説明

回路基板用熱硬化樹脂性組成物

【課題】熱膨張率が低く、耐熱性及び導体回路との密着性に優れる熱硬化性樹脂組成物、並びに、それを用いたプリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置を提供する。
【解決手段】(A)1分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物と、(B)1分子内に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(C)ビスマレイミド化合物と、(D)下記一般式で表されるホウ素塩とを含んでなる熱硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、並びにそれを用いたプリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化等の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、さらには高密度実装化が進んでおり、これらに使用される高密度実装対応のプリント配線板等は、従来にも増して小型化かつ高密度化が進んでいる。
【0003】
プリント配線板を薄型化した場合には、実装信頼性の低下、プリント配線板のそりが大きくなるという問題が生じるため、用いられる熱硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物の低熱膨張率化、高ガラス転移温度化及び高密着化に関する検討が盛んに行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、(A)1分子中に芳香環を3個以上含む芳香族ビスマレイミド化合物:100重量部、(B)脂肪族ビスマレイミド化合物:1〜50重量部、(C)1分子中に芳香環を2個または1個含む芳香族ビスマレイミド化合物:30〜300重量部及び(D)下記式(1)で表されるビスフェノール化合物:30〜300重量部を含有するビスマレイミド系組成物について記載されている。特許文献1によると、そのビスマレイミド系組成物は、液晶ガラス搬送用CFRPロボットハンド等に好適な耐熱性を有するマトリックス樹脂において、無溶剤含浸性、プリプレグのタック性、ドレープ性、保存安定性を損なわずに、CFRPのクラックが低減され、かつ長期高温下に置いたときの重量減少が少ない、即ち耐熱性がより向上されたマトリックス樹脂であると述べられている。また、例えば、特許文献2には、エポキシ樹脂(A)、ポリアミン、ポリフェノールまたは酸無水物の中から選ばれた1つであるエポキシ樹脂硬化剤(B)、及び4級ホスホニウムボレート(C)を、有機溶剤中に均一に溶解してなる積層板用エポキシ樹脂組成物について記載されている。特許文献2によると、その積層板用エポキシ樹脂組成物は、硬化性に優れていて、短い積層成形時間でも十分に硬化させることが出来、また、常温付近での保存安定性、さらには成形性にも優れ、積層板あるいはプリント配線板の製造に好適に用いることができると述べられている。
【0005】
更なる低熱膨張率、高耐熱性及び高密着性を充分に発現するためには、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂とビスマレイミド化合物とを完全に反応させることが必要である。反応が充分に進まないと、低熱膨張率化、高耐熱性化及び高密着性化を達成することができない。特に、熱硬化性樹脂組成物の密着力が低いと、その組成物をプリント配線板等に用いた場合、充分な導体回路との密着性を得ることができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−263624号公報
【特許文献2】特開2006−104337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、熱膨張率が低く、耐熱性及び導体回路との密着性(ピール強度)に優れる熱硬化性樹脂組成物、並びに、それを用いたプリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための手段は、以下のとおりである。
(1)(A)1分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物と、(B)1分子内に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(C)ビスマレイミド化合物と、(D)下記一般式(1)で表されるホウ素塩とを含んでなる、熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

その式中、X1、X2、X3及びX4は、各々独立に、水素又は炭素数1から12の置換若しくは無置換の炭化水素基であり、Y+は1価の陽イオンである。
(2)その(A)エポキシ樹脂の粘度が、150℃条件下で、ICI粘度計で測定して0.05から3.5Pa・sであり、かつ、その(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量が160から320である(1)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(3)その(D)一般式(1)で表されるホウ素塩が、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(p−エチルフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(p−エトキシフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウムn−ブチルトリフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(4−フルオロフェニル)ボレート、ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリ(p−トリル)フェニルホスホニウムテトラ(p−トリル)ボレート、テトラn−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルトリフェニルn−ブチルトリフェニルボレート、フェナシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジアザビシクロウンデセニウムテトラフェニルボレート、ピリジニウムテトラフェニルボレート、及び2-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレートから選ばれる少なくとも1種である、(1)又は(2)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(4)(1)から(3)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させてなる、プリプレグ。
(5)(4)に記載のプリプレグの少なくとも片面上に金属箔を配置してなる、積層板。
(6)少なくとも2枚のそのプリプレグが積層されたプリプレグ積層体からなる、(5)に記載の積層板。
(7)(1)から(3)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を支持フィルム又は金属箔上に配置してなる、樹脂シート。
(8)(4)に記載のプリプレグ、(5)若しくは(6)に記載の積層板、又は(7)に記載の樹脂シートから形成されたプリント配線板。
(9)(8)に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱膨張率が低く、耐熱性及び導体回路との密着性(ピール強度)に優れ、高ガラス転移温度を有する回路基板用熱硬化性樹脂組成物、並びに、それを用いたプリプレグ、積層板、樹脂シートが提供され、さらに、それらを用いたプリント配線板、及び半導体装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について更に詳しく説明をする。
【0011】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ガラス繊維基材等の基材に含浸させプリプレグ、プリプレグを用いた積層板に用いることができる。また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、優れた絶縁性を有することから、例えばプリント配線板の絶縁層に用いることができる。さらに、本願発明の熱硬化性樹脂組成物は、低線膨張であり、耐熱性及び導体回路との密着性に優れることから、半導体装置のインターポーザとして用いることができる。
【0012】
半導体装置のプリント配線板としては、マザーボード及びインターポーザが知られている。インターポーザは、マザーボードと同様のプリント配線板であるが、半導体素子(ベアチップ)又は半導体パッケージとマザーボードの間に介在し、マザーボード上に搭載される。インターポーザは、マザーボードと同様に、半導体パッケージを実装する基板として用いてもよいが、マザーボードと異なる特有の使用方法としては、パッケージ基板又はモジュール基板として用いられる。
【0013】
パッケージ基板とは、半導体パッケージの基板としてインターポーザが用いられるという意味である。半導体パッケージには、半導体素子をリードフレーム上に搭載し、両者をワイアボンディングで接続し、樹脂で封止するタイプと、インターポーザをパッケージ基板として用い、半導体素子をそのインターポーザ上に搭載し、両者をワイアボンディング等の方法で接続し、樹脂で封止するタイプとがある。
【0014】
(1)熱硬化性樹脂組成物
本発明による熱硬化性樹脂組成物は、(A)1分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物と、(B)1分子内に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(C)ビスマレイミド化合物と、(D)下記一般式(1)で表されるホウ素塩とを含んでなり、それらを含むことによって、硬化物の低熱膨張率を達成でき、耐熱性及び導体回路との密着性に優れる。
【0015】
ここで硬化物とは、熱硬化性樹脂組成物を構成する組成物中の硬化性成分が有する官能基の反応が実質的に完結した状態のものを意味し、例えば、示差走査熱量測定(DSC)装置により発熱量を測定することにより評価することができる。具体的には、この発熱量がほとんど検出されない状態を指すものである。硬化物を得る条件としては、例えば、120〜220℃で、30〜180分間処理することが好ましく、180〜230℃で、45〜120分間処理することがより好ましい。
【0016】
なお、(A)1分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物を、適宜、(A)「エポキシ樹脂」と称し、(B)1分子内に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有する化合物を、適宜、(B)「フェノール樹脂」と称し、さらに、(D)下記一般式(1)で表されるホウ素塩を、適宜、(D)「特定ホウ素塩」と称する。
【0017】
【化2】

