層を少なくとも2層以上積層して成り、フロー性が小さい方(接着剤層103)がパターン(201)側にくるように配置されていることを特徴とするものである。言い換えれば、即ち、本発明のフレキシブル回路基板300でも、フロー性の大きい接着剤層102、フロー性の小さい接着剤層103のように、フロー性の異なる接着剤層を少なくとも2層以上積層して成る接着フィルム層104を設けてなるものであって、前記接着フィルム層104におけるフロー性が前記フィルム基材100側から外側(パターン201側=接着剤層103側)にかけて小さくなるよう傾斜配置して成ることを特徴とするものといえる。よって、上記回路基板200は、多層回路基板ないしフレキシブル回路基板に用いられる構成要素といえる。
【0066】
ここで、接着フィルム105のフロー性の小さい面(接着剤層103側)、あるいはカバーレイフィルム100の接着剤面(接着剤層103側)を絶縁基板(下層基板203)上の(回路基板200構成ベースフィルム202の)金属層部分に形成された所要の配線パターン(導通ないし回路パターン)201上に貼り付ける際の条件としては、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適用することができる。例えば、熱ラミネートなどの熱プレス(加熱加圧)する方法、加熱ロールにより、ロールラミネートする方法などが適用できる。
【0067】
上記熱ラミネートなどの熱プレス(加熱加圧)する方法を用いる場合の条件としては、接着剤層102、103やカバーレイフィルム基材となる可とう性絶縁フィルム101、離型処理された紙やPETフィルムベースのセパレーター等の耐熱性や溶融温度(ないしガラス転移温度など)に応じて適宜決定すればよい。具体的には、70〜130℃、好ましくは80〜120℃で、0.5〜5MPa、好ましくは1〜3MPaで、5〜120秒間、好ましくは10〜60秒間の範囲で加熱圧着(熱ラミネート)を行うのが望ましい。ここで、70℃未満の場合には接着層が接着せず、130℃を超える場合にはPETセパレーターが変形するおそれがある。0.5MPa未満の場合には接着層が接着せず、5MPaを超える場合には開口部分に接着剤が流れ出す量が多くなるおそれがある。5秒未満の場合には接着層が接着せず、120秒を超える場合には開口部分に接着剤が流れ出す量が多くなるおそれがある。なお、加熱ロールにより、ロールラミネートする方法を用いる場合の条件も、上記熱ラミネートなどの熱プレス(加熱加圧)する方法を用いる場合の条件とほぼ同様の条件で行うことができる。
【0068】
配線パターン(導通ないし回路パターン)201上には相対的にフロー性の小さい接着剤層103が貼り付けられるが、この接着剤層103は、配線と配線の間を十分に埋め込み、部分的な隙間が生じない程度のフロー性が得られるよう設計する必要がある。
【0069】
上記接着剤層103単独の場合、配線パターン端子部等の開口部分に接着剤が流れ出すことはないが、多層回路基板300やフレキシブル回路基板(図示せず)の表面平滑性は得られない。本発明では上記接着剤層103の上に、相対的にフロー性の大きい接着剤層102を積層する傾斜配置によって、極力薄い接着剤層(相間接着剤層)104でありながら、接着剤の流れ出し抑制と多層回路基板の表面平滑性を両立することができる。
【0070】
すなわち、本発明の接着フィルム105ないしカバーレイフィルム100では、相対的にフロー性の小さい接着剤層103の上に、相対的にフロー性の大きい接着剤層102を積層する傾斜配置することによって、配線パターン(導通ないし回路パターン)201上にプレス(熱ラミネート)などにより貼り付ける際に、まず最初に相対的にフロー性の小さい接着剤層103が当接し、該接着剤層の持つ低フロー性により、部分的に空隙、ボイドが生じることなく配線パターン201の配線と配線の間に十分に入り込むことができ、所定の接着強度を得ることができる。さらに当該接着剤層103に傾斜配置された相対的にフロー性の大きい接着剤層102では、接着剤層103が配線パターン201の微細かつ複雑なパターン形状に追従、変化したのに続き、同じ形状を連続的にトレース(追従)する形(連続して押し込まれて先の接着剤層103の押し込み後の形状をなぞる形)で、既に接着剤層102が入り込んだ後の配線パターン201の配線と配線の間に連続して入り込ませることができる。そのため、相対的にフロー性の大きい接着剤層102であっても、配線パターン201の配線と配線の間に部分的に空隙、ボイドが生じることなく十分に入り込ませることができるものである。こうしてプレス(熱ラミネートなど)して貼り付けた後の接着剤層104では、接着剤の流れ出し抑制と多層回路基板の表面平滑性を両立することができるものである。