【0018】
その式中、X1、X2、X3及びX4は、各々独立に、水素又は炭素数1から12の置換若しくは無置換の炭化水素基であり、Y+は1価の陽イオンである。
【0019】
本発明による熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)フェノール樹脂と、(C)ビスマレイミド化合物と、(D)特定ホウ素塩とを含んでなるが、本発明の目的に反しない範囲において、その他樹脂、硬化剤、硬化促進剤、難燃剤、カップリング剤、無機充填材、その他成分等を含んでよい。
【0020】
(A)1分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(エポキシ樹脂)
本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有される(A)エポキシ樹脂は、1分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物である。したがって、本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有される(A)エポキシ樹脂は、1分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有すれば、何ら制限を受けることはない。
【0021】
本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂は、上述のとおり、1分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物であれば、特に何ら制限を受けることはないが、例えば、ビスフェノールA系、ビスフェノールF系、ビフェニル系、ノボラック系、多官能フェノール系、ナフタレン系、脂環式系、アルコール系等のグリシジルエーテル、グリシジルアミン系、グリシジルエステル系等が挙げられ、それらを単独で用いてもよいし、それらの2種以上を組み合わせて用いてもよい。具体的には、誘電特性、耐熱性、耐湿性及び銅箔接着性の点からビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、良好な低熱膨張性や高いガラス転移温度を有する点から、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0022】
本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有される(A)エポキシ樹脂は、次の一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0023】
【化3】

【0024】
その式中、R1は水素又は炭素数1〜4の置換若しくは無置換の炭化水素基、R2は、−CH2−、−CH2−Ph−Ph−CH2−又は−CH2−Ph−CH2−であり、Phは、2価の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基であり、nは1〜10の整数である。
【0025】
一般式(2)で表される化合物の中でも、R1がCH3であり、R2がCH2であるエポキシ樹脂がより好ましく、R1が水素であり、R2が−CH2−Ph−Ph−CH2−(Phはフェニレン基)であるエポキシ樹脂が更に好ましい。
【0026】
以下に、本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有される好ましい(A)エポキシ樹脂の具体的例示化合物を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されることはない。
【0027】
【化4】

【0028】
本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有される(A)エポキシ樹脂の粘度が、150℃条件下で、ICI粘度計で測定して0.05〜3.5Pa・sであり、かつ、エポキシ樹脂のエポキシ当量が160〜320であることが好ましく、粘度が、150℃条件下で、ICI粘度計で測定して0.07〜2.0Pa・sであり、かつ、エポキシ樹脂のエポキシ当量が180〜300であることが更に好ましい。
【0029】
本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有される(A)エポキシ樹脂は、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明による熱硬化性樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体の中からシリカ、水酸化アルミニウム、及びその他の無機充填材を除いた組成物中の20〜55質量%であることが好ましく、25〜50質量%であることがより好ましく、30質量%〜45質量%であることが更に好ましい。
【0031】
上記のように、(A)エポキシ樹脂を適切に含有させることにより、本発明による熱硬化性樹脂組成物は、効果的に密着性と耐熱性を発現させることができる。(A)エポキシ樹脂の含有量が上記の下限値(20質量%)未満であると、実用上問題ないが、ピール強度が低下するか、回路基板の細線加工が困難である場合がある。そして、上記上限値(55質量%)超であると、実用上問題ないが、半田耐熱性が悪化する場合がある。
【0032】
(B)1分子内に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有する化合物(フェノール樹脂))
本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有される(B)フェノール樹脂は、1分子内に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有する化合物である。したがって、本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有される(B)フェノール樹脂は、1分子内に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有すれば、何ら制限を受けることはない。
【0033】
本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有されるフェノール樹脂は、上述のとおり、1分子内に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有する化合物であれば、特に何ら制限を受けることはないが、例えば、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂として、ノボラック型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂等が挙げられ、それらのフェノール樹脂を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。また、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等の2官能化合物も例として挙げられる。
【0034】
本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有される(B)フェノール樹脂は、次の一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0035】
【化5】

【0036】
その式中、R1は水素又は炭素数1〜4の置換若しくは無置換の炭化水素基、R2は、−CH2−、−CH2−Ph−Ph−CH2−又は−CH2−Ph−CH2−であり、Phは、2価の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基であり、nは1〜10の整数である。
【0037】
以下に、本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有される好ましい(B)フェノール樹脂の具体的例示化合物を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されることはない。
【0038】
【化6】

【0039】
本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有される(B)フェノール樹脂の粘度が、150℃条件下で、ICI粘度計で測定して0.05〜3.5Pa・sであり、かつ、フェノール樹脂のフェノール性水酸基当量が95〜240であることが好ましく、粘度が、150℃条件下で、ICI粘度計で測定して0.07〜2.0Pa・sであり、かつ、フェノール性水酸基当量が100〜220であることがより好ましい。
【0040】
本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有される(B)フェノール樹脂は、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
本発明による熱硬化性樹脂組成物中の(B)フェノール樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体の中からシリカ、水酸化アルミニウム、及びその他の無機充填材を除いた組成物中の10〜50質量%であることが好ましく、14〜44質量%であることがより好ましい。
【0042】
上記のように、(B)フェノール樹脂を適切に含有させることにより、本発明による熱硬化性樹脂組成物は、効果的に耐熱性と密着性を発現させることができる。(B)フェノール樹脂の含有量が上記の下限値(10質量%)未満であると、実用上問題ないが、半田耐熱性が悪化するか、リフロー作業時の信頼性が低下する場合がある。そして、上記上限値(50質量%)超であると、実用上問題ないが、ピール強度が低下する場合がある。
【0043】
(C)ビスマレイミド化合物
本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有される(C)ビスマレイミド化合物は、分子内に少なくとも2つのマレイミド基を有する化合物である。ビスマレイミド化合物のマレイミド基は、5員環の平面構造を有し、マレイミド基の二重結合が分子間で相互作用しやすく極性が高いため、マレイミド基、ベンゼン環、その他の平面構造を有する化合物等と強い分子間相互作用を示し、分子運動を抑制することができる。そのため、本発明による熱硬化性樹脂組成物は、硬化物の熱膨張率を下げることが可能となり、さらに、耐熱性に優れることとなる。
【0044】
本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有されるビスマレイミド化合物は、特に限定されることはないが、例えば、4,4‘−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、p−フェニレンビスマレイミド、2,2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、N,N‘−エチレンジマレイミド、N,N‘−ヘキサメチレンジマレイミド等が挙げられ、ポリマレイミドとしては、ポリフェニルメタンマレイミド等が挙げられる。
【0045】
本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有される(C)ビスマレイミド化合物は、次の一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【0046】
【化7】

【0047】
その式中、R1〜R4は水素又は炭素数1〜4の置換若しくは無置換の炭化水素基であり、R5は−CH2−、−O−又は2価の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基である。
【0048】
一般式(4)で表される化合物の中でも、R1が水素であり、R2が水素であるビスマレイミド化合物がより好ましい。
【0049】
以下に、本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有される好ましい(C)ビスマレイミドの具体的例示化合物を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されることはない。
【0050】
【化8】

【0051】
低吸水率等を考慮すると、2,2’−ビス−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(例示化合物4−3)、ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(例示化合物4−2)が好ましい。
【0052】
本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有される(A)ビスマレイミド化合物は、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
本発明による熱硬化性樹脂組成物中の(A)ビスマレイミド化合物の含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体の中からシリカ、水酸化アルミニウム、及びその他の無機充填材を除いた組成物中の15〜70質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましく、25〜50質量%であることが更に好ましい。
【0054】
上記のように、(C)ビスマレイミド化合物を適切に含有させることにより、本発明による熱硬化性樹脂組成物は、効果的に低線膨張係数を発現させることができる。(A)ビスマレイミド化合物の含有量が上記の下限値(15質量%)未満であると線膨張係数が十分に低くならないことがあり、実用上問題ないが、実装信頼性が低下するか、プリント配線板の反りが大きくなる場合がある。そして、上記の上限値(70質量%)超であると、実用上問題ないが、導体回路と樹脂層との密着性に関するピール強度が低下する場合がある。
【0055】
(D)特定ホウ素塩
本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有される(D)特定ホウ素塩は、下記の一般式(1)で表される4級のホウ素塩である。
【0056】
【化9】

【0057】
その式中、X1、X2、X3及びX4は、各々独立に、水素又は炭素数1から12の置換若しくは無置換の炭化水素基であり、Y+は1価の陽イオンである。
【0058】
一般式(1)で表される化合物中のX1〜X4のうち少なくとも3つが置換又は無置換の芳香族炭素基であることが好ましく、X1〜X4の全てが置換又は無置換の芳香族炭素基であるであることがより好ましい。
【0059】
一般式(1)で表される化合物中のY+は1価の陽イオンであれば、特に限定されることはないが、置換又は無置換の4級アンモニウムイオン、置換又は無置換のホスホニウムイオンが好ましい。
【0060】
本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有される(D)特定ホウ素塩は、上述の一般式(1)で表すことができれば、特に何ら制限を受けることはないが、例えば、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(p−エチルフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(p−エトキシフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウムn−ブチルトリフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(4−フルオロフェニル)ボレート、ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリ(p−トリル)フェニルホスホニウムテトラ(p−トリル)ボレート、テトラn−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルトリフェニルn−ブチルトリフェニルボレート、フェナシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジアザビシクロウンデセニウムテトラフェニルボレート、ピリジニウムテトラフェニルボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート等が挙げられる。
【0061】
以下に、本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有される好ましい(D)特定ホウ素塩の具体的例示化合物を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されることはない。
【0062】
【化10】