【実施例】
【0071】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例に示す形態のみに制限されるわけではない。
【0072】
実施例1
(1)接着剤組成物の溶液の調整
カルボン酸を官能基として含有するアクリルゴムWS02 3D R(ナガセケムテックス製;数平均分子量110000)60重量部に対し、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のESCN−195−10(住友化学株式会社製)を20重量部、レゾール型フェノール樹脂のヒタノールH2181(日立化成工業株式会社製)20重量部、硬化剤としてジシアンジアミド0.6重量部、無機充填剤として水酸化アルミニウムのハイジライトH42M(昭和電工株式会社製)20重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散し、不揮発分20wt%溶液とした。この溶液を、ボールミルを用いて無機充填剤を粒径5μm以下に調整し、十分に分散して接着剤組成物の溶液とした。
【0073】
(2)接着フィルムの作製
1層目の接着剤層102として、厚さ98μmの離型処理された紙ベースのセパレーター(アルキド系離型剤/PET(厚さ16μm)/上質紙/PET(厚さ16μm))に、乾燥後の接着剤層102の厚みが20μmになるように上記(1)で得られた接着剤組成物の溶液を塗布し、熱風乾燥機中で100℃×5分乾燥し、フロー性の大きい接着剤層102とした。続いて2層目の接着剤層103として、厚さ50μmの離型処理されたPETフィルムベースのセパレーター(アルキド系離型剤/PET(厚さ50μm))に、上記(1)で得られた同じ接着剤組成物の溶液を乾燥後の接着剤層103の厚みが20μmになるように塗布し、熱風乾燥機中で100℃×5分乾燥し、さらに追加で100℃×10分加熱処理を施し、フロー性の小さい接着剤層103とした。得られた二つの接着剤層102、103を熱ラミネート(100℃、2MPa、ラミネート時間30秒間)により積層し、傾斜配置することで接着剤層104を有する接着フィルム105とした。得られた接着フィルム105につき、以下の特性評価を行った。
【0074】
(特性評価)
(3)プレス加工性
厚さ25μmのポリイミドフィルムと厚さ35μmの銅箔Aで形成される銅張り積層板のポリイミド面に、上記のフロー性の異なる接着剤層104を有する接着フィルム105を貼り合わせた。この際、接着フィルム105の離型処理された紙ベースのセパレーターを剥がした後、該接着フィルム105のフロー性の大きい面(接着剤層102側)を積層板のポリイミド面に貼り合わせた(貼り合わせ条件;熱ラミネート、100℃、2MPa、30秒とした。)。続いて接着フィルム105の離型処理されたPETフィルムベースのセパレーターを剥がした後、該接着フィルム105のフロー性の小さい面(接着剤層103側)を、所要の配線パターンを有する銅張り積層板(厚さ35μmの銅箔の配線パターンと、厚さ25μmのポリイミド製の基材フィルムで形成される銅張り積層板)の銅箔面(配線パターン面)に貼り合わせた(貼り合わせ条件;熱ラミネート、100℃、2MPa、30秒とした。)。次にプレス温度170℃、圧力2.0MPa、時間5分間加熱圧着して、最外層の銅箔Aの表面平滑性、端部からの流れ出し性を評価した。得られた結果を下記表1に示す。
【0075】
(4)フロー性
作製した接着フィルム105の離型処理された紙ベースのセパレーター及び離型処理されたPETフィルムベースのセパレーターを剥がした後、該接着フィルム105を温度170℃、圧力9.8MPa、時間1分間加熱圧着して、直径1.0mm、長さ1.0mmのステンレス製のダイからの接着フィルム流出量(単位g/10分)をフロー性の指標として算出した。得られた結果を下記表1に示す。
【0076】
実施例2
実施例1において、2層目の接着剤層103を作製する際、水酸化アルミニウムのハイジライトH42M(昭和電工株式会社製)を50重量部とした接着剤組成物の溶液を使用し、2層目の接着剤層103の追加加熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に行った。得られた接着フィルム105の特性評価(表面平滑性、端部からの流れ出し性およびフロー性)結果を下記表1に示す。