【0063】
本発明による熱硬化性樹脂組成物に含有される(D)特定ホウ素塩は、1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
本発明による熱硬化性樹脂組成物中の(D)特定ホウ素塩の含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体の中からシリカ、及びその他の無機充填材を除いた組成物中の0.05〜2.5質量%であることが好ましく、0.20〜2.0質量%であることがより好ましく、0.4質量%〜1.0質量%であることが更に好ましい。
【0065】
上記のように、(D)特定ホウ素塩を適切に含有させることにより、本発明による熱硬化性樹脂組成物は、効果的に高密着性を発現させることができる。(D)特定ホウ素塩の含有量が上記の下限値(0.05質量%)未満であると、実用上問題ないが、ピール強度が低下するか、回路基板の細線加工が困難である場合がある。そして、上記上限値(2.5質量%)超であると、実用上問題ないが、プリプレグの保存性が十分でない場合がある。
【0066】
(2)プリプレグ
本発明によるプリプレグは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させてなるものである。本発明によるプリプレグは、耐熱性等の特性に優れる。
【0067】
本発明によるプリプレグで用いられる基材は、特に限定されることはないが、例えばガラス繊布、ガラス不繊布等のガラス繊維基材、ガラス以外の無機化合物を成分とする繊布、不繊布等の無機繊維基材、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の有機繊維で構成される有機繊維基材等が挙げられる。
【0068】
強度、吸水率の観点から、ガラス繊布、ガラス不繊布等のガラス繊維基材が好ましい。
【0069】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させる方法は、特に限定されることはないが、例えば、溶剤を用いて熱硬化性樹脂組成物を樹脂ワニスにし、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターによる塗布する方法、スプレーによる吹き付ける方法等が挙げられる。
【0070】
含浸性の観点から基材を樹脂ワニスに浸漬する方法が好ましい。これによって、基材に対する熱硬化性樹脂組成物の含浸性を更に向上することが可能である。なお、基材を樹脂ワニスに浸漬する場合、通常の含浸塗布設備を使用することができる。
【0071】
樹脂ワニスに用いられる溶媒は、本発明の熱硬化性樹脂組成物に対して良好な溶解性を示すことが好ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。良好な溶解性を示す溶媒であれば、特に限定されることはないが、例えばN−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0072】
樹脂ワニス中の固形分は、特に限定されることはないが、本発明の熱硬化性樹脂組成物の固形分40〜80質量%が好ましく、50〜65質量%がより好ましい。これにより、樹脂ワニスの基材への含浸性を更に向上させることができる。
【0073】
基材に本発明の熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、所定温度、例えば80〜200℃で乾燥させることによりプリプレグを得ることができる。
【0074】
(3)積層板
本発明による積層板は、本発明のプリプレグの少なくとも片面上に金属箔を配置してなるものか、又は少なくとも2枚の本発明のプリプレグが積層されたプリプレグ積層体の少なくとも片面上に金属箔を配置してなるものである。本発明の積層体は、誘電率及び誘電正接が低く、耐熱性及びと密着性に優れる。
【0075】
本発明による積層板は、本発明のプリプレグの片面又は上下両面に、金属箔及び/又は支持フィルムを重ねてよい。さらに、本発明による積層板は、少なくとも2枚の本発明のプリプレグが積層されたプリプレグ積層体の片面又は最も外側の上下両面に、金属箔及び/又は支持フィルムを重ねてよい。
【0076】
支持フィルムは、取扱いが容易であるものを選択することができる。支持フィルムは、特に限定されることはないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂フィルム、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性を有した熱可塑性樹脂フィルム等が挙げられ、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂フィルムが好ましい。
【0077】
支持フィルムの厚さは、取扱いが容易であれば、特に限定されることはないが、1〜100μmが好ましく、3〜50μmがより好ましい。
【0078】
金属箔は、特に限定されないが、例えば、銅及び/又は銅系合金、アルミ及び/又はアルミ系合金、鉄及び/又は鉄系合金、銀及び/又は銀系合金、金及び金系合金、亜鉛及び亜鉛系合金、ニッケル及びニッケル系合金、錫及び錫系合金等が挙げられる。
【0079】
金属箔の厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上70μm以下であることが好ましく、1μm以上35μ以下がより好ましく、1.5μm以上18μm以下が更に好ましい。金属箔の厚さが0.1μm(下限値)未満であると、実用上問題ないが、金属箔が傷つき、ピンホールが発生し、金属箔をエッチングし導体回路として用いる場合に、回路パターン成形時のメッキバラツキ、回路断線、エッチング液やデスミア液等の薬液の染み込み等が発生することがある。金属箔の厚さが70μm(上限値)超であると、金属箔の厚みバラツキが大きくなるか、金属箔粗化面の表面粗さバラツキが大きくなることがある。
【0080】
また、金属箔は、キャリア箔付き極薄金属箔を用いてもよい。キャリア箔付き極薄金属箔とは、剥離可能なキャリア箔と極薄金属箔とを張り合わせた金属箔である。キャリア箔付き極薄金属箔を用いることでプリプレグの両面に極薄金属箔層を形成できることから、例えば、セミアディティブ法等で回路を形成する場合、無電解メッキを行うことなく、極薄金属箔を直接給電層として電解メッキすることで、回路を形成後、極薄銅箔をフラッシュエッチングすることができる。キャリア箔付き極薄金属箔を用いることによって、厚さ10μm以下の極薄金属箔でも、例えばプレス工程での極薄金属箔のハンドリング性の低下や、極薄銅箔の割れや切れを防ぐことができる。極薄金属箔の厚さは、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.5μm以上5μm以下がより好ましく、1μm以上3μm以下が更に好ましい。極薄金属箔の厚さが0.1μm(下限値)未満であると、実用上問題ないが、キャリア箔剥離後の極薄金属箔の傷つき、極薄金属箔のピンホールの発生、ピンホールの発生による回路パターン成形時のメッキバラツキ、回路配線の断線、エッチング液やデスミア液等の薬液の染み込み等が発生する場合がある。極薄金属箔の厚さが10μm(上限値)超であると、実用上問題ないが、極薄金属箔の厚みバラツキが大きくなるか、極薄金属箔粗化面の表面粗さのバラツキが大きくなる場合がある。通常、キャリア箔付き極薄金属箔は、プレス成形後の積層板に回路パターン形成する前にキャリア箔を剥離する。
【0081】
プリプレグと金属箔及び/又は支持フィルムとを重ねたものを加熱、加圧して成形することで本発明の積層板を得ることができる。加熱する温度は、特に限定されないが、150〜240℃が好ましく、180〜220℃がより好ましい。前記加圧する圧力は、特に限定されないが、2〜5MPaが好ましく、2.5〜4MPaがより好ましい。
【0082】
(4)樹脂シート
本発明による樹脂シートは、本発明の熱硬化性熱硬化性樹脂組成物を支持フィルム又は金属箔上に配置してなるものである。本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いた樹脂シートは、樹脂ワニスからなる絶縁層を支持フィルム又は金属箔上に形成することにより得られる。
【0083】
樹脂ワニス中の本発明の熱硬化性樹脂組成物の含有量は、特に限定されないが、45〜85質量%が好ましく、55〜75質量%がより好ましい。
【0084】
次に、樹脂ワニスを、各種塗工装置を用いて、支持フィルム上及び/又は金属箔上に塗工した後乾燥するか、樹脂ワニスをスプレー装置により支持フィルム及び/又は金属箔に噴霧塗工した後乾燥する。どちらかの方法により樹脂シートを作製することができる。
【0085】
塗工装置は、ボイドがなく、均一な絶縁層の厚みを有する樹脂シートを効率よく製造することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、ロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、コンマコーター、カーテンコーター等が挙げられる。これらの中でも、ダイコーター、ナイフコーター及びコンマコーターが好ましい。
【0086】
支持フィルムは、支持フィルムに絶縁層を形成するため、取扱いが容易であるものを選択することが好ましい。また、樹脂シートの絶縁層を内層回路基板面に積層後、支持フィルムを剥離することから、内層回路基板に積層後、剥離が容易なものであることが好ましい。したがって、支持フィルムは、絶縁層から適度な強度で剥離することが容易であるものであれば、特に限定されることはないが、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂フィルム、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性を有した熱可塑性樹脂フィルム等が挙げられ、これらの中でも、ポリエステル樹脂フィルムが好ましい。
【0087】
支持フィルムの厚さは、取扱いが容易で、さらに絶縁層表面の平坦性に優れる限り特に限定されることはないが、1〜100μmが好ましく、3〜50μmがより好ましい。
【0088】
金属箔は、支持フィルム同様、内層回路基板に樹脂シートを積層後、剥離して用いてもよいし、金属箔をエッチングし導体回路として用いてもよい。金属箔は、特に限定されることはないが、例えば、銅及び/又は銅系合金、アルミ及び/又はアルミ系合金、鉄及び/又は鉄系合金、銀及び/又は銀系合金、金及び/又は金系合金、亜鉛及び/又は亜鉛系合金、ニッケル及び/又はニッケル系合金、錫及び/又は錫系合金等が挙げられる。
【0089】
金属箔の厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上70μm以下であることが好ましく、1μm以上35μ以下がより好ましく、1.5μm以上18μm以下が更に好ましい。金属箔の厚さが0.1μm(下限値)未満であると、実用上問題ないが、金属箔が傷つき、ピンホールが発生し、さらに、金属箔をエッチングし導体回路として用いる場合、回路パターン成形時のメッキバラツキ、回路断線、エッチング液やデスミア液等の薬液の染み込み等が発生することがある。金属箔の厚さが70μm(上限値)超であると、実用上問題ないが、金属箔の厚みバラツキが大きくなるか、金属箔粗化面の表面粗さバラツキが大きくなることがある。
【0090】
また、金属箔はキャリア箔付き極薄金属箔を用いてもよい。キャリア箔付き極薄金属箔とは、剥離可能なキャリア箔と極薄金属箔とを張り合わせた金属箔である。キャリア箔付き極薄金属箔を用いることで前記絶縁層の両面に極薄金属箔層を形成できることから、例えば、セミアディティブ法等で回路を形成する場合、無電解メッキを行うことなく、極薄金属箔を直接給電層として電解メッキすることで、回路を形成後、極薄銅箔をフラッシュエッチングすることができる。キャリア箔付き極薄金属箔を用いることによって、厚さ10μm以下の極薄金属箔でも、例えばプレス工程での極薄金属箔のハンドリング性の低下や、極薄銅箔の割れや切れを防ぐことができる。極薄金属箔の厚さは、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.5μm以上5μm以下がより好ましく、1μm以上3μm以下が更に好ましい。前記極薄金属箔の厚さが0.1(下限値)未満であると、実用上問題ないが、キャリア箔剥離後の極薄金属箔の傷つき、極薄金属箔のピンホールの発生、ピンホールの発生による回路パターン成形時のメッキバラツキ、回路配線の断線、エッチング液やデスミア液等の薬液の染み込み等が発生する場合がある。極薄金属箔の厚さが10μm(上限値)超であると、極薄金属箔の厚みバラツキが大きくなるか、極薄金属箔粗化面の表面粗さのバラツキが大きくなる場合がある。通常、キャリア箔付き極薄金属箔は、プレス成形後の積層板に回路パターン形成する前にキャリア箔を剥離する。
【0091】
(5)プリント配線板
本発明によるプリント配線板は、本発明のプリプレグ、本発明の積層板又は本発明の樹脂シートから形成されるものである。
【0092】
本発明によるプリント配線板の製造方法は、特に限定されることはないが、例えば、以下のように製造することができる。
【0093】
両面に銅箔を有する積層板を用意し、ドリル等によりスルーホールを形成し、メッキにより前記スルーホールを充填した後、積層板の両面に、エッチング等により所定の導体回路(内層回路)を形成し、導体回路を黒化処理等の粗化処理することにより内層回路基板を作製する。
【0094】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いた場合、従来に比べ微細スルーホールを歩留まり良好で形成することができ、さらに、従来に比べスルーホール形成後の壁の凹凸が非常に小さなものとなる。
【0095】
次に内層回路基板の上下面に、本発明の樹脂シート、又は本発明のプリプレグを形成し、加熱加圧成形する。具体的には、本発明の樹脂シート、又は本発明のプリプレグと内層回路基板とを合わせて、真空加圧式ラミネーター装置などを用いて真空加熱加圧成形させる。その後、熱風乾燥装置等で加熱硬化させることにより内層回路基板上に絶縁層を形成することができる。ここで加熱加圧成形する条件としては、特に限定されないが、一例を挙げると、温度60〜160℃、圧力0.2〜3MPaで実施することができる。また、加熱硬化させる条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、温度140〜240℃、時間30〜120分間で実施することができる。
【0096】
別の方法としては、本発明の樹脂シート、又は本発明のプリプレグを内層回路基板に重ね合わせ、これを、平板プレス装置等を用いて加熱加圧成形することにより内層回路基板上に絶縁層を形成することもできる。ここで加熱加圧成形する条件としては、特に限定されないが、一例を挙げると、温度140〜240℃、圧力1〜4MPaで実施することができる。
【0097】
本発明の積層体は、絶縁層表面を過マンガン酸塩、重クロム酸塩等の酸化剤などにより粗化処理した後、金属メッキにより新たな導電配線回路を形成することができる。
【0098】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いた場合、従来に比べ微細配線加工に優れ、導体回路を形成した際の導体幅(ライン)、及び導体間(スペース)が非常に狭い配線を歩留まり良く形成することができる。
【0099】
その後、絶縁層を加熱することにより硬化させる。硬化させる温度は、特に限定されないが、例えば、160℃〜240℃の範囲で硬化してよく、180℃〜200℃の範囲で硬化させることが好ましい。
【0100】
次に、絶縁層に、炭酸レーザー装置を用いて開口部を設け、電解銅めっきにより絶縁層表面に外層回路形成を行い、外層回路と内層回路との導通を図る。なお、外層回路には、半導体素子を実装するための接続用電極部を設ける。その後、最外層にソルダーレジストを形成し、露光・現像により半導体素子が実装できるよう接続用電極部を露出させ、ニッケル金メッキ処理を施し、所定の大きさに切断し、多層プリント配線板を得ることができる。
【0101】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いた場合、ニッケル金メッキの際に従来のエポキシ熱硬化性樹脂組成物を用いた場合に比べ、絶縁層にニッケル等の金属原子が残らないため、電気信頼性に優れる。
【0102】
(6)半導体装置
本発明による半導体装置は、本発明のプリント配線板に半導体素子を搭載してなるものである。
【0103】
半導体装置は、本発明のプリント配線板に半導体素子を実装し、製造することができる。半導体素子の実装方法、封止方法は特に限定されない。例えば、半導体素子とプリント配線板とを用い、フリップチップボンダーなどを用いて多層プリント配線板上の接続用電極部と半導体素子の半田バンプの位置合わせを行う。その後、IRリフロー装置、熱板、その他加熱装置を用いて半田バンプを融点以上に加熱し、プリント配線板と半田バンプとを溶融接合することにより接続する。そして、プリント配線板と半導体素子との間に液状封止樹脂を充填し、硬化させることで半導体装置を得ることができる。
【0104】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いると、半導体素子を実装する約260℃の温度においてもプリント配線板の反りを抑制できるので実装性に優れる。
【0105】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0106】
以下、本発明をより具体的に説明するための実施例を提供する。なお、本発明は、その目的及び主旨を逸脱しない範囲で以下の実施例に限定されるものではない。
【0107】
(実施例1)
(1)樹脂ワニスの調製
13.5質量部のクレゾールノボラックエポキシ樹脂(例示化合物2−2)(DIC株式会社製N−690、エポキシ当量:220、2Pa・s(ICI粘度計、150℃))、6.5質量部のフェノールノボラック樹脂(例示化合物3−1)(DIC株式会社製TD−2093、フェノール性水酸基当量:105、1.5Pa・s(ICI粘度計、150℃))、0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(北興化学株式会社)、15.0質量部の2,2'-ビス−[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニルプロパン(例示化合物4−3)(ケイアイ化成製BMI−80、二重結合当量285)及び0.5質量部の3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン製KBM−403)に64.5質量部の溶融シリカ粒子(アドマテックス製SO−25R、平均粒径0.5μm)をシクロヘキサノンに加え、不揮発分65%となるように調整して樹脂ワニスを得た。
【0108】
(2)プリプレグの製造
上述の樹脂ワニスを用いて、ガラス繊布(厚さ0.18mm、日東紡績社製)100質量部に対して、樹脂ワニスを固形分で80質量部含浸させて、190℃の乾燥炉で7分間乾燥させ、樹脂含有量44.4質量%のプリプレグを作製した。
【0109】
(3)積層板の製造
上記プリプレグを2枚重ね、上下に厚さ18μmの電解銅箔(日本電解製YGP−18)を重ねて、圧力4MPa、温度220℃で180分間加熱加圧成形を行い、厚さ0.4mmの両面銅張積層板を得た。
【0110】
(4)樹脂シートの製造
前記で得られた樹脂ワニスを、剥離可能なキャリア箔層と0.5〜5.0μmの厚みの電解銅箔層とを張り合わせた銅箔(三井金属鉱山社製、マイクロシンEx−3、キャリア箔層:銅箔(18μm)、電解銅箔層(3μm))の電解銅箔層に、コンマコーターを用いて乾燥後の樹脂層が40μmとなるように塗工し、これを150℃の乾燥装置で10分間乾燥して、樹脂シートを製造した。
【0111】
(5)プリント配線板の作製
前記で得られた積層板に、0.1mmのドリルビットを用いてスルーホール加工を行った後、メッキによりスルーホールを充填した。さらに、両面をエッチングにより回路形成し、内層回路基板として用いた。前記内層回路基板の表裏に、前記で得られたプリプレグを重ね合わせ、これを、真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度100℃、圧力1MPaにて真空加熱加圧成形させた。これを、熱風乾燥装置にて170℃で60分間加熱し硬化させて、積層体を得た。
【0112】
次に、表面の電解銅箔層に黒化処理を施した後、炭酸ガスレーザーで、層間接続用のφ60μmのビアホールを形成した。次いで、70℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に5分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレート コンパクト CP)に15分浸漬後、中和してビアホール内のデスミア処理を行った。次に、フラッシュエッチングにより電解銅箔層表面を1μm程度エッチングした後、無電解銅メッキを厚さ0.5μmで行い、電解銅メッキ用レジスト層を厚さ18μm形成しパターン銅メッキし、温度200℃時間60分加熱してポストキュアした。次いで、メッキレジストを剥離し全面をフラッシュエッチングして、L/S=20/20μmのパターンを形成した。最後に回路表面にソルダーレジスト(太陽インキ社製PSR4000/AUS308)を厚さ20μm形成しプリント配線板を得た。
【0113】
(6)半導体装置の製造
プリント配線板は、前記で得られたプリント配線板であって、半導体素子の半田バンプ配列に相当するニッケル金メッキ処理が施された接続用電極部を配したものを50mm×50mmの大きさに切断し使用した。半導体素子(TEGチップ、サイズ15mm×15mm、厚み0.8mm)は、Sn/Pb組成の共晶で形成された半田バンプを有し、半導体素子の回路保護膜はポジ型感光性樹脂(住友ベークライト社製CRC−8300)で形成されたものを使用した。半導体装置の組み立ては、まず、半田バンプにフラックス材を転写法により均一に塗布し、次にフリップチップボンダー装置を用い、多層プリント配線板上に加熱圧着により搭載した。次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−4152S)を充填し、液状封止樹脂を硬化させることで半導体装置を得た。尚、液状封止樹脂の硬化条件は、温度150℃、120分の条件であった。