【0077】
実施例3
実施例1において、1層目の接着剤層102を作製する際、離型処理された紙ベースのセパレーターの代わりに、カバーレイフィルム基材となる可とう性絶縁フィルム(カバーレイ構成ベースフィルム)101として、25μm厚みのポリイミドフィルムを用い、カバーレイフィルム100とした以外は、実施例1と同様に行った。得られたカバーレイフィルム100につき、以下の特性評価を行った。
【0078】
(特性評価)
(3)プレス加工性
カバーレイフィルム100の離型処理されたPETフィルムベースのセパレーターを剥がした後、該カバーレイフィルム100のフロー性の小さい面(接着剤層103側)を、所要の配線パターンを有する銅張り積層板(厚さ35μmの銅箔の配線パターンと、厚さ25μmのポリイミド製の基材フィルムで形成される銅張り積層板)の銅箔面(配線パターン面)に貼り合わせた(貼り合わせ条件;熱ラミネート、100℃、2MPa、30秒とした。)。次にプレス温度170℃、圧力2.0MPa、時間5分間加熱圧着して、最外層のカバーレイフィルム基材101の表面平滑性、端部からの流れ出し性を評価した。得られた結果を下記表1に示す。
【0079】
(4)フロー性
作製したカバーレイフィルム100の離型処理されたPETフィルムベースのセパレーターを剥がした後、該カバーレイフィルム100を、温度170℃、圧力9.8MPa、時間1分間加熱圧着して、直径1.0mm、長さ1.0mmのステンレス製のダイからのカバーレイフィルム流出量(単位g/10分)をフロー性の指標として算出した。得られた結果を下記表1に示す。ここで、片面がカバーレイフィルム基材であるカバーレイフィルムの場合には、カバーレイフィルム基材のポリイミドフィルムから接着剤層を剥がし取って測定した。
【0080】
比較例1
実施例1において、1層目の接着剤層102として乾燥後の接着剤層の厚みが40μmになるように接着剤組成物の溶液を塗布し、熱風乾燥機中で100℃×5分乾燥し、単層の(接着剤層102からなる)接着フィルム105とした以外は、実施例1と同様に行った。得られた接着フィルム105につき、以下の特性評価を行った。
【0081】
(特性評価)
(3)プレス加工性
厚さ25μmのポリイミドフィルムと厚さ35μmの銅箔Aで形成される銅張り積層板のポリイミド面に、上記単層の接着剤層102からなる接着フィルム105を貼り合わせた。この際、接着フィルム105の離型処理された紙ベースのセパレーターが形成されていない接着剤層102面をまず最初に積層板のポリイミド面に貼り合わせた(貼り合わせ条件;熱ラミネート、100℃、2MPa、30秒とした。)。続いて接着フィルム105の離型処理された紙ベースのセパレーターを剥がした後、該接着フィルム105の接着剤層102を、所要の配線パターンを有する銅張り積層板(厚さ35μmの銅箔の配線パターンと、厚さ25μmのポリイミド製の基材フィルムで形成される銅張り積層板)の銅箔面(配線パターン面)に貼り合わせた(貼り合わせ条件;熱ラミネート、100℃、2MPa、30秒とした。)。次にプレス温度170℃、圧力2.0MPa、時間5分間加熱圧着して、最外層の銅箔Aの表面平滑性、端部からの流れ出し性を評価した。得られた結果を下記表1に示す。
【0082】
(4)フロー性
作製した接着フィルム105の離型処理された紙ベースのセパレーターを剥がした後、該接着フィルム105を温度170℃、圧力9.8MPa、時間1分間加熱圧着して、直径1.0mm、長さ1.0mmのステンレス製のダイからの接着フィルム流出量(単位g/10分)をフロー性の指標として算出した。得られた結果を下記表1に示す。
【0083】
比較例2
実施例1において、1層目の接着剤層102を作製する際、水酸化アルミニウムのハイジライトH42M(昭和電工製)を50重量部とした接着剤組成物の溶液を使用した以外は、実施例1と同様に行った。得られた接着フィルム105の特性評価(表面平滑性、端部からの流れ出し性およびフロー性)結果を下記表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
表中の各接着剤層の形成に用いられた接着剤組成物の溶液の配合部数(重量部)は、溶剤を除いた有効成分の重量部比を表わす。
【0086】
また、表中の回路基板構成Aは、銅張り積層板/接着フィルム/所要の配線パターンを有する銅張り積層板とする。