【0114】
(実施例2)
実施例1で用いた0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラ−p−トリルボレート(北興化学製)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0115】
(実施例3)
実施例1で用いた0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、0.17質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラ(p−エチルフェニル)ボレート(北興化学製)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0116】
(実施例4)
実施例1で用いた0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、0.18質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラ(p−エトキシフェニル)ボレート(北興化学製)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0117】
(実施例5)
実施例1で用いた0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムn−ブチルトリフェニルボレート(北興化学製)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0118】
(実施例6)
実施例1で用いた0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、0.25質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラ(4−フルオロフェニル)ボレート(北興化学製)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0119】
(実施例7)
実施例1で用いた0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、0.25質量部のベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(アルドリッチ製)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0120】
(実施例8)
実施例1で用いた0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、0.18質量部のトリ(p−トリル)フェニルホスホニウムテトラ(p−トリル)ボレート(北興化学製)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0121】
(実施例9)
実施例1で用いた0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、0.20質量部のテトラn−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート(アルドリッチ製)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0122】
(実施例10)
実施例1で用いた0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、0.18質量部のn−ブチルトリフェニルn−ブチルトリフェニルボレート(北興化学製)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0123】
(実施例11)
実施例1で用いた0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、0.20質量部のフェナシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(北興化学製)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0124】
(実施例12)
実施例1で用いた0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、0.25質量部のテトラエチルアンモニウムテトラフェニルボレート(アルドリッチ製)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0125】
(実施例13)
実施例1で用いた0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、0.25質量部のジアザビシクロウンデセニウムテトラフェニルボレート(北興化学製)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0126】
(実施例14)
実施例1で用いた0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、0.25質量部のピリジニウムテトラフェニルボレート(アルドリッチ製)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0127】
(実施例15)
実施例1で用いた0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、0.25質量部の2-エチル-4-メチル イミダゾリウムテトラフェニルボレート(北興化学製)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0128】
(実施例16)
実施例1で用いた15.0質量部の2,2'-ビス−[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニルプロパン(例示化合物4−3)を、15.0質量部のビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(例示化合物4−2)(ケイアイ化成製BMI−70、二重結合当量221)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0129】
(実施例17)
実施例1で用いた15.0質量部の2,2'-ビス−[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニルプロパン(例示化合物4−3)を、15.0質量部のN,N'−(4'4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド(ケイアイ化成製BMI−H、二重結合当量:175)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0130】
(実施例18)
実施例1で用いた13.5質量部のクレゾールノボラックエポキシ樹脂(例示化合物2−2)及び6.5質量部のフェノールノボラック樹脂(例示化合物3−1)を、12.9質量部のフェノールノボラックエポキシ樹脂(例示化合物2−1)(DIC株式会社製N−770、エポキシ当量:190、0.5Pa・s(ICI粘度計、150℃))及び7.1質量部のフェノールノボラック樹脂(例示化合物3−1)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0131】
(実施例19)
実施例1で用いた13.5質量部のクレゾールノボラックエポキシ樹脂(例示化合物2−2)及び6.5質量部のフェノールノボラック樹脂(例示化合物3−1)を、11.0質量部のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(例示化合物2−3)(日本化薬株式会社製NC−3000H、エポキシ当量:285、0.3Pa・s(ICI粘度計、150℃))及び9.0質量部のビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(明和化成株式会社製MEH−7851H、フェノール性水酸基当量:220、0.5Pa・s(ICI粘度計、150℃))に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0132】
(実施例20)
実施例1で用いた13.5質量部のクレゾールノボラックエポキシ樹脂(例示化合物2−2)及び6.5質量部のフェノールノボラック樹脂(例示化合物3−1)を、10.0質量部のメトキシナフタレン型エポキシ樹脂(例示化合物2−4)(DIC株式会社製EXA−9900、エポキシ当量:275、2.7Pa・s(ICI粘度計、150℃))及び10.0質量部のビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(明和化成株式会社製MEH−7851H、フェノール性水酸基当量:220、0.5Pa・s(ICI粘度計、150℃))に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0133】
(実施例21)
実施例1で用いた13.5質量部のクレゾールノボラックエポキシ樹脂(例示化合物2−2)及び6.5質量部のフェノールノボラック樹脂(例示化合物3−1)を、13.9質量部のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(例示化合物2−5)(JER株式会社製YL−7303、エポキシ当量:240、0.15Pa・s(ICI粘度計、150℃))及び6.1質量部のフェノールノボラック樹脂(例示化合物3−1)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0134】
(実施例22)
実施例1で用いた13.5質量部のクレゾールノボラックエポキシ樹脂(例示化合物2−2)(例示化合物2−2)及び6.5質量部のフェノールノボラック樹脂(例示化合物3−1)を、13.7質量部のナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(例示化合物2−6)(日本化薬株式会社製NC−7000L、エポキシ当量:230、0.7Pa・s(ICI粘度計、150℃))及び6.3質量部のフェノールノボラック樹脂(例示化合物3−1)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0135】
(実施例23)