【0087】
表中の回路基板構成Bは、カバーレイフィルム/所要の配線パターンを有する銅張り積層板とする。
【0088】
表中の表面平滑性の判定は、図3のようなレーザー変位計を用いて、以下のように2段階で評価して行った。いずれもサンプル数5個につき行った。
【0089】
○ すべてのサンプルについて凹凸の高さが8μm未満である
× サンプル1つでも凹凸の高さが8μm以上が見られる。
【0090】
表中の(端部からの)流れ出し性の判定は、ノギスを用いて、以下のように2段階で評価して行った。いずれもサンプル数5個につき行った。
【0091】
○ 流れ出し部分の最長部が100μm以下である
× 流れ出し部分の最長部が100μmを超える。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上の説明から明らかなように、接着フィルム、カバーレイフィルムの接着剤層としてフロー性の異なる接着剤層を少なくとも2層以上積層し、前記接着剤層のフロー性の小さい面を配線パターン上に設けることで、上記特性評価でのプレス(加熱圧着)後の表面平滑性に優れ、且つ配線パターン端子部等の開口部分に接着材料が流れ出すのを極力抑えることが可能な接着フィルム、カバーレイフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の回路基板用接着フィルムを模式的に表した断面概略図である。
【図2】本発明の回路基板用カバーレイフィルムと、該回路基板用カバーレイフィルムを適用する相手側の回路パターンが形成されている多層回路基板の構成とを模式的に表した断面概略図である。
【図3】実施例で得られた接着フィルムにつき、レーザー変位計を用いて表面平滑性(表面の凹凸)を測定する様子を模式的に表した解説図である。
【符号の説明】
【0094】
100 カバーレイフィルム、
101 カバーレイフィルム基材となる可とう性絶縁フィルム(カバーレイ構成ベースフィルム)、
102 フロー性の大きい接着剤層、
103 フロー性の小さい接着剤層、
104 ロー性の異なる複数の層からなる接着剤層、
105 回路基板用接着フィルム、
200 回路基板、
201 導通(ないし回路)パターン、
202 回路基板構成ベースフィルム、
203 下層基板(絶縁基板)、
300 多層回路基板ないしフレキシブル回路基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロー性の異なる接着剤層を少なくとも2層以上積層した、傾斜配置によって成ることを特徴とする回路基板用接着フィルム。
【請求項2】
温度170℃、圧力9.8MPa、時間1分間加熱圧着して、直径1.0mm、長さ1.0mmのステンレス製のダイからの接着フィルム流出量(単位g/10分)をフロー性の指標として算出すると、
一層目の接着剤層のフロー性は70〜120g/10分の範囲であり、
二層目の接着剤層のフロー性は10〜50g/10分の範囲であり、
接着剤層が三層以上の場合は、n層目の接着剤層のフロー性はn−1層目のフロー性より小さい(ここで、nは3〜接着剤層の積層数までの整数である。)ことを特徴とする回路基板用接着フィルム。
【請求項3】
フィルム基材の片面に、請求項1又は2記載のフロー性の異なる接着剤層を少なくとも2層以上積層して成る接着フィルム層を設けてなるものであって、
前記接着フィルム層におけるフロー性が前記フィルム基材側から外側にかけて小さくなるよう傾斜配置して成ることを特徴とする回路基板用カバーレイフィルム。
【請求項4】
請求項1又は2記載のフロー性の異なる接着剤層を少なくとも2層以上積層して成り、フロー性が小さい方がパターン側にくるように配置されている多層回路基板。
【請求項5】
請求項3の回路基板用カバーレイフィルムを用いてなるフレキシブル回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−198732(P2008−198732A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30977(P2007−30977)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000233170)日立化成ポリマー株式会社 (75)
【出願人】(000230249)日本メクトロン株式会社 (216)
【Fターム(参考)】