実施例1で用いた13.5質量部のクレゾールノボラックエポキシ樹脂(例示化合物2−2)及び6.5質量部のフェノールノボラック樹脂(例示化合物3−1)を、11.0質量部のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(例示化合物2−3)(日本化薬株式会社製NC−3000H、エポキシ当量:285、0.3Pa・s(ICI粘度計、150℃))及び9.0質量部のフェノールアラルキル樹脂(例示化合物3−5)(明和化成株式会社製MEH−7800H、フェノール性水酸基当量:180、0.5Pa・s(ICI粘度計、150℃))に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0136】
(実施例24)
実施例1で用いた13.5質量部のクレゾールノボラックエポキシ樹脂(例示化合物2−2)及び6.5質量部のフェノールノボラック樹脂(例示化合物3−1)を、12.5質量部のクレゾールノボラックエポキシ樹脂(例示化合物2−2)及び7.5質量部のビスフェノールS(日華化学製BPS−N、フェノール性水酸基当量:125)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0137】
(比較例1)
実施例1で用いた0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、0.15質量部の2-フェニルイミダゾール(四国化成製)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0138】
(比較例2)
実施例1で用いた0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、0.15質量部の2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成製)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0139】
(比較例3)
実施例1で用いた0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、0.15質量部のジアザビシクロウンデセン(東京化成製)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0140】
(比較例4)
実施例1で用いた0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムクロライド(北興化学製)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0141】
(比較例5)
実施例1で用いた0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムブロマイド(北興化学製)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0142】
(比較例6)
実施例1で用いた0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、0.15質量部のベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(北興化学製)に替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0143】
(比較例7)
実施例1で用いた15.0質量部の2,2'-ビス−[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニルプロパン(例示化合物4−3)及び0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、15.0質量部のビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(例示化合物4−2)及び0.15質量部の2-フェニルイミダゾールに替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0144】
(比較例8)
実施例1で用いた15.0質量部の2,2'-ビス−[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニルプロパン(例示化合物4−3)及び0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、15.0質量部のN,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド及び0.15質量部の2-フェニルイミダゾールに替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0145】
(比較例9)
実施例1で用いた13.5質量部のクレゾールノボラックエポキシ樹脂(例示化合物2−2)、6.5質量部のフェノールノボラック樹脂(例示化合物3−1)、及び0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、11.0質量部のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(例示化合物2−3)、9.0質量部のビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、及び0.15質量部の2-フェニルイミダゾールに替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0146】
(比較例10)
実施例1で用いた13.5質量部のクレゾールノボラックエポキシ樹脂(例示化合物2−2)、6.5質量部のフェノールノボラック樹脂(例示化合物3−1)、及び0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、10.0質量部のメトキシナフタレン型エポキシ樹脂(例示化合物2−4)、10.0質量部のビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、及び0.15質量部の2-フェニルイミダゾールに替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0147】
(比較例11)
実施例1で用いた13.5質量部のクレゾールノボラックエポキシ樹脂(例示化合物2−2)及び6.5質量部のフェノールノボラック樹脂(例示化合物3−1)、及び0.15質量部のテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを、12.5質量部のクレゾールノボラックエポキシ樹脂(例示化合物2−2)、7.5質量部のビスフェノールS、及び0.15質量部の2-フェニルイミダゾールに替えて用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0148】
(比較例12)
実施例1で用いた13.5質量部のクレゾールノボラックエポキシ樹脂(例示化合物2−2)及び6.5質量部のフェノールノボラック樹脂(例示化合物3−1)を、24.0質量部のクレゾールノボラックエポキシ樹脂(例示化合物2−2)及び11.0質量部のフェノールノボラック樹脂(例示化合物3−1)に替えて用いて、実施例1で用いた15.0質量部の2,2'-ビス−[4-(4-マレイミドフェノキシ)]フェニルプロパン(例示化合物4−3)を用いなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0149】
各実施例及び比較例により得られた樹脂ワニス及び積層板について、次の各評価を行った。各評価を、評価方法と共に以下に示す。また得られた結果を表1に示す。
【0150】
1.評価方法
(1)ガラス転移温度
前記実施例、及び比較例で得られた厚さ0.4mmの両面銅張積層板を全面エッチングし、6mm×25mmの試験片を作製し、DMA装置(TAインスツルメント社製動的粘弾性測定装置DMA983)を用いて5℃/分で昇温し、tanδのピーク位置をガラス転移温度とした。
【0151】
(2)線膨張係数
実施例、及び比較例で得られた厚さ0.4mmの両面銅張積層板を全面エッチングし、得られた積層板から5mm×20mmの試験片を作製し、TMA装置(TAインスツルメント社製)を用いて5℃/分の条件で、面方向(X方向)の線膨張係数を測定した。
【0152】
(3)半田耐熱性
得られた積層板を50mm×50mmにグラインダーソーでカットした後、エッチングにより銅箔を1/4だけ残した試料を作製し、JIS C 6481に準拠して評価した。評価は、121℃、100%、2時間、PCT吸湿処理を行った後に、260℃及び288℃の半田槽に30秒間浸漬した後で外観の異常の有無を調べた。評価方法は以下の3段階で実施した。
◎評価方法:異常なし
:フクレあり(全体的にフクレの箇所がある)
:微小フクレ(ガラスクロスの上にできる小さなフクレ、初期段階)
【0153】
(4)ピール強度
実施例、及び比較例で得られた厚さ0.4mmの両面銅張積層板から100mm×20mmの試験片を作製し、23℃におけるピール強度を測定した。尚、ピール強度測定は、JIS C 6481に準拠して行った。
【0154】
(5)基板の反り
反り評価は、上記で得られた半導体装置を、温度30℃、湿度70%の雰囲気下で196時間放置後、260℃リフローを3回行い、基板の反りを評価した。リフロー条件は、プレヒート(160〜200℃、50〜60秒で昇温)、加熱(200〜260℃、65〜75秒で昇温)、リフロー(260〜262℃、5〜10秒)及び冷却(262〜30℃、15分)を1サイクルとした。温度可変レーザー三次元測定機(日立テクノロジーアンドサービス社製 形式LS220-MT100MT50)を用い、上記測定機のサンプルチャンバーに上記で得られた半導体装置の半導体素子面を下にして設置し、多層プリント配線板の高さ方向の変位を測定し、変位差の最も大きい値を反り量とした。反り量に関しては、150μmを超えるとマザーボード実装時に接続不良を起こす可能性が高くなる。
【0155】
2.評価結果
表1から明らかなように、実施例1〜24の本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いた積層板は、ガラス転移温度も高く、熱膨張係数も低い値であり、半田耐熱性も問題なく、さらに、密着性(ピール強度)に優れていた。そして、実施例1〜24の本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いた半導体装置は、基板の反りに問題なかった。
【0156】
本発明の熱硬化性樹脂組成物に含有される(D)特定ホウ素塩を用いなかった比較例1〜11の積層板は、実施例1〜24の積層板と比較して、密着性(ピール強度)が充分な値とならなかった。さらに、比較例3〜6の積層板は、実施例1〜24の積層板と比較して、密着性(ピール強度)が劣ることに加えて、ガラス転移温度及び半田耐熱性が劣り、問題となる結果となった。そして、比較例3〜6の半導体装置は、基板の反りが大きく問題となった。
【0157】
ビスマレイミド化合物を用いなかった比較例12の積層板は、実施例1〜24の積層板と比較して、ガラス転移温度及び線膨張係数が劣り、問題となる結果となった。そして、比較例12の半導体装置は基板の反りが大きく問題となった。
【0158】
【表1】

【表2】

【表3】

【0159】
なお、樹脂シートについても上記と同様な実験を行って同様な結果を得ることができた。
【0160】
さらに、本発明の積層板及び樹脂シートを用いて形成されたプリント配線板は良好なものとなった。そして、その樹脂シートを用いて形成されたプリント配線板に半導体を搭載してなる半導体装置も良好なものとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物と、(B)一分子内に少なくとも二個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(C)ビスマレイミド化合物と、(D)下記一般式(1)で表されるホウ素塩とを含んでなる、熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

該式中、X1、X2、X3及びX4は、各々独立に、水素又は炭素数1から12の置換若しくは無置換の炭化水素基であり、Y+は1価の陽イオンである。
【請求項2】
前記(A)1分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物の粘度が、150℃条件下で、ICI粘度計で測定して0.05から3.5Pa・sであり、かつ、前記(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量が160から320である請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)一般式(1)で表されるホウ素塩が、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(p−エチルフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(p−エトキシフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウムn−ブチルトリフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(4−フルオロフェニル)ボレート、ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリ(p−トリル)フェニルホスホニウムテトラ(p−トリル)ボレート、テトラn−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルトリフェニルn−ブチルトリフェニルボレート、フェナシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジアザビシクロウンデセニウムテトラフェニルボレート、ピリジニウムテトラフェニルボレート、及び2-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレートから選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させてなる、プリプレグ。
【請求項5】
請求項4に記載のプリプレグの少なくとも片面上に金属箔を配置してなる、積層板。
【請求項6】
少なくとも2枚の前記プリプレグが積層されたプリプレグ積層体からなる、請求項5に記載の積層板。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を支持フィルム又は金属箔上に配置してなる、樹脂シート。
【請求項8】
請求項4に記載のプリプレグ、請求項5若しくは請求項6に記載の積層板、又は請求項7に記載の樹脂シートから形成されたプリント配線板。
【請求項9】
請求項8に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体装置。

【公開番号】特開2011−219674(P2011−219674A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92205(P2010−92205)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】